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 長い日本選手権大会の歴史において、初めて「五冠」に輝く女子スイマーが登場しました。自由形の50m・100m・200m、バタフライの50m・100mを制した、池江璃花子選手です。
 これはもう「奇跡的な快挙」と言って良いでしょう。
 
 リオデジャネイロ・オリンピックでも伸び盛りの泳ぎを披露してくれた池江選手ですが、さすがに世界の強豪の前では、個人種目でメダルを争うまでの活躍は出来ませんでした。
 それから1年も経たないうちに、高校2年生という若さで、日本選手権「五冠」を達成するのですから、凄いスイマーが現れたものです。

 さすがに、池江選手にとっての最終種目100mバタフライを泳ぎ終えた後のインタビューでは、疲労感が漂っていましたが、これは仕方が無い。
 世界選手権やオリンピックでも、多くの種目に出場する選手は、大会期間中のコンディション調整が重要なのです。池江選手にとっては、これも大切な経験のひとつなのでしょう。

 そして今大会では、個人メドレー種目に「新エース」が登場しました。
 大橋悠依選手です。200mと400mの2種目を制しました。圧勝でした。

 特に、400mの優勝タイム・4分31秒42は、この種目の日本記録を大幅に塗り替えるとともに、リオ・オリンピックの銅メダルに相当するタイムでした。素晴らしい記録です。

 もともと有力選手のひとりであった大橋選手ですが、この半年間の伸び・成長は「驚異的」なものであったということになります。
 大橋選手は200m背泳ぎでも3位に食い込んでいます。
 このパターンは、男子の萩野選手や瀬戸選手の形ですので、大橋選手の今後の成長から目が離せないことになります。

 さらに、日本女子の伝統種目・平泳ぎでも青木玲緒樹選手が大活躍でした。
 100m・200mの両種目を制したのです。共に完勝でした。
 女子平泳ぎ、特に200m平泳ぎは、前畑選手、岩崎選手、金籐選手と続く「オリンピック金メダルの系譜」があります。
 東京オリンピック2020に向けて、楽しみなスイマーが登場したのです。

 池江、大橋、青木の3選手が、日本選手権水泳2017女子を象徴するスイマーであったと思います。

 いずれも「成長途上」にあると感じられます。
 男子と共に女子も、世界で戦う準備が出来つつあるのでしょう。
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 4月13日から16日にかけて、日本ガイシアリーナで開催された第93回日本選手権水泳大会は、各種目で、日本のトップスイマーによる素晴らしいレースが繰り広げられました。

 男子について見れば、この大会を象徴するのは、萩野公介選手、瀬戸大也選手、江原騎士選手、そして小関也朱篤選手の4名でしょう。

 萩野選手は、肘手術後の復帰第一戦というコンディションが整わない中で、200mの自由形と個人メドレー、400m自由形、200m背泳ぎの4種目を制しました。
 どのレースも「考え抜かれたレース内容」であったと感じます。200m・400m自由形では、最後25mの爆発的なスピードが際立ちました。
 このコンディション下での、この成績と言うのは、萩野選手が男子日本競泳界のエースであることを改めて感じさせるものでしょう。

 瀬戸大也選手は、400m個人メドレーで萩野選手を破りました。0.13秒差と言う接戦を制したのです。
 少年時代からのライバルとされている2人ですが、近時はやや萩野選手に押され気味と見られていただけに、この勝利は大きなものでしょう。
 200mのバタフライと個人メドレーでも2位に食い込みました。このスイマーの勝負強さは、男子競泳陣を支える存在と言って良いでしょう。

 江原騎士選手の活躍は、見事の一語。
 今大会、最も印象的な男子選手でした。800m自由形を圧勝し、200m・400m自由形で2位と、「中距離の自由形種目」において安定した力を示したのです。200mと400mにおける萩野選手との競り合いは、今大会のハイライトのひとつです。
 「先行」という積極的なレース運びも、世界と戦う上で大切なものだと思います。これだけ強い自由形スイマーは、得難い存在です。

 小関也朱篤選手は、平泳ぎの3種目を制しました。
 もともと「北島浩介選手の後継者」と目されて久しいスイマーでしたが、今大会では新鋭の渡辺一平選手を2種目で破り、平泳ぎ三冠に輝きました。新鋭の登場に刺激を受けたのか、自己新記録をも更新している小関選手には、頼もしささえ感じます。
 特に、200m平泳ぎでは、150mまでリードする渡辺選手を150~175mで追い抜き、その後の反撃を封じての「自己新記録」優勝という離れ業でした。2分7秒18というタイムも、世界記録に0.51秒に迫る立派なもの。渡辺選手の2分7秒60というのも、オリンピックで優勝を狙える水準でした。決して、山本選手が不振だったわけではないのです。

 それにしても、今大会の男子のレースでは「大接戦」が目立ちました。

 世界記録保持者、オリンピック金メダリスト、という「大勲章」を保持している選手でさえ、「楽なレースはさせてもらえない」のです。
 かつての日本競泳陣であれば、世界トップクラスのスイマーであれば、多少苦戦はしても最後はしっかりと勝ち切るというのが、日本選手権大会であったと思いますが、今大会は「最後まで勝敗が分からないレース」が続きました。

 バタフライ100m・200m種目でも、小堀勇氣選手、坂井聖人選手、幌村尚選手に瀬戸大也選手を交えた大激戦が繰り広げられたのです。オリンピックでマイケル・フェルプス選手を追い詰めた坂井選手でも、ギリギリの戦いを強いられるのですから、世界最高水準の戦いがそこには有りました。

 凄いことだと思います。

各種目に複数の強豪選手が居て、秘術を尽くした競り合いが展開されるのです。
 全米選手権水泳も、こんな様相なのではないかと考えてしまいます。

 男子日本競泳陣は、本当に強くなったのです。
 1月29日の夕刻、嬉しいニュースが飛び込んできました。

 渡辺一平選手が、東京都選手権大会の200m平泳ぎで2分6秒67の世界新記録を樹立したのです。
 世界初の「6秒台」であり、これまでの記録2分7秒01を大幅に塗り替える、素晴らしい記録です。

 映像も入ってきましたが、特にラスト20メートルの泳ぎ、その加速は、観る者を圧倒する迫力でした。

 19歳・身長193㎝という、アメリカの「怪物」マイケル・フェルプス選手と同様のサイズという、我が国のスイマーとしては恵まれた体躯の渡辺選手に、大きな可能性があることが証明された世界記録樹立でしょう。

 それにしても、前の世界記録は2012年9月の国体で山口観弘選手によって樹立され、今回は東京都選手権大会と、男子200m平泳ぎ種目の世界記録は、オリンピックや世界選手権といった大会ではなく、「意外」な大会で出されているのは興味深いところです。

 男子200m平泳ぎという種目が、とても繊細な種目であり、僅かな「バランスの違い」「メカニカルな動作の違い」が記録に大きく反映されるものなのかもしれないと、感じるのです。
 リオデジャネイロ・オリンピックでは、競泳女子200m平泳ぎで金籐理絵選手が金メダルに輝きました。

 この金籐選手の金メダルが、競泳日本女子史上「5つめの金メダル」だったのです。

 では、その「5つの金メダル」を見てみましょう。

① 1936年ベルリン大会 200m平泳ぎ 前畑秀子選手
② 1972年ミュンヘン大会 100mバタフライ 青木まゆみ選手
③ 1992年バルセロナ大会 200m平泳ぎ 岩崎恭子選手
④ 2004年アテネ大会 800m自由形 柴田亜衣選手
⑤ 2016年リオデジャネイロ大会 200m平泳ぎ 金籐理絵選手

 100年になんなんとする歴史の中で、僅かに5つというのですから、その価値は計り知れないものです。

 この5つの内3つが200m平泳ぎ種目です。
 やはり「女子200m平泳ぎ」は、日本の得意種目なのです。
 「前畑ガンバレ」で有名な「日本女子競泳初」の金メダルから、岩崎選手、金籐選手とその系譜は脈々と受け継がれているのです。

 そして、青木まゆみ選手と柴田亜衣選手の大健闘は、永遠に語り継がれていくのでしょう。

 ここまでは「約20年に1つ」というペースですが、2020年の東京オリンピックでは、このペースをグンと上げて欲しいものです。
 シンクロナイズドスイミング競技は、予想通りデュエットもチームもロシアチームが圧勝しました。
 
 8人でプレーするチームのフリールーティンも圧巻でした。

 何より、その演技中の「移動」が素晴らしい。

 難しい演技をしながら、チーム全体が高速で移動するのです。
 他の選手との距離も不変。様々なフォーメーションが、何もなかったかのように展開されていきます。
 30mのプールの端から端まで、完璧なシンクロ演技を魅せつつ動くロシアチームのパフォーマンスには圧倒されました。

