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 イタリア・トリノにおいて、12月5日にショートプログラムSP、12月7日にフリースケーティングFSが行われた、2019年のフィギュアスケート・グランプリファイナル大会の男子は、アメリカ合衆国のネイサン・チェン選手が優勝を飾りました。

[グランプリファイナル2019男子の結果]
1位 ネイサン・チェン選手 SP110.38点 FS224.92点 計335.30点
2位 羽生結弦選手 SP97.43点 FS194.00点 計291.43点
3位 ケヴィン・エイモズ選手(フランス) SP96.71点 FS178.92点 計275.63点

 SPで高得点をたたき出したチェン選手が、FSもほぼノーミスで滑り切り、世界最高得点で圧勝しました。
 「4回転ジャンプの安定感が際立つ」、世界最高の演技でした。

 羽生結弦選手も、FSに「4回転ルッツ」を組み込み、それを見事に熟しましたが、やはりSPでの「4回転+3回転」のミスが祟り、FSでもこの演目は失敗してしまい、思ったように得点を伸ばすことができませんでした。

 チェン選手と羽生選手との合計得点の差は40点以上に広がりましたが、テレビで両選手の演技を観た限り、それ程の大差が有る様には観えませんでした。
 羽生選手が、組み込んだ演目をキッチリと熟せば、僅差の勝負となっていたことでしょう。

 また、羽生選手の演技後の得点公示がとても遅くなったことは、羽生選手の演技に対する「審判団内部の確執」があったかもしれないことを感じさせました。
 これまでも、フィギュアスケートの大会において、時々見られた事象ですけれども、今回は「羽生選手の得点をなるべく低くすることで、チェン選手が1度や2度ミスをしても優勝できる環境を整えようとする審判員が居た」ことを、疑われても止むを得ない「長い時間」がかかったのです。
 陸上競技や競泳とは異なる「採点競技」においては、こうした不自然さを感じさせる動きは、極力無くして行かなければならないのですが、「また出た」ということでしょうか。
 テレビ画面の左上に表示されていた「暫定技術点」より、大幅に低い技術点が公示されたことも、この疑惑を深める可能性が有ります。
 もちろんテレビ画面に表示されているのは「暫定」「ご参考」の得点なのですけれども、他のプレーヤーの時には概ね「暫定」得点の前後で正式な得点が出てくるのに、羽生選手の時だけは大幅に低い、というのでは、「何かあったの?」という声が出るのも自然なことでしょう。
 そして、こうした不自然な動きを感じさせる採点が行われた後に、「勝たせよう」と目論んでいたプレーヤーが「完璧な演技」を魅せてくれるのも、毎回同じだと感じます。
 「余計なこと」をしなくとも、強い選手は素晴らしい演技を見せてくれるのです。
 もちろん、「ライバル選手の得点が伸びなかったので気楽にプレーできた」のが、完璧な演技の要因のひとつであろうという見方も、あります。

 羽生選手は、大会終了後のインタビューで、「直ぐに練習がしたい」と語りました。
 敗れたことによる「失意」など微塵も感じられないコメントでした。
 「4回転ルッツ」を本番で成功させることができたことに対する手応えさえ、感じている様子。

 続いて、他のインタビューでは「今に観ていろ」とコメントしたとも報じられました。
 
 素晴らしい「意欲」です。

 どんな競技においても、世界トップクラスのアスリートは「負けず嫌い」であると言われ、実際に、吉田沙保里選手や大谷翔平選手の凄まじいというか、リラックスタイムにおけるテレビゲームにおいてさえ負けることをとても嫌がるという、スタープレーヤーに必須の「好ましい負けず嫌い」性格を、度々眼にしてきましたが、羽生結弦選手の負けず嫌いも、これらのアスリートに勝るとも劣らないレベルであることを、改めて感じさせてくれた大会でした。

 フィギュアスケート史上に燦然と輝く「オリンピック2大会連続金メダル」という偉業、あのエフゲニー・プルシェンコ選手でも達成できなかった偉業を成し遂げ、史上最高の男子フィギュアスケーターという評もあり、およそ、フィギュアスケート界において考えられる全ての栄光を手にしてきたスーパースターにして、この超「負けず嫌い」が維持されていること、自らの得点をもっともっと伸ばしていこうとする「強い意欲」が存在していること、に対して、感嘆の声を挙げずにはいられません。

 現在、男子フィギュアスケート界に君臨しているネイサン・チェン選手にとっても、まさに「驚異」の存在であることは、間違いないのでしょう。

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 さいたまスーパーアリーナを舞台に開催された、フィギュアスケートの世界選手権大会ですが、日本チームのメダルは男子シングルの羽生結弦選手の銀メダルだけでした。

 もちろん、世界選手権大会で銀メダルを獲得するというのは、とても立派な成績ですが、日本のファンの大会前の期待と比べれば、とても残念な結果であったことも間違いないでしょう。
 「完敗」というのが的確な言葉であろうと思います。

 男子シングルの羽生選手・宇野選手と女子シングルの紀平選手の3つのメダル獲得は確実で、男女ともに金メダルの可能性もあるというか、相当に「高い」という期待をしていたのです。

 しかし、世界のレベルはとても高かったのです。
 当たり前のことなのですけれども、どうしてもそういうことは忘れてしまいがちなのでしょう。

 日本チームの各選手に共通していたのは、「ショートプログラムSPでの不振」でした。
 大会最初のジャンプを思い通りには跳べない選手が続出したのです。

 紀平選手が1回転、羽生選手が2回転となって、「無得点」の発進となってしまいました。

 「地元大会」ということに対する気負い・力みが無かったとは言えないと感じます。

 それに加えて「世界の進歩に日本が付いて行けていなかった」という要素が加わって、今般の結果が生じたのではないでしょうか。

 我が国に限ったことではありませんが、地元開催というのは、普段の生活環境を維持した状況でゲームに臨むことが出来ることや、圧倒的な応援を背に戦うことが出来ること、「勢いに乗って」好成績を連発することが出来ると言ったメリットがありますが、一方で、「他国開催」を大きく上回る「応援・期待」がプレッシャーに繋がり易く、ひとりの選手、ひとつのチームの失敗が他のプレーヤー達に伝播し易いというリスクもあるのです。

 「地元開催世界大会」に存在する厳然たるリスクについては、東京オリンピック2020に向けて、日程・会場の設定、プレーヤーの出場順番等々、開催国として可能な限りの対策を講じておく必要がありそうです。
 
[2月21日/23日・さいたまスーパーアリーナ]
1位 ネイサン・チェン選手 323.42点(SP107.40、フリー216.02)
2位 羽生結弦選手 300.97点(SP94.87、フリー206.10)
3位 ビンセント・ゾウ選手 281.16点(SP94.17、フリー186.99)
4位 宇野昌磨選手 270.32点(SP91.40、フリー178.92)
5位 金博洋 262.71点(SP84.26、フリー178.45)
6位 ミハイル・コリヤダ選手 262.44点(SP84.23、フリー178.21)

 ネイサン・チェン選手の圧勝でした。

 ショートプログラムSPも素晴らしい演技でしたが、フリースケーティングは「圧巻」でした。
 殆どノーミスの演技でしたが、単にノーミスと言うだけでは無く、ひとつひとつの演目の完成度が見事でした。フリー最初の演目、4回転ルッツを観た時の衝撃、単独の演目としては現在最も難しいとされている演目を完璧に熟しました。
 驚いて観ていると、そのGOEが4点を優に超えて5点に迫っていました。
 単独ジャンプで5点に近い加算点とは凄い・・・。

 この大会というか、現時点のチェン選手の地力の高さを如実に示したルッツジャンプであったと感じます。
 
 次々に繰り出されるその後の演目でも、次々に高い加算点が与えられました。
 スピンやステップといった、ジャンプに比べれば大きな得点が付きにくい演目でも、相当の加算点が付き続けました。
 多くの演目に付いて、羽生選手より上の加算点であったと思います。

 大会前、今年1月の全米選手権大会で「344.22点」という驚異的な得点を叩き出したことが報じられていました。
 何故、世界のフィギュアスケート大国のひとつであるアメリカのNO.1を決める大会が国際スケート連合(ISU)の非公認なのかは不思議なことですが、いずれにしても世界屈指のナショナル選手権大会で340点越えという、とんでもないスコアを記録していたのです。

 そして、その記録が決して「まぐれ」ではなかったことを、さいたまスーパーアリーナで世界中に示したのです。

 当然のことながら、羽生結弦選手がSPの最初の4回転ジャンプを成功していたとしても、今大会はネイサン・チェン選手が優勝していたことでしょう。
 SP1位、フリー1位、それも2位に大差を付けての1位ですから、別次元のレベルに居るのです。

 故障から復帰の羽生選手も素晴らしい演技を魅せてくれました。

 久しぶりのゲームに臨むに際して、自らを懸命に鼓舞し、勝利への執念を示し、試合勘が鈍っていたであろう中で、あれだけのフリーを演じるのですから、オリンピックチャンピオンの名に恥じないというか、「普通?の世界選手権(変な言い方で恐縮ですが)」であれば十分に優勝に値するプレーを魅せてくれました。
 今回は「ネイサン・チェン選手の大会」だったのです。

 それにしても、2018年平昌オリンピックから2019年の世界選手権にかけての1年間における男子フィギュア界の進歩は、凄まじいものであったことを、改めて認識させてくれた大会でした。
 最近の世界選手権の過去のメダリスト達が、全くメダルに届かなかったのです。

 「フリープログラムに4回転ジャンプを4本入れる」選手が「続出」しましたし、最高難度演目「4回転ルッツ」も珍しいものではありませんでした。
 この1年間で、「4回転を飛ぶ」から「何種類の4回転を何回成功させる」時代に、一気に進んだのです。長足の進歩でしょう。

 特にアメリカチームの成長は目覚ましいものです。
 今大会3位となったビンセント・ゾウ選手は、大会前から「メダリストに相応しい選手であることを示す」と公言して、それを実行しました。
 281.16という総合得点は、とても高いレベルのものです。2018年までなら優勝していても不思議の無い水準でしょう。

 「チェン選手とゾウ選手」、アメリカチームは最強の2プレーヤーを得ました。
 この「10歳代の2選手」が、今後の世界の男子シングルを牽引して行く存在なのでしょう。

 3月10日、スピードスケート・ワールドカップWCの今季最終戦、ソルトレークシティ大会(アメリカ)の女子1500mで、高木美帆選手が1分49秒839という驚異的な世界新記録を樹立して優勝しました。
 女子において「史上初の49秒台」という、歴史的なレースとなったのです。

