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 何度か書いていることですが、大相撲には、十両で全勝優勝すると、大関以上に昇進するという法則というか定理が有ります。

 今回の栃ノ心関の大関昇進により、その法則が健在であることが証明されました。

 15日制になってからの十両全勝優勝と最終の番付は、以下の通りです。

① 1955年(昭和30年)3月場所 栃光→大関
② 1961年(昭和36年)11月場所 豊山→大関
③ 1963年(昭和38年)11月場所 北の富士→横綱
④ 2006年(平成18年)3月場所 把瑠都→大関
⑤ 2014年(平成26年)9月場所 栃ノ心→大関(現役)

 60年以上の期間に、僅か5力士しか「十両全勝優勝」を果たしていないことにも、少し驚きますが、その5力士がいずれも大関以上に成っているという事実は、とても凄いことだと思います。
 例外の無い、「確率100%」なのですから、まさに定理と呼んで良いレベルでしょう。

 年6場所で60年間としても計360場所になりますから、その詳細な内訳は把握していませんが、感覚的には「11勝4敗」が、十両優勝では最も多い星取りだと思います。
 次に多いのは「10勝5敗」と「12勝3敗」が同数位でしょう。

 「13勝2敗」や「14勝1敗」というのは、なかなか観ることが出来ない好成績だと思います。

 ましてや「15戦全勝」というのが、平成になって、30年間で2度しか達成されていないのですから、大記録と評価してよいのでしょう。

 十両には、「幕ノ内経験者」「三役経験者」といった強豪が居ることが多いのです。
 加えて、幕下から関取になったばかりの「伸び盛りの力士」も居ますから、そうした海千山千、多士済々の中で、「15日間1度も負けない」というのは、至難の技であろうことは、容易に想像できます。
  「負けない型を保持する元幕内・三役力士」を相手にしても勝つことが出来るという面では、「とても強い力士」でなければ十両全勝優勝は出来ないのは、自明の理でしょう。

 加えて感心させられるのは、「十両全勝優勝」を果たした力士は、故障・怪我にも強く、大関という高い番付に駆け上がっているという点です。

 「とても強い力士」に成るのも大変なことですが、「とても強くて丈夫な力士」になるのは、当然ながらもっと大変なことでしょう。

 「十両全勝優勝」という事象が、その後のキャリアにおける「丈夫な力士」であることをも担保しているとすれば、凄いことだと感じます。

 また、取口をも示している可能性があります。
 乱暴な取口では、怪我・故障をし易いでしょう。そうすると、「十両全勝優勝」を成し遂げる力士は、「丁寧な取口」「怪我をし難い取口」であると推定されるのです。
 取口をも想定させる記録というのは、滅多には存在しないであろうと感じます。

 栃ノ心の場合なら、膝を故障して幕下まで番付を下げながら、そこで丈夫な体作りと、故障しにくい取口を学び、開発したということになります。

 大相撲において、出世して行く過程で、その力士の最終番付を示す、という明確な記録として「十両全勝優勝」が存在します。

 本当に「深く」「不思議な」記録だと、何時も思うのです。
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 5月場所は14日目を終えました。

 14日目の直接対決、鶴竜VS栃ノ心の取組を制した、横綱・鶴竜が1敗でトップに立ちました。
 12連勝と走った栃ノ心でしたが、13日目・14日目と連敗して2敗目となりました。

 今場所・大関取りの場所の栃ノ心は、初日から素晴らしい取り口を魅せてくれましたけれども、さすがに終盤に「疲れ」が出たように観えます。

 悲願に向けて白星を積み上げるしかなかった栃ノ心が、12日目の白鵬戦を完勝して、僅かながら「ホッとした」のは、「人間であれば」仕方のなかったことのように観えます。

 1月場所14勝(優勝)、3月場所10勝と積み上げてきた栃ノ心にとって、5月場所は10勝でも、3場所計34勝となりますから、大関昇進に向けて十分な記録になると予想されました。

 とはいえ、大関昇進の直前の場所が「10勝」というのも、やや少ない感じがしますし、最初の14勝が平幕における数字だという、「いちゃもん」に近い見方(優勝しているのですから、平幕だろうが三役だろうが、どちらでも良いことは明白です。1月場所で三役に居た、どの力士にも優勝する権利はあったのですから)もあるかもしれませんので、「11勝」なら確実であろうと思われました。3場所35勝というのは、過去の例を見ても、高いレベルの記録なのです。

 その「11勝」を、栃ノ心は「11連勝」で示現しました。凄いことです。

 再び、とはいえ、その11勝の内に「不戦勝がひとつある」という、「いちゃもんの上塗り」のような見方もあるかもしれません。不戦勝は、どの力士にも有り得ることですから、どちらかと言えば「相撲の神様のプレゼント」、その力士の持つ「星の強さ」と見るべきではないかと、私などは感じますが、とにかくそうした見方が存在する可能性はありますから、大関を確定するために「12勝」が求められる状況でもあったのかもしれません。(3場所36勝というのは、今後大関に挑戦する力士のことを考えると「高すぎるバー」であろうとは思いますが・・・)

 そして、その「12勝」を栃ノ心は、12連勝でやってのけたのです。それも、12連勝目は横綱・白鵬戦でした。

 12日目まで「遮二無二」走ってきた栃ノ心が、12連勝したところで「ふと我に帰り」、「成し遂げたかな」と感じたことも自然なことでしょうし、そのタイミングで一気に「疲労」が、特に「心の疲労」が出て来たとしても、誰も文句は言えないでしょう。

 千秋楽で何が起こるかは分かりません。
 横綱対決で鶴竜が敗れ、栃ノ心が勢に勝って、決定戦に持ち込まれ、栃ノ心が逆転優勝を飾る可能性は、当然ながら有るのです。

 とはいえ、大関昇進を目指す3場所で2度の幕内最高優勝と言うのは「凄過ぎ」という感じもします。
 「大関」という大相撲における最高位のひとつを目指す力士が、3場所目で求められる勝ち星数に向かって、序盤で1敗、中盤で1敗、終盤を何とか乗り切って必要な勝ち星数を実現することが、決して珍しいことでは無い中での「3場所で2度の優勝」というのは、考えられない程高いレベルの成績でしょう。
 それは「奇跡」に近いものだと感じます。

 千秋楽の結果は結果として、5月場所の栃ノ心関は14日間、立派な、本当に立派な相撲を魅せてくれました。
 その大活躍に、大きな拍手を送らせていただきます。
 
 5月場所の2日目、5月14日、東幕下39枚目の阿夢露(アムール)の引退が発表されました。
 34歳でした。

 2001年、18歳の時にロシアから来日し、2002年5月場所に初土俵、幕下と三段目を行ったり来たりしながら次第に力を付けました。
 その間、大相撲界は2011年3月場所の「八百長問題に伴う中止」といった激震を受けていましたから、阿夢露の相撲人生は「大相撲の浮沈と共に歩んだ」と言っても良さそうです。

 そして、2012年1月場所に西十両11枚目に昇進し、「関取」となりました。
 阿夢露の相撲人生において、最も嬉しい出来事では無かったかと思います。

 この場所、阿夢露は勝ち続け、11日目を終えて10勝1敗と十両優勝も狙える快進撃でした。
 しかし、好事魔多し。
 12日目の琴勇輝との取組で右膝前十字靱帯断裂という大怪我を負ってしまいました。
 
 この後、2012年3月場所から11月場所まで「5場所連続休場」し、2013年1月場所の番付は序二段まで下がりました。
 力士の夢である「関取」の地位に昇りながら、僅か12日間しか相撲を取ることが出来ず、怪我により序二段まで下がるというのは、肉体的にはもちろんのこと、精神的にもとても大きなダメージを受けたことでしょう。
 ここからの「心身両面の回復」というのは、至難の技に見えます。

 しかし、ここからが阿夢露の真骨頂でした。

 2013年1月場所を7戦全勝の序二段優勝とすると、三段目を2場所で通過し、幕下も4場所でクリアして、2014年3月場所には再び十両に昇進したのです。「関取」へのカムバックでした。

 そして、今度は十両でも4場所連続で勝ち越し、2014年11月場所には東前頭14枚目に昇進したのです。
新「入幕」です。

 この阿夢露の怪我からの回復と、「一直線の入幕」=序二段優勝から「11場所連続勝ち越し」という、素晴らしい成績はなかなか見られないものでしょう。
 まず、「しっかりと怪我を直し」、「治療の間のトレーニングを欠かさず」、「稽古における取組も可能な範囲で行うことにより相撲勘も維持」してきたからこその「大復活」であろうと感じます。

 この「大復活」の経験・ノウハウは、「阿夢露独自のもの」として、今後相撲界の後輩力士の為に活かしていただきたいものです。

 2014年11月の新入幕の場所は、久し振りに負け越して、1場所で十両に戻りましたが、直後の場所で勝ち越して2015年3月場所には再び東前頭16枚目に上がりました。再入幕です。

