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 第51回スーパーボウルは、3-28の25点差からの大逆転勝利、オーバータイムOTへの突入等々、試合展開において「見たことも無いスーパーボウル」でしたが、記録面でも数々の「史上最高」が生まれました。

 最も凄い記録だと思うのは、両チームのクオーターバックQBが残したパスプレーでしょう。
 トム・ブレイディ選手が62回のパスアテンプトで43回成功、マット・ライアン選手が23回で17回成功。パスプレーによるゲインはブレイディ選手が466ヤード、ライアン選手が284ヤード、2人合わせて750ヤード、これはもちろんスーパーボウル新記録です。

 また、ブレイディ選手の62アテンプト・43回成功・466ヤードゲインは、いずれも新記録です。

 さらに、この2人の驚異的なパス攻撃によって、両チーム合計のパスによるファーストダウン数39回も新記録であり、ランプレーによるファーストダウンも加えた全体のファーストダウン数54回も新記録でした。

 第51回スーパーボウルは、その攻撃面において、過去に類を観ない驚異的なゲームだったことになります。

 この「驚異的な攻撃」は、QB以外のプレーヤーの記録にも残りました。

 ペイトリオッツのランニングバックRBジェームズ・ホワイト選手の「14パスキャッチ」「RBとしての110ヤードパスレシーブ」「個人としての20得点(3タッチダウン+2ポイントコンバージョン)」のいずれもが新記録となったのです。
 このゲームのMVPはトム・ブレイディ選手でしたが、そのブレイディ選手がゲーム後のインタビューで「ホワイトがMVPを獲得すべきだった」と語っていたのも、頷けるところでしょう。

 もちろん、両チームの守備、特に第1クオーターQ・第2Qのファルコンズの守備と、第4Qのペイトリオッツの守備は素晴らしいものでしたが、比較してみれば、このスーパーボウルは「攻撃が際立った試合」だったのでしょう。

 このところ、シアトル・シーホークスやデンバー・ブロンコスといったチームの「驚くべき守備力」が目立っていたスーパーボウルでしたが、第51回は「攻撃力が守備力を上回った」ように感じます。

 「NFLプレーオフ2017」においては、QBがセンターからボールを受けてから、そのボールを他のプレーヤーに渡す、QBの手からボールが離れるまでの時間がとても短いプレーが威力を発揮しました。「高速にデザインされたプレー」がとても効果的だったのです。

 「2秒前後」の時間でQBの手からボールが離れてしまうと、ブリッツでは間に合いませんし、セカンダリーが相手プレーヤーをマークするのもとても難しいと思います。
 こうしたプレーを創造できるヘッドコーチ、オフェンシブコーディネーターが居て、それを実行できるプレーヤーに恵まれたチームが、ポストシーズンを勝ち上がって行ったのです。

 来シーズンは、こうした高速オフェンスに対抗する「守備プレーの創造」が、各チームに求められることになりそうです。
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 1月22日に行われた、AFCチャンピオンシップ、ニューイングランド・ペイトリオッツとピッツバーグ・スティーラーズの試合、第3クオーターQ試合時間残り3分21秒に、「そのプレー」が現出しました。

 クオーターバックQBトム・ブレイディ選手からボールを受けたランニングバックRBレギャレット・ブラント選手は、ファースト1stダウン獲得に向けて突進しました。

 1stダウンまであと1ヤードという、敵陣ゴール前10ヤード地点でスティーラーズ守備プレーヤーに捕まりました。そこに、守備プレーヤーが殺到します。ブラント選手の周りには6~7名の守備プレーヤーが群がり、「黄色い塊」が出来上がりました。ブラント選手の姿が見えなくなるほどの塊でした。
 さすがにチャンピオンシップゲーム。選手が集まるスピードが見事でした。

 こうした状況でしたから、ブラント選手の突進もこれまで、と思われましたが、「姿が見えないブラント選手」は塊の真ん中でセカンドエフォートに入ったのでしょうか、その「黄色い塊」が少しずつゴールラインに向かって動いています。

 そこに、今度はペイトリオッツ攻撃陣のプレーヤー5~6人が殺到しました。
 「黄色い塊」の周囲に「紺とシルバー」が被さったのです。そして12~14名の塊は、じりじりとゴールラインに向かって前進し、ゴール前1.2m位の地点で止まりました。

 スティーラーズ守備プレーヤーに一度止められた10ヤード地点から、1ヤード地点まで、ブラント選手と塊は9ヤードも前進したのです。

 この「押しくらまんじゅう」の様なプレーは、見方によっては「ラグビー競技のモールプレー」の様でもありました。
 両チームのプレーヤーが「ボールを保持するブラント選手」を核にして、押し合いを展開したのです。
 素晴らしく、面白く、楽しく、そして滅多に観られないプレーであったと思います。

 続く、ゴール前1ヤードからの攻撃で、RBレギャレット・ブラント選手が走り込みTDを挙げました。「仕上げ」たのです。
 27-9と、ペイトリオッツがスティーラーズとのリードを広げ、この試合の勝利を確固たるものにしたTDでした。

 ゴール内で、観客席の大観衆に向かって力こぶを誇示するブラント選手は、本当に嬉しそうでした。
 1月14日に行われた、AFCディビジョナル・プレーオフ、ニューイングランド・ペイトリオッツとヒューストン・テキサンズの試合で、ペイトリオッツのランニングバックRBディオン・ルイス選手が「3種類のタッチダウンTD」を成し遂げました。

 長いプレーオフ史上初のことでした。

① 第1クオーターQの試合時間残り9分34秒、クオーターバックQBトム・ブレイディ選手からパスを受けたRBルイス選手は、そのまま走り込みTD。パスレシーブからのTDでした。ゴール内でパスを受けたのではなく、ボールを受けてから走り込んだところが、いかにもRBのプレーでした。

② 同じ第1Qの試合時間残り1分15秒、テキサンズのキックオフボールをリターナーとして受けたルイス選手は、少し右方向にコースを取り、テキサンズの守備プレーヤーを次々と交し、そのままゴール右隅に走り込みました。

 98ヤードのキックオフリターンTDでした。

 この試合にルイス選手が成し遂げた3種のTDの中でも、最も難度の高いTDでしたし、この試合の愁眉と言っても良いプレーであったと思います。

 このTDでペイトリオッツは14-3とテキサンズをリードして、試合を支配することが出来たのです。

③ 第4Qの試合時間残り12分18秒、テキサンズゴールまで残り1ヤードからのランプレーで、RBルイス選手は真ん中を突破してTD。テキサンズに止めを刺すTDでした。

 プレーオフゲームという「超本気のプレー」の中で、ディオン・ルイス選手はNFL史上初の快挙を達成したのです。

 身長173cm・体重88㎏と、NFLのプレーヤーとして「大きくも無く、重くも無い」ルイス選手ですが、その素晴らしいスピードと俊敏性、そしてフィジカルの強さで一流プレーヤーの地位を確固たるものにしています。

 我が国のアメリカンフットボールプレーヤーのお手本のような選手なのではないでしょうか。
 クオーターバックQBサックを狙って殺到するディフェンスプレーヤーを、ポケットの中でひらりひらりと交わしていく、アーロン・ロジャース選手のプレーには、いつも感心させられます。

 1月8日に行われたワイルドカード・プレーオフ、ニューヨーク・ジャイアンツとグリーンベイ・パッカーズの試合でも、そのスーパープレーを存分に発揮してくれました。

 パッカーズのホーム・ランボーフィールドでのプレーオフゲームに自信を持つ(それまでジャイアンツの2勝0敗)ニューヨークのディフェンダーがロジャース選手に殺到しますが、ロジャース選手はこれを「紙一重」で交わしてパスを決めて行きました。

 伸びて来るディフェンダーの手を、ロジャース選手は必要最小限の移動、1~2mの素早い移動で交わすのです。その手とロジャース選手の体の距離は10cm内外に見えます。凄い動体視力と運動能力でしょう。

 そして、私がロジャース選手のプレーで最も素晴らしいと感じるのは、「サックを受けた時の対応」です。
 いかに「紙一重で交わすプレー」が得意と言っても、相手はNFLトップクラスのディフェンダーですから、サックされてしまうこともあります。この試合でも4~5回のサックを受けていたと記憶していますが、その際にアーロン・ロジャース選手はボールを胸にしっかりと確保し、その場にしゃがみ込むのです。
 決して「無理にパスしよう」とはしません。

 無理にパスをしようとして、ボールを弾きだされてしまったりするファンブルのリスクや、無理なパスからの被インターセプトのリスクを最小限に抑えると共に、自らが怪我・故障するリスクも小さくしているのです。

 「サックされるときは大人しく慎重に受入る」ことにより、「絶対にファンブルはしない」というプレー振りは、QBに求められる最小限の、そして最上のスキルなのではないでしょうか。

 アーロン・ロジャース選手は「インターセプトされないQB」としても有名です。
 現在のNFL最高のQBのひとりであることは間違いないのでしょう。
 第51回スーパーボウルは、予想をはるかに超えた戦いとなりました。

 前半を終えてアトランタ・ファルコンズが21-3とリードし、後半に入っても得失点差を広げて、リードを25点に広げた時には、「ファルコンズの圧勝」に観えました。

 ニューイングランド・ペイトリオッツが敗れる時のパターン、ビッグゲームでは「手堅い」プレーを選択し、得点が伸び難いという「ベリチックとブレイディ」の試合運びに対して、圧倒的な攻撃力で得点を重ねることにより勝利するというパターンを、ファルコンズが実行している姿だったからです。

 クオーターバックQBマット・ライアン選手を中心とした攻撃陣が機能し、守備陣もQBトム・ブレイディ選手に殺到してサックを連発、いつものブレイディ選手の自在の攻めを封じた、第2クオーターQまでの試合内容は、ファルコンズの40得点越えも予想されるほどの、「久し振りの一方的なスーパーボウル」となるかに観えたのです。

 ところがペイトリオッツは「あきらめません」でした。

 19点差で迎えた、第4クオーターQのペイトリオッツは、その攻撃においても守備においても、「ギアを一段上げた」感のあるプレーを繰り広げました。
 
 まず、ゴスコウスキー選手のフィールドゴールFGで、その差を16点としました。試合時間は残り9分40秒余り。
 タッチダウンTD+2ポイントコンバージョン2回で同点ですから、2ポゼッション差とはいっても、残り時間にペイトリオッツが攻撃できる回数を考慮すれば、絶望的な差に観えましたし、そもそも2TDで2回の2ポイントコンバージョンを成功させるということ自体、「非現実的な目論見」に感じられました。

 ただし、第4Qに入ってからのペイトリオッツ守備陣の頑張りは「鬼神」の様でしたから、試合の流れが次第にペイトリオッツに傾きつつあったのも事実でしょう。
 ペイトリオッツには「奇跡的な攻撃」が待たれたのです。

 そして、その「奇跡的な攻撃」が展開されました。

 試合時間残り6分、QBブレイディ選手からワイドレシーバーWRダニー・アメンドラ選手へのパスが決まってTD。

 そして、ランニングバックRBジェームズ・ホワイト選手が突入して、2ポイントコンバージョンにも成功、その差を8点に縮めました。

 このゲームを通じて、「八面六臂」の活躍を魅せてくれたホワイト選手ですが、この2ポイントコンバージョンのプレーは、その価値という意味で「最も重いもの」であったかもしれません。
 何しろ「後の無いプレー」だったのですから。

 これで「8点差」としたペイトリオッツの勢いは止めようもないものでした。

 試合時間残り1分、RBホワイトが、この試合3つめのTDを挙げて2点差。先の2ポイントコンバージョンでお膳立てしての自らのTDでした。

 そして、アメンドラ選手へのパスが決まって、2ポイントコンバージョンにも成功。ついに、ついに28-28の同点となったのです。

 思い描いた通りというか、「最高に次ぐ最高のプレー」というか、ファルコンズ側から見れば「都合の良過ぎる」、残り時間10分からの2(TD+2ポイントコンバージョン)が実現したのです。
 事実は小説よりも奇なり、を地で行くラスト10分でした。

 「スーパーボウル史上初のオーバータイムOT突入」というのも驚かされましたが、第1Qから第3Q途中までのファルコンズのプレーと、第4Qのペイトリオッツのプレーで驚かされ続けていたものですから、観ている側にも(凄いプレーの食べ過ぎによる)「疲労の色が濃く」、試合の流れからして、ペイトリオッツが相当有利であろうとボンヤリと感じていましたが、その通りに試合を運ぶところは、さすがに百戦錬磨のペイトリオッツとブレイディ選手です。
 しっかりとTDを決めて、勝ち切りました。スコアは34-28。
 「絵に描いたような」OTでした。

 この試合は、様々なスーパーボウル記録を生み出しました。

 数えきれないほどの新記録が生まれたのです。

 その点からも、歴史に残るスーパーボウルであったことは間違いないのですが、何よりも驚かされたのは、ニューイングランド・ペイトリオッツの「あきらめの悪さ」でした。

 その「勝利への執念」はスーパーボウル史上に深く刻まれるべきものであり、チャンピオンシップゲームを勝つまでのプレーオフの各試合で披露した「本気」から、さらに一段ギアを上げた「攻守の底力」には感服しました。
 奇跡を生んだ「底力」だったのでしょう。