 会場のユタ・オリンピックオーバルは世界屈指の高速リンクです。
 これまでも数多くの世界記録を生んできたリンクですが、今大会も世界新記録ラッシュに沸きました。

 同じレースで複数の選手が世界新記録をマークするレースもあったのです。
 
 例えば1日目の男子500mでは、新濱立也選手が33秒835の世界新記録をマークして首位に立ちましたが、後から滑ったパヴェル・クリズ二コフ選手が33秒616で世界記録を更新して優勝しました。

 女子1000mでも、優勝したブリトニー・ボウ選手、2位の高木美帆選手、3位の小平奈緒選手の3名が世界新記録でした。

 そして、女子1500mにおいて、高木美帆選手の見事な世界新記録が生まれたのです。

 「世界記録製造リンク」といえば、20世紀にはドイツのインツェルが有名でしたが、21世紀はソルトレーク・オリンピックの会場であった「ユタ・オリンピックオーバル」ということなのでしょう。

 さて、女子の1000m・1500mといえば、日本の小平・高木の2選手とアメリカのボウ選手の争いとなっていて、今季のワールドカップ・シーズン総合成績では、1000m・1500m共にボウ選手が優勝し、両種目共に高木美帆選手が総合2位、1000mでは小平選手が総合3位と健闘しています。
 シーズンを通しては、ブリタニー・ボウ選手の強さ・安定感が秀でているのです。

 そのボウ選手に、0.5秒近い差を付けた高木選手の、今回の世界記録の凄さが一層際立つところでしょう。

 ちなみに、今季WC女子500mのシーズン総合優勝は、オーストリアのバネッサ・ヘルツォーク選手でした。小平選手は、出場したレースでは無敗ですが、全てのレースに出場しているわけでは無かったのです。
 ちなみに今大会(WCソルトレークシティ大会)の500mでも、小平選手が1日目・2日目共に優勝しているのですが、ヘルツォーク選手は2位と3位に入っています。

 2010年代の後半、日本女子スピードスケート陣は素晴らしい活躍を続けていますが、「王国」オランダ勢を始めとして、世界には強者が沢山いるのです。(当たり前のことで恐縮です)

 2月10日、ショートプログラムSP4位でフリースケーティングFSに臨んだ宇野昌磨選手が、完成度の高いプレーを魅せて逆転優勝を飾りました。

 総合順位は以下の通り。
1位 宇野昌磨 総合得点289.12 SP91.76・FS197.36
2位 金博洋 同273.51 SP92.17・FS181.34
3位 ヴィンセント・ジョウ 同272.22 SP100.18・FS172.04

 SPで約8点の差を付けられて4位だった宇野選手が、総合では14点以上の差を付けて勝っているのですから、宇野選手のFSの演技が「圧倒的なもの」であったことが良く分かります。
 197点を超えるFSというのは現在の世界最高点ですし、羽生結弦選手の最高点演技を約7点上回る、世界フィギュア史上に刻まれる好プレーでした。

 大会前、右足首の再三の「捻挫」の為に、練習不足が指摘されていた宇野選手は、SPではその不安が表れた形でした。
 軸足、ジャンプ時に着氷する足である右足の足首が故障している状態では、満足な演技が出来ないのは自然なことで、今回は「無理をしないで」欲しいと感じていました。

 しかし、FSの6分間練習に登場した宇野選手の「眦を決した」様子を観た時、「全力を投入」するつもりであることがよく分かりました。3月の世界選手権に向けて治療を優先し「無理をしない」ということではなく、この大会で全ての力を出し尽くす、怪我の悪化リスクを考えない姿勢が、全身から溢れていました。

 そしてそのFSの演技は、本当に素晴らしいものでした。

 3回トライした4回転ジャンプは全て成功、ステップ、スピンのシークエンスも完璧、唯一のミスと言える「3回転+1オイラー+3回転」の最後の3回転ジャンプでしたが、この演目は基礎点が15点を超える難度の高いものであり、この演目の出来栄え点はマイナス1点以上となっていましたので、逆に言えば、この演目を上手く熟すことができればプラス2点以上の出来栄え点を獲得することが十分可能であり、それは「FS200点越え」に結び付くものです。
 新採点基準における「FS200点越え」の可能性を感じさせる演技であったことになります。
 200点越えはもちろん、世界中の誰も達成していない領域・高みです。

 今回の四大陸選手権大会を観ると、「演目の完成度」の重要性が改めて感じられました。

 「単に4回転にトライする」ことが問題なのでは無く、「試合で4回転を完璧に飛ぶ」ことが重要なのです。
 嫌な言い方で恐縮ですが、誤魔化しているような雑な演技なら「やらない方がまし」なのかもしれません。

 「回転不足の連発」、着氷後の「伸び」が無い4回転ジャンプ、というのでは、「4回転を飛んでいる」とは言えないと思います。
 「一か八か」というレベルでは、試合において飛ぶにはまだ早いということなのでしょう。

 その点では、宇野昌磨選手や、前日の女子シングルの紀平梨花選手は、とても完成度の高い技を身に付けています。それは、演技を見れば誰にでも分かることでしょう。

 フィギュアスケート男子日本チームは、羽生選手、宇野選手の「2枚看板」を前面に押し立てて世界選手権に挑みます。
 もともと宇野選手は、羽生選手に勝るとも劣らないレベルに達しているアスリートですから、日本チームとしては最強の布陣でしょう。
 これ程のスケーターを同時期に2名も生み出したことは、日本男子フィギュア界の「大功績」であることも間違いありません。

 一方で、世界トップクラスに居る2人には、連戦・長いキャリアの影響から、常に「故障」のリスクが存在します。
 3月の世界選手権も、2人共欠場の可能性がないとはいえないでしょう。

 日本男子フィギュア史上最強の2人が健在である間に、次代を支えるスケーターの登場が待たれるところです。
[2月8日・女子シングル最終日・アメリカ合衆国カリフォルニア州アナハイム]
1位 紀平梨花 総合得点221.99 SP68.85・FS153.14
2位 エリザベート・トゥルシンバエワ 同207.46 SP68.09・FS139.37
3位 三原舞依 同207.12 SP65.15・FS141.97

 ショートプログラムで5位と出遅れた紀平選手が、フリースケーティングFSで圧巻の演技を魅せて逆転勝ちしました。
 結果として2位に13点以上の差を付ける圧勝であったことが、紀平選手のFSの凄さを如実に示しています。

 試合前の練習で、紀平選手が左手薬指の関節を亜脱臼した時には、欠場も予想されました。タイミングがとても大切なフィギュアスケートのジャンプシークエンスにおいては、踏切の際に「普段存在しない痛み」が体に走るのは大きな影響が有るので、試技を行うのは困難に思われたからです。

 話が少し逸れますが、例えば主に上半身でプレーするように見えるテニスや卓球、バドミントン、あるいは野球のバッティングといった競技・プレーにおいて、下半身が極めて重要な事は明らかですし、主に下半身でプレーするように見えるサッカーにおいて、上半身が重要な役割を果たすのは、ご承知の通りです。
 フィギュアスケートにおいても、上半身の怪我の影響はとても大きいものでしょう。

 しかし、紀平選手は敢然と出場して来ました。

 とはいえ、故障が有る中での試合における試技で、当該の怪我がどれくらいの影響が有るかは、やってみないと分からないもの(練習と試合は全く違うものです)ですので、トライしてみたのがSPということでしょう。
 そして、SPにおいてはトリプルアクセルを飛ぶことが出来ませんでした。

 それでも、SPのその後のジャンプは綺麗に決めましたから、SPへのトライによって、薬指の故障下、「痛み」や指が動き難い状況におけるジャンプの飛び方を、概ね身に付けた、ということであろうと思います。

 一度身に付けると、その対応策を試合において高確率で発揮できるところが、紀平選手の凄いところでしょう。
 「順応性」「適応力」が抜群なのです。

 もちろん、今大会のFSは、本来のプレーに比べると、スピード、ジャンプの高さ等がやや見劣りしました。
 当初のトリプルアクセル後のコンビネーションジャンプは、本来トリプルアクセル+3回転のものを、ダブルアクセル+3回転にダウングレードして滑っていました。紀平選手は、故障の下で出来る最善のプレーを冷静に行っていたのでしょう。
 この冷静さと丁寧なプレーも、紀平選手の強みです。

 FS試技終了の瞬間、紀平選手は控えめにガッツポーズを魅せましたが、その際にも左手は太腿の上に置いたまま動かしませんでした。相当痛かったのでしょう。

 3位に食い込んだ三原選手は、「乗った時には、とことん押す」という三原選手の持ち味が良く発揮されていました。
 当初のコンビネーションジャンプを成功させて勢いに乗り、素晴らしい試技を完成させました。
 好成績を挙げた大会における三原選手の滑りには、いつも感心させられます。

 それにしても、FSにおいて紀平選手が履いていたスケート靴のブレードの色が左右で異なりました。右脚がゴールドで左足がシルバーだったのです。
 大会前から「靴の具合が良くない」と報じられていましたので、おそらくは左右別々の靴を履いたのであろうと思います。

 別々の2組の靴から、別々に1つずつ左右の靴を選ぶというのも、なかなかの冒険の様に感じますが、現時点で一番履きやすい靴を選択して大会に臨んだことになります。

 ここにも、紀平選手の「適応力」の高さが表れているのでしょう。
 フィギュアスケートのグランプリGPファイナル2018における、紀平梨花選手の活躍は、世界中に大きなインパクトを与えていて、様々なコメント・評価が報じられていますが、中でもロシアの関係者の評価が、とても印象的です。

 極めて「冷静・公平」な評価・コメントが多いのです。

 「女子フィギュアスケート大国」であり、現在最も強いと目されているロシアチームから、これだけ「冷静・公平」な評価が出てくるところに、「ロシアチームの強さ」を感じます。
 加えて、今後も女子フィギュア・ロシアチームは継続して強いであろうと感じます。