 99点越えという、ほぼ満点の演技でした。
 「こんなことが出来るのか」というレベルであったと感じます。
 
 この「高速移動の中での完璧なシンクロ」が有る限り、ロシアチームの王座は盤石でしょう。
 リオデジャネイロ・オリンピックが終了しました。

 我らが日本競泳チームも萩野選手、金籐選手の金メダル獲得など、素晴らしい活躍を魅せてくれましたが、今大会、圧倒的な強さを示したのがアメリカチームでした。

 男子のマイケル・フェルプス選手(金メダル4つ)や女子のケイティ・レデツキー選手(金メダル3つ)を始めとして、見事な活躍が続きました。

 「アメリカ合衆国がオリンピックの水泳で強いのは当たり前」といったご意見も有ろうかとは思いますが、今大会の強さは、「強いアメリカ」の中でも別格でした。

 競泳全32種目の内、16種目で金メダルを獲得したのです。

 詳しくは調べていませんが、全種目の半分の種目で金メダルというのは、いかに「オリンピック競泳で強いアメリカ」といっても、凄まじい記録です。

 ちなみに、銀メダル・銅メダルを含めた数では、33個と断然のトップ、2位のオーストラリアが10個、3位の日本の7個を大きく上回っています。(競泳のメダル数で日本が3位というのも素晴らしいことですが)

 常に、他の国々の標的となり、「打倒アメリカ」を目標に世界中のチーム、スイマーが日々切磋琢磨している中で、「その差をどんどん拡大している」というのは、競泳アメリカチームの実力の高さを如実に示しています。

 アメリカチームは、大会最終日の恒例種目となっている男女の400mメドレーリレーのメンバー選出を、当該オリンピックの個人種目成績で行うと伝えられています。
 成績下位のスイマーが予選を泳ぎ、成績上位のスイマーが決勝を泳ぐのです。

 アメリカチームの、世界一の「選手層の厚さ」を示す事実なのでしょう。
 昨2015年の世界選手権で、200m・400m・800m・1500mの「自由形四冠」を成し遂げた、アメリカのスーパーガール、ケイティ・レデツキー選手が、リオデジャネイロ・オリンピックでも200m・400m・800mでの金メダルという「自由形三冠」を達成しました。

 400mと800mでは「世界新記録」をも叩き出していますから、「底知れぬ強さ」ともいえるのでしょう。

 水泳王国というかスポーツ大国アメリカからは、いつの時代もスーパースターが連続して登場するのですが、おそらく今大会が最後のオリンピックとなるであろう、「水泳の王様」マイケル・フェルプス選手の後を継ぐ、スーパースイマーだと思います。

 15歳(アメリカ競泳チーム史上最年少)で出場したロンドン・オリンピックの800m自由形で金メダルを獲得した時にも、とても驚かされましたが、その後の4年間での成長も見事なものでした。(身長も5cm伸びて183cmになりました)

 それにしても、400m決勝レースでは2位のジャズ・カーリン選手(イギリス)に「5秒近い」差を付け、800mの決勝レースでも2位のカーリン選手に「11秒以上」の差を付けて、共に世界新記録の「独泳」でした。

 レデツキー選手の頭抜けた強さを観ると共に、これまで泳ぎ尽くされてきた筈の「水泳競技・自由形」の奥深い可能性をも感じさせてくれるレースでもありました。
 決勝のレースでは、金籐選手は他の選手を気にすることなく、自らのレースに徹していたと感じました。

 前半からトップ集団に食い付き、後半は自らの実力を如何なく発揮したのです。
 圧勝であり、堂々たる泳ぎであったと思います。

 北京オリンピックに出場しながら、ロンドンでは代表に成れず、引退も考えたと伝えられていますが、その実力は紛れも無く「世界一」なのです。

 27歳になって、世界選手権も含めて、世界大会で初めてのメダルが「オリンピックの金メダル」というのですから、とても珍しいケースではないでしょうか。
 こういうスイマーも居るのです。

 金籐選手の「喜びの表現」は控えめでした。
 こういう大会での好成績に慣れていないという見方もあるかもしれませんが、おそらく金籐選手の性格なのでしょう。
 とても日本人らしいとも感じます。
 
 最後の大舞台で、その世界一の実力を如何なく発揮した金籐理絵選手に、大きな拍手を送らせていただきます。
 素晴らしいシーンでした。

 粘りの泳ぎを魅せる松田丈志選手を、泳ぎ切った3人の選手がスタート地点で必死に応援します。
 そして歓喜のゴール。
 1964年の第一回東京オリンピック以来の銅メダルの瞬間でした。

 日本の自由形が世界の舞台で復活した瞬間でした。

 萩野公介選手が約1秒、江原騎士選手も約1秒、小堀勇気選手が約2秒、予選の時よりタイムを縮めたと報じられました。
 予選5位から、決勝では3位へと駆け上がったのです。

 この「本番での強さ」こそが、現在の「日本水泳の強さ」なのでしょう。

 22歳の萩野選手、23歳の江原選手、22歳の小堀選手を、32歳の松田選手が引っ張ってきたのでしょう。

 レース後のインタビュー、松田選手の「日本の自由形」という言葉が輝いていました。
 追い上げた坂井選手がマイケル・フェルプス選手を捉えたかに見えたところがゴールでした。

 100分の4秒差で2位でした。
本当に惜しいレースでした。
 ゴールがあと1m先なら、勝っていたかもしれません。

 このレースには瀬戸大也選手と坂井聖人選手の2人のスイマーが登場しました。
 戦前の予想では瀬戸選手に期待が集まっていました。
 一方で、坂井選手も昨年の世界選手権4位を踏まえて、「虎視眈々」とメダルを狙っていたのでしょう。

 静かに入って、ラスト50mで力を発揮するという作戦も当たりました。
 レース後のインタビューで、「ラスト50mは体が動かなかった」とコメントしていましたから、坂井選手も疲れていたのでしょうが、他の選手はもっと疲れていたのです。
 オリンピックのレースの難しさを感じさせました。

 まだ21歳の坂井選手。

 「フェルプスの後の200mバタフライ」は、坂井選手の時代になって欲しいものです。
 8月6日に行われた、競泳男子400m個人メドレーで、萩野公介選手が優勝しました。
 4分6秒05の日本新記録。今大会日本選手団最初の金メダルでした。

 このレースでは、萩野選手の「冷静さ」「精神力の強さ」が際立っていたと思います。

 今シーズン一気に記録を伸ばした、アメリカのチェース・カリシュ選手と日本の萩野・瀬戸両選手の争いと見られていましたが、レースは予想通りの展開となりました。

 バタフライで瀬戸選手がリードし、背泳ぎで萩野選手がトップに立ち、平泳ぎでカリシュ選手が追い上げて2番手に上がり、クロールでも追い上げを見せましたが、萩野選手はカリシュ選手の位置を良く把握しながら、慌てることなく「絶妙のペース配分」で対応しました。
 そしてラスト25mは「全力の泳ぎ」で対抗したのです。

 オリンピックイヤーのアメリカの新星というのは、いつの時代も「とても強い」ものです。カリシュ選手も、泳ぐ度に自己記録を更新し続けているという点では、「オリンピックイヤーのアメリカ選手」そのものであり、これまでの歴史において、「オリンピックイヤーのアメリカ選手」が負けるというのは、「有り得ないこと」だったのですが、萩野選手はこの「定理」をも押さえ込みました。

 この萩野選手の強さは「驚異的」と言う他は無く、コンディションが良いことも間違いないのでしょうが、心身の能力の高さを如何なく発揮したとも言えるのでしょう。

 金メダル・萩野公介、銅メダル・瀬戸大也、と2人の日本人スイマーがオリンピックで同じ表彰台に上るというのは60年ぶりの快挙です。

 そして、大会初日の金メダルというのは、日本選手団にとって「最高のエンジン」となったことでしょう。
 第92回大会が終わりました。

 「日本一」の称号とリオデジャネイロ・オリンピック出場権を目指すスイマー達の力と意地がぶつかり合った、素晴らしい大会であったと思います。

 本稿では、今大会で日本水泳陣が出場権を獲得できなかった種目を見て行こうと思います。
 種目別に挙げてみます。

[自由形]
・男子50m
・女子50m
・男子100m
・女子100m
・女子200m
・男子400m
・女子400m
・女子800m
・男子1500m

[平泳ぎ]
・男子100m

[背泳ぎ]
・女子100m
・女子200m

[バタフライ]
・男子100m

[リレー] 全種目で代表が選ばれました。

 様々な種目に、様々なスイマーが登場し、選手層が厚くなっていると感じられる日本競泳陣ですが、それでもまだ13種目に代表を送り込めていないのは、残念なところです。(もちろん、実際のリオ五輪では、他種目で選ばれたスイマーが「調整」の意味からも、これらの種目に出場してくると思われますが)

 特に自由形種目で多くの「穴」が空いています。

 もともと、50mや1500mは日本チームの弱点でしたが、今回も克服は出来なかったというところでしょうか。
 とはいえ、世界トップクラスとの差は着実に詰まっているという印象です。

