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 西幕下筆頭の豊ノ島が9月場所で6勝1敗の好成績を収めました。

 十両力士の成績との関連も有りますが、11月場所での十両昇進は確実だと思います。

 2016年7月場所の場所前稽古中に左足アキレス腱を断裂し、2場所連続休場となって、11月場所に幕下に陥落した豊ノ島は、関取復帰に向けての戦いを続けましたが、以降も故障が続き中々十両復帰は成りませんでした。

 関脇を何度も務め、小兵ながらもその独特の相撲によって三賞を十度(殊勲賞3、敢闘賞も3、技能賞4)も受賞している豊ノ島には、当然ながら多くのファンが居て、関取への復帰を心待ちにしてきたのです。
 私もそのひとりです。

 9月場所では、4勝1敗で迎えた11日目の蒼国来戦を勝利したことがポイントとなり、14日目の鏡桜戦も制して、6勝と大きく勝ち越しました。(それにしても、3日目の豊響、11日目の蒼国来と、幕ノ内で戦っていた力士達が幕下で頑張っています)

 そして、ついに実現する時がやって参りました。

 36歳となった豊ノ島ですが、関取として「もうひと花」咲かせていただきたいと思いますし、その力は十分にあると感じます。
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 横綱・稀勢の里の復帰、横綱・白鵬の復活優勝、大関・栃ノ心のカド番脱出と、上位陣が次々と「9月場所の目標」を達成した中で、唯一、関脇・御嶽海の大関取りだけが失敗しました。

 これだけ多くの上位力士の「思いがこめられた場所」ですから、全ての「重い」が成就するというのは、難しいことなのでしょう。

 9月場所の御嶽海の相撲は、先場所と比べて、前に出る力とスピードが劣っていたと感じます。これは、初日から感じました。本場所に強い力士とされている御嶽海にしても、やはり緊張と気負いが有ったのかもしれません。

 結果として土俵上で、先場所より「小さく」観えました。

 御嶽海の身長180cm・体重170㎏という体格は堂々たるものですが、上位陣には大きな力士が並んでいるのです。
 身長192cm・体重154kgの白鵬、身長188cm・体重176㎏の稀勢の里、身長185cm・体重180kgの高安、身長191cm・体重175㎏の栃ノ心、身長193cm・体重227kgの逸ノ城と、関脇以上には大型力士が目白押しです。

 こうした状況下で御嶽海が勝ち抜いて行くためには、スピードと相撲の上手さが必要なことは言うまでも無いことでしょう。
 そして、7月場所では、この「上手さ」、相撲に行っての機を観るに敏な取り口が存分に発揮されたのです。(7月場所で3横綱を始めとして、上位陣が軒並み休場したことも、多少は影響が有ったかもしれませんが・・・)

 7月場所と比べて調子が悪かった御嶽海ですが、14日目の高安戦では本領を発揮しました。対戦成績で圧倒的に負けている(7連敗中)の大関を、土俵際の動きで逆転勝ちしたのです。
これこそが、相手力士の僅かな重心の動きを取らまえて勝機を見出していく相撲こそが、御嶽海の真骨頂でしょう。

 その相撲が取れていることが、高安戦で示されたわけですから、あとはコンディションを整えていただき、前に出るパワーとスピードに磨きをかけてもらいたいと思います。

 御嶽海関には、再び「大関取りのチャンス」がやってくることは間違いないのですから。
 栃ノ心にとっては、とても苦しい場所だったことでしょう。

 自身の故障が回復途上の中で、横綱・稀勢の里が進退をかけて登場し、横綱・白鵬にとっての復活の場所であり、関脇・御嶽海の大関取りの場所となった9月場所は、多くの上位陣にとって「特別の場所」となっていましたから、そうした中で「カド番」大関が勝ち越すことは、いつもの場所にも増して難しいことだと予想されたのです。

 3日目に貴景勝、5日目に御嶽海に敗れた時には、心配が現実のものになってきたと感じました。上位陣との対戦を前に黒星を重ねることは、まさにピンチなのです。

 9日目に稀勢の里の「復活の相撲」に敗れて4敗目(5勝)を喫した時には、いよいよ心配が募りました。

 そうした心配を払拭したのは11日目の鶴竜戦でしょう。
 「つり」を駆使して破ったのです。

 絶滅危惧種である「つり出し」という技を、経常的に使いこなしている唯一の関取が栃ノ心です。
 その栃ノ心が「伝家の宝刀」を繰り出して横綱を破ったのです。

 この白星を観て、「大丈夫だ」と確信しました。
 栃ノ心の気迫は、いささかも衰えていなかったのです。

 艱難辛苦の場所を乗り切った栃ノ心の、今後の活躍が本当に楽しみです。
 長い休場明け、「進退をかけた場所」に臨んだ稀勢の里は、15日間を取り切りました。
 10勝5敗でした。

 「取り切った」こと自体が、まずは横綱としての責任を果たしたということでしょう。
 15日間ファンの前に姿を現すこと、堂々と存在を示すことが、「横綱」の大きな仕事なのです。

 前半戦は長い相撲ばかりでした。
 動きが鈍い稀勢の里に対して、相手力士は素早く動き回り、あの手この手で攻めてきました。
 稀勢の里は、この連続攻撃に良く耐え、最期は白星を物にするという、綱渡りのような取組が続いたのです。

 はらはらどきどきの取組が続いていましたから、初日から5連勝とした時には、少し「不思議な感じ」がしたものです。とっくに1敗しているように観えたのです。
 5連勝とはいえ、全く自分の相撲が取れていませんでしたから、いつ崩れるか、という心配は続いていました。6日目と8日目に負けた時には、さもありなん、という感じでした。

 そして9日目の栃ノ心戦を迎えたのです。

 この相撲で、稀勢の里は蘇ったと思います。

 右上手をがっしりと取った横綱は、栃ノ心をじりじりと追い詰め寄り切りました。
 9月場所で初めて見せた「稀勢の里の相撲」でした。

 この相撲を観て、初めて、稀勢の里は復活できると確信しました。
 稀勢の里も、「相撲を思い出した」のではないでしょうか。

 横綱になって初めての横綱戦は、白鵬に敗れ、鶴竜に勝ちました。
 復帰の場所としては十分な成績だと思います。

 横綱としての、稀勢の里のキャリアが、ようやくスタートしました。

 もちろん、次の場所では優勝争いが求められることになります。
 9月場所は、横綱・白鵬が全勝優勝を飾りました。

 休場明けの場所でしたが、初日からスピード十分の取口を展開しました。
 対戦相手毎に、良く考えた内容の相撲を取っていたと感じます。
 最も素晴らしいのは「15日間のペース配分」でしょうか。終盤に来て疲労が蓄積し、パワー・スピード共に衰えてしまう力士が多かった中で、白鵬は最後まで取り口を維持しました。

 下位力士との力の差が小さくなっていることは不変ですが、その僅かな差を取組に活かして行く戦術構築力と、実行して行く集中力はさすがでした。

 14日目の豪栄道戦を勝った時には「幕ノ内1000勝」も達成しました。
 「空前」の大記録です。無類の強さを示したのです。

 毎日のように観られる「張り差し」や、時折見せる「ダメ押し」、連続する「勝負俵踏みつけ」(横綱土俵入り、取組における呼出し後の所作、最初の塩に行くとき等)など、白鵬は相変わらず「横綱の品格」には程遠い存在だと言われています。

 一方で、「白星への執着」は、若い頃から不変です。かつてのように、どうしても勝ちたい取組での立合い変化は観られなくなりましたが、大袈裟に言えば「勝つ為なら何でもする」雰囲気は維持しているのです。ゲームに臨むスポーツプレーヤーとしては、見習わなければならない点なのかもしれません。

 「円熟」には無縁ですが、この「執念」が有る限り、これからも勝ち星を重ねて行くことでしょう。
 夏の甲子園2018で大ブレイクした「金足農業高校ブランド」ですが、大相撲の大ベテラン・琴風関も、その金足農出身者のひとりです。

