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 2020年1月12日に開幕する2020年のトップリーグですが、ワールドカップ2019日本大会に出場した各国のプレーヤーが、トップリーグの各チームに加入して、トップリーグのレベルアップに結びついているように観えます。

 千葉県船橋市に拠点を置くクボタスピアーズも、そうしたチームのひとつでしょう。

 11月13日、クボタスピアーズは公式ホームページで、ワールドカップ2019で活躍したプレーヤーのチームへの合流日を発表しています。

・ピーター・ラブズカフニ選手 11月18日
・バーナード・フォーリー選手 11月20日
・ライアン・クロッティ選手 12月10日
・ドウェイン・フェルミューレン選手 12月10日

 ラブズカフニ選手は、言わずと知れた日本代表チームのフランカーFL。
 ワールドカップ2019における大活躍は、素晴らしいの一語でした。南アフリカ出身のラブズカフニ選手がブレイブブロッサムズの「ベスト8進出」に大貢献したことに、異論を差し挟む人は少ないでしょう。

 フォーリー選手(30歳)は、オーストラリア代表チーム・ワラビーズのスタンドオフSOとして著名な存在です。
 既に2015年に、トップリーグ・リコーブラックラムズでプレーした経験がありますが、今度はクボタスピアーズに加わることとなったのです。
 プレースキックにも定評のあるフォーリー選手。ワラビーズの代表キャップ70を誇る世界トップクラスのプレーが、本当に楽しみです。

 クロッティ選手(30歳)は、ニュージーランド・オールブラックスのセンターCTBです。
 当然ながら、母国でもクロッティ選手の動向は注目されていて、クボタスピアーズ加入が大きく報じられたとのこと。基本に忠実で献身的、スピード溢れるクロッティ選手のプレーがトップリーグで観られるのです。

 フェルミューレン選手(33歳)は、南アフリカ・スプリングボクスのNO.8です。
 2018年からクボタスピアーズのメンバーですから、2020年シーズンは3年目いうことになります。
 ラブズカフニ選手と共にクボタスピアーズのフォワードFW第3列を支えてきたプレーヤーの、2020年シーズンの活躍が期待されます。

 クボタスピアーズはこれまで、トップリーグの優勝を争うチームではありませんでした。
 例えば、前期は7位、前々期は11位だったのです。
 前期までのトップリーグは、パナソニックワイルドナイツやサントリーサンゴリアス、コベルコスティーラーズが覇を競ってきました。

 ここに、新戦力が加わったクボタスピアーズが、どこまで食い込めるか。
 「世界のプレーを熟知している」選手達から様々な影響を受ける日本選手達が、その力をどこまで伸ばすのか。

 本当に楽しみです。

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 12月1日、関東大学ラグビー対抗戦Aグループの最終戦、「伝統」の早明戦が行われます。

 かつては、「年末の風物詩」とも称されたビッグイベントでしたが、2008年に帝京大学チームが初優勝した頃から、その位置付けは徐々に下がり、その後の帝京大チームの大連覇、そしてその間の早明両チームの「ふがいない戦い振り」(ファンの方々には申し訳ない表現になってしまいましたが)も相俟ってか、このところは「グループ内のゲームのひとつ」になっていた感がありました。(本ブログ2014年12月11日の記事「[ラグビー] 早明戦の凋落?」をご参照ください)

 1928年に開始され、20世紀の我が国の大学ラグビー界を牽引してきた「対抗戦グループ」、それを代表してきた「早明戦」の価値が、残念ながら下がり続けてきた印象なのです。

 そして2019年、「25年振りの早明全勝対決」が実現することとなりました。

 11月10日に行われた早稲田VS帝京のゲームは、34-32で早大チームが勝利しました。ゲーム終盤の劇的な逆転でした。2015年ワールドカップ一次リーグの日本VS南アフリカのゲームと、展開・得失点ともに同じでした。奇遇という他は無いでしょう。

 11月23日に行われた明治VS帝京のゲームは、明大チームが40-17で圧勝しました。今季の充実を如実に示したゲームでした。
 早大チームに敗れた影響か、帝京大チームには少し元気がありませんでした。

 早大チームは、同じ23日に行われた、こちらも「伝統」の早慶戦(開催日が11月23日に固定されています)で、さすがに早慶戦に臨む気迫溢れる慶大チームの粘りに最後まで苦しみましたが、17-10で何とか勝利をものにして、ついに「25年振りの全勝対決」が実現したのです。

 再び、かつては、12月第1日曜日(開催日が決まっています。常に対抗戦の最終戦です)の早明戦を控えた1週間は「早明戦ウィーク」と呼んでも良いほどの盛り上がりを魅せました。
 両チームの各ポジションのプレーヤー、例えばウイングWTBならトイメン同士、ハーフ団ならハーフ団同士の談話がテレビ画面に登場し、それぞれ贔屓の芸能人、有名人がコメントを寄せたりして、嫌が上にも、注目が集まりました。
 「重戦車フォワード」の明治と「展開ラグビー」の早稲田、タテの明治とヨコの早稲田という、好対照のプレーの対決も、ビッグイベントに繋がる大切な要素だったのでしょう。
 また、不思議なことに「戦前に劣勢を予想されていたチームが勝利する」ことが多かったのが、早明戦でもあります。

 2019年は、ワールドカップ日本大会の年でもありました。
 ワールドカップによって盛り上がった「ラグビー熱」が、日本社会に残っている内に、日本大学ラグビーの看板カードが素晴らしいゲームを披露することは、大袈裟に言えば「日本ラグビー界にとって極めて重要なこと」であろうとも思います。

 「熱戦」が期待されます。

 ゲームを観ていた妻が「選手達の背中の真ん中上部、首の下あたりにポケットが在って、中に何か入っているみたい。あれ何?」と聞きます。

 後日には、「ユニフォームにはポケットが付いているけれども、今日のチームは何も入っていなかった」とも言います。

 少し調べてみました。

 首根っこ下の四角いポケットに入っているのは、どうやら「GPS装置」のようです。

 選手ひとりひとりがGPS装置を所持して、戦っているのです。

① 試合における運動量の測定

 GPSは、「GPSが付けられている物」の移動状況を把握するための装置ですから、この場合であれば、「選手の移動距離=その試合において当該選手が動いた距離」が分かります。
 個々の選手の走破距離の把握も容易にできるのです。

 おそらくは、その測定結果は、試合の5分毎、10分毎、あるいは1分毎に把握できるのでしょうから、「運動量が落ちてきた選手」の交替時期の判断に、重要な情報ともなるのでしょう。

 A選手は、いつもなら後半10分頃までは運動量を維持できるのだが、この試合では、前半30分過ぎから運動量が急激に下がっている、この試合では、後半開始時点から交替しよう、といった判断が可能になります。
 選手の「いつもとの違い」、疲労の蓄積やコンディションの良し悪しによっての「違い」を、客観的に把握する手段として、とても有効だと思います。

 GPSが無かった時代には、ヘッドコーチや各部門コーチが、各選手の動き・様子を観ながら判断していた、個々の選手の運動量増減を、より正確に把握する手法ですから、ある意味では「革命的な変化」と言えるのでしょう。

② 練習時の諸点の把握

 GPS装置は、練習時にも付けられると聞きました。
 これは、個々のプレーヤーの練習時の運動量他の把握に使われるわけですが、ある意味では「とても厳しい」対応に観えます。

 簡単に言えば、当該選手が「ちゃんと練習しているか」、「サボっているか」が、一目瞭然に把握できてしまうからです。
 再びA選手の、いつもの練習時の走破距離平均が2時間で10kmだとして、本日は7kmというのでは、やはり「力を抜いている」と観られてしまう可能性が有ります。
 そういう意味では、GPSは「個々のプレーヤーのプレーをより正確に管理する仕組み」ということになります。

 GPSの価値は、試合時より練習時に高いのかもしれません。

 それにしても、選手が「今日はちょっと疲れた。練習を少しセーブしよう」と考え実行することが難しいというのも、何だか大変なことであると感じますし、そういう「心持ちになる頻度が高いプレーヤー」がレギュラーメンバーに選定されにくいのかもしれないと思うと、少し割り切れない感じもします。

③ チームメンバーの構築

 GPS装置は、当該選手の「ランニングスピード」や「加速力」といった情報も把握できます。

 また、個々のプレーヤーの特性、例えば「ダッシュ力が有り10m以内の目標物への寄りが速い」といったことや、「30mを走らせると速い」とか、「一定のスピードで30分間走り続けることができる」といった「持ち味」を、客観的に数字で観ることができます。

 こうした情報は、ゲーム前のメンバー選定等において、とても重要でしょう。

 相手チームのメンバー・プレーの特徴を十分に調査した上で、自チームのメンバーの持ち味により、試合毎にメンバーを選定して行くことは、大試合になればなるほど、大きな威力を発揮することになりそうです。

 逆に言えば、こうした「基本的かつ客観的な情報が無い」チームは、ゲーム開始前から劣勢に立たされていることになります。

 今回は、ラグビーの試合におけるGPS装置の効用について簡単に観てきましたけれども、当然ながら、GPS装置から得られる情報は膨大なものでしょうし、その膨大な情報を瞬時に分析し、練習や試合に即座に活かしていくための仕組み、おそらくはAIでしょうが、その仕組みも、既にチーム毎に確立されていると考えられます。
 
 他のスポーツと同様に、ラグビーも「情報戦の時代」であることは、間違いありません。
 「GPS装置からどのような情報を得るのか」、「AIの性能」といった、ベーシックな仕組みの競争が、試合結果に大影響を与える時代が来ているのです。
 各チームに「AI・GPS班」が必要、それも相当規模・高スキルの「チーム」が必要であることも、当然のことだと思われます。

 もとより、「AIの言うことは何でも正しい」などということがある筈も無く、当該AIを作った人間の能力に、AIの能力が左右されることは道理ですし、AIの学習機能・自習機能といったところで、学習・自習のプログラム・やり方によってその能力が大きく異なるのも自然なことですし、完全に自分で自分の能力を高める仕組みを構築し実行するタイプのAIともなれば、これは人間の成長に近い過程(より速く正確な知識を蓄積するかもしれませんが、知識量と判断能力は必ずしもリンクしません)を取りますので、結果として、人間と同様の「本当の間違い」を犯す可能性が十分に有るでしょう。
 当然のことながら、AIにも、高レベルのAIと低レベルのAIが存在するのです。
 前述のチームの力が試される所以です。

 どんな競技においても、こうした情報戦で後手を取るようでは、大試合での勝利は覚束ない時代がきているのでしょう。

 11月18日、日本ラグビー協会は、2020年1月から2023年12月までの4年間、ジェイミー・ジョセフ氏と、日本代表チームのヘッドコーチHC契約を締結したと発表しました。

 日本代表チームを、ワールドカップ2019日本大会において、大目標であった「ベスト8進出」に導いたジョセフ氏と、新たに4年契約を結び、2023年のフランス大会まで、代表チームを託すという形となったのです。
 
 ようやく、「次のHC問題」が解決したことになります。

 思えば、2015年のワールドカップ・イングランド大会で、「全てのスポーツを通じて史上最大の番狂わせ」と現在でも世界中で言われている、日本チームの南アフリカ戦勝利を始めとする「ワールドカップ1大会3勝」を実現してくれた時、こんなに素晴らしいHCが居るのだと感動し、このまま日本大会まで日本チームの指揮を採ってほしいと考えた日本のラグビーファンは、とても多かったことでしょう。
 代表チームのワールドカップ戦=敗戦・大敗という事実を、長期間にわたって見せ付けられ続けていた日本のラグビーファンにとって、エディ・ジョーンズHCは「救世主」の様に感じられたのです。

 ところが、イングランド大会終了後の、日本ラグビー協会とエディ・ジョーンズ氏との交渉は上手く行かず、物別れに終わって、ジョーンズ氏は日本代表HCを去ったのです。

 これには驚かされました。

 何が原因で、こうした「悲劇」?が生じたのかは分かりませんけれども、それまで7度のワールドカップで1勝しか出来なかった日本チームを、1大会で3勝させることに成功したHCが、当時の日本ラグビー界にとって史上最高の「名伯楽」であったことは、間違いないでしょう。
 こんなことが理解できない人は、ラグビー関係者には存在しないと思います。

 エディ・ジョーンズ氏との契約継続失敗は、今でも、話にならない粗末な取組であったと感じています。(そのエディ・ジョーンズHC率いるイングランド代表チームが、ワールドカップ2019日本大会で準優勝に輝いたことは、皆さんご承知の通りです)

 そして、ジョーンズ氏に代わるHCとして、ジェイミー・ジョセフ氏に白羽の矢が立ったのです。

 一方で、日本代表チームが強くなった要因として、外国生まれのプレーヤーの増加を上げる見方もあると思いますし、ある程度はそれもあるのでしょう。
 「国籍主義」ではなく「協会主義」を掲げるラグビー競技においては、その国におけるプレー年数等により、一定の諸条件をクリアすれば、国籍が異なるプレーヤーでも当該国の代表としてプレーできるのです。

 これは、例えば日本大会に出場した全てのチームの中で、おそらくはニュージーランド代表チームを除く全てのチームに、そうしたプレーヤーが相当数存在していたと思いますので、世界中で一般化している「チームの在り様」です。
 念のため書いておくと、「日本チームだけが外国出身プレーヤーを多数起用していたわけでは無い」のです。

 大半のラグビー・ナショナルチームで行われていること、というか、ラグビーの国際大会における通常の在り様ですから、従って、出身地や国籍が異なるプレーヤーの数を増やしたからといって、代表チームが自動的に強くなるなどということは、有り得ません。
 当然ながら、事は「そんなに簡単では無い」のです。

 多くの他のナショナルチームと同様に、日本チームにおいても、日本の文化をベースに、日本生まれのプレーヤーと外国生まれのプレーヤーをどのように配置し、バランスを取りながら、どのような戦法・戦術を駆使して闘っていくかを熟考した上で、「あるべきチームの形」を決め、そのチームの形を示現して行くために、最も効果的なトレーニングを、効率的に実施して行かなければならないわけで、これは本当に難しいことでしょう。
 どんなナショナルチームにとっても、至難の業であることは自明です。

 その「至難の業」を実行・実現したHCが、エディ・ジョーンズ氏であり、ジェイミー・ジョセフ氏なのです。
 日本ラグビーは2代に渡って、素晴らしいHCに恵まれました。
 これは、おそらく「大幸運」でしょう。

 前回のエディ・ジョーンズHC続投失敗という大失策を踏まえて、今度は日本ラグビー協会も、さすがに対応を改め?、10月25日には「4年・4億円」の契約をジョセフ氏に提示したと報じられました。
 従来4,000万円だった年俸を1億円に引き上げ、従来2年だった契約期間を4年に延長して、ジョセフ氏に提示したのです。

 その後、ジョセフ氏がニュージーランド・オールブラックスの次期HC候補に挙げられた等々のニュースも入ってきました。
 ジョセフ氏が日本大会で成し遂げた事実を観れば、世界中の多くのラグビー協会が代表チームの指揮を採ってほしいと考えるのは、自然な話です。
 当然ながら、日本協会が提示した条件で十分とは、とても観えません(より好条件を示す国も複数あったのではないでしょうか)でしたから、事の展開を大注目していました。
 
 そして、10月25日から20日間以上の長い検討期間を経て、頭書の11月18日の発表となったのです。
 ジェイミー・ジョセフ氏が「日本チームを選んだ本当の理由」は、ジョセフ氏にしか分からないことでしょうが、契約金・期間といった要素だけではないのでしょう。
 そういう意味では、日本ラグビーにとって「有り難いこと」であろうと感じます。

