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 炎鵬は、2017年9月場所の三段目で優勝しました。7戦全勝でした。

 これで炎鵬は、初土俵から序の口→序二段→三段目と「三場所連続優勝」を成し遂げたのです。

 三場所とも7戦全勝でしたから、炎鵬は「初土俵以来不敗の21連勝」なのです。優勝決定戦の勝利を加えれば、連勝はより増えます。

 将棋の藤井四段ではありませんが、「デビューしてからの連勝記録」を伸ばしているのです。

 デビューが遅かったことも有り、既に22歳の炎鵬は、身長167cm・体重93㎏と小兵力士、それも特に小さな力士です。
 しかし、その取り口はスピード十分で、力強さに満ちています。

 11月場所には幕下に昇進するでしょうから、これからはテレビ放送に登場する機会も増えることでしょう。
 
 「今牛若丸」としての炎鵬の今後の活躍から、眼が離せません。
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 3横綱・2大関が休場し、史上稀に見る「大混戦」となった9月場所ですが、三賞受賞力士にも、9月場所の「輪郭」が良く現れています。

 殊勲賞には、貴景勝が選ばれました。
 自己最高位の西前頭5枚目で、場所に臨んだ貴景勝ですが、3連勝と絶好のスタートを切りました。そして10日目に日馬富士を破り、13日目に豪栄道に土を付けたのです。

 序盤の3連敗から立ち直りを見せていた横綱・日馬富士にとっては、貴景勝に敗れての4敗目は、優勝の可能性をほとんど0にする痛い黒星であったと思いますし、ほぼ優勝を手にしていた大関・豪栄道にとって、3敗目となる終盤での貴景勝戦の敗戦は、その勢いを一気に減ずるものとなったのです。
 貴景勝のこの2勝は、9月場所の賜杯の行方に大きな影響を及ぼしたのです。

 敢闘賞の阿武咲の前半の活躍は見事でした。
 初日からの5連勝、中日を終えての7勝1敗と、優勝争いの先頭を走ったのです。
 初日からの3横綱の休場、前半の2大関の休場と、残念なニュースが続いた、中日までの9月場所を支える大活躍でした。
 特に、星数もそうでしたが、その元気一杯、スピード十分な取り口も見事でした。

 終わってみれば10勝5敗、新入幕以来3場所連続の二桁勝利と言う、史上初の快挙となりました。
 今後の角界を背負う逸材であることも、間違いありません。

 新入幕で敢闘賞を受賞した朝乃山の活躍も素晴らしいものでした。
 3勝3敗と勝ち負けを繰り返していた朝乃山でしたが、7日目からの5連勝で勢いに乗り、この一番を勝てば二桁10勝となって敢闘賞という、千秋楽の千代大龍戦も堂々と押し出しました。東16枚目の幕尻の力士が、西3枚目の力士に完勝したのです。
 「この一番」に強いというのは、今後の力士キャリアにおいても、大きな武器です。

 技能賞の嘉風の活躍は、これはもう驚異的でした。
 4連敗のスタートで、どこか悪いのではないかと感じましたが、5日目から8連勝。
 そして敗れた相撲でも、その内容は攻防のある「大相撲」が多く、場内を大いに沸かせました。
 35歳にして、進化を続ける大力士なのです。

 3名の若手、それもいずれも入幕して1年未満という「生粋の若手」(変な言葉で恐縮です)は、大相撲の未来を支えて行く存在です。
 1名のベテラン、「土俵の充実」という大相撲の不滅の命題を体現してきた、そして現在も体現し続けている力士であり、まさに若手力士の範となる存在です。

 2017年9月場所の主役は、優勝した日馬富士ですが、この4名の三賞受賞力士も間違いなく主役だったのです。
 「大波乱」の9月場所でしたが、千秋楽もある意味では「思いもよらぬ展開」でした。

 千秋楽結びの一番、日馬富士VS豪栄道は、日馬富士が強さを魅せました。

 低く鋭い立合いを見せた日馬富士が、右前まわしを素早く取り、豪栄道の寄りにびくともせずに左前まわしも取りました。
 これで豪栄道の上体が浮き上がりましたので、日馬富士は寄り立てます。向う正面に寄り、左前まわしを離しながら寄りきったのです。

 圧倒的な内容でした。豪栄道に何もさせない上に、体を密着させての相撲でしたから、土俵際の紛れもありません。
 日馬富士にとっても「最強の相撲内容」であったと思います。

 優勝決定戦を前にして、東西の支度部屋の様子は対照的でした。

 東の日馬富士は、大銀杏を直した後、一門の十両の照強を立たせて立合いの練習をしています。
 何度もぶつかっていました。汗をかくまでやっているという感じです。

 西の豪栄道は、どっしりと腰かけたまま。取り口を考えている様子でしょうか。

 決定戦はあっという間の勝負でした。

 日馬富士が、再び低く鋭い立合いを魅せて豪栄道のぶちかましを止めると、豪栄道がはたきを見せました。その豪栄道の動きにぴったりと体を合わせて、日馬富士が寄り立て、そのまま寄り切りました。

 この相撲も日馬富士の圧勝でした。

 2017年9月24日に、横綱・日馬富士が示した本割と決定戦の2番は、日馬富士のキャリアにおいても「屈指の相撲」だったと思います。
 力士としての日馬富士が、その実力を如何無く示したのです。「ザ・日馬富士の相撲」といったところでしょうか。

 これだけ一方的な展開となったことは、とても意外でした。
やはり、11日目以降調子を落とした豪栄道と、調子を上げてきた日馬富士の、差が明確に出てしまったのでしょう。

 賜杯拝戴後の優勝力士インタビューで、控室に照強を呼んだ理由を聞かれ、「テレビに出してやろうと思って・・・」とユーモアたっぷりに応えた横綱には、優しさが溢れていました。

 そして、11月場所への意気込みを尋ねられ、「毎日毎日一生懸命に稽古をして、良い相撲を取る・・・」と応じました。
 奢りなど一切感じられない、極めて謙虚なコメントでした。

 我が国の「相撲精神」を体現した存在だと思います。

 日馬富士は、本当に素晴らしい横綱に成ったのです。
 大関・豪栄道が14日目の貴ノ岩との激戦を制して3敗を堅持、単独トップで千秋楽を迎えることとなりました。

 11日目を1敗でクリアした時には、さすがに大関、大混戦の場所をキッチリと制するかとも見えたのですが。やはり「2017年9月場所」は、そんなに単純な物ではありませんでした。

 12日目の松鳳山戦、13日目の貴景勝戦と平幕の2力士に連敗し、「大混戦」が続くこととなりました。

 このままでは「史上初の10勝5敗の幕ノ内最高優勝」かとも思われましたが、14日目に素晴らしい取口を魅せて、踏み止まったのです。

 立合いから、豪栄道、貴ノ岩、両力士の攻め合いが続きました。
 効果的な「いなし」が随所に観られ、豪栄道も2度たたらを踏みかけました。12日目、13日目の豪栄道なら、そのまま敗れていたかもしれませんが、この日は違いました。
 よく残して攻め続け、土俵際でも、貴ノ岩の乾坤一擲の突き落としを、渡し込みの返し技?凌ぎ、勝ち切りました。

 力の入った好勝負が多い今場所の中でも、屈指の「大相撲」であったと思います。

 これで賜杯の行方は、千秋楽・結びの一番、日馬富士VS豪栄道に持ち越されました。
 3敗の豪栄道と4敗の日馬富士の対戦と、横綱・大関が賜杯を競う結びの一番としては「異例」の感じがしますが、2017年9月場所を象徴する取組とも言えそうです。

 3横綱・2大関が休場するという、99年振りの惨事?の只中で、懸命に取組を続けた2人の看板力士の意地が感じられます。
 2人の看板力士は、「番付けの重み」を示し、「5敗の優勝」という記録を阻止したのです。
 横綱や大関に対しては失礼な物言いになってしまいますが、「健闘」したのでしょう。
 横綱・大関のプライドということなのかもしれません。

 さて、千秋楽・結びの一番は、文字通りの「大一番」です。
 素晴らしい一番でした。

 西関脇・嘉風と東前頭4枚目・松鳳山が「大相撲」を魅せてくれたのです。

 立合いから松鳳山が攻め込みました。テンポの速い突っ張りで嘉風を押し込んだのです。
 後退した嘉風ですが、さすがに反撃に移り、押し返しました。今度は松鳳山が後退する番でした。
 押し合う2力士の間には、突っ張り・張り手が交錯しました。

 土俵際に押し込まれた松鳳山でしたが、再び反攻に出て、押し返しました。
 「攻防」というよりは、両力士の「攻め合い」という形でした。

 両力士、力を振りぼっての押し合いが続きました。
 両力士の顔・頭が何度ぶつかったことでしょう。ごつごつと音が聞こえてくるような激突の連続。
 どちらも、決して自らは後退しないのです。