 メディアにも採り上げられていますが、8月24日配信の日刊スポーツの記事が、琴風関の思いを詳細に伝えてくれました。

 金足農チームが準決勝進出を決めた翌日8月19日、札幌市の夏巡業で報道陣に囲まれた琴風は、
 「今まで眠っていた感情、細胞が後輩たちに覚まさせてもらった。長くやっていると忘れていくものがあるけど、それを覚まさせてもらった。ベスト8になるだけでもすごいことなのに。言い方は悪いけど、地方の公立校が強化選手を集めた私立の高校を倒す、これ以上の快感はないですよね。秋田には秋田商とか大曲工とかあるけど、金足農というのがもうね。」
 と語ったそうです。

 「・・・『途中からは最初の整列だけで泣けてました』と涙なしでは見られなかったという。・・・」
 母校の活躍は、琴風の心に強く響いたのでしょう。

 そして、「・・・『次は自分の番ですよ』とモチベーションが高まった。」と続き、「・・・『とてつもない力になりましたから。これも何かの縁だなと。ここで先輩の背中、意地を見せないといけない。見せてやりますよ』・・・」と締め括られています。

 2018年に入ってやや元気が無く、9月場所では十両西6枚目番付に下がった豪風ですが、後輩たちの活躍を目の当たりにして、本来の「琴風の相撲=動きのスピードと相手の取り口を瞬時に判断した上での対応力」を魅せていただきたいものです。
 9月9日、東京・両国・国技館にて開幕する、大相撲2018年9月場所の注目力士検討です。

 2018年は、横綱・大関陣と関脇以下の力士の力量差が小さくなり、前頭上位以上の番付であれば、どの力士にも優勝のチャンスがある状態となっています。
 加えて、いわゆる「世代交代」も進んできました。

 9月場所の番付を観れば、前頭6枚目以上の力士には、ベテラン・三役経験者に加えて、数多くの若手力士が名を連ねていて、その充実ぶりには目を見張ります。

 9月場所も、毎日優勝候補力士が入れ替わる大接戦となることでとでしょう。

1. 横綱陣

 稀勢の里が「進退をかけて」出場してきました。横綱ですから二桁10勝がボーダーラインとなるのでしょうが、やはり序盤戦にどれくらい「自信」を積みあげられるかがカギでしょう。
 持ち味の「豪快な相撲」を魅せていただきたいものです。

 白鵬も出場するとなれば「大横綱」に恥じない内容が求められますから、なかなか大変だと感じます。

 3横綱それぞれに不安な要素が有りますが、安定感から選ぶとすればやはり鶴竜なのでしょう。

2. 大関陣

 栃ノ心がカド番です。先場所の怪我の回復度合い次第でしょうが、今場所は勝ち越しを目指す場所になるのかもしれません。

 豪栄道と高安には復調の兆しが有ります。今場所は豪栄道に期待したいと思います。
 稽古場の強さを本場所で発揮してほしいものです。

3. 関脇以下の力士

③関脇・御嶽海

 先場所の優勝をベースとして、大関取りの場所と言われています。持ち味である「本場所での強さ」に期待します。

④阿武咲

 勢いに乗れば「連勝」出来るタイプです。故障個所も相当に回復してきていると思いますので、優勝を目指してほしいと思います。

⑤豊山

 一皮むけた感じです。7月場所の後半戦8連勝は見事でした。特に、千秋楽の御嶽海との一番は「取組オブザイヤー」の候補筆頭でしょう。東前頭2枚目まで番付を上げた9月場所は、真価が問われる場所となります。

⑥朝乃山

 先場所は「優勝争いの一角」を占めました。地力が付き、おおらかな相撲が威力を発揮し始めています。今場所も活躍してくれるでしょう。

⑦北勝富士

 ようやく相撲を憶えてきたというところでしょうか。前に出る力が強いので、力の出しどころを掴めば、一気に上位に上がってくると思います。

⑧嘉風

 このところ元気が有りませんが、西の15枚目まで下がった9月場所は、目を覚ましてくれるのではないでしょうか。本来のスピード相撲が観たいものです。

⑨琴勇輝

 幕尻で相撲を取る力士では無いと思います。体調が戻っていれば、二桁勝利が望めます。

⑩遠藤

 先場所終盤の4連敗は、故障の再発を感じさせました。とはいえ、当代屈指の技士ですから、その活躍は大相撲にとって不可欠のものです。

 9月場所は、以上の10力士に注目します。

 何といっても、「稀勢の里の復活」と「栃ノ心のカド番脱出」がポイントとなる場所なのでしょう。
 7月場所最高の「大相撲」でした。

 2018年の各場所を通じても最高の「大相撲」かもしれません。

 千秋楽の御嶽海と豊山の一戦は、素晴らしい相撲でした。

 互角の立合いから御嶽海が押し込みます。
 豊山は、向う正面の俵まで押し込まれました。「勝負が速い」今場所の御嶽海ですから、このまま寄り切りか押し出しで勝負がつくかと思われましたが、豊山が粘ります。
 東の徳俵付近まで回り込み、御嶽海の押しを堪えます。

 そして豊山が反撃し、押し返しました。この押しは強烈で、御嶽海が後退、俵を伝って押しを交わしにかかります。豊山が押し出すかに観えましたが、御嶽海は何とか堪えました。

 向う正面西寄りにて2人の動きが止まりました。
 両力士の力が一瞬拮抗したのです。

 「おおー」、地鳴りのような歓声が館内に響き渡りました。

 満員の観客の心からの叫び、驚きが籠った、凄まじい歓声でした。(これ程の歓声を大相撲で耳にするのは、何時以来でしょうか)

 一瞬の静止の後、御嶽海が押しに入りました。正面東寄りまで一気に押し込みます。
 このまま御嶽海が押し出すかに見えた瞬間、豊山は土俵際で踏ん張り、投げを打ちました。

 この投げに対して、御嶽海も豊山に体を預けて行ったのですが、豊山は脚をかけて、御嶽海を腰に乗せ、ブン投げました。

 態勢としては2~3度逆転があり、共に相手力士を土俵際まで追い込み、「勝った」と感じさせる瞬間が何度かありました。
 その相撲が「スピード十分」な動きの中で連続したのです。

 その「応酬」は、息つく暇も無く、見ごたえ十分。
 勝負が決した後、両力士は呆然とした様子でしたが、観客も呆然としていた感じでしょう。
 まずは「何が起こったのか」の整理に、数秒の時間を要したのです。
 
 まさに「大相撲」でした。

 7月場所で初優勝を飾り、9月が大関取りの場所になる御嶽海にとっては、14勝と13勝の差は大きいとの見方もあるのでしょうが、この「大相撲」の前では小さな話に観えてしまいます。

 NHKテレビ放送の解説者・北の富士氏の「こんな相撲を見せられると、大相撲もまだまだ捨てたもんじゃ無いね」というコメントが総てを物語っているのでしょう。

 大相撲界最大の使命は「良い相撲をお客様に披露すること」でしょう。
 プロスポーツとしての、何にも代えられない「使命」です。

 大相撲界の明日を支える2人の若手力士、御嶽海と豊山が、その「使命」を見事に果たした一番でした。
[14日目・名古屋ドルフィンズアリーナ]
○御嶽海(寄り切り)栃煌山●

 この一番に勝てば優勝という御嶽海でした。

 緊張して固くなるかと思われましたが、立合いから御嶽海の落ち着いた取り口が印象的でした。

 まず立合いで、栃煌山に両差しを許しませんでした。
 実力者栃煌山の最大の武器は「立合い両差しからの一気の寄り」ですが、これを封じたのです。御嶽海の左脇の固さが生きました。

 左四つからの攻防で、右をこじ入れて、栃煌山にバンザイをさせました。見事な攻め。

 そのまま正面に寄りたて、寄り切ったのです。
 「前に出る力」は見事。

 今場所の御嶽海の相撲の特徴でもある「相手力士は土俵の外へ、自らは土俵の中に居る」形での、腰を十分に落としての寄り切りでしたから、相当に余裕のある取り口でした。
 堂々たる相撲と言って良いのでしょう。

 5月場所は9勝に終わった御嶽海が、今場所連勝を続け、12日目に大関・高安を相手に惜しい星を落とした後も「連敗癖」は出ず、結局14日目を終えて13勝1敗で早々に優勝を決めたのです。
 いったい、5月から7月の間に御嶽海に何が有ったのかと言う感じがします。
 「大変身」です。