 7度目のスーパーボウル出場で、5度目の制覇、4度目のMVPを獲得した、QBトム・ブレイディ選手がヴィンス・ロンバルディ・トロフィーを大きく掲げました。
 いつも冷静なブレイディ選手とは思えないくらいの「心の震え」が、全身から溢れていました。
 2月5日に開催される第51回スーパーボウルSBは、ニューイングランド・ペイトリオッツとアトランタ・ファルコンズの対戦となりました。
 21世紀に入ってから続く長期政権「ペイトリオッツ王朝」と、近時メキメキ力を付けて来たファルコンズの対戦と言う、「新旧激突」の色合いが強い対戦であり、見所満載というゲームです。
 素晴らしいゲームとなることでしょう。

 一方で、今シーズン実現しなかったSBカードがあります。
 今シーズンの終盤に到るまで期待されていたのが、AFCのオークランド・レイダーズとNFCのダラス・カウボーイズのSBだったのではないでしょうか。

 両チームとも、NFLを代表する人気・実績を誇るチームです。

 レイダーズは、1976年(第11回)、1980年(第15回)、1983年(第18回)の3度のSB制覇を成し遂げています。そして21世紀に入った2002年にもSB進出を果たしました。
 何時の時代も玄人好みのプレーが特徴のチームだと感じます。
 「黒とシルバーの装束」もファンにはたまらないところです。

 カウボーイズは、常に「NFL・NO.1」の人気を誇るチームだと思います。
 こちらもレイダーズ同様、SBでの実績は抜群、1971年・1977年・1992年・1993年・1995年と5度のSB制覇を成し遂げています。
 ヘルメットに輝く「一つ星・ローンスター」と「濃紺・ブルーとシルバーの装束」もファンの憧れです。

 SBに一度勝つだけでも大変なことであり、一度も勝ったことが無いチームも多い中で、3度以上の制覇を有する両チームは、まさに「名門」なのです。

 ところが、この名門チームが共に「長いスランプ」に陥っていたのです。
 前述の通り、レイダーズは2003年以降SBに進出していませんし、カウボーイズに至っては1996年以降21年間に渡ってSBに出ていないのです。
 残念というよりは、両チームに対するファンの声援の大きさを考慮すれば「不思議」にさえ感じられます。

 そして、この両チームは今シーズン「快進撃」を魅せてくれました。
 全米・全世界のファンが、この名門チーム同士のSB実現を期待したのも無理なからぬことでしょう。

 レイダーズは、カンザスシティ・チーフスと熾烈な地区優勝争いを演じ、第15週を終えた段階ではチーフスを振り切って地区優勝、ひょっとすると「AFC第一シード」も・・・と見られていましたが、第16週のゲームでクオーターバックQBデレク・カー選手が骨折して戦線離脱、一気に勢いが無くなってしまいました。

 地区優勝を逃したレイダーズは、ワイルドカード・プレーオフでテキサンズに完敗しシーズンを終えました。返す返すもデレク・カー選手の怪我が悔やまれるところです。

 カウボーイズは、QBダック・プレスコット選手を中心とした攻撃陣が安定した得点力を継続し地区優勝を果たしました。13勝3敗の好成績でした。
 しかし、ディビジョナル・プレーオフでのパッカーズとの接戦で敗れ、チャンピオンシップ進出を逃してしまいました。好調のグリーンベイ・パッカーズの前に屈したのです。

 幻のスーパーボウル「レイダーズVSカウボーイズ」は、今シーズンは実現しませんでした。
 しかし、ダック・プレスコット選手とデレク・カー選手が、NFLの次代を支えるQBであることは、異存の無いところでしょうし、「名門復活」にかける両チーム関係者の努力が実を結びつつあることも間違いないでしょう。

 今から来年のことを言うのも何ですが、第52回スーパーボウルにおける、両チームの激突に期待したいと思います。
 AFC・NFC両カンファレンスのチャンピオンシップ・ゲームが行われ、2月5日のスーパーボウル出場チームが決まりました。

[AFCチャンピオンシップ2017・1月22日]
ニューイングランド・ペイトリオッツ36-17ピッツバーグ・スティーラーズ

[NFCチャンピオンシップ2017・1月22日]
アトランタ・ファルコンズ44-21グリーンベイ・パッカーズ

 ペイトリオッツは、第1クオーターQに1タッチダウンTD、1フィールドゴールFGで10点を挙げ、10-0とリードしました。
 こうなってしまうと、「百戦錬磨」のベリチック・ヘッドコーチHCとクオーターバックQBトム・ブレイディ選手のコンビは、2Q以降は「相手と同じ得点を挙げる」という、無理をしない戦略を実行しますから、ペイトリオッツ勝利の確率は飛躍的に高まってしまいます。
 この「勝ち方を知っているコンビ」を破るには、ニューヨーク・ジャイアンツ(コフリンHCとQBイーライ・マニング選手)のような「ありえないようなプレー」「奇跡的なプレー」を連発するしかありません。残念ながら、今のスティラーズには、その力はありませんでした。

 ペイトリオッツは3Qにも16点を加え、その差広げてゆうゆうと勝ち切ったのです。

 NFCは、ファルコンズのハイパーオフェンスが威力を発揮しました。
 44失点を喫してしまっては、パッカーズに為す術はありませんでした。

 かつての、QBペイトン・マニング選手が演じて見せたハイパーオフェンスと、今季のファルコンズのそれとは、やや異なるように観えます。
 
① パスのタイミングが非常に速い

 QBマット・ライアン選手のパスのタイミングは、現在のNFLにおいても最も速いのではないでしょうか。
 タイミングが早いという点では、カンザスシティ・チーフスのQBアレックス・スミス選手がボールを受けてから「2秒以内」に投げるパスが多いと言われていますが、ライアン選手はスミス選手より速いと感じます。

 いわゆる「決め打ちのパス」が多いということなのかもしれませんが、それにしてはバリエーションが豊富です。ファルコンズ攻撃コーチと、プレーヤーの共同作業により、この素晴らしいスピードのパスプレーが実現しているのでしょう。

 これだけ「球離れが良い」と、ディフェンスラインが懸命に圧力をかけてたり、サックを目指して突進してきたりしても、QBに到着したときには、既にボールはレシーバーに向かって飛んでいます。
 ライアン選手のパスが、とても小さいポケットから投げられることも多く、「危なっかしいシーン」が頻発しますが、キッチリとパスが通っているのです。

 このパスのタイミングは、ペイトン・マニング選手の攻撃とは異なるものでしょう。

② ランのタイミングも速い

 この「QBからの球離れの良さ」はランプレーでも観られると思います。
 両ラインがぶつかった瞬間に、ランニングバックRBがスクリメイジラインを突破しているといったイメージです。

 もともとハイパーオフェンスとは「高度なパスプレーを主体とした攻撃」の呼称だと思いますが、ファルコンズのそれは「素早いランプレーをも併用したもの」であろうと思うのです。
 
 スーパーボウルは、第50回、今季の第51回と、新旧QBの対決となりました。

 50回は、デンバー・ブロンコスのペイトン・マニング選手対、キャロライナ・パンサーズのキャム・ニュートン選手の対決、51回はトム・ブレイディ選手とマット・ライアン選手の対決となったのです。

 NFLの記録を次々と塗り替えてきた、ペイトン・マニング選手とトム・ブレイディ選手が、NFLの歴史の一部という存在である一方で、ニュートン選手とライアン選手は、今後のNFLを支えていくQBということになるのでしょう。

 圧倒的な攻撃力を背景にスーパーボウルに進出したという面でも、ニュートン選手とライアン選手は共通しています。

 第50回は、戦前の予想を覆して、ペイトン・マニング選手が貫録を魅せました。

 第51回の新旧対決は、どのような結果になるのでしょうか。
 ペイトリオッツとファルコンズの戦力比較をすれば、ほとんど「互角」という戦いでしょう。
 この両チームは、攻撃力が十分であることはもちろんとして、ポストシーズンに入ってから、ディフェンス陣も好調なのです。攻守のバランスのとれた好チーム同士の対決なのです。

 おそらく、ペイトリオッツは「30点前後の得点」「7点以内の得失点差」で勝ち切ろうという戦略だと思います。手堅いゲームを構築しようとするでしょう。
 ファルコンズとしては、これを上回る得点、「30点台後半の得点」を上げることが出来るか、がポイントとなりそうです。

 従って、見所満載の試合ですが、一番の注目点は「ファルコンズの攻撃VSペイトリオッツの守備」なのでしょう。
 
 7度目のスーパーボウルで5度目の制覇を狙うトム・ブレイディ選手に対して、マット・ライアン選手が、スーパーボウルでブレイディ選手を倒した2人目のQB(イーライ・マニング選手に続く)になることができるかどうか。

 2月5日のゲームが、とても楽しみです。
 NFL2016~17シーズンのポストシーズンも、ディビジョナル・プレーオフを終えて、ついに両カンファレンスのチャンピオンシップを迎えました。

 AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)とNFC(ナショナル・フットボール・カンファレンス)のチャンピオンを決める=スーパーボウル出場チームを決めるゲームが、1月22日に迫っているのです。

 ディビジョナル・プレーオフの結果は以下の通りです。

[AFC]
ニューイングランド・ペイトリオッツ34-16ヒューストン・テキサンズ
ピッツバーグ・スティーラーズ18-16カンザスシティ・チーフス

[NFC]
アトランタ・ファルコンズ36-20シアトル・シーホークス
グリーンベイ・パッカーズ34-31ダラス・カウボーイズ

 ペイトリオッツは、クオーターバックQBトム・ブレイディ選手を中心とした多彩な攻撃でテキサンズを圧倒しました。本ブログでは、現在のNFL最強と目されているテキサンズ守備陣が、ペイトリオッツを20得点内外に抑え込めればチャンスあり、と書きましたが、やはり「百戦錬磨」のペイトリオッツ攻撃陣の破壊力が勝ったというところでしょう。

 スティーラーズとチーフスのゲームは、予想通りの接戦となりましたが、これも予想というか心配していた通りに、スティーラーズの「伝統的なプレーオフでの強さ」が「チーフスの伝統的なプレーオフでの弱さ」に勝利したという感じがします。
 それにしても「6本のフィールドゴールFGによる18得点」=タッチダウンTD無しで勝ち上がるというのは、近年のポストシーズンでは珍しいことです。
 「勝負に辛い」スティーラーズのプレーを象徴しているように感じるのです。

 ファルコンズがシーホークスを撃破したゲームでは、QBマット・ライアン選手を中心としたファルコンズ攻撃陣の力強さが際立ちました。
 第1クオーターQに、QBラッセル・ウィルソン選手からタイトエンドTEジミー・グレアム選手へのTDパスが決まった時には、「プレーオフ慣れしている」シーホークスのペースになるかと思われましたが、ファルコンズは直ぐに同点とし、逆に終始ゲームを支配したのです。
 ファルコンズ第2Qの「19得点」は、このゲームの愁眉でした。
 ファルコンズの強さを改めて示した快勝であったと思います。

 パッカーズとカウボーイズのゲームは、まさに新旧QBの激突となりました。
 試合は終始パッカーズがリードし、カウボーイズが追いかける展開となりました。第4Q残り40秒、カウボーイズはFGでついに同点としました。
 このまま延長戦かと思われた試合でしたが、さすがはQBアーロン・ロジャース選手、さすがはパッカーズです。キッチリとFGエリアまでボールを運び、残り3秒でクロスビー選手が51ヤードのFGを決めて、勝ち切ったのです。
 この状況下での51ヤードのキックは、とても難しいものだと思いますが、見事に決めました。
 レギュラーシーズン終盤の6連勝の勢いそのままに、パッカーズは乗っています。

 さて、チャンピオンシップ・ゲームですが、AFCはやはりペイトリオッツが有利でしょう。現状の試合ぶりには「死角が見当たらない」という感じです。
 スティーラーズにチャンスがあるとすれば、攻撃陣が30点台後半から40点台の得点を挙げることしかないと思います。
 プレーオフにおけるQBトム・ブレイディ選手とベリチックHCは、レギュラーシーズンにも増して「慎重な」プレー、インターセプトやターンオーバーが生まれ難いプレーに徹するところに特徴があり、そこからポストシーズンにおける驚異的な強さが生まれているのですが、反面、爆発的な得点は取れないのです。

 ペイトリオッツがプレーオフで敗れる時は、「点の取り合いからの僅差の敗戦」ということになります。
 従って、QBベン・ロスリスバーガーを中心としたスティーラーズ攻撃陣が、積極的な攻撃を仕掛け、「ノーガードの打ち合い」といった様相の試合を創り出すことが出来れば、チャンスがあるでしょう。

 NFCは、ファルコンズが勝つのではないでしょうか。
 ディビジョナル・プレーオフのシーホークス戦の快勝は、それほどに衝撃的でした。
 ファルコンズ・QBマット・ライアン選手のプレーは本物なのです。

 もちろん、パッカーズのパスオフェンスも極めて強力なのですが、ラン攻撃とのバランスという点で、ファルコンズが勝りそうです。
 2016年のキャロライナ・パンサーズに続く、「NFL新世代の代表」として、アトランタの活躍が続きそうです。

 ディビジョナル・プレーオフは、素晴らしく、凄まじいプレーの連続でした。
 チャンピオンシップでも、NFL史上に残る好ゲームが期待されます。
 NFL2016年~17年シーズンのポストシーズンも、ワイルドカード・プレーオフを終了して、ディビジョナル・プレーオフが迫ってきました。
 トーナメント表で言えば、AFC・NFCそれぞれのカンファレンスの準決勝です。

 ディビジョナル・プレーオフに勝利したチームが、第51回スーパーボウルへの出場権を争うカンファレンス・チャンピオンシップゲームに進むことになります。

 対戦カードは以下の通り。

[AFC アメリカン・フットボール・カンファレンス]
ニューイングランド・ペイトリオッツVSヒューストン・テキサンズ
カンザスシティ・チーフスVSピッツバーグ・スティーラーズ

