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 10月23日~25日に、長野市のMウェーブを舞台に開催された、第27回全日本スピードスケート距離別選手権大会では、新型コロナウイルス禍の中で、我が国トップクラスのスケーターによるハイレベルな戦いが繰り広げられました。

 女子の小平奈緒選手や男子の新濱立也選手といった、「短距離のエース」が相変わらずの強さを魅せましたけれども、そうした中でも目立ったのは、中距離の種目を中心として戦う「オールラウンダー」の活躍でしょう。

 男子の一戸誠太郎選手と女子の高木美帆選手が、見事な滑りを披露してくれたのです。

[10月25日・男子1,500m]
1位 一戸誠太郎選手 1分46秒33
2位 近藤太郎選手 1分46秒50
3位 山田将矢選手 1分47秒18

[10月23日・男子5,000m]
1位 一戸誠太郎選手 6分25秒85
2位 土屋陸選手 6分26秒34
3位 蟻戸一永選手 6分27秒13

[10月25日・男子10,000m]
1位 蟻戸一永選手 13分28秒94
2位 土屋陸選手 13分33秒16
3位 一戸誠太郎選手 13分33秒53

[10月24日・女子1,000m]
1位 高木美帆選手 1分14秒21(大会新記録)
2位 小平奈緒選手 1分15秒62
3位 郷亜里砂選手 1分15秒86

[10月25日・女子1,500m]
1位 高木美帆選手 1分54秒81
2位 佐藤綾乃選手 1分56秒89
3位 小平奈緒選手 1分57秒29

 一戸選手は、1,500mと5,000mを制し、10,000mでも3位に食い込みました。
 1,500mと10,000mが同日に行われたことを考え合わせても、素晴らしいパフォーマンスでしょう。
 さすがに、2020年3月の世界選手権(世界オールラウンドスピードスケート選手権→1889年開始の世界最古のスピードスケート世界大会と言われています)において、3位に食い込んだ力を示したのです。

 さらには、5,000mと10,000mのベスト3には、蟻戸一永選手と土屋陸選手が食い込みました。
 日本男子スピードスケートの長距離部門の選手層は、相当厚くなっているのでしょう。

 女子の1,000mと1,500mは、不調を伝えられていた高木美帆選手が圧勝しました。
 両種目とも大会新記録での優勝であり、2位をぶっちぎっての勝利でした。
 特に、「ラスト100mのスピード」には、惚れ惚れさせられました。
 こちらは、2018年の世界選手権(世界オールラウンドスピードスケート選手権)のチャンピオンです。
 世界屈指のオールラウンダーの力を見事に示してくれたのです。

 直近の半年間は、新型コロナウイルスの影響で、十分な練習が難しかったと思いますが、日本スピードスケート陣は、そうした中でも必要最低限のトレーニングを、それも相当効果的に熟してきたと感じられます。

 スケーターご本人はもちろんとして、コーチを始めとする「日本チーム」の力が、十分に発揮された大会だったのでしょう。

 頼もしい限りです。
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 4月20日、国際スケート連盟は、最新の男女フィギュアスケート競技の世界ランキングを発表しました。
 男子は羽生結弦選手、女子は紀平梨花選手が1位となっています。

[男子ランキング]
① 羽生結弦選手 3,786ポイント
② サマリン選手(ロシア) 3,046
③ アリエフ選手(ロシア) 2,957
④ チェン選手(アメリカ) 2,880
⑤ リッツォ選手(イタリア) 2,859
⑥ ブラウン選手(アメリカ) 2,844
⑦ グラスル選手(イタリア) 2,658
⑧ クヴィテラシビリ(ジョージア) 2,651
⑨ 宇野昌磨選手 2,640
⑩ チャ・ジュンファン選手(韓国) 2,603

[女子ランキング]
① 紀平梨花選手 4,174ポイント
② テネル選手(アメリカ) 3,133
③ シェルバコワ選手(ロシア) 2,841
④ トルソワ選手(ロシア) 2,774
⑤ 坂本花織選手 2,769
⑥ コストルナヤ選手(ロシア) 2,760
⑦ 宮原知子選手 2,693
⑧ ザギトワ選手(ロシア) 2,666
⑨ イム・ウンス選手(韓国) 2,537
⑩ サモ・ドゥルワ(ロシア) 2,414

 羽生選手も紀平選手も、2位の選手に大差を付けての圧倒的なトップでした。
 2019~20年シーズンに出場している大会数が多いということもあるのでしょうが、この2名のプレーヤーが、どの大会でも安定した好成績を残していることを示しているのでしょう。

 一方で、男女のトップ10に入っている人数が、それぞれの国の底力を示していることも、間違いありません。
 
 男子では、アメリカが3名、日本とロシアが2名です。
 マイケル・チェン選手という現世界チャンピオンを擁しているアメリカ合衆国ですが、実際のところ、世界トップクラスの選手層が厚いのです。
 日本チームとしては、新しいプレーヤーの登場が切望されているという形でしょう。

 女子は、ロシアが5名、日本が3名で続いています。
 世界トップ10の半数を占めるというのは凄いことで、現在のロシアチームの圧倒的な地力を明示しています。我が国も、もっともっと新しいプレーヤーの登場が待たれるのでしょう。

 既に4月下旬ですから、フィギュアスケート競技は2020~21年シーズンが待たれることとなります。
 新型コロナウイルス禍の中で、練習もままならない時期ですが、世界フィギュアスケートを牽引する日本チームとしては、その責任をしっかりと果たしていかなければならないのでしょう。


 3月7日~8日、2019~20年シーズンのISUワールドカップ最終戦が、オランダのヘレンベーンを舞台に開催されました。

 そして、男女の500mで新濱立也選手と小平奈緒選手が好成績を残し、同種目のシーズン総合優勝を飾りました。
 小平選手は3度目の、新濱選手は初の、総合優勝でした。
 新濱選手の総合優勝は、あの長野オリンピック1998の金メダリスト・清水宏保選手以来、日本選手として19年振りの快挙でもありました。

 新濱選手は、1日目の500mを34秒317で滑り1位となりました。
 ちなみに、村上右磨選手が34秒472で4位、松井大和選手が34秒600で6位に食い込んでいます。

 そして2日目、新濱選手は34秒070という好タイムで連勝しました。
 松井大和選手が34秒365で3位に、村上右磨選手が34秒446で5位に食い込んでいます。

 2本とも優勝した新濱選手の安定感が際立っています。
 また、松井選手、村上選手も2本とも上位に食い込んでいますから、日本チームの層の厚さも感じさせる結果でしょう。

 新濱選手は、「海外勢のフィジカル」と「日本選手の高い技術」を併せ持つスプリンターに成長しつつあるように観えます。
 今後の活躍が本当に楽しみです。

 一方の女子500mでは、1日目に小平選手が37秒392で3位に入り、郷亜里砂選手が37秒517で4位に、辻麻希選手が37秒940で8位に、食い込みました。

 2日目は、小平選手が37秒199で2位、郷亜選手が37秒740で6位、辻選手が38秒079で9位となっています。
 小平選手が2日目にタイムを挙げているのが「さすが」ですが、郷亜選手と辻選手も2日間を滑り切り、キチンとした結果を残したところが素晴らしいと感じます。

 ヘレンベーン大会では、小平選手は惜しくも優勝は出来ませんでしたけれども、見事にシーズン総合優勝を飾ったのです。
 一時期のように「滑れば優勝」という訳ではありません(世界トップという点では驚異的な強さでした)けれども、いまだに「女子500mの世界第一人者」であることに、感嘆せざるを得ません。
 本当に凄いプレーヤーです。

 「スケート日本」の得意種目500mは、男女ともにISUワールドカップ総合優勝を成し遂げました。

 冬季オリンピックの狭間にあっても、日本チームの強化は着々と進んでいるのです。

 ノルウェーのハーマルを舞台に、2月28日~29日に行われた、スピードスケート世界選手権大会のスプリント部門は、29日に2日目を終えて、男子の新浜立也選手と女子の高木美帆選手が初優勝を飾りました。

 500mと1,000mを2本ずつ滑って競うスプリント部門ですが、昨季まではスプリント世界選手権として独立して行われていた大会です。今季からオールラウンド大会と統合された形です。
 「スプリント」「オールラウンド」ともに、文字通りの世界一を決める、とても格の高い大会でしたが、その優勝難易度の高さは2020年も全く変わっていません。
 その大会で、男女ともに日本選手が総合優勝したのですから、これはもう「大活躍」と呼ばなければなりません。

 高木美帆選手は、2018年のオールラウンド大会に優勝しています。
 欧州勢(特に、オランダ勢)が圧倒的に強い大会ですが、日本選手として初めての優勝を飾った時には、「スピードスケートの歴史を変えた快挙」と言われました。
 1,000m、1,500mという中距離種目に強い高木選手ですから、スプリントでもオールラウンドでも戦えるわけですが、今大会はスプリントに挑んだ形です。

 高木選手にとってスプリント部門における最大のライバルは、ご存じの小平奈緒選手です。小平選手は、2017年・19年の旧スプリント世界選手権大会を制している、現在の短距離種目世界第一人者ですから、今大会でも優勝候補の一番手でした。

 高木選手は、28日・1日目の500m・1,000mの両種目で1位となり、29日・2日目は500mで2位、1,000mで1位と、対象の4レースで3勝、2位が1回と圧倒的な成績で優勝したのです。
 2日目に500mで高木選手を2位に抑え込んだのは、やはり小平奈緒選手でした。

 しかし、それも0.06秒差という僅差でした。
 この大会の高木選手は、持ち前の「高速下での持久力」を如何なく発揮しました。
 どのレースでも、ラスト100mのスピードが秀逸。特にラストの70mから40mまでの30mのスピードには、調子の良さが良く現れていたと感じます。

 「オールラウンド」と「スプリント」の両部門の王者となった高木美帆選手。
 世界一の女子スピードスケートプレーヤーに、また一歩近づいたと思います。

 男子の新浜立也選手も素晴らしいパフォーマンスを示しました。
 これは男女共通ですが、スプリント部門では500mと1,000mの2種目の内、日本選手には1,000mが難しいのです。
 「太腿がパンパンになってからの持久力」は、欧州選手が強いところですが、高木美帆選手はこの1,000mを得意としていますし、新浜選手も日本のスプリンターとしてはとても粘り強いレースを披露出来るスケーターなのです。

 新浜選手は1日目にトップに立ち、2日目の500mで優勝、1,000mで3位として、総合優勝を飾りました。
 身長183cmと、スプリンターとしては大柄な新浜選手が、「高速下での持久力」をも身に付けてきているというのは、世界大会における安定感という面で、とても頼もしいところです。

 昨季に世界の舞台に登場した新浜選手の、今後の活躍が本当に楽しみです。

 日本チームの強さは、本物でしょう。
 2月14日、スピードスケートの2020年世界距離別選手権大会2日目(アメリカ合衆国ユタ州ソルトレークシティ)、各種目で日本チームが素晴らしい活躍を魅せました。