 男子100m平泳ぎで派遣標準記録を突破できなかったというのは、「痛恨の極み」でしょう。北島康介選手にも十分にチャンスが有ったのです。
 この種目は、北島選手の複数のオリンピックにおけるメダル獲得も有り、「水泳日本」の得意種目となっていますから、もし本番で泳ぐ機会があるのであれば、小関選手・渡辺選手の活躍に期待したいところです。

 女子の背泳ぎ2種目も、今回は残念でした。
 21世紀に入ってから、世界のトップクラスに迫っていた種目でしたが、この種目に付いては「世代交代」が少し遅れているということでしょう。
 とはいえ、14歳の酒井夏海選手など、若手の成長が観られます。
 もし本番で泳ぐようであれば、酒井選手には思い切り挑戦していただきたいものです。

 男子100mバタフライも意外な結果でした。
 萩野浩介選手が出場していれば、十分に標準記録は突破できたとは思いますが、松田丈志選手らのスイマーが積み上げてきた伝統は、継続して行かなければならないでしょう。
 本番では、出場するスイマーが居ると思います。存分に泳いでいただきたいと思います。

 一発勝負で、タイムと順位を追わなければならないという、極めて難しいルール下での大会は、何時の時代も緊張感に溢れています。「悲喜こもごものシーン」が続くのです。
 今大会もそうでした。
 選手の皆様には「お疲れ様でした」と申し上げたいと思います。

 また、出場を決めた34名のスイマーの皆さんの本番での健闘を祈ります。

 こうした「厳しいルール」の下で、日本水泳の実力が維持され向上していることは、間違いないのでしょう。
 リオデジャネイロ・オリンピックの派遣選考会を兼ねた第92回水泳日本選手権大会も最終日を迎えました。

 5種目の決勝が行われましたが、全体として記録が伸びませんでした。
 前日までの「五輪出場権を賭けた一発勝負」の疲れが、選手のみならず、スタンドの観客にも表れていたように感じます。

① 男子1500m自由形

 7コースの山本耕平選手の挑戦が注目されましたが、派遣標準記録に2秒余り及ばず、惜しくも出場権獲得はなりませんでした。

 「競泳のマラソン」におけるラスト100mの頑張りには、頭が下がる思いでした。

② 男子50m自由形

 4コースの塩浦慎理選手と5コースの中村克選手の競り合いは、中村選手が制しました。
 しかし、両選手とも標準記録突破はなりませんでした。

 ラスト10mで伸びを欠いた印象です。
 この種目の男子陣の強化が急がれるところでしょう。

③ 女子50m自由形

 5コースの池江璃花子選手が積極的なレースを展開し、4コースの内田美希選手の追い上げをかわして優勝しました。この種目としては「大差」の結末でした。
 しかし、両選手とも標準記録突破はなりませんでした。

 あと一歩で、世界大会の決勝進出のレベルに達する種目です。
 今後の強化が待たれます。

④ 男子100mバタフライ

 5コースの川本武史選手が先行し、4コースの藤井拓郎選手が追いかける展開となりました。藤井選手は「思い通りの展開」で優勝した形でしたが、惜しくも個人種目のリオ出場権獲得はなりませんでした。

 とはいえ、メドレーリレーの標準タイムはクリアしました。北京大会銅メダル、ロンドン大会銀メダルと成績を伸ばしている種目ですので、日本男子チームの活躍が期待されます。

 30歳になったとはいえ、藤井選手にはまだまだ記録が伸びる余地が有ると言われています。ターン後のドルフィンキックの改良や前半の入り方等、リオまでにどこまで修正して来るのか、楽しみなところです。

⑤ 女子200m背泳ぎ

 今大会の最終レースとなった女子200m背泳ぎは、4コースの酒井夏海選手が先行し、5コースの川除結花選手と3コースの後藤真由子選手が追い上げる展開。

 150mで川除選手が一度逆転しましたが、ラスト50mで酒井選手が再度逆転して優勝しました。
 しかし、標準記録突破はなりませんでした。

 インタビューに臨んだ14歳は、日本選手権優勝にもかかわらず泣きながら答えていました。

 「この悔しさ」は、酒井選手の大きな財産となることでしょう。

 7日間に渡って開催された大会は、多くのドラマを魅せてくれました。
 そして、リオデジャネイロ・オリンピックに臨む日本チームの姿が固まりました。

 「ベテランと若手のバランスの良いチーム」ではないでしょうか。

 日本水泳界の「世代交代」は順調に進んでいるのです。
 6日目は、女子800m自由形、男子200m背泳ぎ、女子200m平泳ぎ、男子200m個人メドレー、の4種目で決勝が行われました。

 そして、日本新記録が2つ生まれました。

① 女子800m自由形

 4コースの高橋美帆選手が先行し、5コースの菊池優奈選手が追いかけましたが、逆に菊池選手が失速し、後半スピードを上げた3コースの池田麻未選手が最後の50mで猛烈な追い上げを見せて、高橋選手に50cmまで迫ったところがゴールでした。
 3位には2コースの和田麻里選手が入りました。

 現在のこの種目の選手達の地力から見て、大変高いレベルに設定されている派遣標準記録でしたので、オリンピック出場権を獲得したスイマーは居ませんでした。

 アテネ五輪で柴田亜衣選手が金メダルを獲得した種目でもありますから、日本人スイマーにとって不得意な種目とは考えられませんので、今後の強化が期待されます。

② 男子200m背泳ぎ

 「第一人者」の入江陵介選手が強さを見せたレースでした。

 4コースの砂間敬太選手が先行し、5コースの入江選手が追いかける展開でしたが、驚いたのは2コースの金子雅紀選手の「150mターンからのバサロ」でした。
 一気に上位グループとの差を詰め、175m地点では先頭の入江選手を捕えたように観えました。その後、入江選手が振り切った形でした。

 金子選手にとっては作戦通りの展開だったのでしょうが、このレベルの戦いにおいても「秘密兵器」が威力を発揮することに驚かされました。

 入江選手と金子選手がリオ五輪出場権を獲得、砂間選手は派遣標準記録を突破しながらも3位となって、出場権には届きませんでした。

 この大会では、少しコンディションが良く無さそうな入江選手ですが、トップの座は譲らないところに強さを感じさせます。この種目で「日本選手権10連覇」という、全ての種目を通じての「空前の記録」を樹立しました。

③ 女子200m平泳ぎ

 金藤選手の「積極的なレース展開」が印象的でした。
 公言通りスタートから飛ばす2コースの鈴木聡美選手を早々に捕まえて「独泳体制」を築き、後半も緩み無く泳ぎ切りました。素晴らしいレースであったと思います。

 脂の乗り切ったプレーとも言えるでしょう。

 2分19秒65というのは、世界歴代5位、日本人スイマーによる初の19秒台という見事なタイムでした。

 既に出場権を獲得していた渡部香生子選手も、コンディションが良くない様に観える中では、しっかりと2位を確保。3位には、伸び盛りの今井月選手が食い込んだレースでした。

④ 男子200m個人メドレー

 4コースの萩野公介選手と5コースの瀬戸大也選手の競り合いと予想されたレースでしたが、萩野選手の圧勝でした。
 
 この大会でやや精彩を欠く印象が有った萩野選手ですが、この種目で「溜飲を下げた」感が有ります。
 特に、最初の種目のバタフライの泳ぎは圧巻でした。バタフライで代表を決めている瀬戸選手を千切ったのです。
 「バタフライでリオに行った方が良いのではないか」という意見も出そうな泳ぎでした。

 一方で瀬戸選手は3コースの藤森太将選手にも追い越されて3位となりました。
 藤森選手にとっては、嬉しいオリンピック出場権獲得となりました。

 藤森兄弟が2位・4位を占め、5位の溝畑選手まで2分を切るという、層の厚さを見せつけるレースでもありました。

 6日目は、男子200m背泳ぎを除けば「独泳」のレースでしたが、2位争いは激戦が続きました。

 「一発勝負」の代表選考会の難しさを改めて感じさせた6日目でした。
 5日目は、男子100m自由形、女子100m自由形、男子200mバタフライ、男子200m平泳ぎ、の4種目の決勝が行われました。

 いずれも激戦でしたが、結果を観ると「現時点の第一人者」が実力を発揮したと感じます。そして、伸び盛りの若手が食い下がることで、好レースとなった形でしょうか。

① 男子100m自由形

 中村克選手と塩浦慎理選手の競り合いは、ゴール寸前まで続きました。
 掌ひとつの差で中村選手が勝ちました。日本新記録でした。

 中村選手も僅かなところで個人種目では派遣標準記録をクリアできませんでしたが、この接戦に引っ張られた形で上位4名のタイムが伸びて、400mリレーの代表権を獲得したのです。

 中村選手・塩浦選手・小長谷研二選手・古賀淳也選手4人のスイマーの笑顔が印象的でしたが、特に古賀選手は、専門種目で惜しいところで代表を逃していましたから、喜びもひとしおというところでしょうか。