 そして、ここから2016年5月場所までの「幕内での8場所」が、力士・阿夢露のプライムタイムです。(最高位は2016年11月場所・東前頭5枚目)

 前みつを取り、頭を付けての粘り強い相撲は、館内を大いに沸かせました。
 191cmという長身を折り曲げて、低い姿勢で、大柄な力士、体重の重い力士と、丁々発止の取組を披露してくれたのです。
 「まるで日本出身力士の様な粘り強い相撲」であると評した友人が居ますが、私としては「日本出身力士の手本となるような取口」であろうと感じています。
 知人の大相撲「玄人筋」の評価も、とても高いのです。

 2016年5月場所で怪我をして負け越し、7月場所で十両に下がってからは、阿夢露はなかなか本領を発揮することが出来ませんでした。さすがの阿夢露も今度は復活できなかったのです。

 番付は幕下まで下がり、今般の引退表明となってしまいました。

 精神力ならば、まだまだ十分に取れるレベルにあるのでしょうが、体が付いてこなかった形であろうと思います。

 見事な「大復活」と素晴らしいプライムタイム、そして何より「大向うを唸らせる渋い相撲」を魅せていただきました。

 阿夢露関、お疲れ様でした。
 5月13日から東京両国国技館で開催される、大相撲2018年5月場所の注目力士検討です。

 横綱・稀勢の里の復活はなるのか、大関・高安の初優勝→綱取り、関脇・栃ノ心の活躍→大関取り、はなるのか、等々見所満載の5月場所が始まります。

 2017年から目立つ「世代交代」も、様々な力士が登場し、若手と言っても直ぐには特定できない程に「多彩」です。
 今場所も「予想が難しい場所」になりそうです。

1. 横綱陣
 先場所優勝を飾った鶴竜が中心となるのでしょうが、稀勢の里・白鵬の両横綱の復活も期待されるところです。

 とはいえ、やはりここは鶴竜の安定感に期待することとします。

 稀勢の里は、故障からの回復の過程で「自分の相撲を忘れてしまった」ような感じが有ります。もともと、相手力士の重心を「左右に微妙に動かしながら前に出る相撲」であったと思いますが、今は「正面からただ押している」形ですので、鳴門部屋伝統の高い重心が悪い方に出ているように観えます。左右の腕で相手力士を揺さぶり続ける取り口を思い出していただきたいものです。

2. 大関陣

 ここは、準優勝と呼んで良い活躍を続けている高安に期待します。
 3月場所千秋楽の横綱・鶴竜との取組は、迫力満点でした。序盤の取りこぼしに注意して、高いレベル(14勝以上)の初優勝を飾る様なら、一気に綱取りも夢ではないでしょう。

3. 関脇以下の力士

③関脇・逸ノ城

 このところの強さは本物でしょう。
 上がってきた頃より強くなっていると思います。後は「白星への執念」でしょうか。

④北勝富士

 1月場所、3月場所は精彩がありませんでした。どこか故障していたのではないでしょうか。本来の地力を発揮すれば、この番付ならば二桁勝利もあります。

⑤御嶽海

 3月場所は、少し疲れが観えました。長く三役を張っている疲れでしょうか。今場所は、心機一転、本来の取り口、スピード十分な相撲を魅せていただきたいものです。

⑥栃ノ心

 本来ならば、3番目に上げなければならない力士ですが、右腕の故障が報じられています。大切な場所を前にして残念なことですが、序盤を乗り切り、「勢いに乗って」痛みを吹き飛ばしてほしいものです。

⑦嘉風

 このところ、本来の自在相撲がやや影を潜めています。少し動きにキレが無いのです。とはいえ、体調が戻っていれば、この番付ならば存分の活躍が期待できます。

⑧貴景勝

 土俵外の騒動の影響を相当受けていたのではないでしょうか。ある程度すっきりしてきましたので、本来の押し相撲に専念できそうです。

⑨安美錦

 ファンとしては、外すわけには行きません。このところ「前に出る力」が足りませんけれども、そこは当代髄一の「技士」ですから、研究の上で克服してきていると期待します。

⑩旭大星

 「大横綱は北海道から」という大原則があったものですが(大鵬、北の湖、千代の富士はいずれも北海道出身です)、このところ北海道出身の幕の内力士はしばらく居ませんでした。そして、満を持して旭大星が登場したということになります。
 最強の相撲どころの代表として、思い切り取っていただきたいものです。

 5月場所は、以上の10力士に期待します。

 新三役の遠藤、前頭筆頭の魁聖、前頭2枚目の阿炎、3枚目の豊山、14枚目の豪風などなど、他にも期待したい力士が満載の5月場所なのです。
 千秋楽・結びの一番、横綱・鶴竜と大関・高安の取組は、取り直しとなりました。

 高安が土俵に落ちるのと、鶴竜の足が土俵外に出るのが同時、というのが勝負審判の協議の結果でした。この判断は、テレビでVTRを観ていた人達にとっても妥当なものと感じられたでしょう。
 鶴竜の足が俵を踏み越えて、土俵外の砂に触れていたというのは、取組の最中には分かり難いものでしたから、それを見つけた審判の眼は、さすがと言う感じがします。

 ただし、その「物言い」のタイミングは遅すぎました。
 
 行司が懸賞金を左の脇に抱え、まさに勝ち名乗りを挙げようという瞬間まで、物言いは行われなかったのです。
 勝負審判は、相当前から鶴竜の足の動きに付いて気が付いていた筈ですから、もっと早く物言いを付けるべきだったのです。

 何故躊躇していた、物言いが遅くなったのでしょうか。

 今場所の(あるいは今場所に限らず最近の)「物言いは遅い」ものが多いのですが、この取組の物言いも「遅すぎる感じ」でした。
 時には、勝ち名乗りを挙げている最中に「物言い」というシーンさえ見られます。
 勝ち名乗りが始まってしまえば、「時間切れ」の筈なのですが・・・。

 勝敗に疑問があれば直ぐに物言いを付けるべきで、いったいこの「十数秒」の間、勝負審判は何をしているのだろうかと感じてしまいます。まさか「他の誰かが物言いを付けるのを待っていた」わけではないとは思いますが・・・。

 何しろ、5名の勝負審判は、各々担当する持ち場があるので、「自分以外の勝負審判が気付かない点」、つまり「自分だけしか分からないポイント」を見つけ出すのが仕事なのですから、「他の審判の物言いを待った」ところで、出てくる可能性は低いのです。

 また、「物言いを付けると、軍配が上がった力士に悪い・申し訳ない、当該力士の師匠に悪い」といった感覚があるのでしょうか。そんなことは無いとは思いますが、そんな感覚を持っている人は、勝負審判と成る資格が無いことは明らかです。

 微妙な勝負において、取組後、軍配は自分に上がったものの、物言いが付くかもしれないと感じていた力士が、「付かなかった」のを見てホッとしてしまえば、「遅い」物言いの為に取り直しになった時、「取組に臨む自らの気持ちを構築する」ことが難しくなってしまうかもしれません。物言いが遅いことが、勝敗に大きな影響を与える怖れも有るのでしょう。

 ひとつの取組の結果によって、力士の人生が左右されることは、珍しいことでは無いでしょう。大袈裟に言えば、力士は「人生を賭けて」土俵に上がっているのです。

 勝負審判も自らの判断を信じて、あるいは少しでも疑問を感じたら、直ぐに「物言い」を付けていただきたいものだと思います。
 
 千秋楽結びの一番、鶴竜と高安の取組は、横綱と大関の対戦、3月場所を締めくくるに相応しい「大相撲」となりました。

 立ち合いから、高安が猛然と攻めます。ぐいぐいと前に出て横綱を追い込んだのです。

 ここで鶴竜は、今場所を支えてきた技、「黄金の引き足」とでも呼ぶべき体制を作りました。俵沿いに回り込み、高安をはたき込みます。
 鶴竜の足が残っていた状況で、高安は土俵に倒れ込んだように観えました。
 軍配は鶴竜に上がりました。

 14日目に優勝を決めた相撲も「はたき込み」でものにしていた横綱の「3月場所の必殺技」がまたも炸裂したかに観えました。

 行事が「分厚い祝儀袋」を抱えて、まさに勝ち名乗りを挙げようとした時、「物言い」がかかりました。

 さて、随分と遅い「物言い」から、長い協議の後、この取組は「取り直し」となりました。
 鶴竜の足が俵の外の砂に触れるのと、高安が落ちるのが、同体だったのです。

 そして「取り直し」の一番。
 立ち合いから高安が猛然と攻めました。これは最初の取組と同じでした。
 高安の押す勢いは全く衰えることなく、そのまま押し出しました。スピード十分な高安改心の一番でした。