 さて、第2期「ジョセフジャパン」がスタートします。
 
 次の目標が何に成るのかは、これから発表されていくのでしょうが、「ワールドカップ・ベスト4進出」が有力候補であることは、間違いないでしょう。

 しかし、この山の何と高いことか。
 
 日本大会でベスト4に進出した、南アフリカ、イングランド、ニュージーランド、ウェールズの4チームと、現在の日本チームを比較して観れば、パワー、スピード、戦術、選手層、等々の全ての面で、残念ながら日本チームが劣位にあることは明白です。

 こうした状況を、「ジョセフジャパン」がどのような施策でカバーし、超えて行くのか。
 
 ワールドカップ2023フランス大会に向けて、本当に楽しみな、ブレイブブロッサムズのドライブが始まります。
 日本大会では45試合が行われました。(3試合が台風の影響で中止)

 この45試合(プール戦37試合、決勝トーナメント8試合)における「先制点の重み」について、観て行きたいと思います。

[プール戦]
・先制してそのまま勝ち切った試合 26
・先制を許すも逆転勝ちした試合 11

[決勝トーナメント]
・先制してそのまま勝ち切った試合 6
・先制を許すも逆転勝ちした試合 2

[全試合]
・先制してそのまま勝ち切った試合 32
・先制を許すも逆転勝ちした試合 13

 プール戦においては、先制したチームの勝率は70.3%でした。
 決勝トーナメントでは、同75%でした。
 全試合を通じては、同71.1%でした。

 ラグビーワールドカップ日本大会における「先制して勝ち切れる確率は7割強」ということになります。

 一度に獲得できる得点が「1種類・1得点」しか存在しないサッカーと比べて、ラグビーにはプレーにより「2点、3点、5点」と存在しますから、先制されても逆転する可能性が高いのではないか、例えば、ペナルティーゴールPGやドロップゴールDGで3点を先制されても、トライで5点を挙げれば逆転できる、と考えましたが、やはり「先制点の重み」は、十分に存在するものの様です。

 「先制すれば、7割以上の確率で勝てる」ことが明示されているのです。

 ちなみに今大会は、オープニングゲームの日本VSロシアを始めとして、第1週の各ゲームでは、逆転勝ちがとても多かったのですが、大会を通してみればこうした結果に落ち着いています。
 やはり、大試合は「先手必勝」なのでしょう。

 選手達の「心の余裕」の違い、何より「ゲームをコントロールできる有利さ」がリードしているチームに存在するということなのでしょうか。

 さらに、準決勝2試合と3位決定戦、そして決勝戦の4ゲームは、全て「先制したチームの勝ち」でした。
 重要なゲームになるほど、「先制点の重み」が増していくものなのかもしれません。
 別の言い方をすれば、レベルが上がり、実力が拮抗したゲーム程、先制点は重いということなのでしょう。

 ワールドカップのゲームにおいては、まずは「先制する」ことが、とても大切なのです。

 いつの大会でも、その時代を彩る名キッカーが数多く居るのですが、日本大会でも本当に凄いプレーヤーが登場しました。

 まず印象に残ったのは、南アフリカ・スプリングボクスのスタンドオフSOハンドレ・ポラード選手です。
 準決勝ウェールズ戦で試合を決めた44ヤードのペナルティーゴールPGや、決勝イングランド戦で次々と決めて行ったPGなど、「絶対に外せないキック」をキッチリと決めて行きました。
 この勝負強さ、「ここぞ」という局面で決して失敗しないというのは、尋常なことではないでしょう。
 テレビ番組ではありませんが、「私、失敗しないので」という言葉がぴったりのプレーヤーです。

 続いてはウェールズ・レッドドラゴンズのSOダン・ビガー選手です。
 準決勝南アフリカ戦では、ポラード選手が次々とPGを決めて行く状況下、ビガー選手も次々と決めて追い上げ、後半5分にはついに9-9の同点としました。
 とても有名な選手ですが、その評価に恥じぬ素晴らしいプレーでした。
 9月23日の緒戦、ジョージアとのゲームでは、開始早々にウェールズチームがトライを挙げ、ほぼ正面の位置からビガー選手がゴールキックを蹴りました。
 とても簡単に蹴ったのですが、これが外れたのです。「よもや」の失敗でしたが、ビガー選手ほどのプレーヤーでも、ワールドカップ緒戦は緊張するのだと、妙に感心したことを憶えています。

 続いてはフランスのSOロマン・ヌタマック選手。
 フランスチームはプール戦で接戦続きでした。アルゼンチンチームとの初戦では23-21、第3戦のトンガチームとのゲームも23-21と僅少差の勝利。
 この2ゲームに敗れていれば、フランスチームの決勝トーナメント進出は夢と消えたところでした。こうした大接戦ではキックプレーが大きいのです。
 特にアルゼンチン戦前半のコンバージョンゴール2とPG2は見事でした。この前半を20-3とリードし、後半のアルゼンチンの追い上げをギリギリ凌いでの勝利でした。接戦は予想されていましたから、先行したことがとても大きかったのです。

 そして最後に、スコットランドチームのスクラムハーフSHグレイグ・レイドロー選手です。
 「正確無比」なキックは素晴らしいの一語。
 ルーティンから脚を振り抜くところまで、とても美しく、体・脚の動きとボールの弾道が一直線。「外れる気がしない」プレーでした。「さすがにレイドロー」なのです。

 本ブログのワールドカップ2019日本大会の最優秀キッカーは、グレイグ・レイドロー選手です。

 日本大会が終了して、休日などに少しでも時間が有ると、大会の各ゲームの録画を観ていますが、何度観ても不思議なのは、プールAの第2戦、日本VSアイルランドの最終プレーです。

 19-12で日本チームがリードして迎えた後半40分。

 日本が攻め、アイルランド陣左サイドのゴール前に迫りました。
 アイルランドチームも良く守り、ホーンが鳴って、ラストプレーとなり、アイルランドがボールを確保しました。
 
 自陣ゴール前から、アイルランドチームがどのような反撃を見せてくれるのか、と思って観ていましたら、このボールを蹴り出してしまったのです。
 ノーサイド。
 試合が終了しました。
 アイルランドチームがゲームを終わらせたのです。

 このプレーが何故行われたのか?とても不思議です。

 アイルランドチームから観て12-19の7点差ですから、1トライ+1ゴールで同点に追い付くことができます。まだ引分に持ち込むチャンスが残されていたのです。

① プレーヤーが勘違いしたか、ホーンが聞こえなかった。

 このキックは、通常の「陣地を回復するプレー」のように、斜め前方に蹴り出されました。
 ゴール前に押し込まれたピンチからの脱出を狙うプレーと同じ内容のプレーに観えました。違っていたのは「ゲームのラストプレー」であった点です。
 プレーヤーが「ラストプレーとは思わずに蹴り出した」可能性が有ります。

 とはいえ、選手たちは試合時間が相当に押し迫っていたことは分かっていたと思いますし、あの大きな音のホーンが聞こえなかったというのも、やや無理があるかなと感じます。

② このままゲームを終了させて「勝点1」を確保するため

 自陣ゴール前から、日本のゴールまでの攻撃が成功する可能性より、さらにピンチが広がり、日本チームに追加点を許すリスクの方が高いと考えた可能性です。

 12-19での敗戦なら「7点差以内の敗戦」ですので、勝点1を確保でき、その勝点1がプール戦勝ち抜けの争いの中で、大きな意味を持つと判断しての蹴り出しであったという見方。

 これも一理はあるのですが、それならどうして斜め前方に蹴ったのでしょうか。
 蹴り損ねれば、ボールが外に出ず、日本チームのカウンター攻撃を受けるリスクが残ってしまうのです。

 勝点1を確保するためならば、「横に蹴り出す」のが安全・確実なプレーということになります。
 このキックは、通常の陣地回復を狙うキックそのものに観えましたから、この見方が正しいとは一概には言えないと思います。

③ 「完敗」を認めたプレー

 試合後のアイルランドチームの選手たちのコメントを観ると、日本チームの健闘を称え、「完敗」を認めるような内容が多かったと思います。

 このラストプレーにおいても、「この試合は完敗」と感じていたアイルランドチームの心情が出てしまったものという見方です。
 大袈裟に言えば「もう戦いたくない」と感じてしまったということになるかもしれません。

 ありそうなことですが、世界トップクラスのチーム(大会前は世界ランキング1位)が、そんなに簡単に「完敗」を認める、というのもなかなか納得できない見方でしょう。
 ましてや、「気迫」で戦うラグビー競技においてですから。

 いろいろと考えてみても、やはり結論には至らないのです。

 日本VSアイルランド戦のラストプレーは、私には永遠の「謎」なのかもしれません。

 日本大会において、ホスト国である日本代表チームのテレビ視聴率が高いのは自然な話でしょうが、今大会においては「視聴率の上昇」がブレイブブロッサムズの活躍を如実に表しました。

① 緒戦・ロシアとのゲーム

 関東地方・ビデオリサーチ調べ(以下、同じ)の平均視聴率18.3%、瞬間最高視聴率25.5%。

② 第2戦・アイルランドとのゲーム

 平均視聴率・前半が15.3%、後半が22.5%、瞬間最高視聴率が28.9%。

③ 第3戦・サモアとのゲーム

 平均視聴率32.8%、瞬間最高視聴率46.1%。

④ 第4戦・スコットランドとのゲーム

 平均視聴率39.2%、瞬間最高視聴率53.7%

⑤ 準々決勝・南アフリカとのゲーム

 平均視聴率41.6%、瞬間最高視聴率49.1%。

 日本チームが勝利を重ねる度に視聴率が上がっています。

 もともとラグビーに興味が有った人達は、ロシア戦からテレビに噛り付いたのでしょう。

 そして、「運命のアイルランド戦」を迎えますが、戦前の予想では、アイルランド絶対有利の評でしたから、まだ視聴率は「それほど上がらなかった」のでしょう。

 ところが?、この難敵・アイルランドを破ってから、「一気に注目が集まった」のです。
 サモア戦の視聴率が跳ね上がりました。
 つまり、今大会の日本国内での盛り上がりは、9月28日(アイルランド戦)から10月5日(サモア戦)の間に発生?したと推定されるのです。
 
 にわかラグビーファン(何の問題もありません、と言うか、素晴らしいことだと思います)の増加も、この期間に急速に進んだのでしょう。
 そして、サモア戦の瞬間視聴率46.1%という超高率が実現したのです。

 興味深いのは、スコットランド戦と南アフリカ戦の比較でしょう。

 平均視聴率では南アフリカ戦が上回っていますが、瞬間最高視聴率ではスコットランド戦の53.7%が最高となっています。
 ネット等でスコットランド戦の途中経過を把握していたファンが、「勝ちそうだ」ということで、テレビのスイッチを入れたと見るのが妥当でしょう。

 南アフリカ戦については、大応援をしたけれども、「リードを許す」試合展開でしたから、後からテレビのスイッチを入れた人達、テレビのチャンネルを変えた人達が、スコットランド戦より少なかったということになります。

 南アフリカ戦の平均視聴率は、2019年に日本で放送された全ての番組の中で「最高」であると報じられました。
 日本戦を中心とした、ワールドカップ期間中のラグビー人気は、とても高いものだったのです。

 ワールドカップ開催で一気に盛り上がったこの人気を「継続し、一層盛り上げていく」ことが、日本ラグビー界にとって肝要であることは、言うまでもありません。

 そして、それが最も難しいことなのでしょう。

 プールAの日本戦を観ていて、妻が「このイケメン、誰?」

 「ラファエレ ティモシー選手だよ。13番。日本代表の不動のセンターさ。確かに二枚目だね」

 それ以来、ティモシー選手がテレビ画面に映るたびに、妻は「ラファー」と叫んで、手を振っています。
 テレビ画面に手を振るのも、いかがなものかとは思いますが、一発で大ファンになってしまったのです。

 スコットランド戦前半終了間際の福岡選手のトライの時には、「これはラファのキックが良かったのよ。どうして、もっとラファの活躍をクローズアップしないのかしら」と言います。

 「みんな十分分かっているよ。確かに、とても正確で、受け手のことを十分に考えたキックパスだったね」

 「でも、アナウンサーも解説も、ラファのキックパスのことは余り言わないよ。どうして?」と、何時までも不満そうでした。

 ラファエレ ティモシー選手はサモア生まれの28歳。

 2010年に山梨学院大学に入学し、日本のラグビーに参加しました。山梨学院卒業後はコカコーラ・レッドスパークスに加入し、トップリーグでのゲームに出場します。
 そして2016年、日本代表初キャップを得ました。

 以降は、ブレイブブロッサムズの「不動のセンター」として活躍を続けています。

 ちなみに、2017年10月、日本国籍を取得しています。
 ここからは、ティモシー選手と言うより、ラファエレ選手と呼ばれることが多くなりましたが、私はどうしてもティモシー選手と呼んでしまいます。

 身長186cm、体重96㎏のセンタースリークオーターバックCTBというのは、現在では普通のサイズというか、ワールドカップを観ていると、やや小さい方という感じもします。

 このラファエレ選手を「不動」と呼ぶのは、「フルタイム出場」を続けているからに他なりません。
 20世紀のラグビーとは大きく異なり、現在のラグビーでは「控え選手のほとんどが出場する」、ワールドカップ2019日本大会なら、15名のスターターと8名の控え選手で各ゲームにおける各チームが構成されているのですが、この8名は殆ど途中交代でフィールドに立ちます。
 フレッシュな選手を投入することで、チーム全体の運動量やパワーを落とさないための措置なのでしょう。従って、80分強を毎試合フル出場するプレーヤーは、多くは無いのです。
 今大会の日本チームなら、例えば、キャプテン・リーチマイケル選手も度々交替していましたし、スクラムハーフSHは、前半が流選手、後半途中から田中選手といった形で、「約束事として交替」するケースも少なくありませんでした。

 そうした現代ラグビーにおいて、しかし、各チームには「交替しない」プレーヤーが存在します。例えば、オールブラックスの15番ボーデン・バレット選手は、出続ける選手のひとりでしょう。
 そして、ブレイブブロッサムズでは、ラファエレ選手が出続ける選手のひとりなのです。

 そのプレーは、ハーフ団から回ってきたパスをウイングWTBやもうひとりのCTBに巧みに回したり、自ら突進してゲインしたり、時にはトライしたり(サモア戦前半28分のトライは見事でした)、様々なプレーを披露しますが、「目立つプレー」ばかりにこだわっている様子は、全くありません。

 そこが凄いと思います。

 サッカー競技においても、優秀なプレーヤーの条件のひとつとして、「余計なことはしない」ことが挙げられますが、ラファエレ選手はまさにこれにあたります。全く「余計なことをしない」のです。
 それが、チームにとってどれほど大切なことであるかは、「不動の」「フルタイム出場する」CTBという事実が明確に証明しているのでしょう。

 妻に「ティモシー選手は、もう結婚しているよ。確か、ニュージーランドの人と」と伝えました。

 少し「ラファー」と呼ぶ回数が減り、手を振ることが少なくなったように感じられますが、それでも、大ファンであることに何ら変わりはありません。

 日本大会における松島幸太朗選手の活躍は、「見事」の一語でした。

 そのスピードとステップ、結果としての「前進する力」は、今大会の日本チーム躍進の大エンジンでした。

 1993年生まれの26歳。ジンバブエ人のお父さんと日本人のお母さんのもとに生を受けて、5歳の時に日本国籍を取得しています。

 桐蔭学園高校時代には、全国高校ラグビーフットボール選手権大会で優勝と準優勝を飾っています。
 2014年にサントリーサンゴリアスに加入、同年5月に日本代表に選出され、2015年のワールドカップに出場しました。