 体格もひと回り大きくなったように観えます。
 心持が体躯にも反映されている感じです。

 「3横綱+栃ノ心」が休場した7月場所は、「御嶽海の場所」になりました。

 9月場所が「大関取りの場所」になるのは間違いありませんし、今場所の相撲は既に大関レベルのものだと感じます。
 新大関・栃ノ心が、6日目の玉鷲との一番で故障し、7日目から休場することになりました。
 栃ノ心は右足親指の関節が外れたという症状ですので、休場も止むを得ないところです。

 とはいえ、横綱・稀勢の里が初日から、横綱・白鵬が4日目から、横綱・鶴竜が6日目から休場してしまっていた中で、7月場所を支えて行くと見られていた栃ノ心までが休場に追い込まれたことは、「大相撲」としては現状の「トップ4」が土俵に姿を見せないという異常事態であることは間違いないでしょう。

 いわゆる「八百長問題」により存亡の危機に追い込まれた大相撲でしたが、様々な対策を立案・実行することで、「ガチンコ相撲」が普通に披露されるようになり、その他の要因も相俟って、一気に人気が回復、現在の隆盛に結び付いているのだと思います。
 協会の歴代理事長が事あるごとに口にしてきた「土俵の充実」が図られてきたのです。

 一方で、こうした流れの中で「休場力士」が、各場所で増加してきたことも事実です。
 「ガチンコ相撲」になったので「休場」が増えたということではないと思いますが(そんなことだとすれば、かつてはどんな相撲が披露されていたのか、といことになってしまいます)、激しい相撲が故障増加に結び付いていることは事実なのでしょう。

 そして、「上位・下位にまんべんなく発生していた」休場が、7月場所では主に上位に、それも「トップ4」に集中してしまったのです。

 故障しないような体作りが叫ばれて久しいのですが、今後は、故障し難い取り口の研究・実行も必要なのでしょう。

 「トップ4」が姿を消した7月場所は、カド番大関2名、豪栄道と高安が牽引して行くことになります。
 加えて、関脇・御嶽海が7戦全勝でトップを走っています。
 現時点の7月場所の優勝候補筆頭です。
 そして、前頭6枚目の遠藤と千代大龍、同13枚目の朝乃山が1敗で続いています。

 「トップ4」の居ない7月場所の展開は、全く予断を許しません。
 7月8日から名古屋のドルフィンズアリーナで開催される、2018年7月場所の注目力士検討です。

 「大関」栃ノ心が初めて臨む本場所です。

 関脇・逸ノ城を始めとする上位陣も、とても充実しています。

 横綱・鶴竜の3場所連続優勝が成るか、などなど、見所満載の7月場所が始まるのです。

1. 横綱陣

 このところの充実ぶりを観れば、やはり鶴竜に注目します。

 白鵬にとっては、本場所で新しい取口を模索する日々でしょうし、休場する稀勢の里にとっては「復活」に向けての取組が続く日々なのでしょうか。

2. 大関陣

 こちらも、勢いに乗る栃ノ心に注目します。
 7月場所で優勝するようなら、一気に横綱昇進もあると、勝手に考えています。

 豪栄道と高安には、思い切って取ってほしいものです。「らしい相撲」を期待しています。

3. 関脇以下の力士

③関脇・逸ノ城

 5月場所では、4日目まで圧倒的な強さを見せた反面、5日目から4連敗と期待を裏切りました。
 幕ノ内上位で毎場所勝ち越すのですから、地力の高さは折り紙付きでしょう。
 初優勝への挑戦に期待します。

④関脇・御嶽海

 なかなか二桁勝てない、というのがファンの正直な気持ちでしょう。大関候補力士としては、まずは10勝を実現し、大関挑戦への足場となる場所にしてほしいものです。

⑤阿武咲

 故障から復活し、5月場所は十両優勝を飾りました。もともと三役クラスの実力者ですから、コンディションが整って来れば大暴れが期待できます。

⑥貴景勝

 「ゴタゴタ」の影響を受けた力士でしょう。相撲に「専心」できれば、この番付でも台風の目になる実力の持ち主だと思います。

⑦遠藤

 故障なく15日間を取り切ることが出来れば、十分に二桁勝利を挙げる地力は付いていると思います。

⑧旭大星

 強くなりました。今が伸び盛りなのではないでしょうか。ここで勝ち越すようなら、更なる飛躍が期待されます。

⑨琴恵光

 新入幕です。右四つから前に出る相撲で、旋風を巻き起こしていただきたいものです。

⑩明生

 新入幕です。左四つから前に出る相撲で、上位をかき回していただきたいと思います。

 7月場所は、以上の10力士に注目します。

 3月場所、5月場所に続いて、横綱・鶴竜と大関・栃ノ心を中心とした優勝争いが展開されるのでしょうが、とはいえ各力士の力量差が小さくなっている傾向は続いていますから、「誰が優勝してもおかしくない」場所であることも確かだと思います。
 何度か書いていることですが、大相撲には、十両で全勝優勝すると、大関以上に昇進するという法則というか定理が有ります。

 今回の栃ノ心関の大関昇進により、その法則が健在であることが証明されました。

 15日制になってからの十両全勝優勝と最終の番付は、以下の通りです。

① 1955年(昭和30年)3月場所 栃光→大関
② 1961年(昭和36年)11月場所 豊山→大関
③ 1963年(昭和38年)11月場所 北の富士→横綱
④ 2006年(平成18年)3月場所 把瑠都→大関
⑤ 2014年(平成26年)9月場所 栃ノ心→大関(現役)

 60年以上の期間に、僅か5力士しか「十両全勝優勝」を果たしていないことにも、少し驚きますが、その5力士がいずれも大関以上に成っているという事実は、とても凄いことだと思います。
 例外の無い、「確率100%」なのですから、まさに定理と呼んで良いレベルでしょう。

 年6場所で60年間としても計360場所になりますから、その詳細な内訳は把握していませんが、感覚的には「11勝4敗」が、十両優勝では最も多い星取りだと思います。
 次に多いのは「10勝5敗」と「12勝3敗」が同数位でしょう。

 「13勝2敗」や「14勝1敗」というのは、なかなか観ることが出来ない好成績だと思います。

 ましてや「15戦全勝」というのが、平成になって、30年間で2度しか達成されていないのですから、大記録と評価してよいのでしょう。

 十両には、「幕ノ内経験者」「三役経験者」といった強豪が居ることが多いのです。
 加えて、幕下から関取になったばかりの「伸び盛りの力士」も居ますから、そうした海千山千、多士済々の中で、「15日間1度も負けない」というのは、至難の技であろうことは、容易に想像できます。
  「負けない型を保持する元幕内・三役力士」を相手にしても勝つことが出来るという面では、「とても強い力士」でなければ十両全勝優勝は出来ないのは、自明の理でしょう。

 加えて感心させられるのは、「十両全勝優勝」を果たした力士は、故障・怪我にも強く、大関という高い番付に駆け上がっているという点です。

 「とても強い力士」に成るのも大変なことですが、「とても強くて丈夫な力士」になるのは、当然ながらもっと大変なことでしょう。

 「十両全勝優勝」という事象が、その後のキャリアにおける「丈夫な力士」であることをも担保しているとすれば、凄いことだと感じます。

 また、取口をも示している可能性があります。
 乱暴な取口では、怪我・故障をし易いでしょう。そうすると、「十両全勝優勝」を成し遂げる力士は、「丁寧な取口」「怪我をし難い取口」であると推定されるのです。
 取口をも想定させる記録というのは、滅多には存在しないであろうと感じます。

 栃ノ心の場合なら、膝を故障して幕下まで番付を下げながら、そこで丈夫な体作りと、故障しにくい取口を学び、開発したということになります。

 大相撲において、出世して行く過程で、その力士の最終番付を示す、という明確な記録として「十両全勝優勝」が存在します。

 本当に「深く」「不思議な」記録だと、何時も思うのです。
 5月場所は14日目を終えました。

 14日目の直接対決、鶴竜VS栃ノ心の取組を制した、横綱・鶴竜が1敗でトップに立ちました。
 12連勝と走った栃ノ心でしたが、13日目・14日目と連敗して2敗目となりました。