 いわば「敵」チームのプレーヤーに対しても、これだけ客観的な評価が出来るところに、ロシアチームの強さの源が有るのでしょう。
 素晴らしいことだと思います。

 まずは、「重鎮」イリーナ・スルツカヤ氏のコメント。
 スルツカヤ氏は、言わずと知れた2002年ソルトレークシティ・オリンピックの銀メダリストにして、2006年トリノ・オリンピックの銅メダリストです。長い間ロシアチームを牽引した、いわば「伝説的プレーヤー」ということになります。

 そのスルツカヤ氏がGPファイナル2018女子を総括して、

① 3回転ルッツ+3回転ループの連続ジャンプは2005年に跳ばれて、今も跳ばれている。しかしキヒラは新しいスタンダードを課した。自分のプログラムをきれいに滑っても、いずれにしろキヒラに届かない。つまり他に道は無いのです。新しい何かを考えだすのが不可欠。それか後ろで止まっているか。
② もし、キヒラがすべてのエレメンツを上手くやると、多くの人より高いレベルにある。キヒラは素晴らしい、シンプルに素晴らしい。
③ 彼女のシニア参戦によって1つは、フィギュアスケートを観るのがとても面白くなった。2つ目に我々ロシアの女子スケーターたちにとても相応しいライバルが現れたと言えます。キヒラは彼女らを神経質にさせるし、彼女たちは付加的な重圧と責任を負うことになります。そう、これはもう本物の戦いよ。

 と語ったと、報じられました。(12月12日配信のTHE ANSWER)

 ロシア選手が自らの演技を上手くやったとしても、紀平選手(複数のトリプルアクセルを配した基礎点の高い演技を行う)には及ばないことを十分に把握していて、それを公然と言葉にしているところが、凄いところでしょう。現状のロシア選手では、どうやっても、ミスが少なかった時の紀平選手には敵わないことをメディアに大声で言い、「新しい何かを考えだすのが不可欠」と警鐘を鳴らし、「本物の戦いが始まった」と締めています。

 妙な依怙贔屓や、過去の選手を引き合いに出して、あの時代のあの選手の方が強かったなどという、現状に対して何の役にも立たないことを必死に述べるより、はるかに上質で、明日に繋がるコメントでしょう。
 こういう「凄い人」が居るロシア・フィギュアスケート界が強いのは、とても自然なことだと感じます。

 続いては、ショートプログラムSPのロシア放送局「Match TV」の放送内容です。(12月8日配信・THE ANSWER)

 この大会のSPにおける紀平梨花選手の演技は「完璧」でした。世界最高得点でもありました。その「完璧な演技」に対して、ロシアの放送局は下記のように報じたのです。

① (最初のトリプルアクセルの成功を観て)理想的です。ジャッジがたくさん加点するでしょう。
② (中盤以降の美しいステップ、スピンを観て)ブラボー、ブラボー。(解説者)なんてファンタスティックな技術点でしょう。このスケーターを見て、弱いところを見つけようとしましたが、ありません。ジャンプ、スケーティング、スピンが素晴らしい。
③ (演技が終了し、実況のアナウンサー)ショックです。(解説者)私もショックです。なんて言っていいか分かりません。世界記録がでると思います。彼女のプログラムを私たちは長く覚えているでしょう。
④ (82.51点が出たことを見て、実況のアナウンサー)82点(と絶句し)技術点もクレイジーだし、構成点もクレイジーだ。フーッ。

 ライバル国のルーキープレーヤーの演技を目の当たりにして、これだけ「冷静・公平」な放送ができるところに、まず感心します。
 偏った、歪んだ放送では無いのです。

 特に解説者の「(紀平の演技に)弱いところを見つけようとしたが無かった」「彼女のプログラムを私たちは長く覚えているでしょう」というコメントは、世界の女子フィギュアスケートシングルを本当に「公平」に見ている人にしか、発することが出来ないものでしょう。

 前述の「重鎮」スルツカヤ氏のコメントのみならず、テレビ中継においても、これだけ「冷静・公平」な放送が出来るというのは、凄いことだと思います。
 当然ながら、この放送がロシアの各家庭に流れているのです。

 自国プレーヤーへの応援は、もちろん行うのでしょうが、他国選手の演技もしっかりと評価し、正確に伝えるというのは、「放送文化のレベルの高さ」を感じると言ったら、大袈裟に過ぎるでしょうか。

 GPファイナル2018の優勝で、紀平梨花選手は一気に世界トップに躍り出ました。これは、世界中が等しく評価しているところです。

 しかし、これだけの「冷静・公平」な評価・コメントを観ると、ロシアチームが今後も強力なライバルとして存在し続けることも間違いないのでしょう。
 12月9日にかけて、カナダのバンクーバーで開催された、グランプリファイナル大会の男子の結果は、以下の通り。

1位 ネイサン・チェン選手(アメリカ) 総合得点282.42(SP92.99、FS189.43)
2位 宇野昌磨選手 総合得点275.10(SP91.67、FS183.43)
3位 チャ・ジュンファン(韓国) 総合得点263.49(SP89.07、FS174.42)

 今大会を通じて、宇野選手はコンディションが悪いと感じました。

 体の動きに本来のキレがありませんでした。持ち味の「俊敏性」に欠けていたのです。
 この「感じ」は、平昌オリンピックの時から存在していて、やや悪化していると思います。
 2018年の宇野選手は、2017年に比べて「キレ」が不足していたのでしょう。

 このことを最も明確に感じるのは、「4回転ジャンプの着地時」の動きです。

 2017年の宇野選手は、着地後相当のスピードで「2~3mほど移動」し、「完成度の高い美しい」ジャンプを魅せてくれていたのですが、2018年はそのスムースさに欠けました。見方によっては「何とか回っている」感じ。
 踏み切り、空中での4回転、着地準備、着地の全ての要素において、「ほんの僅かスピードが足りない」ことが、ジャンプ全体の動きをギクシャクしたものに見せてしまったという印象です。

 シニアデビュー以降の連戦に伴う「心身の疲労の蓄積」やどこかに軽度の故障が有る、ことなどの要因が考えられますが、いずれにしても、オリンピック銀メダリストとして「初の世界一」を目指した宇野選手にとって、今大会はとても残念な結果でした。

 本来の「キレ」があれば、十二分に優勝を狙えたと思います。
厳しいスケジュールの合間を縫っての「回復に向けた取り組み」が待たれるところです。

 ネイサン・チェン選手は、「高い基礎点」をベースにした、「らしい演技」で高得点を示現して、連覇を果たしました。世界トップクラスの力を示したのです。
 
 本ブログでは、今大会は宇野選手とチェン選手の優勝争い、それも「総合280点」を巡っての戦いと見ていましたが、概ね予想通りの結果となりました。

 現在、「最強の2プレーヤー」を擁するフィギュアの男子シングル日本チームとしては、羽生選手、宇野選手が頑張っている間に、次の世代、現在13歳~15歳の世代の中から、将来の日本男子を背負って行くプレーヤーを見出し育成していかなければならないと、改めて感じさせる大会となりました。

 12月9日にかけて、カナダのバンクーバーで開催された、グランプリファイナル大会の女子の結果は、以下の通り。

1位 紀平梨花選手 総合得点233.12(SP82.51、FS150.61)
2位 アリーナ・ザギトワ選手(ロシア) 総合得点226.53(SP77.93、FS148.60)
3位 エリザベータ・トゥクタミシェア選手(ロシア) 総合得点215.32(SP90.65、FS144.67)

 ショートプログラムSPで圧巻の演技を魅せた紀平選手が、フリースケーティングFSでも安定感抜群の演技を披露して、危なげなく優勝した印象です。
 総合得点の230点越えも、本ブログの期待通りでした。

 紀平選手のSPは「空前の演技」でした。フィギュアスケート競技においては、どんなに素晴らしい演技でも、ケチを付けようと思えば、いくつかのポイントが存在するものですが、この演技には無かったと思います。本当の意味での「完璧な演技」だったのではないでしょうか。

 SP開始時から「体が良く動き」ました。
 手、腕、脚、そして全身の動きのキレは驚異的で、音楽との同調性が極めて高く、細かい動きのスピードが尋常では無かったためか、「コマ落ち」の映像の様にさえ観えました。

 ジャンプは、成功するか否かというレベルでは無く、美しいか否かという次元でした。

 キス・アンド・クライにおける、「82点」を見た時の紀平選手の表情・様子も秀逸。
 アスリートの、あれ程「嬉しそうな」姿は、滅多に観られないものでしょう。

 さすがにFSでは、最終滑走ということもあってか「優勝を意識した固い動き」が観られ、最初のトリプルアクセルでミスを犯してしまいましたが、「以後の演技をしっかりやれば十分優勝できる」と考え、それを行動に移したかのように、この後の演技には「固さ」が見る見る減って行きました。
 この「気持ちの切り替えの速さと実行力」が、紀平梨花というアスリートの最大の強みなのかもしれません。

 本大会をヨーロッパに中継した「ユーロスポーツ」の放送では、「(ミスをした後に)完全無欠のパフォーマンス」を魅せたと評し、「この日本人は『震撼』させました」と続けました。

 大会前、誰もがザギトワ選手の圧勝を予想していたのでしょうが、紀平選手はその予想を大きく超える滑りを示したのです。
 SPと総合得点は世界最高レベルでした。
 このSPに、先日の大会のFS154点台を加えれば237点台となります。

 紀平選手はトータル「240点」を目指すことが出来る、現時点では、世界で唯一の女子スケーターなのです。客観的に観て「現在、世界一の女子フィギュアスケーター」であることを、疑うのは難しいでしょう。

 世界各国で「紀平選手が世界一」という報道が相次ぎました。

 日本女子フィギュアスケート界に、素晴らしい選手が登場したのです。

 12月6日~9日にかけて、カナダのバンクーバーで開催される、フィギュアスケートのグランプリGPファイナル大会2018の、男子出場者を観て行きましょう。

 GPシリーズの1位は第3戦と第5戦で優勝した羽生結弦選手、2位は第2戦と第4戦で優勝した宇野昌磨選手、3位は第1戦と第6戦を制したネイサン・チェン選手(アメリカ)となりました。

 6戦しか無いGPシリーズの優勝は、この3名のスケーターが分け合ったのです。
 それは、取りも直さず、2018年のファイナル優勝は、この3人が争う可能性が極めて高いことを示しています。
 現在の男子フィギュアスケート・シングルは、羽生結弦、宇野昌磨、ネイサン・チェンの3選手が抜けた存在なのです。

