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[12月1日・決勝・東京両国国技館]
谷岡選手○-(上手投げ)-●イェルシン選手

 12月1日に行われた、第68回天皇杯全日本相撲選手権大会・決勝の取組において、近畿大学4年生の谷岡倖志郎選手(22歳)が勝ち、初のアマチュア横綱となりました。

 身長180cm・体重125㎏と、現代においては小柄な部類に入る谷岡選手ですが、まわしを引いての巧みな相撲で勝ち上がりました。
 決勝トーナメント2回戦では、振り返ってみれば「実質的な優勝決定戦」ではなかったかと思う、日本体育大学1年生の中村泰輝選手(19歳)との取組で、一気に前に出てくる中村選手(これが中村選手の取口であり、この相撲で11月の全日本学生選手権を制しています)の前みつを離さず、土俵際の上手出し投げで勝利しました。
 いかにも谷岡選手らしい取口でしたし、小兵力士が大きな力士に勝つ相撲そのものであったと感じさせる、見事な相撲でした。

 その後も、相手力士によって取口を変える相撲で勝ち上がり、決勝でも、パルタグル・イェルシン選手の突進を、かいくぐり、いなして右を差し、左上手も引いての上手投げで仕留めました。この大会を通じて、谷岡相撲のポイントであった「いなし」が決勝でも威力を発揮したのです。
 とても「理詰め」の相撲であったと思います。

 ご本人は、横綱・千代の富士の相撲を理想としていると報じられていますが、私には大関・霧島を髣髴とさせる相撲に観えました。
 いずれにしても、勢いに任せて取るのではなく、「相手力士毎に良く考えて作戦を立て、それを土俵上で実践する」という姿勢が、とてもプロ向きだと感じます。

 一方で、ご本人は「プロは目指さず、教員になって子供たちに相撲を教えたい」という希望であると報じられています。

 それが、好力士・谷岡の希望なのかもしれませんし、大相撲に挑戦したからといって成功できる保証もありませんし、その稽古や取組の厳しさは、想像を絶するものなのでしょう。ですから、安易な角界入りなど、考えられないことなのでしょうが、それでも少し「惜しい」と感じるのは、私だけなのでしょうか。

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 大相撲11月場所は、横綱・白鵬が14勝1敗で優勝しました。
 43回目の優勝です。自身が持つ最多優勝記録を再び更新するものでした。

 白鵬は2日目に大栄翔に不覚を取りましたが、その後は白星を重ね、終盤は安定した内容の取口で他力士の追い上げを許しませんでした。

 対戦相手毎に、良く考えられた取口で、あらゆる手段を講じて取組に向かう姿勢、別の言い方をすれば、「勝利に対する凄まじいまでの執念」が実った形でしょう。
 千秋楽の貴景勝戦はその典型でした。

 一度目の立合いではじっくりと構えて、結局は「まった」。
 二度目は、腰を割った直後に跳びかかり、貴景勝の意表を突いたというか、先手を取ることに成功しました。一度目の「まった」と二度目の立合いがセットであったと感じさせる、計算し尽くされた取口でした。

 もともと経験十分で、力量も上位の力士が「あらゆる手段」を講じて取組に向かっているのですから、対戦する力士とすれば「それ以上」の研究と細心の注意を払った取口を見せない限り「互角」の勝負は出来ないのは道理で、従って、白鵬が優勝したということになるのでしょう。

 横綱が「あらゆる手段」を講じて、スピード相撲で臨んでくるのであれば、対戦相手の力士も「あらゆる手段」を講じなければなりません。
 2020年の各力士の事前研究と大胆な取口の展開に期待しましょう。

 白鵬を追いかけたのが朝乃山でした。
 11日目まで2敗を堅持し、1敗の白鵬に付いていったのです。
 しかし12日目、御嶽海に敗れて3敗となり、白鵬の独走となりました。

 朝乃山は千秋楽にも正代に敗れて、11勝4敗となってしまいましたが、「初三役」の場所で二桁勝利を挙げた価値は大きいと思います。あの貴花田(後の横綱・貴乃花)も初三役の場所は11勝4敗でした。
 11月場所で技能賞に獲得、そして「年間最多勝」(55勝。小結では史上初の受賞)にも輝いた、朝乃山の今後の成長が、本当に楽しみです。

 殊勲賞に輝いたのは、横綱・白鵬に唯一の黒星を付けた大栄翔でした。
 東前頭筆頭の番付で8勝7敗と勝ち越しました。
 難しい番付での勝ち越しは、「力を付けた証左」でしょう。
 
 敢闘賞は正代。11勝4敗でした。
 千秋楽の朝乃山との一番は「前に出て」の圧勝でした。
 一時は「大関候補」と言われていましたが、近時は勝ったり負けたりの相撲になってしまっていました。
 「胸を出していく」立合いが、もう少し低くなれば、もっと星が上がると言われて久しいのですが、やはり一度覚えた相撲はなかなか変えることが難しいようです。
 要するに「胸を出していく」立合いでも勝てるということなのでしょう。
 地力が有ることは誰もが認めていますので、もう一段上がるために、どのような工夫と稽古を熟していくかがポイントです。

 その他の力士では、まず小結・阿炎の活躍が目立ちました。
 1勝3敗の序盤でしたが、そこから8勝3敗で仕上げたところは、地力を示しました。
 特に、14日目と千秋楽で、貴景勝、御嶽海を連破した相撲は見事。
 ひらりひらりと動きながら、「前に出る力」を示すことができれば、星は自然に上がります。次代の大関候補のひとりでしょう。

 続いては、西前頭6枚目の炎鵬。
 14日目、千秋楽を連勝して勝ち越しました。素晴らしい終盤の粘りです。
 小兵ながら常に良く健闘し、土俵を盛り上げる相撲は、当代随一の人気です。
 来場所は上位との取組が組まれる番付に上がります。
 1月場所・国技館でも、大歓声に包まれることでしょう。

 さらに、西前頭12枚目の隆の勝。
 中日からの7勝1敗は素晴らしい。10勝5敗で仕上げました。
 4つ目のしこ名(舛ノ勝→舛の勝→隆の勝→)が合っているのかもしれません。今後の活躍が楽しみです。

 残念だったのは、関脇・栃ノ心。
 5日目から休場し、2勝3敗10休となって、大関返り咲きはなりませんでした。
 怪我との戦いに勝利していただき、再び、栃ノ心ならではの豪快な相撲を魅せていただきたいものです。

 残念な結果に終わった力士がもうひとり。
 東関脇・御嶽海です。
 11月場所で12勝以上を挙げれば一気に大関昇進が期待されましたが、結果は6勝9敗の負け越し。天国から地獄へという感じですが、場所前から「11月場所はコンディション調整が難しい」と言っていましたので、どうやら11月場所は「苦手」な様子です。
 そうなると御嶽海としては、3月場所、5月場所辺りから成績を上げ、7月場所、9月場所で勝負する形を取らなければならないことになります。
 白紙に戻った「大関取り」に向けて、2020年の奮闘が期待されます。

 序盤戦は「大混戦」を予感させる土俵でしたが、後半は横綱・白鵬が強さを魅せました。

 横綱・鶴竜、大関・豪栄道、大関・高安、友風、逸ノ城、若隆景らの、今場所休場してしまった力士の皆さんの復活も、待たれるところです。治療に専念してもらって、1月場所で元気な姿を見せていただきたいものです。

 2019年は「新旧入り乱れた大相撲」であったと感じます。

 2020年の土俵には、どんなシーンが待っているのでしょうか。


 11月場所の2日目は、大波乱でした。

 横綱・大関が全敗というのも滅多に観られないことだった(本ブログ2019年5月22日付の記事「[大相撲2019・5月場所・11日目] 関脇以上の力士が全敗」をご参照ください)筈ですが、今年に入って2度目の波乱の土俵となってしまいました。

 波乱の始まりは、遠藤VS明生の一番でしょう。前頭・明生が小結・遠藤を突き落としで破りました。
 続いては、御嶽海VS北勝富士。小結・北勝富士が関脇・御嶽海を突き落としで破ったのです。
 さらに、栃ノ心VS妙義龍。前頭の妙義龍が関脇・栃ノ心を引落しで破りました。
 続く、豪栄道VS隠岐の海は隠岐の海の不戦勝で、これは止むを得ないのでしょうが、さらに続く、貴景勝VS朝乃山は、小結・朝乃山が大関・貴景勝を上手出し投げで破り、高安VS阿炎は、小結・阿炎が大関・高安を押し出しで破りました。
 そして結びの一番、白鵬VS大栄翔は前頭・大栄翔が横綱・白鵬を押し出したのです。

 全ての取組で、番付下位の力士が白星を獲得しています。
 「下剋上の極み」という感じですし、「番狂わせ」という言葉を使うのが憚られる様相でもあります。

 大相撲の世界では番付が絶対的な地位を示すものですので、「番付の権威」にも係わる事態でしょう。

 加えて、11月場所は「怪我・故障による休場」が相次いでいます。

 場所開始直前には逸ノ城が、初日開始前には横綱・鶴竜が、初日取組後には大関・豪栄道が、2日目取組後には友風が、休場しました。
 これだけ「連日連続」するのも、滅多に無いことでしょう。

 何やら不穏な空気が漂う11月場所ですが、小結・朝乃山や優勝経験者・玉鷲が2勝0敗で頑張っています。

 まだ2日目ですけれども、ある意味では「大相撲の秩序」が試される場所なのかもしれません。

 11月10日から福岡国際センターを舞台に開催される、大相撲2019年11月場所の注目力士検討です。

 今場所の前頭上位から関脇までの力士を観ると、とても充実していて、横綱・大関陣も含め、誰が優勝しても不思議ではない感じがします。

 今場所も、序盤を上手く乗り切った力士の優勝争いとなるのでしょう。

 さて、注目力士です。

1. 横綱陣

 このところ休場がちであり、精彩を欠いている横綱陣ですが、11月場所では鶴竜に期待します。
 この横綱の集大成と言うべき活躍が期待されるところです。

 大横綱・白鵬については、15日間取り切れるかどうかがポイントでしょう。
 もちろん、まだまだ優勝する力はあります。

2. 大関陣

 こちらも、近時精彩を欠いていますが、今場所は婚約を発表した高安に期待します。
 優勝していない大関と言うのは、珍しくはありませんが、とはいえやはり初優勝で結婚に花を添えたいところでしょう。