① 女子団体パシュート

 高木美帆選手、高木菜那選手、佐藤綾乃選手のオリンピック金メダルトリオが、世界新記録を叩き出して優勝しました。
 もともとこのチームが保持していた従来の記録を0.11秒更新する2分50秒76という、
 驚異的なタイムです。

 今シーズンから、転倒発生時の選手の安全確保の観点からレギュレーションが変わり、ヘルメットの着用が義務付けられ、レーシングスーツの材質も変更されていましたから、記録が出難い形となっていたのですが、それでも尚新記録を生み出す日本チームの強さは、ミラクルと呼ぶしかないでしょう。

 「王国」オランダチームに2秒近い差を付けての優勝でした。

② 女子500m

 小平奈緒選手が36秒69という好タイムで優勝を飾りました。
 シーズンが深まるにつれて調子を上げてきていましたが、高いフィールドの大会で見事に結果を残したのです。この大会2度目の優勝でした。

③ 男子10,000m

 土屋良輔選手が、12分55秒62という日本新記録で5位に入賞しました。優勝はカナダのグレーム・フィッシュ選手(12分33秒86の世界新記録)でした。
 日本男子選手が苦手とする10,000m種目での好成績は、見事の一語です。

④ 男子500m

 新浜立也選手が34秒03で3位に食い込みました。新浜選手の安定した戦い振りが印象的です。

 世界距離別スピードスケート選手権大会は、国際スケート連盟(ISU)が主催する、とても格の高い大会です。
 世界トップクラスの選手達が照準を絞ってくる大会における、日本チームの活躍は、日本チームの地力の高さを明示していると思います。

 2021年からは、「距離別」の言葉が外されて、「世界スピードスケート選手権大会」に衣替えする(世界オールラウンド選手権大会および世界スプリント選手権大会を統合)とも伝えられています。

 最後の「距離別選手権」における、日本チームの活躍なのです。
[2月9日・男子フリー・韓国ソウル]
[総合順位]
1位 羽生結弦選手 299.42点(SP111.82、FS187.60)
2位 ジェイソン・ブラウン選手(アメリカ) 274.82点(SP94.71、FS180.11)
3位 鍵山優真選手 270.61点(SP91.61、FS179.00)

 16歳9か月の鍵山選手が3位に入りました。
 素晴らしい健闘です。

 2月7日に行われたショートプログラムSPで、4回転トゥループや3回転アクセルなどのジャンプを次々と成功させ、91.61という高得点をマークして5位に付けました。
 「FS最終組」でのプレーを手にしたのです。
 嬉しそうにガッツポーズをしていたのが、印象的でした。

 そして、主要な国際大会のフリースケーティングFS最終組での試技に挑んだ鍵山選手は、素晴らしい出来でした。
 冒頭の4回転トゥループ+2回転トゥループを鮮やかに決めると、続く単独の4回転トゥループもほぼ完璧に決めて魅せたのです。
 その後も、3回転アクセルからの3連続ジャンプや、ステップシークエンス、コレオシークエンスなどもミス無くこなして、「あっという間」に演技を終えました。
 本当に素晴らしいプレーであったと思います。
 4回転ジャンプを綺麗に熟しているところには、「伸びしろの大きさ」も感じます。

 鍵山選手の3位・銅メダル獲得は、四大陸選手権大会メダリストの年齢としては、2011年羽生選手の16歳2か月での2位・銀メダルに次ぐ若さでした。

 羽生選手や宇野昌磨選手の後継者として、見事な滑りを披露してくれたのです。

 2019年12月にイタリア・トリノで開催された、ジュニアグランプリファイナルで優勝した佐藤駿選手と共に、次代の日本男子シングルを担う「両輪」としての活躍が期待されます。

 「日本男子シングルの系譜」は、これからも続くのです。

[2月9日・男子フリー・韓国ソウル]
[総合順位]
1位 羽生結弦選手 299.42点(SP111.82、FS187.60)
2位 ジェイソン・ブラウン選手(アメリカ) 274.82点(SP94.71、FS180.11)
3位 鍵山優真選手 270.61点(SP91.61、FS179.00)

 ソウルで開催された、2020年の四大陸選手権大会・男子は、羽生結弦選手がショートプログラムSPとフリースケーティングFS共に1位となって、優勝を飾りました。

 日本国内トップのプレーヤー(日本選手権優勝者)があまり出場しない大会である四大陸選手権ということもあってか、羽生選手にとっては「初優勝」でした。

 オリンピック連覇という、世界のフィギュアスケート史上でも最高の実績を残している羽生選手が優勝したことは、「順当」な結果と言って良いのでしょう。

 この大会の羽生選手のプレーには、2つのポイントがあったと思います。

① 平昌オリンピックの時のプログラムの復活

 SP・FS共に、ピョンチャン五輪のプログラムを復活しました。
 もちろん、FSについて言えば、当時は4分30秒の試技時間だったものが、その後4分に短縮されたので、全く同じプログラムという訳ではありませんから、より正確には「同じ音楽を使った」と表現した方が良いのかもしれません。

 このSPプログラムは、よほど羽生選手にマッチしているのか、今大会で世界歴代1位の記録・111.82点を叩き出しました。
 「ほとんど緩む瞬間が無く」、完成度が極めて高い、素晴らしい演技でした。

② FSにおける4回転ルッツジャンプへの挑戦

 一方で、FSの冒頭では、新たな演目・4回転ルッツジャンプに挑みました。
 4回転ルッツは、現在行われている演目、単独で行う演目としては最高の基礎点が付与されているものです。
 つまり「最難関演目」ということです。

 このトライで、羽生選手は残念ながら着氷時に手を付いてしまい、完璧な出来という訳には行きませんでしたけれども、「ほとんど成功している」形に観えましたので、今後の世界選手権大会に向けて、素晴らしい調整が出来ている印象です。

 3月18日から、カナダ・モントリオールで開催される世界選手権大会において、現在の絶対王者であるネイサン・チェン選手に挑むための準備が、着々と進んでいるということでしょうか。

 SPに比べて、とても不満足な出来であったであろうFSのラストシーン、プログラムSEIMEIの最後に両手を広げた瞬間、羽生選手には「ホッとした」表情が広がったように観えました。

 優勝したという安堵と、4回転ルッツ試行への手応え、から来る表情であったと感じます。

 スイスのローザンヌで開催されている、第3回冬季ユースオリンピックの女子アイスホッケー競技は、1月21日に決勝を行い、日本チームがスウェーデンチームを破り優勝しました。

[1月21日・決勝・ヴォードワーズアリーナ]
日本4-1スウェーデン

[1月19日・準決勝]
日本5-0スロバキア

[1月18日・予選]
日本5-1スイス

[1月17日・予選]
日本4-1チェコ

 今回の日本代表チームは、「得点力が抜群」でした。
 国際大会となれば、なかなか3点以上の得点を挙げることが難しい競技で、全ての試合において4得点以上を挙げたのです。
 素晴らしい戦い振りでしょう。

 高得点力のベースとなったのは「シュートの上手さ」だと思います。

 多くの得点シーンにおいて、日本チームのシュートは「相手ゴールキーパーGKの肩の上」のコースに放たれていました。
 このエリアにシュートを打つことが出来れば、得点の確率は格段に上がります。
 逆に言えば、このエリアにシュートを放つことは、とても難しいことなのでしょう。

 この難しいプレーを、日本チームは着実に実行し続けました。
 本当に素晴らしいプレーでした。

 もちろん、決勝のように、優勝候補筆頭のスウェーデンチームに先行を許しながらの同点シュートは、ゴール前に攻め込み、シュートの「リバウンドを叩く」という、アイスホッケーにおける「最も得点できるパターン」をしっかりと実践していましたから、「基本に忠実なプレー」の上に、「ハイレベルなシュート力」を重ねあわせていたのが、今大会の日本代表チーム「スマイルジャパン・ユース」ということになります。

 それにしても、このチームは現在のあらゆる団体競技の日本代表チーム中で、最も得点力が高いチームなのではないでしょうか。
 スウェーデンやスイスを始めとする、世界の強豪チームを相手にしてのプレー振りは、見事の一語でした。

 「目の覚めるようなシュートを連発」していただいたスマイルジャパン・ユースに、最大級の拍手を送らせていただきます。

 2019年12月18日から22日にかけて、東京・国立代々木競技場・第1体育館を会場として行われた、第88回全日本フィギュアスケート選手権大会の男女シングルについて、観て行こうと思います。

[男子シングル最終結果]
1位 宇野 昌磨 選手 総得点290.57 SP105.71 FS184.86
2位 羽生 結弦 選手 総得点282.77 SP110.72 FS172.05
3位 鍵山 優真 選手 総得点257.99 SP77.41 FS180.58
4位 田中 刑事 選手 総得点252.44 SP80.90 FS171.54
5位 佐藤 駿 選手 総得点246.50 SP82.68 FS163.82
6位 友野 一希 選手 総得点244.69 SP73.06 FS171.63

[女子シングル最終結果]
1位 紀平 梨花 選手 総得点229.20 SP73.98 FS155.22
2位 樋口 新葉 選手 総得点206.61 SP68.10 FS138.51
3位 川畑 和愛 選手 総得点193.96 SP65.53 FS128.43
4位 宮原 知子 選手 総得点191.43 SP70.11 FS121.32
5位 横井 ゆは菜 選手 総得点190.92 SP62.90 FS128.02
6位 坂本 花織 選手 総得点188.26 SP69.95 FS118.31

 男子は予想通り、羽生選手と宇野選手の一騎打ちとなりました。
 ショートプログラムSPで、羽生選手が5点リードしましたが、フリースケーティングFSで宇野選手が12点リードして、逆転勝ちしました。
 宇野選手は、全日本4連覇を達成したのです。
 
 羽生選手のフリーの大不調は、ある意味では意外でしたが、SPにおける宇野選手の「喰い付き」がプレッシャーとなった可能性はあるでしょう。

 女子は、紀平選手の順当勝ちでした。
 2018年からシニアに登場し、短期間で数多くの試合に出場して、堂々たる貫禄を身に付けたということになります。

 さて、今大会は「若手の伸長」が目立ちました。

 男子の3位・鍵山選手は16歳です。その鍵山選手がフリーで180点越えの演技を披露しました。FSで羽生選手を大きく上回ったのです。
 先日のジュニアグランプリファイナルで優勝した佐藤選手も、5位に食い込みました。

 このお二人は、良きライバルにして友人であると報じられています。
 間違いなく「次代の男子シングルを支えて行く存在」でしょう。

 女子でも、若手が伸びてきました。
 3位の川畑選手は17歳。フリーでは、紀平選手、樋口選手に次ぐ得点を挙げています。
 紀平選手が17歳ですので、同い年のプレーヤーとして成長を続けているのです。