 そして今大会開幕戦のロシア戦では3トライを挙げました。
 ワールドカップで1試合3トライは、日本ラグビー史上初の快挙であったことは記憶に新しいところです。

 さて、松島選手の素晴らしいところ挙げて行きましょう。

① ランニングスピード

 これはもう見事なもので、スピードなら今大会髄一のランナーでしょう。

② ステップ

 これも見事。「真っ直ぐ走る系」のプレーヤーですが、素早いステップには目を見張るものが有ります。
 数多くの相手プレーヤーが立っているフィールドを「無人の野」を行くが如く突破して行くシーンを、何回魅せてくれたことでしょう。
 その突破から、日本チームのチャンスが数多く生まれたのです。

 このスピードとステップから創造される「前に出る力」が、松島選手最大の持ち味なのです。

③ ハイボールへの強さ

 今大会の日本チームの弱点のひとつであった「ハイボールへの対応」についても、松島選手は秀でた能力を示してくれました。
 相手チームからハイパントが上がった時に、日本チームで取りに行くのが松島選手であった場合には「ひと安心」でした。
 たとえ取れなかった場合であっても、「松島選手がチャレンジして取れないのであれば、仕方がない」と感じました。
 ボールが落下してくるポイントの瞬時の把握、そのポイントへの素早い寄り、正確なジャンプ、安定したキャッチング能力、それらのスキルが「ワールドクラス」であることは間違いありません。間違いありませんから、松島選手で取れないなら「他に術が無い」と判断できるのです。

④ フィジカルの強さ

 身長178cm、体重88㎏というのは、ワールドカップに出場してくるプレーヤーの中では、明らかに小柄です。
 あのランスピードやプレーの俊敏性を担保するためには、こうした体格も止むを得ないものなのでしょうが、その「小柄」な体格で、松島選手は凄いフィジカルを魅せます。

 山の様な大男達に掴まっても、簡単には倒れないというか、引き摺って前進したりします。ボールを相手チームに取られる回数もとても少なかったと思いますし、相手チームが松島選手を倒してラックにすることは、容易なことではありませんでした。

 体幹が強いことはもちろんとして、相当のパワーも具備しているのであろうと感じます。(凄いことです)

⑤ ウイングWTBとフルバックFB

 松島選手は、バックスBKの各ポジションを熟すことができます。

 ウイングスリークオーターバックWTBの専門家ではなく、センタースリークオーターバックCTBやフルバックFBも十分にプレーできるのです。

 今大会は主にWTBとして、時にはFBとしても活躍してくれたと思いますが、日本代表チームには欠かせない、BKのユーティリティプレーなのです。

 以上、松島選手のストロングポイントを列挙しました。
 これらのスキルが一体となって、スーパープレーヤーが生成されているのでしょう。

 ワールドカップ2019日本大会は、松島選手にとって「脂の乗り切った時期・プライムタイム」の大会であったと感じます。

 とはいえ、2023年フランス大会でベスト4進出を目指すであろう日本代表チームにとっても、松島幸太朗は「欠くべからざる存在」に観えます。
 その頃には30歳になる松島選手ですが、現在の、いや現在以上のパフォーマンスを魅せていただけるものと信じています。


 ニュージーランド・オールブラックスは、日本大会では3位に留まりました。

 「世界一のラグビー強豪国」を自他ともに認めているチームとしては、残念な結果でしょうが、そのスピード溢れるプレー振りは、今大会でも素晴らしいものでした。

 いつの時代も「世界を代表するプレーヤー」を輩出し続けるオールブラックスですから、どのポジションにも良い選手が居るのですが、中でもフルバックFBのボーデン・バレット選手は、前評判通りの見事なプレーを披露してくれました。

 友人S氏が「彼はどこにでも顔を出すね」と言っていました。
 元サッカー選手であり、スポーツ全般に造詣が深いS氏のコメントは、いつも的確です。

 S氏の言う通り、ボーデン・バレット選手は、ゲームのポイントとなるプレーに「常に登場」しているように観えました。
 テレビ画面への登場回数も極めて多く、スタジアムで観ていても、バレット選手の動きは目立っていました。

① 超一流選手はどこに居ても分かる。

 例えばサッカーであれば、かつてのペレ選手やクライフ選手、マラドーナ選手、ジダン選手といったスーパースターは、ピッチのどこに居ても直ぐに分かりました。
 
 日本においても、釜本選手や三浦カズ選手は、直ぐに分かりました。

 体型や独特の動きがその要因なのでしょうけれども、全体としては「オーラが有る」と言うことになりそうです。

 世界屈指のラガーであるボーデン・バレット選手にも、こうしたオーラがあることは、「ゲームで目立つ」ひとつの要因なのでしょう。

 とはいえ、これだけでは「テレビ画面への登場頻度が高い」ことの説明にはなりません。

② 全てのプレーにおいて「狙い」「目的」が明確

 この点が大きいのではないかと考えています。
 ボーデン・バレット選手のプレーひとつひとつに「明確な狙いがあり」、その狙いに沿ったプレーから「チャンスが数多く生まれる」ので、テレビ画面に登場する機会が多く、「どこにでも顔を出す」印象があるのではないかと、思うのです。

 もちろん、オールブラックスの戦法が有り、試合毎に異なる戦法・戦術を用いるのでしょうから、バレット選手もそのチームの方針に従うのでしょう。

 チームのゲーム毎の方針・約束事の範囲内で、自ら考えプレーしているところが凄いのです。
 バレット選手が、ゲーム中に考える「狙い」「目的」が的確であることは言うまでも無いのですが、それを実行するスキルの高さも、不可欠な裏付けとなっていると思います。

 スポーツにおいて、全てのプレーを自ら考えて行うというのは、とても難しいことだと思います。
 それが出来るプレーヤーが「一流」と呼ばれるのかもしれません。

 こうした思考方法が出来るためには、「次に展開されるであろうプレー、チーム全体としてのプレーを予測する」ことが大切でしょう。
 こうした「ゲームの将来を予測する能力の高さ」こそが、「超」一流プレーヤーの条件なのかもしれません。(本ブログ2016年10月10日の記事[クライフの遺言7]「これから起こりそうなことが判断できた」をご参照ください)

 「世界屈指のラガー」ボーデン・バレット選手のプレーには、これからも大注目です。

 日本大会は南アフリカチームの優勝で幕を閉じました。

 その南アフリカチームのプレーにおいて、スクラムハーフSHファフ・デクラーク選手が再三上げたハイパントが、とても印象的でした。
 「スプリングボクス2019の攻撃における主要戦法」であったことは、間違いありません。

 ハイパントと言えば、私などは1970年前後の近鉄チームの得意戦法が、直ぐに頭に浮かびます。
 あの頃の近鉄チームは、何度もハイパントを上げて、相手陣内に「殺到」しました。
 ウイングの坂田好弘選手やフォワードの小笠原博選手、石塚広治選手らの突進は、当時の日本トップクラスの破壊力を魅せていたのです。

 その後、ハイパント攻撃は、相手チームにボールを渡してしまう、という理由からか、次第に使われなくなりました。
 やはりパスの方が、「ボールを自軍で保持したまま」攻撃を継続できるという判断からでしょう。

 日本ラグビーのトップクラスのゲームにおいても、近鉄チームが弱くなってからは、あまり観られない戦法となったように感じます。

 ところが、21世紀の10年代になって、ハイパントは蘇りました。
 世界トップクラスのゲームにおいても、再三使われる戦法となったのです。

 理由としては、

① 「前に蹴る」ことができるので、地域を獲得できること
② 短い距離のキックなので、キッカー自身も含めた味方プレーヤーが落下地点に到達することができ、落下してくるボールの「獲得戦」に参加できること

 が挙げられるのでしょう。

 特に、2010年以降は②の理由、50%・50%とまでは言えないにしても、距離・高さ共に上手に蹴り上げられたハイパントならば4対6位の確率で、ボールを獲得できる可能性があることは、前進していることをも含めれば、サイドラインに蹴り出して、相手ボールのラインアウトにするよりは、「ボール獲得の可能性が高い」と判断されるのでしょう。

 さらに、相手チームのプレーヤーがボールをキャッチした場合においても、そのプレーヤーにタックルしたりして、相手プレーヤーの動きを止めることは比較的容易(何しろ、捕球に競り合う程に相手プレーヤーに近い上に、相手プレーヤーはキャッチ後フィールドに降りた直後ですから、体制が出来ていないことが多いのですから)ですし、ラックになった後のジャッカルの可能性もあるからです。

 こうなると「不確実な戦法」としてのハイパントの長所を、各チームが考え活かすようになったということになりそうです。

 結果として、ハイパント戦法は、ワールドカップに出場する数多くのチームにおいて使われるものとなりました。
 我らが日本チームも、時折使っていました。

 そうした各チームの中でも、南アフリカチームがハイパントを多用していたことは、皆さんご覧の通りです。
 もちろん、デクラーク選手も、パスや、自身がボールを保持しての突進も行うのですけれども、圧倒的にハイパントが多かった印象です。これだけハイパント戦法を主力戦法として試合で使うこととなれば、その技術が向上するのは自然な話です。

 「左利き」のデクラーク選手から、様々な角度に、様々な距離・高さ、のハイパントが繰り出され、相手チームを悩ませたのです。

 21世紀に入ってからの一時期、ラグビー競技は「陣地取りゲーム」となり、両チームが相手チームの陣内に深々とキックを蹴り合うシーンが続いた時期が有りました。
 蹴り合いから、上手く蹴った方、長いキックを安定して蹴ることができるチームが、優位にゲームを進める時代があったのです。

 その「蹴り合い」も味が有りましたが、やはり「他のプレーヤーが殆ど動かない」状況下で、延々と長いキックの応酬が続く、というのは、面白くないという意見が多数出されたのも、自然なことでしょう。

 そうした時代が10年位は続いたでしょうか、その「蹴り合いの時代」を経て、ハイパントの時代が到来したように観えるのです。

 日本大会の南アフリカチームは、自チームのメンバーの特性等を十分に考慮して、主要戦法としてハイパントを採用し、見事に優勝を勝ち取りました。

 「チームに合った戦法」を採用し、磨きをかけて行くことが重要であることを、明示してくれたのでしょう。
[11月2日・横浜国際総合競技場]
南アフリカ32-12イングランド

 巧みな試合運びで、スプリングボクスが快勝しました。

 ゲームの帰趨を決めたのは、前半30分から続いたイングランド攻勢・南アフリカ守備の局面でしょう。

 この長い攻勢で、イングランドチームは再三南アフリカゴール寸前まで迫りました。
 このレベルのチームがゴール5m以内まで迫ると、トライに繋がる可能性が高いのです。パワフルな突進を何度も「その場でストップ」させることが至難の技であることは、言うまでもないことでしょう。

 ところがこの時、南アフリカチームは「止め切り」ました。
 もの凄い守備であったと思います。

 イングランドチームはこの大攻勢で、残念ながらトライを挙げることが出来ず、ペナルティーゴールPGを決めて、6-6の同点とするに止まったのです。

 この攻防を境として、ゲームの流れは南アフリカチームに傾いたと思います。

 前半38分、そしてホーンが鳴った後の前半43分、南アフリカチームはPGを立て続けに決めて、前半を12-6とリードしました。
 イングランドチームとしては、前述の攻勢時にトライ&ゴールを挙げて10-6とリードして折り返したかったところ、あるいは最悪でも6-6の同点で後半に入りたかったのでしょうが、6-12となってしまいました。

 もちろん、これらがスプリングボクスのゴール前守備の強さと、ホーン後でもペナルティーキックを実現するという「試合運びの巧みさ」によるものであることは、明白でしょう。

 6点差とはいえダブルスコアで後半に入り、ロースコアゲームということも有って、ゲームは南アフリカペースでした。そして結果として、ゲームは最後まで南アフリカチームがコントロールすることとなったのです。

 後半5分には、スタンドオフSOハンドレ・ポラード選手のPGが決まって15-6とリードを広げ、同11分にセンタースリークオーターバックCTBオーウェン・ファレル選手にPGで15-9と追い上げられると、同17分にポラード選手が再びPGを決めて18-9としました。
 イングランドチームは、同19分にファレル選手が再びPGを決めて12-18と追い縋りますけれども、ゲームは常に「南アフリカが先行し、イングランドが追い縋る」という展開となり、インクランドが5点差以内に追い上げることは、ありませんでした。

 そして後半26分、両チームを通じて最初のトライが生れました。
 スプリングボクスのバックス陣が左サイドでランニングを始め「加速」。
 このレベルのゲームでは、攻撃の際のランニングスピードがポイントとなります。「加速」し、スピード十分な攻めを、ディフェンス側が後退しながら止めるのは、当然ながら非常に難しいのです。

 ウイングWTBマカゾレ・マピンピ選手がキック。このボールをセンターCTB.ルカニョ・アム選手がキャッチし、左側を走るマピンピ選手に、即座にパス。綺麗なパスのやり取りが決まって、マピンピ選手が悠々と左中間にトライしました。

 イングランドの守備陣がアム選手にタックルする寸前、マピンピ選手のキックパスを捕球した瞬間に、マピンピ選手に出したパスは、本当に美しいものでした。

 また、アム→マピンピのパスが通った瞬間に、後方に居たスクラムハーフSHファフ・デクラーク選手を始めとするチームメイトが一斉に両手を挙げていたのも、印象的でした。チーム全体の「喜び」が爆発した瞬間でした。

 このトライ&ゴールで25-12とリードを広げたスプリングボクスに、後半33分、2つ目のトライが生れました。
 こちらは、逆サイドのウイングWTBチェスリン・コルビ選手の個人技でした。
 右サイドでボールを受けたコルビ選手は、十分なスピードと高度なステップでイングランドディフェンダーを交わし、ゴールに走り込みました。いかにも「コルビ選手らしい」トライでした。

 両サイドのウイングのトライによって32-12となり、ゲームは完全に決まりました。

 スプリングボクスは、「ワールドカップの決勝トーナメントでの強さ」を如何無く発揮しました。
 ゲーム前の想定通りの試合展開で、狙い通りの戦法が生きたのでしょう。
 特に、「伝統の守備力」は秀逸でした。

 イングランドチームは、準決勝のニュージーランド戦に比べて、パワー・スピード共に不足していました。もちろん、南アフリカチームの守備力が強かったことも要因なのですけれども、オールブラックスとの激戦で「心身の力」を使い果たしていたのかもしれません。

 決勝を観ていた妻が「今日のイングランドは、準決勝のニュージーランドに似ている」とコメントしていましたが、言い得て妙でしょう。イングランドのアタックは、悉くゲインライン手前で止められてしまったのです。

 我らが日本チームが準々決勝で敗れた南アフリカチームが、最後に優勝してくれたことは、日本チームにとっても良かったことのように感じます。
 ブレイブブロッサムズは「チャンピオンチームに敗れた」のですから。

 日本大会のスプリングボクスは、2015年大会のチームより、相当強いチームでした。(本ブログ2019年10月24日付の記事「[ラグビーワールドカップ2019-24準々決勝] 南アフリカチームの「堅守」」をご参照ください)
 「底知れぬ強さ」が、ワールドカップ制覇を実現したのです。

 やはり、南アフリカ・スプリングボクスは「ワールドカップにとても強い」チームなのでしょう。

 日本大会の決勝戦が11月2日に迫りました。

 9月20日の日本VSロシアのゲームで幕を開けた大会も、ついに決勝を迎えることとなったのです。
 こうした世界屈指のスポーツイベントではいつも感じることですが、既に少し寂しいのです。