[NFC ナショナル・フットボール・カンファレンス]
ダラス・カウボーイズVSグリーンベイ・パッカーズ
アトランタ・ファルコンズVSシアトル・シーホークス

 AFCのワイルドカード・プレーオフは、テキサンズがオークランド・レイダーズを27-14で破り、スティーラーズがマイアミ・ドルフィンズを30-12で破りました。

 今期、「復活」のイメージで活躍をつづけたレイダーズでしたが、レギュラーシーズン第16週にクオーターバックQBデレク・カー選手が負傷してからは、一気に勢いが落ちてしまいました。「好事魔多し」という感じですが、レイダーズファンにとっては、来シーズンに期待をかけるしかありません。(個人的に本当に残念です)

 一方、こちらも「復活」の期待がかかったドルフィンズでしたが、残念ながらスティーラーズに完敗しました。何とも言えない「明るさ」を保持するドルフィンズですが、ピッツバーグは、やはり寒過ぎたというところでしょうか。

 さて、テキサンズがシード1位のペイトリオッツに挑むカードですが、やはりレギュラーシーズン14勝2敗という安定した強さを魅せてきたペイトリオッツの優位は動かないところでしょう。
 テキサンズとしては、QBトム・ブレイディ選手を中心とするペイトリオッツの攻撃をどこまで抑え込めるかがポイントとなります。失点を20点前後に抑えることが出来れば、チャンスがあるかもしれませんが、「7度目のスーパーボウル出場」を目指すトム・ブレイディ選手とペイトリオッツは「百戦錬磨」ですから、大崩れするとは考えにくいところです。

 チーフスにスティーラーズが挑むカードの方は、やはりチーフスの方がやや有利かと思いますが、こちらは「スティーラーズの伝統の強さ」に期待がかかります。スーパーボウル最多優勝を誇るスティーラーズが、プレーオフゲームでその力を発揮してくれれば、競り合いになることでしょう。
 このゲームでは、QBアレックス・スミス選手を中心としたチーフス攻撃陣の「完成に近づいたプレー」に注目しています。
 
 私は、QBアレックス・スミス選手をサンフランシスコ49ers時代から高く評価してきました。「モバイル」というタイプではないのですが、「走るときは走る」タイプで、その突進力は相当高いと感じています。もともとバランスの良いプレーヤー(そうでなければ2005年ドラフト全体1位にはならないでしょう)でしたが、近時一層プレーに磨きがかかりました。
 スティーラーズとは対照的な「チーフスのプレーオフにおける伝統的な弱さ」(変な言葉で恐縮です)を破ってくれることを期待しています。

 パッカーズはワイルドカードでジャイアンツに快勝しました。
 レギュラーシーズンの終盤、6連勝してプレーオフに駒を進めた勢いそのままに、力を爆発させた印象です。
 QBアーロン・ロジャース選手を中心とした攻撃陣が好調で、その得点力は脅威でしょう。

 迎え撃つカウボーイズは、レギュラーシーズン13勝3敗の安定した戦いを繰り広げてきましたが、シーズン終盤の戦い振りは必ずしも好調とは言えない感じがしますので、このカードは接戦が予想されます。
 強力なカウボーイズ守備陣を相手に、ロジャース選手のパス攻撃が炸裂するようなら、パッカーズにも勝機がありそうです。
 一方のQBダック・プレスコット選手にとっては「試金石」となるゲームかもしれません。

 シーホークスは、相変わらずの超強力ディフェンスがライオンズの攻撃を6点に抑えて、ワイルドカードを勝ち上がりました。「球際に強い」守備は、現在のNFLでも屈指のものでしょう。
 対戦相手のファルコンズが第二シードになったこと自体が、今期のNFLの「混戦」を表していると思います。QBマット・ライアン選手を中心とした攻撃陣と堅実な守備陣の絶妙のバランスの上にファルコンズは立っているのです。着実に進歩してきたチーム。

 このカードは、接戦というより「互角」と言った方が良いでしょう。
 マット・ライアン選手が「本気のシーホークス守備陣」を相手に、どこまで力を発揮できるかがポイントになりそうです。

 このところの「プレーオフ常連チーム」と、カウボーイズやファルコンズ、テキサンズといった、復活途上あるいは伸び盛りのチームが激突するディビジョナル・プレーオフ。

 例年のプレーオフにも増して「もの凄いプレー」が沢山登場する気がします。
 レギュラーシーズン最終の第17週のゲーム、ワシントン・レッドスキンズVSニューヨーク・ジャイアンツ戦の第2クオーターQ終盤に、とても印象的なプレーが有りました。

 ジャイアンツは第16週までにポストシーズン進出を決めていて、このゲームの勝敗はシード順にも影響を与える可能性は有りませんでした。つまり「勝っても負けても」どちらでもよいゲームでした。
 一方のレッドスキンズは既にプレーオフ進出の望みは絶たれていましたが、クオーターバックQBカーク・カズンズ選手が契約最終年を迎えており、同地区のライバルとのシーズン最終戦に対して、「勝ちたい気持ち」が強い試合であったと思います。

 両チームの守備陣がよく頑張りロースコアゲームとなりました。

 第2Q残り1分を切って、ジャイアンツが10-0とリードしました。
 試合前の気持ちとは裏腹に、ジャイアンツが「プレーオフ用に考えてきた特別な守備プレー」が良く決まり、レッドスキンズの攻撃を抑え込んでいたのです。

 ハーフタイムまで残り8秒のレッドスキンズの攻撃、QBカズンズ選手からワイドレシーバーWRデショーン・ジャクソン選手へのロングパスが決まり、ジャクソン選手がラン・アフター・キャッチの体勢に移りました。ラン・アフター・キャッチのランを加えたロングゲインが、ジャクソン選手の持ち味なのです。

 ところが、ここでジャクソン選手は足を滑らせたのか、その場に転んでしまいました。
 その瞬間にレッドスキンズはタイムアウトTOを取りました。

 試合時間は「残り1秒」でした。
 もう1プレーできるのです。

 この1秒でレッドスキンズはフィールドゴールFGを狙いました。57ヤードという、とても長いアテンプト。このキックは惜しくもゴール左に外れてしまいました。
 これで前半を終了し、レッドスキンズは無得点で終えました。

 ここで、ハタと気が付いたのです。

 デショーン・ジャクソン選手は「わざと転んだのではないか」と。
 身長178cm・体重79㎏という、NFLのWRとしてはとても小柄なプレーヤーでありながら、その俊敏性とクレバーなプレーで「一流」の評価を得てきたジャクソン選手が、反転すると同時に転ぶなどということは、考えられないことなのです。

 『自らが、パスキャッチを受けた地点から40ヤード内外を走り切ってTDを挙げる確率は、高くは無い(前方に複数のジャイアンツディフェンダーが並んでいる)、残り8秒から始まったプレーであるから、まだ数秒時間が残っている、自軍(レッドスキンズ)のTOは2つ残っている、ここでプレーを切れば、TOがコールされて、自軍は「もう1プレー」できる。
 その1プレーでTDやFGを狙う方が、得点する可能性は高い・・・。』

 ジャクソン選手が0.1秒くらいの間に考えたことを、私なりに想像したのが前述です。

 そして、ジャクソン選手の狙い通りにTOが取られ、時間は「1秒」残ったのです。
 この1秒を活用したFGアテンプトは惜しくも実りませんでしたが、ジャクソン選手の「得点に賭ける執念」と冷静な判断力は、さすがにNFL屈指のWRの面目躍如たるものが在ると感じました。

 デショーン・ジャクソン選手は、名門カリフォルニア大学バークレー校からNFLに進み、2008年から2013年までフィラデルフィア・イーグルス、2014年以降はレッドスキンズでプレーし、3回のプロボウル出場を誇る名WRなのですが、このプレーには「NFLの一流プレーヤーの判断力の速さ=頭脳の俊敏性」と冷静さが存分に発揮されていたと感じます。
 
 敵味方の得失点、残り試合時間、プレーに要した時間、自軍のTO残り数、プレーの状況、等々を瞬時に判断しながら、激しく素早いプレーを展開するNFLプレーヤーの凄さを、改めて感じさせるプレーでした。
 2016年12月4日、NFL2016~17シーズン・第13週のロサンゼルス・ラムズVSニューイングランド・ペイトリオッツのゲームは、ペイトリオッツが26-10で快勝しました。
 ペイトリオッツのクオーターバックQBトム・ブレイディ選手は、このゲームで33本のパスを成功させて269ヤードを稼ぎ、1タッチダウンTDパスを通しました。

 そして、この勝利がブレイディ選手の「NFL先発ゲームにおける201勝目」となったのです。

 QBの先発勝利201は、それまでの最多記録であったペイトン・マニング選手の200を超え、NFL新記録となりました。
 各シーズン1年間でレギュラーシーズンは16試合しかないNFLにおいて、「201勝」というのは気が遠くなるような数字です。毎シーズン10勝を挙げたとしても20年以上かかるのですから。

 トム・ブレイディ選手は、2000年のドラフト第6順でペイトリオッツに指名され入団、2001年から先発QBとなり、いきなりスーパーボウル(第36回)に進出、これを制しました。24歳という史上最年少QBのスーパーボウル制覇は、当時大変な話題となりました。

 爾来17シーズンをかけての「201勝」達成でした。

 この記録第2位のペイトン・マニング選手が200勝、3位のブレット・ファーブ選手が199勝と続いています。ペイトン・マニングとブレット・ファーブという、「NFL史上に燦然と輝く大QB」を抜き去っての記録には、計り知れない価値が有ると感じます。

 さらには、マニング選手が292先発での200勝、ファーブ選手が322先発での199勝であるのに対して、ブレイディ選手は262先発での201勝と、その圧倒的な勝率が際立っています。
 ブレイディ選手は「17年間に渡って高い勝率を維持」しているのです。

 そしてこの間、6度のスーパーボウルSB進出、4度の優勝、3度のSB-MVPという素晴らしい記録を残してきました。
 名将ベリチック・ヘッドコーチHCとのコンビで「ペイトリオッツ王朝」を維持してきたのです。

 この新記録樹立の後、第17週までにさらに4勝を積み上げ、通算先発205勝と記録を伸ばしています。

 39歳となった現在、さすがに2001年当時と比べれば齢を重ねた感はありますが、そのプレー振りには殆ど衰えが感じられません。
 その点が、QBトム・ブレイディの最も凄いところでしょう。(チームプレーに影響を及ぼすような衰えが観られれば、ベリチックHCは直ぐにブレイディ選手を下げることでしょう)

 2016~17年レギュラーシーズンを14勝2敗という好成績で終えたペイトリオッツは、AFC(アメリカン・フットボール・カンファレンス)の全体1位でポストシーズンに臨むこととなりました。

 QBトム・ブレイディ選手にとって、7度目のSB進出、5度目のSB制覇に向けてのプレーオフが始まるのです。
[12月5日 レギュラーシーズン第13週]
インディアナポリス・コルツ41-10ニューヨーク・ジェッツ

 ジェッツのホーム・メットライフスタジアムで行われたゲームでしたが、試合内容はコルツの一方的なものになりました。

 コルツは、正クオーターバックQBのアンドリュー・ラック選手が脳震盪からの復帰戦でしたが、この試合でラック選手は28本のパスアテンプトで22本成功、278ヤードを投げて4タッチダウンTDパスという、見事な復帰戦というか、キャリア屈指の成績を残しました。

 ジェッツは攻守にわたって精彩を欠きましたが、この試合の前半、QBフィッツパトリック選手からタイトエンドTEの選手にTDを狙ったパスが投げられた時に、「今シーズン7本目のTEへのパス」と放送されました。

 第13週、ジェッツにとっては今季12試合目のゲームでしたが、それで「7本目」というのは、あまりにも少ないのです。QBからTEへのパスが1試合に1本も無いというのは、NFLのチームの攻撃プラン・構成としては、とても珍しいと感じます。

 例えば、このゲームのコルツのQBラック選手はTEドウェイン・アレン選手に4本のパスを投げています。
 ニューイングランド・ペイトリオッツのQBトム・ブレイディ選手とTEロブ・グロンコウスキー選手(身長198cm)や、ニューオーリンズ・セインツのQBドリュー・プリーズ選手とTEジミー・グレアム選手(身長201cm)の関係を持ち出すまでも無く、現在のNFLのオフェンスにおいては、身長2m前後の大型TEへのパスは、とても重要なプレーとなっています。

 「苦しい時のTE頼み」ではないのですが、ターゲットが見つからない時のQBの最後の砦といった位置付にあるのがTEへのパスなのです。身長差を活かすプレーは、成功確率の高いものとなるからです。
 10ヤード内外のミドルゾーンへのパスは、どのチームにとってもキーとなるプレーであろうと考えていました。

 最近ではオフェンスにおいて「TEへのパスに依存し過ぎる傾向」が指摘され、攻撃のバリエーションが少なくなるとさえ言われる程に、QB→TEのホットラインの重要性は増しているのです。(前述のグレアム選手がセインツからシアトル・シーホークスにトレードされたのも、セインツのオフェンスがグレアム選手に依存し過ぎて、機能していなかったことが原因であるとの見方も有ります)

 こうした時代に、「TEへのパスを使わないチーム」が存在しているのはとても意外でした。
 
 今季のジェッツの「TEへのパス」は、12試合で7本ですが、何と昨シーズンはレギュラーシーズン全16試合で計8本だったと報じられました。驚くべき少なさです。(妙な書き方で恐縮です)