 今場所・大関取りの場所の栃ノ心は、初日から素晴らしい取り口を魅せてくれましたけれども、さすがに終盤に「疲れ」が出たように観えます。

 悲願に向けて白星を積み上げるしかなかった栃ノ心が、12日目の白鵬戦を完勝して、僅かながら「ホッとした」のは、「人間であれば」仕方のなかったことのように観えます。

 1月場所14勝(優勝)、3月場所10勝と積み上げてきた栃ノ心にとって、5月場所は10勝でも、3場所計34勝となりますから、大関昇進に向けて十分な記録になると予想されました。

 とはいえ、大関昇進の直前の場所が「10勝」というのも、やや少ない感じがしますし、最初の14勝が平幕における数字だという、「いちゃもん」に近い見方(優勝しているのですから、平幕だろうが三役だろうが、どちらでも良いことは明白です。1月場所で三役に居た、どの力士にも優勝する権利はあったのですから)もあるかもしれませんので、「11勝」なら確実であろうと思われました。3場所35勝というのは、過去の例を見ても、高いレベルの記録なのです。

 その「11勝」を、栃ノ心は「11連勝」で示現しました。凄いことです。

 再び、とはいえ、その11勝の内に「不戦勝がひとつある」という、「いちゃもんの上塗り」のような見方もあるかもしれません。不戦勝は、どの力士にも有り得ることですから、どちらかと言えば「相撲の神様のプレゼント」、その力士の持つ「星の強さ」と見るべきではないかと、私などは感じますが、とにかくそうした見方が存在する可能性はありますから、大関を確定するために「12勝」が求められる状況でもあったのかもしれません。(3場所36勝というのは、今後大関に挑戦する力士のことを考えると「高すぎるバー」であろうとは思いますが・・・)

 そして、その「12勝」を栃ノ心は、12連勝でやってのけたのです。それも、12連勝目は横綱・白鵬戦でした。

 12日目まで「遮二無二」走ってきた栃ノ心が、12連勝したところで「ふと我に帰り」、「成し遂げたかな」と感じたことも自然なことでしょうし、そのタイミングで一気に「疲労」が、特に「心の疲労」が出て来たとしても、誰も文句は言えないでしょう。

 千秋楽で何が起こるかは分かりません。
 横綱対決で鶴竜が敗れ、栃ノ心が勢に勝って、決定戦に持ち込まれ、栃ノ心が逆転優勝を飾る可能性は、当然ながら有るのです。

 とはいえ、大関昇進を目指す3場所で2度の幕内最高優勝と言うのは「凄過ぎ」という感じもします。
 「大関」という大相撲における最高位のひとつを目指す力士が、3場所目で求められる勝ち星数に向かって、序盤で1敗、中盤で1敗、終盤を何とか乗り切って必要な勝ち星数を実現することが、決して珍しいことでは無い中での「3場所で2度の優勝」というのは、考えられない程高いレベルの成績でしょう。
 それは「奇跡」に近いものだと感じます。

 千秋楽の結果は結果として、5月場所の栃ノ心関は14日間、立派な、本当に立派な相撲を魅せてくれました。
 その大活躍に、大きな拍手を送らせていただきます。
 
 5月場所の2日目、5月14日、東幕下39枚目の阿夢露(アムール)の引退が発表されました。
 34歳でした。

 2001年、18歳の時にロシアから来日し、2002年5月場所に初土俵、幕下と三段目を行ったり来たりしながら次第に力を付けました。
 その間、大相撲界は2011年3月場所の「八百長問題に伴う中止」といった激震を受けていましたから、阿夢露の相撲人生は「大相撲の浮沈と共に歩んだ」と言っても良さそうです。

 そして、2012年1月場所に西十両11枚目に昇進し、「関取」となりました。
 阿夢露の相撲人生において、最も嬉しい出来事では無かったかと思います。

 この場所、阿夢露は勝ち続け、11日目を終えて10勝1敗と十両優勝も狙える快進撃でした。
 しかし、好事魔多し。
 12日目の琴勇輝との取組で右膝前十字靱帯断裂という大怪我を負ってしまいました。
 
 この後、2012年3月場所から11月場所まで「5場所連続休場」し、2013年1月場所の番付は序二段まで下がりました。
 力士の夢である「関取」の地位に昇りながら、僅か12日間しか相撲を取ることが出来ず、怪我により序二段まで下がるというのは、肉体的にはもちろんのこと、精神的にもとても大きなダメージを受けたことでしょう。
 ここからの「心身両面の回復」というのは、至難の技に見えます。

 しかし、ここからが阿夢露の真骨頂でした。

 2013年1月場所を7戦全勝の序二段優勝とすると、三段目を2場所で通過し、幕下も4場所でクリアして、2014年3月場所には再び十両に昇進したのです。「関取」へのカムバックでした。

 そして、今度は十両でも4場所連続で勝ち越し、2014年11月場所には東前頭14枚目に昇進したのです。
新「入幕」です。

 この阿夢露の怪我からの回復と、「一直線の入幕」=序二段優勝から「11場所連続勝ち越し」という、素晴らしい成績はなかなか見られないものでしょう。
 まず、「しっかりと怪我を直し」、「治療の間のトレーニングを欠かさず」、「稽古における取組も可能な範囲で行うことにより相撲勘も維持」してきたからこその「大復活」であろうと感じます。

 この「大復活」の経験・ノウハウは、「阿夢露独自のもの」として、今後相撲界の後輩力士の為に活かしていただきたいものです。

 2014年11月の新入幕の場所は、久し振りに負け越して、1場所で十両に戻りましたが、直後の場所で勝ち越して2015年3月場所には再び東前頭16枚目に上がりました。再入幕です。

 そして、ここから2016年5月場所までの「幕内での8場所」が、力士・阿夢露のプライムタイムです。(最高位は2016年11月場所・東前頭5枚目)

 前みつを取り、頭を付けての粘り強い相撲は、館内を大いに沸かせました。
 191cmという長身を折り曲げて、低い姿勢で、大柄な力士、体重の重い力士と、丁々発止の取組を披露してくれたのです。
 「まるで日本出身力士の様な粘り強い相撲」であると評した友人が居ますが、私としては「日本出身力士の手本となるような取口」であろうと感じています。
 知人の大相撲「玄人筋」の評価も、とても高いのです。

 2016年5月場所で怪我をして負け越し、7月場所で十両に下がってからは、阿夢露はなかなか本領を発揮することが出来ませんでした。さすがの阿夢露も今度は復活できなかったのです。

 番付は幕下まで下がり、今般の引退表明となってしまいました。

 精神力ならば、まだまだ十分に取れるレベルにあるのでしょうが、体が付いてこなかった形であろうと思います。

 見事な「大復活」と素晴らしいプライムタイム、そして何より「大向うを唸らせる渋い相撲」を魅せていただきました。

 阿夢露関、お疲れ様でした。
 5月13日から東京両国国技館で開催される、大相撲2018年5月場所の注目力士検討です。

 横綱・稀勢の里の復活はなるのか、大関・高安の初優勝→綱取り、関脇・栃ノ心の活躍→大関取り、はなるのか、等々見所満載の5月場所が始まります。

 2017年から目立つ「世代交代」も、様々な力士が登場し、若手と言っても直ぐには特定できない程に「多彩」です。
 今場所も「予想が難しい場所」になりそうです。

1. 横綱陣
 先場所優勝を飾った鶴竜が中心となるのでしょうが、稀勢の里・白鵬の両横綱の復活も期待されるところです。

 とはいえ、やはりここは鶴竜の安定感に期待することとします。

 稀勢の里は、故障からの回復の過程で「自分の相撲を忘れてしまった」ような感じが有ります。もともと、相手力士の重心を「左右に微妙に動かしながら前に出る相撲」であったと思いますが、今は「正面からただ押している」形ですので、鳴門部屋伝統の高い重心が悪い方に出ているように観えます。左右の腕で相手力士を揺さぶり続ける取り口を思い出していただきたいものです。

2. 大関陣

 ここは、準優勝と呼んで良い活躍を続けている高安に期待します。
 3月場所千秋楽の横綱・鶴竜との取組は、迫力満点でした。序盤の取りこぼしに注意して、高いレベル(14勝以上)の初優勝を飾る様なら、一気に綱取りも夢ではないでしょう。