 場内の歓声がどんどん大きくなって行きます。

 2力士の押し合いは土俵中央で止まりました。
 嘉風が左下手を差し込みました。そして頭を付けたのです。

 体制を整えた嘉風が寄りました。
 力強い寄りでした。

 土俵を割った松鳳山の左腕には、べったりと血が付いていました。
 嘉風の顔から大出血していましたが、顔のどこからの出血なのかは、分かりませんでした。
 
 両力士死力を尽くしての一番でしたから、体中にダメージが残っていたのです。

 取組後、嘉風の出血は「鼻血」であると報じられました。
 眼、まぶたなどからの出血では無かったのです。翌日の取組に大きな影響を与える出血では無かったのです。

 打打発矢の戦いでしたから、1分もかかったかと感じられる相撲でしたが、実際には20~30秒位だったのかもしれません。

 今場所随一の「大相撲」でした。

 3横綱・2大関が休場するという「非常事態」に、残された力士達が力強い相撲を披露しているように感じられます。
 その代表的な相撲が、中日の嘉風・松鳳山の一番なのでしょう。

 9月場所は中日を終えて、大関・豪栄道、東前頭3枚目・阿武咲、東前頭12枚目・大翔丸が1敗で先頭を走っています。
 とはいえ、これだけの波乱の場所が、このままで進むとは思えません。

 本当の大混戦は11日目から始まるのでしょう。
 東十両2枚目の安美錦が好調です。
 7日目を終えて5勝2敗。

 2016年5月場所の2日目にアキレス腱を断裂する怪我を負い、以降7月場所も休場して、9月場所から十両に下がりました。
 もともと両膝に故障のある安美錦が十両の下位に下がり、年齢も38歳になったとあっては、さすがの安美錦も引退か、と囁かれました。
 2016年9月場所、11月場所は共に8勝7敗とかろうじて勝ち越しましたが、2017年1月場所は5勝10敗と大きく負け越し、西十両12枚目まで番付を落としました。

 私も「幕下に下がってまで、安美錦は相撲を取るのだろうか」と感じました。

 2017年3月場所は、しかし、9勝6敗と踏み止まり、5月場所も9勝6敗、7月場所は10勝5敗と盛り返して、東の2枚目まで番付を上げて来たのです。

 そして9月場所を迎えました。
 
 初日の土俵で安美錦の姿をテレビで観た時、「本当に良い体に成った」と感じました。
 肌艶も良く、全身の筋肉も戻りました。
 見た目には、アキレス腱断裂前より、フィジカル面では向上したように思います。

 取り口を観ると、全盛時に比べて「前に出る力・相撲」は戻っていませんが、動きのスピードは十分です。体中に故障を抱えている状態ですから、もりもりと前に出るのは少し早いと感じているのかもしれません。

 いずれにしても、仕切りを重ねる安美錦は「力強さ」に溢れています。

 来月10月3日には39歳となる安美関ですが、その姿を再び幕ノ内の土俵で観られる日が近づいていると思います。

 当代最高の技士の活躍から、眼が離せません。
 9月10日に幕を上げた9月場所ですが、休場力士が相次ぐ状況になっています。
 残念至極です。

 初日に5力士が休場しました。
① 横綱 白鵬
② 横綱 稀勢の里
③ 横綱 鶴竜
④ 前頭 碧山
⑤ 前頭 佐田の海

 昭和以降初めてという「初日からの3横綱休場」ですが、そもそも横綱が3名以上いないと起こりえないことですので、「4横綱の場所ならでは」といって良いのでしょう。
 とはいえ、4名の横綱の内3名が休場、それも初日から休場というのは、お客様にとってはとても残念なことであることは間違いありません。
 豪華絢爛な4横綱の土俵入りを楽しみにしていたファンにとっては、一人横綱の風景に接することになったのは、相当に期待外れということになります。

 加えて、7月場所で13勝を挙げて、実質的な「準優勝力士」であった碧山、そして当代屈指の技士・佐田の海までもが休場となったのですから、驚きました。
 止むを得ないこととはいえ、各力士のファンにとっては寂しい限りでしょう。

 出場してきた他の力士、特に上位の力士の頑張りが期待される場所となったのですが、2日目の土俵で波乱が連続して起きました。
 大関高安と宇良が、取組後「車椅子で運ばれた」のです。

 激しい相撲の結果とはいえ、3横綱+2力士の休場という場所の主役となりそうであった両力士が、到底本場所で相撲を取り続けることが困難であろうという怪我を負ったのです。

 そして、3日目に

⑥ 大関 高安
⑦ 前頭 宇良

 の休場が発表されました。

 大相撲界にとっては、とても大きなインパクトのある事象でしょう。
 現在、人気絶頂の大相撲とはいえ、その人気の中核・基礎となる7名の力士の離脱なのですから。

 残った力士が土俵を盛り上げていかなくてはならないことは、いまさら言うまでもないことでしょう。

 ところで、初日の土俵は「白熱した相撲の連続」という印象でした。
 多くの取組が、攻防のある、力の入った相撲だったのです。
 3横綱の休場を踏まえて、各力士が一生懸命の相撲を魅せてくれたということなのでしょうけれども、「優勝のチャンスが広がった」という意識が各力士にあったのかもしれません。

 厚い壁である4横綱が、ひとりに減ったのですから、上位力士のみならず、前頭下位の力士にも幕ノ内最高優勝のチャンスが拡大したことは間違いありません。

 もちろん、優勝争いの中心は横綱・日馬富士ですが、9月場所はとても多くの力士にチャンスのある場所となりました。
 故障を抱える日馬富士の体調がベストとは思えませんので、12勝3敗あるいは11勝4敗でも優勝できる場所なのかもしれませんから、どの力士も1つや2つの黒星で意気消沈しては居られないのです。

 4横綱が揃っていたとしても、上位と下位の力量差が小さくなってきたことから、場所前に「大混戦」と予想しましたけれども、7力士が休場することとなった以上は、2017年9月場所は「大大混戦」となるのでしょう。

 やはり、見所満載なのです。
 2017年9月10日に開幕する、大相撲9月場所の注目力士検討です。

 4横綱・3大関という豪華な番付に加えて、関脇から幕の内上位には元気の良い力士が目白押しの場所となりました。
 優勝争いは「大混戦」でしょう。

1. 横綱

 「安定感」という面から、今場所は白鵬を挙げたいと思います。

 稀勢の里の回復度合いは分からないところですが、この怪我は回復に時間がかかるものだと思いますので、年内一杯は無理をしない方が良いように感じます。
 稀勢の里には「勇気ある休場」が良いのではないでしょうか。

2. 大関陣

 「勢い」という面から、高安を挙げようと思います。

 地力という面では甲乙つけがたい3大関ですが、やはり近時の勢いでは高安が少しリードしているのでしょう。

3. 関脇以下の力士

③御嶽海

 すっかり、三役に定着しました。「考えて取る相撲」も相変わらずです。
 近時は、下位の力士に「楽をして勝とう?」というように見られても仕方がない取り口で、星を落とすことが時折見られます。「どの力士にも全力」の取り口を展開すれば、優勝も夢ではないと思います。

④豊山

 新入幕の場所は「跳ね返され」ました。どちらかというと「自分の相撲が取れなかった」という感じでしょう。2度目の今回は、思い切り土俵で暴れていただきたいものです。

⑤北勝富士

 力を付けてきました。幕の内上位に定着する力は有ると思います。この力士も「良く考えて」取りますから、毎場所ノウハウが蓄積されているのです。

⑥遠藤

 前頭14枚目まで番付を下げました。故障の影響もあるのでしょうが、前に出る力とスピードが不足していたことも事実なのでしょう。相撲センスは抜群ですから、「自分の相撲」を取り切ることが出来れば、星は自然に上がりそうです。

⑦玉鷲

 7月場所は、やや元気が有りませんでした。やや荒々しさに欠けていたというところでしょう。9月場所はコンディションを整えていただき、本来のパワー相撲を展開していただきたいものです。

⑧宇良

 前頭4枚目まで上がりました。十両下位の頃を思い出すと、正直に言って、驚きです。
 体重を増やしながら、前に出る力を養ってきたのです。さすがに家賃が高いという見方もあるのでしょうが、どれくらい活躍してくれるか楽しみでもあります。

⑨碧山

 7月場所の前半は、目を見張るような相撲が続きました。このところの不振を一気に吹き飛ばしてくれたのです。
 この相撲なら、番付が上がっても頑張れそうです。思い切りとっていただきたいものです。

⑩正代

 相手力士に相撲を覚えられたかのような7月場所でしたが、実際には自分の相撲が取れていなかったのでしょう。コンディションが悪かったのかもしれません。
 本来の力を出せば、直ぐに三役に戻れそうです。

 9月場所は、以上の10力士に期待します。

 嘉風、栃ノ心、勢、宝富士、豪風といったベテラン勢の奮起も、とても楽しみです。
 横綱・白鵬の39回目の優勝で幕を閉じた7月場所ですが、2つの大きな記録が達成されました。

① 白鵬関の通算1,050勝

 元大関・魁皇の1,047勝、元横綱・千代の富士の1,045勝という歴代1・2位の記録を、7月場所で一気に抜き去り、1,050勝まで伸ばしました。

 千代の富士が1,000勝を達成した時、「空前の記録」と呼ばれ、多くの相撲関係者から「レベルが高すぎて想像も出来ない記録」と言われていたことを思い出します。
 その記録を魁皇が更新し、そして今場所、白鵬が更新したのです。

 この記録を、白鵬はどこまで伸ばしていくのでしょうか。

② 日馬富士関の幕内701勝

 7月場所で11勝を挙げた、横綱・日馬富士の幕内通算勝ち星が701勝となり、歴代7位の元横綱・貴乃花に並びました。

 ちなみに、この記録の歴代1位は白鵬の955勝、2位は魁皇の879勝、3位は千代の富士の807勝、4位は北の湖の804勝、5位は大鵬の746勝、6位は武蔵丸の706勝となっています。