 少し離された4位には、ミハル・ブレジナ選手(チェコ)が第1戦と第3戦の2位で入りました。「3強」を相手にしての2位2回というのも、安定した実力が伺える成績です。
 5位には、セルゲイ・ボロノフ選手(ロシア)が第4戦の2位と第1戦の3位で入り、6位にはチャ・ジュンファン選手(韓国)が第2戦と第3戦の3位2回で食い込みました。

 さて、GPファイナルの行方ですが、羽生結弦選手が出場してくれば、優勝の可能性が最も高かったことでしょう。「加点をもらえる演技」という点では、宇野・チェンの両選手より相当上に居るのです。SPとフリーの合計で300点前後の得点を叩き出すことが出来ます。

 とはいえご承知の通り、羽生選手は第5戦の公式練習で足首を故障してしまい、今大会は欠場すると表明されましたから、宇野選手とチェン選手の争いとなるのでしょう。

 多くの種類の4回転ジャンプを演技に入れているチェン選手が基礎点では上回りますから、チェン選手がミスの少ない演技を披露出来れば高得点となる可能性が高いのですが、個々の技の完成度やプログラムの構成では宇野選手が上回りますので、チェン選手にミスが重なるようであれば、宇野選手の方が有利なのでしょう。

 一瞬も眼が離せない「合計280点前後の大接戦」が、予想されます。
 12月6日~9日にかけて、カナダのバンクーバーで開催される、フィギュアスケートのグランプリGPファイナル大会2018の、女子出場者を観て行きましょう。

 GPシリーズの1位は、第3戦と第5戦に優勝したアギーナ・ザギトワ選手(ロシア)、2位は第4戦と第6戦に優勝した紀平梨花選手、2試合に出て2勝は、この2選手だけですから、ファイナル優勝に最も近い2選手と見るのが自然でしょう。

 3位には第1戦で優勝し、第4戦で2位となった宮原知子選手、4位には第2戦で優勝し、第4戦で3位となったエリザベータ・トゥクタミシェア選手(ロシア)が入りました。この2選手は1度優勝しているという点で、上位2選手に次ぐ力があると見るべきでしょう。

 5位には第1戦で2位、第3戦で3位となった坂本花織選手、第6位は第1戦で3位、第5戦で2位となったソフィア・サモドゥロワ選手(ロシア)となりました。

 結果として、日本選手3、ロシア選手3という構図となりました。
 現在の世界の女子シングル界を良く現した構図でしょう。

 優勝争いは、ザギトワ選手と紀平選手の争いとなる可能性が最も高いのですが、もし紀平選手が3度のトリプルアクセル(SP1度、フリー2度)を全て成功させれば、紀平選手の優勝が濃厚です。

 紀平選手がトリプルアクセルを1度しか成功できない、あるいは1度も成功できないとなれば、ザギトワ選手と、大技を持っていて基礎点が高いトゥクタミシェア選手との競り合いとなるのでしょう。
 トゥクタミシェア選手がトリプルアクセルを2度(SP・フリーで各1回)成功させれば、「2強」を凌ぐ可能性は十分にあります。

 それ以外の全てのケースでは、ステップやスピン、スパイラルといったシークエンスで安定して高得点をマークできるザギトワ選手が最有力と言うことになるのでしょう。

 紀平選手が合計230点以上(SP80点前後、フリー150点越え)の得点を叩き出して優勝するのを観たいと思っています。

 待ちに待った「日本男子500mの次代のエース」が登場しました。

 11月23日・24日にかけて行われた、スピードスケートのワールドカップ苫小牧大会では、「無敵の女王」小平奈緒選手の優勝や、女子団体追い抜きでの日本チームの優勝など、現在世界トップクラスに居る日本人選手が、その力を見事に示しました。

 一方で、男子500mに「新星」が登場したのです。

 1日目・23日のレースで新濱立也選手(しんはま たつや、22歳)は、同走の世界記録保持者・クリズニコフ選手との競り合いを制して35秒45でワールドカップ初優勝、そして2日目・24日には35秒20で2連勝を飾りました。
 苫小牧ハイランドスポーツセンターという屋外リンクで、2本とも実に安定したスケーティングを披露しました。堂々たる滑りであったと感じます。

 身長183cm・体重83kgという、日本男子スプリンターとしては大柄な体躯です。

 この体躯から、とても素早いスタートを切ります。
 1日目のグリズニコフ選手とのレースでも、100mでリードを奪いました。
 2コーナーから3コーナーにかけては、クリズニコフ選手が盛り返しました。世界記録保持者のさすがのスケーティングです。
 そして3コーナーから4コーナーにかけて、新濱選手が良い加速を魅せて、4コーナーは少しリードして回りました。

 「とても上手いコーナリング」でした。

 このスピードを活かして、そのままゴールインしたのです。

 2日目も同様のレースでした。

 1日目のアウトと2日目のイン、2日とも新濱選手は4コーナーを、膨らむことも無く、バランスを崩すことも無く、スムースに回りました。500mスケーターとして見事なことです。

 男子500mは、スピードスケート競技における「日本のお家芸」です。
 鈴木恵一選手、北沢欣浩選手、黒岩彰選手、井上純一選手、堀井学選手、清水宏保選手、長島圭一郎選手、加藤条治選手、と続く連綿たる歴史が有るのです。
 「男子500m」が日本人プレーヤーに向いていることを、世界中に示し続けて来たのです。
(2013年12月22日の本ブログ「日本男子スピードスケート500mの系譜」稿をご参照ください)

 しかし、2010年バンクーバー・オリンピックの長島選手の銀メダル、加藤選手の銅メダルを最後に、「お家芸」は鳴りを潜めていました。残念ながら、2014年のソチ、2018年の平昌とオリンピック2大会連続で、メダル無しに終わったのです。

 この間は女子陣、小平奈緒選手や高木美帆選手らが「スピードスケート日本スプリント」の伝統を堅持した印象です。

 そして2018年、待ちに待った男子500mの「新星」が登場したということになります。

 恵まれた体躯に宿るパワーと、日本伝統のコーナリングを保持している、新濱立也選手の世界での戦い振りに注目したいと思います。
 
 NHK杯2018の女子シングルが11月9日~10日に行われ、紀平梨花選手(16歳)が、ショートプログラムSP5位からの大逆転で優勝を飾りました。
 フリーの演技は、154点を超える今季世界高得点でした。

 紀平選手は、グランプリシリーズGP初出場での初優勝という、日本女子スケーターとしては史上初の快挙を成し遂げたのです。

 本ブログで紀平選手を最初に採り上げたのは2016年10月2日の記事です。「世界初の快挙」と題して、当時14歳であった紀平選手が、ジュニアGPの大会で「6種類8度のトリプルジャンプを成功させた」快挙に付いて書きました。

 現在有る全てのトリプルジャンプ(トリプルアクセルも3回転ジャンプのひとつです)を熟すというのは、女子選手はもちろんとして男子選手でも容易なことではないのですから、紀平選手がこの時点=2年以上前の段階で、技術面から見れば「日本一の女子フィギュアスケーター」であったと考えても、自然なことでしょう。

 不思議なことは、2年以上前に日本最高のレベルに達していたプレーヤーのシニアデビューが2018年~19年シーズンに持ち越されたことです。

 平昌オリンピックは、年齢制限の為に出場できなかったと記憶しています。
 加えて、手の骨折等があって調子が出ない時期が有ったことも周知のことです。

 そうした諸事情を勘案しても、日本トップクラスというか世界トップクラスのテクニックを保持するアスリートのGPシリーズデビューが、2018~19年シーズンの第4戦というのは、いかにも遅すぎる感じがします。
 どうして第1戦にデビューできなかったのでしょうか。

 ご本人の調子が上がらなかったといった理由であれば、止むを得ない感じがしますが、またぞろ、協会内の確執とか、愚人が口を挟んでの訳の分からない勢力争い、が要因であれば、「スポーツパワハラ元年」のひとつの事象ということになってしまいます。
 そういった詰まらない事情が無いことを祈るばかりです。

 さて、紀平選手はコンディションが整っていれば、ジャンプシークエンスにおいて殆どミスをしないタイプのプレーヤーです。
 NHK杯2018SPの最初のジャンプ、トリプルアクセルで転倒したのは、とても珍しいことで、紀平選手でも「GPデビュー戦ということで緊張」するのだと感じました。

 とはいえ、転倒の理由はご本人が一番分かっていたのでしょうから、以降に付いて心配はないと観ていましたが、案の定、フリーも含めてその後の全てのジャンプをきっちりとプレーしたのです。(フリーの最初のジャンプ、トリプルアクセルからのコンビネーションジャンプは少し詰まりました。演技の最初のジャンプはやはり緊張するものだと感じましたが)

 現時点の一般的な比較をすれば、女子におけるトリプルアクセルは、男子における4回転ジャンプに相当する技であろうと思います。
 それを2度成功させ、内1度はコンビネーションなのですから、紀平選手の演技の基礎点は、他の選手より相当高いものでしょう。基礎点の高い演技をミスなくプレー出来れば、優勝するのは自然なことです。

 大会終了後のインタビューで、3位となったロシアのトゥクタミシェア選手が「トリプルアクセルを2度飛べる選手が居ることは素晴らしいこと」とコメントしています。
 トゥクタミシェア選手もフリー演技で1度のトリプルアクセルを成功させていますが、「2度成功させることの難しさ」をコメントしていただいたのでしょう。

 紀平梨花選手は、現在世界の女子シングル界を席巻するロシアの選手達と、互角に戦って行けるスケーターです。
 日本女子フィギュアスケート界の「至宝」として、今後益々の活躍が期待されるところです。

 NHK杯2018女子シングル種目の表彰式に臨んで、1~3位の選手が舞台裏に集まった時、2位の宮原知子選手が紀平選手を笑顔で迎えていました。同じチームの選手として、「お姉さん格」の宮原選手が魅せてくれた素晴らしいシーンであったと思います。
 世界トップクラスのプレーヤー同士の、ひとつの在り様なのでしょう。

 丁度、MLBロサンゼルス・エンジェルスのスプリングトレーニングにおける、アルバート・プーホールズ選手と大谷翔平選手との在り様に似ているのではないかと、勝手に考えてしまいました。
 4月18日、荒川静香氏のフィギュアスケート世界殿堂入りが報じられました。