 この時、NHK大相撲放送の解説者・北の富士氏が「怒ったね」と呟きました。

 高安が「怒った」ということでしょう。

 「絶対に勝つ」という気迫で、この取組に臨んだ大関の「思い」が形となった一番だったのでしょう。
 
 高安は、これで2場所連続12勝3敗となりました。

 5月場所で優勝することが出来れば、一気に「綱取り」も夢では無いと思います。
 千秋楽・三役揃い踏みの後、素晴らしい取組が観られました。

 栃ノ心と逸ノ城の三役対決でした。

 「がっぷり四つ」となったら、滅多なことでは負けない両力士の相撲は、文字通り「がっぷり四つ」の右四つとなったのです。
 どちらも、この体制になれば「負けない」と主張しているような流れでした。

 まず、逸ノ城が栃ノ心の上手を切りに行きました。そして一度は切れました。
 しかし栃ノ心は、直ぐに上手を再び取りました。

 強烈な引き付け合いが続きました。他の力士では「ひとたまりもない」様なパワー満点の引き付け合いですが、両力士一歩も譲りません。

 再び逸ノ城が仕掛けます。「つり」に行ったのです。
 土俵の真ん中で「つり」に行くというのも凄いものですが、その相手が「当代随一のつりの名手」栃ノ心なのですから、これには驚かされました。栃ノ心も驚いたのではないでしょうか。
 栃ノ心の両足が一瞬浮きかけましたが、さすがに抑え込みました。

 ここまでは、逸ノ城の積極的な仕掛けが印象的でした。この「積極性」が、このところの逸ノ城復活の鍵なのでしょう。

 逸ノ城が攻め、栃ノ心が守るという展開が続きましたが、ついに栃ノ心が攻めに出ました。左上手からの投げで逸ノ城を揺さぶり、そのまま寄り立てます。

 そして寄り切りました。

 やはり、四つ相撲となれば、栃ノ心に「一日の長」が有った訳ですが、その栃ノ心とて、がっぷり四つの形のままで寄り切った訳ではありませんから、相当に「互角の四つ」であったことになります。

 見事な「大相撲」でした。
 「10勝目を賭けた」三役同士の一番は栃ノ心が勝ち切りました。
 栃ノ心は5月場所に「大関昇進」を賭けることになるのでしょう。

 9勝6敗に終わったとはいえ、逸ノ城の強さも際立ちました。
 落ち着いて、216㎏の体重を活かした相撲を展開すれば、容易なことでは負けないことを証明したのです。

 「栃ノ心VS逸ノ城」は、大相撲の看板取組になりました。
 3月場所は、横綱・鶴竜が13勝2敗で優勝しました。
 2017年の苦闘を乗り越えての見事な優勝でした。

 そして、「準優勝」と呼んでも良い12勝3敗の力士が2名いました。
 大関・高安と前頭六枚目・魁聖でした。

 一時は「二場所連続の平幕優勝か」とも期待された魁聖の、15日間を観て行きましょう。

 初日の北勝富士との対戦は力強いものでした。体調の良さが感じられたのです。
 とはいえ、自己最多勝ち星を挙げる場所に成ろうとは、思いもよりませんでした。

 2日目の阿炎から9日目の竜電までの8日間は、一言で言えば「とても安定した取口」でした。
 故障のせいか、これまではどうしても取組において「腰の弱さ」が出がちだった魁聖なのですけれども、今場所は「どっしり」と安定していました。腰が安定していれば、もともとの大きな体と、意外に?器用な取口が生きるのです。

 「9連勝」で10日目の逸ノ城戦を迎えました。横綱・鶴竜との並走でした。

 この逸ノ城との一番で魁聖は今場所の初黒星を喫しました。
 「がっぷり四つ」から力負けした形でしたが、今場所の逸ノ城とがっぷり四つになって勝ち切ることが出来る力士は、全体でも「数えるほどしか」いない(相撲関係者の中には栃ノ心しか居ないという人もいます)ので、これは魁聖が取口を間違えたというところなのでしょう。
 ひょっとすると、「がっぷり四つでも勝負になる」と魁聖が考えていたのかもしれません。それ程に好調だったのです。

 12日目の遠藤との一番は、「上手く取られ」ました。まさに「遠藤の技能」が勝ったのです。
 残念ながら2敗目を喫した魁聖でしたが、気持は折れていなかったというか、元気いっぱいでした。
 13日目の横綱戦について聞かれた時「とても楽しみです」と応えています。

 幕ノ内最高優勝に大きな影響を与える13日目結びの一番は、横綱・鶴竜が貫録を示しました。「動きの速さ」で勝ったのです。今場所こそはと意気込んだ魁聖でしたが、力及ばずでした。

 番付と比べて上位の力士との対戦はこれで終了しましたが、14日目・千秋楽と番付に見合った相手との相撲では、「3月場所での強さ」を如何なく発揮しています。
 特に千秋楽の「12勝を賭けた」勢との取組は、両者の持ち味が出た、素晴らしい相撲でした。魁聖のこの場所の「安定感」が発揮されたのです。

 魁聖は「敢闘賞」を受賞しました。
 文句無しの受賞であったと思います。

 コンディションさえ整えば三役の力があることを、証明して見せたのです。

 今後の活躍をも予感させる、素晴らしい15日間でした。
 3月11日に開幕する、2018年の大相撲春場所の注目力士検討です。

 1月場所では、平幕の栃ノ心が優勝しましたが、現在の大相撲は三役から幕ノ内上位までの力士の力の差がとても小さくなっていますので、3月場所も「誰が優勝するか分からない」状況が続くと思います。
 1日たりとも眼が離せない場所なのです。

1. 横綱陣

 このところ、横綱陣にとっては苦しい場所が続いていますが、3月場所も早々に稀勢の里の休場が報じられました。

 こうなると、鶴竜と白鵬の2横綱に期待することになります。

 鶴竜は、1月場所の10日目までと11日目以降は「別人」のような相撲でした。
 10日目までの相撲は、特に9日目までの相撲は「キャリア最強」という印象でした。
 ところが、10日目のややバタバタした相撲から、11日目以降は「前に出る圧力」が一気に衰えてしまったのです。
 「休場明け、久々の本場所の疲労蓄積」が原因であれば、3月場所は期待できることになります。

 白鵬は、故障の回復度合いがポイントとなるのでしょうが、これはなかなか報じられていません。

 難しいところですが、3月場所の横綱陣では、鶴竜に期待したいと思います。

2. 大関陣

 高安に期待します。

 1月場所8日目からの8連勝は、「終盤に弱い」という風評を一蹴するものでした。
 そろそろ「大関としての土俵」にも慣れてきたと感じます。
 初優勝に向けての15日間に期待したいと思います。

3. 関脇以下の力士

③関脇・御嶽海

 1月場所は、7連勝と走りながら、8日目から1勝7敗と、こちらも「別人のような」内容でした。とはいえ、これで5場所連続の関脇在位ですから地力は十分でしょう。
 こちらも初優勝に向けて、頑張っていただきたいものです。

④小結・逸ノ城

 2017年11月場所、2018年1月場所と2場所連続二桁勝利、特に1月場所は前頭筆頭での10勝でした。「怪物」が復活しつつあるのは間違いないでしょう。こちらも優勝候補の一角だと思います。

⑤北勝富士

 1月場所は好スタートを切ったものの、後半は自分の相撲が全く取れませんでした。まだまだ「自分の相撲」が固まっていないというか、時々自分の相撲を忘れてしまうような感じがします。素早い動きで前に出ながら勝機を見出す相撲を、思い出していただければ、二桁勝利も可能でしょう。

⑥関脇・栃ノ心

 1月場所の様な相撲、「徹底して前に圧力を掛け続ける相撲」が取れれば、3月場所も好成績が期待できます。二桁勝利を挙げて、大関への足掛かりとして欲しいものです。
 もちろん、連続優勝と成れば、一気に大関昇進です。

⑦朝乃山

 1月場所は、7日目から13日までの1勝6敗が響きました。この間は、不思議なほど体に力が入らない様子でしたが、14日目と千秋楽は復活した印象です。力はありますから、3月場所では自分の相撲を取り切ってほしいと思います。

⑧碧山

 体調が戻っていれば、前頭17枚目の力士ではありません。もりもりと押す相撲に期待します。

⑨阿武咲

 初めて「壁」にぶち当たった1月場所でした。得るところが多かったことでしょう。この力士のスピードと思い切りの良さは魅力です。3月場所の反攻が楽しみです。

⑩遠藤

 前頭筆頭の番付で、遠藤の相撲がどこまで通用するのかは、とても興味深いところです。
 下半身の怪我からようやく回復した感が有りますから、初の三役に向けての活躍が期待されます。

 3月場所は、以上の10力士に注目します。

 世代交代真っ只中の大相撲ですが、幕ノ内上位の充実ぶり、布陣は眼を見張るものが有ります。
 とても面白い場所になることでしょう。
 1月場所は栃ノ心の優勝で幕を閉じましたが、優勝力士栃ノ心の髷を結う床山さんが話題になっています。
 1月28日の朝日新聞デジタルの記事「定年前・・・優勝力士の髪結う夢かなった 春日野部屋の床末」(竹園隆浩氏著)をとても楽しく読ませていただきました。