3. 関脇以下の力士

③関脇・逸ノ城

 このところの強さは本物でしょう。
 上がってきた頃より強くなっていると思います。後は「白星への執念」でしょうか。

④北勝富士

 1月場所、3月場所は精彩がありませんでした。どこか故障していたのではないでしょうか。本来の地力を発揮すれば、この番付ならば二桁勝利もあります。

⑤御嶽海

 3月場所は、少し疲れが観えました。長く三役を張っている疲れでしょうか。今場所は、心機一転、本来の取り口、スピード十分な相撲を魅せていただきたいものです。

⑥栃ノ心

 本来ならば、3番目に上げなければならない力士ですが、右腕の故障が報じられています。大切な場所を前にして残念なことですが、序盤を乗り切り、「勢いに乗って」痛みを吹き飛ばしてほしいものです。

⑦嘉風

 このところ、本来の自在相撲がやや影を潜めています。少し動きにキレが無いのです。とはいえ、体調が戻っていれば、この番付ならば存分の活躍が期待できます。

⑧貴景勝

 土俵外の騒動の影響を相当受けていたのではないでしょうか。ある程度すっきりしてきましたので、本来の押し相撲に専念できそうです。

⑨安美錦

 ファンとしては、外すわけには行きません。このところ「前に出る力」が足りませんけれども、そこは当代髄一の「技士」ですから、研究の上で克服してきていると期待します。

⑩旭大星

 「大横綱は北海道から」という大原則があったものですが(大鵬、北の湖、千代の富士はいずれも北海道出身です)、このところ北海道出身の幕の内力士はしばらく居ませんでした。そして、満を持して旭大星が登場したということになります。
 最強の相撲どころの代表として、思い切り取っていただきたいものです。

 5月場所は、以上の10力士に期待します。

 新三役の遠藤、前頭筆頭の魁聖、前頭2枚目の阿炎、3枚目の豊山、14枚目の豪風などなど、他にも期待したい力士が満載の5月場所なのです。
 千秋楽・結びの一番、横綱・鶴竜と大関・高安の取組は、取り直しとなりました。

 高安が土俵に落ちるのと、鶴竜の足が土俵外に出るのが同時、というのが勝負審判の協議の結果でした。この判断は、テレビでVTRを観ていた人達にとっても妥当なものと感じられたでしょう。
 鶴竜の足が俵を踏み越えて、土俵外の砂に触れていたというのは、取組の最中には分かり難いものでしたから、それを見つけた審判の眼は、さすがと言う感じがします。

 ただし、その「物言い」のタイミングは遅すぎました。
 
 行司が懸賞金を左の脇に抱え、まさに勝ち名乗りを挙げようという瞬間まで、物言いは行われなかったのです。
 勝負審判は、相当前から鶴竜の足の動きに付いて気が付いていた筈ですから、もっと早く物言いを付けるべきだったのです。

 何故躊躇していた、物言いが遅くなったのでしょうか。

 今場所の(あるいは今場所に限らず最近の)「物言いは遅い」ものが多いのですが、この取組の物言いも「遅すぎる感じ」でした。
 時には、勝ち名乗りを挙げている最中に「物言い」というシーンさえ見られます。
 勝ち名乗りが始まってしまえば、「時間切れ」の筈なのですが・・・。

 勝敗に疑問があれば直ぐに物言いを付けるべきで、いったいこの「十数秒」の間、勝負審判は何をしているのだろうかと感じてしまいます。まさか「他の誰かが物言いを付けるのを待っていた」わけではないとは思いますが・・・。

 何しろ、5名の勝負審判は、各々担当する持ち場があるので、「自分以外の勝負審判が気付かない点」、つまり「自分だけしか分からないポイント」を見つけ出すのが仕事なのですから、「他の審判の物言いを待った」ところで、出てくる可能性は低いのです。

 また、「物言いを付けると、軍配が上がった力士に悪い・申し訳ない、当該力士の師匠に悪い」といった感覚があるのでしょうか。そんなことは無いとは思いますが、そんな感覚を持っている人は、勝負審判と成る資格が無いことは明らかです。

 微妙な勝負において、取組後、軍配は自分に上がったものの、物言いが付くかもしれないと感じていた力士が、「付かなかった」のを見てホッとしてしまえば、「遅い」物言いの為に取り直しになった時、「取組に臨む自らの気持ちを構築する」ことが難しくなってしまうかもしれません。物言いが遅いことが、勝敗に大きな影響を与える怖れも有るのでしょう。

 ひとつの取組の結果によって、力士の人生が左右されることは、珍しいことでは無いでしょう。大袈裟に言えば、力士は「人生を賭けて」土俵に上がっているのです。

 勝負審判も自らの判断を信じて、あるいは少しでも疑問を感じたら、直ぐに「物言い」を付けていただきたいものだと思います。
 
 千秋楽結びの一番、鶴竜と高安の取組は、横綱と大関の対戦、3月場所を締めくくるに相応しい「大相撲」となりました。

 立ち合いから、高安が猛然と攻めます。ぐいぐいと前に出て横綱を追い込んだのです。

 ここで鶴竜は、今場所を支えてきた技、「黄金の引き足」とでも呼ぶべき体制を作りました。俵沿いに回り込み、高安をはたき込みます。
 鶴竜の足が残っていた状況で、高安は土俵に倒れ込んだように観えました。
 軍配は鶴竜に上がりました。

 14日目に優勝を決めた相撲も「はたき込み」でものにしていた横綱の「3月場所の必殺技」がまたも炸裂したかに観えました。

 行事が「分厚い祝儀袋」を抱えて、まさに勝ち名乗りを挙げようとした時、「物言い」がかかりました。

 さて、随分と遅い「物言い」から、長い協議の後、この取組は「取り直し」となりました。
 鶴竜の足が俵の外の砂に触れるのと、高安が落ちるのが、同体だったのです。

 そして「取り直し」の一番。
 立ち合いから高安が猛然と攻めました。これは最初の取組と同じでした。
 高安の押す勢いは全く衰えることなく、そのまま押し出しました。スピード十分な高安改心の一番でした。

 この時、NHK大相撲放送の解説者・北の富士氏が「怒ったね」と呟きました。

 高安が「怒った」ということでしょう。

 「絶対に勝つ」という気迫で、この取組に臨んだ大関の「思い」が形となった一番だったのでしょう。
 
 高安は、これで2場所連続12勝3敗となりました。

 5月場所で優勝することが出来れば、一気に「綱取り」も夢では無いと思います。
 千秋楽・三役揃い踏みの後、素晴らしい取組が観られました。

 栃ノ心と逸ノ城の三役対決でした。

 「がっぷり四つ」となったら、滅多なことでは負けない両力士の相撲は、文字通り「がっぷり四つ」の右四つとなったのです。
 どちらも、この体制になれば「負けない」と主張しているような流れでした。

 まず、逸ノ城が栃ノ心の上手を切りに行きました。そして一度は切れました。
 しかし栃ノ心は、直ぐに上手を再び取りました。

 強烈な引き付け合いが続きました。他の力士では「ひとたまりもない」様なパワー満点の引き付け合いですが、両力士一歩も譲りません。

 再び逸ノ城が仕掛けます。「つり」に行ったのです。
 土俵の真ん中で「つり」に行くというのも凄いものですが、その相手が「当代随一のつりの名手」栃ノ心なのですから、これには驚かされました。栃ノ心も驚いたのではないでしょうか。
 栃ノ心の両足が一瞬浮きかけましたが、さすがに抑え込みました。

 ここまでは、逸ノ城の積極的な仕掛けが印象的でした。この「積極性」が、このところの逸ノ城復活の鍵なのでしょう。

 逸ノ城が攻め、栃ノ心が守るという展開が続きましたが、ついに栃ノ心が攻めに出ました。左上手からの投げで逸ノ城を揺さぶり、そのまま寄り立てます。

 そして寄り切りました。

 やはり、四つ相撲となれば、栃ノ心に「一日の長」が有った訳ですが、その栃ノ心とて、がっぷり四つの形のままで寄り切った訳ではありませんから、相当に「互角の四つ」であったことになります。