 「世界フィギュアスケート殿堂」は、アメリカ合衆国コロラド州コロラドスプリングスに在る、「世界フィギュアスケート博物館」と「栄誉の殿堂」が授与と管理を行っている賞です。

 当然ながら、容易には受賞できない栄誉であり、日本人では3人目となります。

 日本人受賞者のひとり目は、2004年の伊藤みどり氏でした。伊藤氏は、1992年アルベールビル・オリンピックの女子シングル銀メダリストであり、世界の女子で初めてトリプルアクセルと、3回転+3回転の連続ジャンプを成功させたことが評価されたものだと伝えられています。

 ふたり目は、2010年の佐藤信夫氏でした。佐藤氏はコーチとして、浅田真央選手を始めとする世界トップクラスの選手を数多く育てたことが評価されたものでしょう。

 そして、三人目が荒川氏で、2018年の受賞となります。2006年トリノ・オリンピック女子シングルの金メダルが評価されたことは、間違いありません。

 選手の表彰については「現役引退後5年以上経過」という条件がありますから、伊藤氏や荒川氏の受賞には少し「時間差」を感じることになります。
 いずれにしても、三氏の受賞は、世界のフィギュアスケート関係者からの高い評価を明示しているという点で、本当に素晴らしいことだと感じます。

 荒川静香選手のトリノにおける金メダルは、この大会の日本選手団「唯一のメダル」でしたから、日本のウインタースポーツファンにとって、とても貴重なメダルでしたし、男女を通じて、フィギュアスケート競技における「初めてのオリンピック金メダル」でもありました。
 今回の受賞に「日本チーム唯一」「日本フィギュアスケート界初」といった「物差し」がどの程度影響したかは、分かりませんけれども、その偉業は、誰もが納得する高いレベルのものだったのです。
 オリンピックが終わり、恒例?のフィギュアスケート・ルール改正の季節がやってきました。

 国際スケート連盟が本年6月の総会で決議しようとしている「ルール改正(採点方法の改正と言った方が分かり易いかもしれません)」の内容が、明らかになってきました。

 「より完成度の高いジャンプに、より高い得点が与えられる」方向性のようです。

 例えば、現在13.6点の4回転ルッツの基礎点11.5点へ、同10.3点の4回転トウループが9.5点に下がる一方で、トリプルアクセルは8.5点から8.0点、トリプルルッツは6.0点から5.9点と、4回転ジャンプと比較して3回転の方が「基礎点の下げ幅が小さい」のです。

 一方で、いわゆる出来栄え点=加点幅が±3点から±5点に拡大される方向とのこと。

 そうすると、例えば最高の出来栄えのトリプルアクセルは8.0+5.0=13.0点となって、普通の出来の4回転ルッツの11.5点を上回ることになるのです。

 まだ「改正の内容」が固まっているわけではありませんが、とはいえ「改正の方向性」は固まっているようですので、2018年~19年シーズンの競技会では、「ジャンプの完成度の高さ」がポイントとなってくるのでしょう。
 理屈上では、4回転を一度も飛ばなくとも、高いレベルの3回転を積み上げることで対抗できる可能性があります。

 確かに、2017年~18年の「採点基準」では、男子においては多くの種類の多くの4回転ジャンプを成功させれば、「必ず優勝できる」ルールでした。「基礎点合計がより高いプログラムを組み、それを成功できるか否か」、ある意味では「一か八か」のトライといった感じがしたものです。

 結果として、ジャンプとジャンプの間を繋ぐシークエンスが軽んじられ、いわゆる「スカスカの演技」が見られた、増えたとの指摘もあります。それでは、フィギュアスケートの魅力も半減だといった意見もあることでしょう。

 加えて、「演技後半で行ったジャンプの基礎点が1.1倍」というルールも同時に見直され、後半で飛ぶことが出来るジャンプの本数に制限が付くという方向だそうです。
 「全てのジャンプを演技後半に」という戦術は、取ることが出来なくなるのです。

 演技全体の技のバランスという面からは、とても良い改正の様に感じられます。

 男子についていえば、「とにかく多くの4回転ジャンプを成功させた選手が勝つ」という「定理」の変更に結びつきますし、女子については「4回転ジャンプ習得・成功が生き残るための必須条件」との近時の方向感の、見直しに繋がる可能性があります。

 フィギュアスケート競技においては、高難度の技に果敢に挑んでいく「力強さ・勇気」が大切なポイントですけれども、一方で「ほれぼれするような美しさ・完成度」もとても重要な要素であろうと思います。
 「日本女子フィギュアスケート陣の意地」を魅せていただいた気がします。

 3月23日に行われた、2018年のフィギュアスケート世界選手権大会・女子シングルのフリースケーティングで、宮原選手、樋口選手が素晴らしい演技を魅せてくれました。

 特に、ショートプログラムSPで8位と出遅れた樋口選手は、最初の3回転サルコウ、続く3回転ルッツ+3回転トウループをキッチリと決めて勢いに乗り、全てのジャンプを成功させると共に、その他のシークエンスもミス無くクリアする「会心の演技」を披露しました。

 演技終了直後・リンク上の樋口選手の「雄叫び」(女子選手には似つかわしくない言葉ですが、正に心の底からの叫びでした)が全てを表現していました。
 大きな舞台での「思った通りのパフォーマンス」は、全てのアスリートの夢でしょうが、樋口選手はそれを実現したのです。

 結果が付いて来るのは、道理でしょう。

 それにしても、「転倒など考えられない雰囲気」のプレーを魅せて、平昌オリンピックで金メダルを獲得したザギトワ選手が、何度も転倒し、SPで80点越え・世界歴代3位を記録したコストナー選手もミスを連発するとは、思いもよらないことでした。
 フィギュアスケートの「怖さ」を如実に示したのです。

 これで、次回の世界選手権・女子シングルの日本チームの出場者数は3名となりました。

 少し前まで「日本からは3名出るもの」と思い込んでいましたが、2018年のオリンピックと世界選手権では2名しか出場できませんでした。
 最高人数である「3名」枠を維持するのは、とても難しいことなのです。(当たり前のことを書き、恐縮です)

 「次に誰が出るかは分からないが、3枠を獲得し続けること」が、世界フィギュアスケート界を牽引する国・チームとしての責務であり、沢山のフィギュアスケートファンの期待に応えて行く道なのでしょう。

 本当に「茨の道」ですけれども・・・。
 平昌オリンピックの興奮も冷めやらぬ3月11日、世界選手権大会における高木美帆選手優勝の報が齎されました。

 この大会は、スピードスケートのオールラウンダー世界一を決めるもので、500m、1500m、3000m、5000mを滑り、4種目の成績のトータルで競うものですが、1日目の500mと3000mの成績で首位に立った高木選手は、2日目の3月10日の1500mで1位、最終種目の5000mで4位となって、総合成績で優勝したのです。

 2位には、この大会で過去6度の優勝を誇るオールラウンダー、オランダのイレイン・ビュスト選手が入りました。

 2018年の大会は「ミスオールラウンダー」ビュスト選手と、高木選手の激しい争いだった形です。

 2プレーヤー対決のポイントは1500m種目でした。

 中距離が得意な高木選手としては、絶対に落とせない種目ですが、中距離から長距離まで安定した力を誇るビュスト選手としても、この種目で高木選手に先着することで、総合優勝を確保したいという狙いが有ったのでしょう。

 1500mは、2プレーヤーの直接対決となりました。
 1000mも強い高木選手が先行し、5000mも得意なビュスト選手が後半追い上げるという展開となり、2人がほとんど並んだところがゴールでした。
 100分の7秒、高木選手が先着したのです。
 この種目の1位が高木選手、2位がビュスト選手となり、この順位差が総合優勝の決め手となりました。

 おそらく、ビュスト選手としては、「スケート王国」オランダを代表するオールラウンダーとして、地元アムステルダムの「屋外リンク」で行われる世界大会で、自らが負けることは全く考えていなかったことであろうと思います。

 タイムが出難い*「平地の屋外リンク」、高速リンクとは異なり「高いレベルの筋力」が必要なリンクでは、絶対の自信を持っていたことでしょう。(*この大会の500mで40秒を切ったのは高木選手(39秒01)ひとりでした。平昌オリンピックにおいて小平選手が36秒台で滑ったことを考慮しても、タイムの出難いリンクだったことは明らかです)

 オランダ女子チームのリーダー格であるビュスト選手は、平昌オリンピックを去る時に「金メダルが取れずにオリンピックを終えるというのは、とても寂しいこと」とコメントしていました。これまでのオリンピックでは、必ず金メダルを獲得していたビュスト選手にとっては、残念な平昌五輪となったのです。
 そのビュスト選手は、オールラウンダーという自らのフィールドにおいて「世界一」は譲れない気持ちがとても強かったことでしょう。

 そのビュスト選手を破り、日本選手として初めての優勝を勝ち取ったのですから、高木選手の頑張りは素晴らしいものです。

 日本女子チームが、「王国」オランダにとっても端倪すべからざる実力を身に付けてきていることを、再び証明する結果でもあったのでしょう。
 普段は「エキシビション」は見ません。

 特に、オリンピック期間中ともなれば、撮り溜めた各競技の録画を観るのに、私の「時間」というリソースが投入され、それでも追い付かないような状況となりますから、「エキシビション」を観ている暇は残念ながら無いのです。

 ところが、今回は妻が「羽生君と宇野君のエキシビションを観ようよ」と強く言うので、久し振りにフィギュアスケートのエキシビションを「テレビの録画放送」で観ました。

 観て良かった、というのが感想です。

 羽生選手の演技は、とにかく「雰囲気」があり、「凛とした美しさ」が印象的でした。
 右足首を痛めている影響からか、複数回転のジャンプが見られず、「無理もない」と感じていたところへ、見事なトリプルアクセル。「少ない回数のジャンプで演技を構成する」お手本の様な滑りでした。

 宇野選手の演技には、「若さ」が感じられました。「堅さ」さえ感じられる「若さ」です。宇野選手の潜在能力の高さ、今後の伸長を予感させる、良い滑りでした。

 女子シングルのメドベージェア選手やザギトワ選手の演技も、見所満載でした。
 特にザギトワ選手の「豹柄のコスチューム」に身を包んだ演技は、とてもエロティックで、15歳とは思えない滑りでした。
 この2人のOAR(ロシア)の金・銀メダリストの演技で最も感心させられたのは、「いつでも3回転ジャンプが飛べる」という余裕でしょう。3回転+3回転の連続ジャンプでも、まず失敗しません。
 競技会から継続されている「安定感と正確さ」は素晴らしいレベルです。