3. 関脇以下の力士

① 関脇・御嶽海

 大関取りの場所です。過去1年間の安定感では、全ての力士の中で最上位でしょう。しっかりと取ってくれれば、結果は付いてくると思います。

② 小結・朝乃山

 小結が4人居る場所というのも珍しいのですが、力を付けてきた力士が数多く居るということでしょう。そして「生き残りをかけた戦い」とも言えるのでしょう。

 中でもまず、朝乃山に期待します。2019年3月場所辺りまでは、強い時と弱い時の差が大きいと感じましたが、相当安定してきました。柔軟な足腰を生かした相撲が取れれば、二桁勝利も可能でしょう。

③ 豊山

 そろそろ本格化と観ています。幕内に上がり、十両に落ちて、相撲を磨いてきました。取口が多彩になっていますので、今度は幕内上位を目指す戦いとなります。

④ 阿炎

 4人の小結の一角。前に出る力がポイントとなる力士です。今場所、この力が発揮できれば、ひょっとすると優勝するかもしれません。

⑤ 遠藤

 4人の小結の一角。大相撲の一時代を支えた人気力士も29歳となりました。そろそろ、自らのゴールラインを目指す時期でしょう。故障も相当に癒えた感じですので、大関取りに向けた大相撲を魅せていただきたいものです。

⑥ 隆の勝

 新入幕です。先場所は東十両2枚目で10勝5敗の成績でした。押しを基本とした相撲で、大暴れして欲しいものです。

⑦ 北勝富士

 4名の小結の一角。外連味の無い取口は好感が持てます。あまり大勝ちしないタイプですが、そろそろ「爆発」してほしいものです。

⑧ 逸ノ城

 このまま終わってしまう力士では無いでしょう。「底知れぬ力」と評された実力を発揮する場所です。

 11月場所は、以上の10力士に注目します。

 今後の「大相撲の形」を決めて行く場所になりそうです。

[9月22日・千秋楽]
貴景勝○-(押し出し)-●隠岐の海

[9月22日・千秋楽]
御嶽海○-(寄り切り)-●遠藤

[9月22日・優勝決定戦]
御嶽海○-(寄り切り)-●貴景勝

 14日目を終えて3敗で並んだ、御嶽海、貴景勝、隠岐の海の3力士ですが、千秋楽・本割の取組で貴景勝が隠岐の海を破り、御嶽海が3敗をキープして、優勝決定戦に縺れ込みました。

 そして、この一番を御嶽海が制して、2度目の幕ノ内最高優勝を果たしたのです。

 2横綱が早々に休場し。2大関がカド番からの脱出に注力して本来の相撲が取れないでいる中で、場所をリードし、締めたのは、残る力士の最高位である2関脇でした。

 そういう意味では、大混戦の場所でしたけれども、「番付け」という大相撲の秩序はギリギリ守られたということになるのかもしれません。

 まず、隠岐の海が8連勝で走り、これを明生が1敗で追う展開となって、9日目には両力士が1敗で並びました。
 10日目には両力士が2敗となって、両関脇と朝乃山が並ぶという目まぐるしい展開。
 11日目には、御嶽海と隠岐の海、朝乃山が3敗となって後退、12日目には明生が敗れて貴景勝が単独トップに立ちました。
 その貴景勝も13日目に敗れて、賜杯の行方は3敗力士による争いとなったのです。

 この展開を観てみると、優勝経験のある3力士に隠岐の海、明生が絡んだ形ですので、
 隠岐の海・明生の健闘が目立つと共に、やはり「優勝する力士は何かが違う」ことを表しているようにも感じます。

 御嶽海にとっては、11月場所が大関取りの場所となります。2度目の優勝は大きな実績となることでしょう。

 大関復帰を賭けた場所で、最後まで優勝を争った貴景勝は立派な場所でした。大関の力が十分に有ることを明示して魅せたのです。

 この2力士が、今後の大相撲を支えて行く存在であることは、間違いなさそうです。

 大相撲2019年9月場所は中日を終えました。

 幕ノ内最高優勝の行方は全く分からない、大混戦となっています。

 大混戦の最大の要因は、二人の横綱の休場でしょう。
 白鵬は初日で破れて直ぐに休場、鶴竜は4連勝の後3連敗となって休場しました。
 横綱であっても、コンディションが良くない時には、平幕とも互角の相撲になってしまうという「現状」を示しているのでしょう。

 また、大関陣も二人ともカド番ですから、毎日の土俵で白星を取ることに精一杯という状況です。
 
 横綱・大関陣がそろって不振な場所が「混戦」になるのは、自然なことなのでしょう。

 そうした中で中日勝ち越しを決めたのが、東前頭8枚目の隠岐の海です。
 入幕以来最高の連勝を、ベテランが続けて居るのですから素晴らしい。
 「簡単にはあきらめない」のが今場所の隠岐の海なのです。

 続くのは、西前頭10枚目の明生。7勝1敗です。
 2日目に炎鵬に敗れましたが、それ以外の取組では「強い」という内容のものが多いと感じます。

 そして「6勝2敗」には、数多くの力士が並びます。
 御嶽海、貴景勝の関脇陣、小結・遠藤、前頭の朝乃山、剣翔、石浦、の6力士です。
 虎視眈々と優勝を狙っている形です。

 全勝から2敗までに8力士が居ますから、おそらくはこの8力士の中から優勝力士が出るのでしょう。

 現時点で最も優勝に近いのは隠岐の海なのでしょうが、上位との対戦が早めに組まれる可能性もありますから、全く分からないというのが妥当な見方なのでしょう。

 2019年9月場所は、本当に面白いのです。
 9月8日~9月22日、東京両国国技館で開催される、大相撲2019年9月場所の注目力士検討です。

 7月場所では、横綱・鶴竜の復活優勝の一方で、大関陣がひとりも千秋楽を迎えることができなかったという「異常事態」も発生しました。

 上位陣の不安定さが目立つ昨今ですので、大相撲界にとっては「次代を担う力士」の登場が待たれるところでしょう。

 さて、注目力士です。

1. 横綱陣

 先場所、自らの相撲の完成型を感じさせた鶴竜に、今場所も期待したいと思います。円熟の境地の相撲を魅せていただきたいものです。

 白鵬は、「前に出る力」の復活がポイントになりそうです。

2. 大関陣

 カド番が多く、大関陣にとっては踏ん張りどころでしょう。
 9月場所では、高安に期待します。初優勝を観てみたいものです。

 陥落した貴景勝はコンディション次第。故障の回復が待たれます。

3. 関脇以下の力士

③御嶽海

 東の関脇として、大相撲の次代を担う存在として、大活躍が期待されます。

④朝乃山

 7月場所は、1勝3敗、2勝5敗と前半戦は苦しい戦いが続きましたが、中日からは持ち直し、最後は7勝8敗まで挽回しました。どっしりと落ち着いた相撲を取れば、上位とも互角以上の相撲が取れると思います。

⑤豊山

 幕ノ内に復帰です。もともとコンディションが良ければ、幕ノ内上位の力は十分に有ると思います。私生活の充実も活かして、二桁白星を期待します。

⑥遠藤

 7月場所は、9日目からの7連勝で三役に返り咲きました。この強さが本物であることを証明するのが、9月場所なのです。

⑦豊ノ島

 7月場所は大負けの印象でしたが、実は7勝8敗と踏ん張りました。12日目から14日目の3連勝が大きかったのです。現在の幕ノ内の相撲にもだいぶ慣れてきたと思いますので、「豊ノ島の相撲」を存分に披露していただきたいと思います。

⑧友風

 初土俵以来「負け越し無し」の記録は、いまだに続いています。さすがに前頭三枚目は家賃が高いかとも思いますが、ここも勝ち越して、一気に三役へという可能性も十分にあります。

⑨阿炎

 7月場所は、見後に勝ち越しました。しかも中日から6勝2敗という「後半型」の場所を披露してくれたのです。この勢いで、9月場所も走っていただきたいものです。

⑩逸ノ城

 7月場所の横綱・白鵬を破った一番を出すまでも無く、実力上位は誰もが認めるところでしょう。キチンと取れれば、優勝も夢ではありません。

 9月場所は、以上の10力士に注目します。

 横綱から前頭まで、実力差が小さくなっていますから、9月場所も「誰が優勝してもおかしくない」場所になるのでしょう。

 西前頭16枚目、幕尻の照強が素晴らしい15日間を演じてくれました。

 12勝3敗で敢闘賞に輝いたのです。

 13日目を終わって11勝2敗は、両横綱に次ぐ成績で、当然ながら優勝争いにも加わっていました。

 初日からの5連勝、中日を終えての6勝2敗も見事な成績でしたが、7月場所の照強はここからが凄かった。

 9日目から13日目までの5連勝は、称賛に値する大活躍です。
 
 中日6勝2敗、あるいは7勝1敗から、後半戦で黒星が増え、最終的に二桁勝利に結びつかないどころか、残念なことに負け越してしまうことも、決して珍しいことでは無いのが幕ノ内の相撲なのですが、7月場所の照強は後半戦で勝率を上げて魅せたのですから・・・。

 14日目の北勝富士戦は、「照強の幕ノ内最高優勝の資格」を問う取組でした。
 かつては、こうした「番付からは有り得ない取組」は組まれなかったのです。結果として「平幕優勝」も時折見られたものなのですが、近時は必ず相当上位の力士との取組が組まれるようになりました。
 こうした取組の「是非」については別の記事に譲るとして、照強も前頭筆頭・北勝富士との対戦となりました。
 これは「立合い負け」という相撲で、北勝富士の圧力に屈しました。立合いで先手が取れれば、7月場所の照強(小兵ながら前に出る力がとても強かった)であれば、勝負にはなったと思うのですが、残念な結果となりました。この敗戦で、照強の優勝の可能性は消えたのです。

 凄いと感じるのは千秋楽の取組でしょう。
 同様に好調な場所を披露してきた友風との「11勝3敗同士」の対戦でした。
 前頭7枚目の友風、明らかに格上で相撲が上手い友風を、堂々と「押し出し」て魅せたのです。

 2019年7月場所の「照強劇場」を完結させる、本当に素晴らしい白星でした。

 9月場所では大きく番付を上げる照強関の、上位陣を相手にしての相撲が、本当に楽しみです。

[7月21日・千秋楽]
遠藤-(寄り切り)-北勝富士

 9勝5敗同士の対戦となった、前頭筆頭の北勝富士と前頭2枚目の遠藤の一番は、激しい攻防の応酬となりました。

 立合いから北勝富士が押して出ます。持ち味の相撲です。
 遠藤は堪えて、まわしを狙いますが、北勝富士の突き放しが強烈ですから、なかなか回しに手がかかりません。
 遠藤は引き足で土俵伝いに後退します。これを北勝富士が追いかけ、押し立てます。