 これは、現代のNFLにおいて稀なことであることは間違いありませんが、20世紀のNFLにおいても珍しいことであったと思います。

 かつてのオークランド・レイダーズのQBケン・ステブラー選手からTEフレッド・ビレトニコフ選手へのパスは、正に「苦しい時のビレトニコフ頼み」と呼ばれるキープレーでしたから、20世紀においてもQB→TEのパスはとても大切なものだったのです。(当時のTEはオフェンスラインに位置し、現在のTEはパスレシーバーの位置にセットしていることが多いという違いはあると思いますが・・・)

 こうした中で、QB→TEのパスを使わないという、極めて「斬新」なオフェンスを展開している、現在のジェッツは「NFLのオフェンス」に対して「大いなる挑戦」を続けているとも言えるのかもしれません。

 頭書の試合は、前半から一方的なコルツのゲームとなり、ハーフタイムで観客の半分がスタジアムを後にし、第3クオーターQが終了する頃には2/3の観客が帰ったと報じられました。
 贔屓チームの粗末なプレーの連続に対して、スタジアムのファンからはブーイングの連続でした。

 これでジェッツは3勝9敗となり、アメリカン・フットボール・カンファレンスAFC東地区の最下位に定着、今季のプレーオフゲーム進出は絶望となりました。

 ニューヨーク・ジェッツは、根本的な立て直しを迫られることになるのでしょう。
 フィラデルフィア・イーグルスの今季のクオーターバックQBはカーソン・ウェンツ選手です。
 ドラフト全体2位という、極めて高い評価を得て、ノースダコタ大学から入団したウェンツ選手は、今季緒戦から先発し、11試合連続で出場しています。

 QBの11試合連続出場というのは、NFL全体で見れば珍しいことではありませんが、イーグルスにとっては、あのドノバン・マクナブ選手の13試合連続に次ぐ、近年では長い連続出場記録なのです。
 つまり、イーグルスはこのところ「安定して出場を続けるQB」に恵まれなかったということであり、「不動のQB」が居ないチームは、そのチーム作りに苦労する訳で、近時のイーグルスの不振の一因であったことも間違いないところなのでしょう。

 イーグルスはついに、「不動のQB」を得たとも言えそうです。

① 十分なサイズ

 ウェンツ選手は、身長196cm・体重101kgと報じられています。そのプレー振りを観ても、十分な高さのQBだと感じます。

 グリーンベイ・パッカーズのアーロン・ロジャース選手やニューオーリンズ・セインツのドリュー・プリーズ選手のように、近時は必ずしも高身長のQBばかりが活躍しているわけではないのですが、やはりNFLのQBは「6の6=6フィート・6インチ=198cm」が望ましいと言われているのです。
 確かに、高い位置からフィールド全体を見渡すことが出来、パスカットされる可能性も低い、という面からは「高身長が有利」なのでしょう。

 ウェンツ選手は「6の6」には少し足りませんが、あのペイトン・マニング選手と同じ196cmなのです。
 NFLで戦って行く上では、十分なサイズと言えます。

② ポケットからのパスプレー

 ウェンツ選手のプレー振りを観ると、「パスプレーが上手い」という印象です。
 特に、ポケット内からのミドル・ショートパスが良く決まります。

 決して「鉄砲肩」といったイメージでは無く、レシーバーが取り易いボールをコントロール良く投げています。丁寧なパスとも言えると思います。

 また、「モバイルQB」というよりはポケットの中でプレーすることが多い。これも、NFLで長く戦って行く上では、有利なことだと感じます。
 ラインの強さを信頼し、あまり動かないプレーというのは、伝統的なNFLのQBのプレーです。「安定したチーム作り」という面からも、有効な形だと思います。

 とはいえ、全く走れない訳では無く、ここぞという場面や緊急時には相応の個人プレーも魅せてくれます。

③ 冷静

 試合中の仕草・プレーコール・失敗した時の様子などから、とても冷静な選手という印象です。
 かつてのブレット・ファーブ選手の様に「ファイト剥き出し」のQBも良いものですが、ジョー・モンタナ選手の様に「極めて冷静」なQBも、ひとつのタイプでしょう。

 ウェンツ選手は、まだそのキャリアを歩み始めたばかりですが、「冷静なQB」として実績を積み上げて行ってくれるのではないでしょうか。

④ ノースダコタ大学出身

 全米のカレッジフットボール界では、全くと言って良い程無名の大学出身です。
 こうした無名大学のプレーヤーをドラフト上位で指名してくるところが、NFL各チームのスカウティングの凄いところだとも感じます。

 全米の大学におけるアメリカンフットボールプレーヤーに勇気を与える存在とも言えるのでしょう。

 NFL2016~17のルーキーQBといえば、ダラス・カウボーイズのダック・プレスコット選手が注目されていますが、このプレスコット選手と共にウェンツ選手も「NFLの次代を支えるルーキーQB」だと思います。

 こうした素晴らしい選手が次々と登場するところに、NFLの奥行きの深さを感じるのです。
 NFL2016~17・第10週のマンデーナイト・ゲーム、シンシナティ・ベンガルズとニューヨーク・ジャイアンツのゲームは、1点を争う接戦となりました。

 14-20とリードを許して第4クオーターQを迎えた、ホームのジャイアンツはクオーターバックQBイーライ・マニング選手からスターリング・シェパード選手への短いパスが決まり、タッチダウンTD、コンバージョンキックも決まって21-20と逆転しました。
 残り試合時間14分あまりの逆転でした。

 まだ時間は「たっぷり」と残されていましたから、ここから両チームの激しい攻め合いが続いたのです。

 劣勢を予想されていたジャイアンツ守備陣が良く踏ん張り、ベンガルズの得点を許さず試合時間は残り2分を切りました。攻撃権はジャイアンツにありました。

 ジャイアンツとしては、とにかく「時間を消化して」勝利を得たいところでした。
 ランプレーを続けている間は、試合時間を測る時計は動き続け、1プレーで40秒を消費することが出来ますから、ジャイアンツもひたすらランプレーを続けました。パスプレーでインターセプトなどを許しては、大変なことになるからです。

 一方で1stダウンが取れなければ、相手チームに攻撃権が移ってしまいます。従って、なかなか距離を稼ぐことが出来ない(ジャイアンツはこの試合前までNFL最下位のラン攻撃力を記録していました)ランオフェンスで1stダウンを取って行かなければならないという、難しい攻撃が続いたのです。

 試合時間残り1分50秒を切ってきた段階で、ジャイアンツ3rdダウンの攻撃となりました。やはりランプレーが選択されましたが、ジャイアンツのボールキャリアはスクリメイジラインを突破し、1stダウンを獲得、相手ゴールまで10ヤード付近まで迫るラン。ベンガルズのセカンダリー守備陣が必死に止めた形でした。

 残り試合時間は1分40秒となりましたので、この1stダウンで勝負は決しました。
 ベンガルズのタイムアウトは残っていませんでしたから、ベンガルズに時計を止める術は無く、ジャイアンツは、QBマニング選手がニーダウンを続け、1回のプレーで40秒ずつ消費すれば、試合時間が無くなるからです。

 ここで解説者から「さっきのプレーでタッチダウンにしておけばよかった」とのコメントが出されました。
 ジャイアンツのランで前進した時に、ベンガルズの守備陣はジャイアンツの選手を止めることなく、そのまま放置してタッチダウンを取らせればよかったという、コメントでした。

 例えばあのプレーでジャイアンツがTDを挙げ、コンバージョンキックも決めて7点を加えると、スコアは28-20となります。
 そして、残り試合時間1分30秒で「攻撃権はベンガルズに移る」のです。
 ベンガルズは1分30秒でTDを挙げて、2ポイントコンバージョンに成功すれば、8点を加えることが出来ますから、28-28の同点にするチャンスは有った訳で、オーバータイムOT(延長戦)での勝利の可能性も残りました。

 「タッチダウンを阻止してしまった」為に、負けが確定してしまったという形です。

 ジャイアンツ側が、ニーダウンプレーを失敗し、ファンブルなどして、攻撃権がベンガルズに移る可能性は極めて小さいからです。

 この「タッチダウンをさせるべき」であったということは、アメリカンフットボールをやっている方なら「平時なら誰にでも分かること」なのですが、さて実戦でプレーヤーが、そのようにプレーできるかというと、とても難しいことなのでしょう。

 スクリメイジラインを突破してきた相手チームのランナーを見た時、「このまま走らせてタッチダウンにしたほうが味方にとって有利」と判断することは、容易なことではなさそうです。
 ラインバッカーLBを始めとするセカンダリーディフェンスプレーヤーは、常に「敵の前進を食い止める」ことに注力しているからです。「わざと前進を許す」というのは、「本能が許さない」ところなのでしょう。

 しかし、この場面では「タッチダウンを許すべきだった」というところに、アメリカンフットボール競技における「攻撃権の重要性」、そして「瞬時の判断力の重要性」が如実に表れていると感じます。
 先日は、「サッカーの聖地」ウェンブリースタジアムでのNFLレギュラーシーズンゲームの記事を書きましたが、今度はアステカ・スタジアム(エスタディオ・アステカ)でのゲームが開催されました。

 第11週・11月21日のヒューストン・テキサンズ対オークランド・レイダーズのゲームです。

 アステカ・スタジアムは、メキシコシティにあるサッカー場です。
 ワールドカップクラスの国際試合が行われる競技場としては、世界最大の観客収容数を誇るスタジアムです。
 その収容人員は105,000人余。
 世界中には、ワールドクラスの国際試合を行う、数々の大サッカー場がありますが、10万人を超える収容人員を擁するものは、現時点ではここしかないでしょう。(FCバルセロナのホームスタジアム・カンプノウが拡張を計画しているという情報が有りますが、それでも102,000人収容と聞いています)

 加えて、このアステカ・スタジアムでは、数々のサッカー史に残る名勝負が繰り広げられています。
 1970年のワールドカップ決勝では、ブラジルチームがイタリアチームに4-1で快勝し、3度目の優勝に輝き、ジュールリメ杯を獲得しました。「サッカーの神様」ペレ選手にとっても3度目の、そして最後のワールドカップ優勝の舞台となりました。

 また、1986年のワールドカップでは、準決勝で「マラドーナの5人抜き」の舞台となりました。この時の大会は「マラドーナのワールドカップ」と呼ばれました。

 さらに、1970年大会の準決勝、ドイツとイタリアの対戦は延長戦に入ってからの点の取り合いという、滅多に観られない壮絶なゲームとなりました。アステカ・スタジアムの前には「1世紀に1度のゲームが行われた」と記されていると聞いています。

 標高2,286mに位置する、「空気の薄い」スタジアムでは、選手の疲労も普段のゲームより遥かに大きいのですが、極めて濃い内容の名勝負が繰り広げられてきたのです。

 こうした数々の伝説から見れば、アステカ・スタジアムもサッカー競技にとって「極めて大切な競技場」であり、1966年開場・50年以上に渡って、世界最大のサッカー場としての地位を譲っていないのも、凄いことだと思います。

 その「アステカ」でNFLの公式戦が開催されるのは、2005年以来11年振りのことでした。またこのゲームは「マンデーナイト」ゲームでしたが、全米注目(月曜日の夜、1試合しか行われない為に、全米のアメリカンフットボールファンが観戦する)のマンデーナイト・ゲームがアメリカ合衆国以外で開催されるのは「史上初めて」ということですので、記録に残る対戦となったのです。

 先日のウェンブリーでのゲームも大接戦となりましたが、このゲームも好ゲームとなりました。

 第2クオーターQを終って10-10の同点。
 
 第3Qにはテキサンズが17-13とリードしましたが、第4Qに入って双方点を取り合い20-20の同点で終盤に縺れ込みました。

 そして第4Q残り時間5分を切ったところで、レイダーズのクオーターバックQBデレク・カー選手からアマリ・クーパー選手に短いパスが通り、そのままクーパー選手が走り切ってタッチダウンTDを挙げました。これが決勝点となったのです。

 この試合では、レイダーズのパンターPマーケッティ・キング選手のパントも印象的でした。もともと、このゲームの前まででも今季21本の50ヤード以上のパントを決めて、NFLトップの成績を残していたキング選手でしたが、このゲームのパントも見事なものでした。
 飛距離・滞空時間とも十分なパントが、アステカの夜空に舞い上がりました。

 滞空時間が5秒近いパントもありました。空気の薄いアステカならではの飛距離と言うべきか、空気が薄いのだから落下速度が速くなると見るべきなのか、分からないところではあります。

 アステカ・スタジアムのフィールドは、ウェンブリーのそれよりも一回りは大きく見えました。NFLの大男達も、ゆったりと?控えていたように感じます。

 観客席は、概ね満員に見えましたから、9万人以上の観衆を集めていたのではないでしょうか。
 このゲームも、「世界進出を狙う」NFLの狙い通りのゲームとなったようです。

 レイダーズのシルバーのヘルメット、テキサンズのブルーのヘルメットに、「光の環」、アステカ・スタジアムの照明が、美しく映えていました。
 
 先日の記事で「強豪同士の対決」としてスティーラーズとカウボーイズの対戦を書きました。2016~17年シーズンの対戦も、見事なゲームだったのです。

 この2つの強豪チーム、全米でも人気を分け合うメジャーなチーム同士の対戦の評価を決定づけたのが、1979年に行われた「第13回スーパーボウル」における激戦であったと思います。