 千代の富士、北の湖、大鵬、貴乃花と、20回以上の優勝回数を誇る横綱の中に、日馬富士が食い込んできているのです。
 素晴らしいことだと思います。
 
 この記録は、横綱経験者にとっては、「横綱の地位に長く居る」ことによって積み上げが可能な記録ですから、日馬富士の息の長さ、故障・怪我を乗り越えてきたキャリアが感じられるのです。
 「横綱の地位に長く居る」ことが、とても大変なことであることは、皆さんご承知の通りです。
 2012年11月場所に横綱に昇進した日馬富士は、横綱としてそろそろ丸5年を迎えようとしているのです。

 白鵬と日馬富士、モンゴル出身の2人の横綱は、大相撲の歴史に大きな足跡を残し続けています。
 そして、何より「長い間、横綱の地位を守っている」のが、素晴らしいところなのだと思うのです。
 新大関・高安の誕生により、4横綱・3大関という豪華な番付となった7月場所も中日を終えました。

 ある意味では順当な、ある意味では意外な展開となっています。

① 横綱・白鵬が8連勝

 先場所、久し振りの優勝を飾った白鵬が、今場所も白星を重ねています。
 「自在の相撲」という感じの取口が続いています。立合いで思い切りぶつかるのではなく、相手によって様々なパターンで取組を開始するのです。

 序盤は、こんな取口では一気に押し込まれた時などには苦戦の怖れが有ると感じましたが、その自在性のレベルが高いのでしょう、相手力士を次々と倒し、全勝を維持しているのです。
 見事な取口と言って良いのでしょう。

 とはいえ、こうした取り口で15日間を取り切ることが出来るとすれば、「立合いは鋭く強い当たりが不可欠」と言われてきた、大相撲の長い歴史に疑問符が付く、「立合いは相手の力を削ぐ対応が良い」「無理に全力で当たる必要はない」と言うことになってしまうかもしれません。
 「大相撲の在り様の変化」に結び付く場所になる可能性もありそうです。

② 大関・高安の相撲

 初日、北勝富士に押し込まれ、良いところ無く敗れた時には、「新」大関の重圧が想像以上に重いのかとも感じられましたが、2日目から建て直し、中日まで連勝を続けているのは、さすがというところです。

 6日目の栃ノ心との相撲は、1分を優に超える長いものとなりましたが、これも勝ち切りました。慌てず騒がず、自らの相撲を取り切る姿勢は素晴らしいと感じます。

③ 碧山の健闘

 このところ、かつての強烈な押しが影を潜め、取組の途中で「押す体制が崩れて」敗れることが増えて、不本意な場所を続けて来た碧山が、見事な活躍を披露しています。
 「復活」という感じがします。

 7連勝の後、中日は阿武咲に敗れてしまいましたけれども、圧倒的なパワーという武器をベースに、引き続き大暴れしていただきたいと思います。

④ 宇良の頑張り

 自己最高位・東前頭4枚目まで上がってきた宇良の健闘が光ります。

 中日を終えて5勝3敗。横綱との取組も含めて、上位との対戦が続く中では大健闘でしょう。
 体重が増え、前に出る力が強くなっていること、そして機を見るに敏な取口に磨きがかかってきたことが好調の要因だと思います。
 上位との取組も「十分に相撲になっている」のです。

 伸び盛りの期待の力士の後半戦の活躍から、眼が離せません。

⑤ 御嶽海の存在感

 関脇として、存分な働きでしょう。
 相変わらず、対戦相手毎にしっかりと事前研究を行い、毎日取り口を決めて取組に臨み、それを実行するという相撲は、日々の成長にも結び付いていると思います。

 こうした姿勢を継続していただきたいと思いますけれども、一方で、前に出る力の強化も継続して欲しいと感じます。相撲の基本である前に出るパワーの一層の強化が、もう一つ上の番付への昇進のポイントなのです。

 鶴竜、稀勢の里、照ノ富士、遠藤といった「看板力士」の相次ぐ休場は本当に残念ですけれども、白鵬を中心とした優勝争いは、後半戦が勝負だと思います。
 先頭を行く力士の相撲に、どっしりとした盤石の強さは感じられませんから、まだまだ多くの力士にチャンスが有るのではないでしょうか。
 4日目に横綱・鶴竜の休場が報じられ、6日目には横綱・稀勢の里と大関・照ノ富士が休場することとなりました。
 とても残念なことです。

 4横綱3大関という「豪華絢爛な場所」としてスタートした7月場所でしたが、前半の内に2横綱・1大関が戦線を離脱してしまったのです。

 休場の原因は、個々の力士ごとに異なりますが、「怪我・故障」が主たる理由である点は、共通しています。

 特に、稀勢の里と照ノ富士については、過去に痛めた故障に、新たな故障が加わった、あるいは再発したといった様相です。

 「角界を背負う」人気力士が、そうそう簡単に休場することは出来ない、看板力士は場所開催に不可欠、といった考え方があるのはプロスポーツとして当然のことでしょうが、一方で「重い故障」であれば、じっくりと治療することも必要だと感じます。
 「角界を背負う」人気力士を再起不能に追い込む、あるいは本来なら数ヶ月で完治するものが、数年に及ぶ、あるいは直らない、というのでは角界にとっての大きな損失でしょうし、パフォーマンス十分な相撲を見てもらえないとすれば、ファンの期待にも背くことになります。

 「直ぐに横綱に昇進するだろう」と言われていた照ノ富士が、初優勝したころとは全然違う相撲しか取れないということ、久しぶりの日本出身横綱として、現在の大相撲人気の一翼を担っている稀勢の里が、得意の左差しが使えず、勝ったり負けたりを繰り返しているというのは、ファンの期待に応えているとは到底言えない姿でしょう。

 プロのプレーヤーであれば誰でも故障を持っている、という意見もあるのでしょうが、そのプレーヤーの持ち味を半減させるような故障は対応しなくてはなりません。
 そもそも、そのプレーヤーがプロフェッショナルとしてプレーする前提が崩れているのですから。

 休場した横綱・大関が「ファンが望む姿」になるまで(勝ち負けでは無く、取口として)、しっかりと治療していただくことができないものかと思うのです。

 7月9日に開幕する、大相撲7月場所の注目力士検討です。

 5月場所は、横綱・白鵬が38回目の優勝を遂げました。自身の持つ最多優勝記録を更新したのです。
 一方で、高安が大関昇進を決める場所ともなりました。

 7月場所は久し振りの「四横綱三大関」という豪華な番付となったのです。

 さて、注目力士の検討です。

1. 横綱陣

 5月場所では、鶴竜、稀勢の里が途中休場しました。日馬富士は終盤まで優勝争いに加わりましたが、力尽きた形。ここはやはり、先場所優勝の白鵬が最有力に観えます。

 しかし、キャリア終盤の横綱が連続優勝するのは容易なことでは無い、との見方もあります。

 こうした状況下で、横綱をひとり選ぶのはとても難しいことですが、稀勢の里の故障からの回復には、まだまだ時間がかかると見て、白鵬にしたいと思います。
 最多勝記録更新に向けた、気迫溢れる取り口に期待しましょう。

2. 大関陣

 新大関・高安に期待します。体調を整えて、大相撲新時代の相撲を披露してくれることでしょう。初優勝への期待もかかります。

3. 関脇以下の力士

③御嶽海

 ついに関脇まで上がってきました。良く考えた上で、気迫十分な取口を魅せてくれる力士ですので、大関取りの足場となる場所にして欲しいものです。

④正代

 5月場所は、少し前に出る力が不足していました。ご本人も十分に認識していると思いますので、場所前の稽古・対策立案は万全でしょう。

⑤隠岐の海

 故障からの回復度合い次第ですが、前頭9枚目であれば本来大勝ちしてしかるべき力士です。復活の場所にして欲しいものです。

⑥宝富士

 このところ、やや「もろい負け方」が目立ちますが、まだまだ老け込むには早いと感じます。大関候補と言われたころの「もりもり前に出る相撲」を魅せて欲しいものです。

⑦北勝富士

 いつの間にか、と言う感じで前頭2枚目まで番付を上げてきました。機を見るに敏な相撲が特徴でしょう。勝ち越すことがとても難しい番付けですが、持ち味を発揮してほしいものです。

⑧豪風

 さすがの大ベテランも、少し衰えが見えて来たかと言われていますが、この数場所は少し休んでいたのであろうと見ています。7月は大活躍の場所でしょう。

⑨貴景勝

 伸び盛り、次代を担う力士です。勉強の場所となるのでしょうが、自らの相撲を存分に披露していただきたいものです。

⑩宇良

 ひとまわり体が大きくなって、相撲が正攻法になってきました。もともと柔軟性には定評がありますから、上位相手でも怯むことなく取っていただきたいと思います。

 7月場所は、以上の10力士に期待します。

 御嶽海、正代や貴景勝、宇良といった新世代の力士と、遠藤、逸ノ城といった中核世代の力士、そしてベテラン勢が相俟って、激しい取組が展開されることでしょう。

 色々な意味で「暑い名古屋場所」になりそうです。
[5月28日・千秋楽]
正代○(寄り切り)●御嶽海

 小結・御嶽海と前頭5枚目・正代の対戦は、両力士一歩も引かない攻防から、正代が寄り切りました。力の入った大相撲でした。

 先場所の負け越しにより西前頭5枚目まで番付を下げていたとはいえ、正代は既に三役の常連ですし、この対戦に敗れたとはいえ、しっかりと勝ち越した御嶽海も堂々たる三役力士です。