 ここで遠藤は、さがりをしっかりと掴んで、押しに堪えます。
 遠藤の持ち味である「密着相撲」を実現するためには、まわしが必要なのですけれども、まわしが取れないとなれば「さがり」を掴んででも、北勝富士との距離を保とうとしたわけです。
 「さがり」が取口の中で使用されることは多くはありませんが、この取組ではとても重要な役割を果たしました。

 遠藤を追いかけ続ける北勝富士は、遠藤との間に少し距離が出来たところを、西土俵に押し立てます。
 しかし、上体が伸び切ってしまい、自慢の押しの威力が弱かったこともあってか、遠藤が良く持ちこたえ、両力士は再び土俵中央に戻りました。

 遠藤の右下手、北勝富士の左上手の半身の体勢。
 この形からなら、北勝富士の上手投げが有利だと思いました。遠藤が寄って出た時に打つのです。

 しかしここで遠藤は「真っ直ぐに押し」ました。
 この「真っ直ぐな押し」が効果的で、北勝富士は土俵を割りました。

 両力士が持ち味を発揮した、2019年7月場所屈指の「大相撲」であったと思います。

 この場所、技能賞に輝いた遠藤は、さすがの相撲でした。
 「さがり」を握りしめての粘りや、土俵際での防戦など、随所に「上手さ」を発揮していました。当代随一の技能派の本領を発揮したのです。
 これで10勝5敗としましたから、9月場所は三役に返り咲く可能性が高いと思います。

 7月場所は膝などのコンディションも良かったのでしょう。
 9月場所でもコンディションを維持していただき、「遠藤の相撲」を存分に披露していただきたいものです。
[7月21日・千秋楽]
鶴竜-(寄り切り)-白鵬

 鶴竜が白鵬との千秋楽・横綱対決を制して優勝を決めました。

 立合い、白鵬が左に少し変化して左上手を確保しました。
 右四つの体制となり、鶴竜はなかなか上手が取れませんでしたが、何回かのトライで、これを確保しました。
 そして鶴竜は巻き替えを狙いますが、さすがに白鵬も容易にはこれを許しませんでした。

 これも何回かのトライの中で鶴竜が巻き替えに成功し、一時はもろ差しとなりましたが、鶴竜はこの体制を嫌い、右上手を自ら抜いて、今度は左四つとなりました。
 この時の、鶴竜の動きはとても素早いものでした。

 左四つのまま両横綱の攻め合いが続きましたが、鶴竜の前に出る圧力が勝り、東土俵で今度は鶴竜がもろ差しとなって、一気に白鵬を西土俵際に押し込みました。
 白鵬は土俵際で粘りを見せましたが、鶴竜はしっかりと寄り切って白星を物にしました。

 鶴竜の落ち着いた取り口が印象的な一番でした。

 場所前は、腰の故障で出場も危ぶまれた鶴竜でしたが、初日から良い相撲を続けました。
 悪い癖である「無理なはたき込み」も無く、堂々たる取口の相撲を披露し続けたのです。
 13日目の友風戦だけは、頭を下げ過ぎてよもやの叩き込みに敗れましたが、取組後に本人が言っていたように、これはやや油断した感があります。「立ち合いで突進を止めれば勝てる」と考えたのでしょう。
 これ程に充実した場所でも、こうした一番が生ずることを思えば「全勝」の難易度の高さが改めて分かります。
 この一番以外は、とても安定した横綱相撲を展開した鶴竜の優勝は自然なことのように感じられます。
 鶴竜にとって、キャリアで最も安定した取口の優勝だったと思います。

 一方の白鵬は、今場所は「前に出る力」が不足していました。
 これは初日から不足していて、相手の動きを観ながら勝機を見出す相撲で、何とか白星を重ねていましたが、強引な技も目立ちましたから、調子は悪かったのでしょう。
 こんな状態でも「中日勝ち越し(48度目)」を成し遂げてしまうところが、白鵬の相撲の奥行きの深さを感じさせるところでもあります。

 こうした状況で後半戦を迎えた白鵬ですが、やはり疲労も出てきたのでしょう、9日目に逸ノ城に完敗を喫しました。
 相手の動きを観ながら勝機を見出していく相撲では、がっぷり四つとなっては分が悪いのです。ましてや怪力・逸ノ城ですから、ジリジリと寄られて、為す術も無く寄り切られてしまいました。

 こんなに調子が悪いのに、この後13日目まで1敗のドライブを続けたのは、ある意味では凄い感じがしますが、その内容は「乱暴な相撲」という指摘を受けそうに見えました。
 格闘技において重要な、対戦相手の重心移動の把握や、相手の体制を「合理的に」崩す動きといった、基本的な技が無く、強引に押さえつけたり引いたりする取口は、横綱=最高峰の相撲とはかけ離れたものという指摘も、止むを得ないものだったとも感じますが、一方で、その「白星への執念」が最高レベルであることは、間違いないでしょう。

 4大関全員が、場所の途中で土俵から居なくなるという「緊急事態」については、2名の横綱が締めてくれたことで、土俵の秩序は保たれたと評価されるべきでしょう。
 2横綱は、「番付の重み」を証明して魅せたのです。
 
 「当たり前のこと」というご意見もありそうですが、それはやはり簡単なことでは無く、立派なことでしょう。

 2019年7月場所は、「横綱・鶴竜の相撲の完成形」を魅せていただいた場所であったと感じます。

 7月17日朝、大関・高安の休場が公表されました。
 これで、貴景勝、栃ノ心、豪栄道に続いての高安の休場となって、「大関不在の7月場所」となってしまいました。
 四大関体制においての全員休場は、昭和以降史上初めての事態と報じられています。

 大相撲界にとっては「恐れていたことが現実になった」ことになります。

 33歳・大関在位30場所の豪栄道はベテランであり、体のあちこちに古傷が有るのは止むを得ない面が有ります。
 31歳の栃ノ心は常に膝の故障を抱えており、悪化すればどうしても休場になります。
 貴景勝は、2019年5月場所での故障から回復途上にあり、来場所は関脇に陥落します。

 そうなると、常に土俵に立っている可能性が最も高いのが、29歳・大関在位13場所の高安なのですが、その高安が8日目の玉鷲との一番で左肘を故障してしまい、何とか10日目までは取りましたが、ついに休場に追い込まれてしまったのです。

 こうした事態=「大関不在」のリスクは、以前から指摘されていました。
 このリスクに対しては「若い大関」の誕生が待望されていたわけで、貴景勝の昇進は、大相撲界にとって大慶事だったのです。
 ところが、その貴景勝が早々に陥落してしまうとは・・・。

 さらなるリスク=番付としての大関0人、についても認識しておく必要があるでしょう。(協会関係者や多くの大相撲ファンなら、百も承知のことなのでしょうが)
 来9月場所は、高安、豪栄道、栃ノ心の3大関体制となりますが、豪栄道と栃ノ心はカド番です。
 万が一、両力士が負け越し、貴景勝が関脇において10勝を挙げることができなければ、11月場所の大関は「高安ひとり」になってしまう怖れが有ります。
 その高安も、肘の回復が遅れ9月場所に出場できるかどうかは、分からないのです。(元鳴門部屋、元横綱・隆の里から相撲を学んだ高安にとっては、左肘は生命線です)

 「悪いことばかり想像するのは・・・」というご意見もあるのでしょうが、国技・大相撲の運営・経営に携わる者であれば、しっかりと認識しておく必要があるリスク、それも可能性が極端に低いリスクでは無く、十分に起こり得るリスクなのです。

 その面からは、「7月場所で高安が勝ち越した後に休場した」ことは、とても重要なことなのでしょう。
 もし高安が10日目から休場、あるいは10日目に明生に敗れていれば、9月場所は全3大関がカド番という異様な場所、大相撲界にとってはハイリスクな場所となる可能性があったのですから。

 悪い話ばかりを書いて恐縮ですが、更なるリスクが存在することも、多くの方々が感じているでしょう。

 それは「横綱・大関0人のリスク」です。

 白鵬、鶴竜の両横綱も近時は休場がちであることは周知のことです。
 大きな怪我を負うことが有れば、引退に追い込まれる可能性もあるでしょう。

 「全横綱・大関が休場」することによる、「横綱・大関不在の場所」というリスクは、決して有り得ないことではありません。

 更には「2横綱の引退と全大関の引退・陥落」によって、「番付から横綱・大関が居なくなる」可能性も0とは言えません。十分に有り得ることのように観えます。

 最高番付が「関脇」となる土俵・場所は、協会としては何としても避けなければならないのでしょうし、大相撲ファンも「そんな場所は見たくない」でしょう。
 当然ながら「若手力士の大関・横綱への昇進」が待望されることになります。

 残念ながら、大相撲界は相当追い込まれています。

 あまり時間が無いのです。
 7月16日、安美錦の引退が報じられました。

 今場所2日目に右膝の怪我が悪化し3日目から休場していました。
 このままでは幕下に陥落してしまうと心配していましたが、この日の引退発表となったのです。
 致し方無いことなのでしょうが、大ファンのひとりとしては、とても寂しい気持ちです。

 もう「あの相撲」が観られないのです。

 相撲どころ青森県深浦町出身。
 1997年初場所18歳で初土俵を踏み、2000年の名古屋場所で新入幕、ここまでは20世紀の話です。爾来今日まで土俵を湧かせてきました。振り返ってみれば「気の遠くなるような」歳月です。
 40歳となった現在、幕内最年長力士としても長く土俵に上がり続けた安美錦ですから、輝かしい記録も沢山あります。
① 通算勝ち星 907勝(歴代8位)
② 三賞受賞 10回(殊勲4、敢闘2、技能6)(歴代10位タイ)
③ 金星 8個(現役最多タイ)
④ 関取在位 117場所(歴代1位タイ)