 男子の高橋大輔選手(12位)のような、ベテランの活躍も素晴らしいものですが、次代を考える時には、やはり若手の成長に期待してしまいます。

 全日本フィギュア2019は、次代を担う若手が登場した大会なのでしょう。

 一方で、トップグループの選手にとっては、ISUグランプリシリーズとの連戦の疲労が気になりました。
 羽生選手や紀平選手には、やはり連戦に伴う疲労がプレーに出ているように感じられました。

 グランプリファイナルの翌週に「全日本」、歴史と伝統を誇る、日本のフィギュアスケーターであれば、誰もが優勝したいビッグタイトル「全日本」が組まれているというのは、少し厳しい感じがします。
 「もう一週」空けることが出来ないものかと思います。

 フィギュアスケート界のシーズン前半のハイライトである、グランプリファイナルが幕を閉じました。
 男子シングルはネイサン・チェン選手(アメリカ)、女子シングルはアリョーナ・コストルナヤ選手(ロシア)が、共に世界最高得点をマークしての快勝でした。

 我らが羽生結弦選手と紀平梨花選手は、共に良く戦いましたが、残念ながら2位と4位でした。

 その戦いの後のインタビューで、羽生選手からは「ジャンプ大会ではない」、紀平選手からは「時代の流れに送れずにトライできた」、というコメントがなされたと報じられました。

 紀平選手は、自身初めての「4回転サルコウ」への挑戦(惜しくも失敗でしたが)を指してのコメントでしょう。4回転ジャンプを、それも複数種類飛び、今大会でも2位・3位に入った、アンナ・シェルバコワ選手とアレクサンドラ・トゥルソワ選手のロシア勢のプレーが、現在の世界最先端であり、その流れに遅れることなくトライできたという意味であろうと思います。

 こうした流れを観るにつけ、「フィギュアスケートのこれから」について考えてみました。

 男子シングルならば、現在複数種類の4回転ジャンプを、大きな大会においてもほぼ完璧に飛ぶネイサン・チェン選手が君臨しています。
 今後チェン選手を追い抜く選手が登場するとすれば、「4回転アクセル」や「5回転サルコウ」といったジャンプを身に付ける必要があるのでしょうか。

 女子シングルであれば、紀平選手が創り出した「安定して3回転アクセル」を飛ばなければ世界では勝てないという流れから、各種の4回転を成功させるスケーターが登場してきている段階ですから、今後は「4回転ジャンプの成功率・出来の良さ」を追求する時代なのでしょう。
 GPファイナル2019において、4回転ジャンプを演技に組み込んでいなかったコストルナヤ選手が、シェルバコワ選手やトゥルソワ選手に勝つことができたのは、2人の4回転ジャンパーの完成度が、まだまだ低かったということになりそうです。まだ、「完成度の高い3回転アクセルが、完成度の低い4回転に勝る」時期なのでしょう。

 男女のペア種目にしても、2人でシンクロして飛ぶ「4回転ジャンプ」が求められてくるのは、自然な流れだと思われます。

 さて、男子シングルに、そしてそう遠くない将来、女子シングルにも「5回転ジャンプの時代が到来する」として、その後は、どうなるのでしょうか?「5回転アクセル」の時代を経て「6回転」の時代が来るのでしょうか。

 人間の能力には限界が無い、と安直に考えて良いという感じがしません。

 プレーヤーの肉体的・精神的な限界を考慮しなくてはならない時期が来ているのかもしれません。

 思えば、20世紀の大会においては、まず「審判員に顔を知られていなければ」上位には進出できないので、大会になるべく多く参加し、「雰囲気→アーティスティックインプレッションが良くなければ得点が伸びない」という採点方法であったと言われ、一度世界一に昇り詰めると「しばらくの間」は、その選手の時代が続きました。(余程のミス、例えば女子シングルならば、2回転ジャンプを連続して転倒するといったミスを犯さない限り、トップと目される選手は優勝していたのです)

 それでは「不公平」との意見が次第に強まり、ジャンプやステップ、スピンといった演技の構成要素に、その難易度毎に「基礎点」を決め、これに演技の「出来栄え」点を加減することにより、分かりやすく公平な採点方式が導入され、それが様々な見直しを加えられながら、完成度を高めてきたのが、現在なのでしょう。

 従って、基礎点の高い演目を、完成度高くプレーされてしまうと、「4回転ジャンプ」を飛べる選手の方が「3回転しか飛べない」選手より、「必ず上位に来る」時代が到来しているのです。

 昨シーズン、紀平選手がシニアにデビューした時、ロシアのコーチから「普通にやれば私達の選手は絶対に紀平に勝てない」と言ったこと、極めて冷静に分析していたことが、とても印象的でした。(本ブログ2018年12月13日の記事「[GPファイナル2018女子」紀平選手の演技に対するロシア関係者の「冷静・公平」なコメント]ご参照ください)

 結果として、ロシアチームは「わずか1年」で4回転ジャンプが飛べるスケーターを複数登場させたのです。
 そのロシアチームの強化体制のレベルの高さにも感服させられるところです。

 さて、話を戻します。

 こうなると「5回転ジャンプ時代」の到来が、それもそう遠くない時期での到来が予想されるわけですが、それがフィギュアスケートにとって良いことなのか否かを、十分に検討する必要がありそうです。
 プレーヤーにとっては、身体への重度の負担を強いるプレーが、年々厳しさを増し、観る側にとっては「3回転なのか、4回転なのか、5回転なのか」よく分からない中で、順位が付いていく時代・・・。

 とはいえ、「知名度と雰囲気だけで順位が決まる」時代に逆戻りすることもできません。

 頭書の羽生結弦選手のコメントが耳に残ります。
 フィギュアスケートは「ジャンプ大会では無い」。

 深く、重いコメントだと感じます。

 イタリア・トリノにおいて、12月5日にショートプログラムSP、12月7日にフリースケーティングFSが行われた、2019年のフィギュアスケート・グランプリファイナル大会の男子は、アメリカ合衆国のネイサン・チェン選手が優勝を飾りました。

[グランプリファイナル2019男子の結果]
1位 ネイサン・チェン選手 SP110.38点 FS224.92点 計335.30点
2位 羽生結弦選手 SP97.43点 FS194.00点 計291.43点
3位 ケヴィン・エイモズ選手(フランス) SP96.71点 FS178.92点 計275.63点

 SPで高得点をたたき出したチェン選手が、FSもほぼノーミスで滑り切り、世界最高得点で圧勝しました。
 「4回転ジャンプの安定感が際立つ」、世界最高の演技でした。

 羽生結弦選手も、FSに「4回転ルッツ」を組み込み、それを見事に熟しましたが、やはりSPでの「4回転+3回転」のミスが祟り、FSでもこの演目は失敗してしまい、思ったように得点を伸ばすことができませんでした。

 チェン選手と羽生選手との合計得点の差は40点以上に広がりましたが、テレビで両選手の演技を観た限り、それ程の大差が有る様には観えませんでした。
 羽生選手が、組み込んだ演目をキッチリと熟せば、僅差の勝負となっていたことでしょう。

 また、羽生選手の演技後の得点公示がとても遅くなったことは、羽生選手の演技に対する「審判団内部の確執」があったかもしれないことを感じさせました。
 これまでも、フィギュアスケートの大会において、時々見られた事象ですけれども、今回は「羽生選手の得点をなるべく低くすることで、チェン選手が1度や2度ミスをしても優勝できる環境を整えようとする審判員が居た」ことを、疑われても止むを得ない「長い時間」がかかったのです。
 陸上競技や競泳とは異なる「採点競技」においては、こうした不自然さを感じさせる動きは、極力無くして行かなければならないのですが、「また出た」ということでしょうか。
 テレビ画面の左上に表示されていた「暫定技術点」より、大幅に低い技術点が公示されたことも、この疑惑を深める可能性が有ります。
 もちろんテレビ画面に表示されているのは「暫定」「ご参考」の得点なのですけれども、他のプレーヤーの時には概ね「暫定」得点の前後で正式な得点が出てくるのに、羽生選手の時だけは大幅に低い、というのでは、「何かあったの?」という声が出るのも自然なことでしょう。
 そして、こうした不自然な動きを感じさせる採点が行われた後に、「勝たせよう」と目論んでいたプレーヤーが「完璧な演技」を魅せてくれるのも、毎回同じだと感じます。
 「余計なこと」をしなくとも、強い選手は素晴らしい演技を見せてくれるのです。
 もちろん、「ライバル選手の得点が伸びなかったので気楽にプレーできた」のが、完璧な演技の要因のひとつであろうという見方も、あります。

 羽生選手は、大会終了後のインタビューで、「直ぐに練習がしたい」と語りました。
 敗れたことによる「失意」など微塵も感じられないコメントでした。
 「4回転ルッツ」を本番で成功させることができたことに対する手応えさえ、感じている様子。

 続いて、他のインタビューでは「今に観ていろ」とコメントしたとも報じられました。
 
 素晴らしい「意欲」です。

 どんな競技においても、世界トップクラスのアスリートは「負けず嫌い」であると言われ、実際に、吉田沙保里選手や大谷翔平選手の凄まじいというか、リラックスタイムにおけるテレビゲームにおいてさえ負けることをとても嫌がるという、スタープレーヤーに必須の「好ましい負けず嫌い」性格を、度々眼にしてきましたが、羽生結弦選手の負けず嫌いも、これらのアスリートに勝るとも劣らないレベルであることを、改めて感じさせてくれた大会でした。

 フィギュアスケート史上に燦然と輝く「オリンピック2大会連続金メダル」という偉業、あのエフゲニー・プルシェンコ選手でも達成できなかった偉業を成し遂げ、史上最高の男子フィギュアスケーターという評もあり、およそ、フィギュアスケート界において考えられる全ての栄光を手にしてきたスーパースターにして、この超「負けず嫌い」が維持されていること、自らの得点をもっともっと伸ばしていこうとする「強い意欲」が存在していること、に対して、感嘆の声を挙げずにはいられません。

 現在、男子フィギュアスケート界に君臨しているネイサン・チェン選手にとっても、まさに「驚異」の存在であることは、間違いないのでしょう。

 さいたまスーパーアリーナを舞台に開催された、フィギュアスケートの世界選手権大会ですが、日本チームのメダルは男子シングルの羽生結弦選手の銀メダルだけでした。

 もちろん、世界選手権大会で銀メダルを獲得するというのは、とても立派な成績ですが、日本のファンの大会前の期待と比べれば、とても残念な結果であったことも間違いないでしょう。
 「完敗」というのが的確な言葉であろうと思います。

 男子シングルの羽生選手・宇野選手と女子シングルの紀平選手の3つのメダル獲得は確実で、男女ともに金メダルの可能性もあるというか、相当に「高い」という期待をしていたのです。