 1979年1月21日、アメリカ合衆国フロリダ州マイアミのオレンジボウルが会場でした。

① ピッツバーグとダラス

 鉄の街、自動車メーカーの街、ペンシルベニア州ピッツバーグに本拠を置くのがスティーラーズです。

 かつて世界最大の鉄鋼メーカーであったUSスチーム社や世界最大の自動車メーカーであったゼネラル・モータースGM社等が本拠を置く街ピッツバーグのチームですから、「強さ」の象徴、特に「スティールカーテン」と呼ばれる「鉄壁の守備」を誇りました。

 一方、星ひとつ=「ローンスター」がヘルメットに配されているカウボーイズは、全米最大の面積を誇る南部の雄州・テキサス州ダラスに本拠を置きます。
 ご存じのようにテキサスはアメリカ合衆国南部地域を代表する州であり、ワシントンやニューヨークと言った「アメリカの中心」を自認する東部の州に対して、独特の対抗意識を持っています。

 アメリカ合衆国から「独立しよう」としたこともあり、孤高の星「ローンスター」とも呼ばれますが、そのローンスターの象徴をヘルメットに配するのがカウボーイズなのです。

② ヘッドコーチ対決 チャック・ノールHCとトム・ランドリーHC

 AFCアメリカン・フットボール・カンファレンス代表のスティーラーズのヘッドコーチHCはチャック・ノール氏でした。
 チャック・ノールHCは非常に規律を重んじ、「いつも、手を抜かずに頑張り尽くす人間には必ず良い結果が訪れる」という名言を残しています。
 チャック・ノールHCが創り上げたスティーラーズは、この頃のNFL最強のチームと呼ばれていて、4度スーパーボウルに出場し4度共優勝しています。
 「史上最高のHC」のひとりであることは、間違いありません。

 一方、カウボーイズを率いるのはトム・ランドリーHCでした。
 実は、カウボーイズは1960年創設(スティーラーズは1933年)の、当時で言えば「新しいチーム」でした。
 この「新興」チームのHCにトム・ランドリー氏が着任したのは1960年・チーム創設と同時でした。そして1988年まで29年間に渡って指揮し続けたのです。
 カウボーイズをメジャーなチーム、全米屈指の人気チームに押し上げた最大の功労者という点に、異議を差し挟む人は居ないでしょう。

③ クオーターバック対決 テリー・ブラッドショー選手とロジャー・ストーバック選手

 スティーラーズのクオーターバックQBはテリー・ブラッドショー選手。スーパーボウルに4度優勝している3人のQBのひとりです。(残りの2人は、ジョー・モンタナ選手とトム・ブレイディ選手)この時代を代表するQBのひとりでした。

 一方のカウボーイズのQBはロジャー・ストーバック選手。こちらはスーパーボウルに4度出場し、2度(第6回と第12回)優勝しています。カウボーイズの創世期、第一期黄金時代を牽引したQBでした。そのプレー振りは「変幻自在」。ポケットの中で動くことを良しとされなかった当時にあって、ポケットに侵入してきた相手チームのディフェンダーから身をかわすプレーは、現在では当たり前のプレーですが、当時は珍しいもので、「Roger The Dodger」(ひらりと身を交わすロジャー)と呼ばれていました。
 私は、カウボーイズ史上最高のQBだと思います。

 この2人は1976年の第10回スーパーボウルでも対戦し、21-17という僅差でスティーラーズが勝利していますから、ストーバック選手にとってはリベンジの一戦となったのです。

④ ランニングバック対決 フランコ・ハリス選手とトニー・ドーセット選手

 両チームのエース・ランニングバックRBも、この時代を代表する2人でした。

 スティーラーズのフランコ・ハリス選手は、身長190cm・体重105kgという、当時としては(現在でも)大型RBの代表でした。重戦車と称された突進は、着実に5ヤード前後を稼ぎ、スティーラーズの攻撃の核となりました。

 一方、カウボーイズのRBはトニー・ドーセット選手。NFL歴代8位・12,739ヤードのラッシングを誇る快足RBでした。
ドーセット選手は、身長180cm・体重87㎏のスリムな体型から繰り出す華麗なステップとスピードで敵陣を切り裂き続けました。

 この試合は、NFLを代表する、対照的なRBの対決でもあったのです。

⑤ 35-31

 試合はスティーラーズが先行し、カウボーイズが追いかける展開。
 第3Qを終えて35-17とリードしたスティーラーズを、第4Qカウボーイズがストーバック選手の2本のTDパスで35-31と追い上げました。

そして、このクオーター3本目のTDパスが決まったかに見えましたが、これをカウボーイズのプレーヤーが落球してしまったのです。フリーのプレーヤーへの、少し低かったとはいえ「容易にキャッチできる15ヤード位のパス」であったと記憶していますが、この落球で万事休す。
 カウボーイズは再びスティーラーズに敗れたのです。

 そして、第12回までのスーパーボウルで共に「2度の最多優勝」を記録していた両チームの対戦、史上最多の3度目の優勝・単独最多優勝記録を目指した対決は、スティーラーズに軍配が上がりました。

 現在の形のNFLが誕生したのは1970年です。
 アメリカンフットボールは、スポーツ大国アメリカにおいても最も人気のあるスポーツのひとつですから、20世紀の初めから、いくつものリーグが誕生し合併・離散を繰り返してきました。

 そして1970年に現在のNFLが誕生したのです。
 新生NFLにとっては、「NFLこそがアメリカ最高のフットボールリーグ」であることを明示していくための最大のイベントが、スーパーボウルでした。
 この頃の毎シーズンのスーパーボウルは、「NFLの未来を占う試合」だったのです。

 そして、第13回スーパーボウルは、この時代における最も素晴らしいスーパーボウルと評されています。

 「NFL繁栄の礎を築いたスーパーボウル」と言っても良いのではないでしょうか。
 アメリカンフットボール競技の世界最高峰・NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の対戦カードの中でも、「ザ・強豪対決」と呼ばれるのは、ピッツバーグ・スティーラーズとダラス・カウボーイズの対戦でしょう。

 共に「8度のスーパーボウル出場」を誇り、スティーラーズが優勝6回(史上最多)、カウボーイズが優勝5回(史上2位)という、輝かしい実績を誇っています。

 これまでも、NFL史上に残るゲームを披露してきた両チームですが、今季の試合も素晴らしいものとなりました。

[2016年11月14日・ハインツフィールド(スティーラーズのホーム)]
カウボーイズ35-30スティーラーズ

① 逆転に次ぐ逆転

 何度逆転が有ったのか数え切れない程、二転三転したゲームでした。

 最終の第4クオーターQ、残り試合時間1分を切ってからも、試合の行方は全く分からないというゲームとなりました。

② 残り1分からの攻防

 残り1分を切って24-29とリードを許したスティーラーズの攻撃。試合時間が「秒単位」となってからのNFLの試合は、「如何にして時計を止めるか」がポイントとなります。

 残り50秒でスティーラーズは「スパイクフェイク」プレーからパス。これをワイドレシーバーWRアントニオ・ブラウン選手が見事にキャッチしてタッチダウンTD!

 スティーラーズが30-29と逆転しました。
 乾坤一擲のプレーでしたし、この場面でこのプレーを決める、スティーラーズの執念が感じられました。

 カウボーイズに残された時間は42秒でしたから、試合はスティーラーズに大きく傾いたとおもわれました。
 ところが、ここからカウボーイズの逆転に向けたドライブが始まったのです。

 自陣12~3ヤード付近から開始されたドライブでしたが、カウボーイズ攻撃陣は着実に前進を重ね、敵陣に入りました。フィールドゴールFGでも逆転できる点差ですから、とにかく前進することが大事なのです。

 そして残り23秒。スティーラーズは大きな反則を犯してしまいました。
 「フェイスマスク」を掴む反則でした。15ヤードの罰退。
 これでカウボーイズは、スティーラーズ陣20ヤード以内に進出しました。

 試合時間残り9秒、カウボーイズのQBプレスコット選手からランニングバックRBエリオット選手にボールが渡され、エリオット選手が真っ直ぐ走りラインを突破して走り込みました。逆転TDでした。

 35-30とカウボーイズが再び逆転したのです。

 伝統的に「強力なディフェンス」を誇るスティーラーズですが、このプレーではエリオット選手のランを許してしまいました。ディフェンスエンドのプレーヤーがQBに向かってラッシュをかけてしまい、ラインの裏側が手薄というか、プレーヤーが残っていなかったのです。

 近時「かつての『スティールカーテン』と称された強力ディフェンスが観られなくなった」と言われるスティーラーズを象徴するプレーであったという見方もありそうです。

③ 「スパイクフェイク」プレー

 試合残り時間が1分を切ってきたような状況における攻撃では、プレー後「時計を止めること」がとても重要です。プレーが終了しても時計が動き続けることが多いランプレーなどでは、あっという間に試合時間が無くなってしまうからです。

 こうした状況下で時計を止める方法には、パスプレーでキャッチの後、レシーブしたプレーヤーがサイドラインから出て「ボールデッド」と認定されること、タイムアウトを取ること、パス失敗、スパイクプレーといった方法があります。(反則行為でも止まりますが、得点を取るためのプレーには含めないこととします)

 この試合の残り1分を切った時点で、スティーラーズはタイムアウトを残していましたが、「虎の子」のタイムアウトを使うことなく、そしてボールを自軍のものに確保した状態で時計を止める方法として、「スパイクプレー」を選択すると思われました。

 フィールドにも「スパイク」という声が何度も聞こえましたから、スティーラーズのクオーターバックQBロスリスバーガー選手は、次のプレーでスパイクするものと思われたのです。

 そして、センタープレーヤーCからQBにボールが渡り、ロスリスバーガー選手がボールを地面に叩きつける仕草を見せましたが、ボールはフィールドに跳ねることはありませんでした。ロスリスバーガー選手はボールを投げ捨てなかったのです。

 そして右サイドを走るWRブラウン選手に「ふわり」としたパスを投じました。
 フィールド上の殆どの選手が「スパイク」と予想していたので、大半の選手はこのトリックプレーに反応できませんでしたが、カウボーイズのコーナーバックCBはこのパスに気づき、WRブラウン選手を追いかけましたが、ブラウン選手はこの追撃を制してパスをキャッチしました。
 こうしたトリックプレーであり、相手の意表を突いたものでしたが、そのQBのパスの精度、WRのキャッチ能力とも、大変レベルの高いプレーであったと思います。さすがは、QBベン・ロスリスバーガー選手→WRアントニオ・ブラウン選手のポットラインです。

 それにしても、「スパイクプレーのフェイク」というのは、大変珍しいプレーでしょう。

④ 2ポイントコンバージョン、両チーム合わせて6回失敗

 TDの後、ゴールキックを決めると1点が加算されます。TD6点+ゴール1点=7点が、一般的なTDによる得点となるのです。
 しかし、もう1点得点を増やしたい時には、ゴールキックの代わりに「2ポイントコンバージョン」にトライすることがあります。

 例えば、TDで逆転し、相手チームとの差が「1点」(例えば30-29)となった時に、ゴールキックGKを決めてもその差は2点になるだけですから、相手チームにFGで3点を挙げられると再逆転されてしまいます。従って、TDで逆転したチームは、その差を3点にするために、2ポイントコンバージョンに挑むことがあるのです。

 NFLにおいては、TD6点、TD+GK=7点、FG3点というのが、相手との差を測る時の基準になります。(セイフティで2点を取ることが出来ますが、セイフティプレーは滅多に観られないプレーです)
 従って、相手との差は、3点以上、7点以上を目安に、ゲームを進めることが多いのです。
 残り時間が少なくなった状況で、1点差と2点差、5点差と6点差には「有意な違い」は有りませんから、GKを決めても2点差や6点差にしかならない局面では、2ポイントコンバージョンを狙うことがあるのです。

 こうした点差を意識した上で狙って行く2ポイントコンバージョンプレーですが、当然ながら「成功の確率はGKより格段に低い」ので、トライには勇気が要ります。通常なら1試合に1度見られるかどうか、のプレーでしょう。

 ところが、このゲームでは6度も観られたのです。
 第1Q、スティーラーズがTD後にいきなり2ポイントコンバージョンにトライした時には驚きました。「何故、1Qから?」と多くの人が考えたことでしょう。
 おそらく、スティーラーズのスタッフは「このゲームは大接戦となるから、最初から1点でも多く取っておいた方が良い」と考えたのでしょうし、今季このゲームの前まで2度トライして2度成功していたこと、つまりこのトリックプレーに自信を持っていたことも、こうしたプレー選択の理由だったのでしょう。

 しかし、その最初のトライ失敗を皮切りに、スティーラーズはこのゲームで、2ポイントコンバージョンを4度プレーし4度失敗しました。

 一方のカウボーイズも2度トライして2度失敗しました。
 試合終了間際のTDで35-30と逆転した時も、「GKの1点を加えた6点差には有意な意味が無い=TD6点+GK1点の7点で逆転されてしまう」ということから、2ポイントコンバージョンを狙って行ったのです。
 「残り時間9秒」でもスティーラーズの乾坤一擲のプレー、ヘイルメアリーパスのようなプレーが万万が一決まる可能性を考慮し、「より負け難い点差を目指す」ところに、NFLの試合に勝つことの難しさ、両チーム・各プレーヤーの「勝利への執念」が存分に感じられます。

 この激戦を制したカウボーイズは、今季成績を8勝1敗としました。初戦を落とした後の「8連勝」で、NFC東地区の首位を快走しています。
 NFL屈指の強豪チームであるカウボーイズにとっても、「8連勝は1977年以来40年振り」ということですから、今季のカウボーイズの勢いは素晴らしいものです。