 角界を代表する「技能派力士」としての存在感は何時の時代も大きく、「大相撲の看板力士」として輝き続けた力士人生でした。

 とはいえ、こうした「記録」もさることながら、安美錦は「記憶」に残る力士であったと感じます。

 技能派といっても、基本的には「持ち前の前に出るパワー」をベースにした取り口でした。
 相手力士が「安美錦が何かやるに違いない」と腰を引いて準備していると、そのまま押し出すという相撲が多かったと思います。肩や背中や腰で押し出すこともありました。
 もちろん、立合いや土俵際での「巧みな相撲」は常に大向うを唸らせるものでした。
 ファンが多かったことは、言うまでもありません。

 「技のデパート」というよりは、「こうすれば相撲に勝てる」という自在の攻めが多かったのです。
 相手力士の特徴を良く把握し、その取組の流れを計算に入れ、勝つために必要なプレーを展開するというタイプの「技能派」でしょう。
 「送り投げ」や「送り引き落し」といった技は、安美錦らしい決まり手かもしれません。
 こうしたやり方が、安美関に最も合っていたのだと思います。

 その意味では、「他に類を見ないタイプ」であったようにも感じます。
 大袈裟に言えば「安美錦の前に安美錦無く、安美錦の後にも安美錦無し」ではないでしょうか。

 引退後は年寄「安治川」を襲名すると報じられています。

 安治川親方には、第二の安美錦を育てるのは相当に難しいと思いますので、個々の力士の持ち味を最大限生かす育成、に注力していただければと思います。
 7月7日、愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)で開幕する、大相撲2019年7月場所の注目力士検討です。

 平幕・朝乃山の優勝で幕を閉じた5月場所ですが、上位と下位の力量差が小さくなっている現状では、どの場所も「誰が優勝してもおかしくない」のでしょう。
 7月場所も、序盤で勢いに乗った力士が活躍することになりそうです。

1. 横綱陣

 出場することができれば、白鵬の安定した取口が期待されます。

2. 大関陣

 奮起を期待したい大関陣では、復帰した栃ノ心に期待します。

3. 関脇以下の力士

③御嶽海

 定位置?である関脇に戻りました。良く考えて取る相撲は健在です。

④阿炎

 力を付けてきました。そろそろ「爆発」しても良い頃でしょう。

⑤北勝富士

 朝乃山が優勝したのなら自分も・・・と考えているでしょう。押しの強さが15日間続くようなら、大活躍が期待できます。

⑥逸ノ城

 5月場所は不甲斐ない内容でした。どこか故障していたのではないかと思います。それを治しての7月場所では、本来の相撲が期待されます。

⑦阿武咲

 5月場所では、本来の押し相撲が不発でした。このところ、やや勢いに欠けますが、調子が戻れば二桁勝利も狙えます。

⑧朝乃山

 連続優勝となれば、一気に大関昇進も夢ではありません。十分な潜在能力も具備していると思います。

⑨遠藤

 現在の大相撲に欠かせない力士でしょう。上手い相撲で大活躍してほしいものです。

⑩貴源治

 5月場所は13勝2敗で十両優勝を飾りました。かねてから「大器」と目されていた力士も23歳になりました。一気に駆け上がるために、大切な場所です。

 7月場所は、以上の10力士に期待します。
 やや上位に偏った選定となりましたが、幕ノ内上位から三役にかけては、力量差がとても小さいので、こうした形になったものです。

 「大混戦」の、そしてとても面白い、7月場所になるのでしょう。

 6月24日朝、7月場所の番付が発表されました。

 西小結は竜電でした。初の三役です。

 どんな力士にとっても、関取になる(十両昇進)→入幕(幕ノ内に昇進)→三役昇進は、角界入りした時の目標でしょうし、達成することは無上の喜びなのでしょうが、竜電の場合には「ひとしお」という感じがします。

 竜電は「一度関取に昇進し、序の口まで落ちてから、三役に昇進した」史上初めての力士なのです。
 本当に凄いことだと感じます。

 2006年3月場所でデビューした竜電は順調に昇進を続け、2012年11月場所には新十両となりました。ついに関取となったのです。
 ところが好事魔多し。
 この11月場所8日目に右股関節を骨折してしまいます。

 股関節、腰の骨を骨折するというのは「余程のこと」であり、その後再起をかけた竜電は、同じ個所を3度骨折してしまいます。
 そして、休場を重ねて、ついに序の口まで下がってしまいました。2014年1月場所の事です。

 2014年9月場所で序の口優勝するまで、5場所連続の序の口でした。
 1月場所から7月場所まで「4場所連続・1勝6休」を続けています。「全休すれば番付外に落ちてしまう」ために、各場所1番だけ取り、1勝していたのです。
 「もの凄い執念」と表現するのも憚られる様な、大相撲への意識でしょう。

 2014年9月場所、7戦全勝で優勝してからの竜電は、とても安定した強さを魅せ、超速で再十両を果たすと、新入幕そして新三役と、着実な歩みを示現しています。見事という他は無いでしょう。

 1990年生まれの28歳、遅咲きの三役です。
 身長190cm、体重152kgという堂々たる体躯を誇りますが、竜電関の強みは何と言っても「卓越した精神力」なのでしょう。
 その精神力をベースとした相撲、良く研究された相撲で、大関を目指した頂きたいものです。


[5月26日・千秋楽]
友風○-(押し倒し)-●佐田の海

 西前頭9枚目の友風と西前頭13枚目の佐田の海の7勝7敗対決となった一番は、友風が押し倒しで勝ち、勝ち越しを決めました。

 前頭9枚目の友風にとっては、7勝8敗・ひとつの負け越しであれば、十分に幕ノ内に残留できますし、大きく番付を落とす可能性も小さいのでしょうけれども、ここでは「勝ち越し」がとても大きな意味を持ちました。

 何しろこれで、「初土俵以来13場所連続勝ち越し」となったのですから。

 いわゆる「連続勝ち越し記録」ということであれば、元横綱・武蔵丸の55場所連続が大相撲におけるNO.1記録であることは良く知られていますが、それは「強くなってからの勝ち越し記録」なのです。

 初土俵からの連続勝ち越し記録というのは、なかなか見られないものでしょう。

[友風の初土俵からの連続勝ち越し記録]
・2017年7月場所 東序ノ口25枚目 7勝0敗(序ノ口優勝)
・2017年9月場所 東序二段15枚目 6勝1敗
・2017年11月場所 東三段目53枚目 7勝0敗(三段目優勝)
・2018年1月場所 東幕下31枚目 5勝2敗
・2018年3月場所 東幕下18枚目 4勝3敗
・2018年5月場所 東幕下13枚目 4勝3敗
・2018年7月場所 東幕下10枚目 5勝2敗
・2018年9月場所 西幕下4枚目 5勝2敗
・2018年11月場所 西十両11枚目 12勝3敗(十両優勝)
・2019年1月場所 東十両4枚目 10勝5敗
・2019年3月場所 東前頭13枚目 9勝6敗
・2019年5月場所 西前頭9枚目 8勝7敗

 まずは、故障・怪我等による休場が無いことが大前提となりますが、この点を友風はキッチリとクリアしています。

 続いては、「関取を目指す数多くの力士」と「再起を目指す元十両・元幕内力士」が犇めく幕下上位での戦いは、何時の時代も、どの力士にとっても、とても厳しいものなのですが、友風は2018年3月場所・5月場所を4勝3敗でクリアし、力を付けて、十両を僅か2場所で突破しています。
 この戦績を観ても、「幕下時代の頑張り・努力」が友風の礎となっているのは、間違いないでしょう。

 ちなみに、友風は「初土俵から11場所で新入幕」を果たしていますが、これは元大関・琴欧洲らと並んで「史上4位タイのスピード出世」です。
 尾車部屋所属の友風は、自らが関取になった(十両昇進)後も、部屋の先輩関取・嘉風の付き人をしていたことでも知られています。
 その尊敬する大先輩は「所要12場所」で幕内に進んでいますが、この先輩の記録を1場所上回ったことを、友風がとても喜び、「僕にとっての目標達成」とコメントしたとも報じられていました。

 幕ノ内力士として、友風が「新入幕以来の勝ち越し記録をどこまで伸ばして行ってくれるのか」が、とても楽しみですけれども、その点からも、2019年5月場所・千秋楽の佐田の海戦の「押し倒し」は大きな白星だったのです。

 5月場所千秋楽、幕内2番目の取組は、東前頭11枚目の松鳳山と西前頭14枚目の炎鵬の、7勝7敗同士の対戦でした。

 いかにも千秋楽らしい、勝ち越しをかけた「7・7対決」となったのですが、この相撲が素晴らしいものでした。
 立合いから、両力士の攻めと守りが交互に繰り出され、両力士共に「危ないシーン」を何とか何度かクリアしながら、相撲が延々と続きました。

 四つ相撲では無いのに、相当長い相撲という印象。
 おそらくは30秒位の取組だったのでしょうが、途中からは、こうした「丁々発止のやり取り」が永遠に続くようにさえ感じられたのです。(感動を与えながら「永遠を感じさせるプレー」というのは、どんなスポーツにおいても好プレーでしょう)

 西土俵際で炎鵬が攻め立て、それを松鳳山が上手投げで返したところで、ようやく?勝負が付きました。

 場内は大歓声と大拍手の嵐・・・。

 千秋楽一番の「大相撲」でしたし、5月場所を通じても屈指の「大相撲」でしょう。

 身長177cm・体重137㎏の松鳳山と身長168cm・体重99㎏の炎鵬の取組は、幕ノ内力士の平均体重が160㎏に迫る現在であれば、「小兵力士同士の対戦」ということになりますが、「相撲の迫力は体の大きさだけでは決まらない」ことを如実に示してくれました。

 それにしても、炎鵬は9日目まで7勝2敗と好調な場所を展開していましたが、10日目からの6連敗で負け越しとなってしまいました。
 本当に残念な結果でしょう。

 しかし、千秋楽の取組はもちろんとして、毎日の取組の素晴らしさ、「エンターテインメントとしてのプロスポーツの質」という面からならば、炎鵬は現在の大相撲界屈指の力士といって良いのでしょう。
 大相撲ファンは、日々の炎鵬の取組をとても楽しみにしていることは間違いありませんし、炎鵬はその期待に本当に良く応えています。

 炎鵬の活躍は「2019年5月場所を見事に彩った」ものであると感じます。


[5月25日・14日目]
朝乃山○-(寄り切り)-●豪栄道

 西前頭8枚目の朝乃山が、大関・豪栄道を寄り切りで破り、2敗を堅持。
 結びの一番で、3敗で追っていた横綱・鶴竜が敗れて、朝乃山の幕ノ内最高優勝が決まりました。

 豪栄道との一番も、「前に出る力」を感じさせるものでした。
 豪栄道の本来の取口であれば、「数秒で勝負を決する」筈ですから、四つになって土俵中央で落ち着いた時には、朝乃山にも十分に勝機があると思いました。