 現在63歳の床末(とこまつ)は、あと1年半で定年を迎えるのですが、これまで優勝力士の髪を結ったことが無かった、正確には、優勝力士が表彰式に出る直前の髪結いをしたことがなかったということになるのでしょうが、その床末が、1月場所の栃ノ心の優勝、名門・春日野部屋にして46年ぶりの優勝により、その機会を得たのです。

 優勝を決め、笑顔いっぱいの関取が、東の支度部屋の最奥、普段は横綱が座る場所に陣取り、マスコミのインタビューに応じながら、表彰式への身支度をする時間帯、床山は渾身の技を駆使して「大銀杏」を整えるわけですが、この「時間」は力士にとっては勿論として、床山にとっても「晴れ舞台」なのです。多くの記者に囲まれながらの髪結いは、何と華やかで、晴れがましいことでしょう。

 とはいえ、床山・床末にとっては、これが初めての場でした。

 床末は、床山の中で最高位の「特等床山」ですが、大相撲界の特徴としての「部屋付」ですから、春日野部屋の力士が優勝しない限り、このチャンスはありません。
 床山の世界における地位がどんなに高くても、所属部屋から優勝力士が出ない限りは、この晴れ舞台には立てないのです。

 もうひとりの「特等床山」(そもそも現在の大相撲界に2人しか居ないというのが凄い)である床蜂(とこはち、63歳)は、なんと宮城野部屋付ですので、横綱・白鵬の髪結いを担当し、40回の優勝における表彰式前の髪結いを経験してきました。
 同じ「特等床山」でも、床末とは大違い。

 ほとんど諦めていたかもしれない「晴れ舞台」が、定年まで1年半というタイミングで床末に訪れるのですから、人生と言うのは摩訶不思議なものです。

 この記事には、14日目、初優勝を決めた後の栃ノ心の髪を結う床末の写真が掲載されていますが、千秋楽の表彰式、天皇賜杯を拝戴する前の髪結いの時の、床末の表情をゆっくりと見てみたかったものです。

 もちろん「髪結い」が仕事、それも最高峰の仕事人ですから、真剣そのものの様子でしょうが、その真剣な表情の中に、何とも言えない「喜び」が、「満足感」が、「誇り」が、滲んでいたのでしょう。
[14日目・東京両国国技館]
栃ノ心(寄り切り)松鳳山

 13日目まで1敗でトップに立っていた前頭3枚目の栃ノ心が、松鳳山を寄り切りで破り、13勝1敗として、千秋楽を待たずに幕ノ内最高優勝を決めました。
 初土俵から12年、30歳3か月での初優勝でした。

 今場所の栃ノ心の相撲は、本当に素晴らしいものでした。
 どっしりと腰が安定し、前に出る流れの中での積極的な攻めが続きました。
 これまで時折見られた、「がっぷり四つからの力勝負」という取組は、少なかったと思います。
 取り口に「良い流れ」が有ったのです。

 この取組でも、松鳳山との激しい突き合いから、松鳳山のタイミングの良いいなしが出ました。栃ノ心もバランスを崩しかけましたが、体勢を立て直して左下手を入れて寄り立てました。右の上手を取ることは、最期までできませんでしたが、前に出る圧力が十分だったのです。
 今場所を象徴するような取り口であったと思います。

 今場所の相撲内容を観る限り、「1月場所の幕ノ内力士の中で最も強い」ことは明らかで、優勝も自然なことだったと感じます。

 膝の大怪我を負い、幕下の下位に下がっていた頃、手術を前にした栃ノ心に会った方から話を聞きました。
 手術が決まり、同じように膝を怪我していた力士に対して「痛くない?」と聞いていたそうです。優しい人柄が滲んでいます。

 もともと場所後には、ジョージアで出産した奥様と赤ちゃんに会いに行くと報じられていましたので、何にも勝る、嬉しい報告が出来るのでしょう。

 本ブログでは何度も書いていますが、「十両で全勝優勝した力士は大関以上に昇進する」という大原則が有るのです。

 栃ノ心関には、この勢いで大関に駆け上がっていただきたいと思います。
 大相撲2018の1月場所は、場所前から危惧されていた横綱の休場、白鵬と稀勢の里が相次いで休場するという、残念な事態となりましたが、一方で番付の上位から下位まで全勝の力士が居るという、楽しみな展開でもあります。

 まずは前頭15枚目の朝乃山。
 初日から体が動いています。もともと力の有る力士ですから、体調さえ良ければ、この番付なら強いだろうとは予想していましたが、予想以上の快進撃。
 白星を積み重ねていただき、二桁、あるいは平幕優勝も目指してほしいものです。

 続いては前頭3枚目の栃ノ心。
 今場所は脚の具合も良く、持てる力を存分に発揮しています。「十両を全勝優勝した力士は大関以上まで昇進する」という大原則?(これまで例外無しの法則)がありますが、栃ノ心は「十両全勝優勝力士」のひとりなのです。これ位の成績を残すのは当然という意見もあるでしょう。
 大関昇進を目指して、その足場となる場所にして欲しいものです。

 続いては関脇御嶽海。
 今や大相撲の看板力士のひとりとなった感が有りますが、今場所も持ち味である「本場所での強さ」を如何なく発揮しています。幕ノ内で、2017年の6場所すべてにおいて勝ち越した唯一の力士ですから、その安定感は、現在の角界NO.1でもあります。
 2横綱が休場した場所ですから、優勝候補の一角となることでしょう。

 そして横綱鶴竜。
 「進退のかかる場所」で、さすがの相撲を展開しています。今場所は押されてもなかなか後退せず、悪い癖である「はたき」も出ていませんから、まずは好調と言うところでしょう。このまま落ち着いた取り口を継続できれば、優勝の本命です。

 7日目には、早くも「全勝対決」が組まれました。結びの一番、鶴竜と栃ノ心です。
 これでひとりは1敗になるのですけれども、いずれにしてもこの4力士が2018年1月場所の主役であることは間違いないでしょう。
 1月14日、両国国技館で開幕する2018年1月場所における注目力士の検討です。

 昨年末来、いろいろな事が起こり、落ち着かない大相撲界ですが、こういう時こそ本場所での充実した土俵を観たいものです。

 さて恒例の検討です。

1. 横綱陣

 「騒動」の渦中にある横綱陣ですので、今回は選定しないことにします。

 3名の横綱には、「横綱らしい相撲」を披露していただきたいと思います。

2. 大関陣

 このところ「影の薄い」大関陣ですが、横綱陣が土俵の地固めを行うのが難しい場所でしょうから、大関陣の奮起が期待されるのは自然な流れです。

 1月場所は、豪栄道、高安の両大関の活躍に期待します。

 豪栄道には持ち前のスピード溢れる相撲を、高安には勝ち負けにあまり拘らず、持ち味の「モリモリ相撲」に集中していただきたいと思います。

3. 関脇以下の力士

① 関脇・御嶽海
 今や大相撲の看板力士のひとりとなりました。本場所に強いという特徴を活かして、展開次第では優勝争いに参加してほしいものです。

② 小結・阿武咲
 「取り口を憶えられた」感のあった先場所でしたが、阿武咲もこれで三役の相撲を把握できたと思います。スピードとパワーを併せ持った相撲で、この壁を突破してくれることでしょう。

③ 朝乃山
 前頭16枚目まで番付を落としました。本来の実力を持ってすれば二桁勝利も可能だと思います。

④ 遠藤
 9月場所、11月場所と本来の相撲が戻ってきています。故障から、ようやく回復してきたのでしょう。相撲の上手さでは当代屈指の力士ですので、上位との対戦が予想される1月場所でも素晴らしい相撲を魅せてくれることでしょう。

⑤ 北勝富士
 先場所は11勝4敗で技能賞を受賞しました。前頭筆頭に上がった今場所も、横綱、大関陣を相手にした大活躍が期待できます。

⑥ 阿炎
 新入幕です。前に出る力が加わった「牛若丸相撲」に期待します。

⑦ 逸ノ城
 次第にかつての相撲が観られるようになってきました。大関取りに向けての活躍が期待されるところです。

⑧ 安美錦
 先場所は、前に出る形が出ない中、なんとか勝ち越しました。久し振りの幕ノ内での相撲で、何かを思い出してくれたことでしょう。番付が上がる程に持ち味が生きる相撲に期待します。