 しかし、世界のレベルはとても高かったのです。
 当たり前のことなのですけれども、どうしてもそういうことは忘れてしまいがちなのでしょう。

 日本チームの各選手に共通していたのは、「ショートプログラムSPでの不振」でした。
 大会最初のジャンプを思い通りには跳べない選手が続出したのです。

 紀平選手が1回転、羽生選手が2回転となって、「無得点」の発進となってしまいました。

 「地元大会」ということに対する気負い・力みが無かったとは言えないと感じます。

 それに加えて「世界の進歩に日本が付いて行けていなかった」という要素が加わって、今般の結果が生じたのではないでしょうか。

 我が国に限ったことではありませんが、地元開催というのは、普段の生活環境を維持した状況でゲームに臨むことが出来ることや、圧倒的な応援を背に戦うことが出来ること、「勢いに乗って」好成績を連発することが出来ると言ったメリットがありますが、一方で、「他国開催」を大きく上回る「応援・期待」がプレッシャーに繋がり易く、ひとりの選手、ひとつのチームの失敗が他のプレーヤー達に伝播し易いというリスクもあるのです。

 「地元開催世界大会」に存在する厳然たるリスクについては、東京オリンピック2020に向けて、日程・会場の設定、プレーヤーの出場順番等々、開催国として可能な限りの対策を講じておく必要がありそうです。
 
[2月21日/23日・さいたまスーパーアリーナ]
1位 ネイサン・チェン選手 323.42点(SP107.40、フリー216.02)
2位 羽生結弦選手 300.97点(SP94.87、フリー206.10)
3位 ビンセント・ゾウ選手 281.16点(SP94.17、フリー186.99)
4位 宇野昌磨選手 270.32点(SP91.40、フリー178.92)
5位 金博洋 262.71点(SP84.26、フリー178.45)
6位 ミハイル・コリヤダ選手 262.44点(SP84.23、フリー178.21)

 ネイサン・チェン選手の圧勝でした。

 ショートプログラムSPも素晴らしい演技でしたが、フリースケーティングは「圧巻」でした。
 殆どノーミスの演技でしたが、単にノーミスと言うだけでは無く、ひとつひとつの演目の完成度が見事でした。フリー最初の演目、4回転ルッツを観た時の衝撃、単独の演目としては現在最も難しいとされている演目を完璧に熟しました。
 驚いて観ていると、そのGOEが4点を優に超えて5点に迫っていました。
 単独ジャンプで5点に近い加算点とは凄い・・・。

 この大会というか、現時点のチェン選手の地力の高さを如実に示したルッツジャンプであったと感じます。
 
 次々に繰り出されるその後の演目でも、次々に高い加算点が与えられました。
 スピンやステップといった、ジャンプに比べれば大きな得点が付きにくい演目でも、相当の加算点が付き続けました。
 多くの演目に付いて、羽生選手より上の加算点であったと思います。

 大会前、今年1月の全米選手権大会で「344.22点」という驚異的な得点を叩き出したことが報じられていました。
 何故、世界のフィギュアスケート大国のひとつであるアメリカのNO.1を決める大会が国際スケート連合(ISU)の非公認なのかは不思議なことですが、いずれにしても世界屈指のナショナル選手権大会で340点越えという、とんでもないスコアを記録していたのです。

 そして、その記録が決して「まぐれ」ではなかったことを、さいたまスーパーアリーナで世界中に示したのです。

 当然のことながら、羽生結弦選手がSPの最初の4回転ジャンプを成功していたとしても、今大会はネイサン・チェン選手が優勝していたことでしょう。
 SP1位、フリー1位、それも2位に大差を付けての1位ですから、別次元のレベルに居るのです。

 故障から復帰の羽生選手も素晴らしい演技を魅せてくれました。

 久しぶりのゲームに臨むに際して、自らを懸命に鼓舞し、勝利への執念を示し、試合勘が鈍っていたであろう中で、あれだけのフリーを演じるのですから、オリンピックチャンピオンの名に恥じないというか、「普通?の世界選手権(変な言い方で恐縮ですが)」であれば十分に優勝に値するプレーを魅せてくれました。
 今回は「ネイサン・チェン選手の大会」だったのです。

 それにしても、2018年平昌オリンピックから2019年の世界選手権にかけての1年間における男子フィギュア界の進歩は、凄まじいものであったことを、改めて認識させてくれた大会でした。
 最近の世界選手権の過去のメダリスト達が、全くメダルに届かなかったのです。

 「フリープログラムに4回転ジャンプを4本入れる」選手が「続出」しましたし、最高難度演目「4回転ルッツ」も珍しいものではありませんでした。
 この1年間で、「4回転を飛ぶ」から「何種類の4回転を何回成功させる」時代に、一気に進んだのです。長足の進歩でしょう。

 特にアメリカチームの成長は目覚ましいものです。
 今大会3位となったビンセント・ゾウ選手は、大会前から「メダリストに相応しい選手であることを示す」と公言して、それを実行しました。
 281.16という総合得点は、とても高いレベルのものです。2018年までなら優勝していても不思議の無い水準でしょう。

 「チェン選手とゾウ選手」、アメリカチームは最強の2プレーヤーを得ました。
 この「10歳代の2選手」が、今後の世界の男子シングルを牽引して行く存在なのでしょう。

 3月10日、スピードスケート・ワールドカップWCの今季最終戦、ソルトレークシティ大会(アメリカ)の女子1500mで、高木美帆選手が1分49秒839という驚異的な世界新記録を樹立して優勝しました。
 女子において「史上初の49秒台」という、歴史的なレースとなったのです。

 会場のユタ・オリンピックオーバルは世界屈指の高速リンクです。
 これまでも数多くの世界記録を生んできたリンクですが、今大会も世界新記録ラッシュに沸きました。

 同じレースで複数の選手が世界新記録をマークするレースもあったのです。
 
 例えば1日目の男子500mでは、新濱立也選手が33秒835の世界新記録をマークして首位に立ちましたが、後から滑ったパヴェル・クリズ二コフ選手が33秒616で世界記録を更新して優勝しました。

 女子1000mでも、優勝したブリトニー・ボウ選手、2位の高木美帆選手、3位の小平奈緒選手の3名が世界新記録でした。

 そして、女子1500mにおいて、高木美帆選手の見事な世界新記録が生まれたのです。

 「世界記録製造リンク」といえば、20世紀にはドイツのインツェルが有名でしたが、21世紀はソルトレーク・オリンピックの会場であった「ユタ・オリンピックオーバル」ということなのでしょう。

 さて、女子の1000m・1500mといえば、日本の小平・高木の2選手とアメリカのボウ選手の争いとなっていて、今季のワールドカップ・シーズン総合成績では、1000m・1500m共にボウ選手が優勝し、両種目共に高木美帆選手が総合2位、1000mでは小平選手が総合3位と健闘しています。
 シーズンを通しては、ブリタニー・ボウ選手の強さ・安定感が秀でているのです。

 そのボウ選手に、0.5秒近い差を付けた高木選手の、今回の世界記録の凄さが一層際立つところでしょう。

 ちなみに、今季WC女子500mのシーズン総合優勝は、オーストリアのバネッサ・ヘルツォーク選手でした。小平選手は、出場したレースでは無敗ですが、全てのレースに出場しているわけでは無かったのです。
 ちなみに今大会(WCソルトレークシティ大会)の500mでも、小平選手が1日目・2日目共に優勝しているのですが、ヘルツォーク選手は2位と3位に入っています。

 2010年代の後半、日本女子スピードスケート陣は素晴らしい活躍を続けていますが、「王国」オランダ勢を始めとして、世界には強者が沢山いるのです。(当たり前のことで恐縮です)

 2月10日、ショートプログラムSP4位でフリースケーティングFSに臨んだ宇野昌磨選手が、完成度の高いプレーを魅せて逆転優勝を飾りました。

 総合順位は以下の通り。
1位 宇野昌磨 総合得点289.12 SP91.76・FS197.36
2位 金博洋 同273.51 SP92.17・FS181.34
3位 ヴィンセント・ジョウ 同272.22 SP100.18・FS172.04

 SPで約8点の差を付けられて4位だった宇野選手が、総合では14点以上の差を付けて勝っているのですから、宇野選手のFSの演技が「圧倒的なもの」であったことが良く分かります。
 197点を超えるFSというのは現在の世界最高点ですし、羽生結弦選手の最高点演技を約7点上回る、世界フィギュア史上に刻まれる好プレーでした。

 大会前、右足首の再三の「捻挫」の為に、練習不足が指摘されていた宇野選手は、SPではその不安が表れた形でした。
 軸足、ジャンプ時に着氷する足である右足の足首が故障している状態では、満足な演技が出来ないのは自然なことで、今回は「無理をしないで」欲しいと感じていました。

 しかし、FSの6分間練習に登場した宇野選手の「眦を決した」様子を観た時、「全力を投入」するつもりであることがよく分かりました。3月の世界選手権に向けて治療を優先し「無理をしない」ということではなく、この大会で全ての力を出し尽くす、怪我の悪化リスクを考えない姿勢が、全身から溢れていました。

 そしてそのFSの演技は、本当に素晴らしいものでした。

 3回トライした4回転ジャンプは全て成功、ステップ、スピンのシークエンスも完璧、唯一のミスと言える「3回転+1オイラー+3回転」の最後の3回転ジャンプでしたが、この演目は基礎点が15点を超える難度の高いものであり、この演目の出来栄え点はマイナス1点以上となっていましたので、逆に言えば、この演目を上手く熟すことができればプラス2点以上の出来栄え点を獲得することが十分可能であり、それは「FS200点越え」に結び付くものです。
 新採点基準における「FS200点越え」の可能性を感じさせる演技であったことになります。
 200点越えはもちろん、世界中の誰も達成していない領域・高みです。

 今回の四大陸選手権大会を観ると、「演目の完成度」の重要性が改めて感じられました。

 「単に4回転にトライする」ことが問題なのでは無く、「試合で4回転を完璧に飛ぶ」ことが重要なのです。
 嫌な言い方で恐縮ですが、誤魔化しているような雑な演技なら「やらない方がまし」なのかもしれません。

 「回転不足の連発」、着氷後の「伸び」が無い4回転ジャンプ、というのでは、「4回転を飛んでいる」とは言えないと思います。
 「一か八か」というレベルでは、試合において飛ぶにはまだ早いということなのでしょう。

 その点では、宇野昌磨選手や、前日の女子シングルの紀平梨花選手は、とても完成度の高い技を身に付けています。それは、演技を見れば誰にでも分かることでしょう。

 フィギュアスケート男子日本チームは、羽生選手、宇野選手の「2枚看板」を前面に押し立てて世界選手権に挑みます。
 もともと宇野選手は、羽生選手に勝るとも劣らないレベルに達しているアスリートですから、日本チームとしては最強の布陣でしょう。
 これ程のスケーターを同時期に2名も生み出したことは、日本男子フィギュア界の「大功績」であることも間違いありません。