 その後、豪栄道の攻勢を凌ぎ切って、最後は寄り切ったのです。
 
 堂々たる取口でした。

 朝乃山の優勝は、
 「三役経験の無い力士の優勝は佐田の山以来58年振り」
 「富山県出身力士の優勝は大正時代以来103年振り」と、歴史的なものとなりました。
 
 大相撲の長い長い歴史を感じさせる優勝でもあるのでしょう。

 それにしても、大連勝もするが、負け始めると大連敗もするのが持ち味?であった朝乃山ですから、いつその癖が出るのかと場所中心配していましたが、5月場所はついに取り切りました。素晴らしいことです。
 3月場所から5月場所の間の2ヵ月間に、何が有ったのかという気もします。
 今後の大活躍が期待されるところです。

 さて、このところ「誰が優勝してもおかしくない」場所が続いている大相撲ですが、令和最初の場所も、大混戦となって、「純粋なる平幕優勝」(変な書き方で恐縮です)となったのです。

 一方で、こうした混戦ながら14日目に優勝が決まったのも、少し不思議な感じがします。
 混戦なら千秋楽に縺れ込むのが自然でしょう。

 まるで、アメリカ合衆国・トランプ大統領の来場を控えて、千秋楽は「大相撲ファンがゆったりとした気持ち」で土俵を楽しめるようにと、相撲の神様が取り計らったようにさえ感じるのです。

 神事たる大相撲であれば、十分有り得ることでしょう。
 5月22日、大相撲5月場所で、実質的には「史上初」の残念な出来事が起こってしまいました。
 出場している横綱・大関・関脇が全て敗れるという事態でした。

① 阿炎○-(叩き込み)-関脇・栃ノ心●
② 竜電○-(上手出し投げ)-大関・豪栄道●
③ 小結・碧山○-(押し出し)-大関・高安●
④ 妙義龍○-(押し出し)-横綱・鶴竜●

 が、その事態です。

 もちろん、横綱・白鵬、大関・貴景勝、関脇・逸ノ城が休場していることから、関脇以上の力士の人数自体が4名しか居ない、少ないこともあるのでしょうが、それにしても一場所15日制が定着した1949年(昭和24年)以降、初めてのことというのは、「史上初」と言って良いと思います。

 ちなみにこの日は、小結・御嶽海も遠藤に敗れていますから、高安に勝った碧山以外の三役力士は全敗ということでもあります。
 
 場所の後半、11日目ともなれば「三役同士」の取組も増えますから、本来ならば「関脇以上の力士が全敗」という事態は仕組上発生し難い筈なのですが、三役力士の休場のタイミング等々の要因が重なったこともあって、こうしたことが発生する可能性が生じたのです。

 そうした種々の要因が有ったとはいえ、やはり横綱・大関・関脇が平幕力士に連続して敗れるというのは、「番付の重み」を考えると、とても残念なことです。

 「上位と下位の力量差が小さくなっている」、現在の大相撲界を象徴する事態なのでしょう。

 5月12日、東京・両国・国技館で開幕する、大相撲2019年5月場所の注目力士検討です。

 横綱・大関陣と関脇以下の力士の力量差がとても小さくなり、どの場所も、誰が優勝してもおかしくない「戦国時代」を迎えている大相撲界ですが、今場所も同様の状況がづいています。

 こうした状況下では「好調」な力士が活躍することになるのですが、その「好調」も場所が始まって「勢い」に乗るということが有りますので、場所前での予測はとても難しいことになります。

 さて、注目力士です。

1. 横綱陣

 白鵬と鶴竜ですが、共にベテランですので体調がポイントとなります。現時点では、出場の可否も分からない状態ですが、出て来れば、やはり白鵬の方が優勝に近いのでしょう。
 スピード主体の相撲は、全盛時に比べれば安定感にかけますが、相手の動きを観ながら、次から次に技を繰り出すスピードは、さすがに最強横綱の十八番です。

2. 大関陣

 貴景勝が新大関となりましたが、貴景勝とて関脇以下の力士と大きな力の差があるわけではありませんので、先輩大関との比較が難しいところでしょう。

 今場所は、初優勝を目指す高安に期待します。

3. 関脇以下の力士

③御嶽海

 もともと大関候補の先頭に居たのですが、貴景勝に先を越されました。期するものがあるでしょう。本場所に強い相撲を披露していただきたいものです。

④逸ノ城

 もともと地力ならば、関脇以下でNO.1ですので、気持ちがしっかりしてくれば大関は勿論、横綱も展望できる力士です。先場所からの好調を維持していれば、一気に大関取りもあるでしょう。

⑤阿武咲

 もともと三役の力が有る力士が故障からの回復過程にあります。3月場所は3勝1敗からスタートして、5勝10敗と大負けしました。5日目頃に故障を悪化させたのでしょう。2ヵ月間でどこまで回復しているかが鍵となりますが、相当に回復していると見ます。

⑥阿炎

 もともと「牛若丸相撲」と呼ばれ、前に出る相撲では無く、ひらりひらりと相手力士の力を交わしながら勝機を見出すタイプでしたが、このところ少し「地に足を付ける」取り口に変化して来ました。3月場所の前半は精彩が無く2勝7敗と追い込まれましたが、そこから6連勝で勝ち越すという、離れ業を演じました。強くなっていると感じます。

⑦魁聖

 もともと腰が悪く、コンディションが悪い場所は大負けする傾向が有りました。1月場所は12勝3敗、3月場所は3勝12敗と凄い上下動。今場所はコンディションが良いと見ます。

⑧志摩ノ海

 もともと十両で勝ち越し・負け越しを繰り返す存在でしたが、2019年1月場所・3月場所を連続13勝2敗として、十両連続優勝で新入幕を果たしました。2018年末から19年にかけて何が有ったのかと感じる「変貌ぶり」ですが、この「勢い」に期待します。

⑨遠藤

 もともと相撲の上手さでは角界屈指の力士です。一方で場所毎の成績のブレも大きなところが有ります。「密着相撲」という伝承していかなければならない技術のためにも、大関を目指していただきたいと思います。

⑩栃ノ心

 3月場所千秋楽の大一番に敗れ、残念ながら大関から陥落してしまいました。是非10勝以上の星を挙げていただき、復帰して欲しいものです。

 若手とベテランが入り混じった5月場所番付は、「平成」時代の力士と「令和」における活躍が期待される力士との競り合いという感じがします。

 素晴らしい土俵が期待されます。
 3月場所の土俵を湧かせた「2人の平幕力士」が、逸ノ城と碧山です。

 前頭4枚目の逸ノ城は、中日に栃ノ心に敗れましたが、それ以外は白星を並べ、14勝1敗と言う見事な成績。殊勲賞に相応しい相撲です。
 豪栄道、高安の両大関、貴景勝、御嶽海らの強豪力士を次々と破って行く姿には、「強さ」を感じました。先場所までの「ずるずると後退して」敗れるという相撲が全く観られなくなれば、巨体と重い腰が威力を発揮するのです。
 「次代の横綱」候補(大関以下の力士の中で、最も横綱に近い存在だと考えています)が、ようやく目覚めたのかもしれません。

 前頭7枚目の碧山も12勝3敗の好成績。敢闘賞に相応しい相撲です。
 「もりもりと前に出る相撲」が凄い威力を発揮したのです。
 もともと、好調な場所はとても強い力士です。過去2年間を見ても、2017年7月場所、前頭8枚目で13勝2敗、2018年11月場所、前頭11枚目で11勝4敗と、二桁白星を示現しています。
 碧山は「前に出る圧力が強い場所」では、三役と言うか、大関クラスの強さを魅せるのです。この相撲が継続できれば、まだまだ32歳と若いのですから、大関も十分に狙えると思います。

 逸ノ城と碧山は、現在の大相撲に欠かすことができない力士なのでしょう。

 千秋楽の栃ノ心VS貴景勝の取組の際に、NHK大相撲テレビ放送の解説者・舞の海秀平氏が語った言葉です。

 14日目まで7勝7敗の栃ノ心、3月場所カド番の栃ノ心が負ければ「大関からの陥落」、9勝5敗の貴景勝が負ければ「大関取りならず」の可能性が高い、一番という、本当に両力士にとって「絶対に負けられない戦い」となってしまったのです。

 三役揃い踏みからの流れで仕切りが続きました。
 そして立合い、両力士互角の立合いに観えましたが貴景勝の方が低かったので、もりもりと押します。
 栃ノ心は懸命にまわしを手繰りますが全く届かず、貴景勝が一気に押し出しました。
 「電車道」の完勝でした。

 堂々と当たって行った栃ノ心の取口も、この取組を盛り上げました。

 立合い前に、もうひとりの解説者・北の富士勝昭氏は、「栃ノ心は立合いに注文を付けるような力士では無い。そういう力士ではないが、あまりに重い取組なので『絶対に無い』とは言えない」とコメントしました。
 一気に出てくるであろう貴景勝に対しての「立合いの注文」は確かに有効に見えましたし、とにかく「勝てば良い」、内容は問わない取組、ある意味では「何をやっても許される」取組だったのかもしれませんから、栃ノ心が普段ならやらないプレーを行う可能性もあったのです。

 しかし、栃ノ心は堂々と立合い、貴景勝の当りを堂々と受けて、堂々と?押し出されました。(変な書き方で恐縮です)
 後世に語り継がれる「堂々たる相撲」であったと感じます。

 貴景勝はこの一番に勝って10勝とし、直近3場所の勝ち星を34勝としました。
 大関に推挙されるか否かは「勝ち星数」だけによるものではないことは当然のことですが、最新の場所が9勝と言うのでは「勢い」に欠けます。
 
 単に3場所33勝と言うのであれば、12勝・13勝・8勝でも良いことになりますが、おそらくはそうした展開では大関には推挙されないというか、検討の場、「まな板の上」に乗らないでしょう。
 