 様々な面で「変革の時期」に来ている大相撲界ですが、幕ノ内力士の「世代交代の時期」でもあろうと感じます。

 1月場所も数多くの力士が新入幕、再入幕を果たしています。

 三役、幕ノ内上位、それぞれの番付けにおいて、「次代を担う力士」の登場が待たれるところです。
 大相撲の12月冬巡業、九州・沖縄巡業が実施されています。

 連日の大盛況です。

 開場前の入口には、ファンの長蛇の列。
 どの顔にも、大相撲観戦を楽しみにしている「笑顔」が溢れています。

 テレビのインタビューには「お相撲さんを観るのが楽しみ」というコメントが多いように感じます。

 やはり、「大きな相撲取りの姿そのもの」が、ファンにとっての最大のご褒美なのでしょう。
 スポーツにおける「大きいということの非日常性」の偉大さを再び感じます。

 「お相撲さん」からサインを貰ったり、握手をしたり、巡業における力士とファンの距離はとても近いのです。
 子供たちが、力士を見、力士に触れ、抱きかかえてもらい、歓声を上げているのです。

 当然のことながら、地方のファンが大相撲や力士を生で観る機会は非常に少ないのですから、巡業が数年に一度の、ひょっとすると一生に一度の、滅多に無いチャンスということになります。

 老若男女を問わず、ファンの皆さんの屈託のない笑顔は、それ自体が素晴らしい風景だと思いますし、現在、他のあらゆるジャンルを通じても、世代を問わずにこれだけの楽しい時間、エンターティンメントを提供できるコンテンツは、そう多くは無いでしょう。

 大相撲の力は、想像以上に大きいものであることを示す情景ですし、長い歴史の礎となっている「大相撲の魅力・本質」なのかもしれません。

 この大らかさ、明るさを見ると、どこぞで行われている、訳の分からない騒動の、矮小さ、醜さを改めて感じます。
 千秋楽の相撲放送(NHK BS-1)が始まって直ぐに、幕下の明瀬山と豊ノ島の一番となりました。

 明瀬山も幕ノ内経験者ですが、ご存じの通り豊ノ島は三役経験者というか「三役の常連」でした。
 その豊ノ島が、大怪我(アキレス腱断裂)の為に番付を落としていて、取組を眼にすることも少なくなっていました。
 
 そういう意味では、「豊ノ島がテレビ放送の時間に帰ってきた」とも言えるのでしょう。

 明瀬山との、4勝2敗同士の一番は、立ち合いからの鬩ぎ合いから、豊ノ島が力強く前に出ました。
 元気いっぱいの取り口です。

 相当回復しているように観えました。

 豊ノ島は34歳、まだまだ老け込むには早すぎます。
 2018年の大活躍が期待されます。
 11月26日に千秋楽を迎えた九州場所ですが、7勝7敗で臨んだ安美錦が千代翔馬を上手出し投げで破り、勝ち越しを決めました。

 投げが決まった瞬間、安美錦は「よしっ」と呟いたように観えました。

 39歳の再入幕力士の勝ち越しとしてインタビュールームに入った安美錦は、涙また涙。

 いつもの飄々とした、「とぼけた」様子は微塵も無く、怪我からの復活、相撲への思いを切々と語りました。敢闘賞のことも取組の前には知らなかったと。
 素晴らしいインタビューでした。

 もっともっと稽古をしなければと語る安美錦には、「引退」の欠片も感じられませんでした。
 確かに、今場所は体こそ良く動いていましたが、引いたり叩いたりする相撲が多く、本来の「前に出る力を利した巧みな相撲」はなかなか見られなかったのです。

 「明日」を見つめ、真摯に取り組む安美関の2018年の相撲が、とても楽しみです。
 11月場所も15日間連続で満員御礼となりました。

 これで、2017年の大相撲は1月場所から11月場所まで6場所・90日間連続で満員御礼となったのです。
 これは平成8年以来の優秀な興行成績であり、大相撲人気はひとつのピークを迎えていることになります。

 八百長問題や数々の不祥事のために「地に落ちた」人気でしたが、「雌伏」の時期は、大関・魁皇、高見盛、遠藤といった人気力士の奮闘もあって何とか乗り切り、2015年頃から大相撲人気は回復に向かいました。
 そして、2017年に再びピークを迎えたことになります。

 現在では、本場所のチケットを入手することも極めて困難です。

 一方で、2017年は休場力士が増えました。
 11月場所も幕ノ内だけで9名に上ります。
 単純に考えれば、幕ノ内の取組が4~5番減っていることになります。

 最高峰である幕ノ内の取組、大相撲最高の見せ場が4~5番減っているというのは、ファンに対しての「エンターテインメント量が激減している」ことに他なりません。

 上質なコンテンツの減少が、当該プロスポーツというか、音楽でも絵画でも文学でも同じだと思いますが、ファンの人々の支持により成立している全ての分野において、「衰退」に繋がっていくことは道理というか、自然なことでしょう。

 ガチンコという言葉もありますが、真剣な取組が土俵上で繰り広げられていることはもちろんですが、だからと言って怪我・故障が従前より増加するというのでは、当該スポーツは、別の形で消滅してしまいます。

 怪我・故障に強い体躯を創り上げること、そういう稽古・トレーニングを実施して行くことは当然として、ガチンコであっても「怪我をし難い取り口」を身に付けて行くことも大事なことなのでしょう。
 協会、各部屋、各親方、各力士におかれては「怪我をし難い取り口」の研究・実行に注力していただきたいと思います。

 最後に「横綱の問題」です。

 ある横綱には、おかしな「待った」がありました。
 行司や審判の判定に従わないかのような様子に観えました。全力士の範となるべき横綱としては、あってはならないことでしょうし、少なくとも「土俵において見たことも無い行動」でした。

 別の横綱は暴力沙汰で注目されています。
 こちらは「何が本当の事か」全く分からない状況ですが、少なくとも大相撲界にとってプラスの事象ではないでしょう。

 大相撲は、2017年6場所90日連続満員御礼という、記録的な人気を博しています。

 こういう時こそ、奢ることなく頭を垂れるのが、日本文化でしょう。

 我が国のプロスポーツは、日本文化の上に成り立っているというのは、楽観的に過ぎる見方なのでしょうか。
 アキレス腱断裂という大怪我から復帰し、今場所幕ノ内・西前頭13枚目に返り咲いた安美錦が元気です。
 3日目を終えて3連勝。相撲内容も、当代屈指の「技士」の本領を発揮し、動きの良さが目立ちます。

 「39歳0ヵ月での幕ノ内復帰」という、昭和以降の最年長記録を樹立したことが、今場所前の話題となり、称賛の的ともなりましたが、初日の体を観た時、その充実ぶりは明らかでした。

 肌艶も良く、体全体のバランスも良いのです。
 何か、故障前より充実しているようにさえ感じられます。

 ご本人は三役への復帰、あるいは大関取りを標榜しているのでしょうが、この充実ぶりを観ると本当に実現できるのではないかとさえ、期待してしまうのです。

 安美錦関、頑張れ!
 西十両5枚目の阿炎(あび)が元気です。
 3日目を終わって3連勝、相撲内容もとても良いのです。

 幕下の頃から「自在の相撲」で注目されていましたが、さすがに立ち合いで強く当たることもせず、相手力士を一気に押し込むこともしないで、すらりとした体躯で、相手の取口に合わせて「ひらりひらり」と動き回りながら、押したり突いたりして勝機を見出していく相撲では、いずれ「壁」にぶち当たるだろうと感じていました。

 その「壁」が、番付のどの辺りかによって、阿炎の地力が分かるとも思いました。

 2016年から17年にかけて、「壁」の位置が分かりました。
 阿炎は、幕下と十両を往復するようになったのです。
 この辺りが「壁」でした。

 「ひらりひらり」の相撲で、関取まで上がるのですから、阿炎の地力は相当に高いことが分かります。
 序二段優勝、三段目優勝、幕下優勝と重ねてきたキャリアは本物なのです。

 さて次の段階として、阿炎が「自らの相撲を改革する」ことが出来るかどうかが注目でした。いかに高い能力を保有していても、「牛若丸相撲」には限界があります。
 一方で、阿炎が自らの取り口に「本格派の相撲」の要素を取り入れることが出来れば、一気に本格化し、番付もどんどん上がるだろうと考えていたのです。

 「改革」は起こりました。
 2017年に入って、「前に出る相撲」を身に付け始めたのです。
 
 こうなると、もともとの運動神経の良さが一層活きてきます。
 
 2017年9月場所で、阿炎関は優勝決定戦の末、十両優勝を成し遂げました。
 そして西の5枚目に番付を上げたのです。

 こういう相撲が取れるようになった以上は、もう「十両と幕下の往復生活」には戻らないでしょう。
 「前に出る阿炎」は、一気に幕の内に上がってくると思います。

 阿炎 政虎(あび まさとら)、23歳。身長187cm、体重132kg、埼玉県越谷市出身、錣山部屋所属。元寺尾・錣山親方の指導が実りつつあるのです。

 大相撲の次代を担う力士への成長が期待されます。
 11月12日に開幕する、大相撲2017年11月場所で活躍が期待される10名の力士を挙げてみたいと思います。

 2017年に入ってから、大相撲に「世代交代」の波が押し寄せていることは、皆さんご承知の通りです。

 所謂「大相撲氷河期」を乗り越えてきた世代の中に、新しい力士が次々と飛び込んできているのです。
 2018年以降の大相撲を背負って行くであろう力士達の活躍が期待される、11月場所なのでしょう。