 一方で、世界トップクラスに居る2人には、連戦・長いキャリアの影響から、常に「故障」のリスクが存在します。
 3月の世界選手権も、2人共欠場の可能性がないとはいえないでしょう。

 日本男子フィギュア史上最強の2人が健在である間に、次代を支えるスケーターの登場が待たれるところです。
[2月8日・女子シングル最終日・アメリカ合衆国カリフォルニア州アナハイム]
1位 紀平梨花 総合得点221.99 SP68.85・FS153.14
2位 エリザベート・トゥルシンバエワ 同207.46 SP68.09・FS139.37
3位 三原舞依 同207.12 SP65.15・FS141.97

 ショートプログラムで5位と出遅れた紀平選手が、フリースケーティングFSで圧巻の演技を魅せて逆転勝ちしました。
 結果として2位に13点以上の差を付ける圧勝であったことが、紀平選手のFSの凄さを如実に示しています。

 試合前の練習で、紀平選手が左手薬指の関節を亜脱臼した時には、欠場も予想されました。タイミングがとても大切なフィギュアスケートのジャンプシークエンスにおいては、踏切の際に「普段存在しない痛み」が体に走るのは大きな影響が有るので、試技を行うのは困難に思われたからです。

 話が少し逸れますが、例えば主に上半身でプレーするように見えるテニスや卓球、バドミントン、あるいは野球のバッティングといった競技・プレーにおいて、下半身が極めて重要な事は明らかですし、主に下半身でプレーするように見えるサッカーにおいて、上半身が重要な役割を果たすのは、ご承知の通りです。
 フィギュアスケートにおいても、上半身の怪我の影響はとても大きいものでしょう。

 しかし、紀平選手は敢然と出場して来ました。

 とはいえ、故障が有る中での試合における試技で、当該の怪我がどれくらいの影響が有るかは、やってみないと分からないもの(練習と試合は全く違うものです)ですので、トライしてみたのがSPということでしょう。
 そして、SPにおいてはトリプルアクセルを飛ぶことが出来ませんでした。

 それでも、SPのその後のジャンプは綺麗に決めましたから、SPへのトライによって、薬指の故障下、「痛み」や指が動き難い状況におけるジャンプの飛び方を、概ね身に付けた、ということであろうと思います。

 一度身に付けると、その対応策を試合において高確率で発揮できるところが、紀平選手の凄いところでしょう。
 「順応性」「適応力」が抜群なのです。

 もちろん、今大会のFSは、本来のプレーに比べると、スピード、ジャンプの高さ等がやや見劣りしました。
 当初のトリプルアクセル後のコンビネーションジャンプは、本来トリプルアクセル+3回転のものを、ダブルアクセル+3回転にダウングレードして滑っていました。紀平選手は、故障の下で出来る最善のプレーを冷静に行っていたのでしょう。
 この冷静さと丁寧なプレーも、紀平選手の強みです。

 FS試技終了の瞬間、紀平選手は控えめにガッツポーズを魅せましたが、その際にも左手は太腿の上に置いたまま動かしませんでした。相当痛かったのでしょう。

 3位に食い込んだ三原選手は、「乗った時には、とことん押す」という三原選手の持ち味が良く発揮されていました。
 当初のコンビネーションジャンプを成功させて勢いに乗り、素晴らしい試技を完成させました。
 好成績を挙げた大会における三原選手の滑りには、いつも感心させられます。

 それにしても、FSにおいて紀平選手が履いていたスケート靴のブレードの色が左右で異なりました。右脚がゴールドで左足がシルバーだったのです。
 大会前から「靴の具合が良くない」と報じられていましたので、おそらくは左右別々の靴を履いたのであろうと思います。

 別々の2組の靴から、別々に1つずつ左右の靴を選ぶというのも、なかなかの冒険の様に感じますが、現時点で一番履きやすい靴を選択して大会に臨んだことになります。

 ここにも、紀平選手の「適応力」の高さが表れているのでしょう。
 フィギュアスケートのグランプリGPファイナル2018における、紀平梨花選手の活躍は、世界中に大きなインパクトを与えていて、様々なコメント・評価が報じられていますが、中でもロシアの関係者の評価が、とても印象的です。

 極めて「冷静・公平」な評価・コメントが多いのです。

 「女子フィギュアスケート大国」であり、現在最も強いと目されているロシアチームから、これだけ「冷静・公平」な評価が出てくるところに、「ロシアチームの強さ」を感じます。
 加えて、今後も女子フィギュア・ロシアチームは継続して強いであろうと感じます。

 いわば「敵」チームのプレーヤーに対しても、これだけ客観的な評価が出来るところに、ロシアチームの強さの源が有るのでしょう。
 素晴らしいことだと思います。

 まずは、「重鎮」イリーナ・スルツカヤ氏のコメント。
 スルツカヤ氏は、言わずと知れた2002年ソルトレークシティ・オリンピックの銀メダリストにして、2006年トリノ・オリンピックの銅メダリストです。長い間ロシアチームを牽引した、いわば「伝説的プレーヤー」ということになります。

 そのスルツカヤ氏がGPファイナル2018女子を総括して、

① 3回転ルッツ+3回転ループの連続ジャンプは2005年に跳ばれて、今も跳ばれている。しかしキヒラは新しいスタンダードを課した。自分のプログラムをきれいに滑っても、いずれにしろキヒラに届かない。つまり他に道は無いのです。新しい何かを考えだすのが不可欠。それか後ろで止まっているか。
② もし、キヒラがすべてのエレメンツを上手くやると、多くの人より高いレベルにある。キヒラは素晴らしい、シンプルに素晴らしい。
③ 彼女のシニア参戦によって1つは、フィギュアスケートを観るのがとても面白くなった。2つ目に我々ロシアの女子スケーターたちにとても相応しいライバルが現れたと言えます。キヒラは彼女らを神経質にさせるし、彼女たちは付加的な重圧と責任を負うことになります。そう、これはもう本物の戦いよ。

 と語ったと、報じられました。(12月12日配信のTHE ANSWER)

 ロシア選手が自らの演技を上手くやったとしても、紀平選手(複数のトリプルアクセルを配した基礎点の高い演技を行う)には及ばないことを十分に把握していて、それを公然と言葉にしているところが、凄いところでしょう。現状のロシア選手では、どうやっても、ミスが少なかった時の紀平選手には敵わないことをメディアに大声で言い、「新しい何かを考えだすのが不可欠」と警鐘を鳴らし、「本物の戦いが始まった」と締めています。

 妙な依怙贔屓や、過去の選手を引き合いに出して、あの時代のあの選手の方が強かったなどという、現状に対して何の役にも立たないことを必死に述べるより、はるかに上質で、明日に繋がるコメントでしょう。
 こういう「凄い人」が居るロシア・フィギュアスケート界が強いのは、とても自然なことだと感じます。

 続いては、ショートプログラムSPのロシア放送局「Match TV」の放送内容です。(12月8日配信・THE ANSWER)

 この大会のSPにおける紀平梨花選手の演技は「完璧」でした。世界最高得点でもありました。その「完璧な演技」に対して、ロシアの放送局は下記のように報じたのです。

① (最初のトリプルアクセルの成功を観て)理想的です。ジャッジがたくさん加点するでしょう。
② (中盤以降の美しいステップ、スピンを観て)ブラボー、ブラボー。(解説者)なんてファンタスティックな技術点でしょう。このスケーターを見て、弱いところを見つけようとしましたが、ありません。ジャンプ、スケーティング、スピンが素晴らしい。
③ (演技が終了し、実況のアナウンサー)ショックです。(解説者)私もショックです。なんて言っていいか分かりません。世界記録がでると思います。彼女のプログラムを私たちは長く覚えているでしょう。
④ (82.51点が出たことを見て、実況のアナウンサー)82点(と絶句し)技術点もクレイジーだし、構成点もクレイジーだ。フーッ。

 ライバル国のルーキープレーヤーの演技を目の当たりにして、これだけ「冷静・公平」な放送ができるところに、まず感心します。
 偏った、歪んだ放送では無いのです。

 特に解説者の「(紀平の演技に)弱いところを見つけようとしたが無かった」「彼女のプログラムを私たちは長く覚えているでしょう」というコメントは、世界の女子フィギュアスケートシングルを本当に「公平」に見ている人にしか、発することが出来ないものでしょう。

 前述の「重鎮」スルツカヤ氏のコメントのみならず、テレビ中継においても、これだけ「冷静・公平」な放送が出来るというのは、凄いことだと思います。
 当然ながら、この放送がロシアの各家庭に流れているのです。

 自国プレーヤーへの応援は、もちろん行うのでしょうが、他国選手の演技もしっかりと評価し、正確に伝えるというのは、「放送文化のレベルの高さ」を感じると言ったら、大袈裟に過ぎるでしょうか。

 GPファイナル2018の優勝で、紀平梨花選手は一気に世界トップに躍り出ました。これは、世界中が等しく評価しているところです。

 しかし、これだけの「冷静・公平」な評価・コメントを観ると、ロシアチームが今後も強力なライバルとして存在し続けることも間違いないのでしょう。
 12月9日にかけて、カナダのバンクーバーで開催された、グランプリファイナル大会の男子の結果は、以下の通り。

1位 ネイサン・チェン選手(アメリカ) 総合得点282.42(SP92.99、FS189.43)
2位 宇野昌磨選手 総合得点275.10(SP91.67、FS183.43)
3位 チャ・ジュンファン(韓国) 総合得点263.49(SP89.07、FS174.42)

 今大会を通じて、宇野選手はコンディションが悪いと感じました。

 体の動きに本来のキレがありませんでした。持ち味の「俊敏性」に欠けていたのです。
 この「感じ」は、平昌オリンピックの時から存在していて、やや悪化していると思います。
 2018年の宇野選手は、2017年に比べて「キレ」が不足していたのでしょう。

 このことを最も明確に感じるのは、「4回転ジャンプの着地時」の動きです。

 2017年の宇野選手は、着地後相当のスピードで「2~3mほど移動」し、「完成度の高い美しい」ジャンプを魅せてくれていたのですが、2018年はそのスムースさに欠けました。見方によっては「何とか回っている」感じ。
 踏み切り、空中での4回転、着地準備、着地の全ての要素において、「ほんの僅かスピードが足りない」ことが、ジャンプ全体の動きをギクシャクしたものに見せてしまったという印象です。

 シニアデビュー以降の連戦に伴う「心身の疲労の蓄積」やどこかに軽度の故障が有る、ことなどの要因が考えられますが、いずれにしても、オリンピック銀メダリストとして「初の世界一」を目指した宇野選手にとって、今大会はとても残念な結果でした。