 そして、「勢い」を持って33勝をクリアした後には、「相撲の内容」が問われることとなります。
 その内容と言う面で、この千秋楽の相撲は100点満点でした。

 3月27日には、新大関・貴景勝が誕生することになります。

 2019年3月場所千秋楽の「栃ノ心VS貴景勝」は、立派な取組でした。

 元横綱・稀勢の里・荒磯親方が、NHK大相撲放送の解説に初登場しました。

 現役時代は無口な印象で、勝っても負けても「ぶっきらぼう」な感じでした。
 もちろん、この「ぶっきらぼう」な感じは、大相撲の力士に共通した物腰です。
 大きな体で、とても「強い存在」として、時には神事の対象ともなる「力士」が、ペラペラと喋るのでは、やや軽薄のそしりも免れないでしょうから、力士は無口というのが相場となっているのでしょう。
 これは日本文化の一端と言っても良さそうです。

 その無口な力士の典型であった荒磯親方が、テレビ放送の解説者としては、必要十分な言葉数でとてもしっかりとした解説をしたという評判です。
 確かに、聞き取り易い口調・言葉づかいで、引退したばかりの横綱として様々な情報や取組分析・評価を披露していました。
 横綱・白鵬が絶賛したとも伝えられている、立派な解説だったのです。

 大相撲の解説と言えば、21世紀においては北の富士勝昭氏が第一人者でしょうが、その北の富士氏も76歳ということで、「後継者」が待たれる状況です。
 
 今般、解説者デビューを果たした荒磯親方は、次代を担う大相撲解説者になれるものなのでしょうか。

 大相撲に限ったことではありませんが、スポーツのライブ放送の解説に必要な要素を考えてみましょう。

① ストック解説

 解説者自らの現役時代の経験を元に話を進めるやり方です。
 この日の荒磯親方の解説でも、現役を引退したばかりの親方として、自らの対戦相手としての各力士に付いて、その経験を活かした解説が数多く登場しました。

 例えば、阿武咲の取組の際には「阿武咲関は、肩甲骨が柔らかい。普通の力士より10cm・20cmは手が前に出るのではないか。今後の活躍が期待される力士です」と説明していましたし、嘉風の時には「嘉風関は相手力士の研究が凄いので、自分も良く話を聞きに行っていました」と解説しました。
 とても興味深い話が多かったと感じます。

 こうした「最高レベルのプレーヤーによる、自身の経験を元にした、具体的なコメント」というのは、一般の人や一般のメディア関係者には到底分からないこと、知らないことが披露されますので、豊かな内容の話になる場合が多いのです。
 「深遠な経験」を上手に説明されれば、多くの人が感心するのは自然なことでしょう。
 いつも書くことで恐縮ですが、「本物」は素晴らしいのです。

 話の内容のレベルが高いことはもちろんとして、それを平易に口述できることがポイントです。
 プレーヤーの頃から「よく考えて、事に臨んでいた」ことの証にも観えます。
 ただ闇雲にトレーニングをし、試合を戦っていたのでは、解説者としての責任を果たせるレベルの解説は、難しいのではないでしょうか。
 当然のことながら、「解説者になるための才能」が存在し、その才能を保持し、磨いて行ける人しか、長期間の解説者という仕事を全うすることは出来ないのでしょう。

 さて、話を戻します。

 この「ストック解説」は、それまで「知らなかったこと」が披露されるので、とても面白いのですが、ストック解説だけでは「長く解説者を続けることが出来ない」のも当然のことになります。
 「経験の在庫が尽きてしまえばストック解説が出来なくなる」からです。

 従って、「ストック解説」のみの解説者は、現役引退後しばらくの間は解説者としての仕事を熟すことが出来ますが、引退後1年・2年と月日を重ね、共にプレーしていた選手が居なくなると、その解説者も試合・番組において「面白い話」をすることが出来なくなってしまい、解説者としての引退?、早期の引退を迎えることになるのでしょう。

 現役引退後、10年以上の長きに渡って解説者を務めている北の富士氏などが、ストック解説以外の解説手法を身に付けていることは明白です。

② フロー解説

 ストック解説に対する、もうひとつの解説が「フロー解説」だと思います。(勝手に呼称を付けています)

 フロー解説は、眼前で行われているプレーに対しての説明です。
 「当該スポーツに関する高い見識」をベースに、ひとつひとつのプレーに対してコメントするのです。

 フロー解説においてポイントとなるのは、その解説内容が「視聴者・観戦者に理解される、納得していただける」ものであるかどうかでしょう。
 専門的な用語を駆使して、視聴者や観戦者に分かり難いコメントを並べるのでは、良い解説者とは言えないでしょう。ここが難しいところなのです。

 素人でも分かるような「初歩的な内容」では、視聴者・観戦者を唸らせることはできませんし、そんな当たり前のことを聞きたいと思っている人は居ない(別に解説者は要らない形)のですが、一方で、何を言っているのか分からないような複雑な話、分かり難いコメントというのも、プロの解説者としては回避しなくてはなりません。

 例えば、サッカー競技のゴールシーンで、そのゴールが生まれた要因、キーとなったプレーを的確に説明することが、フロー解説に求められるものとなります。

 この日の荒磯親方の解説は、自然なことながら、ストック解説が多かったのですが、フロー解説に繋がる解説もありました。
 例えば、高安の取組の時、「今場所は、腹の出方が良いので好調」であるとコメントしました。「腹の出方」というのは、上体の角度や腰の据わり方、筋肉の動き方等々によって、毎場所異なるもの、同じ力士でも毎場所異なるものであることを解説していただいたものだと思いますが、とても良い解説だと感じました。

 「腹に乗せて押し出した」といった解説は、これまでも耳にしたことが有りましたが、「腹の出方」というのは新鮮です。
 このコメントは、長い間一緒の部屋に居て、高安と日々の稽古を積み重ねてきた荒磯親方ならではの、荒磯親方でなくては知らない知識・経験をもとにしたものですので、広い意味ではストック解説なのでしょうが、それを現実の眼前の取組・取口に展開するとなれば、フロー解説の側面も持ち合わせていると考えます。

 もちろん、フロー解説といっても、自身の高度な知識・見識・経験をベースにして行われるものですが、それらを元に、視聴者・観戦者に「なるほど」と感じさせる解説にするためには、相応のノウハウが必要でしょうし、センスが不可欠なことは言うまでもないでしょう。
 解説の仕事を続けて行く中で、「こうした表現の仕方」が視聴者・観戦者に分かりやすくて「受ける」ことを学び、そのセンスを良い方向に拡大して行く努力が重要なことも言うまでもないでしょう。
 プロの解説者となるためには、日々の修練が必要なことは言うまでも無いことで、とても大変なことだと思います。

③ 軽妙な感想コメント

 上質な解説を行って行く上で、最も難しいのが「軽妙な感想コメント」だと考えます。

 例えば、北の富士氏の場合であれば、解説の合間に「いまのは良かったね」とか「これはダメでしょう」といったコメントが時々入ります。まさに「北の富士の解説」のアイデンティティと呼んで良いと思いますが、この「感想コメント」が視聴者・観戦者にとても受けるのです。

 こうした「軽妙な感想コメント」を積み重ねていく中で、通常ではなかなか言いにくいこと、批判的な解説も、自然に行うことが出来るようになります。
 例えば、「こんなに良い成績でも三賞が取れないの?協会もケチだね」といったコメントは、北の富士氏ならではのものでしょう。
 14日目を終えて10勝以上の白星を積み上げている力士が、三賞選考委員会の検討対象にも上らなかったことに付いて、北の富士氏としては不満が有るのでしょうが、それを軽妙に表現しています。
 もちろん、こうしたコメントはいきなり言っても違和感が有ると思います。「いつも言っている」から通るといった側面もあるのでしょう。長く解説者を務めているから言えることであり、一方で、こうしたコメントを言うことが出来るから長く解説者を務めることが出来るとも言えるのでしょう。

 そしてこの「軽妙な感想コメント」が、プロの解説者にとって最も難しいものであることは間違いありません。
 正確で分かり易いプレー解説を続けて行く中で、軽妙なコメントによって視聴者・観戦者をより楽しませる形、「解説のエンターティンメント性を高める手法」だからです。

 「軽妙な感想コメント」は、スポーツの解説者に求められる「最高峰の技術」として、特にプロの解説者にとっては不可欠な技能であろうと思います。
 今風に言えば「AIには難しい領域」なのでしょうから。

 大相撲2019年3月場所7日目の荒磯親方の解説は、とても興味深く、とても面白い解説でした。
 テレビ観戦を、より楽しいものにしてくれたのです。

 これからも時々、解説者として登場していただきたいものです。
 横綱・大関陣とその他の力士の力量差がとても小さくなり、世代交代への胎動が大きくなっている大相撲の、2019年3月場所が迫ってきました。

 関脇・貴景勝の大関取りの場所でもあります。

 大混戦の場所になる可能性が高く、幕ノ内最高優勝の行方は混沌としています。
 文字通り、幕ノ内力士の誰が優勝してもおかしくないと感じます。

 さて、活躍が期待される10力士です。

1. 横綱陣

 1月場所では、ひとりも15日間取り切ることができなかった横綱陣です。

 白鵬、鶴竜のどちらの方が調子が良いのか、ということになりますが、3月場所はやはり白鵬に期待したいと思います。「第一人者」としての意地を魅せていただきたいものです。

2. 大関陣

 栃ノ心の怪我からの回復度合いが気になります。豪栄道のスピードの衰えも気になるところ。

 3月場所は高安に期待しましょう。
 初優勝を目指す場所です。

3. 関脇以下の力士

③貴景勝

 「大関取り」は、3月場所最大の見所です。1月場所の千秋楽で勝っていれば、1月場所後の昇進もあった可能性が有るのですから、今場所決めたいところでしょう。
 「前に出る圧力」を忘れずに、伸び伸びと取っていただきたいものです。

④御嶽海

 故障が有ったのか、一時期調子落ちが感じられましたが、ようやく戻ってきたという印象です。自分の相撲が取れれば、優勝できる実力が有ることは証明されていますから、大活躍が期待されるところです。

⑤豊ノ島

 幕ノ内経験者が巣食う?十両を2場所で突破して「かえり入幕」を決めました。相当調子が上がっていると見ます。
 変幻自在な取口が披露できれば、二桁勝利も可能でしょう。

⑥友風

 こちらも、12勝、10勝と2場所で十両を突破しました。豪風引退の後、新しい「風・風コンビ」として嘉風と共に尾車部屋を牽引して行って欲しいものです。

⑦玉鷲

 もし3月場所で優勝するようなら、文句無しの大関昇進でしょう。
 「安定感十分の押し」で落ち着いて取っていただければ、今場所も優勝争いをする可能性があります。

⑧遠藤

 怪我からの回復が相当進んでいると見ます。「前に出るスピード」が完全に戻れば、持ち味の「密着相撲」が展開されることでしょう。「上手い相撲」を披露していただきたいものです。