 実力者がそろった、相当強いチームだと思います。リオでの活躍が楽しみです。

② 女子100m自由形

 素晴らしいダッシュで50mを26秒09でクリアした内田美希選手が先行し、池江璃花子が追いかける展開となりましたが、後半もしっかりと泳ぎ切った内田選手が優勝しました。
 男子同様、日本新記録でした。

 そして、400mリレーの出場権を獲得したのです。
 4人のタイムの合計に時間がかかったのでしょうか、しばらくの間4人のスイマーは不安な様子でプール内に居ましたが、「決定」が伝えられると喜びが弾けました。

 素晴らしい瞬間でした。

 内田選手・池江選手・松本弥生選手・山口美咲選手は、いずれも55秒を切りました。やはり高いレベルのレースだったのです。

 池江選手は、200m自由形と同様に、少し体が重そうな泳ぎでした。いかに若いとはいえ、さすがに疲れが蓄積されているのかもしれません。
 とても大切な「経験」が積み重ねられているのでしょう。

③ 男子200mバタフライ

 瀬戸大也選手と坂井聖人選手の競り合いは、100m自由形の中村・塩浦両選手の競り合いと同様に、ゴール寸前まで続きました。

 ゴール寸前、瀬戸選手が僅かに抜け出して優勝しました。
 こちらは「掌半分」の差であったと思います。

 そして両選手ともオリンピック出場権を獲得しました。
 1分54秒台前半で泳ぎ切った2人のスイマーのリオでの活躍が期待されます。

④ 男子200m平泳ぎ

 5コースの小関也朱篤選手がスタートから飛び出し、そのスピードをゴールまで継続しました。小関選手「会心」のレースだったのではないでしょうか。

 150mにかけて3コースの北島康介選手が食い下がりましたが、その差がなかなか詰まりません。
 そして、残り30mから4コースの渡辺一平選手の追い上げが始まり、ゴール前15m辺りで北島選手を抜き去り2位でゴールしました。

 小関・渡辺両選手とも派遣標準記録をクリアし、代表権を手にしました。
 とてもハイレベルなレースだったのです。

 北島選手は、隣のコースの渡辺選手に抜かれた瞬間、「諦めた」感じもありました。
 「先行する」小関選手と「追い上げる」渡辺選手の間に位置して、精一杯のレースを展開したのではないでしょうか。

 「日本水泳界のレジェンド」、北島康介選手のオリンピック挑戦が終りました。
 33歳になってからの、この素晴らしいトライは、レジェンドの名に相応しい、比類なきものであり、「記憶に残る」ものであったと思います。

 5日目は、内田選手に挑む池江選手、瀬戸選手に挑む坂井選手、小関選手に挑む渡辺選手と、「第一人者VS若手実力者」という構図のレースが続きましたが、全て「第一人者に軍配が上り」ました。

 第一人者がその実力に慢心することなく、この大会に向けて鍛え上げてきたことが如実にわかるシーンの連続でした。

 第一人者がグイグイと引っ張る種目は、全体のレベルがどんどん上がって行くものなのでしょう。
 多くのスイマーがリオ五輪出場を決めた5日目でした。
 4日目は、女子100m背泳ぎ、女子200mバタフライ、女子200m個人メドレーの3種目の決勝が行われました。

 どの種目もリオデジャネイロ・オリンピックへのスイマー達の強い意志を感じさせる激しいレースでしたが、特に女子200m個人メドレーには驚かされました。

① 女子100m背泳ぎ

 5コースを泳いだ14歳の中学3年生、酒井夏海選手が見事なレースを魅せてくれました。
 4コースの竹村幸選手、1コースの諸貫瑛美選手との大接戦を制したのです。

 酒井選手の残り25mからの泳ぎは、迷いや力みの無く「真っ直ぐ」進む、素晴らしいものでした。

 1分00秒12のタイムでしたから、個人としては派遣標準記録には及びませんでしたが、メドレーリレーの標準タイム1分00秒25はクリアしましたから、100m自由形優勝者の記録次第では、リレーメンバーとしてリオに行けることとなります。(おそらく行けるでしょう)

 伸び盛りの酒井選手のリオでの活躍が期待されます。

② 女子200mバタフライ

 既に内定している星奈津美選手がさすがの泳ぎを魅せましたが、その星選手に食い下がった長谷川涼香選手の泳ぎも見事でした。

 星選手・長谷川選手は50mまで互角のレースを展開し、ターン後、星選手がジリジリと差を広げましたが、一気に開くということは無く、長谷川選手のスピードも最後まで落ちませんでした。そして派遣標準タイムを超えたのです。

 世界選手権2015金メダリストの星選手はもちろんとして、16歳の長谷川選手の活躍がとても楽しみです。「リオでの1・2フィニッシュ」も夢では無いでしょう。

③ 女子200m個人メドレー

 世界選手権2015銀メダリストの渡部香生子選手を中心とした展開になると予想されていました。
 渡部選手は「女子競泳陣」のエースでもありますから、「ここぞ」というレースではしっかりと泳いでくると誰もが考えたことでしょう。

 そして渡部選手は苦戦の中で派遣標準タイムをクリアする泳ぎを見せてくれたのです。
 しかし、出場権を獲得することは出来ませんでした。

 レースは、3コースの寺村美穂選手の先行で始まりました。最初の種目バタフライで一気に抜け出したのです。最初の種目とはいえ「1身長」の差を付けたのを観て、「50mでこんなに差が付くのか」と感じました。

 渡部選手としては得意の平泳ぎで並ぶあるいは追い越すイメージでレースを続けていたのでしょう。
 ところが、平泳ぎに入っても殆ど差は縮まりませんでした。

 決して渡部選手の泳ぎが遅いのではなく、寺村選手の泳ぎが良かったのです。

 焦ってしまった渡部選手の自由形の泳ぎが乱れました。
 これ程の選手でも「焦り」は禁物なのでしょう。

 自由形に入っても寺村選手のリードは変わらず、バランスを崩した泳ぎを続けている渡部選手に、2コースの今井月選手が迫ります。そして、今井選手が渡部選手を捕えたところがゴールでした。
 今井選手は派遣標準タイムもクリアし、リオ出場権を獲得しました。
 レース後のインタビューで「信じられない」とコメントしていた今井選手の、まさに「無欲の泳ぎ」でした。
 他の種目で僅かな差でリオの切符を取れていなかった今井選手が、ついにオリンピックに行くのです。殻を破った15歳の本番での大活躍が、とても楽しみです。

 一方、本来2分10秒を切る力を保持している渡部選手にとっては信じられないようなレースだったことでしょう。レース後、プールサイドで長い間座り込んでいました。
 この敗戦を糧にして、「真のエース」になっていただきたいと思います。

 直近の世界選手権で銀メダルを獲得したスイマーでも五輪代表になれないという、日本水泳陣の層の厚さには、本当に驚かされましたし、「一発勝負」の怖さをまざまざと感じさせられたレースでもありました。
 3日目は、男子200m自由形、女子200m、女子100m平泳ぎ、男子100m背泳ぎ、の4種目の決勝が行われました。
 800mリレーの代表も含めて、多くの選手がオリンピック出場権を獲得しました。

① 男子200m自由形

 3コースの江原選手がリードし、他の選手が追いかける展開となりました。100~150mの泳ぎで4コースの萩野選手が追い付き、最後の50mで差を広げる展開となりましたが、5コースの松田選手・7コースの小堀選手も追い込みを見せ、2~4着は接戦となりました。

 萩野選手は個人として出場権を獲得し、4位までのスイマーに800mリレーの出場権が与えられました。
 4位に入った小堀選手も1分47秒27という高いレベルの泳ぎでしたので、日本チームのリレー種目もリオでの活躍が十二分に期待できます。

 萩野選手の余裕が感じられる勝利と共に、日本男子自由形競泳陣の層の厚さを感じさせるレースでもありました。
 
② 女子200m自由形

 150m手前までは大接戦でしたが、ターン後6コースの池江璃花子選手が抜け出して優勝しました。今回の日本選手権大会2つめの優勝です。凄い15歳だと思います。

 もともと高い水準だった200m自由形の派遣標準記録には、池江選手も及びませんでしたが、4位までに入った選手による800mリレーの方は、リオ出場を決めました。

 池江選手・五十嵐選手・持田選手・青木選手が、プール内で喜びを分かち合う姿が、印象的でした。4位の青木選手も1分58秒台をマークしています。男子と共に、リレー種目での日本チームの活躍が楽しみです。

③ 女子100m平泳ぎ

 レース前の予想通りの大接戦でした。
 派遣標準記録を上回る記録を保持しているスイマーが4人も登場する、レベルの高いレースでしたが、エース・渡部香生子選手とロンドン五輪のメダリスト・鈴木聡美選手が2つの枠を獲得しました。
 派遣標準記録をクリアしながらも3位となった金藤理絵選手は、残念ながら出場権獲得はなりませんでした。

 鈴木聡美選手のレース運びは見事でした。
 スタートから先行し、50mを大きなリードを持って折り返しました。
 そして、渡部選手と金藤選手の猛烈な追い上げをギリギリ凌いで、2位を確保したのです。