 本来の「キレ」があれば、十二分に優勝を狙えたと思います。
厳しいスケジュールの合間を縫っての「回復に向けた取り組み」が待たれるところです。

 ネイサン・チェン選手は、「高い基礎点」をベースにした、「らしい演技」で高得点を示現して、連覇を果たしました。世界トップクラスの力を示したのです。
 
 本ブログでは、今大会は宇野選手とチェン選手の優勝争い、それも「総合280点」を巡っての戦いと見ていましたが、概ね予想通りの結果となりました。

 現在、「最強の2プレーヤー」を擁するフィギュアの男子シングル日本チームとしては、羽生選手、宇野選手が頑張っている間に、次の世代、現在13歳~15歳の世代の中から、将来の日本男子を背負って行くプレーヤーを見出し育成していかなければならないと、改めて感じさせる大会となりました。

 12月9日にかけて、カナダのバンクーバーで開催された、グランプリファイナル大会の女子の結果は、以下の通り。

1位 紀平梨花選手 総合得点233.12(SP82.51、FS150.61)
2位 アリーナ・ザギトワ選手(ロシア) 総合得点226.53(SP77.93、FS148.60)
3位 エリザベータ・トゥクタミシェア選手(ロシア) 総合得点215.32(SP90.65、FS144.67)

 ショートプログラムSPで圧巻の演技を魅せた紀平選手が、フリースケーティングFSでも安定感抜群の演技を披露して、危なげなく優勝した印象です。
 総合得点の230点越えも、本ブログの期待通りでした。

 紀平選手のSPは「空前の演技」でした。フィギュアスケート競技においては、どんなに素晴らしい演技でも、ケチを付けようと思えば、いくつかのポイントが存在するものですが、この演技には無かったと思います。本当の意味での「完璧な演技」だったのではないでしょうか。

 SP開始時から「体が良く動き」ました。
 手、腕、脚、そして全身の動きのキレは驚異的で、音楽との同調性が極めて高く、細かい動きのスピードが尋常では無かったためか、「コマ落ち」の映像の様にさえ観えました。

 ジャンプは、成功するか否かというレベルでは無く、美しいか否かという次元でした。

 キス・アンド・クライにおける、「82点」を見た時の紀平選手の表情・様子も秀逸。
 アスリートの、あれ程「嬉しそうな」姿は、滅多に観られないものでしょう。

 さすがにFSでは、最終滑走ということもあってか「優勝を意識した固い動き」が観られ、最初のトリプルアクセルでミスを犯してしまいましたが、「以後の演技をしっかりやれば十分優勝できる」と考え、それを行動に移したかのように、この後の演技には「固さ」が見る見る減って行きました。
 この「気持ちの切り替えの速さと実行力」が、紀平梨花というアスリートの最大の強みなのかもしれません。

 本大会をヨーロッパに中継した「ユーロスポーツ」の放送では、「(ミスをした後に)完全無欠のパフォーマンス」を魅せたと評し、「この日本人は『震撼』させました」と続けました。

 大会前、誰もがザギトワ選手の圧勝を予想していたのでしょうが、紀平選手はその予想を大きく超える滑りを示したのです。
 SPと総合得点は世界最高レベルでした。
 このSPに、先日の大会のFS154点台を加えれば237点台となります。

 紀平選手はトータル「240点」を目指すことが出来る、現時点では、世界で唯一の女子スケーターなのです。客観的に観て「現在、世界一の女子フィギュアスケーター」であることを、疑うのは難しいでしょう。

 世界各国で「紀平選手が世界一」という報道が相次ぎました。

 日本女子フィギュアスケート界に、素晴らしい選手が登場したのです。

 12月6日~9日にかけて、カナダのバンクーバーで開催される、フィギュアスケートのグランプリGPファイナル大会2018の、男子出場者を観て行きましょう。

 GPシリーズの1位は第3戦と第5戦で優勝した羽生結弦選手、2位は第2戦と第4戦で優勝した宇野昌磨選手、3位は第1戦と第6戦を制したネイサン・チェン選手(アメリカ)となりました。

 6戦しか無いGPシリーズの優勝は、この3名のスケーターが分け合ったのです。
 それは、取りも直さず、2018年のファイナル優勝は、この3人が争う可能性が極めて高いことを示しています。
 現在の男子フィギュアスケート・シングルは、羽生結弦、宇野昌磨、ネイサン・チェンの3選手が抜けた存在なのです。

 少し離された4位には、ミハル・ブレジナ選手(チェコ)が第1戦と第3戦の2位で入りました。「3強」を相手にしての2位2回というのも、安定した実力が伺える成績です。
 5位には、セルゲイ・ボロノフ選手(ロシア)が第4戦の2位と第1戦の3位で入り、6位にはチャ・ジュンファン選手(韓国)が第2戦と第3戦の3位2回で食い込みました。

 さて、GPファイナルの行方ですが、羽生結弦選手が出場してくれば、優勝の可能性が最も高かったことでしょう。「加点をもらえる演技」という点では、宇野・チェンの両選手より相当上に居るのです。SPとフリーの合計で300点前後の得点を叩き出すことが出来ます。

 とはいえご承知の通り、羽生選手は第5戦の公式練習で足首を故障してしまい、今大会は欠場すると表明されましたから、宇野選手とチェン選手の争いとなるのでしょう。

 多くの種類の4回転ジャンプを演技に入れているチェン選手が基礎点では上回りますから、チェン選手がミスの少ない演技を披露出来れば高得点となる可能性が高いのですが、個々の技の完成度やプログラムの構成では宇野選手が上回りますので、チェン選手にミスが重なるようであれば、宇野選手の方が有利なのでしょう。

 一瞬も眼が離せない「合計280点前後の大接戦」が、予想されます。
 12月6日~9日にかけて、カナダのバンクーバーで開催される、フィギュアスケートのグランプリGPファイナル大会2018の、女子出場者を観て行きましょう。

 GPシリーズの1位は、第3戦と第5戦に優勝したアギーナ・ザギトワ選手(ロシア)、2位は第4戦と第6戦に優勝した紀平梨花選手、2試合に出て2勝は、この2選手だけですから、ファイナル優勝に最も近い2選手と見るのが自然でしょう。

 3位には第1戦で優勝し、第4戦で2位となった宮原知子選手、4位には第2戦で優勝し、第4戦で3位となったエリザベータ・トゥクタミシェア選手(ロシア)が入りました。この2選手は1度優勝しているという点で、上位2選手に次ぐ力があると見るべきでしょう。

 5位には第1戦で2位、第3戦で3位となった坂本花織選手、第6位は第1戦で3位、第5戦で2位となったソフィア・サモドゥロワ選手(ロシア)となりました。

 結果として、日本選手3、ロシア選手3という構図となりました。
 現在の世界の女子シングル界を良く現した構図でしょう。

 優勝争いは、ザギトワ選手と紀平選手の争いとなる可能性が最も高いのですが、もし紀平選手が3度のトリプルアクセル(SP1度、フリー2度)を全て成功させれば、紀平選手の優勝が濃厚です。

 紀平選手がトリプルアクセルを1度しか成功できない、あるいは1度も成功できないとなれば、ザギトワ選手と、大技を持っていて基礎点が高いトゥクタミシェア選手との競り合いとなるのでしょう。
 トゥクタミシェア選手がトリプルアクセルを2度(SP・フリーで各1回)成功させれば、「2強」を凌ぐ可能性は十分にあります。

 それ以外の全てのケースでは、ステップやスピン、スパイラルといったシークエンスで安定して高得点をマークできるザギトワ選手が最有力と言うことになるのでしょう。

 紀平選手が合計230点以上(SP80点前後、フリー150点越え)の得点を叩き出して優勝するのを観たいと思っています。

 待ちに待った「日本男子500mの次代のエース」が登場しました。

 11月23日・24日にかけて行われた、スピードスケートのワールドカップ苫小牧大会では、「無敵の女王」小平奈緒選手の優勝や、女子団体追い抜きでの日本チームの優勝など、現在世界トップクラスに居る日本人選手が、その力を見事に示しました。

 一方で、男子500mに「新星」が登場したのです。

 1日目・23日のレースで新濱立也選手(しんはま たつや、22歳)は、同走の世界記録保持者・クリズニコフ選手との競り合いを制して35秒45でワールドカップ初優勝、そして2日目・24日には35秒20で2連勝を飾りました。
 苫小牧ハイランドスポーツセンターという屋外リンクで、2本とも実に安定したスケーティングを披露しました。堂々たる滑りであったと感じます。

 身長183cm・体重83kgという、日本男子スプリンターとしては大柄な体躯です。

 この体躯から、とても素早いスタートを切ります。
 1日目のグリズニコフ選手とのレースでも、100mでリードを奪いました。
 2コーナーから3コーナーにかけては、クリズニコフ選手が盛り返しました。世界記録保持者のさすがのスケーティングです。
 そして3コーナーから4コーナーにかけて、新濱選手が良い加速を魅せて、4コーナーは少しリードして回りました。

 「とても上手いコーナリング」でした。

 このスピードを活かして、そのままゴールインしたのです。

 2日目も同様のレースでした。

 1日目のアウトと2日目のイン、2日とも新濱選手は4コーナーを、膨らむことも無く、バランスを崩すことも無く、スムースに回りました。500mスケーターとして見事なことです。

 男子500mは、スピードスケート競技における「日本のお家芸」です。
 鈴木恵一選手、北沢欣浩選手、黒岩彰選手、井上純一選手、堀井学選手、清水宏保選手、長島圭一郎選手、加藤条治選手、と続く連綿たる歴史が有るのです。
 「男子500m」が日本人プレーヤーに向いていることを、世界中に示し続けて来たのです。
(2013年12月22日の本ブログ「日本男子スピードスケート500mの系譜」稿をご参照ください)

 しかし、2010年バンクーバー・オリンピックの長島選手の銀メダル、加藤選手の銅メダルを最後に、「お家芸」は鳴りを潜めていました。残念ながら、2014年のソチ、2018年の平昌とオリンピック2大会連続で、メダル無しに終わったのです。

 この間は女子陣、小平奈緒選手や高木美帆選手らが「スピードスケート日本スプリント」の伝統を堅持した印象です。

 そして2018年、待ちに待った男子500mの「新星」が登場したということになります。

 恵まれた体躯に宿るパワーと、日本伝統のコーナリングを保持している、新濱立也選手の世界での戦い振りに注目したいと思います。
 
 NHK杯2018の女子シングルが11月9日~10日に行われ、紀平梨花選手(16歳)が、ショートプログラムSP5位からの大逆転で優勝を飾りました。
 フリーの演技は、154点を超える今季世界高得点でした。

 紀平選手は、グランプリシリーズGP初出場での初優勝という、日本女子スケーターとしては史上初の快挙を成し遂げたのです。

 本ブログで紀平選手を最初に採り上げたのは2016年10月2日の記事です。「世界初の快挙」と題して、当時14歳であった紀平選手が、ジュニアGPの大会で「6種類8度のトリプルジャンプを成功させた」快挙に付いて書きました。

 現在有る全てのトリプルジャンプ(トリプルアクセルも3回転ジャンプのひとつです)を熟すというのは、女子選手はもちろんとして男子選手でも容易なことではないのですから、紀平選手がこの時点=2年以上前の段階で、技術面から見れば「日本一の女子フィギュアスケーター」であったと考えても、自然なことでしょう。