 特に、QBダック・プレスコット選手、RBエゼキセル・エリオット選手、WRジェイソン・ウィッテン選手やデス・ブライアント選手らを擁する攻撃陣は、とても充実しています。
 1995年以来22年振りのスーパーボウル制覇に向けて、快進撃を続けていただきたいと思います。

 一方のスティーラーズは、4勝5敗と負けが先行してしまいました。今季は4勝1敗と好スタートを切ったのですが、4連敗となってしまいました。
 とはいえ、今季のAFC北地区は全体として成績が悪く、首位のボルチモア・レイブンズも5勝4敗ですので、まだまだ地区優勝の可能性が十分にあります。
 今後の反攻に期待したいと思います。

 「スティーラーズVSカウボーイズ」は、NFLの看板カードのひとつです。

 これまでも、そしてこれからも、素晴らしいドラマを提供してくれるのです。
[11月7日・第9週]
オークランド・レイダーズ30-20デンバー・ブロンコス

 第8週を終えて6勝2敗で並んでいたチーム同士の対戦となりましたが、レイダーズがゲームを支配し、終始リードして勝ち切りました。

 「強力な守備陣」を誇るブロンコスから30点を奪った攻撃陣の踏ん張りが目立つ試合であったと思います。

 3年目のクオーターバックQBデレック・カー選手は、順調に成長していると感じます。
 特に、パスの「球質」が良い。「レシーバーが取り易い」パスが多いように見えます。もの凄く速く、壁をも打ち抜くような強烈なパスでは無いのですが、回転が安定していて、「暴れ」が少ないと思います。ターンボールも少ないのではないでしょうか。

 レシーバー陣も充実して来ました。
 アマリ・クーパー選手、セス・ロバーツ選手、マイケル・クラブツリー選手、アンドレ・ホームズ選手、とメンバーが揃ったのです。特に、2014年までサンフランシスコ49ersの主力ワイドレシーバーWRとして活躍してきたクラブツリー選手が2015年からレイダーズに加わり、安定した活躍を魅せています。身長185cmと決して大きなプレーヤーではありませんが、抜群の身体能力をベースとした素晴らしいプレーの数々は、レイダーズのWR陣を牽引する存在でしょう。

 ランニングバックRBも育ってきました。
 ラタビアス・マレー選手は、このゲームで20度のキャリーで114ヤードを走り、3タッチダウンTDを挙げました。
 2013年ドラフト6順目でレイダーズが指名したマレー選手ですが、順調に成長し、エースRBとなったのです。「生え抜き」というところが、一段と素晴らしい。

 ジェイレン・リチャード選手、ディアンドレ・ワシントン選手と共に組み上げられているRB陣も強力になってきました。

 第9週を終えて、7勝2敗でAFC西地区のトップに立ったレイダーズですが、今季の得失点を見ると、得点245に対して失点223となっています。失点が多いのです。
 今後、ポストシーズン進出を目指す上では、守備陣の頑張りが不可欠なのですが、このゲームでは特にランディフェンスで良いプレーが目立ちました。守備の強化への取組が、見乗って来ているのかもしれません。

 私は1970年代からレイダーズの大ファンですが、2016年の今日に至っても、「装束」「雰囲気」の変化が小さいところも気に入っています。
 黒とシルバーの配色、侵略者?のマークも昔のままです。

 このゲームの対戦相手だったブロンコスや、ニューイングランド・ペイトリオッツのように、当時と比較して「マークを変えた」チームもありますし、ヒューストン・オイラーズの様に「チーム名を変えた」チームもありますが、「レイダーズの姿」は殆ど変わりなく受け継がれているように見えます。

 当然ながら、ユニフォームの素材や染色技術の進歩、ヘルメットの素材や形状、染色技術の進化等々を考慮すれば、時代と共に「姿」「雰囲気」が変化して行くのは、自然なことであり、何の問題も無いことなのでしょうが、そうした進化・進歩を前にしても、従前の様子を維持しようとする「努力」が存在してきたのであろうと感じます。

 レイダーズは、スーパーボール制覇3回を誇る名門チームです。

 全米における人気という意味でも、ダラス・カウボーイズやピッツバーグ・スティーラーズと並ぶ存在だと言われています。

 そのレイダーズの久しぶりの快進撃は、ファンにとって、とても嬉しいことなのです。
 NFL2016~17レギュラーシーズン第8週の、ワシントン・レッドスキンズとシンシナティ・ベンガルズのゲームは、イギリス・ロンドンのウェンブリースタジアムで開催されました。

 ウェンブリーは、ご承知の通り「サッカーの聖地」です。
 サッカー発祥の国イギリスにおける「聖地」なのですから、世界中のサッカーファンにとって、特別なスタジアムなのです。

 そのサッカーの聖地を会場として、アメリカンフットボールの最高峰・NFLの公式戦が行われるのですから、とても興味深いことなのです。

 当然ながらNFLサイドとしては、「NFLを世界に広げていく」施策のひとつとして、イギリス・ロンドンでの公式戦実施を考えているのでしょうが、同じやるならウェンブリーで、というところがとても洒落ています。

① 「芝」は大丈夫か?

 元サッカー選手だった友人は、「芝のグラウンドでラグビーをやられると、芝が痛んで困る。サッカー場ではラグビーはやらないでほしい」と常々言っています。
 お正月のスポーツにおいて、かつての国立競技場では、元旦にサッカー天皇杯決勝をやり、2日にラグビー大学選手権準決勝2試合を行っていたのも、こうした理由があったのではないかと思います。

 ラグビーでは、スクラムやモール、ラックで、双方のプレーヤーが押し合うプレーが頻発します。押し合う以上は、地面・芝をグイグイと足で押すことになるのは自然なことですから、芝が痛むのです。
 サッカーでは、双方のプレーヤーが押し合うというシーンは多くはありません。

 アメリカンフットボールにおいても同様で、1プレー毎にスクリメイジラインを挟んで、両チームのラインが衝突しプレーヤーが押し合いますから、芝には相当のダメージとなるでしょう。

 加えて、サッカーのフィールドとアメリカンフットボーのフィールドではサイズ・形が異なります。
 サッカーは縦105m×横68m内外の大きさですが、アメフトは縦110m×横50m内外となっています。アメフトのフィールドの方が細長いのです。
 結果として、「横」が18mほどアメフトの方が短いので、ウェンブリーでNFLのゲームを行うと、「横」の両側9mずつはゲームのフィールドでは無くなります。
 この9m幅の芝の上に、数十人の猛者が立って、出場に向けての準備を行うこととなるのです。
 普段のサッカーの試合であれば「ピッチ」になっている地域を、数十人の猛者が踏み、動き回ることは、サッカーでは有り得ないことですから、このエリアの「芝」も大きな影響を受けそうです。

 一方でウェンブリーは「サッカーの聖地」ですから、その競技場の「芝」へのイギリス・イングランドの皆さんのこだわりは相当高いものでしょう。当然ながら「ウェンブリーの芝は世界一」という自負も強いと思われます。

 こうした状況下で、イングランドサッカー界がNFLのゲーム開催を許可したというのは、大英断なのかもしれません。

 また、レッドスキンズとベンガルズの試合の中では、プレーヤーが芝に脚を取られるシーンが時々起りました。アメフトのフィールドと比較して、ウェンブリーの芝の方が深いことが原因なのでしょう。

② 観客席の様子

 90000人収容のウェンブリーに、この日は85000人近くの観客が詰めかけました。ほぼ満員と言って良いでしょう。

 サッカーの試合でも、なかなか入らない大観衆が詰めかけたのですから、NFLゲームは成功ということになります。

 この観客の様子が、また、興味深いものでした。

 レッドスキンズやベンガルズのユニフォームを身に付けている観客も多いのですが、もっと多かったのは「贔屓のNFLのチーム・プレーヤーのユニフォーム」を身に付けている人々でした。

 トム・ブレイディやアーロン・ロジャースのユニフォームを着ている人や、マイアミ・ドルフィンズやダラス・カウボーイズのユニフォームを身に付けている人など、様々な姿が目に付きました。とても「カラフル」な観客席となっていたのです。

 そして「クラウドノイズ」が有りませんでした。
 ベンガルズやレッドスキンズの選手達は、いつもよりとても良くクオーターバックQBのコールが聞こえたと思います。

 この日のウェンブリーには、レッドスキンズファンやベンガルズファンというより、「NFLファン」が多く集まっていたことになります。

③ 何故「レッドスキンズ対ベンガルズ」なのか。

 イギリスひいてはヨーロッパにNFLを広めることを目的としたイベント・公式戦ですから、NFLとしては「カード」についても、入念に打ち合わせたうえで決めたことは、想像に難くありません。

 まず、世界最高水準のプレーを観ていただかなくてはなりませんから、好チーム同士の一戦である必要があります。
 とはいえ、スター選手が多く居て、世界的にも有名なチームを送り込むのでは、真の需要拡大には繋がらないかもしれません。ニューイングランド・ペイトリオッツやダラス・カウボーイズ、ピッツバーグ・スティーラーズといった人気チームは回避したいと考えたかもしれません。

 そして、ベンガルズとレッドスキンズが選出されたと見るのは、穿ちすぎでしょうか。

 ベンガルズのQBアンディー・ドルトン選手とレッドスキンズのQBカーク・カズンズ選手は、共に脂の乗った好プレーヤーです。パスプレーも上手。

 加えて、両チームとも攻撃・守備のバランスが良く、最も標準的なNFLの試合を披露出来ると考えたのではないでしょうか。

 そして、このゲームは期待通りの熱戦となりました。

④ A.J.グリーン選手のスーパーキャッチ

 ゲームは逆転に次ぐ逆転の展開となりました。
 
 第3クオーターQを終えて20-17とベンガルズがリードして第4Qに入りました。

 第4Qにレッドスキンズが逆転のタッチダウンTDを決めて24-20とリードして迎えた、試合時間残り7分57秒、ベンガルズのQBドルトン選手からエース・ワイドレシーバーWRグリーン選手にパスが投じられました。

 タイミングの合った素晴らしいロングパスでしたので、レッドスキンズのディフェンスバックノーマン選手は、「このままグリーン選手にパスキャッチを許すと、グリーン選手の走力で一気にTDまで持って行かれてしまう」と考えたのでしょう、グリーン選手のユニフォームを引っ張りました。ユニフォームが大きく伸びる程強く引っ張ったのです。

 明らかにパスインターフェアの反則で、反則を犯した地点まで相手チームの前進を許す反則・重い反則なのですが、その反則を犯してでもTDを阻止するというプレーでした。

 ところが、この反則を受けても、グリーン選手はパスをキャッチしたのです。「さすがはA.J.グリーン」と唸らずにはいられないスーパープレー。
 ウェンブリーに詰めかけた大観衆の目の前で披露した「NFLのプレー」でした。

 この後、ベンガルズはキッチリとTDを決めて、27-24と再び逆転しました。

 ところが、レッドスキンズは残り時間1分7秒でホプキンス選手が40ヤードYのフィールドゴールFGを決めて27-27の同点としたのです。

 ゲームはOT(延長戦)に入りました。

⑤ 27-27の引分け

 NFLのゲームにおいて「引分」は、滅多に無いことです。

 OTに入っても、どちらかのチームがTDやFGで決勝点を挙げて決着が付くことが多いというか、大半なのです。

 ところが、このゲームはOTでも決着が付かず、27-27の引分けとなりました。

 どちらのチームにもチャンスが有りましたが、特にレッドスキンズには惜しいゲームとなりました。

 OT試合時間残り2分10秒で、レッドスキンズは34ヤードのFGのチャンスを迎えました。NFLのキッカーにとっては「100発100中」の距離です。

 ところが、このFGをレッドスキンズのホプキンス選手が左に外してしまったのです。信じられないような光景でした。

 ウェンブリーに居るサッカーの神様が、「今日は引分でいいだろう」と考えたのかもしれません。

 「サッカーの聖地」ウェンブリースタジアムにおけるNFLのゲームは、こうして終了しました。
 とても面白いゲームでした。
 9月9日に開幕したNFL2016~17シーズンは、早くも1/3を終えました。
 各チームが5~6試合を消化したのです。

 各地区の状況を見てみましょう。

[AFC アメリカン・フットボール・カンファレンス]

[東地区]
 ニューイングランド・ペイトリオッツが5勝1敗でトップを走っています。21世紀に入ってから、毎シーズン観られる「強さ」です。

 今季は、エースQBのトム・ブレイディ選手が出場停止となっていましたから、さすがのペイトリオッツも苦しいかと見られていましたが、ブレイディ選手不在の各試合を3勝1敗で乗り切り、ブレイディ選手が出てきてからは連勝という形で、いつものように?「盤石」のシーズンを送っています。

 バッファロー・ビルズが持ち前の攻撃力を武器に4勝2敗で追いかけていますので、この地区はビルズがどこまでペイトリオッツに迫れるかが注目でしょう。

[北地区]
 ピッツバーグ・スティーラーズが4勝2敗で首位、ボルチモア・レイブンズが3勝3敗で続いています。

 この地区は、スティーラーズの攻撃力が抜けていますので、他地区とのバランスはともかくとして、このまま走りそうな気配です。

[南地区]
 ヒューストン・テキサンズが4勝2敗でトップ、テネシー・タイタンズが3勝3敗で続いています。

 ここまでテキサンズは、108得点・127失点という成績ですが勝ち越しています。接戦をものにして、大敗(例えばペイトリオッツ戦は0-27)するというパターンなのです。やや不思議な戦い方を続けている形です。