 とはいえ、これがメインイベントでもありますので、思い切り楽しまなくてはなりません。

 決勝は「イングランドVS南アフリカ」です。

① イングランドチームが、準決勝の様なパフォーマンスを披露することができれば、イングランドが有利

 オールブラックスを相手に、イングランドチームは素晴らしいゲームを披露しました。
 パワー・スピード・プレーの丁寧さ、いずれも申し分のない「完璧」なゲームでした。

 これほどのプレーは、そのレベルの高さにおいてワールドカップ史上でも屈指のものでしょう。ひょっとすると、ワールドカップ史上最高のパフォーマンスであったのかもしれません。

 南アフリカを相手にする決勝戦で、イングランドが同レベルのプレーを展開できれば、おそらくはイングランドの勝利でしょう。それも圧勝だと思います。

 ところが、ラグビーに限らず団体競技においては、素晴らしいパフォーマンスを示したチームが、次のゲームでは「さっぱり」というケースが時々あります。特に、大きな大会で観られるのです。

 例えば、1974年のFIFAワールドカップ決勝、オランダVS西ドイツのゲームでしたが、このゲームの戦前の予想は「オランダ有利」、それも相当有利と言うものでした。

 この大会で、サッカーに革命を齎したと称される「トータルフットボール」を披露したオランダチーム、「空飛ぶオランダ人」ヨハン・クライフ選手を中心としたチームは、2次リーグの最終戦でブラジルチームを相手に2-0の完勝を演じていました。
 このブラジル相手の「完勝」の内容が素晴らしいもので、ブラジルは何もできなかったと言われたものです。1970年ワールドカップの優勝チームであり、常に世界のサッカーを牽引してきたブラジル代表を相手に、オランダは新しい戦術を駆使して圧倒的な勝利を得たのです。

 このオランダ代表チームが、決勝でも、トータルフットボールを駆使して西ドイツ代表チームに勝つであろうと、多くのサッカーファンが考えたのも無理はありません。
 私も「今のオランダに勝てるチームは無い」と感じました。それ程に、ブラジル戦でのパフォーマンスは見事だったのです。

 ところが、決勝は2-1で西ドイツチームが勝ちました。
 このゲームのオランダチームは、ピッチで歩いているプレーヤーも多く、運動量が2次リーグ・ブラジル戦とは比較にならない程少なかったと思います。
 ポジションに拘らず、全選手が流動的かつ有機的に繋がって自在の攻めを展開するトータルフットボールにおいて、運動量不足と言うのは致命的でした。
 オランダチームは、ブラジル戦と西ドイツ戦で「別のチーム」になってしまったかのようだったのです。
 現在でも、私はとても不思議な感じがします。

 さて、ラグビーワールドカップ2019日本大会に話を戻します。

 イングランドチームが、決勝において準決勝とは「別のチーム」な変わってしまう可能性が無くは無いと感じています。
 それ程に、準決勝のパフォーマンスが高すぎたという見方です。

② 通常の?イングランドチームのプレーを披露した場合

 通常のパフォーマンスといっても、世界ランキング1位のチームですから、当然に相当高いパフォーマンスなのですが、この場合には、決勝は「互角」でしょう。

 そして、「試合運びの上手さ」という点で、僅かながら南アフリカチームの方が有利であろうと感じます。

 南アフリカチームは、「伝統的」な守備の強さを持ってロースコアゲームに持ち込み、ここぞという場面での高いパフォーマンスで得点して、少ない得点差で勝ち抜く術に長けています。
 そうでなければ、ワールドカップで2度も優勝できないでしょう。
 それも、決勝では「2戦2勝」なのです。

 決勝トーナメントにおいて「このゲームを勝つ」という能力であれば、出場チーム中最も上とも言えそうです。

 スプリングボクスの各プレーヤーは、「自らのポジションに求められるスキルにおいて『尖って』」います。
 これは、何時も感じることです。
 フォワードFWはFWとして、バックスBKはBKとして、その役割期待の120%のプレーを魅せることが多いのです。

 準決勝ウェールズ戦の終盤には、南アフリカチームの動きが悪くなりました。
 スタジアムで観戦していて、「珍しい」と思いました。こういうスプリングボクスは、ワールドカップ・決勝トーナメントではなかなか見られないのです。

 「決勝にピークを持ってくるように、コンディションを調整しているのかもしれぬ」と感じました。「準決勝はなんとかなるだろう。最高のパフォーマンスを披露するのは決勝だ」と。
 ウェールズチームを相手にして「なんとかなる」というのはリスキーな判断ですが、「決勝で勝つ」という目標に向けてのギリギリの対応とすれば、有り得ないことではないでしょう。
 ベンチワークも含めて、「試合運びが上手い」スプリングボクスなのです。

 決勝戦は「互角」と観ます。

 そして、僅かに南アフリカチームが有利だと考えます。

 イングランドチームには、準決勝のニュージーランド戦と同等レベルのパフォーマンス発揮が期待されます。
 「2試合連続のハイパフォーマンス」は、こうした大会ではとても難しいことでしょう。
 実現できれば「奇跡」と呼んでも良いのかもしれません。
 この「奇跡」を起こすことができれば、イングランドチームが勝つでしょう。

 さあ、決勝戦です。

 ワールドカップ史に刻まれる好ゲームを期待します。

 「動」のゲームであったイングランドVSニュージーランドと比べて、「静」のゲームであったと思います。

 ウェールズと南アフリカは、「勝利するために」必要な慎重かつ丁寧なゲームを披露してくれたのです。

 第1戦とは異なり、第2戦はバックスタンドからの観戦となりましたが、見所十分な好ゲーム、高いレベルの「接戦」を堪能させていただきました。

[10月27日・準決勝第2戦・横浜国際総合競技場]
南アフリカ19-16ウェールズ

 運動量から見て、前半から後半15分辺りまでは南アフリカのゲーム、後半20分以降はウェールズのゲームであったと思います。

 前半14分、南アフリカチームのスタンドオフSOハンドレ・ポラード選手がペナルティーゴールPGを決めれば、17分にはウェールズSOダン・ビガー選手がPGを決めて、3-3の同点。

 前半20分、35分とポラード選手がPGを決めて南アが9-3とリードし、39分にビガー選手がPGを入れ返して、前半は南アの9-6で折り返しました。
 互角の試合展開に見えましたが、僅かに南アフリカチームの前進力が勝り、その分が「3点差」となっていたのでしょう。

 後半5分、ビガー選手がPGを決めて、ゲームは9-9、振出しに戻りました。

 両チームともにトライが欲しいところでしたが、両チームともに「守備的なプレーを主軸」としていて、リスクは冒さないプレーが続きましたから、なかなかトライチャンスは生まれませんでした。

 そうした一進一退の展開の中で、後半16分、スプリングボクスはついにトライを挙げました。センターCTBダミアン・デアレンデ選手がウェールズ守備陣の隙を付いて飛び込んだのです。
 手堅い攻撃を継続してきたスプリングボクスにとって、ようやく見出した「隙」であったと感じました。

 もともと、「ロースコアゲーム」は南アフリカチームの得意とするところですから、ゲームが南アフリカペースで進んでいたことは間違いないでしょう。
 ウェールズとしては「点の取り合い」という展開に持ち込みたかったのでしょうが、南アフリカがこれを許さなかったのです。

 しかし、これは意外だったのですが、後半の半ばを過ぎて、南アチームの方に先に疲労が来たのです。チーム全体の動きが、僅かに悪くなりました。
 
 そして後半24分、ウェールズは左サイドを攻めて、ウイングWTBジョシュ・アダムス選手がトライを挙げました。
 バックスBK陣の見事な連続攻撃でした。

 難しい角度となったコンバージョンキックでしたが、これをフルバックFBリー・ハーフペニー選手がしっかりと決めました。とてもプレッシャーのかかるキックですが、さすがにこのレベルのキッカーのスキルはとても高いのです。

 ゲームは16-16と、再び振出しに戻ったのです。
 まさに「大接戦」となりました。

 前述のように、この時間帯はウェールズチームの動きが勝っていましたから、ウェールズが逆転するのではないかと観ていました。スプリングボクスは窮地に追い込まれたのです。

 「ウェールズが勝利すれば、ワールドカップ史上初の北半球のチーム同士の決勝戦になる」と妻に話ました。

 苦しい状況下で、しかし、スプリングボクスは最後の力を振り絞って攻めました。
 そして後半36分、センターラインからウェールズ陣左サイドに少し入ったところで、ペナルティーを獲得しました。
 SOポラード選手が敢然と狙います。距離は45m位はありそうでしたし、角度も有りましたから、相当難しいショットでした。

 南アフリカチームにとっては、勝利に向けての乾坤一擲のプレーでしたが、ポラード選手はこれを見事に決めて魅せたのです。綺麗な弾道でした。
 再び、このレベルのキッカーのスキルの高さを思い知りました。

 得意の「ロースコアゲーム」を形成したスプリングボクスが、勝利をものにしたゲームでした。

 ウェールズにとっては、本当に惜しまれる敗戦でしょう。
 2度も同点に追い付いた試合内容、その闘志とスキルは、素晴らしいものだったと思います。

 私達の周りの席にはウェールズサポーターが多く、アダムス選手のトライの時には、ほぼ全員が同時に立ち上がりましたので、私達はトライの瞬間を眼にすることは出来ませんでしたが、ノーサイドの瞬間のそれらサポーターの落胆ぶりといったら・・・。
 シンと静まり返って、物音ひとつしません。

 ウェールズファンの悲嘆が良く伝わってきました。

 さて、スプリングボクスは決勝に駒を進めました。

 やはり、決勝は「南半球VS北半球」の対決となったのです。
 
 スイングロー・スイート・チャリオットの歌声が、横浜国際総合競技場に響き渡りました。

 試合開始前から聞こえていたのですけれども、試合が開始され、試合が進行するにつれて、その歌声は頻度・声量共に増加して行きました。
 白に赤い薔薇のユニフォームに身を包んだ、沢山のイングランドチームのサポーターが、肩を組んで、天に向かって歌っています。

 そして、試合時間が70分を過ぎて以降は、スイングロー・スイート・チャリオットが、スタジアムに響き渡り続けたのです。

 本場?の応援の大合唱を見て、聴き、感じることができたのは、とても貴重な思い出となりました。

[10月26日・準決勝第1試合・横浜国際総合競技場]
イングランド19-7ニュージーランド

 イングランドチームの「完勝」でした。

 ニュージーランド・オールブラックスは「為す術も無く」敗れたのです。

 このゲームについては、10月25日付けの記事で、「互角」と判断し、「前半20分までの間に最初にトライを挙げた方が優位に立つ」と書きましたが、この日のイングランドチームには、「20分」などという時間は必要ありませんでした。

 ゲーム開始1分40秒、ニュージーランドゴール前に迫ったイングランドは、センターCTBマヌー・ツイランギ選手が右中間にトライ。
 あっという間の先制トライでした。

 正面スタンドから観ていて、「随分押し込んでいるな」と感じていましたが、そのままトライするとは思いませんでした。オールブラックスが、そんなに早くトライを許すとは、思いもよらなかったのです。

 しかし、イングランドチームの「前進力」は極めて高く、ニュージーランドチームはワンプレー毎に後退していましたので、こうした結果が生まれたのでしょう。
 ひとつひとつのプレーのパワーはもちろんとして、スピードもイングランドが勝っていました。

 ツイランギ選手のトライで、ゲームは一気に傾きました。
 イングランドチームが「支配」したのです。
 この「支配」はゲーム終了まで続きました。

 前半終了間際、イングランドのスタンドオフSOジョージ・フォード選手がペナルティーゴールPGを決めて、10-0で前半を終えました。

 「1対1」のプレーで、イングランドチームが圧倒している展開では、この10点は大きいと感じました。
 個別のコンタクトプレーで、ほぼイングランドが勝ち続けるという展開は、試合前には想像していませんでした。
 ニュージーランドチームの各プレーヤーのコンディションが悪かったのかもしれませんが、ここは「イングランドの出来が良過ぎた」と観たいと思います。イングランドチームは、本当に素晴らしいプレーを続けたのです。

 後半開始早々のオールブラックスの反撃が期待されましたが、ゲーム展開は前半と同じでした。全てのプレーでイングランドが勝っているのです。
 まず後半9分にSOフォード選手がPGを決めて13-0。
 試合は一方的な展開となりました。

 後半16分、ニュージーランドのフランカーFLアーディ・サベア選手が、イングランドのラインアウトのボールを直接キャッチし、そのままトライとしました。
 イングランドのミスを突いたプレーでした。
 ニュージーランドは7-13としたのです。

 しかし、オールブラックスのファンの皆様には申し訳ないのですが、この試合に限っては、「反撃開始」という雰囲気はありませんでした。
 「零敗」を免れた、というのが、ニュージーランドチームの正直なところではないでしょうか。

 その後も、後半22分、29分とSOフォード選手のPGが決まって、19-7とイングランドがリードして、試合も終盤を迎えました。

 この試合では、イングランドの攻撃において「微妙な判定」が2度ありました。

 2度とも、当初イングランドのトライと判定されたものが、ノートライに変更されたのです。
 TMOにより、スローフォワードといった判定が下されたものですが、本当に微妙でした。
 もちろんノーゴールなのですけれども、この2つのノーゴールがトライと判定されていた得失点(イングランドに10~14点が加算された形)が、このゲームの内容に相応しいようにも感じます。
 それ程に、一方的なゲームであったと思います。

 残り試合時間3分を切ったころから、オールブラックスの最後の攻撃が展開されました。
 なんとかボールを活かしながら、右に左に走り回ります。
 しかし、どんどん後退して行くのです。
 それも、相当の速度での後退でした。

 「攻めながら後退する」というのは、ラグビーでは珍しいことではありませんが、これ程に速く連続した後退と言うのは、滅多に観られないものでしょう。
 ニュージーランドのプレーヤーとイングランドのプレーヤーがコンタクトする度に、押し返されるのです。

 「このまま自陣インゴールまで押されるのではないか」と隣の妻に言いました。

 さすがに、そんなことは起きなかったのですが、この一連のシーンが、このゲームを象徴していたと感じます。

 イングランドチームは、凄いゲームをしました。
 ベストゲームでしょう。
 特に、そのディフェンスは見事なもので、ほとんど反則をせずに、あのオールブラックスの攻撃を止め続けたのです。
 試合前には、オールブラックスがイングランドの反則からPGをいくつか決め、イングランドがトライ+ゴールで追い上げるという展開を予想していたのですが、その前段である、「オールブラックスのPG」が皆無の試合となったのです。

 一方のニュージーランドにとっては、全く不本意なゲームでしょう。
 もともと少人数しか投入しないラックプレーにおいて、再三ボールを奪取され、安定感十分なはずのラインアウトでも、イングランドに絡まれ失球するといった、「らしくない」プレーの連続でしたが、先にも書きましたように、これはイングランドの出来が良過ぎたと観るべきでしょう。

 オールブラックスのプレーヤーは、何度も何度もイングランドの守備ラインに突進しました。
 ここで「抜ける」ことができれば、組織的なフォロープレーによってチャンスを拡大することができたのですが、この試合では、なかなか「抜ける」ことが出来ませんでした。
 ランナーが悉く潰されていた印象です。
 
 一次攻撃の段階で潰されてしまうと、ニュージーランドチームには「得意のプレー」を展開する機会が無いのです。
 これが、このゲームにおける「単発に見える攻撃」の原因であろうと考えています。

 2007年ワールドカップまで、毎回のように観られていた、オールブラックスの意外なほどに脆い試合が、2019年の準決勝で久方ぶりに登場してしまいました。
 オールブラックスにとっては、本当に残念なゲームでした。