 稀勢の里が横綱になり、高安が大関に昇進するなど、大相撲の世代交代・地殻変動が続いていますけれども、正代と御嶽海は次代を背負う関取ですし、2力士の取組が今後の「看板取組」のひとつになっていくであろうことも、間違いが無いのでしょう。

 本取組のように、「がっぷりと組み合った形」となれば、現状では正代の地力が勝ります。
 御嶽海は「相手力士との動き合いの中で勝機を見出していくタイプ」なのでしょう。

 一方で、御嶽海の「相手力士についての取組前の研究・作戦立案」は、現役の幕の内力士の中でもトップクラスだと感じます。
 相手が横綱・大関といった格上の力士でも、自らが決めた作戦・戦術に則って、実に思い切った取口を披露してくれます。
 それが上手く行けば好勝負となり、上手く行かなければあっさりと土俵を割ることもあるのですが、「敵を知り、己を知れば・・・」という孫子の兵法にもあるように、自らの力量、相手力士の力量、自らの得意技・得意な形、相手力士の弱点、等々を研究し、毎場所様々な作戦を立案・実行する御嶽海の相撲は、観ていてとても面白いものですし、感心させられることが度々あります。

 どんなに力量上位の力士でも、御嶽海を相手にする時には、十分な注意が必要なのです。

 正代の方はといえば、恵まれた体躯をベースに「前に出る力」では既に幕の内トップクラスでしょう。
 立ち合いで「そっくり返ってしまう」という欠点が指摘されますが、柔らかい体の動きで、相手力士を一度受け止めてしまえば、後は存分に料理してくれます。「相撲力が強い」タイプなのでしょう。

 「正代VS御嶽海」。
 これから何番の取組を観ることになるのでしょうか。
 まさに「次代の看板取組」なのです。
 5月場所を11勝4敗の好成績で終えた高安が、5月31日、大関に昇進しました。

 直近3場所で34勝を挙げた成績と、3場所共に11勝以上という安定感、そして横綱をも破るという強さ、が評価されての大関昇進でしょう。

 先輩の稀勢の里や琴奨菊が、直近3場所32勝で大関昇進を果たしていることと比較すれば、星勘定では問題の無い水準なのでしょうが、比較的慎重な見方が多かったのは、「稀勢の里との取組が無い」ことを考慮してのことかもしれません。

 いずれにしても、堂々たる相撲振りでの昇進に、大きな拍手を送ります。

 今場所というか、最近の高安の本場所での相撲、特に10日目までの強さは素晴らしいものがあります。テレビ放送の解説者の皆さんも「大関どころか、その上のレベル」といったコメントを残しています。
 強烈な立ち合いから、短時間で勝負を付ける取口は、確かに「強い」という印象です。

 一方で11日目以降の相撲には、毎場所やや精彩がありません。
 ここが不思議なところです。

 5月場所も、13日目に横綱・日馬富士を破って11勝目を挙げた後、14日目・正代、千秋楽・照ノ富士と連敗しました。

 終盤に星が上がらないというのが、現在の高安の弱点とも言えそうです。

① 終盤の対戦相手は強い。

 関脇・高安の終盤戦の対戦相手は、横綱や大関であることが多いので、前半戦や中盤戦とは相手が違うというのは間違いないところでしょうが、一方で前半戦や中盤戦でも横綱・大関と当たり、これに勝利していることも多いので、これだけが理由ではなさそうです。

② ほっとする。

 八角理事長のコメントにもあったように、目標を達成してホッとしてしまった、ということは考えられるのでしょうが、そうなると3月場所や1月場所の終盤の連敗の説明が付きません。

 1月場所も3月場所も、圧倒的な強さで10日目までを戦っていたのです。
 大関昇進を目指す過程では、11勝よりも12勝、12勝よりも13勝、そして関脇での優勝の方が、より確度が上がる筈です。

③ 「疲れ」

 特に、精神面の「疲れ」が要因なのではないでしょうか。
 私は、これが大きいと勝手に考えています。

 現時点の高安は、15日間を戦い切る「精神面の持続力」が不足しているのではないでしょうか。
 11日目以降に、心身の疲れが出るのでしょう。

 そうすると、その精神面の持続力が養われたとき、高安はとても強い力士、15戦全勝をいつも狙える力士になれることになります。

 これが、八角理事長の言う「伸びしろ」なのかもしれません。

 いずれにしても、かつての鳴門部屋(元横綱・隆の里が親方)、出稽古厳禁の鳴門部屋で、互いに切磋琢磨してきた、常に2人で稽古を積み重ねてきた、稀勢の里と高安が、横綱と大関になったのです。

 相撲協会の使者を迎えての伝達式において、横綱・稀勢の里は本当に嬉しそうでした。自らの横綱昇進の時より嬉しそうにも見えました。
 そういえば、稀勢の里の初優勝の時、優勝パレードで旗手を務めた高安は本当に嬉しそうでした。まるで自分のことの様にはしゃいでいたのが印象的でした。

 私には、「とても強い兄弟力士」のように見えます。
 5月28日に千秋楽を迎えた、大相撲2017年5月場所は、横綱・白鵬が全勝優勝を飾りました。
 1年ぶり、38回目の優勝でした。

 「第一人者」「大横綱」と称され、史上最多の優勝回数を誇る白鵬ですが、久しぶりの優勝ということもあってか、表彰式における横綱の表情はとても明るかったと感じます。

 何より、体が一回り大きくなったという印象を受けました。
 昨年の故障、秋の手術を経て、「徹底的に体作り」を行ったと報じられていましたが、眼に見える形で現れたのでしょう。

 もともと、身長192cmと長身の力士ですが、体全体がふっくらとし、柔軟性の向上も感じました。
 「さすがの改善」だったのです。

 今場所の取り口は「変幻自在」でした。このところの攻め続ける相撲の完成度が上がったのです。
 一方では、千秋楽の横綱・日馬富士との相撲のように、不利な体勢でもじっくりと我慢し、上手を取ってから勝負、1分半の相撲を勝ち切るという、粘り強さ・重厚さも身に付けました。
 慌てて動くことが無かったのです。
 体の改造・改善が、心の余裕にも結び付いていたのかもしれません。

 表彰式における優勝力士インタビューで、「ただいま帰ってきました」とコメントした白鵬関には、自信がみなぎっていました。

 大横綱・白鵬の「優勝40回」「通算1,048勝」への前進が、再開されたのでしょう。
 連日大入り満員の5月場所は、相撲内容も充実しているように観えます。
 熱戦が続くのです。
 恒例により、中日8日目を終えて、振り返ってみようと思います。

 まずは横綱陣。
 日馬富士と白鵬が8戦全勝とトップを走っています。失礼な書き方で恐縮ですが、意外な展開という見方もありそうです。
 このところ、前半で取りこぼすことが多かった両横綱が、快調な取口を魅せているのです。もう少し「混戦」になると予想していた優勝争いですが、この2横綱を中心としたものになることは間違いありません。

 稀勢の里は2敗しました。
 初日の嘉風戦の負け方を見ると、15日間取り切れるのか心配になりましたが、その後は慎重な取口を見せて、何とか取り続けています。
 とはいえ、必殺の「左からの強烈なおっつけ」は全く見られませんので、故障の回復にはまだまだ時間がかかりそうですし、ここで無理をして回復に悪影響が出るのも回避したいところですから、今場所は15日間取り切ることに意義を見出したいものです。

 鶴竜の休場は残念です。
 やはり、「四横綱が揃って15日間を全うする」ことの難しさを感ぜざるを得ません。

 大関陣は、照ノ富士が2敗、豪栄道が3敗となっています。
 初日・2日目と完敗した時には、照ノ富士の不調が目につきましたが、日を追うにしたがって調子を戻してきました。「後半戦の台風の目」となりそうです。
 豪栄道に対しては、番付が下の力士も思い切ってぶつかっていっている印象です。大関としては、持ち味の「圧倒的なスピード相撲」を繰り出して対抗していくほかは無いでしょう。

 関脇・小結では、高安と玉鷲の強さが際立ちます。
 高安の5日目までの相撲は、「大関を通り越して横綱クラス」との評が出る程でした。確かに、立ち合いの当たりの強さで相手力士を圧倒し、短い時間で勝負を決める取口は素晴らしいものです。

 このところ、10日目以降に連敗するという傾向が見られますから、ここをどのように乗り切るかがポイントでしょう。まだまだ、優勝も狙える位置に居ます。

 玉鷲も二桁勝利に向かって驀進しています。前に出る力という点では、大相撲界屈指の存在となりました。

 御嶽海と嘉風の両小結は、よく健闘していますが、3勝とさすがに星は上がっていません。無理もない番付ですが、後半戦での下位力士との取組で勝ち越しを狙いたいところです。