1. 横綱陣

 ひとりを選ぶのは、とても難しいのが横綱陣でしょう。
 9月場所優勝の日馬富士が元気であろうことは予想できますが、ベテランとなった今、体のあちこちに故障が有るのは仕方のないところで、2場所連続で活躍できる状況かどうかは、分からないところでしょう。

 休場明けの白鵬、稀勢の里、鶴竜については、回復度合いが全く分かりません。

 こうした中では、まさに「期待する」という意味で、稀勢の里にしたいと思います。

 稀勢の里の怪我は、容易には直らないタイプのものですので、まだまだ完治には程遠いものと感じますが、巡業や関脇相手の稽古の情報では、相応に「相撲が取れる」ようになってきているようですので、久しぶりに土俵上で相撲を取る姿を見ることが出来そうです。

 鍵となる左腕は、5~6分の出来でしょうから、いつもにも増して、立ち合いから前に出る相撲を取る必要があるのでしょう。前に出る圧力を利用した相撲を取ることが出来れば、優勝争いに加わることも可能だと思います。

2. 大関陣

 こちらも、高安の回復度合いが不明です。

 そうなると、先場所の主役のひとり豪栄道を挙げることになります。
 先場所は、ほとんど掴みかけた最高優勝を自ら離したようにも見えましたから、今場所のリベンジに期待しましょう。

3. 関脇以下の力士

③関脇・御嶽海

 三役に上がってきた頃の勢いは、やや弱まっている印象ですが、よく考えて相撲を取るタイプですので、「関脇の相撲の取り方」を身に付けてきているのではないかと思います。
 今場所は星を伸ばしてくれるのではないでしょうか。

④朝乃山

 10勝5敗で敢闘賞を受賞した先場所の相撲には、驚かされました。相撲に文字通りの「勢い」が感じられたのです。入幕2場所目となれば、「壁にぶちあたる」のではないかという見方もありそうですが、その壁を超えていく「勢い」に期待したいと思います。

⑤小結・阿武咲

 入幕から3場所連続の二桁勝利という、素晴らしい記録を打ち立て、あっという間に三役となりました。「世代交代」の代表格でしょう。とにかく「前に出る力」が優れていますので、この番付でも活躍が期待されます。

⑥遠藤

 先場所は、久しぶりに遠藤らしい取り口が観られました。相当に回復しているのではないかと感じます。体が動くようになれば、「密着相撲」が威力を発揮するでしょう。番付を上げていく場所になってほしいものです。

⑦北勝富士

 「壁」にぶちあたった先場所でしたが、「一生懸命」をベースにした取り口は不変でした。
 意外に器用なところも有りますので、今場所は「白星に繋がる相撲」を身に付けてくれているのではないかと思います。

⑧貴景勝

 過去4場所で11勝が2度という爆発力が身上です。前頭筆頭という難しい番付ですが、元気いっぱいの相撲で、場所を湧かせてくれることでしょう。

⑨逸ノ城

 そろそろ「正念場」を迎えているのではないでしょうか。「怪物」と呼ばれたアスリートの真の力を披露していただきたいと思います。

⑩安美錦

 ついに帰ってきました。当代随一の「技士」の相撲がとても楽しみです。故障後、場所を重ねるたびに回復している印象ですから、久々とはいっても、幕ノ内という「慣れた場所」での活躍が期待されるのです。安美関の大ファンである私としては、外せないところです。

 11月場所は、以上の10力士に期待したいと思います。
 若手とベテランが切磋琢磨する場所ですから、面白くないはずがありません。
 炎鵬は、2017年9月場所の三段目で優勝しました。7戦全勝でした。

 これで炎鵬は、初土俵から序の口→序二段→三段目と「三場所連続優勝」を成し遂げたのです。

 三場所とも7戦全勝でしたから、炎鵬は「初土俵以来不敗の21連勝」なのです。優勝決定戦の勝利を加えれば、連勝はより増えます。

 将棋の藤井四段ではありませんが、「デビューしてからの連勝記録」を伸ばしているのです。

 デビューが遅かったことも有り、既に22歳の炎鵬は、身長167cm・体重93㎏と小兵力士、それも特に小さな力士です。
 しかし、その取り口はスピード十分で、力強さに満ちています。

 11月場所には幕下に昇進するでしょうから、これからはテレビ放送に登場する機会も増えることでしょう。
 
 「今牛若丸」としての炎鵬の今後の活躍から、眼が離せません。
 3横綱・2大関が休場し、史上稀に見る「大混戦」となった9月場所ですが、三賞受賞力士にも、9月場所の「輪郭」が良く現れています。

 殊勲賞には、貴景勝が選ばれました。
 自己最高位の西前頭5枚目で、場所に臨んだ貴景勝ですが、3連勝と絶好のスタートを切りました。そして10日目に日馬富士を破り、13日目に豪栄道に土を付けたのです。

 序盤の3連敗から立ち直りを見せていた横綱・日馬富士にとっては、貴景勝に敗れての4敗目は、優勝の可能性をほとんど0にする痛い黒星であったと思いますし、ほぼ優勝を手にしていた大関・豪栄道にとって、3敗目となる終盤での貴景勝戦の敗戦は、その勢いを一気に減ずるものとなったのです。
 貴景勝のこの2勝は、9月場所の賜杯の行方に大きな影響を及ぼしたのです。

 敢闘賞の阿武咲の前半の活躍は見事でした。
 初日からの5連勝、中日を終えての7勝1敗と、優勝争いの先頭を走ったのです。
 初日からの3横綱の休場、前半の2大関の休場と、残念なニュースが続いた、中日までの9月場所を支える大活躍でした。
 特に、星数もそうでしたが、その元気一杯、スピード十分な取り口も見事でした。

 終わってみれば10勝5敗、新入幕以来3場所連続の二桁勝利と言う、史上初の快挙となりました。
 今後の角界を背負う逸材であることも、間違いありません。

 新入幕で敢闘賞を受賞した朝乃山の活躍も素晴らしいものでした。
 3勝3敗と勝ち負けを繰り返していた朝乃山でしたが、7日目からの5連勝で勢いに乗り、この一番を勝てば二桁10勝となって敢闘賞という、千秋楽の千代大龍戦も堂々と押し出しました。東16枚目の幕尻の力士が、西3枚目の力士に完勝したのです。
 「この一番」に強いというのは、今後の力士キャリアにおいても、大きな武器です。

 技能賞の嘉風の活躍は、これはもう驚異的でした。
 4連敗のスタートで、どこか悪いのではないかと感じましたが、5日目から8連勝。
 そして敗れた相撲でも、その内容は攻防のある「大相撲」が多く、場内を大いに沸かせました。
 35歳にして、進化を続ける大力士なのです。

 3名の若手、それもいずれも入幕して1年未満という「生粋の若手」(変な言葉で恐縮です)は、大相撲の未来を支えて行く存在です。
 1名のベテラン、「土俵の充実」という大相撲の不滅の命題を体現してきた、そして現在も体現し続けている力士であり、まさに若手力士の範となる存在です。

 2017年9月場所の主役は、優勝した日馬富士ですが、この4名の三賞受賞力士も間違いなく主役だったのです。
 「大波乱」の9月場所でしたが、千秋楽もある意味では「思いもよらぬ展開」でした。

 千秋楽結びの一番、日馬富士VS豪栄道は、日馬富士が強さを魅せました。

 低く鋭い立合いを見せた日馬富士が、右前まわしを素早く取り、豪栄道の寄りにびくともせずに左前まわしも取りました。
 これで豪栄道の上体が浮き上がりましたので、日馬富士は寄り立てます。向う正面に寄り、左前まわしを離しながら寄りきったのです。

 圧倒的な内容でした。豪栄道に何もさせない上に、体を密着させての相撲でしたから、土俵際の紛れもありません。
 日馬富士にとっても「最強の相撲内容」であったと思います。

 優勝決定戦を前にして、東西の支度部屋の様子は対照的でした。

 東の日馬富士は、大銀杏を直した後、一門の十両の照強を立たせて立合いの練習をしています。
 何度もぶつかっていました。汗をかくまでやっているという感じです。

 西の豪栄道は、どっしりと腰かけたまま。取り口を考えている様子でしょうか。

 決定戦はあっという間の勝負でした。

 日馬富士が、再び低く鋭い立合いを魅せて豪栄道のぶちかましを止めると、豪栄道がはたきを見せました。その豪栄道の動きにぴったりと体を合わせて、日馬富士が寄り立て、そのまま寄り切りました。

 この相撲も日馬富士の圧勝でした。

 2017年9月24日に、横綱・日馬富士が示した本割と決定戦の2番は、日馬富士のキャリアにおいても「屈指の相撲」だったと思います。
 力士としての日馬富士が、その実力を如何無く示したのです。「ザ・日馬富士の相撲」といったところでしょうか。