⑨阿武咲

 1月場所は、6連勝から4連敗となって8勝7敗という不完全燃焼の場所でした。「疲れ」が出た様にも観えました。幕ノ内上位での戦いにも慣れたところでしょうから、3月場所での大暴れに期待します。

⑩朝乃山

 こちらは、5連敗からの3連勝となって8勝7敗という不思議な1月場所でした。強い時は物凄く強いが、弱い時はあっけなく負ける、というこれまでの相撲では無く、強い時の相撲を継続して欲しいものですし、そろそろそういう時期が来ているとも思います。

 3月場所は、以上の10力士に期待します。

 もちろん、この他にも、北勝富士や阿炎、矢後や豊山などなど、注目力士が目白押しです。

 とても面白い場所になりそうです。

 3月場所の新番付が発表されました。

 そして、幕内復帰が期待されていた豊ノ島が、1月場所の西十両5枚目から西前頭14枚目に上がり、見事に幕内に返り咲いたのです。

 2016年7月場所(名古屋)前の稽古でアキレス腱断裂の重傷を負い、9月場所にかけての2場所全休で幕下に陥落しました。この時すでに33歳でしたから、復帰は難しいのではないかとの観測もありました。

 ましてや、三役・関脇経験者が幕下で取るということについての「モチベーションの維持」も難しいのではないかと言われたのです。

 しかし、豊ノ島は2016年11月場所から土俵に復帰しました。
 稽古から遠ざかっていたこともあって、ここからの豊ノ島の「幕内への道程」は困難を極めました。

① 2016年11月場所 西幕下7枚目 4勝3敗
② 2017年1月場所 西幕下6枚目 6勝1敗
③ 2017年3月場所 東幕下2枚目 1勝5敗1休
④ 2017年5月場所 東幕下19枚目 3勝4敗
⑤ 2017年7月場所 東幕下28枚目 5勝2敗
⑥ 2017年9月場所 西幕下17枚目 4勝3敗
⑦ 2017年11月場所 西幕下13枚目 5勝2敗
⑧ 2018年1月場所 東幕下5枚目 0勝3敗4休
⑨ 2018年3月場所 西幕下35枚目 6勝1敗
⑩ 2018年5月場所 東幕下14枚目 5勝2敗
⑪ 2018年7月場所 西幕下7枚目 5勝2敗
⑫ 2018年9月場所 西幕下筆頭 6勝1敗
⑬ 2018年11月場所 東十両13枚目 11勝4敗
⑭ 2019年1月場所 西十両5枚目 10勝5敗

 特に、2017年の3月場所と2018年の1月場所は、いわゆる「幕下上位」の番付に居て、「関取復帰」を目指す場所でしたが、いずれも故障で休場して、大きく番付を下げました。
 2018年3月場所の西幕下35枚目という番付を見た時に、「引退」という言葉が頭をよぎったとしても何の不思議も無いでしょう。

 再び、しかし、豊ノ島は土俵に上がり続けたのです。
 この強い精神力が、豊ノ島最大の武器なのでしょう。
 奥様を始めとする、ご家族のサポートも大きな支えになったと報じられています。

 もちろん、豊ノ島自身に「回復すれば絶対に良い相撲が取れる」という「相撲への自信」もあったであろうと思います。

 そして、2017年3月場所以降は、次第に本来の相撲を取り戻し、2018年11月場所に「関取復帰」を果たすと、十両を2場所で突破しました。
 自分の相撲が取れるようになれば、やはり強いのです。
 十両における、2場所連続二桁勝利は、地力の高さの証明でしょう。

 さて、35歳のベテラン力士とはいえ、本来の相撲を取り戻した豊ノ島は、西前頭14枚目でも「強い」と予想されます。

 3勝10回(殊勲賞3、敢闘賞3、技能賞4)、金星4個(白鵬1、日馬富士3)の強者が、幕内の土俵に帰ってきました。

 若手が躍動する土俵における「ベテランの縦横無尽の活躍」が期待されます。

 2019年1月場所では、横綱・大関陣の不振が目立ち、新しい大関が待望されている状況でしょう。

 今回は「大関」についての雑感です。

 「大関」は明治時代の中頃までは、大相撲の最高位でした。
 その後「横綱」が設けられたのですが、少なくとも昭和時代の中頃までは「横綱大関」という呼称が広く用いられていたと思います。
 つまり「横綱」というのは、「大関の中で特に選ばれて綱を張ることが許された力士」という扱い、「大関の一種」という扱いだったのでしょう。そういう意味では、その頃まではやはり「大関」が、最高位だったとも言えます。

 いつ頃からは、はっきりしませんが、「横綱大関」という言葉が使われる頻度が下がり、「横綱」と呼称されるようになったと記憶しています。

 さて、近時時々耳にするのは「優勝していない大関」という言葉です。
 「大関という高位に居ながら優勝経験が無い」ことを指して言うのですが、「大関ならば優勝していて当然」といったニュアンス、マイナスイメージも感じられます。

 この言葉が何時ごろから使われるようになったのかは分かりませんが、おそらくはごく最近、2~3年以内の話であろうと思います。

 何故なら、「優勝経験の無い大関」は大相撲の歴史上そう珍しいものでは無く、過去に何人も居ますし、21世紀に入ってからも、優勝するまでに長い時間を要した大関は数多く居るので、「大関ならば優勝していて当然」という見方が、例えば2015年頃までに存在したとは思えないからです。

 例えば、元横綱・稀勢の里が初優勝したのは2017年1月場所で、大関になって31場所目でした。
 大関・豪栄道が初優勝したのは2016年9月場所で、大関になって13場所目、元大関・琴奨菊が初優勝したのは2016年1月場所で、大関になってから26場所目でした。
 少し遡って、元大関・琴欧洲が初優勝絵したのは2008年5月場所で、大関在位15場所目。
 また、初代・貴ノ花が初優勝したのは1975年3月場所で、大関在位15場所目でした。
(以上の5大関は関脇までのキャリアで優勝していませんでした)

 これを現役に当て嵌めてみると、大関・高安は2019年1月場所時点で、大関在位10場所目ですので、たとえ優勝していないとしても「決して遅くは無いし」「不思議なことでも無い」ことは明らかです。

 高安を指して「まだ優勝していない大関」といった非難めいたニュアンスが感じられる評価は、当たらないのでしょう。
 大相撲の事を良く知らない人の言葉であろうと思います。

 現在、大関は豪栄道、高安、栃ノ心の3力士です。
 そして、御嶽海や貴景勝の昇進が期待されているわけですが、この2力士が大関に昇進すると「5人大関体制」となり、多過ぎないかといった懸念を持たれる方も居るかもしれませんが、心配ご無用です。

 過去には「6人大関体制」の場所も存在しました。それも2010年以降という、つい最近の話です。
 2012年5月場所は、日馬富士、鶴竜、稀勢の里、琴奨菊、把瑠都、琴欧洲の6力士が大関でした。この場所後、日馬富士が横綱に昇進して、「6人体制」は崩れたのです。
 
 「5人大関体制」となれば、これは20世紀から何度もありました。
 少し例を挙げましょう。

[1961年7月場所]
北葉山、大鵬、柏戸、若羽黒、琴ヶ濱

[1963年3月場所]
豊山、栃光、栃ノ海、佐田の山、北葉山

[1972年11月場所]
貴ノ花、輪島、大麒麟、清国、琴桜

[1977年3月場所]
若三杉、魁傑、旭国、三重ノ海、貴ノ花

[1983年7月場所]
北天佑、朝潮、若島津、隆の里、琴風

[1987年7月場所]
小錦、大乃国、北天佑、朝潮、若島津

[2000年11月場所]
武双山、魁皇、雅山、出島、千代大海

[2002年9月場所]
朝青龍、栃東、武双山、魁皇、千代大海

[2006年5月場所]
白鵬、琴欧洲、栃東、魁皇、千代大海

[2009年1月場所]
日馬富士、琴光喜、琴欧洲、魁皇、千代大海

[2012年1月場所]
稀勢の里、琴奨菊、把瑠都、日馬富士、琴欧洲

 これらは「5人大関体制の」一部の例です。
 他にも有るのですから、「5人」は珍しいものではありません。

 これらの例を見て共通しているのは、多くの大関が存在する状況においては、「横綱に昇進する力士」がその中に含まれている場合が多いというところです。

 「5人体制」には、ベテラン大関と若手大関が併存し、切磋琢磨して「次代の横綱」が育っているということなのでしょう。

 「雑感」ですから、話があちこちに飛んで恐縮です。

 頭書の話に戻ると、貴景勝や御嶽海がどんどん大関に昇進しても、何ら心配ないということなのでしょうし、大勢の大関の中から横綱が生まれる可能性が高いということなのかもしれません。
 また、関脇までの間に優勝している必要など全く無いので、直近3場所33勝を目指して、他の力士も存分にトライしてほしいものです。
 もちろん、勝ち星の数ばかりが問題では無いのは当然のことで、大切なのは「『大関』に相応しい相撲が取れるかどうか」の一点なのであろうと思います。

 現在の「若手力士」には、大きなチャンスの時期が来ているのでしょう。
 1月場所は関脇・玉鷲の優勝で幕を閉じました。
 もうひとりの関脇・貴景勝との終盤の優勝争いは、見所十分であったと思います。

 一方で、横綱・大関陣の不甲斐無さも目立ちました。

 横綱陣は、稀勢の里が4日目から休場し5日目に引退を表明、鶴竜が6日目から休場、孤塁を守っていた白鵬も14日目から休場と、3横綱共に千秋楽を迎えることすら出来ませんでした。

 大関陣は前半の相撲が悪過ぎました。
 栃ノ心は5日目から休場、高安は中日までで4勝4敗、豪栄道は中日までで3勝5敗と、番付が下位の力士に大苦戦。もし横綱陣が健在であったなら、「3大関が同時に3月場所でカド番」という悲惨な事態さえあり得たのかもしれません。