 ロンドン五輪以降、調子が上がらず、なかなか成績を残せなかった鈴木選手でしたが、2016年に入って「キックをロンドン五輪当時に戻した」ことが功を奏して、一気に復活したと伝えられています。

 さすがはオリンピックメダリストの勝負強さ、といったところですが、その明るさ・力強さは、リオの日本チームにも大きな勇気を与えてくれるのではないでしょうか。

④ 男子100m背泳ぎ

 こちらも大接戦でした。
 5コースの古賀選手、1コースの川本選手が先行し、大本命の入江選手が追いかける展開。

 ゴール寸前で入江陵介選手が抜け出して優勝しました。

 そして2位には、やはり追い上げてきた長谷川純也選手が食い込んだのです。

 古賀選手が2位だとばかり思っていましたが、レース後のVTRを観ると、古賀選手のタッチが流れ、その間に長谷川選手が抜いています。
 長谷川選手のタイムは、派遣標準記録と同じ53秒49でした。見事に出場権をゲットしたのです。
 ラスト20mに賭けた、素晴らしい泳ぎであったと思います。

 3位になってしまった古賀淳也選手にとっては、オリンピック2大会連続での残念な結果となってしまいました。ロンドン大会は0.05秒、リオデジャネイロ大会は0.08秒、及ばなかったのです。「タッチが流れたこと」が本当に惜しまれます。

 3日目は、女子の渡部選手・池江選手、男子の入江選手といったエース級のスイマーが順当に出場権を確保した日でしたが、一方で3年間以上に渡る努力をこの日のレースで実らせた鈴木選手と長谷川選手の泳ぎが、とても印象に残りました。

 まさに「乾坤一擲」のレースだったのです。
 4月5日・大会2日目は、2人のエースが対照的なレースを見せました。

① 女子100mバタフライ

 伸び盛りの若きエース・池江璃花子選手が優勝し、派遣標準記録も突破して、リオ五輪出場権を獲得しました。

 池江選手はスタートから飛び出し、残り15mからやや失速しましたが、必要なタイムはクリアしました。その勝負強さと運の強さを示したレースでした。

 準決勝・57秒55をマークした「別次元のスケールの泳ぎ」に比べると、少し体が沈んでいた印象でした。おそらく、池江選手の胴体は準決勝時に比べて1~2cm低い位置に在ったのではないかと思います。

 決勝では前半から突っ込み、記録を狙っていたのでしょうが、それが僅かな力みに繋がったように感じます。泳ぐ都度、沢山のことを学んでいる時期なのでしょうから、この経験は次のレースに活かされることでしょう。

 200m自由形の準決勝から僅か40分後のレースでしたので、その疲労残りが心配されましたが、競泳競技の経験が有る妻は「大丈夫よ。15歳なんだから。ドーナツ1個食べれば疲れが取れるわよ」と言っていました。

 おっしゃる通りで、ゴール前の失速は、レース展開と僅かな力みの結果だったのでしょう。

 レース後のインタビューは、涙また涙。五輪出場の喜びに溢れていました。

 プレッシャーから解放された今、今後の自由形3種目(50m、100m、200m)でも、大活躍が期待されます。

② 男子100m平泳ぎ

 日本水泳界のレジェンド・33歳になった北島康介選手の泳ぎが注目されましたが、珍しく固さが目立ち、59秒93での2着という、意外な結果となりました。

 準決勝では、「久々の1分切り」という充実のコメントを出していただけに、残念な結果でした。

 準決勝の泳ぎは、他のスイマーを引き連れて真ん中を泳ぐ「王者の風格」を漂わせていましたが、少し滑らかさに欠け「ギスギスした印象」でしたので、決勝で泳ぎのバランスが崩れないと良いが、と感じていました。

 決勝では、前半の後半・25m~50mの泳ぎで伸びを欠きました。持ち味である大きなストロークで泳ごうとするあまり、少し体が沈んでしまったというところでしょうか。

 このレースで2着になってしまいましたので、400mメドレーリレーのメンバーからも外れてしまいましたから、200m平泳ぎ種目でリオを掴みとるしかなくなりました。

 北島選手の勝負強さに期待したいと思います。

 オリンピック2大会連続金メダルという、北島康介選手程のプレーヤーでも「特別扱いされない」ところが、現在の「日本水泳陣の強さの源」なのでしょうが、本当に厳しいルールであると改めて感じさせるレースでした。
 リオデジャネイロ・オリンピックの代表選考会を兼ねた、日本選手権大会が開幕しました。

 東京辰巳国際水泳場を舞台に、日本を代表するスイマー達の激しい戦いが始まったのです。

 初日・4月4日は、「ライバル対決」の日となりました。

① 男子400m個人メドレー

 2015年の世界選手権大会で優勝した瀬戸大也選手と、第一人者・萩野公介選手のトップ争いが予想されましたが、レースは萩野選手の独泳になりました。

 最初のバタフライを54秒65という好記録でクリアした萩野選手は、続く背泳で独泳に入り、瀬戸選手に大きな差を付けたままゴールしました。
 瀬戸選手は藤森選手との2位争いを制するのが精一杯といった印象でした。

 その萩野選手もタイム面では4分8秒90と、6秒台が期待された中では物足りないものでした。最後の自由形の伸びが観られなかったのです。
 レース後のインタビューで、本人も「不満」を口にしていました。

 確かに、アメリカのロクテ選手という「絶対王者」に挑むには不十分な記録なのでしょうけれども、まずは「出場権獲得」が第一目標のレースであり、明日以降も多くの種目を泳がなければならない萩野選手としては、スタミナを温存して行く必要も有ったのではないかと感じます。

 「回復途上」の萩野選手にとっては、満足できるレースであったのではないかと思います。

 瀬戸選手の方が事態?は深刻でしょう。
 しかしこれとて、8月の本番に向けて、既に内定を確保している身としては、スケジュールの一環という見方もあるでしょう。

 本番でも、日本競泳界で最初のメダルが期待される種目。
 2人のライバルは、しっかりと調整して行ってくれるのではないでしょうか。

② 女子400m個人メドレー

 高橋美帆選手と清水咲子選手の見事な競り合いでした。

 3コースの高橋選手は第一種目のバタフライでリードし、続く種目でその差を維持しました。「勝負に徹した」泳ぎであったと感じます。

 清水選手も各種目で懸命に高橋選手を追いかけましたが、ついに追い付くことは出来ませんでした。しかし、派遣標準記録はしっかりとクリアしました。

 高橋選手は「オリンピック出場に強いスイマー」です。
 4年前のロンドン・オリンピックでも代表入りし、その後はあまり目立った活躍が無かったのですけれども、2016年・オリンピックイヤーにキッチリと照準を合わせて、タイムと勝負を物にしました。
 その調整能力の髙さは、眼を見張るものが有ると思います。

 同じクラブで、いつも一緒に泳いでいる2人が、代表権を獲得するというのも素晴らしい。
 高橋選手と清水選手は、本番に向かって、また2人で調整を続けて行くのです。

 男女の400m個人メドレーは、「順当に」4人のスイマーが五輪代表となりました。
 一発勝負で、期待されているプレーヤーがしっかりと結果を残すところに、「水泳日本」の強さが示されています。

 そして、男子の藤森選手、女子の大橋兄弟、がこの4人の直ぐ後ろに迫っているのです。選手層の厚さも感じられます。

 今年も、オリンピックイヤーの日本選手権大会が始まりました。

 「オリンピック派遣標準記録と順位の両方をクリアしなければならない一発勝負」という、凄まじい戦いが幕を上げたのです。
 1月31日に行われた競泳の北島康介杯・東京都選手権大会の200m平泳ぎで、早稲田大学1年生・18歳の渡辺一平選手が、2分9秒40の好タイムで優勝しました。

 この種目の現在の日本の第一人者である小関也朱篤選手(23歳)が2位、5大会連続のオリンピック出場を狙う北島康介選手が3位でした。

 大分・佐伯鶴城高校出身の渡辺選手は、193cmという長身を利して、近時ユースの世代で実績を積み上げてきていましたが、この大会での優勝で一気にオリンピック代表に名乗りを上げた感があります。

 粗削りながらも大きな泳ぎは、200m平泳ぎにピッタリでしょう。

 オリンピック派遣選考会である4月の日本選手権大会に向けて、日本競泳界の戦いが激しさを増してきました。
 競泳ワールドカップの東京大会第一日、女子100mバタフライで、日本の池江璃花子選手が素晴らしい泳ぎを魅せて優勝しました。
 57秒56という日本新記録でした。

 スタートからリラックスした動きを見せた池江選手は、50mで既にリードし、残り50mでも差を広げての堂々たる泳ぎでした。
 泳ぎの柔らかさとバネが印象的でした。

 レース後のインタビューで「こんな(に良い)記録が出るとは思わなかった」と、池江選手はコメントしました。
 まだ中学3年生の池江選手は、「伸び盛り」なのでしょう。泳ぐ度に自己記録を更新できる時期なのだと思います。