 イングランドは「完璧なゲーム」を展開しました。
 そして、ワールドカップの舞台で、オールブラックスにはじめて勝利したのです。

 エディ・ジョーンズHC率いるイングランドチームの、決勝戦における戦い振りに注目です。

 今大会に臨む堀江翔太選手をテレビ画面で観た時に、誰かに似ている、と感じました。

 しばらく「誰に似ているのか」分からなかったのですが、サモア戦の途中で気が付きました。
 あの「プレデター」だったのです。

 結っている髪型からの感じなのでしょう。(私だけの感覚かもしれませんが・・・)
 もちろん、「迫力」を表現する、良い意味での見立てですが、失礼であれば、お詫び申し上げます。

 「プレデター」となると、「誰に」というより「何に」と言った方が良さそうですが、アメリカ映画における「最強の怪物」のひとつです。
 多種多様な怖ろしい殺戮テクニックを駆使して、次々に相手を倒していくのです。
 あのエイリアンとも戦いました。

 堀江選手が、あの髪型を選択した時、プレデターを意識していたのかどうかは分かりませんけれども、ワールドカップで世界の強豪チームを相手にする時、「プレデター風」というのは相当に威力が有りそうです。

 スクラム第1列のフッカーHOというポジションは、とても難しく、経験が必要なポジションと言われます。スクラムの核となるポジションなのです。
 
 大体、「山の様に大柄な海外チームのプレーヤー」を目の前にしてというか、肩を合わせて押し合うというのですから、私などでは、まず「萎縮」してしまいます。

 様々なテクニックの応酬で、ゲームの流れさえ左右する「スクラム」プレーにおいて、気後れなどしていては話になりませんが、堀江選手程のスキルと経験を擁するプレーヤーでも、ゲームの中では様々な感情が行き来するものであろうとは思います。

 そうした状況下で、日本のプレデターは臆することなく戦いを続けて行ったのです。

 今大会の日本代表チームの快進撃における、堀江選手の活躍は、とても大きなものでした。

 身長180cm、体重105㎏という、決して大柄ではない体躯で、「前進を続けるフォワード」FWとして、本当に様々な局面に登場していました。
 相手プレーヤーに止められたり、潰されたりというプレーも多かったのですが、決して怯まないという姿勢は、日本チームの「心のよりどころ」であったようにも感じます。

 スコットランド戦の稲垣選手のトライの起点となったプレーは、日本ラグビー界において「長く語り継がれるプレー」でしょう。

 「日本のプレデター」は、2011年、2015年そして2019年と3度のワールドカップに出場しました。日本代表チームの苦しい時代も肌で知っているプレーヤーなのです。

 「日本のプレデター」も33歳となりました。
 そろそろ、ゆっくりしていただきたいとも思います。

 日本大会における日本代表チームの戦いは10月20日の準々決勝・南アフリカ戦での敗退により終了し、翌21日にはチームが解散しました。

 ラグビーに限らず、団体スポーツの世界大会で敗退、あるいは大会が終了すると、こうした形での「解散式」が行われます。
 特に、とても良く戦い、日本中を「熱く」していただいたチームの解散には、一抹の寂しさが漂うものですが、これは仕方のないこと。いつまでも「One Team」に拘るわけにもいかないのでしょう。

 各プレーヤーは各々の所属チームに帰り、いつものゲームに向けての準備に入らなければなりませんし、それが次のステップとして必要な事なのですから。

 それにしても、日本大会における日本チームの活躍には目覚ましいものが有りました。

 チームキャプテン・リーチ選手の活躍も、それは本当に素晴らしいものでした。

 1988年、ニュージーランド・クライストチャーチに生を受け、日本に留学して、2004年に札幌山の手高校で過ごし、2007年からは東海大学で学びました。
 もちろん、ラガーとしての活躍も続いたのです。
 
 2008年には、ラグビージュニア世界選手権大会に日本代表チームの一員として出場し、同年11月には「フル代表として初キャップ」を得ています。
 東海大学3年時には、全国大学ラグビーフットボール選手権大会で準優勝、大学4年時には同大会ベスト4と、我が国の大学ラグビー界を代表するプレーヤーとして大活躍。
 東海大学卒業後は東芝ブレイブルーパスに加入し、2011年ワールドカップの日本代表に選出されています。

 日本国籍を取得したのは2013年の7月、その時から名前の表記が、マイケル・リーチ→リーチ・マイケルに変わったのですが、私としてはどうしても、最初の印象が強く、無意識にマイケル・リーチと書いてしまいます。留意します。

 さて、そのリーチ選手は2014年4月から、日本代表チームのキャプテンです。
 当時のヘッドコーチHC、エディー・ジョーンズから指名されたのです。

 リーチ・マイケル選手の「キャプテンシー」に文句を付ける人は少ないでしょう。
 プレーヤーとしてのスキルはもちろんとして、チームの精神的支柱としての存在感は、文字通り「抜群」です。

 今大会では、リーチ選手がボールを持つ度に、観客席から「リーチ」という声がかかりました。この声は相当に大きなもので、「日本頑張れ」という声援よりも、良く聞こえた感じさえします。

 「リーチ」は、特に攻撃時に良く聞こえました。フランカー6番として、ボールを持ち突進すると、多数の大きな「リーチ」が場内に響くのです。
 こうした現象は、実は日本のスポーツにおいては珍しいのではないかと思います。
 ある選手がプレーをすると、その名前がスタジアムに響き渡る選手を、私は他に直ぐには思い当たりません。(MLBでは時折観られる現象ですが・・・)

 今大会のリーチ・マイケル選手の活躍を挙げるとすれば、特にディフェンスの際の献身的な運動量でしょう。
 相手プレーヤーが「抜け」て、日本チームにピンチが訪れた時、そこには必ずと言って良いほどリーチ選手の姿が有りました。
 相手プレーヤーにタックルし、ピンチの芽を摘んでいたのです。
 このようなプレーが、どれくらい日本チームのピンチを救ったか分かりませんし、何よりチームの同僚に「俺はここにいるぞ」と示し、「まだまだやれる」と鼓舞する効果は、絶大なものでした。

 31歳、身長190cm、体重105kg。現代のフォワード第3列のプレーヤーとしては普通のサイズでしょう。
 しかし、その存在感・リーダーシップはとても大きなものでした。
 まさに「キャプテン」なのです。

 ワールドカップ2019日本大会における日本代表チームの活躍は、長く語り継がれるものでしょう。
 そして私達は、そのチームを牽引したリーチ・マイケルというプレーヤーの存在を、決して忘れてはならないのです。

 決勝トーナメント1回戦・準々決勝4試合を終えて、準決勝の組合せが決まりました。

① 10月26日 イングランドVSニュージーランド (於、横浜国際総合競技場)
② 10月27日 ウェールズVS南アフリカ (於、横浜国際総合競技場)

 大会前の最もベーシックな予想通りの2試合となりました。(本ブログ2019年9月17日付記事「[ラグビーワールドカップ2019] 決勝トーナメントの行方 パターン1」をご参照ください)

 おそらくは、この4チームが現在の世界ラグビーユニオンの上位4チームなのでしょう。

 それだけに、準決勝では各チームが持ち味を発揮し、「力と力の勝負」が展開される可能性が高いと思います。

 イングランドとニュージーランドは「互角」でしょう。

 「組織」のニュージーランドと「個の力」のイングランドの激突は、展開さえ読めない感じです。
 プレーヤーの1対1の「パワー勝負」ならイングランドが上だと思いますので、ニュージーランドとしては、持ち前の「スピード勝負」に持ち込もうとするでしょう。
 
 勝負を決めるのは「最初の20分」だと思います。
 この20分間に、どちらのチームがトライを奪うかにかかっていると思います。
 イングランドが、ニュージーランドの守備陣を粉砕してトライを奪う可能性も有りますし、ニュージーランドがイングランドを振り回してトライを決める可能性も有ります。
 両チームが用意するであろう「スペシャルプレー」の効果にも注目しています。

 ゲーム全体としては、ニュージーランドチームが先行し、イングランドチームが追いかける展開が予想されますが、最後は7点以内の僅差でニュージーランドが逃げ切る可能性の方が、少し高いのでしょうか。

 ウェールズと南アフリカの対戦は、現在のプレー振りを観ると、南アフリカが少し有利だと思います。

 ウェールズチームは、大会に入ってから「接戦」が多く、準々決勝フランス戦も「薄氷を踏む勝利」でした。
 思い通りの得点力が発揮されていないと観ています。

 一方の南アフリカチームは、どのゲームも「試合前の想定通り」に進めているように観えます。
 もちろん、相手チームの抵抗(例えば、準々決勝・日本戦の前半)にあって「順調」という訳には行かないのですが、最後は自分達のゲームを創り上げているように観えるのです。

 相当に強いチームに仕上がっていると感じますから、南アフリカチームが優位にあると観ています。

 日本大会も6週目となりました。
 各チームのプレーヤーには蓄積された「疲労」があります。
 「故障」や「怪我」が皆無というプレーヤーも、滅多に居ないことでしょう。

 「疲労」「故障」「怪我」を踏まえて覇権を競うのがワールドカップであることは、言うまでもありません。

[10月20日・東京スタジアム]
南アフリカ26-3日本

 前半、日本代表チームは懸命に攻めました。
 南アフリカ陣内でのゲームが、延々と続いたのです。
 パワーで定評のある、世界屈指の強豪チームを「自陣に釘付け」にした日本チームの攻撃は、見事なものであったと思います。

 しかし、南アフリカチームは日本チームの攻撃をしっかりと凌ぎ、前半は5-3と2点のリードで折り返したのです。
 この驚異的な「堅守」、南アフリカチーム伝統の持ち味である「堅守」こそが、この試合の勝因であったことは、間違いありません。
 「凄い守備」であったと感じます。

 ノックアウトステージとなった以上、ブレイブブロッサムズとしても「隠すものは何も無い」状況ですから、これまで積み上げ習得してきた攻撃パターンをどんどん繰り出しましたが、スプリングボクスはそれらを悉くクリアして行きました。
 それも「反則無し」でクリアし続けるところが、世界トップクラスのチームの証なのでしょう。

 後半に入り、さすがに日本チームに疲れが観えて、今度は日本陣内でのゲームが延々と続きました。
 そして、日本チームも良く守ったのです。

 このゲームは、前半は日本が攻め南アフリカが守り、後半は南アフリカが攻め日本が守りました。とてもはっきりしたゲーム内容でした。

 後半、南アフリカは4分、9分、24分とスタンドオフSOハンドレ・ポラード選手がペナルティゴールPG3本を決め、14-3とリードを広げました。
 決して易しいキックばかりではありませんでしたが、さすがのポラード選手はキッチリと決めて魅せたのです。

 そしてこの後2本のトライを奪い、ゲームを決めました。
 スクラムハーフSHファフ・デクラーク選手から再三上げられた「ハイパント攻撃」と、「モールプレー」(日本チームはついに止めることができませんでした)で大きく前進を図る攻めが印象的でした。
 「着実に勝利を固めて行った」、スプリングボクスの見事な試合運びであったと感じます。

 敗れたとはいえ、ブレイブブロッサムズは良く戦いました。

 前半のスコア「3-5」が日本チームの実力を示しています。南アフリカチームをトライ1本の5点に抑えたことは凄いことでしょう。
 惜しまれるのは、押し続けた前半にトライを奪えなかったことですが、これは相手チームの守備を褒めるしかありません。特に、日本チームのバックスBK陣に加速させない守備、ラインオフサイドギリギリのコンタクトプレーは見事でした。南アフリカチームは、アイルランドやスコットランドといった強豪チームを破ってきた日本チームの攻撃を十分に研究し、効果的な対策を立案してきたのでしょう。その対策を、ゲームを通じて実行できる、各部プレーヤーの高いスキル・フィジカルは、さすがという感じがします。

 日本チームは後半、少し疲れが出ました。特に「心の疲れ」、「大会目標・ベスト8への達成感」も、この疲れを助長したのでしょう。
 逆に言えば、この「疲れ」が、現時点での日本と南アフリカの差なのかもしれませんし、ワールドカップ準決勝に進出に向けての「壁」なのかもしれません。

 いずれにせよ、素晴らしいプレーを披露してくれた日本代表チームには、感謝また感謝しかありません。
 本当に、良く戦っていただきました。

 さて、南アフリカチームは準決勝に駒を進め、ウェールズチームと対戦することとなりました。

 2019年の南アフリカチームには「底知れぬ強さ」を感じます。
 2015年のチームより、相当強いのではないでしょうか。

 決勝に向けての、欧州6か国対抗2019王者との対戦が、とても楽しみです。

[10月20日・大分スポーツ公園総合競技場]
ウェールズ20-19フランス

 準々決勝4試合の中で、一番の「接戦」でした。

 後半30分を過ぎ、試合時間残り10分を切って、ゲームはフランスチームが19-13とリードしていました。
 前評判を覆して、フランスチームがウェールズチームを破って、準決勝に駒を進めるのではないか、という雰囲気がありました。

 フランスチームは、とても上手に試合を進めていたのです。

 ゲームが落ち着く前の前半5分、ロックLOセバスティアン・バハマヒナ選手が先制トライ、続いて前半8分、フランカーFLシャルル・オリボン選手がトライとして、一気に12-0とリードしたのです。

 特に2本目のオリボン選手のトライは、「3プレーヤーが並行して走りパスを連ねる」という、まさにシャンパンラグビーの典型的なトライ、「美しい」トライでした。
 フランスの先制攻撃が、見事に実ったのです。

 ウェールズチームも、こうしたフランスチームの先制攻撃は予測していたというか、フルスロットルでのフランスの入り、は時折観られるもの(2019年の6か国対抗のこの対戦でも、フランスがいきなり16-0とリードし、ウェールズがこれを逆転しました)ですので、慌てることなく、おっとり刀で反撃の機を狙っていました。

 そして前半12分、ウェールズFLアーロン・ウェーンライト選手が独走のトライを決めて、7-12とし、その後スタンドオフSOダン・ビガー選手のペナルティゴールPGも決まって、10-12と2点差に追い上げたのです。

 ここまでは、ウェールズチームにとっては「計算済み」の試合内容であったことでしょう。

 この試合のフランスチームは、ここからが一味違いました。

 積極的な守備でウェールズの攻撃を抑え込むと、前半31分、センタースリークオーターバックCTBビリミ・バカタワ選手がトライを決めて、19-10と差を広げました。
 このゲームのバカタワ選手は「大活躍」と言って良く、攻撃のみならず、守備においてもチームのポイントとなるプレーを連発していました。素晴らしいプレーヤーだと思います。

 19-10の10点差で前半を終えたフランスチームは、おそらくは「狙い通り」の試合運びだったことでしょう。
 ウェールズチームとしては、前半で逆転する筈であったゲームだと思います。

 当然ながら、後半に入りウェールズチームの攻勢が強まりました。
 「個の力」を前面に押し出し、ガンガン行きます。

 これに対して、フランスチームは良く守りました。
 特に「2人で行くタックル」において、ウェールズの選手の突進を止めるばかりか、2~3m押し返す、「捲り上げて押し返す」プレーが随所に観られました。
 こうなると、ウェールズの攻撃は「度々寸断される」こととなりました。

 後半9分には、先制トライを挙げたバハマヒナ選手が、ラフプレーからのレッドカード一発退場となって、フランスチームとしてはラインアウトの重要なレシーバー(バハマヒナ選手は2mを越える長身プレーヤー)を失うという事態となりましたが、その後でも、フランスチームの「堅守」は継続しました。

 そうした中でウェールズチームも必死の攻めを見せ、後半14分にはSOビガー選手がPGを決めて、13-19と6点差に追い上げました。ワンポゼッション差としたのです。

 ここから、試合終了までの25分間今日の時間帯が「死闘」となりました。

 ウェールズは6点差なら逆転できると考え攻めますが、一方で自陣内でペナルティーを犯し、PGを決められて9点差となれば、一気に試合はフランスに傾きます。
 「絶対にペナルティーを犯さない範囲内」で、相手ボールを奪いに行かなくてはならないという、とても難しい時間帯が続いたのです。