 見事な「大相撲」でした。
 「10勝目を賭けた」三役同士の一番は栃ノ心が勝ち切りました。
 栃ノ心は5月場所に「大関昇進」を賭けることになるのでしょう。

 9勝6敗に終わったとはいえ、逸ノ城の強さも際立ちました。
 落ち着いて、216㎏の体重を活かした相撲を展開すれば、容易なことでは負けないことを証明したのです。

 「栃ノ心VS逸ノ城」は、大相撲の看板取組になりました。
 3月場所は、横綱・鶴竜が13勝2敗で優勝しました。
 2017年の苦闘を乗り越えての見事な優勝でした。

 そして、「準優勝」と呼んでも良い12勝3敗の力士が2名いました。
 大関・高安と前頭六枚目・魁聖でした。

 一時は「二場所連続の平幕優勝か」とも期待された魁聖の、15日間を観て行きましょう。

 初日の北勝富士との対戦は力強いものでした。体調の良さが感じられたのです。
 とはいえ、自己最多勝ち星を挙げる場所に成ろうとは、思いもよりませんでした。

 2日目の阿炎から9日目の竜電までの8日間は、一言で言えば「とても安定した取口」でした。
 故障のせいか、これまではどうしても取組において「腰の弱さ」が出がちだった魁聖なのですけれども、今場所は「どっしり」と安定していました。腰が安定していれば、もともとの大きな体と、意外に?器用な取口が生きるのです。

 「9連勝」で10日目の逸ノ城戦を迎えました。横綱・鶴竜との並走でした。

 この逸ノ城との一番で魁聖は今場所の初黒星を喫しました。
 「がっぷり四つ」から力負けした形でしたが、今場所の逸ノ城とがっぷり四つになって勝ち切ることが出来る力士は、全体でも「数えるほどしか」いない(相撲関係者の中には栃ノ心しか居ないという人もいます)ので、これは魁聖が取口を間違えたというところなのでしょう。
 ひょっとすると、「がっぷり四つでも勝負になる」と魁聖が考えていたのかもしれません。それ程に好調だったのです。

 12日目の遠藤との一番は、「上手く取られ」ました。まさに「遠藤の技能」が勝ったのです。
 残念ながら2敗目を喫した魁聖でしたが、気持は折れていなかったというか、元気いっぱいでした。
 13日目の横綱戦について聞かれた時「とても楽しみです」と応えています。

 幕ノ内最高優勝に大きな影響を与える13日目結びの一番は、横綱・鶴竜が貫録を示しました。「動きの速さ」で勝ったのです。今場所こそはと意気込んだ魁聖でしたが、力及ばずでした。

 番付と比べて上位の力士との対戦はこれで終了しましたが、14日目・千秋楽と番付に見合った相手との相撲では、「3月場所での強さ」を如何なく発揮しています。
 特に千秋楽の「12勝を賭けた」勢との取組は、両者の持ち味が出た、素晴らしい相撲でした。魁聖のこの場所の「安定感」が発揮されたのです。

 魁聖は「敢闘賞」を受賞しました。
 文句無しの受賞であったと思います。

 コンディションさえ整えば三役の力があることを、証明して見せたのです。

 今後の活躍をも予感させる、素晴らしい15日間でした。
 3月11日に開幕する、2018年の大相撲春場所の注目力士検討です。

 1月場所では、平幕の栃ノ心が優勝しましたが、現在の大相撲は三役から幕ノ内上位までの力士の力の差がとても小さくなっていますので、3月場所も「誰が優勝するか分からない」状況が続くと思います。
 1日たりとも眼が離せない場所なのです。

1. 横綱陣

 このところ、横綱陣にとっては苦しい場所が続いていますが、3月場所も早々に稀勢の里の休場が報じられました。

 こうなると、鶴竜と白鵬の2横綱に期待することになります。

 鶴竜は、1月場所の10日目までと11日目以降は「別人」のような相撲でした。
 10日目までの相撲は、特に9日目までの相撲は「キャリア最強」という印象でした。
 ところが、10日目のややバタバタした相撲から、11日目以降は「前に出る圧力」が一気に衰えてしまったのです。
 「休場明け、久々の本場所の疲労蓄積」が原因であれば、3月場所は期待できることになります。

 白鵬は、故障の回復度合いがポイントとなるのでしょうが、これはなかなか報じられていません。

 難しいところですが、3月場所の横綱陣では、鶴竜に期待したいと思います。

2. 大関陣

 高安に期待します。

 1月場所8日目からの8連勝は、「終盤に弱い」という風評を一蹴するものでした。
 そろそろ「大関としての土俵」にも慣れてきたと感じます。
 初優勝に向けての15日間に期待したいと思います。

3. 関脇以下の力士

③関脇・御嶽海

 1月場所は、7連勝と走りながら、8日目から1勝7敗と、こちらも「別人のような」内容でした。とはいえ、これで5場所連続の関脇在位ですから地力は十分でしょう。
 こちらも初優勝に向けて、頑張っていただきたいものです。

④小結・逸ノ城

 2017年11月場所、2018年1月場所と2場所連続二桁勝利、特に1月場所は前頭筆頭での10勝でした。「怪物」が復活しつつあるのは間違いないでしょう。こちらも優勝候補の一角だと思います。

⑤北勝富士

 1月場所は好スタートを切ったものの、後半は自分の相撲が全く取れませんでした。まだまだ「自分の相撲」が固まっていないというか、時々自分の相撲を忘れてしまうような感じがします。素早い動きで前に出ながら勝機を見出す相撲を、思い出していただければ、二桁勝利も可能でしょう。

⑥関脇・栃ノ心

 1月場所の様な相撲、「徹底して前に圧力を掛け続ける相撲」が取れれば、3月場所も好成績が期待できます。二桁勝利を挙げて、大関への足掛かりとして欲しいものです。
 もちろん、連続優勝と成れば、一気に大関昇進です。

⑦朝乃山

 1月場所は、7日目から13日までの1勝6敗が響きました。この間は、不思議なほど体に力が入らない様子でしたが、14日目と千秋楽は復活した印象です。力はありますから、3月場所では自分の相撲を取り切ってほしいと思います。

⑧碧山

 体調が戻っていれば、前頭17枚目の力士ではありません。もりもりと押す相撲に期待します。

⑨阿武咲

 初めて「壁」にぶち当たった1月場所でした。得るところが多かったことでしょう。この力士のスピードと思い切りの良さは魅力です。3月場所の反攻が楽しみです。

⑩遠藤

 前頭筆頭の番付で、遠藤の相撲がどこまで通用するのかは、とても興味深いところです。
 下半身の怪我からようやく回復した感が有りますから、初の三役に向けての活躍が期待されます。

 3月場所は、以上の10力士に注目します。

 世代交代真っ只中の大相撲ですが、幕ノ内上位の充実ぶり、布陣は眼を見張るものが有ります。
 とても面白い場所になることでしょう。
 1月場所は栃ノ心の優勝で幕を閉じましたが、優勝力士栃ノ心の髷を結う床山さんが話題になっています。
 1月28日の朝日新聞デジタルの記事「定年前・・・優勝力士の髪結う夢かなった 春日野部屋の床末」(竹園隆浩氏著)をとても楽しく読ませていただきました。

 現在63歳の床末(とこまつ)は、あと1年半で定年を迎えるのですが、これまで優勝力士の髪を結ったことが無かった、正確には、優勝力士が表彰式に出る直前の髪結いをしたことがなかったということになるのでしょうが、その床末が、1月場所の栃ノ心の優勝、名門・春日野部屋にして46年ぶりの優勝により、その機会を得たのです。

 優勝を決め、笑顔いっぱいの関取が、東の支度部屋の最奥、普段は横綱が座る場所に陣取り、マスコミのインタビューに応じながら、表彰式への身支度をする時間帯、床山は渾身の技を駆使して「大銀杏」を整えるわけですが、この「時間」は力士にとっては勿論として、床山にとっても「晴れ舞台」なのです。多くの記者に囲まれながらの髪結いは、何と華やかで、晴れがましいことでしょう。