 この日の泳ぎでも、50mのタッチの前、ストロークが合いませんでした。両腕を前に伸ばしたまま、タッチが相当長く流れたのです。「腕で掻く」という推進力無しの状態でした。
 ここでタイミングが合っていれば、記録はもっと伸びたことでしょう。

 池江選手は、続く100m自由形と50mバタフライでも優勝しました。本当に伸びやかな泳ぎを連発したのです。

 リオデジャネイロ・オリンピック2016に向けて、日本女子競泳陣にはまた新星が誕生しました。

 伸び盛りの池江璃花子選手は、十分にメダルを狙えるであろうと感じます。
 ロシア・カザニで開催されている水泳の世界選手権大会、日本男子競泳陣の不振が指摘されていましたが、8月9日に行われた400m個人メドレー種目で瀬戸大也選手が優勝し、この種目連覇を果たしました。

 星奈津美選手や渡部香生子選手の金メダルは、最後の50mで逆転した優勝でしたが、瀬戸選手の金メダルは終始トップ争いを演じつつ、300m地点では先頭に立ってラスト100mを押し切る形。ゴールでは2m位の差を付ける圧勝でした。
 前大会のチャンピオンが「王者の泳ぎ」を魅せたというところでしょう。

 瀬戸選手の各大会におけるコンディションを測るには、200mバタフライの泳ぎを観るのが良いと思います。調子が良い時には、伸びやかな素晴らしい泳ぎが観られます。
 この大会では、同種目で6位に終っていましたから、決して好調とは言えないと感じていました。

 その「調子が出ていない大会で金メダル」、それも「日本人スイマー史上初の世界選手権同種目連覇」を成し遂げたのです。その価値はとても大きいと思います。

 「追われる者としてのプレッシャー」の中でも世界を制したことで、瀬戸大也選手はまたひとつ、真の王者に向けての階段を上りました。
 
 勢いに乗る日本女子競泳陣というところでしょうか。

 8月7日に行われた女子200m平泳ぎ決勝で、渡部香生子選手が金メダルを獲得しました。これまで、水泳の世界選手権大会ではひとつも金メダルが取れていなかった日本女子競泳陣が、前日の星選手に続いて今大会2つ目の金メダルを獲得したのです。

 素晴らしい活躍です。

 星選手の200mバタフライ同様、このレースも渡部選手の落ち着いたレース振りが印象的でした。
 150mまではライバル選手に先行を許しながら、ラスト50mで逆転、ゴール前では1m位の「大差」を付けての快勝。
 自らのペースを堅持した泳ぎでした。

 平泳ぎが得意な渡部選手ですが、大きなストロークに特徴が有ります。「ひと掻きで大きく前進する平泳ぎ」なのです。
 従って、爆発的なスプリントより、相当のスピードで長い距離を押すことの方が得意ということになります。結果として、100mより200mの方が合っているということになります。

 とはいえ、大きなストロークの平泳ぎをベースにしていれば、100mには対応できると感じます。まさに、北島康介選手と同じタイプなのです。

 18歳にして、世界選手権の個人種目で2つのメダルを取り、ひとつは金メダルというのですから、このロシア・カザニの世界選手権大会は渡部選手にとって「最高の経験」になったことでしょう。

 逆に言えば、リオデジャネイロ・オリンピックを前にして「既に追われる立場」になったのです。

 世界中のトップスイマーから追われる立場になったプレッシャーと、若くして「世界で勝つ」ということに関するノウハウを身に付けた経験値の向上の、バランスということになります。

 もちろん、後者が勝っているのでしょう。そのノウハウを、今大会4位に終った100m平泳ぎ種目に活かしていただきたいものです。

 渡部香生子選手の今後の活躍が、とても楽しみです。
 ロシア・カザニで開催されている水泳の世界選手権大会、8月6日に行われた女子200mバタフライ決勝に、星奈津美選手が登場しました。

 スタート。準決勝をタイム1位で勝ち上がった星選手は、落ち着いた入りを見せました。
 こうした世界一を決めるレースでは、必ず前半からペースが速くなります。世界トップクラスが揃うレースでは、有力選手は最初からガンガン行くのです。「タイムを狙わず勝負に賭ける」などという「甘いレース」にはならないものです。

 最初の50mを終えて、星選手は6番目でした。先頭の選手に相当の差を付けられました。

 100mを終えて4番目に順位を上げましたが、先頭の選手との差はまだまだ大きなものでしたから、「これで追いつけるのだろうか」という不安が胸を過ぎりました。

 150mで3番手に上がった星選手は「エンジン全開」、ぐんぐん追い上げます。

 残り20mでトップに立って、ゴールでは1m以上の「大差」でした。
 本当に素晴らしいラスト50mの泳ぎでした。自らのペースを守り、自らの泳ぎに徹した、会心のレースでしょう。

 意外なことに、水泳の世界選手権大会をおける日本女子選手初の金メダル獲得でした。
 オリンピックではいくつもの金メダルを取ってきている日本女子競泳陣ですが、世界選手権では取れていなかったのです。

 今大会の日本競泳陣は、男子チームの調子が上がっていませんでした。入江選手や瀬戸選手の意外な不振が、チーム全体の勢いを削いでいた感じです。

 しかし、この星選手の金メダルで勢いが付くことでしょう。

 星選手の「ラスト50mの見事な泳ぎ」は、星選手自身に金メダルを齎すと共に、カザニ大会における日本競泳チームを救う泳ぎであったと感じます。
 ロシアのカザニで開催されている、水泳の世界選手権大会で日本のシンクロナイズド・スイミングチームが見事な活躍を魅せました。

 デュエットのテクニカル・ルーティンTR、チームTR、チーム・フリールーティンFR、チームのフリーコンビネーションFCの4種目で3位・銅メダルに輝いたのです。

 かつては、オリンピックや世界選手権といった国際大会で、銀メダル・銅メダルを量産していた日本チームでしたが、2000年代の後半から低迷期に入り2010年代に入ってからは「世界で5番目」が定位置となっていました。

 そして、井村雅代コーチが復帰し、今大会の好成績が生まれました。

 こうした事実を観る限り、「井村コーチの指導力が優れている」ことは明白でしょう。

 今大会の日本チーム銅メダルの種目の、金メダルと銀メダルはロシアチームと中国チームなのですが、この中国チームを世界屈指の力に押し上げたのも井村コーチですから、「井村コーチが指導するチームが世界大会においてメダルを獲得できる」ということになります。

① 現代は情報不足の時代

 本ブログで時々登場する言葉ですが、井村コーチを観ていると再認識させられます。井村コーチの指導方法には、他のコーチに無いノウハウが存在していることは明らかなのですが、そうしたノウハウが「殆ど共有化されていないこと」も明らかです。

 世界中・日本中で、数多くのコーチがシンクロナイズド・スイミングの指導に心を砕き、日々調査・研究を重ね、ノウハウの蓄積を図っているのですが、「肝心な情報・やり方」を把握することは難しいことなのです。
 当然のことながら、「鬼の様な厳しい指導」だけでは、選手・チームの実力は向上しません。ノウハウが不足している状況でのスパルタ練習は、百害あって一利無しだと思います。

 他の競技でも見られることですが「優れた指導ノウハウ」は、中々発見されないし、共有することも困難なものなのでしょう。
 優れた監督やコーチが就任して短期間で、プレーヤーやチームが急速に強くなるという現象は、様々な競技・種目で観られる事実です。

 高度な情報化時代と言われる現代ですが、「肝心な情報は公にされてはいない」と感じます。

 スポーツに限らず、あらゆる業界で同様だと思いますが、誰でも知っている知識・情報から、日本のトップを狙ったり、世界で戦って行くためのノウハウを得ることは、なかなか出来ないのでしょう。世の中は、そんなに簡単なものでは無いのです。
 近時注目されている「ビッグデータ」により、誰でも有効で競争に勝てる情報を得ることが出来るくらいなら誰も苦労はしません。手軽に入手できる情報は、所詮「手軽な成果しか生まない」と考えるのが合理的です。

 いつの時代でも、個々の指導者の個性・知力・体力等を背景として、公示されていないノウハウ・情報が生まれ・蓄積され、優れた指導者が育っていくのでしょう。

② 井村雅代コーチを日本から追い出したのは誰なのか?