 平幕では、正代、北勝富士、栃ノ心、輝、宇良、大翔丸が2敗です。
 中日の段階で、平幕に全勝・1敗力士がいないというのも、珍しいのではないでしょうか。

 一方で2敗力士が6名も居るのですから、今場所の「拮抗した激しい相撲が続く」状況を、星取表が明確に表しているのだと感じます。

 正代は、本来の「ぶちかまし」の威力が戻りましたので、地力の高い力士ですから星が上がるのも自然なことです。
 栃ノ心は、怪我の具合が相当良いのでしょう。かつての相撲を思わせる、力強い取り口が蘇りました。
 北勝富士は力を付けました。栃煌山、宝富士という実力者を続けて破った7日目・8日目の取組内容に表れています。一場所ごとに地力を挙げている力士だと思います。

 健闘が目立つのは輝でしょう。
 もともと、下半身が脆いところがあって、相手力士の左右への変化に付いていけないタイプでしたが、今場所は連敗後、「自ら相撲を作る」取口に変わりました。こうなると「大きな体」が生きるのです。
 受け身から能動へ、この相撲を続けることが出来れば、一段のレベルアップとなります。

 宇良の相撲は、見事の一語でしょう。
 ひとまわり大きくなった体を縦横に使って、どの相撲も自らの力を発揮していますから、見ごたえ十分。エンターティンメントとして、最も「プロフェッショナル」な力士と呼んでもよいのかもしれません。
 一皮むけた感がありますので、今後の活躍が大いに期待されます。

 大翔丸は、幕の内の相撲に慣れたというところでしょうか。このところ、じりじりと番付を下げてきましたので、このあたりで一気に大勝をして、前頭上位進出を目指したいところでしょう。

 3敗以下の力士では、勢の相撲に「勢い」が戻ってきた印象です。人気力士ですから、場所を大いに盛り上げてくれています。

 一方で、逸ノ城の「ふがいなさ」は残念なところです。
 あの上がってきた頃のパワフルで器用な相撲を、どこに忘れてきてしまったのでしょうか。
 勝ち負けを気にすることなく、思い切って取っていただくだけで、三役の力があることは証明されているのですから、もったいないと感じます。

 盛り上がりを魅せてくれている5月場所。
 9日目以降も、思いもよらぬ展開が待っているような気がします。

 幕内最高優勝の行方は、全く分かりません。
 5月14日から始まる、大相撲5月場所の注目力士検討です。

 この場所の人気は凄まじいものがあり、チケットはなかなか入手できません。
 愚妻などは「大相撲の人気が上がるのは良いけれど、40年来の相撲ファン、国技館に毎場所行っていたファンにとっては本当に大変な状況になったわ」と漏らしています。
 桟敷席のチケットを「入札」で手に入れる、それも数十万円・百万円以上かけて、というのは現実的な話ではありませんから、相撲協会には「チケットの転売を禁ずる・制限する方策」の実行を、お願いしたいところです。

 この数年盛り上がりを見せていた大相撲の人気が「沸騰状態」になった最大の要因は、横綱・稀勢の里の誕生であることは、間違いないことでしょう。

 デビューとなった3月場所は大阪場所でしたので、東京や関東のファンにとっては、横綱・稀勢の里の姿、土俵入りを生で観ることが出来る最初の場所が、5月場所なのです。チケットがプラチナ化するのも無理のないところでしょう。

 さて、注目力士です。

1. 横綱陣

 3月場所の終盤に大きな故障をしてしまった稀勢の里、早々に休場した白鵬、調子が上がらなかった日馬富士、鶴竜、となれば、横綱陣の中から注目力士を選ぶのは、とても難しいことになります。

 特に、稀勢の里の回復度合いはなかなか分からないところでしょう。「筋肉損傷型の怪我」は、回復に時間がかかるとされていて、本当に良くなるには「年単位」だとも言われます。
 従って、5月場所の稀勢の里が本来の力を発揮できる状態ではないことは間違いなさそうです。問題は完調時の「何割位の状態か」ということですが、二所一門の連合稽古や、その後の三役力士との稽古をテレビニュースで見る限り、「左を差すことはできるが、左のおっつけはできない」といった様子でしょう。

 その稀勢の里が「手負い」の状態で、どれくらい戦えるか、場所中に怪我が悪化して休場する可能性、等々が検討項目となります。

 白鵬、日馬富士、鶴竜の体調についても、部外者の私には分からないことだらけです。

 以上から、今場所も稀勢の里に注目したいと思います。
 初優勝から「3場所連続優勝」という大記録を目指して、稀勢の里は「慎重」な「よく考えられた」取り口を展開してくれるものと期待しています。

2. 大関陣

 2人になってしまった大関陣。少し前は4人体制で合ったことを思うと、ややさびしい感じがしますが、照ノ富士、豪栄道共に元気な様子ですので、大活躍を魅せてくれそうです。

 大関陣の注目力士としては、やはり先場所準優勝の照ノ富士を挙げたいと思います。
 先場所は「ほぼ手にした感のあった」優勝を、決定戦の末に稀勢の里に奪われた形ですので、巻き返しに向けての奮起が観られそうです。おそらく、膝等の故障個所も相当良くなってきているのでしょう。

3. 関脇以下の力士

③高安
 
 大関が2人という状況下、「大関の椅子」は空いていると言っても良いのでしょう。その椅子に最も近いのが両関脇であることも、間違いありません。
 場所前の白鵬との3番稽古が報じられている通りに、高安も元気な様子ですから、「初優勝」を目指しての健闘に期待します。

④豊山

 懐かし四股名が帰ってきました。
 小柳改め「豊山」が誕生したのです。あの大関・豊山と同じ新潟県出身力士ですから、その名前に込める思いもひとしおでしょう。
 初入幕力士の元気いっぱいの相撲に期待します。

⑤御嶽海

 先場所は少し研究された感がありましたが、相手力士を上回る研究を期待しています。次代を背負う力士としての御嶽海の相撲が、とても楽しみです。

⑥魁聖

 前頭15枚目というのは、信じられない番付です。先場所は、持病の腰痛が再発したのでしょうか。暖かくなってきましたので、コンディションさえ整えば、この番付なら二桁勝利、ひょっとすると優勝も狙えるのではないかと思います。

⑦遠藤

 前頭筆頭に上がってきました。現在の大相撲の人気の礎となった力士ですが、ひざの故障からの回復に手間取りました。先場所の前半は、その不安を感じさせない活躍でしたが、後半には再び故障が気になる取口となってしまいました。
 回復していることを祈りつつ、活躍に期待したいと思います。

⑧正代

 先場所は、持ち前の馬力、前に出るパワーが不足していた印象です。取り口を考えるあまり、相撲を取ることを忘れてしまった場所だったかもしれません。心機一転、上がってきた頃の「思い切った相撲」を繰り広げていただければ、自ずと星は上がるでしょう。

⑨石浦

 先場所は、相撲を覚えられてしまった感じでしたが、今場所は、また新しい戦法を展開してくれそうな気がします。こうした小兵力士の成績にはムラがあるものでしょう。5月場所は、活躍する番だと思います。

⑩阿武咲

 この力士の相撲が幕の内で観られるのです。20歳そこそこという、21世紀としてはとても若い幕の内力士の「元気いっぱいの相撲」に期待がかかります。

 5月場所は、以上の10名の力士に期待したいと思います。

 3月場所に続いて、5月場所も、横綱・大関・関脇・小結・前頭のどこから優勝力士が出るのか、全く分からない「大混戦」であろうと思います。
 充実した土俵に期待しましょう。
 自己最高位の東前頭2枚目で相撲を取った蒼国来は、初めて全ての横綱・大関と取組が組まれる位置で、15日間を戦い抜きました。

 3日目、横綱・日馬富士との対戦は、初めての「結びの一番」でしたが、これを白星としました。金星を挙げたのです。

 取組後のインタビューの中で「結びで取るのが夢だった」と語りました。
 
 その様子は、本当に嬉しそうでした。

 確かに、力士になった以上は、関取となり、幕の内に昇進し、そして結びの一番、その日の最後の取組のために土俵に上がることが「大きな夢」なのでしょう。

 特に、中国内モンゴル自治区から来日し、2011年の「八百長問題」で一度は解雇となった蒼国来にとっては、番付を上げて結びの一番で相撲を取ることは、憧れであり夢であったろうと感じます。

 八百長問題で解雇となった後、「自分は絶対にやっていない」と言い続け、友人宅を転々としながら、公園等でトレーニングを積んでいたと報じられています。
 大変な努力です。

 そして、裁判を経て、2年半ぶりに復帰したのです。
 2013年7月場所、番付は西前頭15枚目でした。

 その7月場所、土俵に上がった蒼国来の体は、痩せ細っていました。やはり、公園等でのたったひとりでのトレーニングや、友人宅での食生活では、大相撲の力士、ましてや幕の内力士としての体躯を維持することは難しかったのです。

 当然のように「負け越し」の場所が続き、番付は東十両11枚目まで下がりました。
 幕下も間近という番付です。
 蒼国来は、力士を続けられるのだろうか、と心配したものです。
 とはいえ、体躯の方は徐々に充実し、パワーがついてきた印象でした。

 2014年3月場所では11勝4敗の好成績を上げて、5月場所に幕の内に復帰、以降の幕の内力士としての安定した相撲振りは、ご承知の通りです。

 身長185cm・体重146㎏と、現在の幕の内では小柄に入る体格ですが、相撲は正攻法そのもの。立合いの変化を、私は見たことがありません。
 現在では珍しい「正統派の四つ相撲」です。パワーも備えていて、「つり技」も時々披露してくれるのです。