 フランスとしては、とにかく追加点を奪えばよいので、慎重かつ時間をかけた攻めを展開しました。
 とても上手な試合運びであったと思います。

 攻めが上手く行かないウェールズチームに焦りが観えました。

 そして、頭書の「試合時間残り10分」を切ったのです。
 14人のフランスチームの懸命の守備が続きました。

 後半33分、フランスゴール前のスクラム。
 ウェールズチームはこれを押します。乾坤一擲の押し。
 スクラムからボールが飛び出しました。「ピョン」という感じで。

 これをウェールズチームが確保し、フランスゴールラインに迫りますが、あと30cm届かず、NO.8ジョシュ・ナビティ選手に替って前半入ったロス・モリアーティが拾い上げてゴールに飛び込みました。
 
 このプレーは、「ピョン」と飛び出したボールが、ウェールズチームの反則(ノックオンあるいはスローフォワード等でしょうか)ではなかったかと、TMOが行われました。
 まさにギリギリのプレーであり、場内が静まり返りました。

 レフェリーの手が上がり「トライ」と宣せられたのです。

 ウェールズチームが18-19とした瞬間でした。

 そしてSOビガー選手は、あっさりとコンバージョンキックを決め、ウェールズが20-19と逆転しました。
 ダン・ビガー選手にとっては「容易なキック」であったのかもしれませんが、万一外すようなことが有れば一大事ですので、他のチームのキッカーであればもう少し時間をかけて蹴ったのではないかと思います。
 ダン・ビガー選手の「精神的な強さとキック技術の高さ」をも感じさせるプレーでしょう。

 この逆転劇で試合は決したように観えました。
 もちろん、フランスチームは反撃に出たのですが、「既に試合は20-19でウェールズの勝ち」と決まっているかのような時間、3~4分の時間が過ぎた様に感じられました。
 不思議な感覚でした。

 フランスチームは「大魚を逸し」ました。
 ワールドカップ決勝トーナメントにおける「フランスの強さ」を見事に示現したのですが、惜しくも及ばなかったのです。

 「ワールドカップ決勝トーナメントに時々現れる『1点差ゲーム』」を、日本大会でも観ることができたのは、日本のラグビーファンにとってとても幸せな事であったと感じます。
 眼前で観る「死闘」、ワールドカップ史に刻まれる「死闘」でした。

 ウェールズチームは「命拾い」をしたゲームだったのでしょうか。
 不本意な試合内容であったと思いますが、とにもかくにも準々決勝を勝ち抜いたのです。
 準決勝では、本来の「華麗な攻撃」を観てみたいものです。

[10月19日・東京スタジアム]
ニュージーランド46-14アイルランド

 ニュージーランドチームが試合を終始支配し、最近の4年間・3試合で1勝2敗と苦手?としていたアイルランドチームに快勝しました。

 スタンドオフSOリッチー・モウンガ選手のペナルティーゴールPGで先制したニュージーランドは、前半10分、相手ゴール前の波状攻撃から、スクラムハーフSHアーロン・スミス選手のトライ&モウンガ選手のコンバージョンゴールで、10-0とリードを広げました。

 アイルランドチームの強固なディフェンスに遭い、なかなかトライを挙げられなかったニュージーランドチームでしたが、ゴール前に僅かに空いた「穴」を突いたスミス選手のファインプレーです。これでニュージーランドは「いつもの試合運び」ができるようになりました。
 「巡航運転」のオールブラックスは、とても強いのです。

 圧倒的なスピード・俊敏性をベースとした「基本に忠実な」プレーの連続で、相手チームを圧倒して行くのです。

 前半20分には、スミス選手の2本目のトライが、左隅に決まりました。
 ラックから、アイルランドディフェンダーが不在の左隅に飛び込んだものでしたが、これも冷静に相手の布陣を把握した上での、SHのファインフレーでした。
 ワールドカップ準々決勝という大舞台で、SHが2連続トライというのも、いかにもオールブラックスらしいというか、オールブラックス以外のチームではまず観られないものでしょう。
 超強力なフォワードFW陣・バックスBK陣を擁しながら、トライはハーフ団、それもSHが挙げているのですから・・・。

 前半32分には、十八番の「ひとりキックパス」でフルバックFBボーデン・バレット選手が綺麗なトライを決めました。ボーデン・バレット選手は、パントでもゴロでも「自分で蹴って、自分でキャッチする、ひとりキックパス」を得意としています。このキックが、怖ろしい程に正確無比なのです。
 この時も、「少し外側に転がるように」蹴っています。アイルランドプレーヤーが追い付き難いようにとのプレーだと思いますが、強さといい方向と言い完璧なキックでした。

 前半は、ニュージーランドチームが22-0とリードして終わりました。

 後半8分には、フッカーHOコーディ・テイラー選手がトライを挙げ、ゴールもなって、29-0とリードを広げました。反撃を狙っていたアイルランドチームの気勢を削ぐに十分なトライでした。

 試合の勝敗は決しました。
 こうなると、ニュージーランドチームの「完封勝ち」がなるか否か、に注目が集まりましたが、さすがに「ワールドカップ準々決勝での零敗」というのは、語り継がれる伝説になりかねませんので、アイルランドチームの必死の攻撃が始まりました。

 ロックLOプロディー・レタリック選手に代わって入ったマット・トッド選手のトライで、ニュージーランドチームが34-0と差を広げた後の後半29分、アイルランドチームのセンタースリークオーターバックCTBロビー・ヘンショー選手がトライを挙げ、36分には認定トライも挙げて、面目を保ったのです。

 全体としては、オールブラックスの強さばかりが目立つゲームとなりましたが、特に「プレーの素早さ」という点では、他チームの追随を許さないものがあることを明示しました。

 このオールブラックスに対抗して行くためには、「攻撃がスピードに乗る前に芽を摘む」プレーが必要なのでしょう。そして1対1の力勝負に持って行けるようなら、「互角」の勝負(それでも「互角」というのが凄いところですが)に持ち込めると思います。

 このところ大接戦を演じてきた強敵・アイルランドチームを、これ程に圧倒して魅せたオールブラックスの強さは本物です。

 準決勝のイングランド戦では、どのようなプレーを魅せてくれるのでしょうか。

[10月19日・大分スポーツ公園総合競技場]
イングランド40-16オーストラリア

 後半開始早々の4分、オーストラリアチームは、ウイングスリークオーターバックWTBマリカ・コロイベティ選手のトライと、スタンドオフSOクリスチャン・リアリーファノ選手のコンバージョンゴールで、16-17と1点差に追い上げました。

 ゲームの流れは、全く分からないものとなったのです。

 前半、イングランドチームはWTBジョニー・メイ選手の2トライと、SOオーウェン・ファレル選手のペナルティーゴールPG、2コンバージョンゴール、オーストラリアチームはSOリアリーファノ選手の3PGで、イングランドが17-9とリードしました。

 このまま「1点差」の時間帯が続くと、追い上げているオーストラリアチームのペースになるかと観えた後半6分、イングランドのプロップPRカイル・シンクラー選手選手がトライを挙げて、再び8点差としたのです。
 このトライ&ゴールが、試合の流れは一気にイングランドチームのものとなりました。

 この後両チームは、どんどん選手を交替して、フレッシュなプレーヤー同士の戦いとなりましたが、イングランドはファレル選手が11分、26分、33分とPGを決め、点差を拡大しました。

 逆転を狙うオーストラリアチームは、自陣深くの位置からも極力キックを上げることなく、パスを繋ぐ「ランニングラグビー」に拘りました。伝統の戦法です。

 しかし、高い位置でのイングランドのディフェンスの前に、後半36分、パスをインターセプトされ、そのままWTBアンソニー・ワトソン選手にトライを許しました。
 これで勝敗は決しました。

 実は、前半のWTBメイ選手のトライの内1本も、インターセプトからのものだったのです。
 ギリギリのパスを通そうとするオーストラリアの攻撃に対して、イングランドは常に「狙っていた」ということなのでしょう。

 最後は、意外なほどの大差となりましたが、試合内容は「接戦」であったと思いますし、その接戦をイングランドが勝ち抜いたゲームでしょう。

 ワラビーズにとって惜しまれるのは、チームを牽引する大黒柱的存在のプレーヤーが居なかったことでしょうか。ここぞというシーンで、やや無理なプレーが出てしまったり、まだこの段階ならペナルティーゴールを狙って得点差を詰めるべきところで、トライを狙ってしまったり、ややチグハグな試合運びが惜しまれるところです。
 捲土重来に期待しましょう。

 イングランドチームは力強い試合運びで勝利しました。
 優勝候補の名に恥じないプレー振りでしょう。

 準決勝でのオールブラックスとの戦いが、本当に楽しみです。

 今大会の日本戦、試合前のセレモニーで観客席がテレビ画面に映し出されると、ところどころに、涙を流している「おじさん」が観られます。年のころなら60歳前後でしょうか。試合前だというのに気合が入っているというか、思いが込み上げてきて、涙が頬をつたっているのです。

 ワールドカップという大舞台で戦う日本代表チームを観ると、思わず泣けてくる日本人の「おじさん」が、とても数多く居るのでしょう。
 
 そうした「おじさん」のひとりとして、私にはこの気持ちがとてもよく分かります。(「不惑の年齢になって、人前で泣くとは情けない」というご意見もあるかもしれませんが)

 まずは、ワールドカップが日本で行われているということ自体に感動し、我らが代表チームが紅白のユニフォームでフィールドに立っている姿に感激し、その代表チームが一次リーグで次々と勝利を挙げていることに、とても感謝しているのです。

 2011年までのワールドカップでは、日本チームは全ての大会に出場していましたけれども、「参加することに意義がある」と言わんばかりの成績でした。
 7度も出場して1勝しかできなかったのです。

 若き日の「おじさん」達(おじさん達にも若き日があったのです)は、「ワールドカップに出ると負け」、それも強豪チームを相手にすると50点以上、いや100点以上の失点で「大敗」を喫する姿を、何度も何度も、これでもかこれでもかと、見せられ続けてきたのです。

 それは、ある意味では辛い日々でしたし、「ワールドカップとなれば大敗する」という擦り込みが、長い時間をかけて、日本のラグビーファン、20世紀においては男性が多かったファンの心に浸透して行ったのです。
 これはもう「定理」といっても良いほどであったと感じます。

 それが、2015年大会一次リーグの南アフリカ戦を始めとする3勝で、日本チームがワールドカップで勝てるようになったのかもしれない、と「おじさん」達は感じるようになりました。
 これはもう「革命」と呼んでも良いほどの変化だったのです。

 そして日本大会の一次リーグ。
 アイルランド代表チームに勝利し、3勝して、最終のスコットランド戦を迎えても、「おじさん」は勝てるとは、とても思えませんでした。
 「また大敗するのでは・・・」という恐怖が心底にあったのです。

 とはいえ、決勝トーナメント出場に向けて、「この試合で勝てば出場できる」という状況を創り上げてくれた代表チームを観ると、そのスタジアムの観客席に立つと、それだけでも「ありがとう」という思いがこみ上げ、「頑張れ」という気持ちが強くなり、涙を止めることができないのです。
 これは、本当に「幸せな涙」なのです。
 「30年越しの思い」でもあるのでしょう。
 「日本ラグビーもここまで来たか」という感慨でもあるのです。

 「おじさん」を、こんな気持ちにさせてくれるエンターティンメントは、それほど多くはないでしょう。

 やはり「スポーツは偉大」なのです。
 一次リーグ・プール戦を終えて、決勝トーナメント1回戦・準々決勝の組合せが決まりました。

① 10月19日・大分スポーツ公園総合競技場
イングランド(プールC1位)VSオーストラリア(プールD2位)

② 10月19日・東京スタジアム
ニュージーランド(プールB1位)VSアイルランド(プールA2位)

③ 10月20日・大分スポーツ公園総合競技場
ウェールズ(プールD1位)VSフランス(プールC2位)

④ 10月20日・東京スタジアム
日本(プールA1位)VS南アフリカ(プールB2位)

 日本チームを除けば、大会前の予想に近い形の組合せが並んでいると思います。(こういう書き方をすると、日本チームのファンからお叱りを受けそうですが・・・)
 
 それだけ、ブレイブブロッサムズの「躍進」が際立っているということに他なりません。

 我らが代表チームは、「もの凄いことをやっている」のです。

 どのカードも、見所満載というか、現在の世界最高峰のラグビーを披露していただける組合せとなりました。
 これらの試合を日本で観ることができるというのは、本当に、本当に素晴らしいことです。

 さて、準々決勝第1試合、イングランドとオーストラリアのゲームは、大接戦になりそうです。
 今大会の優勝候補の一角として、イングランドチームは「さすが」の戦い振りを示していますが、一方でオーストラリア・ワラビーズも「さすが」の戦いを展開しているのです。
 9月29日のプールD首位争奪戦と目されたウェールズチームとの戦いは、まさに激闘。25-29で惜しくも敗れたとはいえ、一時は25-26という1点差の時間帯が続きました。
 ウェールズチームは2019年の6か国対抗で全勝優勝を飾った、今大会の優勝候補の一角です。そのウェールズと互角の戦いを繰り広げたという点で、「ワラビーズは強い」と観ます。

 とはいえ、イングランドは今大会ここまで、「正攻法」のゲームを続けているように観えます。あのエディー・ジョーンズHCのことですから、「決勝トーナメント向けのスペシャルプレー」を用意している可能性も十分に有りますので、そのスペシャルプレーの威力を勘案すると、少しイングランドが有利ということでしょうか。

 準々決勝第2試合、ニュージーランドVSアイルランドは、ニュージーランドがやや有利でしょう。

 今大会もオールブラックスの「基本に忠実なプレー」は抜群の破壊力を魅せています。
 「合理的なプレーの積み重ね」が、「負け難いゲーム」を生み出しているのです。

 アイルランドは、よもやの日本戦での敗戦から立ち直りつつありますが、まだ本来の「前に出るパワー」全開とは言えないと感じます。

 準々決勝第3試合、ウェールズVSフランスは、ウェールズがやや有利と観ます。

 ウェールズは、本来のゲームを披露していますので、今年の6か国対抗での戦いが再現される可能性が高いと観ます。
 ウェールズチームも「手の内を見せていない」印象が有りますので、ベスト8でのプレーが楽しみです。

 フランスチームは、「死の組・プールC」を良く勝ち抜きました。緒戦のアルゼンチンとの死闘を23-21で制したことが大きかったのですが、10月6日のトンガ戦も23-21と辛勝しています。勝負強いとも言えるのでしょうが、やや得点力不足という見方もありそうです。

 準々決勝第4試合、日本VS南アフリカは、南アフリカがやや有利と観ます。

 パワー、スピードの両面から、南アフリカチームが日本チームを上回っていると感じます。
 日本大会における「高温多湿」という、日本チームにとっての有利な点(慣れているという意味で)も、秋が深まるにつれて、海外のチームが戦い易い気候となって来ましたので、ここからは「地力の差」が明確に出てくる可能性が高いのでしょう。

 スタンドオフSOハンドレ・ポラード選手はもちろんとして、ウイングWTBチェスリン・コルビ選手のスピードとパワーは止めることが非常に困難ですし、シヤ・コリシ選手、ピーターステフ・デュトイ選手、ドゥエイン・フェルミューレン選手のフォワード第3列の運動量・突破力は、今大会屈指のものでしょう。
 もちろん、「決勝トーナメントに強い南アフリカ」として、日本チームについての研究・分析も完璧な形で行っていると観るのが、自然です。
 このチームを破るのは、至難の技なのです。