 この地区は混戦でしょう。3番手のジャクソンビル・ジャガーズ、4番手のインディアナポリス・コルツにも、まだまだ地区優勝のチャンスがあると思います。

[西地区]
 オークランド・レイダーズとデンバー・ブロンコスが4勝2敗で首位を争い、カンザスシティ・チーフスが3勝2敗で続いています。

 ブロンコスは、QBペイトン・マニングの抜けた穴を、2年目QBトレバー・シーミアンが良くカバーしていますが、やはりタッチダウン・パスの減少は止むを得ないところで、現状はボン・ミラー選手を始めとする「強力ディフェンス」の力で競り勝っている印象です。
 この守備力で、どこまで戦っていけるかは注目でしょう。

 一方、レイダーズは好調なスタートを切りました。QBデレク・カーの本格化という見方もありますが、まだまだ不安定な戦い振り(このチームも得点より失点が多い)が観られますので、こちらもその爆発力をベースにどこまで走れるかといったところでしょう。

 この地区は、チーフスを含めた3チームによる競り合いがしばらく続くと思います。

[NFC ナショナル・フットボール・カンファレンス]

[東地区]
 ダラス・カウボーイズ5勝1敗でトップを走り、ワシントン・レッドスキンズが4勝2敗で続いています。
 カウボーイズは攻守のバランスに優れ、好調なシーズンを戦っているという印象です。

 一方で、シーズン前には優勝候補とも目されていたフィラデルフィア・イーグルスと、イーライ・マニング選手が率いるニューヨーク・ジャイアンツが共に3勝3敗と苦しい戦いを続けて居ます。両チームの反攻が見ものでしょう。

[北地区]
 ミネソタ・バイキングス5勝0敗と、今季NFL唯一の「無敗」を続けています。
 バイキングスの守備陣は強力で、5試合で63失点しかしていません。この守備陣の頑張りがどこまで続くかが注目されるところです。

 グリーンベイ・パッカーズが3勝2敗で追いかけていますが、自慢のパス攻撃の威力がいつ戻って来るかというところでしょうか。

[南地区]
 アトランタ・ファルコンズが4勝2敗で首位、タンパベイ・バッカニアーズとニューオーリンズ・セインツが2勝3敗で続いています。

 ファルコンズはここまで199得点と攻撃陣が機能しています。QBマット・ライアン選手の持ち味が発揮されているのです。

 一方で、昨季のスーパーボールを争ったカロライナ・パンサーズが、1勝5敗と大不振。地区最下位に沈んでいます。
 開幕戦のブロンコス戦を20-21で落としたのが、まだ響いている印象ですし、守備陣が大量失点するゲームも目立ちます。QBキャム・ニュートン選手を中心とした攻撃も、相手チームによく研究されているようです。建て直しには少し時間がかかるかもしれません。

[西地区]
 シアトル・シーホークス4勝1敗でトップに立ち、ロサンゼルス・ラムズとアリゾナ・カーディナルスが3勝3敗で続いています。

 シーホークスの強力守備陣が相変わらず健在ですから、この地区はシーホークスの優位が続くのではないでしょうか。

 以上、第6周を終えたNFL2016~17シーズンをざっと見てきました。

 バイキングスの無敗の快走やファルコンズの強力攻撃陣、カウボーイズの好調なプレー振りやペイトリオッツのトム・ブレイディ選手復活と見所満載のシーズンとなっています。
 私個人としては、レイダーズがこのまま勝ち星を積み上げて行っていただきたいと願っています。
 2016年冬春のNFL契約更改が進んでいますが、今季はキッカーやパンターといったスペシャルチームのプレーヤーの話題が目立っていると感じます。

 まずは、グリーンベイ・パッカーズのキッカーK、メイソン・クロスビー選手。
 パッカーズとの間で、4年1,610万ドル(約17億7000万円)で契約を延長したと報じられました。

 31歳のクロスビー選手は、2007年にパッカーズにドラフトされて以来9年間、パッカーズ一筋のKです。
 2015~16年シーズンでは、距離が伸びたポイント・アフタータッチダウンのキックを36回中36回成功させるなどの大活躍を魅せました。
 パッカーズとしても「得難い存在」と認定した形でしょう。

 続いては、オークランド・レイダースのパンターP、マーケット・キング選手です。
 5年1,650万ドル(約18億1000万円)の契約が結ばれたと報じられています。保証額も1,075万ドル(約11億8000万円)とリーグトップクラスの金額となっています。

 もともとレイダースには名Pが多く、古くはあの美しいフォームで一世を風靡したレイ・ガイ選手が居ましたし、近時でもシェーン・レクラー選手が素晴らしいパントを披露してくれていましたが、キング選手はレクラー選手の後継者として2013年からレイダースのPに定着し、2015~16年シーズンもパント83回・3,697ヤードという安定したプレーを魅せています。
 まだ27歳のキング選手の今後の活躍がとても楽しみです。

 こうしたKやPが、「長期契約」をものにしたというニュースに接すると、とても嬉しくなります。

 常に花形として活躍するオフェンスプレーヤーやディフェンスプレーヤーとは異なり、ゲーム中に数回しかフィールドに登場しませんが、そのプレー内容はいつも勝敗の帰趨を左右するKやPは、ゲームマネジメントの中核となっているのです。

 地味ながらも、常にチームを支えているプレーヤー達でしょう。

 そうしたプレーヤー達にスポットライトが当たることは、とても良いことだと思います。
 稀代の名クオーターバックQBペイトン・マニング選手が引退を表明したデンバー・ブロンコスですが、後継者として有力視されていたブロック・オスウィーラー選手がヒューストン・テキサンズと契約したと報じられました。
 意外なニュースでした。

 2015~16年シーズンにおいて、ペイトン・マニング選手が故障で戦列を離れていた時、攻撃の司令塔としてチームを牽引したのはオスウィーラー選手でした。
 そして、チームのピンチを救い、ブロンコスはカンファレンス1位の成績でレギュラーシーズンを終えたのですから、オスウィーラー選手の貢献も大きなものだったのです。

 デンバーも、ペイトン・マニング選手の後継プレーヤーとしてオスウィーラー選手を第1に考えていたことは間違いないところで、来季に向けての契約更改において、ペイトン・マニング選手の去就がはっきりしていない段階の3月上旬に、「3年最大4,500万ドル(約50億円)」を呈示したと報じられたのです。

 しかし、ヒューストンはビッグディールを狙っていました。

 オスウィーラー選手に対して「4年7,200万ドル(約79億円)以上」を呈示したのです。
 そして、契約が成立。

 優秀なQB獲得が至上課題であったテキサンズが、ビッグディールを成功させました。

 契約更改に際して、様々なことが起こり驚かされることも珍しくないNFLですが、このタイプのディールは滅多に無いと感じます。
 
 オスウィーラー選手に対する「保証額」の金額(報じられませんでした)も含めて、デンバー・ブロンコスとしては少し油断が有ったのかもしれません。

 その後、デンバーは「即戦力」となるQBとして、フィラデルフィア・イーグルスからトレードでマーク・サンチェス選手(29歳)を獲得し、ニューヨーク・ジェッツからFAとなっていたライアン・フィッツパトリック選手(33歳)にも興味を示していると伝えられています。

 どちらも良いQBですが、NFLの第一QBとしての存在感が十分とは言えませんので、デンバーの「正QB探し」の今後の展開が注目されます。
 スーパーボウル2016も終わり、NFLは来季に向けて各チームがチーム編成を見直す時期に入りました。
 連日のように、契約更改や解雇の話が流れてきます。

 3月8日には、インディアナポリス・コルツが、43歳のキッカーK、アダム・ビナティエリ選手と新たな契約を結んだと報じられました。
 2年・600万ドル(約6億3千万円)の契約と伝えられています。

 ビナティエリ選手といえば、1996年~2005年のニューイングランド・ペイトリオッツ時代に3度、2006年以降のコルツ時代に1度、「計4度のスーパーボウル制覇」に輝くキッカーなのです。

 おそらく、キッカーとして4つのスーパーボウル・リングを持っているのはビナティエリ選手だけでしょうし、全てのポジションのプレーヤーを通じても、5個以上のリングを保持しているプレーヤーは、ほとんど居ないでしょう。

 ビナティエリ選手は、テリー・ブラッドショー選手、ジョー・モンタナ選手、トム・ブレイディ選手といったNFL史上に輝く名プレーヤー(3人ともクオーターバックQB)と並んで、4度のスーパーボウル制覇を成し遂げているのです。

 その正確無比なキックは高く評価され、どんな局面でも冷静極まりないという意味で「アイスマン」と呼ばれていました。
特にペイトリオッツ時代には、ベリチックヘッドコーチとQBブレイディ選手が創り上げたゲームを仕上げるのが、ビナティエリ選手という感じでした。
 チームがビナティエリ選手のフィールドゴールFGで大事なゲームを制したことが、何度あったことでしょうか。その「勝負強さ」はNFL史上屈指でしょう。

 当然ながら、NFL史上NO.1の記録も保持しています。
 ポストシーズン通算FG成功45、ポストシーズン通算得点177、ポストシーズン連続試合得点24といった記録は、容易なことでは更新されない大記録ばかりであり、いずれも「ポストシーズン記録」であることが特徴です。
 ビナティエリ選手は「絶対に負けられない試合」で力を発揮するタイプなのでしょう。

 そのビナティエリ選手も40歳を超えましたから、そろそろ衰えが観られるかと言われているのですが、NFL20年目だった2015~16年シーズンにおいても、FG27本中25本成功、過去2シーズンでもFG58本中55本成功、特筆すべきは50ヤード以上のFGを8本中7本成功しているのです。
 年令を重ねでも「飛距離に衰えが無い」というのは、素晴らしいことだと感じます。

 もちろん、これほどのキッカーですから、コルツもこの年齢で「複数年契約」を結んだのでしょう。

 競り合いのゲームとなり、フィールドにビナティエリ選手が登場すると、ゲームの盛り上がりはピークとなります。そういうシーンで登場するのです。
 そして、ビナティエリはそのキックをしっかりと決めます。

 アダム・ビナティエリ選手は21年目のシーズンに、どんなキックを魅せてくれるのでしょうか。
 「身長178cm・体重82kg」という体格は、NFLのワイドレシーバーWRとしては決して大きい方ではありません。それどころか、身長190cm以上のディフェンダーが並ぶNFLにおいては「小柄なパスレシーバー」と言って良いでしょう。

 ピッツバーグ・スティーラーズのWRアントニオ・ブラウン選手は、その小柄な体格で、NFL屈指の成績を叩き出しているのです。

[過去3シーズンの成績]
・2013年 110キャッチ 1,499ヤードゲイン(NFL全体2位)
・2014年 129キャッチ 1,698ヤードゲイン(同1位)
・2015年 136キャッチ 1,834ヤードゲイン(同2位)

 これは素晴らしい数字です。

 特に「3シーズンで375キャッチ」というのは「NFL史上NO.1」です。
 これまで数々の名WRが登場してきたNFLにおいて、トップの記録を保持しているのです。

 アントニオ・ブラウン選手の強みは、「俊敏性」「ランニングスピード」「ランコース取りの上手さ」ということになるのでしょう。
 特に、身長ではるかに上回る相手ディフェンダーを振り切るランスピードとコース取りは、ブラウン選手特有のものであり、NFL史上最高レベルのスキルであることは間違いないところです。

 「捕った」「交わした」「走った」・・・と、ブラウン選手のプレーは、観ていてもとても楽しいものです。
 まさに「アスリート」を感じさせるプレーヤーなのです。

 NFL6年目、27歳のアントニオ・ブラウン選手は、スティーラーズを、そしてNFLを代表するWRに成長しました。
 来シーズンの活躍もとても楽しみです。
 例年のことながら、スーパーボウルのLIVE中継を日本のNHK放送で観ていると、現地アメリカでは「CMタイム」であろうと思われる「間」が存在します。

 得点シーンの後や、オフェンスとディフェンスの交替時などに、1分間、あるいは2~3分の間が空くのです。

 アメリカの友人宅で、テレビでスーパーボウルを観戦した時には、そのCMを全て観ることになりました。その多さに驚きました。
 そして、コマーシャルが終った瞬間に、クオーターバックがコールしている姿が画面に映し出されたりするのです。コマーシャルが続いているからといって「油断?」はできません。

 視聴率が40%を優に超え、世界中で1億6千万人以上の人々がLIVEで観戦すると言われるスーパーボウルが、商品などの宣伝に極めて有効であることは間違いありませんし、そのCMからの巨額の収入がNFLにとっても重要なのですから、こうした運用も止むを得ないのでしょう。

 とはいえ、スーパーボウル2016における「CMの間」は、従前以上に長かった様にも感じました。

 例えば、キックオフリターンプレー後にも1分位の間が有りました。
 確かに、キックオフ用の攻守のスペシャルチームから、通常のオフェンス・ディフェンスのチームに交替が行われるのですから、多少の時間はかかりますが、普段のゲームであれば10秒もかかりませんので、プレーヤーにとってはリズムが狂いそうです。

 アメリカの放送でCMが流れている時間帯のフィールド上のシーン、つまりアメリカのテレビでは観ることが出来ないシーンが、日本のNHK・BS-1の中継では映し出されます。
 このゲームで印象的だったのは、パンサーズのクオーターバックQBキャム・ニュートン選手のハドルシーンでした。ニュートン選手が地面近くにしゃがみ込み、チームメイトに次の攻撃内容を説明・指示しているのでしょうが、そのシーンが延々と続きます。