 これだけ一方的な展開となったことは、とても意外でした。
やはり、11日目以降調子を落とした豪栄道と、調子を上げてきた日馬富士の、差が明確に出てしまったのでしょう。

 賜杯拝戴後の優勝力士インタビューで、控室に照強を呼んだ理由を聞かれ、「テレビに出してやろうと思って・・・」とユーモアたっぷりに応えた横綱には、優しさが溢れていました。

 そして、11月場所への意気込みを尋ねられ、「毎日毎日一生懸命に稽古をして、良い相撲を取る・・・」と応じました。
 奢りなど一切感じられない、極めて謙虚なコメントでした。

 我が国の「相撲精神」を体現した存在だと思います。

 日馬富士は、本当に素晴らしい横綱に成ったのです。
 大関・豪栄道が14日目の貴ノ岩との激戦を制して3敗を堅持、単独トップで千秋楽を迎えることとなりました。

 11日目を1敗でクリアした時には、さすがに大関、大混戦の場所をキッチリと制するかとも見えたのですが。やはり「2017年9月場所」は、そんなに単純な物ではありませんでした。

 12日目の松鳳山戦、13日目の貴景勝戦と平幕の2力士に連敗し、「大混戦」が続くこととなりました。

 このままでは「史上初の10勝5敗の幕ノ内最高優勝」かとも思われましたが、14日目に素晴らしい取口を魅せて、踏み止まったのです。

 立合いから、豪栄道、貴ノ岩、両力士の攻め合いが続きました。
 効果的な「いなし」が随所に観られ、豪栄道も2度たたらを踏みかけました。12日目、13日目の豪栄道なら、そのまま敗れていたかもしれませんが、この日は違いました。
 よく残して攻め続け、土俵際でも、貴ノ岩の乾坤一擲の突き落としを、渡し込みの返し技?凌ぎ、勝ち切りました。

 力の入った好勝負が多い今場所の中でも、屈指の「大相撲」であったと思います。

 これで賜杯の行方は、千秋楽・結びの一番、日馬富士VS豪栄道に持ち越されました。
 3敗の豪栄道と4敗の日馬富士の対戦と、横綱・大関が賜杯を競う結びの一番としては「異例」の感じがしますが、2017年9月場所を象徴する取組とも言えそうです。

 3横綱・2大関が休場するという、99年振りの惨事?の只中で、懸命に取組を続けた2人の看板力士の意地が感じられます。
 2人の看板力士は、「番付けの重み」を示し、「5敗の優勝」という記録を阻止したのです。
 横綱や大関に対しては失礼な物言いになってしまいますが、「健闘」したのでしょう。
 横綱・大関のプライドということなのかもしれません。

 さて、千秋楽・結びの一番は、文字通りの「大一番」です。
 素晴らしい一番でした。

 西関脇・嘉風と東前頭4枚目・松鳳山が「大相撲」を魅せてくれたのです。

 立合いから松鳳山が攻め込みました。テンポの速い突っ張りで嘉風を押し込んだのです。
 後退した嘉風ですが、さすがに反撃に移り、押し返しました。今度は松鳳山が後退する番でした。
 押し合う2力士の間には、突っ張り・張り手が交錯しました。

 土俵際に押し込まれた松鳳山でしたが、再び反攻に出て、押し返しました。
 「攻防」というよりは、両力士の「攻め合い」という形でした。

 両力士、力を振りぼっての押し合いが続きました。
 両力士の顔・頭が何度ぶつかったことでしょう。ごつごつと音が聞こえてくるような激突の連続。
 どちらも、決して自らは後退しないのです。

 場内の歓声がどんどん大きくなって行きます。

 2力士の押し合いは土俵中央で止まりました。
 嘉風が左下手を差し込みました。そして頭を付けたのです。

 体制を整えた嘉風が寄りました。
 力強い寄りでした。

 土俵を割った松鳳山の左腕には、べったりと血が付いていました。
 嘉風の顔から大出血していましたが、顔のどこからの出血なのかは、分かりませんでした。
 
 両力士死力を尽くしての一番でしたから、体中にダメージが残っていたのです。

 取組後、嘉風の出血は「鼻血」であると報じられました。
 眼、まぶたなどからの出血では無かったのです。翌日の取組に大きな影響を与える出血では無かったのです。

 打打発矢の戦いでしたから、1分もかかったかと感じられる相撲でしたが、実際には20~30秒位だったのかもしれません。

 今場所随一の「大相撲」でした。

 3横綱・2大関が休場するという「非常事態」に、残された力士達が力強い相撲を披露しているように感じられます。
 その代表的な相撲が、中日の嘉風・松鳳山の一番なのでしょう。

 9月場所は中日を終えて、大関・豪栄道、東前頭3枚目・阿武咲、東前頭12枚目・大翔丸が1敗で先頭を走っています。
 とはいえ、これだけの波乱の場所が、このままで進むとは思えません。

 本当の大混戦は11日目から始まるのでしょう。
 東十両2枚目の安美錦が好調です。
 7日目を終えて5勝2敗。

 2016年5月場所の2日目にアキレス腱を断裂する怪我を負い、以降7月場所も休場して、9月場所から十両に下がりました。
 もともと両膝に故障のある安美錦が十両の下位に下がり、年齢も38歳になったとあっては、さすがの安美錦も引退か、と囁かれました。
 2016年9月場所、11月場所は共に8勝7敗とかろうじて勝ち越しましたが、2017年1月場所は5勝10敗と大きく負け越し、西十両12枚目まで番付を落としました。

 私も「幕下に下がってまで、安美錦は相撲を取るのだろうか」と感じました。

 2017年3月場所は、しかし、9勝6敗と踏み止まり、5月場所も9勝6敗、7月場所は10勝5敗と盛り返して、東の2枚目まで番付を上げて来たのです。

 そして9月場所を迎えました。
 
 初日の土俵で安美錦の姿をテレビで観た時、「本当に良い体に成った」と感じました。
 肌艶も良く、全身の筋肉も戻りました。
 見た目には、アキレス腱断裂前より、フィジカル面では向上したように思います。

 取り口を観ると、全盛時に比べて「前に出る力・相撲」は戻っていませんが、動きのスピードは十分です。体中に故障を抱えている状態ですから、もりもりと前に出るのは少し早いと感じているのかもしれません。

 いずれにしても、仕切りを重ねる安美錦は「力強さ」に溢れています。

 来月10月3日には39歳となる安美関ですが、その姿を再び幕ノ内の土俵で観られる日が近づいていると思います。

 当代最高の技士の活躍から、眼が離せません。
 9月10日に幕を上げた9月場所ですが、休場力士が相次ぐ状況になっています。
 残念至極です。

 初日に5力士が休場しました。
① 横綱 白鵬
② 横綱 稀勢の里
③ 横綱 鶴竜
④ 前頭 碧山
⑤ 前頭 佐田の海

 昭和以降初めてという「初日からの3横綱休場」ですが、そもそも横綱が3名以上いないと起こりえないことですので、「4横綱の場所ならでは」といって良いのでしょう。
 とはいえ、4名の横綱の内3名が休場、それも初日から休場というのは、お客様にとってはとても残念なことであることは間違いありません。
 豪華絢爛な4横綱の土俵入りを楽しみにしていたファンにとっては、一人横綱の風景に接することになったのは、相当に期待外れということになります。

 加えて、7月場所で13勝を挙げて、実質的な「準優勝力士」であった碧山、そして当代屈指の技士・佐田の海までもが休場となったのですから、驚きました。
 止むを得ないこととはいえ、各力士のファンにとっては寂しい限りでしょう。

 出場してきた他の力士、特に上位の力士の頑張りが期待される場所となったのですが、2日目の土俵で波乱が連続して起きました。
 大関高安と宇良が、取組後「車椅子で運ばれた」のです。

 激しい相撲の結果とはいえ、3横綱+2力士の休場という場所の主役となりそうであった両力士が、到底本場所で相撲を取り続けることが困難であろうという怪我を負ったのです。

 そして、3日目に

⑥ 大関 高安
⑦ 前頭 宇良

 の休場が発表されました。

 大相撲界にとっては、とても大きなインパクトのある事象でしょう。
 現在、人気絶頂の大相撲とはいえ、その人気の中核・基礎となる7名の力士の離脱なのですから。

 残った力士が土俵を盛り上げていかなくてはならないことは、いまさら言うまでもないことでしょう。

 ところで、初日の土俵は「白熱した相撲の連続」という印象でした。
 多くの取組が、攻防のある、力の入った相撲だったのです。
 3横綱の休場を踏まえて、各力士が一生懸命の相撲を魅せてくれたということなのでしょうけれども、「優勝のチャンスが広がった」という意識が各力士にあったのかもしれません。