 2004年のアテネ・オリンピック終了後、井村コーチが日本チームの指導者を離れ、中国チームを指導すると報じられた時には、「何故」という疑問が湧きました。

 もちろん、真相は公示されていません。ひょっとすると、井村コーチ自身が新しい世界を求めて日本を去ったのかもしれません。しかし、「何らかの力が働き、井村コーチが日本チームの指導者として働きにくい環境を作り出し、日本から追い出した」可能性もあるでしょう。

 後者のようなことが起こっていたとすれば、日本シンクロナイズド・スイミング界にとっては、とても大きな「失われた月日」を招いてしまったとも考えられます。

 もし、日本のシンクロナイズド・スイミング界に、こうした妙な動きが有ったとしたら、これは、様々な競技に共通した「当該競技が世界で勝てない原因」ということになりそうです。

 こうした妙な動きをする人物・集団に共通しているのは、「当該競技に対する知識やノウハウがとても不足していること」と「異常な程の強い権力欲・自己顕示欲を保持していること」ではないでしょうか。 
 そうした人物・集団が、その権力を行使しようとすると、当該競技はどんどん弱くなるのです。

 いずれにしても、井村雅代コーチは戻ってきました。

 日本シンクロ界にとっては、素晴らしいことでしょう。

 今大会を観る限り、ロシアチームや中国チームとの差はまだまだ大きいのでしょうが、2020年の東京オリンピックに向けて、金メダル獲得への体勢がようやく整ったのは間違いないと感じます。
 2015年の日本水泳選手権大会は4月7日から12日に行われました。
 年内に開催される、世界選手権大会、ユニバーシアード大会、世界ジュニア選手権大会の代表選考会も兼ねた大会でしたが、全体として日本水泳界にとって上々の結果となりました。

 男女のエースとして、萩野康介選手と渡部香生子選手が、それぞれ「四冠」を達成しました。現在の日本水泳を支えるスイマーとして、堂々たる成績であったと思います。

 この二人以外にも、背泳ぎの入江陵介選手やバタフライ・メドレーの瀬戸大也選手といった、世界で十分に戦って行けるスイマーも、この時期としては十分な泳ぎを魅せました。実績十分な選手達とはいえ、「当然の様に泳ぐ」というのは容易なこととは思われませんので、さすがというところでしょう。

 そして、今大会、日本水泳選手権2015で際立ったのは「次世代スイマーの台頭」でしょう。
 まだまだ若い、萩野選手や渡辺選手を前にして「次世代」も無いだろうと言われてしまいそうですが、既に看板スイマーとなっている萩野・入江・瀬戸・渡部選手の後を追いかける選手という意味です。

 複数の看板選手が登場すると、つい、その選手達の活躍に頼って5年間くらいを過ごしてしまうというのは、多くのスポーツに有り勝ちなことですが、日本水泳界は「次々と有力スイマーが現れる」という、ある意味では理想的なサイクルに入っているのかもしれません。

 男子100mバタフライの藤井拓郎選手・川本武史選手、男子平泳ぎの小関選手、立石選手、女子200m平泳ぎの金籐選手、女子400m個人メドレーの清水咲子選手、女子自由形の池江璃花子選手、といった世界選手権代表に決まった選手達はもちろんとして、惜しくも今回世界選手権大会代表入りを逃した選手にも、実力の向上、日本水泳の選手層の厚さを感じさせるスイマーが沢山登場しました。

 例えば、男子400m個人メドレー3着の藤森丈晴選手は、世界トップクラスの萩野・瀬戸両選手を相手にして良く健闘しましたし、女子100m・200m平泳ぎの今井月選手の泳ぎも素晴らしいものでした。この数年の傾向として、女子においては中学生スイマーの力の向上が目覚ましいのです。
 
 「日本水泳」は強くなっています。

 今2015年の世界選手権大会、ユニバーシアード大会、世界ジュニア選手権大会における、代表選手達の活躍が、本当に楽しみです。
 2月7日、水泳・飛び込み国際大会派遣選手選考会の第1日目が東京辰巳国際水泳場で行われました。

 そして、女子高飛び込み種目で佐々木那奈選手が優勝しました。

 佐々木選手は16歳、兵庫県甲子園学園高校の1年生です。得点は371.80というハイレベルなものでした。
 そして2位には、6.25点差と言う僅差で板橋美波選手が入りました。

 板橋美波選手は15歳、兵庫県御殿山中学校の3年生です。2人は共にJSS宝塚に所属していますから、同じクラブで切磋琢磨するライバルということになります。

 国際舞台へのデビューでは、板橋選手が先行しました。2014年9月の日本選手権水泳の女子3m板飛び込み種目で初出場・初優勝を飾り、続く仁川アジア大会の代表となったのです。
 14歳の日本チャンピオン誕生は、当時話題となりました。

 そして、今大会でライバルが誕生したのです。

 佐々木選手は、今大会4回目の試技で板橋選手を追い上げ、最後5回目の試技で大逆転を魅せたのです。

 日本の女子飛び込み種目では、過去にも1980年の馬淵よしの選手や2006年の浅田梨沙選手が日本選手権大会で優勝し、その後も日本女子水泳界を引っ張る活躍を見せましたけれども、世界トップを争う大会では思ったような成績を残せませんでした。

 素晴らしい才能を持っているのに、日本国内に強力なライバルが居ないことも原因のひとつかなと感じていました。

 今大会の佐々木選手の371.80点は、ロンドン・オリンピック2012の銀メダルに相当する得点です。世界に通用する得点なのです。
 16歳の佐々木那奈選手と15歳の板橋梨沙選手には、例えば古橋広之進選手と橋爪四郎選手のような「良きライバル」「良き友人」として、切磋琢磨して行っていただきたいと思います。容易には得られない素晴らしいプレーヤーを身近に得ることが出来たのですから。

 今大会は、水泳日本女子飛び込み界に素晴らしいペアが誕生した大会であったように思います。2016年のリオデジャネイロ・オリンピック、2020年の東京オリンピックにおける大活躍がとても楽しみです。
 2014年のパンパシフィック水泳大会やアジア大会等における、日本競泳チームの大活躍を観るにつけ、戦後の日本水泳を世界にデビューさせた2人の偉大なスイマー・偉大なライバルを忘れてはならないでしょう。

 古橋広之進選手といえば、多くの人がご存知の「フジヤマのトビウオ」です。戦後間もない日本にあって、1949年6月の全米選手権で大活躍、日本の戦後復興を精神面から支えた存在として有名です。

 一方、橋爪四郎選手は、古橋選手のライバルとして、常に凌ぎを削る間柄であり世界新記録を何度も樹立しているのですが、いつも古橋選手に次いで2位であったためか、あまり知られていません。不思議なことだと思います。

 古橋広之進(静岡県出身)と橋爪四郎(和歌山県出身)は、ともに1928年生まれの同期生です。誕生日は、古橋が9月16日、橋爪が9月20日と、これも近いのですが、古橋の方が4日早い。この4日だけ年上ということが、2人の関係を決めたのでしょうか。

 終戦直後の1946年橋爪は古橋に誘われて日本大学に進学しました。
 古橋と橋爪は、1947年から競技会において好記録を連発します。1948年のロンドンオリンピックには、独立国ではなかった日本は出場できませんでしたが、日本水泳連盟は日本水泳選手権をロンドンオリンピック競泳競技と同じ日程で開催し、記録を比較するという施策を取りました。
 戦後間もない時期ですが、当時の日本水泳連盟ひいては日本人の気概溢れる施策であったと感じます。

 この国体で、古橋は400m自由形、1500m自由形の2種目でロンドンオリンピック優勝記録および世界記録を上回る記録を叩き出しました。橋爪も1500m自由形でロンドンオリンピック優勝記録と世界記録を上回りましたが、古橋に僅かに及ばす2位でした。(古橋の記録18分37秒0、橋爪18分37秒8)
 当時の日本は、国際水泳連盟に所属していませんでしたから、これらの記録は世界新記録としては公認されませんでしたが、「日本競泳陣強し」の情報は、世界を駆け巡りました。

 そして翌1949年、日本が国際水泳連盟に復帰した年の8月、古橋と橋爪はロサンゼルスで開催された水泳の全米選手権大会に参加しました。ついに、日本競泳陣の力を示す時が来たのです。

 この全米選手権大会の400m自由形、800m自由形、1500m自由形の3種目は、いずれも1着古橋選手、2着橋爪選手でした。そして、古橋の記録は全て世界新記録でした。この時、古橋選手は「フジヤマのトビウオ」と称されたのです。

 橋爪選手も、古橋と差の無い2着を連発し、世界新記録も連発したのですが、常に古橋の2着でした。
 橋爪四郎は世界記録を11回更新していますが、その全てが古橋広之進の2着だったという、これも滅多に見られない記録でしょう。私はこの2人以外に、こうした関係を知りません。

 古橋は、同じ日本大学に在って、橋爪に負けまいと練習を重ねていたでしょうし、橋爪もまた同じであったと思います。日頃から常に競い合っていたという点でも、真のライバルといえると思いますし、「フジヤマのトビウオ」は古橋・橋爪の切磋琢磨から生まれたものだと思います。

 1952年のヘルシンキオリンピックでは、橋爪選手が1500m自由形で銀メダルを獲得しました。古橋選手は、1951年の南米遠征の時にアメーバ赤痢に罹病した影響もあって、既にピーク時の力は発揮できず、メダルは取れませんでした。