 普段のハドルなら数秒で終わる所を、1分近くかけて行っているのです。

 ゲーム前の打合せにより、十分に記憶・認識しているプレー内容ですから、プレーヤー達は瞬時に理解できる筈ですから、この長い間は、結構堪えるのではないでしょうか。

 スーパーボウル2016は、24-10というロースコアゲームでした。得点シーンが少なかったのです。
 「流さなければならないCM本数」は決まっているのでしょうから、得点シーンが少ないゲームでは「あらゆる機会を捕えてCMを挿入」しなければならなくなります。

 このために、スーパーボウル2016は「一層、CMによる間」が長く感じられたのかもしれません。

 メディア大国アメリカにおいては、試合前、ハーフタイム、試合後といった、広告効果が減るであろう時間帯にCMを集中するといった運用は難しいというか、広告主側からすれば「許されない」ことなのかもしれません。
 今後も、「アメリカ合衆国最大の広告媒体であるスーパーボウル」における「CM挿入技術」は、益々向上?していくのでしょう。

 逆に、この「間」に慣れて、本来のプレーを展開して行く能力・ノウハウを身に付けることが、スーパーボウルを制覇するための条件のひとつなのかもしれません。
 スーパーボウル2015はクオーターバックQBトム・ブレイディ選手が率いるニューイングランド・ペイトリオッツが制しました。
 スーパーボウル2016はQBペイトン・マニング選手のデンバー・ブロンコスが優勝しました。

 2015年のペイトリオッツの対戦相手はシアトル・シーホークス、QBラッセル・ウィルソン選手が攻撃陣の中心でした。
 2016年のブロンコスの相手はカロライナ・パンサーズ、QBはキャム・ニュートン選手でした。

 この第49回と50回のスーパーボウルは、新旧のNFLを代表するQBが激突したゲームであり、共に「ベテランQB」が勝利したのです。

 ラッセル・ウィルソン選手とキャム・ニュートン選手は、2人共「モバイルQB」として知られる「走れるQB」なのです。ランニングバックRB顔負けの走力を誇り、NFLの守備ラインプレーヤーやラインバッカーLBでもなかなか捕まえることが出来ません。
 シーホークスやパンサーズの攻撃プレーの強力な切り札となっているのです。

 一方、トム・ブレイディ選手やペイトン・マニング選手は、伝統的なQBタイプです。
 ブレイディ選手は時折自らのランや突進を展開することがありますが、これとて「ここぞ」という局面に限定されていますし、「デザイン」されたプレーとしては、ゴール前インチズのプレー位でしょう。その多くは「緊急発進」であろうと思います。

 ペイトン・マニング選手に至っては、ランプレーは滅多に観られません。
 抜群のパス能力を前提として、ゲームの流れを読みながら、攻撃陣全体をコントロールし、ランニングバックRBやワイドレシーバーWR、タイトエンドTEを自在に使い分け、その能力を最大限引き出すプレーを得意としているのです。

 そして、ペイトン・マニングとトム・ブレイディは、2度のスーパーボウルで、次代のNFLを支えて行くであろうキャム・ニュートンとラッセル・ウィルソンの「前に立ちはだかり」ました。
 「壁」となったのです。

 世代交代に抗ったというよりも、若手トッププレーヤーに「お手本を示した」ゲームであったと感じます。

 ラッセル・ウィルソン選手とキャム・ニュートン選手は、「2人の偉大なQB」を乗り越えて行かなくてはならないのです。
 スーパーボウル2016で優勝したデンバー・ブロンコスのクオーターバックQBペイトン・マニング選手は、インディアナポリス・コルツ時代の優勝と合わせて、2度目のスーパーボウル制覇となりました。

 その圧倒的なパフォーマンスから、NFL史上最高のQBのひとりと呼ばれているペイトン・マニング選手ですが、今回の優勝はマニング選手の力より、チームの守備力によるものという評価が多いようです。

 確かに、このゲームの数字、23回パスを投げて14回成功し141ヤードゲイン、タッチダウンTDパスは無く、被インターセプト1回という成績は、決して良いとは言えないものでしょう。パスゲイン141ヤードは、勝ったチームの数字では無いという見方もあります。

 そして、プレーの様子も全盛時とはかけ離れたもの、という評も眼にします。パスのスピード・勢いは、相手チームのQBキャム・ニュートン選手と比較すると、明らかに劣るものでした。
 39歳のペイトン・マニング選手の「肩の力」や「動体視力」「俊敏性」に衰えが感じられることは、間違いないことなのかもしれません。

 一方で、そうした状況下、「デンバーは24得点」を挙げているのです。

 スーパーボウル2016は、現在のNFL1・2を争う、両チームのディフェンスDF陣が話題となりました。共に強力な守備を誇るチーム同士が激突したのです。こうしたDFを相手にしては、40点を超えるような大量得点は難しいと見られていました。
 そこに、QBマニング選手の衰えが加味されて、パンサーズ優勢という予想が多かったのでしょう。

 しかし、24点を挙げて勝ち切ったのはデンバーでした。

 デンバーは、第1クオーターQ、第2Q、第3Qにそれぞれ一本ずつのフィールドゴールFGを挙げています。
 望むべくはTD獲得だったのでしょうが、TDは取れなくともFGで着実に加点し、キッチリと時間を消化したというのは、まさに「ペイトン・マニングのゲームマネジメント」であったと思います。

 眼の覚めるようなプレーは少ないが、しっかりと前進を続け、得点して帰って来るというのは、こうした強力DFを相手にしたQBに課せられる使命なのでしょう。
 そして、ペイトン・マニング選手はこの役割期待に見事に応えました。

 「さすがはペイトン・マニング」と、ゲームを終えて改めて感じます。

 そして何より、フィールドに立つペイトン・マニング選手の映像がテレビに映し出される時の「存在感」は圧倒的でした。NFL最高のQBとして積み上げてきた歴史を全身に纏っていたのです。

 「The QB」。凛とした美しい姿でした。
 スーパーボウル2016におけるデンバー・ブロンコスの守備は、NFL史上に残る素晴らしいものでした。

 ランニングバックによるラン攻撃、パス攻撃に加えて、クオーターバックQBキャム・ニュートン選手の強力なラン攻撃という、多彩なオフェンスOFを誇るカロライナ・パンサーズを、ゲームを通じて抑え込んだのです。

 今季のデンバーディフェンスDFは、レギュラーシーズンでもリーグ屈指の防御力を示しましたので、このゲームは「カロライナの攻撃対デンバーの守備」という構図が予想され、カロライナの攻撃力が勝るのではないか、と言われていました。

 近時のNFLのゲーム内容を見ても、いかに強いDFでも、自在の攻めの前にはある程度の失点は覚悟しなくてはならないことが多いので、パンサーズ有利という見方が多かったのです。

 ところが、ゲームが始まってみると、デンバー守備陣はQBニュートン選手を概ね抑え込みました。

 もちろん、カロライナの攻撃ラインも強いのです。その強いラインを相手に、デンバーの守備ラインやラインバッカーLB、コーナーバックCBやフリーセイフティFS、ストロングセイフティSSのプレーヤー達は、闘志溢れるプレーで自らの役割を忠実に果たしました。

 例えば、QBニュートン選手がポケットの中でパスを投げる為に与えられている時間が、通常のゲームであれば4秒くらいあったものが、このゲームでは3秒を切っていたといった印象でした。
 カロライナの攻撃ラインを押し、後退させ、押し退けてQBに迫って行く、デンバーの守備プレーヤーのスピードとパワーは凄まじいものだったのです。

 QBニュートン選手がポケットの中でパスレシーバーを探している時、いつもなら4秒位の時間があるものが、このゲームでは2.5秒だとすると、サックされてしまったり、ポケットの外に追い出されてしまう確率が、格段に上がります。

 何度もこうした圧力を受け続けると、QBは自らのタイミングで余裕を持ったプレーができなくなり、パスの投げ急ぎやパスコントロールミスに繋がってしまうのでしょう。

 テレビ画面に、「あっという間に小さくなるカロライナのポケット」の様子や、瞬時にDFプレーヤーを振り切りQBニュートン選手に迫るデンバーのLB陣の様子が続けて映し出されました。
 NFL最強の攻撃陣、機動力十分なQBを相手にした、驚くべきシーンの連続であったと思います。

 そして、見逃してはならないのは「ディフェンスのプレーコール」でしょう。

 このゲームにおけるデンバー守備陣のプレーコールは、良く的中していました。
 デンバーのディフェンス・コーディネーター(守備コーチ)ウェイド・フィリップスの選択が、見事だったのです。

 当然のことながら、守備側のプレーコールは攻撃側のプレーコールを予想して行われます。今季のカロライナ攻撃陣のプレーを研究し、この状況ならこうした攻撃を仕掛けてくる可能性が高いと予想して、守備プレーを展開する訳ですが、これがよく決まりました。

 「8割方当たっていた」という感じではないでしょうか。
 こうしたビッグゲームでは驚異的だと思います。

 カンファレンス・チャンピオンシップゲームにおける、ニューイングランド・ペイトリオッツ戦、QBトム・ブレイディ選手を相手にしての見事な守備と言い、今季のプレーオフにおけるデンバー・ブロンコス守備陣のパフォーマンスは、NFL史上に輝くものであったと思います。
[2月8日・第50回スーパーボウル・リーバイススタジアム]
デンバー・ブロンコス24-10カロライナ・パンサーズ

 ゲーム前、その圧倒的な攻撃力から優勢が伝えられたパンサーズでしたが、ブロンコス守備陣の健闘の前に敗れ去りました。

 「走れるクオーターバックQB」としてのキャム・ニュートン選手も、その力を十分に発揮することが出来ませんでした。

 もともとリーグNO.1の守備陣とは言われていましたが、鋭いパスに加えて、強力な自らのランを併用するQBキャム・ニュートン選手を中心とする攻撃を、ブロンコス守備陣がゲームを通じて抑え込むのは、至難の業と見られていました。

 ところが、試合開始早々から、ボン・ミラー選手とデマーカス・ウェア選手の2人のアウトサイド・ラインバッカーOLBを中心としたデンバー守備陣が、ニュートン選手に圧力をかけ続けました。
 特に、外側から襲い掛かるスピードとパワーは凄まじく、QBキャム・ニュートン選手は「7度のサック」を受けたのです。

 そして、デンバー守備陣は「ニュートン選手が走るコース」も巧みに消していたように感じました。ゲーム前の入念な準備が実ったのでしょう。

 さすがのニュートン選手も、この圧力を前にいつものパフォーマンスを魅せることは出来ませんでした。
 多くのファンが期待していた「キャム・ニュートン劇場」は、今回は観られなかったのです。

 試合後のインタビューに姿を見せなかったと伝えられています。
 思ったようなプレーが出来なかったことが相当悔しかったのであろうとも考えられますが、ニュートン選手がNFLを代表するQBに成長していくために「何にも替え難い経験」となったことも、事実であろうと思います。
[NFCチャンピオンシップ・1月25日・BOAスタジアム]
カロライナ・パンサーズ49-15アリゾナ・カージナルス

 パンサーズが圧勝し、ナショナル・フットボール・カンファレンスNFCのチャンピオンに輝いたゲームでしたが、特にクオーターバックQBキャム・ニュートン選手の素晴らしいパフォーマンスが印象的でした。
 
 このゲームで、ニュートン選手は19本のパスを成功させて335ヤードを稼ぎ2つのタッチダウンTDを挙げました。
 そして10回のランで47ヤードを稼ぎ、2つのTDを挙げています。

 QBとして2TDパスと2TDランという、「八面六臂の大活躍」でした。

 第2クオーターQのTDランは、相手ゴールライン寸前からの「QBダイブ」でした。
 身長196cm・体重111kgという大きな体を駆使しての迫力満点のダイブは、ニュートン選手の持ち味が発揮されたものでした。
 また、このランは「緊急発進」的なプレーではなく、デザインされたものであったところが、いかにもニュートン選手とパンサーズらしいところでしょう。
 QBキャム・ニュートンのランは、パンサーズの切り札のひとつなのです。

 この日のパフォーマンスには自身も満足していたのでしょう、第4Qのニュートン選手は「ノリノリ」でした。スキップを見せたり、タックルされても笑顔であったり、とても気分良くプレーしていました。
 ニュートン選手に「気分良くプレーしてもらう」ことが、パンサーズの攻撃のポイントのひとつなのでしょう。

 「2011年のドラフト全体1位」でパンサーズに入団したニュートン選手は、NFL5年目の26歳。入団から2年間は思ったような活躍が出来ませんでしたが、2013~14年シーズンからはその実力を発揮し、現在ではNFLの若手QBを代表する存在となりました。
 そして、ニュートン選手の成長と共にパンサーズも成績を上げ、今季はスーパーボウル進出を果たしたのです。

 2月8日の第50回スーパーボウルでは、「1998年ドラフト全体1位」のQBペイトン・マニング選手が率いるデンバー・ブロンコスとの戦いが待っています。
 言わずもがなのことですが、ペイトン・マニング選手(39歳)は現在のNFLを代表するベテランQBです。身長196cmとサイズ的にも互角です。
 マニング選手はニュートン選手の様に自ら走るプレーは殆ど有りませんが、巧みなゲームコントロールと正確無比なパス、そしてその「圧倒的な存在感」で16シーズンに渡ってNFLをリードして来ました。

 半世紀を迎える節目のスーパーボウルにおける、「百戦錬磨」のペイトン・マニング選手と「若手NO.1」キャム・ニュートン選手のQB対決は、最大の見所のひとつでしょう。
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Author:カエサルjr
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