 そして、秀逸だったのがハビエル・フェルナンデス選手(スペイン、男子シングル銅メダリスト)の演技でした。
 
 ジーパンにパーカー、スニーカーの靴カバーといった服装で、大きなバッグを持って登場、様々な演技を披露してくれました。

 途中からは「ハビエルマン」とでも呼んだらよいのでしょうか、スーパーマンの様な姿、スペイン国旗のカラーである、黄色に濃い茶色の縁取りのコスチュームに変身(上着を脱ぎ捨てたのですが)して、演技を続けました。
 背負っていた「赤いマント」がふたつに分かれ氷上に投げられたり、水を飲んだり、水をかけられたり、小道具も満載、サービス満点の演技でした。

 大会後のインタビューで、羽生選手が「とにかく優しい。優し過ぎて競技者には向かないのではないかと思うくらい・・・」とコメントしていましたが、フェルナンデス選手の性格が、全編に溢れているプログラムでした。

 既に、過去の大会のエキシビションでも行われているプログラムとのことで、「有名な」ものなのだそうですが、初めて見た私にとっては、とても新鮮でした。

 かつては、フランスのキャンデローロ選手のエキシビションが秀逸でしたが、現在はフェルナンデス選手が「エキシビションNO.1」の地位を確立している?のでしょう。

 フィギュアスケートとアイスショーは、何時の時代も密接な関係にあります。

 「美しく楽しいスケートショー」と「緊張感あふれる厳しい競技スケート大会」の間を取り持つのが、エキシビションなのかもしれません。
 マススタート女子で、姉の菜那選手が金メダルを獲得した翌日、某テレビ局の平昌スタジオに、高木姉妹、佐藤選手、菊池選手が登場し、インタビューが放送されました。
 笑顔あふれる、とても気持ちの良いインタビューでした。

 アナウンサーが、高木美帆選手が金・銀・銅の3個、菜那選手が金2個、姉妹でメダル5個ですね、とマイクを向けると、姉妹はやや困惑した様子で「これはみんなで取ったので」と言いながら、金メダルをひとつ持ち上げました。
 高木姉妹は、「2人でメダル4個」と言いたかったのでしょう。

 確かに、国別メダル数というときには、チームパシュートの金メダルは、チーム4人で1個と数えます。当たり前のことです。

 一方で、個々の選手のメダルを数える時には、チーム4名それぞれ1個というのでは、数が合わないと考えたのかもしれません。

 とても「合理的」な考え方です。

 こうした「合理的」な考え方が、普通に出来るアスリートだからこそ、複数のメダルを獲得できたのかもしれないと、妙に感じ入ってしまいました。

 さらに言えば、同じ番組に出演している、佐藤選手、菊池選手に配慮したのかもしれません。「パシュートのメダルは4人で取ったのよ」と。

 ところで、「4人で金メダル1個」なら、1人当たり0.25個という、「変な計算」も成立しそうです。
 そうすると、高木美帆選手のメダルは2.25個、高木菜那選手は1.25個となりますから、姉妹合計で「3.5個」となります。

 今回は「どちらでも良い記事」となりましたが、こういう「どちらでも良い記事」が書けるというのは、今大会の日本選手団のメダル獲得数が、とても多かったからだとも感じるのです。
 2月24日に新種目として行われた、スピードスケート・マススタート女子で、高木菜那選手が金メダルを獲得しました。

 6400mという長距離レースを、レース前に立案した戦法通りに滑り、優勝を手にした、極めて「クレバー」なプレー振りが、とても印象的でした。

① 準決勝での滑り

 4周目の最初のチェックポイントで1位となり5点をゲットしました。

 予選通過のためには、早期にポイントを獲得しておくことが狙いでしたが、最初のチェックポイントで早々に得点できたことは、その後の「体力温存」の面からも、有効でした。

 当然ながら、他の選手も早々のポイントゲットを目指している中でのプレーですから、3周目からの準備と直線走路での加速は、計算し尽くされたものであったと思います。

 加えて、5ポイントゲット後は、僅か1時間30分後に控えている決勝レースに向け、体力の温存に努めましたが、その際に残りの4000mを「あまり遅すぎないペース」、レースにおける集団の後方で滑り切ったところが良かったと感じます。
 このレベルのアスリートには、遅すぎるペースは逆に疲れますし、「試合における妙なペース」を体感させることは不得策だと考えます。

 高木選手は、「心地よいスピード」で準決勝を滑り切ったのではないでしょうか。

② 決勝レースでのポジショニング

 高木選手は、このレースを通じて「イレーネ・シャウテン選手の後ろ」に付けました。強豪選手、マススタートを良く知っている上に、走力も十分な選手に付けるのは、有効な作戦でしょう。

 とはいえ、16人ものスケーターが一斉に滑るのですから、「邪魔が入る」のは当然ですが、高木選手はこのポジションを決して譲りませんでした。
 1周目、「大きな隊列変更に制限」が設けられている周回においてさえも、何人もの選手が高木選手のポジションに割って入ろうとしました。良いポジションなのですから、止むを得ないところでしょう。

 それらの動きに対して、高木選手は「上手く」あるいは「毅然として」、その位置を譲りませんでした。周回が進んでも、高木選手は決して譲りませんでした。
 高木選手のこのレースにかける「強い意志」を感じさせるプレーであったと感じます。

 「直ぐ後ろでなくとも、後ろ二人目でも良い」とか「横でも良い」とか、様々な茶々が入る状況下では、安易に考えてしまいがちですが、それは「勝負が分かっていないプレーヤー」がすることでしょう。
 ここは「絶対にシャウテン選手の直後」でなければならない、風よけの意味と、シャウテン選手のスパートに即座に対応するために、直後でなければならないのです。

 「直後に付けた」プレーは、とても「クレバー」なものですが、クレバーを実験するのは大変なことなのです。(オリンピックの決勝ですから当たり前のことですが)

③ 最期の直線のスピード

 6400mのレースもラスト周回に入りました。
 先行する、シャウテン選手→高木選手→キムボルム選手の3スケーターによるメダル争いとなりました。
 シャウテン選手は、残り400mからスパートし、高木選手、キム選手がピッタリと付いて行きます。残り2周回辺りから、まるでチームパシュートの様な「3名一列」の姿でしたが、スピードが上がっても、隊列は乱れませんでした。

 そしてコーナーを回っての、最終コーナーの出口、高木選手はまず「インを締め」ました。キム選手の進出を許さなかったのです。
 続いてシャウテン選手は外にコースを取りました。

 これは、振り返って見れば不思議なコース変更でした。高木選手の前が大きく開けたのです。
 ここで高木選手は「フルスロットル」。
 一気に加速し、外にコースを取ったシャウテン選手、内側から進出してきたキム選手に約1.5mの差を付けました。
 そして、この差のままゴールに飛び込んだのです。

 つまり、「直線の走行スピード・走破タイムは3選手が同一」だった訳で、この直線入口で、高木選手が前に出て居なければ、優勝は無かったかもしれません。

 ラスト100mまで体力を温存するプレー、直線入口で、「前にグイッと出る」プレーは、共に、金メダル獲得に向けての「クレバー」なプレーでした。これ以外では、メダルは取れたのでしょうが、順位は不透明であったことでしょう。

 レース前に組み立てた戦法を、「クレバーな戦法」を、「頑固なまでに徹底して」実行した、高木菜那選手のパフォーマンスが際立ったレースでした。
 世界で戦って行くためには「クレバーなプレー」が必須なのです。

 この大会ふたつ目の金メダルは、オリンピックの日本選手団史上初の「同一大会で日本女子選手が初めて獲得した金メダル」でもありました。

 まさに、歴史的な快挙だったのです。
 金メダルのザギトワ選手と銀メダルのメドベージェア選手のフリー演技の得点は、156.65で同点でした。

 驚きました。
 こんなことが起こるとは・・・。

 現在の採点方法では、まず考えられないことです。

 今季シニアにデビューしたばかりのザギトワ選手に比べて、既に「世界の女王」として君臨し、様々な大会で圧倒的な強さを魅せているメドベージェア選手の方が、いわゆる「演技の完成度」という点で上回っているのは自然なことですから、演技構成点ではメドベージェア77.47、ザギトワ75.03と2点以上の差が有ったのです。

 この2点以上の差を、ザギトワ選手は技術点でカバーした訳ですが、カバーすると言っても、相手は世界女王ですからミスを期待するのは適切では無かったので、基礎点が1.1倍になるというルールを活かして、「ジャンプを全て後半に集中する」という戦術を採ったのでしょう。

 もちろん、1.1倍の得点を狙ってジャンプを全て後半に集めたとしても、自らがジャンプでミスをしてしまえば元も子もない(当然ながら、ジャンプを集中・連続して飛ぶのですから、肉体的な疲労蓄積や、精神的に追い込まれることになりますから、演技全体にバランス良くジャンプを散りばめる構成より難易度が高いことになります)のですが、ザギトワ選手は、最初のジャンプ=トリプルルッツからの連続ジャンプがルッツ単独に終わってしまったにもかかわらず、後のジャンプを連続にするなどして、表だったミスは皆無でした。
 ここが素晴らしいところです。

 一方のメドベージェア選手も、小さなミスはありましたが、演技全体の印象に大きな影響を与えるものではありませんでした。世界女王としても「ほぼ完璧な演技」を完成させたのです。

 彼我の技術点は、ザギトワ選手が81.62、メドベージェア選手が79.18となりました。

 そして、フリーの合計点が「156.65で同点」となったのです。

 演技構成点は、5つの項目に対して10点満点で「下二桁」まである得点(このレベルでは9.50点前後)が配され、技術点は、概ね12の演目に対して、基礎点と出来栄え点が配されますから、項目数は24となり、こちらも「下一桁・下二桁」の配点です。
 採点対象項目数は、計29です。

 二人が「異なる戦略・戦術」、技術点重視と演技構成点重視の戦術を駆使し、合計29もの採点項目で争いながら、合計して下二桁まで同点というのは、どのくらいの確率で発生するのか分かりませんが、まさに「奇跡的なこと」でしょう。