 厚い壁である4横綱が、ひとりに減ったのですから、上位力士のみならず、前頭下位の力士にも幕ノ内最高優勝のチャンスが拡大したことは間違いありません。

 もちろん、優勝争いの中心は横綱・日馬富士ですが、9月場所はとても多くの力士にチャンスのある場所となりました。
 故障を抱える日馬富士の体調がベストとは思えませんので、12勝3敗あるいは11勝4敗でも優勝できる場所なのかもしれませんから、どの力士も1つや2つの黒星で意気消沈しては居られないのです。

 4横綱が揃っていたとしても、上位と下位の力量差が小さくなってきたことから、場所前に「大混戦」と予想しましたけれども、7力士が休場することとなった以上は、2017年9月場所は「大大混戦」となるのでしょう。

 やはり、見所満載なのです。
 2017年9月10日に開幕する、大相撲9月場所の注目力士検討です。

 4横綱・3大関という豪華な番付に加えて、関脇から幕の内上位には元気の良い力士が目白押しの場所となりました。
 優勝争いは「大混戦」でしょう。

1. 横綱

 「安定感」という面から、今場所は白鵬を挙げたいと思います。

 稀勢の里の回復度合いは分からないところですが、この怪我は回復に時間がかかるものだと思いますので、年内一杯は無理をしない方が良いように感じます。
 稀勢の里には「勇気ある休場」が良いのではないでしょうか。

2. 大関陣

 「勢い」という面から、高安を挙げようと思います。

 地力という面では甲乙つけがたい3大関ですが、やはり近時の勢いでは高安が少しリードしているのでしょう。

3. 関脇以下の力士

③御嶽海

 すっかり、三役に定着しました。「考えて取る相撲」も相変わらずです。
 近時は、下位の力士に「楽をして勝とう?」というように見られても仕方がない取り口で、星を落とすことが時折見られます。「どの力士にも全力」の取り口を展開すれば、優勝も夢ではないと思います。

④豊山

 新入幕の場所は「跳ね返され」ました。どちらかというと「自分の相撲が取れなかった」という感じでしょう。2度目の今回は、思い切り土俵で暴れていただきたいものです。

⑤北勝富士

 力を付けてきました。幕の内上位に定着する力は有ると思います。この力士も「良く考えて」取りますから、毎場所ノウハウが蓄積されているのです。

⑥遠藤

 前頭14枚目まで番付を下げました。故障の影響もあるのでしょうが、前に出る力とスピードが不足していたことも事実なのでしょう。相撲センスは抜群ですから、「自分の相撲」を取り切ることが出来れば、星は自然に上がりそうです。

⑦玉鷲

 7月場所は、やや元気が有りませんでした。やや荒々しさに欠けていたというところでしょう。9月場所はコンディションを整えていただき、本来のパワー相撲を展開していただきたいものです。

⑧宇良

 前頭4枚目まで上がりました。十両下位の頃を思い出すと、正直に言って、驚きです。
 体重を増やしながら、前に出る力を養ってきたのです。さすがに家賃が高いという見方もあるのでしょうが、どれくらい活躍してくれるか楽しみでもあります。

⑨碧山

 7月場所の前半は、目を見張るような相撲が続きました。このところの不振を一気に吹き飛ばしてくれたのです。
 この相撲なら、番付が上がっても頑張れそうです。思い切りとっていただきたいものです。

⑩正代

 相手力士に相撲を覚えられたかのような7月場所でしたが、実際には自分の相撲が取れていなかったのでしょう。コンディションが悪かったのかもしれません。
 本来の力を出せば、直ぐに三役に戻れそうです。

 9月場所は、以上の10力士に期待します。

 嘉風、栃ノ心、勢、宝富士、豪風といったベテラン勢の奮起も、とても楽しみです。
 横綱・白鵬の39回目の優勝で幕を閉じた7月場所ですが、2つの大きな記録が達成されました。

① 白鵬関の通算1,050勝

 元大関・魁皇の1,047勝、元横綱・千代の富士の1,045勝という歴代1・2位の記録を、7月場所で一気に抜き去り、1,050勝まで伸ばしました。

 千代の富士が1,000勝を達成した時、「空前の記録」と呼ばれ、多くの相撲関係者から「レベルが高すぎて想像も出来ない記録」と言われていたことを思い出します。
 その記録を魁皇が更新し、そして今場所、白鵬が更新したのです。

 この記録を、白鵬はどこまで伸ばしていくのでしょうか。

② 日馬富士関の幕内701勝

 7月場所で11勝を挙げた、横綱・日馬富士の幕内通算勝ち星が701勝となり、歴代7位の元横綱・貴乃花に並びました。

 ちなみに、この記録の歴代1位は白鵬の955勝、2位は魁皇の879勝、3位は千代の富士の807勝、4位は北の湖の804勝、5位は大鵬の746勝、6位は武蔵丸の706勝となっています。

 千代の富士、北の湖、大鵬、貴乃花と、20回以上の優勝回数を誇る横綱の中に、日馬富士が食い込んできているのです。
 素晴らしいことだと思います。
 
 この記録は、横綱経験者にとっては、「横綱の地位に長く居る」ことによって積み上げが可能な記録ですから、日馬富士の息の長さ、故障・怪我を乗り越えてきたキャリアが感じられるのです。
 「横綱の地位に長く居る」ことが、とても大変なことであることは、皆さんご承知の通りです。
 2012年11月場所に横綱に昇進した日馬富士は、横綱としてそろそろ丸5年を迎えようとしているのです。

 白鵬と日馬富士、モンゴル出身の2人の横綱は、大相撲の歴史に大きな足跡を残し続けています。
 そして、何より「長い間、横綱の地位を守っている」のが、素晴らしいところなのだと思うのです。
 新大関・高安の誕生により、4横綱・3大関という豪華な番付となった7月場所も中日を終えました。

 ある意味では順当な、ある意味では意外な展開となっています。

① 横綱・白鵬が8連勝

 先場所、久し振りの優勝を飾った白鵬が、今場所も白星を重ねています。
 「自在の相撲」という感じの取口が続いています。立合いで思い切りぶつかるのではなく、相手によって様々なパターンで取組を開始するのです。

 序盤は、こんな取口では一気に押し込まれた時などには苦戦の怖れが有ると感じましたが、その自在性のレベルが高いのでしょう、相手力士を次々と倒し、全勝を維持しているのです。
 見事な取口と言って良いのでしょう。

 とはいえ、こうした取り口で15日間を取り切ることが出来るとすれば、「立合いは鋭く強い当たりが不可欠」と言われてきた、大相撲の長い歴史に疑問符が付く、「立合いは相手の力を削ぐ対応が良い」「無理に全力で当たる必要はない」と言うことになってしまうかもしれません。
 「大相撲の在り様の変化」に結び付く場所になる可能性もありそうです。

② 大関・高安の相撲

 初日、北勝富士に押し込まれ、良いところ無く敗れた時には、「新」大関の重圧が想像以上に重いのかとも感じられましたが、2日目から建て直し、中日まで連勝を続けているのは、さすがというところです。

 6日目の栃ノ心との相撲は、1分を優に超える長いものとなりましたが、これも勝ち切りました。慌てず騒がず、自らの相撲を取り切る姿勢は素晴らしいと感じます。

③ 碧山の健闘

 このところ、かつての強烈な押しが影を潜め、取組の途中で「押す体制が崩れて」敗れることが増えて、不本意な場所を続けて来た碧山が、見事な活躍を披露しています。
 「復活」という感じがします。

 7連勝の後、中日は阿武咲に敗れてしまいましたけれども、圧倒的なパワーという武器をベースに、引き続き大暴れしていただきたいと思います。

④ 宇良の頑張り

 自己最高位・東前頭4枚目まで上がってきた宇良の健闘が光ります。

 中日を終えて5勝3敗。横綱との取組も含めて、上位との対戦が続く中では大健闘でしょう。
 体重が増え、前に出る力が強くなっていること、そして機を見るに敏な取口に磨きがかかってきたことが好調の要因だと思います。
 上位との取組も「十分に相撲になっている」のです。

 伸び盛りの期待の力士の後半戦の活躍から、眼が離せません。

⑤ 御嶽海の存在感

 関脇として、存分な働きでしょう。
 相変わらず、対戦相手毎にしっかりと事前研究を行い、毎日取り口を決めて取組に臨み、それを実行するという相撲は、日々の成長にも結び付いていると思います。

 こうした姿勢を継続していただきたいと思いますけれども、一方で、前に出る力の強化も継続して欲しいと感じます。相撲の基本である前に出るパワーの一層の強化が、もう一つ上の番付への昇進のポイントなのです。

 鶴竜、稀勢の里、照ノ富士、遠藤といった「看板力士」の相次ぐ休場は本当に残念ですけれども、白鵬を中心とした優勝争いは、後半戦が勝負だと思います。
 先頭を行く力士の相撲に、どっしりとした盤石の強さは感じられませんから、まだまだ多くの力士にチャンスが有るのではないでしょうか。
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Author:カエサルjr
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