 2017年3月場所の蒼国来は、場所の後半はやや精彩を欠きました。
 4勝11敗で場所を終えています。
 疲れが出たのであろうと思いますが、どこか故障でもしていないか、少し心配です。

 その真面目な取口と大相撲への情熱をもって、再び番付を上げ、三役昇進を狙っていただきたいものです。
 2017年3月場所は、2000年3月場所以来の「四横綱」の場所となりました。

 「四横綱」自体は、それ程珍しいことでは無く、今回が「16度目」ということになります。

 とはいえ、現在の大相撲ファンにとっては、1990年9月場所に始まり1991年5月場所まで続いた「千代の富士、北勝海、大乃国、旭富士」の四横綱時代(14度目・5場所・千代の富士の引退により終了)と、1999年7月場所に始まり2000年3月場所まで続いた「曙、貴乃花、若乃花、武蔵丸」の四横綱時代(15度目・5場所・若乃花の引退により終了)が記憶に新しいところでしょう。

 ところで、四横綱時代においては「四横綱が揃って土俵に上がる日」は多くはありません。
 どうしても休場が多くなってしまうのです。

 例えば、14度目の時の最初の場所・1990年9月場所では千代の富士と大乃国が全休でしたから、観客にとっては2横綱の場所でした。この14度目の四横綱時代において、四横綱が揃って15日間を皆勤したのは1990年11月場所の1場所だけでした。

 15度目の四横綱時代には、四横綱が揃って15日間を皆勤した場所は1場所も有りませんでした。
 1990年から現在に至るまでの28年間に渡って、四横綱が揃って1場所・15日間の土俵を務め上げた場所は、僅かに1場所しかなかったことになります。

 さて2017年3月場所はどうか、と思っていましたが、白鵬が5日目から休場しました。
 やはり「四横綱15日間皆勤」は難しいものなのでしょう。

 四度の横綱土俵入りを始めとして、四横綱時代は「豪華絢爛」な空気が漂います。

 14度目も15度目も、四横綱時代は5場所で幕を閉じています。1年間続いていないのです。

 長く在位している横綱と昇格したばかりの横綱が併存しているからこそ、四横綱が実現するのでしょうから、その寿命が短いのも止むを得ないことなのかもしれませんが、1日でも長く続いていただきたいと思いますし、四横綱が揃って土俵に上がる日が1日でも多くあって欲しいと思います。
 千秋楽の優勝争いは、大変劇的な展開となりました。

 13勝1敗の大関・照ノ富士と12勝2敗の横綱・稀勢の里の本割取組は、最初の立合いで稀勢の里が右に変化しました。
 右上手を取り、右からの上手投げで勝負しようとしたのでしょうか。
 これは立合い不成立となりました。

 2度目の立合いでは、今度は左に変化しましたが、もともと「注文相撲」など不得手な稀勢の里のやることですから、上手く行くはずも無く、照ノ富士は前みつをがっちりと取り、西土俵に押し込みました。
 ここで稀勢の里が左に突き落とし。照ノ富士の頭を押さえつけての突き落としでした。
 これが見事に決まって、照ノ富士は土俵外に転げ落ちました。

 優勝決定戦は、1度の立合いで取組が始まりました。稀勢の里は両手を照ノ富士の胸に当てましたが、照ノ富士の勢いと圧力が勝り両差しとなりました。そのまま、やはり西土俵に寄り立てました。
 ここで稀勢の里は小手投げ。乾坤一擲の小手投げで、照ノ富士が飛び、稀勢の里も飛びましたが、一瞬早く照ノ富士の体が落ちました。

 本割・決定戦と、稀勢の里が2連勝し、逆転優勝が成ったのです。

① 右腕と両脚

 左腕が使い物にならなかった稀勢の里にとっては、右腕と両脚で勝負するしかなかったのは道理です。
 この2番の取口は、稀勢の里が考えに考えた内容であったように感じます。

 寄り立てて来るであろう照ノ富士の勢い・パワーを利用した取口だったのです。
 この考え方は、本割・決定戦に共通しています。

② わざと両差しに?

 決定戦の稀勢の里の立合いからの動きは、不可思議なものでした。
 痛めている左肩に衝撃を与えないような立合いを目指した点では、本割も決定戦も同様でしたが、正面から当たっている決定戦は、左を差しこむことが難しいことを考慮すれば、照ノ富士に両差しを許す可能性が高いことは、あらかじめ予想できたはずです。

 それでも、この立合いを選択したのですから、「わざと両差しにさせて、出て来る勢い・パワーを活用して」の小手投げ、というとても思い切りの良い取口を、最初から予定していたのかもしれません。

 右腕と両脚のパワーを最大限活かそうという、作戦だったのです。

③ いつもの稀勢の里とは正反対の相撲

 左下手を差し込んで、右腕を自在に使って勝負するのが、稀勢の里というか、元横綱・隆の里・元の鳴門親方直伝の相撲です。

 しかし左腕を大負傷してしまった稀勢の里は、この「伝統の相撲」を取ることは出来ませんでしたから、全く別の相撲になりました。

 「全く別の相撲」になってしまったことが、照ノ富士にいつもの相撲を取ることを許さなかったのかもしれません。
 これまで戦ってきた稀勢の里とは、重心の位置も、パワーも、体の使い方も全く違う力士との相撲になったのです。
 いつもならば、もっとじっくりと寄り立てる相撲を得意とする照ノ富士が、この2番に限っては、「慌てて寄り立てた」ように観えました。

 これは、稀勢の里が意図したことではないのかもしれませんが、結果として、稀勢の里にとっての「勝機の拡大」に結び付いた可能性が有ります。

 「手負い」の新横綱は、伸るか反るかの「思い切った相撲」を展開し、見事に2番共成功させました。
 「思い切った相撲」ですから、失敗すれば簡単に負けてしまうリスクも高かったのです。

 それでも、このやり方を信じて土俵に上がったのでしょう。

 その稀勢の里に、相撲の神様が微笑んだ2番だったように感じます。

 「大相撲」を魅せていただきました。
 2017年3月場所も中日を終えました。

 ある意味では期待通りの、そしてある意味では意外な展開となっています。

① 稀勢の里と高安が8戦全勝

 横綱・稀勢の里と関脇・高安が、前半戦を全勝でクリアしました。田子の浦部屋と言うか、かつての鳴門部屋(元横綱・隆の里が親方の時代)の兄弟弟子が、その強さを誇示している形です。

 共に安定感も十分ですから、後半戦もこの2力士を中心とした展開となりそうです。

 気の早い話ですが「同部屋力士同士の優勝決定戦」の可能性もあります。
 そうなれば、5月場所では新大関が誕生することになるかもしれません。

② 「西」方の力士が好調

 もちろん偶然のことなのでしょうが、3月場所は「西」に好調な力士が集まっています。
 前述の2力士を始めとして、大関・照ノ富士、栃煌山が7勝1敗で続いているのです。
 「東」は、横綱・日馬富士、大関・琴奨菊、千代の国の2敗が最上位です。

 そして、東の横綱・白鵬と大関・豪栄道が休場しているのです。
 特に「打倒・稀勢の里」を公言していた白鵬の休場は、とても意外でした。

 もうひとりの横綱・鶴竜もなんとか2敗で踏ん張っていますし、千代翔馬や徳勝龍と言った前頭勢も2敗ですから、冷静に観れば、優勝に向かって大奥の力士に可能性があるのでしょう。

 主役が主役としての役割をしっかりと果たし、一方で横綱から幕尻まで多くの力士が頑張っている3月場所は、後半戦に入りました。
 新横綱・稀勢の里が、7日目まで全勝と好調な相撲を展開しています。

 過去の例を見ると、難しいと言われる「新横綱の場所」ですが、稀勢の里の取組を見ると「一段と強さを増した」ようにさえ感じられます。

 その表れのひとつが「土俵外に出ない」という点でしょう。

 初日から6日目まで、稀勢の里は押し出しや寄り切りといった決まり手で白星を挙げましたが、どの取組においても「相手を土俵外に出し、自らは土俵内に残って腰を落とした姿勢」で取組を終えています。
 「相撲という競技の性格上」絶対に負けない形を創り上げているのです。

 もちろん、相手を破った後、土俵外に出ても問題は無いのですが、土俵外に出ないという取り口には「何とも言えない余裕」が感じられます。

 その稀勢の里も7日目の御嶽海戦は、押し出した後、自らも土俵外に出ました。
 立合いからの御嶽海の寄りが強く、後退を余儀なくされた稀勢の里が押し返していく段階で「勢い余って」出てしまった形です。
 
 初日から6日目までと7日目の取組における「余裕度の差」が、この土俵際の動きに良く表れていたと感じます。

 新横綱・稀勢の里が、何日目まで安定感抜群の取り口を続けて行けるのか、この場所の最大の注目点なのでしょう。
 3月12日に開幕する大相撲3月場所は、いつもの場所にも増して、見所が満載です。