 とはいえ、床山・床末にとっては、これが初めての場でした。

 床末は、床山の中で最高位の「特等床山」ですが、大相撲界の特徴としての「部屋付」ですから、春日野部屋の力士が優勝しない限り、このチャンスはありません。
 床山の世界における地位がどんなに高くても、所属部屋から優勝力士が出ない限りは、この晴れ舞台には立てないのです。

 もうひとりの「特等床山」(そもそも現在の大相撲界に2人しか居ないというのが凄い)である床蜂(とこはち、63歳)は、なんと宮城野部屋付ですので、横綱・白鵬の髪結いを担当し、40回の優勝における表彰式前の髪結いを経験してきました。
 同じ「特等床山」でも、床末とは大違い。

 ほとんど諦めていたかもしれない「晴れ舞台」が、定年まで1年半というタイミングで床末に訪れるのですから、人生と言うのは摩訶不思議なものです。

 この記事には、14日目、初優勝を決めた後の栃ノ心の髪を結う床末の写真が掲載されていますが、千秋楽の表彰式、天皇賜杯を拝戴する前の髪結いの時の、床末の表情をゆっくりと見てみたかったものです。

 もちろん「髪結い」が仕事、それも最高峰の仕事人ですから、真剣そのものの様子でしょうが、その真剣な表情の中に、何とも言えない「喜び」が、「満足感」が、「誇り」が、滲んでいたのでしょう。
[14日目・東京両国国技館]
栃ノ心(寄り切り)松鳳山

 13日目まで1敗でトップに立っていた前頭3枚目の栃ノ心が、松鳳山を寄り切りで破り、13勝1敗として、千秋楽を待たずに幕ノ内最高優勝を決めました。
 初土俵から12年、30歳3か月での初優勝でした。

 今場所の栃ノ心の相撲は、本当に素晴らしいものでした。
 どっしりと腰が安定し、前に出る流れの中での積極的な攻めが続きました。
 これまで時折見られた、「がっぷり四つからの力勝負」という取組は、少なかったと思います。
 取り口に「良い流れ」が有ったのです。

 この取組でも、松鳳山との激しい突き合いから、松鳳山のタイミングの良いいなしが出ました。栃ノ心もバランスを崩しかけましたが、体勢を立て直して左下手を入れて寄り立てました。右の上手を取ることは、最期までできませんでしたが、前に出る圧力が十分だったのです。
 今場所を象徴するような取り口であったと思います。

 今場所の相撲内容を観る限り、「1月場所の幕ノ内力士の中で最も強い」ことは明らかで、優勝も自然なことだったと感じます。

 膝の大怪我を負い、幕下の下位に下がっていた頃、手術を前にした栃ノ心に会った方から話を聞きました。
 手術が決まり、同じように膝を怪我していた力士に対して「痛くない?」と聞いていたそうです。優しい人柄が滲んでいます。

 もともと場所後には、ジョージアで出産した奥様と赤ちゃんに会いに行くと報じられていましたので、何にも勝る、嬉しい報告が出来るのでしょう。

 本ブログでは何度も書いていますが、「十両で全勝優勝した力士は大関以上に昇進する」という大原則が有るのです。

 栃ノ心関には、この勢いで大関に駆け上がっていただきたいと思います。
 大相撲2018の1月場所は、場所前から危惧されていた横綱の休場、白鵬と稀勢の里が相次いで休場するという、残念な事態となりましたが、一方で番付の上位から下位まで全勝の力士が居るという、楽しみな展開でもあります。

 まずは前頭15枚目の朝乃山。
 初日から体が動いています。もともと力の有る力士ですから、体調さえ良ければ、この番付なら強いだろうとは予想していましたが、予想以上の快進撃。
 白星を積み重ねていただき、二桁、あるいは平幕優勝も目指してほしいものです。

 続いては前頭3枚目の栃ノ心。
 今場所は脚の具合も良く、持てる力を存分に発揮しています。「十両を全勝優勝した力士は大関以上まで昇進する」という大原則?(これまで例外無しの法則)がありますが、栃ノ心は「十両全勝優勝力士」のひとりなのです。これ位の成績を残すのは当然という意見もあるでしょう。
 大関昇進を目指して、その足場となる場所にして欲しいものです。

 続いては関脇御嶽海。
 今や大相撲の看板力士のひとりとなった感が有りますが、今場所も持ち味である「本場所での強さ」を如何なく発揮しています。幕ノ内で、2017年の6場所すべてにおいて勝ち越した唯一の力士ですから、その安定感は、現在の角界NO.1でもあります。
 2横綱が休場した場所ですから、優勝候補の一角となることでしょう。

 そして横綱鶴竜。
 「進退のかかる場所」で、さすがの相撲を展開しています。今場所は押されてもなかなか後退せず、悪い癖である「はたき」も出ていませんから、まずは好調と言うところでしょう。このまま落ち着いた取り口を継続できれば、優勝の本命です。

 7日目には、早くも「全勝対決」が組まれました。結びの一番、鶴竜と栃ノ心です。
 これでひとりは1敗になるのですけれども、いずれにしてもこの4力士が2018年1月場所の主役であることは間違いないでしょう。
 1月14日、両国国技館で開幕する2018年1月場所における注目力士の検討です。

 昨年末来、いろいろな事が起こり、落ち着かない大相撲界ですが、こういう時こそ本場所での充実した土俵を観たいものです。

 さて恒例の検討です。

1. 横綱陣

 「騒動」の渦中にある横綱陣ですので、今回は選定しないことにします。

 3名の横綱には、「横綱らしい相撲」を披露していただきたいと思います。

2. 大関陣

 このところ「影の薄い」大関陣ですが、横綱陣が土俵の地固めを行うのが難しい場所でしょうから、大関陣の奮起が期待されるのは自然な流れです。

 1月場所は、豪栄道、高安の両大関の活躍に期待します。

 豪栄道には持ち前のスピード溢れる相撲を、高安には勝ち負けにあまり拘らず、持ち味の「モリモリ相撲」に集中していただきたいと思います。

3. 関脇以下の力士

① 関脇・御嶽海
 今や大相撲の看板力士のひとりとなりました。本場所に強いという特徴を活かして、展開次第では優勝争いに参加してほしいものです。

② 小結・阿武咲
 「取り口を憶えられた」感のあった先場所でしたが、阿武咲もこれで三役の相撲を把握できたと思います。スピードとパワーを併せ持った相撲で、この壁を突破してくれることでしょう。

③ 朝乃山
 前頭16枚目まで番付を落としました。本来の実力を持ってすれば二桁勝利も可能だと思います。

④ 遠藤
 9月場所、11月場所と本来の相撲が戻ってきています。故障から、ようやく回復してきたのでしょう。相撲の上手さでは当代屈指の力士ですので、上位との対戦が予想される1月場所でも素晴らしい相撲を魅せてくれることでしょう。

⑤ 北勝富士
 先場所は11勝4敗で技能賞を受賞しました。前頭筆頭に上がった今場所も、横綱、大関陣を相手にした大活躍が期待できます。

⑥ 阿炎
 新入幕です。前に出る力が加わった「牛若丸相撲」に期待します。

⑦ 逸ノ城
 次第にかつての相撲が観られるようになってきました。大関取りに向けての活躍が期待されるところです。

⑧ 安美錦
 先場所は、前に出る形が出ない中、なんとか勝ち越しました。久し振りの幕ノ内での相撲で、何かを思い出してくれたことでしょう。番付が上がる程に持ち味が生きる相撲に期待します。

 様々な面で「変革の時期」に来ている大相撲界ですが、幕ノ内力士の「世代交代の時期」でもあろうと感じます。

 1月場所も数多くの力士が新入幕、再入幕を果たしています。

 三役、幕ノ内上位、それぞれの番付けにおいて、「次代を担う力士」の登場が待たれるところです。
 大相撲の12月冬巡業、九州・沖縄巡業が実施されています。

 連日の大盛況です。

 開場前の入口には、ファンの長蛇の列。
 どの顔にも、大相撲観戦を楽しみにしている「笑顔」が溢れています。

 テレビのインタビューには「お相撲さんを観るのが楽しみ」というコメントが多いように感じます。

 やはり、「大きな相撲取りの姿そのもの」が、ファンにとっての最大のご褒美なのでしょう。
 スポーツにおける「大きいということの非日常性」の偉大さを再び感じます。

 「お相撲さん」からサインを貰ったり、握手をしたり、巡業における力士とファンの距離はとても近いのです。
 子供たちが、力士を見、力士に触れ、抱きかかえてもらい、歓声を上げているのです。