 戦後日本復興の心の拠り所であった古橋広之進と橋爪四郎。日本を支える素晴らしいライバル関係でした。
 色々な記録を観る限り、2人の地力はほぼ互角であったと推測されますが、「古橋選手に気を使い、ヘルシンキオリンピックで獲得した銀メダルを他人に見せなかった橋爪選手のやさしさ」が、古橋1着、橋爪2着の要因のひとつではなかったかと考えています。
 パンパシフィック水泳大会2014は、8月21日から25日にかけて、オーストラリア・ゴールドコーストで開催されました。

[日本代表選手のメダル獲得実績] 金7個、銀8個、銅4個、計19個

<男子チーム>
・萩野公介 200m個人メドレー・金メダル、400m個人メドレー・金メダル、200m自由形・銀メダル、400m自由形・銀メダル
・小関也朱篤 100m平泳ぎ・金メダル、200m平泳ぎ・金メダル
・入江陵介 100m背泳ぎ・金メダル、200m背泳ぎ・銀メダル
・瀬戸大也 200mバタフライ・金メダル、200m個人メドレー・銅メダル
・池端宏文 100mバタフライ・銅メダル
・小日向一輝 200m平泳ぎ・銅メダル
・男子400mメドレーリレー・銀メダル
・男子800mフリーリレー・銀メダル

<女子チーム>
・渡部香生子 200m平泳ぎ・金メダル、100m平泳ぎ・銀メダル
・星奈津美 200mバタフライ・銀メダル
・金籐理絵 200m平泳ぎ・銀メダル
・女子400mフリーリレー・銅メダル

 堂々たる成績です。

 萩野公介選手は日本のエースとなりました。
 200m個人メドレーのマイケル・フェルプス選手との戦いは、手に汗握るものでした。3位に入った瀬戸大也選手と共に、日米を代表する、世界を代表する競泳であったと感じます。
 さらに、メドレー種目のみならず200m自由形の銀メダルも見事でした。単独種目でも世界のトップクラスで戦えるようになってきたのです。厳しいスケジュールへの対応・持久力の向上も含めて、「日本のマイケル・フェルプス」への道を着実に歩んでいるように見えます。

 小関選手も金メダル2個という素晴らしい成績を残しました。北島康介選手を始めとする「日本男子平泳ぎの伝統」を見事に引き継ぎました。まだまだ未完成な泳ぎとも言われていますので、それだけ伸びしろが有るということでしょう。

 入江選手は貫録の泳ぎという感じでしたが、大きな国際大会で初めての金メダル(100m背泳ぎ)であったというのは意外でした。
 長い間、世界のトップで戦ってきた入江選手も、この優勝で一層強さを増した可能性があります。

 瀬戸選手の200mバタフライの優勝は素晴らしいものでした。萩野選手同様、メドレー種目のみならず単独種目でも世界のトップで戦えることを証明したのです。日本水泳は、同時期に萩野・瀬戸というライバルを得たのです。頼もしい限りです。

 池端選手と小日向選手の銅メダルも見事でした。日本水泳の層の厚さを示した活躍でした。

 そして、男子種目で最も見応えが有ったのは800mフリーリレーでした。
 優勝候補NO.1のアメリカチームと抜きつ抜かれつの大接戦。最後は、アメリカチームに0.13秒逆転されましたが、日本チームが勝っていても何の不思議も無い内容でした。

 女子チームの活躍も見事でした。
 17歳・渡部香生子選手の200m平泳ぎの金メダル獲得の泳ぎは、あの岩崎恭子選手を髣髴とさせるものでした。100mの銀メダルと共に、大きな自信となったことでしょうし、今後は追いかけられる立場になった大会とも言えるでしょう。
 また、200m平泳ぎ銀メダルの金籐選手は、この種目の日本チームの選手層の厚さを示しました。

 星選手の銀メダルも見事でした。女子200mバタフライも、すっかり日本の得意種目となった感じです。

 これまで、アメリカチームへのチャレンジャーであった日本競泳チームでしたが、この大会の戦いぶりを観ると、種目によってはライバルになってきた感じです。アメリカチームのライバルということは、世界のトップということでしょう。
 
 今後の国際大会における、日本競泳チームの活躍から眼が離せません。
 パンパシ水泳大会が始まったのは1985年でした。今から29年前ですから、比較的新しい大会と言えるでしょう。

 この大会の開始は、夏季オリンピックの国別成績と大きな関係があるのです。

 1985年前後の夏季オリンピック大会の国別メダル獲得数を観てみましょう。

[1972年ミュンヘン]
・1位ソビエト 金50個、銀27個、銅22個、計99個
・2位アメリカ 金33個、銀31個、銅30個、計94個
・3位東ドイツ 金20個、銀23個、銅23個、計66個

[1976年モントリオール]
・1位ソビエト 金49個、銀41個、銅35個、計125個
・2位東ドイツ 金40個、銀25個、銅25個、計90個
・3位アメリカ 金34個、銀35個、銅25個、計94個

[1980年モスクワ←西側諸国が参加せず]
[1984年ロサンゼルス←東側諸国が参加せず]

[1988年ソウル]
・1位ソビエト 金55個、銀31個、銅46個、計132個
・2位東ドイツ 金37個、銀35個、銅30個、計102個
・3位アメリカ 金36個、銀31個、銅27個、計94個

 こうしてみると、1970年代~1980年代のオリンピックは「東西対抗」というか「ソビエト・東ドイツVSアメリカ」の色合いが強く、それも次第にアメリカがソビエト+東ドイツに押されてきていた時代であることが分かります。

 特に、アメリカがオリンピック史上初めて「金メダル獲得数で3位に下がった」1976年モントリオール大会が典型的でした。
 かつて最強を誇ったアメリカ競泳チームは、女子競泳11種目でひとつも金メダルを獲得することが出来ず、一方で東ドイツチームが10種目で金メダルを獲得するという、東ドイツが圧勝した大会となったのです。スポーツ大国・水泳大国アメリカにとっては屈辱的な結果でした。

 1980年モスクワ大会・1984年ロサンゼルス大会は、西側・東側の諸国がボイコットする形で行われましたから、メダル獲得競争という面での比較には、あまり意味が有りませんでしたけれども、アメリカスポーツ界、特にアメリカ水泳界にとっては、東側諸国、特に東ドイツ水泳チームの驚異が継続していたのです。

 そうした状況下の1985年、アメリカ・日本・オーストラリア・カナダの4か国が「環太平洋の水泳競技レベルの向上」を目指してパンパシフィック水泳連盟を設立し、パンパシフィック水泳選手権大会を創設・開始したのです。1985年の第一回大会は、東京で開催されました。

 しかし、ある意味では皮肉なことに、1990年前後に発生したソビエト連邦の崩壊を始めとする東側世界の瓦解は、国家としてのソビエト・東ドイツの消滅につながりました。1988年ソウル大会が、ソビエトと東ドイツにとっての最後のオリンピックとなったのです。

 もともと、ソビエトと東ドイツのスポーツ界については、「ステートアマチュア(政府の全面的支援を受けているプレーヤー)問題」や「ドーピング疑惑」が存在していましたので、その競技力や記録についても色々と取り沙汰されてきていました。
 とはいえ、厳然として存在するメダル大国、オリンピックで1位と2位のメダル大国が忽然と?無くなってしまったのです。

 パンパシ水泳大会は突然「その設立意義を失ってしまった」のですけれども、中止にはなりませんでした。
 20世紀には1985年以降2年に一回、21世紀は2002年以降4年に1回のペースで、開催されてきています。参加国も当初の4か国にブラジルやアフリカ諸国など「環太平洋ではない」国々も参加するようになり拡大して来ています。
21世紀にはオリンピックの中間年に開催されるビッグイベントとして、その存在価値を増してきているようにも観えます。

 さて、ソビエトと東ドイツが無くなって以降、水泳競技特に競泳競技はアメリカの強さが際立つこととなりました。
 世界の競泳地図は「アメリカVS他の国々」となったのです。

 パンパシフィック水泳大会の大会記録も、アメリカが圧倒しています。
 男子の20種目中12種目、女子の20種目中14種目の大会記録が、アメリカのスイマーのものです。
 マイケル・フェルプス、ライアン・ロクテ、ジャネット・エバンス、ジェシカ・ハーディー、レベッカ・ソニ、といった錚々たるスイマーが並びます。

 対する他の国々では、やはりオーストラリアが強く、男子4種目、女子6種目の記録を保持しています。イアン・ソープ、グラント・ハケット、エミリー・シーボム、ジェシカ・シッパーといった名スイマーが並びます。

 我らが日本チームでは、男子平泳ぎの100mと・200mの2種目に北島康介選手の名があるのみです。

 それにしても、パンパシ水泳大会の記録保持者・優勝者は、そのままオリンピックのメダリストになっているケースが、とても多いように観えます。パンパシ水泳大会のレベルの高さを感じさせる事実でしょう。

 第12回パンパシフィック水泳選手権大会は、2014年8月21日~25日、オーストラリア・ゴールドコーストで開催されます。
 日本チームも強力な布陣で臨みます。

 選手の皆様を応援するとともに、パンパシ水泳大会の大会記録に北島選手以外の日本人スイマーの名が刻まれることにも大きな期待がかかります。

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