 当然ながら、ベテラン力士で構成されている横綱・大関陣ですが、近時の「衰え」は隠しようが無い状況でしょうか。

 千秋楽の協会挨拶に登場する三役力士の人数が、2018年11月場所が5名、2019年1月場所が6名というのでは、寂しい限り。

 友人から「引退が進むから、しばらくすると横綱・大関陣は高安ひとりになるよ」と言われても、そんなことはないと笑うことも出来ないのです。

 横綱・大関陣崩壊の中で、1月場所の幕内最高優勝を争ったのが「両関脇」であったのは、番付から見れば自然なことであり、「番付の重み」を辛うじて維持した結果の様に観えます。

 大相撲界にとっては、「若くて元気の良い大関・横綱」の登場が、待望されているのです。

 御嶽海や貴景勝の活躍、速やかな大関昇進を期待しているのは、ファンだけでは無いのでしょう。

 大相撲2019年1月場所・千秋楽、玉鷲は遠藤を突き落としで破って13勝2敗とし、優勝を決めました。
 今場所の「突き押し」の威力を見せつけた取口でした。

 玉鷲の優勝は、初土俵から「1151番連続の出場」の上に、燦然と輝くものでした。
 怪我・故障に強いというか、ほとんど大きな故障を発症しないという、強い体と故障し難い取口、そして日々の稽古の賜物と言って良いでしょう。

 「15年間に渡って本場所の土俵に上がり続けている」というのは、休場力士が目立つ昨今においては、一層輝かしい事実です。

 もともと安定感十分な力士であった玉鷲が、一段と強さを増したのは2015年1月場所からだと思います。この場所、東前頭9枚目で10勝5敗と二桁勝利を遂げた玉鷲は、同年3月場所に小結に昇進し、この場所は4勝11敗と大負けしましたが、その後は幕ノ内上位に定着、2016年11月場所に小結に返り咲くと10勝5敗で技能賞も受賞、2017年1月場所には東関脇となったのです。
 その後は関脇を4場所連続で務め、前頭上位・三役の常連としての活躍を続けてきました。
 そして、今場所の優勝に結びつけた形です。

 今場所の取口で目立ったのは、「左右のおっつけ・いなし」でしょうか。
 真っ直ぐに押すだけでは無く、押しが止まった時には、相手力士を左右に揺さぶったのです。
 威力十分な押しに、左右の動きが加わることで「取口に幅ができ」、相手を崩す手段となりました。

 表彰式における「優勝力士インタビュー」では、玉鷲の「人柄の良さ」が伝わりました。
 朴訥と、自慢することなど微塵も無く、インタビューに応じる姿には、力士が本来身に付けているべき「優しさ」が溢れていました。

 「気は優しくて力持ち」という言葉が有りますが、まさに玉鷲の為にあるようなフレーズであると感じます。

 34歳2か月と遅咲きの優勝でしたが、まだまだ体は若いと報じられていますので、大関を目指して取ってほしいと思います。

 何かを成し遂げようとするのに、必要な心身のスキルさえあれば、年齢など全く関係ないのですから。

 1月22日、元関脇・豪風が引退を決意したと報じられました。

 今場所、東十両12枚目の番付に居る豪風は、9日目まで1勝8敗と負け越しが決まっていました。9敗すれば幕下への陥落が濃厚と見られていた中での「引退決意」でした。
 10日目からは休場する見込みとのこと。

 秋田県出身(金足農業高校出身で昨夏の甲子園大会でも話題となりました)、中央大学から尾車部屋に入門し2002年夏場所に幕下15枚目付け出しで大相撲にデビューしました。

 突き押し相撲ですが、何より「素早い動きから勝機を見出す取口」で多くのファンを唸らせました。
 観ていてとても面白い相撲です。
 まさに「プロプレーヤー」であり、「大相撲に欠かせない存在」でした。

 小兵ながら大物喰いという面から、同部屋の嘉風との「風・風コンビ」は、私が最も注目してきたコンビ?でした。(変な書き方で恐縮です)

 39歳まで関取を張ることができる力士は滅多に居ません。
 昨2018年5月場所で幕内に再入幕(38歳10ヵ月)したことは、見事という他はありませんでした。

 引退後は、年寄「押尾川」を襲名するとのこと。

 「第2の豪風」を是非育てていただきたいと思います。

 「1月場所が終了してからが力士のお正月」と言われる「初場所」が、1月13日から東京・両国国技館で開催されます。

 2018年の大相撲界は、本当に色々なことが有りました。
 栃ノ心、御嶽海、貴景勝の「初優勝」は、横綱の優勝が続いていた本場所に、新風を吹き込みました。

 他方、いわゆる「暴力・暴行」問題が後を絶たず、本当に暗い影を落とし続けました。この問題は、現在も継続していて、「大相撲の屋台骨を揺るがしかねない」重大事なのでしょう。

 そうした中、2019年の初場所が始まります。
 昔から大相撲をご覧になっている方々なら、直ぐに分かることでしょうが、初場所には他の場所に無い、何とも言えない「華やかさ」が有ります。
 着物姿の観客が多いとか、お正月の気分が続いているとか、理由は色々あるのかもしれませんが、「大相撲の開催と観戦」がひとつの「平和の象徴」であり、年頭の本場所に、「今年も大相撲が始まった」という雰囲気が、ここかしこに漂っているのではないかと感じています。

 そうした意味からも、本来「平和の象徴」であるはずの大相撲が、「暴力・暴行」の巣窟ということでは、話にならないという気がします。
 協会はもとより、ひとりひとりの力士が、大相撲の歴史やその社会的な位置づけを心に刻んで、日々の生活を営んでいただきたいと切に願わずには、いられません。

 さて、「新風」が吹き込んでいる大相撲界ですが、少し鳴りを潜めていた横綱陣も徐々に復帰してきました。
 新旧激突という図柄は、勝負ごとにおいて最も面白い時期ということにもなります。
 1月場所の注目力士を観て行きましょう。

1. 横綱陣

 やはり、稀勢の里の動向が最も注目されるところです。
 「進退を賭けた場所」になるのでしょう。

 もともと「全勝優勝」を目指すタイプの力士では無いと思いますので、序盤戦の取りこぼしなど恐れることなく、自らの豪快な相撲を披露していただきたいと思います。

 今場所は、稀勢の里に注目します。

2. 大関陣

 先場所、最後まで優勝争いを繰り広げた高安ですが、「2場所連続準優勝」ということになりますので、1月場所で優勝するようなら「横綱昇進」も有り得ることになります。
 終盤でやや疲れが出る印象ですが、乾坤一擲の戦いを披露していただきたいと思います。

 今場所は、高安に期待します。

 稀勢の里と高安という、旧鳴門部屋の2力士に注目することとなりました。

3. 関脇以下の力士

③貴景勝

 3番手は、この人しか居ないでしょう。
 2018年11月場所の優勝は見事でした。勝ち方を観ると、持ち味の「低い重心」が活きていたと思います。もちろん、対戦力士の研究が進むのでしょうが、押すだけの相撲では無いので、貴景勝側もバリエーションを広げて、「大関取り」に挑んでいただきたいものです。

④阿武咲

 11月場所は11勝4敗の好成績でしたが、相撲内容を観ると「まだまだこんなものでは無い」という印象でした。復帰途上にあったということでしょう。本来のスピードと押しの強さが戻ってくれば、前頭6枚目に上がっても十二分に戦えると思います。旋風を巻き起こしてほしいものです。

⑤阿炎

 11月場所は、6勝2敗と好スタートを切りながら、9日目からの7連敗という意外な結果となりました。本来の相撲が突然取れなくなったのです。
 今場所前の稽古で、問題点はカバーしていると思いますので、大暴れしてほしいものです。

⑥豊山

 11月場所は5勝10敗と不本意な結果でしたが、相撲内容は悪くなかったと感じています。体調の改善も見込める初場所では、本来の「大きな相撲」を披露していただきたいものです。

⑦御嶽海

 9月場所、11月場所と持ち味の「思い切りの良さ」が影を潜めました。取組ごとに「勝つためにはどうしたらよいか」を良く考えて実行するタイプの力士ですが、少し「考え過ぎ」て、前に出るのを忘れたのかもしれません。
 本来の「前に出ながらの仕掛け」を思い出してくれれば、優勝力士としての力量が発揮されることでしょう。

⑧矢後

 新入幕です。9月場所、11月場所と十両上位で着実に力を付けました。相当強くなっていると思います。幕内でも、思い切り自分の相撲を取ってもらいたいと思います。

⑨妙義龍

 ついに三役に戻りました。復帰の過程で、十両から幕内下位の頃は、本来の相撲が中々取れず、力が落ちたかとも言われましたが、ようやくコンディションが整ったのでしょう。そうであれば、三役常連としての力を魅せていただけるのでしょう。

⑩遠藤

 11月場所では、復活に向けた勢いが感じられました。今場所、本来の「前に出ながらの密着相撲」を披露して、二桁勝利をお願いしたいと思います。

 2019年の初場所は、以上の10力士に期待します。

 もちろん他にも、玉鷲、北勝富士、嘉風、朝乃山と楽しみな力士が目白押し。

 「暗雲」を振り払うような「充実した土俵」が期待されるのです。

 千秋楽恒例の協会ご挨拶。
 八角理事長の周りを堂々たる体躯の三役力士が囲む「絵」が通例となっていますが、11月場所の三役力士は僅かに5名でした。
 1列目に4名が並びますから、2列目は僅かに1名という、「寂しい絵」となってしまいました。

 横綱・白鵬と鶴竜の2人が場所前に休場し、残る稀勢の里が場所中に休場し、大関・豪栄道が場所中に休場し、小結・魁聖が3日目から復帰したものの千秋楽に休場したために、こうした「絵」となってしまったのです。

 贔屓目に見ても「異常な絵」でしょう。
 
 11月場所は、小結・貴景勝や大関・高安、平幕・松鳳山、琴奨菊、碧山、阿武咲、隠岐の海らの活躍により、何とか形は付きましたが、「このままではいけない」と考えている大相撲関係者は、数多いことでしょう。

 横綱陣、大関陣が、怪我や年齢との関係で「引退の連続」という事態が、何時来るとも限らないことを、2018年11月場所は明示してくれたのかもしれません。

 とはいえ、横綱・大関を恣意的に創り出すことはできません。
 
 「22歳・史上6番目の若さでの優勝」といった若手力士の大活躍が連続し、横綱・大関陣にどんどん新しい力士が上がって行くようにならなければ、「協会ご挨拶に三役が5名しか居ない」という事態が、これからも発生する可能性は十分にあります。

プロフィール

カエサルjr

Author:カエサルjr
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