 当然のことながら、地方のファンが大相撲や力士を生で観る機会は非常に少ないのですから、巡業が数年に一度の、ひょっとすると一生に一度の、滅多に無いチャンスということになります。

 老若男女を問わず、ファンの皆さんの屈託のない笑顔は、それ自体が素晴らしい風景だと思いますし、現在、他のあらゆるジャンルを通じても、世代を問わずにこれだけの楽しい時間、エンターティンメントを提供できるコンテンツは、そう多くは無いでしょう。

 大相撲の力は、想像以上に大きいものであることを示す情景ですし、長い歴史の礎となっている「大相撲の魅力・本質」なのかもしれません。

 この大らかさ、明るさを見ると、どこぞで行われている、訳の分からない騒動の、矮小さ、醜さを改めて感じます。
 千秋楽の相撲放送(NHK BS-1)が始まって直ぐに、幕下の明瀬山と豊ノ島の一番となりました。

 明瀬山も幕ノ内経験者ですが、ご存じの通り豊ノ島は三役経験者というか「三役の常連」でした。
 その豊ノ島が、大怪我(アキレス腱断裂)の為に番付を落としていて、取組を眼にすることも少なくなっていました。
 
 そういう意味では、「豊ノ島がテレビ放送の時間に帰ってきた」とも言えるのでしょう。

 明瀬山との、4勝2敗同士の一番は、立ち合いからの鬩ぎ合いから、豊ノ島が力強く前に出ました。
 元気いっぱいの取り口です。

 相当回復しているように観えました。

 豊ノ島は34歳、まだまだ老け込むには早すぎます。
 2018年の大活躍が期待されます。
 11月26日に千秋楽を迎えた九州場所ですが、7勝7敗で臨んだ安美錦が千代翔馬を上手出し投げで破り、勝ち越しを決めました。

 投げが決まった瞬間、安美錦は「よしっ」と呟いたように観えました。

 39歳の再入幕力士の勝ち越しとしてインタビュールームに入った安美錦は、涙また涙。

 いつもの飄々とした、「とぼけた」様子は微塵も無く、怪我からの復活、相撲への思いを切々と語りました。敢闘賞のことも取組の前には知らなかったと。
 素晴らしいインタビューでした。

 もっともっと稽古をしなければと語る安美錦には、「引退」の欠片も感じられませんでした。
 確かに、今場所は体こそ良く動いていましたが、引いたり叩いたりする相撲が多く、本来の「前に出る力を利した巧みな相撲」はなかなか見られなかったのです。

 「明日」を見つめ、真摯に取り組む安美関の2018年の相撲が、とても楽しみです。
 11月場所も15日間連続で満員御礼となりました。

 これで、2017年の大相撲は1月場所から11月場所まで6場所・90日間連続で満員御礼となったのです。
 これは平成8年以来の優秀な興行成績であり、大相撲人気はひとつのピークを迎えていることになります。

 八百長問題や数々の不祥事のために「地に落ちた」人気でしたが、「雌伏」の時期は、大関・魁皇、高見盛、遠藤といった人気力士の奮闘もあって何とか乗り切り、2015年頃から大相撲人気は回復に向かいました。
 そして、2017年に再びピークを迎えたことになります。

 現在では、本場所のチケットを入手することも極めて困難です。

 一方で、2017年は休場力士が増えました。
 11月場所も幕ノ内だけで9名に上ります。
 単純に考えれば、幕ノ内の取組が4~5番減っていることになります。

 最高峰である幕ノ内の取組、大相撲最高の見せ場が4~5番減っているというのは、ファンに対しての「エンターテインメント量が激減している」ことに他なりません。

 上質なコンテンツの減少が、当該プロスポーツというか、音楽でも絵画でも文学でも同じだと思いますが、ファンの人々の支持により成立している全ての分野において、「衰退」に繋がっていくことは道理というか、自然なことでしょう。

 ガチンコという言葉もありますが、真剣な取組が土俵上で繰り広げられていることはもちろんですが、だからと言って怪我・故障が従前より増加するというのでは、当該スポーツは、別の形で消滅してしまいます。

 怪我・故障に強い体躯を創り上げること、そういう稽古・トレーニングを実施して行くことは当然として、ガチンコであっても「怪我をし難い取り口」を身に付けて行くことも大事なことなのでしょう。
 協会、各部屋、各親方、各力士におかれては「怪我をし難い取り口」の研究・実行に注力していただきたいと思います。

 最後に「横綱の問題」です。

 ある横綱には、おかしな「待った」がありました。
 行司や審判の判定に従わないかのような様子に観えました。全力士の範となるべき横綱としては、あってはならないことでしょうし、少なくとも「土俵において見たことも無い行動」でした。

 別の横綱は暴力沙汰で注目されています。
 こちらは「何が本当の事か」全く分からない状況ですが、少なくとも大相撲界にとってプラスの事象ではないでしょう。

 大相撲は、2017年6場所90日連続満員御礼という、記録的な人気を博しています。

 こういう時こそ、奢ることなく頭を垂れるのが、日本文化でしょう。

 我が国のプロスポーツは、日本文化の上に成り立っているというのは、楽観的に過ぎる見方なのでしょうか。
 アキレス腱断裂という大怪我から復帰し、今場所幕ノ内・西前頭13枚目に返り咲いた安美錦が元気です。
 3日目を終えて3連勝。相撲内容も、当代屈指の「技士」の本領を発揮し、動きの良さが目立ちます。

 「39歳0ヵ月での幕ノ内復帰」という、昭和以降の最年長記録を樹立したことが、今場所前の話題となり、称賛の的ともなりましたが、初日の体を観た時、その充実ぶりは明らかでした。

 肌艶も良く、体全体のバランスも良いのです。
 何か、故障前より充実しているようにさえ感じられます。

 ご本人は三役への復帰、あるいは大関取りを標榜しているのでしょうが、この充実ぶりを観ると本当に実現できるのではないかとさえ、期待してしまうのです。

 安美錦関、頑張れ!
 西十両5枚目の阿炎(あび)が元気です。
 3日目を終わって3連勝、相撲内容もとても良いのです。

 幕下の頃から「自在の相撲」で注目されていましたが、さすがに立ち合いで強く当たることもせず、相手力士を一気に押し込むこともしないで、すらりとした体躯で、相手の取口に合わせて「ひらりひらり」と動き回りながら、押したり突いたりして勝機を見出していく相撲では、いずれ「壁」にぶち当たるだろうと感じていました。

 その「壁」が、番付のどの辺りかによって、阿炎の地力が分かるとも思いました。

 2016年から17年にかけて、「壁」の位置が分かりました。
 阿炎は、幕下と十両を往復するようになったのです。
 この辺りが「壁」でした。

 「ひらりひらり」の相撲で、関取まで上がるのですから、阿炎の地力は相当に高いことが分かります。
 序二段優勝、三段目優勝、幕下優勝と重ねてきたキャリアは本物なのです。

 さて次の段階として、阿炎が「自らの相撲を改革する」ことが出来るかどうかが注目でした。いかに高い能力を保有していても、「牛若丸相撲」には限界があります。
 一方で、阿炎が自らの取り口に「本格派の相撲」の要素を取り入れることが出来れば、一気に本格化し、番付もどんどん上がるだろうと考えていたのです。

 「改革」は起こりました。
 2017年に入って、「前に出る相撲」を身に付け始めたのです。
 
 こうなると、もともとの運動神経の良さが一層活きてきます。
 
 2017年9月場所で、阿炎関は優勝決定戦の末、十両優勝を成し遂げました。
 そして西の5枚目に番付を上げたのです。

 こういう相撲が取れるようになった以上は、もう「十両と幕下の往復生活」には戻らないでしょう。
 「前に出る阿炎」は、一気に幕の内に上がってくると思います。

 阿炎 政虎(あび まさとら)、23歳。身長187cm、体重132kg、埼玉県越谷市出身、錣山部屋所属。元寺尾・錣山親方の指導が実りつつあるのです。

 大相撲の次代を担う力士への成長が期待されます。
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