 もちろん、日本チームにもチャンスが無いわけではありません。
 松島選手や福岡選手といった「日本が誇るスピードスター」が、前半の内に威力を発揮し、前半で2トライを奪うことができれば、後半の競り合いに持ち込むことができそうです。
 ブレイブブロッサムズがスプリングボクスに一泡吹かせることができるとすれば、「スピードで勝る」以外には無いと考えます。南アフリカチームの想像を超えるスピードの発揮と維持が、ポイントとなるでしょう。

 ワールドカップ2019日本大会も、残すところ8試合となりました。
 
 ここからは「一発勝負」ですから、各チームが全力を振り絞るゲームが続きます。
 
 プール戦を大きく超えるパワーとスピードの勝負。
 プレーにおける「一瞬の差」が勝敗を分けるのです。

 世界最高峰のゲームが、本当に楽しみです。

[10月13日・横浜国際競技場]
日本28-21スコットランド

 夢のようなゲームでした。

 ブレイブブロッサムズは、スコットランドチームを破り、史上初の決勝トーナメント進出を決めたのです。
 それも、一次リーグ・プールAを全勝としての「首位通過」。

 アイルランドやスコットランドというラグビー先進国の代表チームとの、勝ち点の高低による競合いの中での突破では無く、結果としては「圧倒的な成績」による、堂々たる突破でした。
 ワールドカップにおけるひとつの壁を破ったのではなく、ふたつまとめて破った、ひとつは「決勝トーナメント進出」、もうひとつは「一次リーグ全勝・首位通過」という二つの壁を突破した、まさに歴史的な勝利でした。

 およそ世界中のラグビーファン・関係者が、想像もしていなかったこと、地元日本においても、「まさか全勝」「アイルランドとスコットランドの両チームに勝利」を実現したのです。
 「奇跡」と呼んでも足りないような戦い振りでしょう。

 ゲームは静かにスタートしました。
 ゲーム前、「最初の15分間でおおよそ分かる」と予想していましたが、その15分間で日本チームは、その地力を示してくれました。

 日本チームの「キックオフボールへのお粗末な対応」は、相変わらずでした。
 これを満足に確保することが出来ないというのは、今大会の日本チームの最大の弱点ですが、このゲームでも関連したミスによって大きく地域を失い、前半6分のスコットランドチームの先制トライの遠因となりました。
 ゴール前10m以内への前進を許してしまうと、スコットランドの様な一流チームを止めるのが至難の技であることは自明です。

 残された練習時間や戦術を構築する時間が少ないので、もう遅いかもしれませんが、決勝トーナメントに向けて、キックオフのボールを「確保する」方策を、日本チームには是非習得していただきたいものです。そのボールから、上手く攻撃に転ずるなどという「高度な」ことは考える必要はないと思います。とにかく、味方のボールとして確保すること、相手チームに簡単にボールを奪われることが無いように対応することが出来れば十分であり、今大会の日本チームならば、それ以上のことは望まない方が良いとさえ感じます。

 さて、簡単に先制トライ・ゴールを許してしまった日本チームですが、肝心の「前半15分までの戦い方」であれば、これは十分に戦えるという感触でした。
 アイルランド戦と同様に「互角のフィジカル」を実現していたからです。

 これなら、過去の強豪チームとの戦いで観られたような、「相手チームのやりたい放題」というゲームは回避できるし、日本チームがやりたいことも、ある程度できるであろうと観られました。
 日本チームの圧力、前に出るパワーは、決してスコットランドチームに劣らないものだったのです。

 次第にペースを掴んできた日本チームが、持ち前の攻撃を披露したのが、前半18分のトライでした。2人のスピードスターが、持ち味を発揮したのです。
 左サイドから、ウイングスリークオーターバックWTB福岡堅樹選手が突破し、相手のタックルによってバランスを崩して倒れながら「オフロードパス」を、もうひとりのWTB松島幸太朗選手に通しました。素晴らしいバランスと正確なパスでした。
 パスを受けた松島選手は、世界屈指のスピードを擁するランニングを披露して、真っ直ぐスコットランド陣に走り込みました。
 WTB福岡選手からWTB松島選手へのホットライン、ブレイブブロッサムズ「自慢」のウイングの威力が存分に発揮されたトライでした。

 スタンドオフSO田村優選手のコンバージョンキックも、なんとか決まって、日本チームは7-7の同点としました。

 ここから前半終了までは、日本チームがゲームを支配しました。
 あらゆる面でスコットランドチームを上回ったと言っても、過言ではないでしょう。

 前半26分、WTB松島選手の右サイドでの突進(この大会で再三威力を発揮する松島選手の突進です)から、ボールは真ん中方向に展開されました。
 そして、フッカーHO堀江翔太選手へのパス、これが相手プレーヤーとの競り合いの中でのギリギリのパスとなって「入れ替わった様なタイミング」となりました。この一連のプレーの中でポイントとなったものだと思いますが、「入れ替わり」はラグビーのプレーの中でとても大きな威力を発揮するのです。相手プレーヤーの後方のスペースに走り込み、大きく前進することが出来るのです。
 この時の堀江選手も3m位の前進を果たしました。
 相手ゴール前の3mの前進というのは、とてつもなく大きなもので、この前進によって、スコットランドチームのディフェンスラインがとても「細い」ものとなりました。

 SO堀江選手から、ロックLOトンプソン・ルーク選手への「オフロードパス」が決まり、相手プレーヤーのタックルを受けたルーク選手から、フルバックFBウィリアム・トゥポウ選手への「オフロードパス」が通り、相手プレーヤーのタックルを受けたトゥポウ選手から、ゴール前に走り込んでいたプロップPR稲垣啓太選手への「オフロードパス」が通って、稲垣選手がそのまま走り込んでトライ。
 「3本のオフロードパスを連ねた」見事なトライでした。

 「前半の日本チームには『教科書に出てくるようなプレー』が多かった」と、海外メディア、強豪国のラグビー関係者のコメントが紹介されていますが、このプレーなどは、まさに「お手本」のような、トライを取るための「お手本」のようなプレーでしょう。
 味方プレーヤーが突進する「後方」を、良い距離感で付いて行き、タックルを受けたプレーヤーは、倒れる寸前に、付いている味方プレーヤーをしっかりと目視で確認して、取り易く正確なパスを投げるという連続プレー。こうしたプレーが出来れば、ゴール前で相手チームを抜くことが出来、トライに結び付くという、ラグビーの教科書に記載することは出来るが、実践することは極めて難しいことを、日本チームはやってのけたのです。

 「大会ファイネスト・トライ」という概念・賞が存在するのかどうか知りませんけれども、もしそういう制度があるのであれば、稲垣選手のトライは候補となることでしょう。

 試合後、稲垣選手は、「このチームに加わって7年経つが、トライを挙げたことは初めて。こんなに大事なゲームでトライすることが出来て、本当に嬉しい」と、ニコリともせず、全く笑顔の無い表情で語りました。(稲垣選手は「笑わないプレーヤー」として知られています)

 通常であれば、トライに縁が無いポジションである「プロップPR」である稲垣選手が、基本に忠実に、味方プレーヤーの後方の良い距離感の位置に付けながら、精力的に走り続けていた努力と集中力が実った、本当に素晴らしいトライでした。

 このトライにより、ゲームは日本チームが14-7とリードしました。
 ついに逆転したのです。

 日本チームがゲームを支配する時間帯か続いていた前半36分、日本チームはペナルティーキックを得ました。SO田村選手が慎重に狙います。
 日本チームにとっては向かい風の中の、距離のあるキックでした。
 このキックは決まったかに観えましたが、最後のところで左に曲がり、惜しくも入りませんでした。決まっていれば17-7の10点差で、前半を終えることが出来たのですから、とても残念な結果となりました。

 この日本チームのペナルティーキックが決まらなかったことを受けて、スコットランドチームに「ホッとした様子・空気」が流れました。「これで日本チームの時間帯を終えることが出来る」「何とか7点差で後半に入れる」と考えたのでしょう。
 ラグビー競技を国技とし、1871年に世界初のテストマッチ「イングランド対スコットランド」を行ったラグビー発祥国のひとつスコットランド代表チームとしても、この時間帯の日本チームの「圧力」は抗しがたいレベルだったのでしょう。
 「ホッとした」のも、止むを得なかったかもしれません。

 ところが、その前半39分、日本チームの前半最後の攻撃が展開されたのです。
 ホッとして、やや動きが悪くなったスコットランドチームの右サイドから左に展開し、センタースリークオーターバックCTBラファエレ・ティモシー選手が突進し、キックパス。このキックパスをWTB福岡選手が綺麗にキャッチし、そのまま素晴らしいランニングを魅せてトライしました。
 スコットランド守備陣が見せた一瞬の隙を突いた、これも「教科書に載っている」ような、見事なトライでした。

 「キックパスからのトライ」はこのように行うもの、であることをティモシー選手のプレーが見事に示していましたし、2つ目の大きなバウンドのボールを右手で冷静にキャッチした福岡選手のプレーも、まさに「お手本」でしょう。
 そして何より、「残り時間が少ない中」で、美しい「展開ラグビー」を正確に実施した、日本チームの「チームとしての動き」が、最も「お手本」となるものであることは、言うまでもありません。

 日本チームは21-7とリードして、前半を終えたのです。

 前半を終えた時、私は「素晴らしい3本のトライ」を魅せていただいた日本チームに、心底から「ありがとう」と呟きました。感謝しか無い、前半戦でした。

 さて、後半が始まる時、私は「次の得点がどちらに入るか」によって、ゲームの帰趨は決まると感じていました。
 そして、後半開始早々から、スコットランドチームは「フルスロットル」で向かってきたのです。前半とは見違えるような気迫とスピードでした。

 世界屈指の強豪チームが「全力でアタック」してくるのですから、迫力満点でした。
 当然ながら「前掛かり」となったのです。

 その後半2分、良く守っていた日本チームに素晴らしいプレーが誕生したのです。
 WTB福岡選手が相手プレーヤーが保持するボールを奪って、そのまま独走、ど真ん中にトライしました。
 信じられないような個人技でした。

 相手チームの右胸に確保されていたボールを掻き出し、ポンと浮いたボールを確保しました。ボールがフィールドに落ちていればノックオンの判定であったかもしれませんが、福岡選手は落ち着いてボールを受け取り、その後は持ち前のスピード十分なランニングで、スコットランドチームのプレーヤーの追跡を許しませんでした。

 相手チームのボールを奪い取るのは、ラグビーにおいて最も重要で最も基本的なプレーです。立ったままで、相手プレーヤーが保持するボールを奪い取るのですから、ベーシックには「腕力勝負」であり、最近は「ジャッカル」と呼ばれたりしますが(「ジャッカル」という言葉は、ラグビー競技の公用語ではないと思いますが・・・)、この時の福岡選手のプレーは、パワー+タイミングも絶妙でした。アメリカンフットボール競技置ける「掻き出し」に近いプレーにも観えました。

 いずれにしても、この福岡選手の個人技によるトライで、日本チームは28-7とリードを広げました。後半最初の得点も日本チームが挙げたのです。
 「この試合、勝った」と私は思いました。こうした大試合での3ポゼッション差は、とても大きなものなのです。

 しかし、事はそう簡単では無かったのです。(考えてみれば、当然のことなのですが)

 後半開始早々の福岡選手のトライによってリードを広げた日本チームは、その後も快調に攻めました。この時間帯が、この試合において「日本チームが最も気持ち良く攻めた」時間帯であったと思います。「やりたい放題」という感じもしました。

 しかし、ワールドカップにおいて、世界屈指の強豪チームを相手に「やりたい放題」となれば、やや「調子に乗っている」という状況に陥るのも自然な話でしょう。日本チームは、やや緊張感を失っていたのかもしれません。
 続く得点機、相手ゴール前でボールを奪われて、陣地を押し返されてからは。「手負いのスコットランドチーム」の猛攻に晒されることとなりました。

 日本チームの弱点である、「キックオフボールを確保できないこと」と「ラインアウトが確保できない」という2課題も露呈して、スコットランドチームの必死のプレーの前に後退を続けたのです。

 不思議なもので、28-7とリードしてからは、日本チームのタックルも甘くなりました。
 「2人で行くタックル」も、前半の様には決まらなくなりました。
 おそらくは「僅かにタイミングが遅くなってきた」のでしょう。
 疲労が重なってきたことと、大きなリードで僅かに「気が緩んで」来ていたのだと思います。
 それまでなら、その場で止めていたタックルが、都度都度2~3mの前進を許すものとなりました。ひとつのプレーで+2~3mの前進を許容するものとなっては、毎回のようにゲインライン突破を許すこととなり、スコットランドチームの攻撃に勢いが出てきました。

 そして後半9分、再三の波状攻撃から、PRウィレム・ネル選手がトライを挙げました。反撃の狼煙が上がったのです。ラグビー競技の基本中の基本、ラックサイドのフォワードFWの突進で奪ったトライが、スコットランドチームに勇気を与えたことは言うまでも有りません。

 続く後半15分には、PRザンダー・ファーガソン選手がトライを挙げました。
 どんどん選手を交替するスコットランドチームが、フレッシュなプレーヤーによる怒涛の攻めを魅せて、連続トライを挙げたのです。
 これで21-28と「1トライ・1ゴール差」となり、試合の行方は全く予断を許さないものとなりました。

 この頃は、完全にスコットランドチームの時間帯、スコットランドがゲームを支配していた時間帯でした。
 後半12分に、スコットランドは一気に5名のプレーヤーを交替しました。
 中心プレーヤーであるスクラムハーフSHグレイグ・レイドロー選手さえ代えたのです。
 9分のネル選手のトライをきっかけとして、勝負に出たと見るべきなのでしょう。

 スコットランドチームの展開ラグビーに日本チームは後手後手となり、付いていけない状況が続きました。
 ピンチの連続。
 僅か6分間で2トライ・2ゴールを奪われ、まだ20分以上の試合時間が残っている状況でしたから、この後もトライを重ねられてしまい、勝利どころが、28-50位の大敗の可能性も十分有る状況となりました。
 日本チームの決勝トーナメント進出に暗雲が漂った時間帯でした。

 やはり「調子に乗ってのチームの緩み」は、怖いものだと感じました。

 こうした厳しい状況から日本チームを救ったのは、NO8姫野和樹選手のプレーでした。
 相手プレーヤーのボールを奪いに行くプレー、姫野選手が得意とするプレーを披露して、相手ボールを奪うことに成功したのです。
 この時、スコットランドのプレーヤーが激高し、両チームのプレーヤーが入り乱れての一触即発の状態となりました。
 この危険な状況はなんとか収まりましたけれども、こうした状況を惹起したことこそが、姫野選手のプレーの重さ、スコットランドチームにとっては「痛恨の失球」であったことを如実に示しています。

 このプレー以降、試合は再び「拮抗」したものとなりました。
 別の書き方をすれば「試合が落ち着いた」のです。

 一進一退の攻防の中で、時間が着々と進みました。

 この時間帯では、交替で入ったPR中島イシレリ選手の突進プレーが印象的でした。
 ボールを受けて2~3mの前進を実現するのです。
 試合終了間際、両チームの選手が疲労困憊の中での「2~3mの前進」は、とても貴重なプレーです。
 反撃したいスコットランドチームにとっては、とても厄介なプレーであったことでしょう。
 インパクトプレーヤーとしてのイシレリ選手は、日本チームにとってとても大きな存在なのです。