 そして、その接戦が「世界女子フィギュア史上最高の得点水準」なのですから、まさに今大会の女子フィギュア・シングルは「史上最高の接戦」だったことは間違いありません。

 結局勝負は、ショートプログラムの「1.13点差」で決しました。
 オリンピックのこの種目の得点差としても、史上最少なのではないかと思います。

 15歳のザギトワ選手は、初出場どころか、シニアデビュー1.年未満という、いわゆる「経験値」面では全く不十分な状況で、史上最強クラスの女王に競り勝ちました。
 個人競技の勝敗においては、経験値量は本質的には無関係であることを、ここでも明示してくれたのです。
 勇気溢れる「大胆なジャンプ演目配置」が功を奏した形。見事の一言です。

 メドベージェア選手は、女王として堂々たる演技を披露しました。
 自身の出来栄えから言って、普通なら「負ける筈が無い」試合でしたが、ちょっと「相手が悪かった」という感じがします。

 技術的に難度の高い演目を「これでもか」という感じで連発し、次々と成功させなければ高得点を挙げることが出来ないという、現在のフィギュアスケート競技においては、「実績・貫録・雰囲気」で長く王座を維持するのは至難の技でしょう。
 凄い身体能力をベースに、高いパフォーマンスを発揮する新鋭が、次から次へと世界中で登場して来るのです。

 15歳のザギトワ選手は、オリンピックチャンピオンとなった2018年2月23日から、既に「追われる身」となったのかもしれません。
 2月21日に行われたチームパシュート女子、準決勝、決勝で、日本チームはカナダチーム、オランダチームを破り、見事に金メダルを獲得しました。

 全体として、日本チームのプレー振りは、まさにチームパシュート競技の「お手本」の様に観えました。
 現時点で、男女を通じても、最も完成度の高いチームであろうと思います。

 決勝の戦前は、オランダチームが前半リードして、日本チームが後半追い上げる展開であろうと予想されていましたが、実際のレースは日本チームが前半から相当のスピードで滑り、オランダチームに大きなリードを許さないというか、2周目から3周目には日本チームがリードするという、「意外」なものとなりました。

 それでも、個人種目のメダリスト3名を揃えたオランダは、その圧倒的な走力で3周目、4周目を走破して、日本に最大0.5秒位のリードを奪いました。走力の有るチームとしての「先行押し切り」を狙ったのです。

 レース前には、残り2周の時点で「1.5秒」以内の差であれば、日本チームが十分に逆転できると考えていましたので、「これは日本が金メダルの展開」だと思いました。

 そして、高木美帆選手が先頭に立ってスピードアップした日本チームは、ゴールで1.59秒の差を付けて優勝したのです。

 自分たちのレースが出来れば勝てると考え、それを実行した、日本チームの快勝でした。

 日本チームの完成度の高さは、

① 滑り

 スタート直後から「3選手が一直線」の体制を構築し、手足の動きも揃えて、力みも無く滑る姿は、とても美しい。

 コーナーの入口や出口で、一直線の形に「少しズレ」が生じますが、これとても「2番手・3番手の選手に風が当たらないようにするために適した体制」に観えます。

 先頭の交代もスムース。
 毎回、下がって行く選手が、チーム全体の「リズム維持」に注意を払い、必要に応じて、前に出る選手の体を押したり、アドバイスを送っているように観えました。

 まさに「お手本」でしょう。

② チーム構成

 今大会の日本チームは、高木姉妹を骨格として、菊池選手と佐藤選手を配する形でした。

 この日は、準決勝が菊池選手、決勝が佐藤選手でしたが、この2人の選手の特徴、菊池選手の持久力と佐藤選手のスピードを、巧みに使い分けて、戦いに臨んでいました。

 高木菜那選手と美帆選手の姉妹は、とても「負けず嫌い」ですので、お互いがチーム内でのライバル関係にありますから、「自分がチームの足を引っ張った」とレース後言われるのを「死ぬより嫌」だと考えているに違いないので、先頭に立った時の気迫というか、迫力が凄い。

 4名の個性的な選手により構成されるチームは、まさに「お手本」なのでしょう。

③ 細部への拘り

 決勝レースの最終周回、佐藤選手の脚がやや止まりかけました。これを高木菜那選手が巧みにサポートしていました。
 最後の直線に出る時も、菜那選手は佐藤選手の1m位後方を進み、佐藤選手に何かあれば、直ぐに対応する体制を整え、維持していました。

 速く滑ることだけでは無く、「トラブルへの備え」、それも相当細部に渡る備えが見事であったと感じます。

 準々決勝のスタートを失敗した佐藤選手が、美帆選手にストップというか、スピードを落とすように大声を出した時も、体勢を立て直した後、何事も無かったかのように日本チームは滑りました。そして、余裕十分な滑りで、オランダチームに0.5秒以内の差で滑り来たのです。

 この細部に渡る備えは、まさに「お手本」でしょう。

 圧倒的な「個の力」を誇るチームが、チームプレーにやや無頓着になるのは、別にスケートに限ったことではありません。
 例えば、陸上競技男子400mリレーのアメリカチームやジャマイカチームは、「4名とも9秒台」のチームを投入してきますが、日本チームやイギリスチームはチームプレーで互角の戦いを演じます。

 チームパシュートも同じなのでしょう。
 1対1で滑れば、2敗1引分に終わりそうな相手ですが、3対3となれば「圧勝する」のですから、この種目も「奥が深い」のです。

 今、パシュート日本チームには、「世界一のノウハウ」が蓄積されている子でしょう。
 オリンピックにおけるチームパシュート種目初の金メダルを礎として、日本の「お家芸」にして行ってほしいものです。
 速報値36秒95、確定値36秒94、のオリンピック新記録をただき出した、小平選手の滑りには、この種目にかける「気迫」が溢れていました。

 スタート号砲前に小平選手の体がピクリと動きましたがフライングとはならず、小平選手は「良くも悪くもない普通の反応」で滑り始めました。
 両手を大きく振りながらの加速は、いつものパフォーマンス。
 100mは10秒26で通過しました。
 同組のカロリナ・エルバノバ選手も10秒30の僅少差で通過していましたから、接戦になる感じがしました。

 最初のコーナーを小平選手はとても上手く抜けたと思います。
 加速しつつ、極めて冷静なレース振りが印象的でした。

 バック側の直線も小平選手の加速は「気持ちの良い」ものでした。
 エルバノバ選手も良く負いましたが、動きは小平選手の方が上回りました。

 2つめのコーナー、とても大事な場所も、小平選手は上手く処理していましたが、一歩だけキックが抜けたように観えました。
 幸い体制を崩すまでの影響は無く、力強くしかし落ち着いたコーナリングから直線に入りました。

 ここでの小平-エルバノバの差は3~4m位だったと思います。エルバノバ選手が2つめのコーナーで追い上げていたのです。

 ここからゴールまでの、小平選手の滑りは「圧巻」でした。
 大きなフォームでスピードを維持し、ゴールまで高速を保ちました。
 ラスト100mの「驚異的な」滑りだったのです。

 テレビ画面のタイム表示と、選手の映像を同時に見て、おおよそのゴールタイムを把握することが出来ないほどのスピードと言うのは、ほとんどの場合「好タイム」に結びつくものですが、この時も走破タイム掲示は「37秒手前で止まっていた」のです。
 オリンピック新記録であり、「平地での世界最高記録」が出た瞬間でした。

 エルバノバ選手は37秒34の好タイムで、結局銅メダルを獲得しました。
 エルバノバ選手も、見事な滑り、オリンピック銅メダルの滑りを展開してくれたのです。

 小平選手が、今大会の日本選手団・主将に任命された時、「主将が金メダルを取るのは極めて難しい」と感じました。
 記憶ですが、夏・冬を通じて、オリンピック日本選手団の主将が金メダルを獲得した例は、無いか、あっても1度きりではないでしょうか。

 小平選手は、「そのことは知っていましたが、絶対に勝ってやろうと思っていました」とコメントしました。
 高い実力と強い意志の前には、ジンクスも形無しだったのでしょうか。

 「勝つべくして勝つ」というのが至難の技であることは、皆さまが良くご承知の通りなのです。
 フィギュアスケート男子シングルで、羽生選手と宇野選手は1位・2位を占めました。

 日本フィギュアスケート界の歴史に、燦然と輝く快挙です。

 これまで、多くの日本男子スケーターが営々と積み上げてきた努力が、大輪となって結実したのでしょう。

 宇野昌磨選手の今大会における戦い振りは、まさに「堂々たるもの」でした。

 注目が羽生選手に集まる状況下、自らの実力をリンクの上で披露し続けたのです。
 「羽生選手に何が起ころうとも、日本男子フィギュアのメダルは守る」という気迫に溢れていましたし、高いパフォーマンスを維持し続けることが出来る地力の高さは、世界チャンピオンに相応しいものだと感じます。

 表彰式後のインタビューで「自分が完ぺきな演技をすれば優勝できる(羽生選手の得点を超える)と考えていましたが、最初の4回転で転倒した時笑ってしまいました。後は、思い切りやるだけだと思いました」とコメントしました。
 極めて冷静なアスリートが、そこには居ました。

 宇野選手は、十分にオリンピックチャンピオンを争うことが出来るスケーターに成長しているのです。
 「日本の二枚看板」ということになります。

 宇野選手は20歳、羽生選手は23歳、我が国の二枚看板は、まだまだ若いのです。
 フリー演技を終えた時、羽生選手には「やり切った」雰囲気が漂っていました。

 得点は317.85。

 ショートプログラムで111点を超える演技を魅せて、世界中のフィギュアスケートファンを驚かせ、フリースケーティングを迎えました。
 
 フリーでも4回転ジャンプを決めて流れを創りました。

 さすがに後半は、ジャンプの軸が少し傾いていたというか、「軸が開いている」印象でした。
 演技の途中で右脚に痛みが走ったのかもしれません。

 いずれにしても、素晴らしい演技でした。

 まさに「神技」でしょう。

 21世紀に入って初めてのオリンピック連覇。

 羽生結弦は「歴史」になったのです。
 第12組でオランダのヨリン・テルモルス選手が、1分13秒56というオリンピック新記録をマークして首位に立ち、日本の高木美帆選手、小平奈緒選手がこの記録に挑むという構図のレースでした。

 記録が出にくい印象のカンヌンオーバルにおける1分13秒56というのは、まさに好記録であり、テルモルス選手のスケーティングは凄い迫力でしたが、我らが高木・小平の両選手は全く怯むことなく挑みました。