 不思議なことは、2年以上前に日本最高のレベルに達していたプレーヤーのシニアデビューが2018年~19年シーズンに持ち越されたことです。

 平昌オリンピックは、年齢制限の為に出場できなかったと記憶しています。
 加えて、手の骨折等があって調子が出ない時期が有ったことも周知のことです。

 そうした諸事情を勘案しても、日本トップクラスというか世界トップクラスのテクニックを保持するアスリートのGPシリーズデビューが、2018~19年シーズンの第4戦というのは、いかにも遅すぎる感じがします。
 どうして第1戦にデビューできなかったのでしょうか。

 ご本人の調子が上がらなかったといった理由であれば、止むを得ない感じがしますが、またぞろ、協会内の確執とか、愚人が口を挟んでの訳の分からない勢力争い、が要因であれば、「スポーツパワハラ元年」のひとつの事象ということになってしまいます。
 そういった詰まらない事情が無いことを祈るばかりです。

 さて、紀平選手はコンディションが整っていれば、ジャンプシークエンスにおいて殆どミスをしないタイプのプレーヤーです。
 NHK杯2018SPの最初のジャンプ、トリプルアクセルで転倒したのは、とても珍しいことで、紀平選手でも「GPデビュー戦ということで緊張」するのだと感じました。

 とはいえ、転倒の理由はご本人が一番分かっていたのでしょうから、以降に付いて心配はないと観ていましたが、案の定、フリーも含めてその後の全てのジャンプをきっちりとプレーしたのです。(フリーの最初のジャンプ、トリプルアクセルからのコンビネーションジャンプは少し詰まりました。演技の最初のジャンプはやはり緊張するものだと感じましたが)

 現時点の一般的な比較をすれば、女子におけるトリプルアクセルは、男子における4回転ジャンプに相当する技であろうと思います。
 それを2度成功させ、内1度はコンビネーションなのですから、紀平選手の演技の基礎点は、他の選手より相当高いものでしょう。基礎点の高い演技をミスなくプレー出来れば、優勝するのは自然なことです。

 大会終了後のインタビューで、3位となったロシアのトゥクタミシェア選手が「トリプルアクセルを2度飛べる選手が居ることは素晴らしいこと」とコメントしています。
 トゥクタミシェア選手もフリー演技で1度のトリプルアクセルを成功させていますが、「2度成功させることの難しさ」をコメントしていただいたのでしょう。

 紀平梨花選手は、現在世界の女子シングル界を席巻するロシアの選手達と、互角に戦って行けるスケーターです。
 日本女子フィギュアスケート界の「至宝」として、今後益々の活躍が期待されるところです。

 NHK杯2018女子シングル種目の表彰式に臨んで、1~3位の選手が舞台裏に集まった時、2位の宮原知子選手が紀平選手を笑顔で迎えていました。同じチームの選手として、「お姉さん格」の宮原選手が魅せてくれた素晴らしいシーンであったと思います。
 世界トップクラスのプレーヤー同士の、ひとつの在り様なのでしょう。

 丁度、MLBロサンゼルス・エンジェルスのスプリングトレーニングにおける、アルバート・プーホールズ選手と大谷翔平選手との在り様に似ているのではないかと、勝手に考えてしまいました。
 4月18日、荒川静香氏のフィギュアスケート世界殿堂入りが報じられました。

 「世界フィギュアスケート殿堂」は、アメリカ合衆国コロラド州コロラドスプリングスに在る、「世界フィギュアスケート博物館」と「栄誉の殿堂」が授与と管理を行っている賞です。

 当然ながら、容易には受賞できない栄誉であり、日本人では3人目となります。

 日本人受賞者のひとり目は、2004年の伊藤みどり氏でした。伊藤氏は、1992年アルベールビル・オリンピックの女子シングル銀メダリストであり、世界の女子で初めてトリプルアクセルと、3回転+3回転の連続ジャンプを成功させたことが評価されたものだと伝えられています。

 ふたり目は、2010年の佐藤信夫氏でした。佐藤氏はコーチとして、浅田真央選手を始めとする世界トップクラスの選手を数多く育てたことが評価されたものでしょう。

 そして、三人目が荒川氏で、2018年の受賞となります。2006年トリノ・オリンピック女子シングルの金メダルが評価されたことは、間違いありません。

 選手の表彰については「現役引退後5年以上経過」という条件がありますから、伊藤氏や荒川氏の受賞には少し「時間差」を感じることになります。
 いずれにしても、三氏の受賞は、世界のフィギュアスケート関係者からの高い評価を明示しているという点で、本当に素晴らしいことだと感じます。

 荒川静香選手のトリノにおける金メダルは、この大会の日本選手団「唯一のメダル」でしたから、日本のウインタースポーツファンにとって、とても貴重なメダルでしたし、男女を通じて、フィギュアスケート競技における「初めてのオリンピック金メダル」でもありました。
 今回の受賞に「日本チーム唯一」「日本フィギュアスケート界初」といった「物差し」がどの程度影響したかは、分かりませんけれども、その偉業は、誰もが納得する高いレベルのものだったのです。
 オリンピックが終わり、恒例?のフィギュアスケート・ルール改正の季節がやってきました。

 国際スケート連盟が本年6月の総会で決議しようとしている「ルール改正(採点方法の改正と言った方が分かり易いかもしれません)」の内容が、明らかになってきました。

 「より完成度の高いジャンプに、より高い得点が与えられる」方向性のようです。

 例えば、現在13.6点の4回転ルッツの基礎点11.5点へ、同10.3点の4回転トウループが9.5点に下がる一方で、トリプルアクセルは8.5点から8.0点、トリプルルッツは6.0点から5.9点と、4回転ジャンプと比較して3回転の方が「基礎点の下げ幅が小さい」のです。

 一方で、いわゆる出来栄え点=加点幅が±3点から±5点に拡大される方向とのこと。

 そうすると、例えば最高の出来栄えのトリプルアクセルは8.0+5.0=13.0点となって、普通の出来の4回転ルッツの11.5点を上回ることになるのです。

 まだ「改正の内容」が固まっているわけではありませんが、とはいえ「改正の方向性」は固まっているようですので、2018年~19年シーズンの競技会では、「ジャンプの完成度の高さ」がポイントとなってくるのでしょう。
 理屈上では、4回転を一度も飛ばなくとも、高いレベルの3回転を積み上げることで対抗できる可能性があります。

 確かに、2017年~18年の「採点基準」では、男子においては多くの種類の多くの4回転ジャンプを成功させれば、「必ず優勝できる」ルールでした。「基礎点合計がより高いプログラムを組み、それを成功できるか否か」、ある意味では「一か八か」のトライといった感じがしたものです。

 結果として、ジャンプとジャンプの間を繋ぐシークエンスが軽んじられ、いわゆる「スカスカの演技」が見られた、増えたとの指摘もあります。それでは、フィギュアスケートの魅力も半減だといった意見もあることでしょう。

 加えて、「演技後半で行ったジャンプの基礎点が1.1倍」というルールも同時に見直され、後半で飛ぶことが出来るジャンプの本数に制限が付くという方向だそうです。
 「全てのジャンプを演技後半に」という戦術は、取ることが出来なくなるのです。

 演技全体の技のバランスという面からは、とても良い改正の様に感じられます。

 男子についていえば、「とにかく多くの4回転ジャンプを成功させた選手が勝つ」という「定理」の変更に結びつきますし、女子については「4回転ジャンプ習得・成功が生き残るための必須条件」との近時の方向感の、見直しに繋がる可能性があります。

 フィギュアスケート競技においては、高難度の技に果敢に挑んでいく「力強さ・勇気」が大切なポイントですけれども、一方で「ほれぼれするような美しさ・完成度」もとても重要な要素であろうと思います。
 「日本女子フィギュアスケート陣の意地」を魅せていただいた気がします。

 3月23日に行われた、2018年のフィギュアスケート世界選手権大会・女子シングルのフリースケーティングで、宮原選手、樋口選手が素晴らしい演技を魅せてくれました。

 特に、ショートプログラムSPで8位と出遅れた樋口選手は、最初の3回転サルコウ、続く3回転ルッツ+3回転トウループをキッチリと決めて勢いに乗り、全てのジャンプを成功させると共に、その他のシークエンスもミス無くクリアする「会心の演技」を披露しました。

 演技終了直後・リンク上の樋口選手の「雄叫び」(女子選手には似つかわしくない言葉ですが、正に心の底からの叫びでした)が全てを表現していました。
 大きな舞台での「思った通りのパフォーマンス」は、全てのアスリートの夢でしょうが、樋口選手はそれを実現したのです。

 結果が付いて来るのは、道理でしょう。

 それにしても、「転倒など考えられない雰囲気」のプレーを魅せて、平昌オリンピックで金メダルを獲得したザギトワ選手が、何度も転倒し、SPで80点越え・世界歴代3位を記録したコストナー選手もミスを連発するとは、思いもよらないことでした。
 フィギュアスケートの「怖さ」を如実に示したのです。

 これで、次回の世界選手権・女子シングルの日本チームの出場者数は3名となりました。

 少し前まで「日本からは3名出るもの」と思い込んでいましたが、2018年のオリンピックと世界選手権では2名しか出場できませんでした。
 最高人数である「3名」枠を維持するのは、とても難しいことなのです。(当たり前のことを書き、恐縮です)

 「次に誰が出るかは分からないが、3枠を獲得し続けること」が、世界フィギュアスケート界を牽引する国・チームとしての責務であり、沢山のフィギュアスケートファンの期待に応えて行く道なのでしょう。

 本当に「茨の道」ですけれども・・・。
 平昌オリンピックの興奮も冷めやらぬ3月11日、世界選手権大会における高木美帆選手優勝の報が齎されました。

 この大会は、スピードスケートのオールラウンダー世界一を決めるもので、500m、1500m、3000m、5000mを滑り、4種目の成績のトータルで競うものですが、1日目の500mと3000mの成績で首位に立った高木選手は、2日目の3月10日の1500mで1位、最終種目の5000mで4位となって、総合成績で優勝したのです。

 2位には、この大会で過去6度の優勝を誇るオールラウンダー、オランダのイレイン・ビュスト選手が入りました。

 2018年の大会は「ミスオールラウンダー」ビュスト選手と、高木選手の激しい争いだった形です。

 2プレーヤー対決のポイントは1500m種目でした。

 中距離が得意な高木選手としては、絶対に落とせない種目ですが、中距離から長距離まで安定した力を誇るビュスト選手としても、この種目で高木選手に先着することで、総合優勝を確保したいという狙いが有ったのでしょう。

 1500mは、2プレーヤーの直接対決となりました。
 1000mも強い高木選手が先行し、5000mも得意なビュスト選手が後半追い上げるという展開となり、2人がほとんど並んだところがゴールでした。
 100分の7秒、高木選手が先着したのです。
 この種目の1位が高木選手、2位がビュスト選手となり、この順位差が総合優勝の決め手となりました。