1. 新横綱・稀勢の里の初の本場所

 西の横綱に「稀勢の里」が入りました。
 当たり前のこととはいえ、番付を見ると思わず笑みがこぼれます。土俵入りから取組まで、一挙手一投足が注目されます。

2. 関脇・小結の充実

 今後の大相撲を支えて行くであろう力士がズラリと顔を揃えました。
 大袈裟に言えば「美しさ」さえ感じさせる番付でしょう。

 東関脇・玉鷲、西関脇・高安、東小結・御嶽海、西小結・正代・・・。
 これに大関復帰を目指す琴奨菊が加わった関脇・小結陣は、今場所の台風の目というより、今場所の中核という様相です。

3. 前頭も多士済々

 ベテランと新鋭がバランスよく配された前頭も、楽しみな力士が目白押し。
 「世代交代」の雰囲気を感じさせながらも、「ベテランの巻き返し」への期待も高まる布陣です。

 2枚目まで上がってきた蒼国来が横綱・大関を相手にどんな相撲を取ってくれるのか。
 同じく2枚目の貴ノ岩の捲土重来はあるのか。
 5枚目の遠藤と北勝富士が自分の相撲を披露できるのか。
 7枚目の逸ノ城と千代翔馬が暴れまわる姿が観られるのか。
 12枚目の宇良と13枚目の貴景勝は「次の次の力士」として、これまで通りのライバル関係を続けるのか。
 そして、8枚目に並んだ、魁聖と隠岐の海はベテラン勢の代表格として、若手の厚い壁になるのか。
 筆頭の豪風と4枚目の嘉風、「風風コンビ」の活躍やいかに・・・。

 挙げていけば、注目点はキリがありません。

4. 注目の10力士

① 横綱陣 稀勢の里
② 大関陣 豪栄道
③ 御嶽海
④ 正代
⑤ 遠藤
⑥ 高安
⑦ 宇良
⑧ 逸ノ城
⑨ 蒼国来
⑩ 貴景勝

 今場所は、今後の大相撲を占う場所と位置付けて、「昇り竜のパワー」に期待した選択になりました。

 優勝争いは、平幕力士も含めた大混戦となることでしょう。
 3月場所を前にして、最近まで土俵を沸かせた力士達、現在は部屋付親方として後進の指導に当たっている3人の親方の独立が報じられています。

 まずは西岩親方・若の里です。
 3月1日に、田子ノ浦部屋からの独立の意向を示したと報じられました。
 大阪市生野区の勝山高校において、同高3年の佐竹風汰君を初めての内弟子とすることを表明し、「時期は具体的には言えないが、将来的には佐竹を連れて独立を考えている」とコメントしました。
 佐竹の指導に際しては、師匠(元横綱隆の里・鳴門親方)の教えが中心になるとも述べています。新横綱・稀勢の里や若の里、高安らを育てた手法で、素晴らしい力士を育成していただきたいものです。

 続いては鳴門親方・琴欧洲です。
 3月3日に、佐渡ヶ嶽部屋からの独立を表明したと伝えられました。
 3月場所後に都内で部屋を設けるとのこと。ブルガリア出身の力士・親方として初めて「師匠」となることは、言うまでもありません。既に協会理事会の承認も受けているとのことですから、3親方の中では、最も早く独立することになりそうです。

 そして大島親方・旭天鵬です。
 3月5日に、友綱部屋を継承すると報じられました。
 5月場所後に、現在の友綱親方と名跡を交換して、部屋を継承するとのこと。最初から多くの弟子を持つ師匠になる形です。
 旭天鵬が大島親方となった時には、「大島部屋の再興」に期待しましたが、色々な経緯も有って、こうした形に落ち着いたのでしょう。
 協会理事会の承認が得られれば、モンゴル出身力士・親方として、初めての「師匠」となります。

 かつての人気力士(3人共、現在でもとても人気が有ると思います)が師匠となって、新しい力士を育てていくというのは、とても素晴らしいことだと思いますし、こうしたニュースが重なったことにも、何か因縁を感じます。

 旭天鵬と若の里は、現役時代にも「800勝以上」の力士同士としてのライバル関係が注目されていましたが、親方としても切磋琢磨して行くことになるのです。

 「大相撲新時代」は、多方面にわたって展開されているという印象です。
 稀勢の里の「奉納土俵入り」が、1月27日、東京・明治神宮で行われました。
 
 この新横綱による初めての「公開土俵入り」に、18,000人ものファンが詰めかけたと報じられました。

 この一年で最も寒い季節に、凄い数です。新横綱による奉納土俵入りの観客としては、貴乃花の時の20,000人に次ぐ記録だそうです。
 テレビ放送のインタビューに登場した男性ファンは「朝6時から並びました」と。

 やはり、ファンにとって「待ちに待った横綱昇進」だったのです。
 何度も何度も期待を裏切られたファンにとって、その喜びも一塩なのでしょう。

 稀勢の里の初めての奉納土俵入りは、とても良い出来であったように観えました。
 「何とも言えない大きさ」を感じさせるものだったのです。

 1月25日に昇進し、26日に「綱打ち」、そして27日に奉納土俵入りですから、常のこととはいえハードスケジュールです。土俵入りの練習時間は少ないのですが、その僅かな時間の内に「稀勢の里の土俵入り」が形作られるのですから、不思議と言うか、「土俵入りの形・雰囲気」は普段の相撲の上に成り立っていることがよく分かります。土俵入りの個性は、殊更作る必要などないものなのでしょう。

 好天の下の、新横綱・稀勢の里の明治神宮・奉納土俵入りでした。
 どんな力士にも相性の良い力士と苦手な力士があるものでしょう。

 横綱・白鵬のように、ほとんどどの力士に対しても圧倒的な勝率を誇る存在というのは、逆に珍しい、それだけ白鵬の強さが際立っているということになります。
 一方で、元大関・琴欧洲に対する安美錦のように、ほぼ「天敵」といった取組もあります。
 大相撲の面白いところです。

 さて、新横綱・稀勢の里の場合は、どうなのでしょう。データはウィキペディアの「稀勢の里」から引用しました。通算10番以上取っている力士が対象です。

 まず苦手ですが、意外なところで旭天鵬でしょうか。稀勢の里の14勝9敗です。
 負け越しているわけではないのですが、相撲の質から見て、これほど対戦成績が接近しているとは思いませんでした。旭天鵬の「土俵際のはたき・突き落とし」が威力を発揮していたのでしょうか。

 続いては、琴奨菊、これは29勝33敗と稀勢の里が負け越しています。確かに、大事な一番で何度も苦杯を舐めていた印象があります。初優勝した2017年1月場所でも、唯一の黒星を喫しています。
 稀勢の里VS琴奨菊は、かつての魁皇VS千代大海と似た関係だと思いますが、少し異なるのは、魁皇VS千代大海が、最初は千代大海が優勢だったものが、次第に魁皇が盛り返したのに対して、稀勢の里VS琴奨菊では、相当の対戦回数を重ねていながらもパターンがあまり変わらないことです。
 横綱め稀勢の里は、琴奨菊に対してどのような取り口を見せてくれるのでしょうか。

 続いては栃煌山。稀勢の里の25勝14敗ですが、意外に苦戦している印象です。
 栃煌山のさしみの良さからの「もろ差し」→寄り、に苦労しているのかもしれません。

 さらには安美錦。稀勢の里の31勝17敗です。
 安美錦の「自在の相撲」、隙があると見れば押し出したり寄り切ったりする「前に出る力をベースにした相撲」は、上位力士には脅威ということになります。

 一方、相性の良い力士です。
 
 まずは横綱・鶴竜。稀勢の里が31勝17敗と勝ち越しています。正面からの攻め合いとなれば、稀勢の里に分があるのでしょう。

 続いては、横綱・日馬富士。稀勢の里は24勝36敗と負け越していますが、このスピード十分の横綱に対して2勝3敗ペースというのは、十分勝負になっていると感じます。

 そして、横綱・白鵬。16勝43敗と大きく負け越していますが、白鵬との対戦においては「ここ一番」での強さが印象的です。
 64連勝を目指した白鵬を破った一番や、白鵬の初期の連捷記録を23で止めた相撲など、大横綱・白鵬にとっては、稀勢の里に相手に痛い黒星を喫している印象でしょう。

 稀勢の里が横綱に昇進した要因の一つとして、横綱陣との好勝負が挙げられることは、間違いありません。

 新横綱は、こうした対戦成績をどのように改善して行くのでしょうか。
 稀勢の里は、「ここ一番」の取組で星を落とすことが多かった印象があります。

 これまで何度もあった優勝のチャンスや横綱昇進のチャンスを逃すことに繋がっていたのです。

 私の妻は、「稀勢ちゃんは凄く緊張するタイプなのよ」と言って憚りません。
 大力士を「ちゃん」呼ばわりするのも、いかがなものかとは思いますが、彼女は熱心な稀勢の里ファンなのです。

 そして、1月25日の「昇進伝達式」においても、稀勢の里の緊張した様子が映像に捕えられていました。

 まず使者を迎える段階で、しつらえられた部屋で立ちながら、深呼吸をしています。その音がマイクに入るくらいに大きな深呼吸。緊張を解いていたのでしょうか。

 そして、横綱昇進が伝えられると「横綱の名に・・・」と返事をしました。この「儀式」において、最も盛り上がる場面であり、今後何度も映像として流されるシーンです。
 「名に」のところで、少しカンでしまいました。