 試合時間75分、後半35分を過ぎてから、日本チームは冷静なプレーを繰り広げました。
 当然ながら「強引にボールを取りに来る」スコットランドチームに対して、ラックでのボール確保に注力したのです。
 とはいえ、正攻法で相手プレーヤーを剥がしに来る、そしてボールを奪いに来るスコットランドチームのプレーは迫力十分でした。世界の強豪チームのパワーと執念の凄さを存分に感じさせてくれるプレーが続いたのです。

 これから決勝トーナメントのゲームに臨むブレイブブロッサムズとしては、「ラックが完成」したからといって、安心することなど到底できないこと、日本国内のゲームであれば、決して失うことの無い体勢からでも、あっという間にボールを奪われるリスクが有ることを痛感させてくれるプレーの数々でもあったことでしょう。

 残り時間が着々と短くなる中で、交替で入ったSH田中史朗選手が、ラックからのボール出しを少しでも遅らせようと努力を続けました。
 そして、出す時には、日本FW陣が3~4名で待ち受けているところに投げ、再びしっかりとしたラックを形成しました。

 日本ゴール前、右側から始まったこのプレーは、少しずつ左側に移動し、最後は日本陣左側となりました。

 試合時間が79分となり、残り1分となりました。

 この段階で28-21とリードしていた日本チームの決勝トーナメント進出は、ほぼ決まっていたのです(スコットランドチームにトライ&ゴールを取られたとしても「引分」となって日本チームが決勝トーナメントに進出できます)が、選手もファンも「このゲームを勝つ」ことに集中していたのです。
 試合における「本能」なのでしょう。

 そして80分を過ぎてホーンがなりました。

 田中選手はラックからボールを出し、これを日本チームが蹴り出して、ノーサイド。

 日本チームがスコットランドチームを破った瞬間でした。

 我が家でも大歓声と大拍手が上がりました。

 横浜国際競技場はもちろんとして、日本中のあらゆるところで「大歓声」が挙がっていたことでしょう。

 ジェイミー・ジョセフHC率いる日本代表チームは「大仕事」をやってのけました。

 アイルランドとスコットランドという、とても強い2つのチームを破って魅せたのです。
 プール戦で、この2チームを両方破るというのは、オールブラックスやスプリングボクス、ワラビーズといった強豪でも、それ程容易なことではないでしょう。

 まさに「快挙」なのです。

 「快挙」を実現していただいた日本代表チームの皆さんに、力の限りの拍手を送ります。

 ワールドカップ日本大会が始まってから、街で外国の方を見かける機会が増えました。

 特に、東京駅や品川駅といった、複数の鉄道が乗り入れている駅では、民族衣装というのか「ひと目でどこの国の応援団」かが分かる集団(もちろん普通の服装の方も居ます)を、見かけます。
 気のせいかもしれませんが、大柄な人が多いとも感じます。

 「駅でラグビーワールドカップを感じる」のも良いものだと思います。

 さて、THE ANSWERの9月30日配信の記事「日本人が”日本の価値”を知るW杯 アイルランドファンは富士山に息を呑んだ」は、とても興味深いものでした。

 9月28日の「日本VSアイルランド」の歴史的な一戦を前に、日本、アイルランド、双方のファンが、品川駅から新幹線に乗り込み、静岡・エコパスタジアムに向かうところから、記事は始まります。

 「白と赤」と「緑」のユニフォームを着た、沢山の人達が新幹線に乗り込んだわけですが、指定席は(当然のように)満席で、自由席も一杯、応援の方々の多くは立っていたと。

 そして1時間ほど経った時、背後から声をかけられたのだそうです。
 「Mt.Fuji?」
 振り返ると、外国人女性(アイルランドカラーのシャツを着ている)が指を差し、窓の外を見つめていた。
 車窓を見ると、街並みの向うに雄大な景色が広がっていることに気が付いた。
 「そうだ」と説明すると途端に眼が輝き、「ワーオ」と息を呑んだ。

 筆者は、東海道新幹線で、箱根を過ぎた辺りの住宅地の向こう側に「巨大な富士山の上部」が見えてくることは知っていたのですが、このアイルランドチームを応援する女性に指摘され、改めて感じ入ったと書いています、
 ワールドカップが、日本人に日本の良さを再認識させてくれるという趣旨の記事になっているのです。

 私も、その趣旨に全面的に賛意を表するものですが、ついでに言えば、「外国の方々に日本の良さを感じてもらう、日本という国を知ってもらう、良い機会」であることも、間違いないのでしょう。(当たり前のことを書き恐縮です)

 このアイルランドの女性は、おそらくは自国の代表チームを、はるか極東の地まで応援に来ているのですから、来日目的は「アイルランド代表チーム応援」です。
 日本という国の静岡という地域にあるスタジアムで、アイルランドチームを応援できれば、概ね目的は達成でしょうし、まず間違いなく勝利するでしょうから、とても気持よく帰って来られると考えていたことでしょう。(後者は、残念ながら実現しませんでしたけれども)

 完全なる目的客の彼女には、おそらく「富士山観光」は、来日目的には入っていなかったと推測されますが、幸いにも?競技場が静岡方面であって、天候にも恵まれたため、雄大な富士の姿を目の当たりにすることができたのです。
 富士山は、世界中の多くの方々が「美しい」と評するものと言われていますので、+αの思い出が出来たのではないでしょうか。

 日本大会の各ゲームが、日本各地の競技場で行われることの意義をも、改めて感じさせてくれる記事でした。
[10月5日・豊田スタジアム]
日本38-19サモア

 日本代表チームが、前半1・後半3、計4トライを挙げて、サモア代表チームに快勝し、プールAでの成績を3連勝としました。

 前半は「蹴り合い」で始まりました。
 日本のスタンドオフSO田村選手とサモアのセンターCTBタエフ選手がペナルティーゴールPGの応酬を披露しました。互いに2本ずつを決めて6-6の同点。
 田村選手は前半24分に3本目も決めて、日本が9-6とリードしました。

 そして前半28分、日本の松島選手が右サイドを突進しました。
 この突進は素晴らしい威力で、サモアゴール前1~2mに迫ったのです。
 そこから左に展開した日本チームは、ティモシー選手が左中間にトライしました。日本チームが持ち味を発揮した、見事なトライでした。
 田村選手のゴールも成功して、日本は16-9とリードして、前半を終えました。

 前半を終えて、サモアチームの強さ、勝利への強い執念が感じられました。
 当然のことながら、まだまた決勝トーナメント進出をあきらめてはいなかったのです。

 個々のプレーヤーのフィジカルの強さで勝負するサモアラグビーは、日本が苦手とするラグビーで、これまで4勝11敗と大きく負け越していた相手ですから、4トライを奪っての勝利どころか、勝敗は全く分からないというのが、前半終了時点の試合の流れであったと思います。

 後半が始まり、サモアチームが「ギアを変えて」きました。ぐいぐいと前に出ます。
 後半5分にはタエフ選手のPGで12-16と追い上げます。
 日本陣内でのプレーが続き、相当に押し込まれた展開でしたが日本チームは良く凌ぎました。特に、リーチ選手を中心とするフォワードFW陣の精力的な守備が印象的でした。

 このディフェンスが実ったのでしょう。後半11分、田村選手のPGが決まって、19-12と再びリートを広げたのです。このPGは、試合の流れの中では大きかったと感じます。

 そして後半14分、日本チームに見事なプレーが飛び出しました。
 ドライビングモールから姫野選手がトライを挙げたのです。
 モールが前進するスピード、迫力とも十分なプレーでした。ワールドカップにおける、日本チームとしての最高のドライビングモールであったかもしれません。

 これで26-12とリードを広げ、ゲームは日本チームに大きく傾きました。
 
 しかし、後半32分、リスタートからの日本チームのミスを付いて、サモアチームがトライを奪い、再び19-26と1トライ・1ゴール差となりました。
 今大会、日本チームに多い、キックを確保できないというミスでしたが、相手チームに大きな地域を提供してしまうミスは、絶対に回避していただきたいと思います。

 このプレーの直後の35分、福岡選手のトライが生れました。
 右サイドに展開し、最後の5mは福岡選手のスピードによるトライでした。
 アイルランド戦を思い出させるプレーでした。

 さて、これで3トライとなり、ゲーム勝利をほぼ手中にした日本チームは、時間が無い中で「4トライ目」を狙いにかかったのです。
 悲願の決勝トーナメント進出に向けては、ボーナスポイントの重要性は誰もが分かっていることなのです。

 スクラムトライを狙い、何度もサモアゴールに迫った後のラストプレー。
 後半43分、左に展開し、最後は松島選手が飛び込みました。素晴らしい、本当に素晴らしい突破力とステップとスピードでした。

 このゲームでは、松下幸太朗選手のランが再三威力を発揮しました。
 私にとっては、このゲームのMVPです。

 さて、われらが日本代表チームはプールAを3連勝としました。
 しかし、決勝トーナメントへの道は、まだまた険しいのです。
 2015年大会と同様に、「強い2チームが存在する一次リーグでは3勝しても必ずしも2位以内を確保できない」のです。

 日本チームには10月13日のスコットランド戦が待っています。
 この試合で「勝利するか引分け」れば、決勝トーナメント進出が成ります。
 
 もちろん、スコットランドチームは、日本チームが38-19で破ったサモアチームを34-0で破っています。強力なサモアチームの攻撃を零封しているのです。
 「得失点は正直」ですから、スコットランドの方が日本より力量上位であることは間違いないのでしょう。

 とはいえ今大会、日本チームはアイルランドチームを破っています。
 スコットランドチームを相手に、「ミラクル再び」を実現していただきたいものです。

 また、その可能性もあると感じます。

[9月29日・東京スタジアム]
ウェールズ29-25オーストラリア

 大接戦でした。

 前半はウェールズチームの、後半はオーストラリアチームの、ゲームだったのです。

 ウェールズは前半12分のセンターCTBハドリー・パークス選手、37分のスクラムハーフSHリース・パッチェル選手のトライと、スタンドオフSOダン・ビガー選手やビガー選手と交替で入ったパッチェル選手のペナルティーゴールPGなどで、23-8とリードしました。
 このレベルのゲームでは、大きな差と言って良いでしょう。

 前半を1トライに抑え込まれたオーストラリアチームは後半5分、フルバックFBデーン・へーレットペティ選手のトライから反撃に転じ、21分にはフランカーFLマイケル・フーパー選手のトライ(&ゴール)で22-26と追い上げ、SOバーナード・フォーリー選手に替って入ったマット・トゥームア選手が27分にPGを決めて、ついに25-26と1点差に迫りました。
 ゲームの帰趨は全く分からなくなったのです。

 そして後半31分、ウェールズチームはパッチェル選手がPGを決めて29-25と4点差に差を広げて、逃げ切りました。

 2019年の6か国対抗優勝チーム・ウェールズは、オーストラリアを辛くも退けたのです。
 プールDを1位で抜ける可能性が高くなったことになります。

 オーストラリアチームは「さすが」の強さでした。
 このところ、やや元気が無いとは言われていましたが、ワールドカップ優勝2回の強さ、「ワールドカップに強い」ことを示したのです。
 プールD2位での決勝トーナメント進出の可能性が高くなりましたが、決勝トーナメントにおける大活躍も期待されるゲーム内容でしょう。

 オーストラリアチームが後半27分に25-26に追い上げてから、ノーサイドまでの13分間は、まさにワールドカップの緊張感溢れる好ゲームであったと感じます。
 
 今大会眼につくプレーに「2人で行くタックル」があります。

 日本チームのディフェンスの基本プレーのひとつですが、オールブラックスも多用しています。

 もちろん、もともと行われていたプレーなのでしょうが、今大会ではとても目立つのです。

 このプレーは、スクラムサイドやラックサイドを突いて突進してくるプレーヤーに対して、守備側が「2人」でタックルに行くプレーです。
 攻撃側が走り始めたタイミング、まだトップスピードに乗る前に2人でタックルして、確実に突進を止める為に行うプレーに観えます。

 どんなプレーにも長所と短所がある(当たり前のことを書き恐縮です)のですが、このプレーの長所は、「相手の突進を止める確率が高いこと」でしょう。短所は、ひとりのプレーヤーにふたりで対応するのですから、「守備側のひとり分のスペースが空いてしまうこと」なのでしょう。従って、守備側は確実に止めないとピンチに繋がる可能性があるのです。

 とはいえ、これだけ「2人で行くタックル」が多用されているところを観ると、このプレーの効果が大きいことは間違いなさそうです。

 およそ、攻撃プレーにおいて最も効果的なのは、「対面のプレーヤーを抜く・交わす」プレーです。しっかりとした守備ラインが構築されている状況で、攻撃のチャンスを創り出すためには、どこかのタイミングで、ボールを持ったプレーヤーガ相手プレーヤーを抜かなければ、なかなか上手く行かないのは道理です。
 常に1対1でコンタクトを受けていては、なかなか守備ラインを突破することができないからです。

 従って、「抜く」ために各チームは、様々なサインプレーやスペシャルプレーを実施するわけですが、こうした特別なプレーを使わなくとも、個人のスキルで「抜いて」いくことができれば、それが最も効果的であることは自明です。何しろ、1対1で拭き去れば、その先にスペースが広がっていて、相手守備ラインの多くが「オフサイドポジション」になるからです。

 世界中のラグビーチームが、「個人のスキルで抜いていけるプレーヤー」を待望している理由も、そこにあるのでしょう。

 抜く方法・スキルは、個々のプレーヤーにより様々です。
 「圧倒的なスピード」や「素早いステップ」は、その代表的なものでしょうが、ステップと言っても個々のプレーヤーにより様々です。キレの良いサイドステップで抜いて行く選手もいれば、するりするりと「掴まりそうで掴まらない」ランを魅せる選手もいます。ランスピードに緩急を付ける選手もいます。そのテクニックこそが、その選手を「世界的プレーヤー」に押し上げて行く要素なのです。

 ワールドカップですから、そうしたテクニックを具備したプレーヤーが、各チームに数多く存在するのも当然のことなのでしょう。何しろ「世界一を決める大会」なのですから。

 そうしたハイレベルなプレーヤーに、スクラムサイドやラックサイドを抜かれてしまっては、たちまちピンチが訪れます。そうしたプレーヤーは、そのまま一気にトライする能力も有るのです。

 そうしたプレーヤーを相手に「1人でタックル」に行っても、サイドステップなどにより簡単に交わされてしまうリスクが有ることは、容易に想像が付きます。

 そこで「2人で行くタックル」が登場するのでしょう。

 「2人で行くタックル」は1人の場合よりも「タックルの幅が広い」ので、たとえ1人が捉まえきれなくとも、もう1人が仕留めることができる確率は高いでしょう。
 ひとりではパワーで抜かれてしまうような状況でも、ふたりなら対応可能というケースもありそうです。
 これらのことから、2対1の形により1人分の「スペースを与えるリスク」よりも、守備側のメリットが大きいと判断して、採用されているものと考えられます。

 もちろん、「2人で行くタックル」は相手チームのランナーが動き始めた時点で行わなければならないもの、相手チームのランナーが十分に加速してからでは、逆に2人共交わされて、相手ランナーに大きなスペースを与えるリスクが高いプレーになるのでしょうから、日本チームやオールブラックスもそのことは十分に承知の上で行っていると思われます。

 「2人で行くタックル」は、体格面・パワー面ではやや劣るであろう日本チームにとって、とても重要なプレーであり、日本チームの決勝トーナメント進出に向けてのキープレーのひとつでもあるのでしょう。

プロフィール

カエサルjr

Author:カエサルjr
「スポーツを考える-KaZ」ブログへ
ようこそ!
我が家の月下美人も16年目。同時に30個の花が咲くこともあります。スポーツも花盛りですね。一緒に楽しみましょう。

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