 おそらく、ビュスト選手としては、「スケート王国」オランダを代表するオールラウンダーとして、地元アムステルダムの「屋外リンク」で行われる世界大会で、自らが負けることは全く考えていなかったことであろうと思います。

 タイムが出難い*「平地の屋外リンク」、高速リンクとは異なり「高いレベルの筋力」が必要なリンクでは、絶対の自信を持っていたことでしょう。(*この大会の500mで40秒を切ったのは高木選手(39秒01)ひとりでした。平昌オリンピックにおいて小平選手が36秒台で滑ったことを考慮しても、タイムの出難いリンクだったことは明らかです)

 オランダ女子チームのリーダー格であるビュスト選手は、平昌オリンピックを去る時に「金メダルが取れずにオリンピックを終えるというのは、とても寂しいこと」とコメントしていました。これまでのオリンピックでは、必ず金メダルを獲得していたビュスト選手にとっては、残念な平昌五輪となったのです。
 そのビュスト選手は、オールラウンダーという自らのフィールドにおいて「世界一」は譲れない気持ちがとても強かったことでしょう。

 そのビュスト選手を破り、日本選手として初めての優勝を勝ち取ったのですから、高木選手の頑張りは素晴らしいものです。

 日本女子チームが、「王国」オランダにとっても端倪すべからざる実力を身に付けてきていることを、再び証明する結果でもあったのでしょう。
 普段は「エキシビション」は見ません。

 特に、オリンピック期間中ともなれば、撮り溜めた各競技の録画を観るのに、私の「時間」というリソースが投入され、それでも追い付かないような状況となりますから、「エキシビション」を観ている暇は残念ながら無いのです。

 ところが、今回は妻が「羽生君と宇野君のエキシビションを観ようよ」と強く言うので、久し振りにフィギュアスケートのエキシビションを「テレビの録画放送」で観ました。

 観て良かった、というのが感想です。

 羽生選手の演技は、とにかく「雰囲気」があり、「凛とした美しさ」が印象的でした。
 右足首を痛めている影響からか、複数回転のジャンプが見られず、「無理もない」と感じていたところへ、見事なトリプルアクセル。「少ない回数のジャンプで演技を構成する」お手本の様な滑りでした。

 宇野選手の演技には、「若さ」が感じられました。「堅さ」さえ感じられる「若さ」です。宇野選手の潜在能力の高さ、今後の伸長を予感させる、良い滑りでした。

 女子シングルのメドベージェア選手やザギトワ選手の演技も、見所満載でした。
 特にザギトワ選手の「豹柄のコスチューム」に身を包んだ演技は、とてもエロティックで、15歳とは思えない滑りでした。
 この2人のOAR(ロシア)の金・銀メダリストの演技で最も感心させられたのは、「いつでも3回転ジャンプが飛べる」という余裕でしょう。3回転+3回転の連続ジャンプでも、まず失敗しません。
 競技会から継続されている「安定感と正確さ」は素晴らしいレベルです。

 そして、秀逸だったのがハビエル・フェルナンデス選手(スペイン、男子シングル銅メダリスト)の演技でした。
 
 ジーパンにパーカー、スニーカーの靴カバーといった服装で、大きなバッグを持って登場、様々な演技を披露してくれました。

 途中からは「ハビエルマン」とでも呼んだらよいのでしょうか、スーパーマンの様な姿、スペイン国旗のカラーである、黄色に濃い茶色の縁取りのコスチュームに変身(上着を脱ぎ捨てたのですが)して、演技を続けました。
 背負っていた「赤いマント」がふたつに分かれ氷上に投げられたり、水を飲んだり、水をかけられたり、小道具も満載、サービス満点の演技でした。

 大会後のインタビューで、羽生選手が「とにかく優しい。優し過ぎて競技者には向かないのではないかと思うくらい・・・」とコメントしていましたが、フェルナンデス選手の性格が、全編に溢れているプログラムでした。

 既に、過去の大会のエキシビションでも行われているプログラムとのことで、「有名な」ものなのだそうですが、初めて見た私にとっては、とても新鮮でした。

 かつては、フランスのキャンデローロ選手のエキシビションが秀逸でしたが、現在はフェルナンデス選手が「エキシビションNO.1」の地位を確立している?のでしょう。

 フィギュアスケートとアイスショーは、何時の時代も密接な関係にあります。

 「美しく楽しいスケートショー」と「緊張感あふれる厳しい競技スケート大会」の間を取り持つのが、エキシビションなのかもしれません。
 マススタート女子で、姉の菜那選手が金メダルを獲得した翌日、某テレビ局の平昌スタジオに、高木姉妹、佐藤選手、菊池選手が登場し、インタビューが放送されました。
 笑顔あふれる、とても気持ちの良いインタビューでした。

 アナウンサーが、高木美帆選手が金・銀・銅の3個、菜那選手が金2個、姉妹でメダル5個ですね、とマイクを向けると、姉妹はやや困惑した様子で「これはみんなで取ったので」と言いながら、金メダルをひとつ持ち上げました。
 高木姉妹は、「2人でメダル4個」と言いたかったのでしょう。

 確かに、国別メダル数というときには、チームパシュートの金メダルは、チーム4人で1個と数えます。当たり前のことです。

 一方で、個々の選手のメダルを数える時には、チーム4名それぞれ1個というのでは、数が合わないと考えたのかもしれません。

 とても「合理的」な考え方です。

 こうした「合理的」な考え方が、普通に出来るアスリートだからこそ、複数のメダルを獲得できたのかもしれないと、妙に感じ入ってしまいました。

 さらに言えば、同じ番組に出演している、佐藤選手、菊池選手に配慮したのかもしれません。「パシュートのメダルは4人で取ったのよ」と。

 ところで、「4人で金メダル1個」なら、1人当たり0.25個という、「変な計算」も成立しそうです。
 そうすると、高木美帆選手のメダルは2.25個、高木菜那選手は1.25個となりますから、姉妹合計で「3.5個」となります。

 今回は「どちらでも良い記事」となりましたが、こういう「どちらでも良い記事」が書けるというのは、今大会の日本選手団のメダル獲得数が、とても多かったからだとも感じるのです。
 2月24日に新種目として行われた、スピードスケート・マススタート女子で、高木菜那選手が金メダルを獲得しました。

 6400mという長距離レースを、レース前に立案した戦法通りに滑り、優勝を手にした、極めて「クレバー」なプレー振りが、とても印象的でした。

① 準決勝での滑り

 4周目の最初のチェックポイントで1位となり5点をゲットしました。

 予選通過のためには、早期にポイントを獲得しておくことが狙いでしたが、最初のチェックポイントで早々に得点できたことは、その後の「体力温存」の面からも、有効でした。

 当然ながら、他の選手も早々のポイントゲットを目指している中でのプレーですから、3周目からの準備と直線走路での加速は、計算し尽くされたものであったと思います。

 加えて、5ポイントゲット後は、僅か1時間30分後に控えている決勝レースに向け、体力の温存に努めましたが、その際に残りの4000mを「あまり遅すぎないペース」、レースにおける集団の後方で滑り切ったところが良かったと感じます。
 このレベルのアスリートには、遅すぎるペースは逆に疲れますし、「試合における妙なペース」を体感させることは不得策だと考えます。

 高木選手は、「心地よいスピード」で準決勝を滑り切ったのではないでしょうか。

② 決勝レースでのポジショニング

 高木選手は、このレースを通じて「イレーネ・シャウテン選手の後ろ」に付けました。強豪選手、マススタートを良く知っている上に、走力も十分な選手に付けるのは、有効な作戦でしょう。

 とはいえ、16人ものスケーターが一斉に滑るのですから、「邪魔が入る」のは当然ですが、高木選手はこのポジションを決して譲りませんでした。
 1周目、「大きな隊列変更に制限」が設けられている周回においてさえも、何人もの選手が高木選手のポジションに割って入ろうとしました。良いポジションなのですから、止むを得ないところでしょう。

 それらの動きに対して、高木選手は「上手く」あるいは「毅然として」、その位置を譲りませんでした。周回が進んでも、高木選手は決して譲りませんでした。
 高木選手のこのレースにかける「強い意志」を感じさせるプレーであったと感じます。

 「直ぐ後ろでなくとも、後ろ二人目でも良い」とか「横でも良い」とか、様々な茶々が入る状況下では、安易に考えてしまいがちですが、それは「勝負が分かっていないプレーヤー」がすることでしょう。
 ここは「絶対にシャウテン選手の直後」でなければならない、風よけの意味と、シャウテン選手のスパートに即座に対応するために、直後でなければならないのです。

 「直後に付けた」プレーは、とても「クレバー」なものですが、クレバーを実験するのは大変なことなのです。(オリンピックの決勝ですから当たり前のことですが)

③ 最期の直線のスピード

 6400mのレースもラスト周回に入りました。
 先行する、シャウテン選手→高木選手→キムボルム選手の3スケーターによるメダル争いとなりました。
 シャウテン選手は、残り400mからスパートし、高木選手、キム選手がピッタリと付いて行きます。残り2周回辺りから、まるでチームパシュートの様な「3名一列」の姿でしたが、スピードが上がっても、隊列は乱れませんでした。

 そしてコーナーを回っての、最終コーナーの出口、高木選手はまず「インを締め」ました。キム選手の進出を許さなかったのです。
 続いてシャウテン選手は外にコースを取りました。

 これは、振り返って見れば不思議なコース変更でした。高木選手の前が大きく開けたのです。
 ここで高木選手は「フルスロットル」。
 一気に加速し、外にコースを取ったシャウテン選手、内側から進出してきたキム選手に約1.5mの差を付けました。
 そして、この差のままゴールに飛び込んだのです。

 つまり、「直線の走行スピード・走破タイムは3選手が同一」だった訳で、この直線入口で、高木選手が前に出て居なければ、優勝は無かったかもしれません。

 ラスト100mまで体力を温存するプレー、直線入口で、「前にグイッと出る」プレーは、共に、金メダル獲得に向けての「クレバー」なプレーでした。これ以外では、メダルは取れたのでしょうが、順位は不透明であったことでしょう。

 レース前に組み立てた戦法を、「クレバーな戦法」を、「頑固なまでに徹底して」実行した、高木菜那選手のパフォーマンスが際立ったレースでした。
 世界で戦って行くためには「クレバーなプレー」が必須なのです。

 この大会ふたつ目の金メダルは、オリンピックの日本選手団史上初の「同一大会で日本女子選手が初めて獲得した金メダル」でもありました。

 まさに、歴史的な快挙だったのです。
プロフィール

カエサルjr

Author:カエサルjr
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我が家の月下美人も16年目。同時に30個の花が咲くこともあります。スポーツも花盛りですね。一緒に楽しみましょう。

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