 伝達式後のインタビューで、稀勢の里本人も「少しカンだ」とコメントしていました。

 伝達式の返答で「カンだ」のですから、これが「カミ終わり」と考えたいところです。

 横綱・稀勢の里には、どの取組においても「泰然自若」たる取り口を魅せていただきたいものです。
 「横綱」稀勢の里のキャリアには、様々な記録が在りますが、最も素晴らしいもののひとつが「15年間の土俵生活で休場が1日だけ」という記録でしょう。

 大相撲という「ハードコンタクト」を前提としたプロスポーツにおいて、デビュー以降「公式戦88場所・1,224取組*における不出場が1回だけ」というのは、驚異的なことでしょう。(*88場所の内、幕下以下12場所、十両以上76場所)
 特に、横綱や大関といった「大相撲の看板力士」という立場、「負けがこむことが許されない立場」にある力士としては、奇跡的と言っても良さそうです。

 ちなみに、その1日の休場は、2014年1月場所の千秋楽でした。右足親指の故障が悪化し、何とか取り続けていたものの、ついに千秋楽は土俵に上がることが出来なかったのです。
この取組は琴奨菊の不戦勝・稀勢の里の不戦敗という記録となりますから、稀勢の里のキャリアには「休場の表記」は無いことになります。
 この1日の休場により、稀勢の里の連続出場記録は「953」で止まってしまいました。この頃、大きなニュースとして報じられたことを記憶しています。

 横綱昇進に際してのインタビューでも、稀勢の里自身が「丈夫に生んでくれた両親への感謝」を口にしていましたが、もともと「頑丈」な肉体を授けられたとはいっても、力士になってからの精進というか、日々の稽古、本場所や巡業における取組等々における、極めて適切な対応、そして高度な注意力の継続が無ければ、決して残せる実績ではありません。

 人間なら誰しも不注意や、気が抜けた一瞬で怪我・故障に見舞われるリスクがあります。
 増して、150㎏前後の巨体を有する力士同士のハードコンタクトプレーの連続の中では、怪我・故障を回避し続けることは、極めて困難なことであることは間違いありません。

 稀勢の里という力士が、とても注意深い上に、身に着けたノウハウを日々の仕事・生活にしっかりと活かしていけるタイプであること、そしてコンディションの維持に細心の注意を払っていることが、よく分かる記録でもあります。

 この点が「稀勢の里の最大の強み」なのでしょう。

 休場が少ないという点では、横綱・白鵬も特筆されるべき素晴らしい存在ですが、稀勢の里も「本場所において、常に土俵に上がる横綱」として、「一生に一度、本場所観戦に訪れたファンの期待」に応え続けて行くという、大相撲の大看板としての最大の役割を果たしていってほしいものです。

 横綱・稀勢の里なら、やってくれるものと思います。
 1月場所で初優勝した、稀勢の里の相撲を振り返ってみようと思います。

[初日から7日目]
 この間の相撲は、堂々たる内容でした。立ち合いから相手力士を圧倒していて、安定感抜群の取り口が続いたと感じます。

 こうした相撲を展開できた大きな要因は「立ち合い」のパワーとスピードが十分であったことが挙げられるのでしょう。

 右手をしっかりと土俵について、足と手の間隔も従前よりは5㎝位広かったように見えました。もともと、立ち合い時の「足と手の距離が狭過ぎる」のではないかと言われていた稀勢の里ですが、1月場所の前半はこの点が改善され、膝が前に出て、脛にも角度がありました。このことにより、従来比数㎝低い立ち合いが実現し、大きな圧力・前に押す力が生まれていたのでしょう。
 この形からの「ぶちかまし」により、相手力士には強い圧力がかかり、体勢を崩すことが出来ましたから、左下手を素早く取ることが出来、有利な体勢を構築できたのです。

[8日目から千秋楽]
 ところが、8日目の隠岐の海との取組で、稀勢の里はこの形を採りませんでした。
 きちんと手を土俵に付けることなく、動きの流れの中で土俵に触る立ち合いを採ったのです。「高めの立ち合い」になりましたし、脛の角度も土俵に対して直角でした。前に圧力がかかり難い形でしょう。

 結果として、立ち合いの威力が減ったのでしょうか、中日から千秋楽まで、稀勢の里は「一度は相手に押され、そこからの反撃という形」の取り口に変わりました。

 千秋楽の白鵬との一番でも、土俵際の粘りで勝つには勝ちましたが、取組後のインタビューで白鵬は「(稀勢の里の体は)軽かった。一気に持って行けた・・・」とコメントしていました。

 また、9日目の琴奨菊との取組では、琴奨菊の押し・寄りを止めることが出来ず、1月場所唯一の黒星を喫しています。

 初日から7日目までの素晴らしい立ち合いを、稀勢の里が8日目以降止めてしまった理由は何なのでしょうか。
 7日目までの立ち合いでは、変化された時などにそのまま負けてしまう怖れがあると考えた可能性はあると思います。
 動きの中での立ち合いであれば、変化技にも対応できるからです。

 一方で、動きの中の立ち合いでは、本来のぶちかましの威力は半減してしまいます。

 両方のやり方のバランスの中で、どちらを選択するかというのは、「どちらの方が勝率が高いか」という点、あるいは「相手力士の力量・特徴」なども考慮して決めていくことなのでしょう。
 8日目以降、稀勢の里は「動きの中での立ち合い」を選択し、8日間を7勝1敗で乗り切って優勝しました。1月場所のこの選択は成功したと判断できそうです。

 しかし、後半の相撲には「危ないシーンが多かった」ことも事実です。
 どの取組でも、一度は押し込まれているからです。

 「横綱」に昇進する稀勢の里が、3月場所でどちらの立ち合いを選択するのかは、興味深いところです。

 私は、圧倒的な強さを披露した「1月場所・初日から7日目」の立ち合いの方が、新横綱に相応しいと感じます。
 2017年1月場所の最後の取組「白鵬VS稀勢の里」は、大相撲の歴史に刻まれる一番であったと思います。

 この場所、荒鷲や高安、貴ノ岩といった若手力士の一気の寄りに屈していた白鵬が、この一番では逆に、一気の寄りに勝機を見出そうとした取組でした。

 NHKテレビのリポートで、支度部屋で白鵬が「左四つ」になる形を何度も繰り返していると報じられていました。稀勢の里得意の左四つに自ら誘導することで、早期に両力士が密着し、自らは相手力士のまわしを取って、一気に寄ることで、寄り切り・押し出しを実現しようという目論みだったのでしょう。

 この目論見は概ね成功し、白鵬は稀勢の里を西土俵際に追い詰めました。
 ここで稀勢の里が踏ん張り、踏ん張りながら左をこじ入れ、右へのすくい投げで逆転勝利を収めたことは、ご承知の通りです。
 白鵬としては、相撲に勝って、勝負に敗れたというところでしょう。

 こうした取り口を見るにつけ、横綱・白鵬の相撲の変遷を感じます。

[第一期]
 白鵬が最も強かった時期、驚異的な勝率を誇り、63連勝を記録した時期には、「低く鋭い立ち合いから前みつを取り、上手も取って、相手には片方の回ししか許さず、寄り切りや上手投げで料理するという、「万全の取り口」が目立ちました。
 この頃の白鵬の立ち合いは見事なもので、少し右足を引いた形から、右膝が土俵から10㎝位しか離れていない形で突進し、相手力士のまわしをものにしていました。この立ち合いこそが、白鵬の相撲だったのです。

[第二期]
 その後、白鵬は相手力士のまわしを取る頻度が下がりました。その原因は、「相手力士の研究」「白鵬自身のフィジカルの衰え」等々いくつかの要因が重なったものなのでしょうけれども、いずれにしても「万全の形」になる頻度が下がったのです。
 その結果、白鵬は「かち上げ」や「張り手」を多用するようになりました。これらの手段により、相手力士のバランスやリズムを崩し、自らの有利な形を作り易くしたのでしょう。
 結果として、白鵬の立ち合いは次第に「高い」ものとなり、当たりの威力も減少していったのではないでしょうか。

[第三期]
 「かち上げ」や「張り手」といった手段がファンからの意見等も有って多用できなくなると、白鵬はスピードと連続技で勝機を見出すようになりました。相手力士の重心が落ち着く暇を与えない相撲であり、「自在の取り口」とも言えますが、見方によっては自身の重心も落ち着かない相撲ですので、失敗するリスクの上昇に繋がったのかもしれません。

 もともと白鵬は、スピード相撲が得意ではなかったはずです。

 史上最長であった、横綱・朝青龍の「ひとり横綱」時代や、朝青龍と白鵬が横綱として張り合っていた時代には、白鵬は朝青龍のスピード相撲に苦労していました。
 時には、朝青龍が体を交わした後、白鵬が自ら土俵外に飛び出していくという取組があったほどです。

 こうした経験を踏まえて[第一期]の取り口を身に着け、大横綱への道を歩み始めた白鵬でしたが、時間の経過と共にスピード相撲に回帰してきたことは、ある意味では皮肉なことかもしれません。

 そして、1月場所では荒鷲や貴ノ岩のスピード相撲に敗れたのです。

 三種類の全く異なると言っても良い取り口を、いずれも「高いレベル」で身に着け、白星を積み上げていったという点からは、白鵬の力士としての非凡さ、極めて高い能力を感じます。
 
 史上最多37度の優勝を誇る大横綱・白鵬には、「第四期」の相撲を期待したいところです。

プロフィール

カエサルjr

Author:カエサルjr
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