 カンヌンオーバルは、前半から飛ばすと後半は酷いタイムになってしまう感じですから、高木選手が前半抑えて滑っていた時には、十分にチャンスがあると思いました。
 その「前半抑えて入った」ように見える高木選手でさえ、残り1周の地点では、テルモルス選手より5m以上前の位置を滑っていたのです。
 最後の直線に入って、高木選手はややスピードを落とし、1分13秒98でゴールしました。13秒台はとても立派な記録なのですけれども、テルモルス選手には及びません。

 第15組に登場した小平選手も、相当に抑えて入りました。500mのスピードを封印して、じっと我慢の滑り。それでも、残り1周の地点では、テルモルス選手より1~2m前に居るのです。ラスト1周、小平選手は渾身の滑りを披露しゴール寸前まで、「仮想」テルモルス選手と接戦を演じましたが、残り50mで少しスピードが落ちました。
 それでも、1分13秒82のオリンピック新記録で走破していたのです。

 小平・高木の2選手は、持てる力を披露しましたし、「戦術」面でも、戦前に構築した方法を相当忠実に実行できていたように見えました。
 
 その高い実力と高度なトライが、銀メダルと銅メダルに結びついたことは間違いありません。
 夏・冬のオリンピックを通じて、日本女子チーム初の「同一種目複数メダル獲得」は、こうして実現したのです。
 まさに「快挙」でしょう。

 それにしても、テルモルス選手の滑りには「度肝を抜かれ」ました。
 特に、ゴール前80mのスピードは凄まじいもので、テレビ画面ではゴールの瞬間がよく観えなかった感じがするほど。有り得ないことなのでしょうが、「加速しながらゴールラインを通過した」ようにさえ見えました。

 オリンピックチャンピオンの称号に相応しい、素晴らしいパフォーマンスでした。
 死力を尽くして滑り切った高木選手の姿には、満足感が溢れていました。

 2月12日に行われた、スピードスケート女子1500mで、高木美帆選手が銀メダルを獲得しました。

 1分54秒55という好タイムで滑り切った高木選手は、走破後、手を挙げて歓声に応えました。そして、コーチ、同僚と抱き合い、涙を流しました。
 「やり切った」という満足感、今の力を出し切ったという感覚が、高木選手を覆っていたのではないかと感じます。

 最終組の高木選手がスタートラインに立った時には、1~3位をオランダ勢が占めていて、このまま「2大会連続のメダル独占」か、という雰囲気が漂いました。
 こういう時には、どうしても「入りが速くなりがち」であろうと思います。事実、高木選手と同組のベルフスマ選手(アメリカ)、現在のこの種目の世界記録保持者、昨年この会場で行われた世界距離別選手権大会の優勝者、はぶっ飛ばしました。最初の500mで高木選手を大きく引き離したのです。

 同組のスケーターに大きく離されれば、「焦り」が出そうなものですが、高木選手は冷静そのもの。自らのペースを全く崩しませんでした。

 ラスト1周に入る所で追い付いた高木選手は、それまでトップのブスト選手との争い、見えないライバルとの戦いに入りました。
 そして、僅か0.2秒、約2m及ばず2位となったのです。

 その結果を見た瞬間の、ブスト選手の喜びようが、高木選手の実力を証明しています。

 スケート王国オランダ史上でも最強の女王と呼ばれるイレイン・ブスト選手に、これだけの「勝利の喜び」を与えたのは、高木選手なのです。

 3000mではやや元気が無い感じがした高木選手は、次第にコンディションを上げてきました。

 1000mやチームパシュートにおけるパフォーマンスが、本当に楽しみです。
 12月24日、フィギュアスケート競技の平昌オリンピック代表選手が発表されました。

 男子は、全日本選手権大会2017の優勝者・宇野昌磨選手(20歳)、同大会2位の田中刑事選手(23歳)、現在の世界ランキング1位・羽生結弦選手(23歳)の3名です。

 女子は、同大会優勝の宮原知子選手(19歳)、坂本花織選手(17歳)の2名です。

 発表に先立って行われた、オリンピック代表選考を兼ねた全日本選手権大会は、やはり緊張感あふれるものとなりました。

 先行して実施された女子シングルは、「2席」を巡る大接戦となりました。
 5~6名の選手で2つの椅子を争うという、とても激しい争いとなったのです。

 そうした中で、宮原選手は持ち味の「安定感」を存分に示しました。
 ジャンプ、スピンといった技をきっちりと演じ、着々と加点して優勝を飾ったのです。
 派手な演目や、加点を狙う演技というよりは、準備した技を、基礎点+αで演じ切るという戦略は、こうした厳しい戦いにおいては効果的なものでしょう。

 坂本選手は「伸びやかな演技」が印象的でした。
 大舞台にも怯むことなく、自らの持っている力を存分に披露した感じがします。
 その「おおらかな動き」は、本番でも威力を発揮することでしょう。

 男子の田中選手は、相当に緊張していたのでしょうが、その緊張を上回る「信念」のようなもの、気持の強さが感じられる演技でした。凄まじいハードトレーニングに耐えてきたことも、その自信に繋がったのかもしれません。
 
 大会3位だった無良宗人選手も、長いキャリアにより積上げた経験とオリンピック出場に賭ける執念に溢れる、素晴らしい演技を披露してくれました。

 田中選手の「信念」が、無良選手の「執念」を上回ったというところでしょうか。

 宇野選手の演技は、前半と後半で少し差がありました。
 前半は、「世界最高レベル」の演技でした。演技から漂うオーラも凄かったと思います。この演技を最後まで続けることが出来れば、オリンピックチャンピオンも夢ではないでしょう。

 後半は疲れが観えました。相当に失速したのです。

 羽生選手の世界最高得点は320点を越えます。
 この大会の宇野選手の283点とは、約40点の差があるのです。
 
 この差は、後半の失速が主な要因だと思います。

 平昌オリンピック男子の優勝争いは、310~320点のレンジで繰り広げられると観ています。
 オリンピックでメダルを狙う選手として、最も練習量が多く疲労がたまっている時期の大会であろうことを勘案すれば、本番で宇野選手が320点に迫る得点を叩き出すことは十分に可能だと感じさせる演技でした。

 ペアとアイスダンスも含めた、フィギュアスケート日本チームのオリンピックでの活躍が、本当に楽しみです。
 12月10日、スピードスケートのワールドカップWC今季第4戦、ソルトレークシティ大会(アメリカ・ユタ州)の女子1000m種目で、小平奈緒選手が1分12秒09の世界新記録で優勝しました。
 2015年11月にブリタニー・ボウ選手(アメリカ)が記録した1分12秒18を0.09秒縮めた、堂々たる世界新記録でした。

 スピードスケートに強い我が国と言っても、世界新記録はおいそれとは出ておらず、女子では史上初、男子を含めても2005年の500m種目、加藤条治選手以来12年ぶりの快挙でした。

 これで今季WC1000m種目において、小平選手は4戦3勝、15連勝中の500m種目と合わせて「短距離2種目」で圧倒的な強さを示しています。

 こうなると平昌オリンピックにおける「二冠」の期待が高まります。

 一方で、500mと1000mは短距離とはいっても相当に異なる種目、スピード、持久力、技術等々が異なる種目ですので、両方で金メダルというのは「至難の技」です。
 1980年のレークプラシッド大会におけるエリック・ハイデン選手(アメリカ)、1992年アルベールビル大会と1994年リレハンメル大会のボニー・ブレア選手(アメリカ)くらいしか、直ぐには思い当たりません。
 例えば、1998年の長野大会の清水宏保選手も500mで金メダル、1000mは銅メダルでした。
 21世紀に入ってからは、男女ともに「短距離二冠」を成し遂げているスケーターは居ないと思います。

 1000m種目に求められる「持久力」のレベルは、想像以上に高い上に、「専門性」が一層高まっているのだと思います。

 こうした「至難の技」に、小平選手は挑むのです。

 「世界最強のスプリンター」小平奈緒選手、頑張れ!
 12月9日に幕を閉じたグランプリGPファイナル大会は、男女ともに、近年稀に見る接戦でした。

[GPファイナル男子結果]
① ネイサン・チェン(アメリカ) 286.51
② 宇野昌磨(日本) 286.01.
③ ミハエル・コリヤダ(ロシア) 282.00.

[GPファイナル女子結果]
① アリーナ・ザギトワ(ロシア) 223.30
② マリア・ソツコワ(ロシア) 216.28
③ ケイトリン・オズモンド(カナダ) 215.16
④ カトリーナ・コストナー(イタリア) 214.65
⑤ 宮原知子(日本) 213.49

 男子は、1位と2位の差が僅かに0.50点でした。これは「ひとつのジャンプの出来不出来」というよりもっと小さな差です。ステップシークエンスやスパイラルシークエンスの得点でも、あっという間にひっくり返る差ですし、全ての演技の合計をしてみたら「0.50点差」だったということであり(当たり前のことを書き恐縮です)、合計点を見てから個々の演技の点を少し見直せば、順位が変わってしまう程に「僅かな差」でした。
 もちろん3位の選手にとっても、優勝のチャンスが十分に有ったのです。

 女子の方は、特に2位から5位の差が僅差でした。「3点弱の中に4選手が犇めいた」のです。
 これはトリプルジャンプ1本の成否と言うか、出来の良し悪しでどの選手にも銀メダルのチャンス、5位になる怖れが有ったということになります。
 そして、1位と5位の差も9点弱と、演技全体のミスの数を考えれば、パーフェクトに近い演技をすれば、5位の選手にも優勝するチャンスが十分に有ったということを示しています。

 「これが現在の男女のフィギュアスケート・シングルの実情」なのでしょう。

 世界一の座に対して、数多くのスケーターにチャンスが有るということです。

 これまでのように「2~3人の有力プレーヤーによってタイトルが争われる時代」では無いのですから、「戦国時代」と呼んでも良いのでしょう。

 メダルを狙う各選手にとっては、平昌オリンピックのフィギュアスケート・シングル種目において「たったひとつのミス」が致命傷となるのです。

 緊張感あふれる大会となるのは間違いないでしょう。
プロフィール

カエサルjr

Author:カエサルjr
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我が家の月下美人も16年目。同時に30個の花が咲くこともあります。スポーツも花盛りですね。一緒に楽しみましょう。

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