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 2017年の欧州ラグビー6か国対抗は、3月11日までに第4節を終えました。

 そして、第4節のゲームで、スコットランドを61-21の大差で下したイングランドが、最終の第5節を待たずに、優勝を決めたのです。

 イングランドチームは、2016年大会に続いての優勝でした。

 2015年、自国開催のワールドカップで1次リーグ敗退という、史上最悪の成績に終わったイングランドチームでしたが、見事に復活、V字回復を果たした形です。

 この「復活」に大いに貢献したのが、エディ・ジョーンズヘッドコーチHCであることに、異論を差し挟む人は少ないでしょう。
 もともと、ラグビーに対する才能豊かなプレーヤーが数多く居るチームに、適切な指導が導入されれば「一気に強くなる」のは道理です。エディ・ジョーンズ氏の指導力の高さ・適切さが、改めて認識させられる「事実」でしょう。

 第1節・2月4日のフランス戦を19-16の接戦で制したイングランドは、第2節・2月11日のウェールズ戦も21-16で競り勝ち、第3節・2月26日のイタリア戦は36-15で快勝して、第4節を圧勝したのです。これで4戦全勝。第5節・3月18日のアイルランド戦に勝利することとなれば、2年連続の「グランドスラム」を達成するとともに、「テストマッチ19連勝」という、これまでの記録(オールブラックスの18連勝)を超える新記録樹立となります。
 優勝が決まったとはいえ、注目のアイルランド戦ということになるのでしょう。

 日本代表チームのHC時代から、エディ・ジョーンズ氏の練習の厳しさ、チームに求める「規律」の高さは有名でしたが、ラグビーの母国・イングランドチームのHCとなっても、その点は全く変わらないと伝えられています。
 2016年の6か国対抗を全勝(グランドスラム)で制した後、やや慢心が見えるメンバーに対して「勘違いするな。態度を改めなければ、イングランド代表から外す。」と警告したと報じられました。
 さすがのリーダーシップであり、何かNFL・ペイトリオッツのビル・ベリチックHCを髣髴とさせる手法です。

 当然のことながら、「規律の高さ」とともに「適切な指導・指揮」なくしては、世界トップレベルのゲームでの勝利は覚束ないでしょうから、エディ・ジョーンズHCのコーチングの「バランスの良さ」が際立つのでしょう。

 本ブログでは以前から書いていますが、「2019年・日本開催のワールドカップの優勝候補」は、やはりイングランドチームだと思います。
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 素晴らしい試合でした。

 両チームが持ち味を発揮しての「互角の試合」でしたが、試合運びの上手さで帝京大チームが勝ったと思います。

[1月9日・決勝 秩父宮ラグビー場]
帝京大学33-26東海大学

① フォワード戦は東海大チームが優位

 試合開始早々、東海大が帝京ゴール前に攻め込み、自慢のフォワードが威力を発揮して、スクラムトライを含む2トライ・2ゴールを挙げて14-0とリードしました。

 「帝京大の厚い壁」を破ろうとする東海大の気迫溢れる時間帯でした。

② 帝京大チームのランニングラグビーとエリアマネジメント

 0-14とリードを許した帝京大でしたが、次第にフォワード・バックス一体となったランニングラグビーと、松田選手を中心とした巧みなキックにより、エリアマネジメントで優位に立ちました。

 「ランニングラグビーの多彩さ」で勝る帝京大が、東海大陣で試合を進める時間が増え、帝京大のチャンスが多くなりました。

 そして、インゴールへのキックからのトライを含めて2トライ・2ゴールを挙げて14-14、
試合は同点となって、前半を終えました。

 まさに「互角」という印象でした。

③ 後半20分過ぎからの10分間の攻防

 後半に入り、両チームとも1トライずつを挙げて19-19。
 後半20分を過ぎても、19-19の同点のままでした。

 疲労からか、東海大チームのタックルが少し甘くなり、帝京のプレーヤーが一発のタックルでは倒れなくなってきた時間帯に、帝京の試合運びの上手さが目立ちました。
 
 後半22分、東海ゴール前の帝京の攻撃、東海の懸命の防戦が続きましたが、マッカラン選手が絶妙の突破を魅せて、吉田選手がトライ。
 難しい角度からのコンバージョンキックを松田選手がしっかりと決めて、帝京が26-19とリードしたのです。
 勝敗という面からは、松田選手のゴールの効果が大きいと感じました。

 続いて後半29分、再びインゴールへのキックから帝京大チームがトライを挙げ、再び難しいゴールキックを松田選手が決めて、帝京は33-19とリードを広げました。

 後半20分から30分までの10分間の攻防において、帝京は東海に勝りました。
 「勝負どころ」での強さ、戦術面・心理面での強さは、7連覇の伝統から生まれているものかもしれません。

 しかしこの後、東海大チームは諦めることなく良く反撃しました。
 ようやく展開ラグビーを披露して帝京ゴール前に迫り、この試合2本目のスクラムトライを挙げたのは、後半34分でした。ゴールキックも決まって26-33。

 残り5分からは、東海が帝京ゴールに再三迫りましたが、帝京も懸命にこれを凌いでいる間に「ホーン」が鳴りました。
 ホーン後2分近くに渡って東海大チームは攻め続けましたが、最期はボールが帝京ゴール内にこぼれ出て、これを帝京プレーヤーが蹴り出してノーサイド。
 帝京大学チームの優勝が決まりました。

 東海大学チームもよく戦いました。
 大学ラグビー界最強のフォワードの力を存分に発揮してくれたと思います。
 時折魅せていただいた「強烈なタックル」も見事でしたし、ターンオーバーを創り出すプレーも、よく鍛えられている印象でした。

 一方で、帝京大学チームの試合運びの上手さは、やはり一枚上手というところでしょうか。
 自陣ゴール前のラックサイドを突破しようとする相手チームのプレーヤーに対する「低く鋭いタックル」が徹底されていました。スクラムで圧倒的優位に立つ東海大フォワードは、ラックサイドも突破できると考えて突進を続けましたが、腰の位置が一段低いタックルに遭遇して、前進できない、あるいは後退を強いられることが多かったと思います。

 また、東海大のバックス展開の際の帝京大守備陣の「上りの速さ」も際立ちました。オフサイドギリギリのタイミングでの上りです。伝統のノウハウという観もあります。
 日本一を争っていた頃の明治大学チームの上りを髣髴とさせるスピードであったと感じます。

 帝京大チームの攻撃面では、松田選手とマッカラン選手の「強さと速さ」そして「ポジショニングの上手さ」が際立っていたと思います。
 ほぼ互角の試合でしたが、もし帝京が東海に明確に勝っていたポイントを上げるとすれば、この2人のプレーヤーの力でしょう。

 前夜からの雨の影響もあってか、秩父宮の芝生は柔らかく、両フィフティーンは泥だらけでプレーを続けました。

 かつての国立競技場、冬になると枯れてしまう芝のグラウンドで行われていた決勝戦を思い出させる「激戦」であったと思います。

 素晴らしい試合でした。
 12月13日、2017年のラグビー女子ワールドカップ大会のアジア・オセアニア地区の予選が香港で行われ、日本代表チーム=サクラフィフティーンはフィジーを55-0で破って、本戦への出場を決めました。
 日本代表チームにとっては、4大会ぶり4回目のワールドカップ出場となります。

 女子ラグビー日本代表チームは、最初から「国際的な存在」でした。
 世界の女子ラグビーと共に歩んできたのです。

 1991年の第1回ワールドカップ、1994年の第2回共に招待されて出場しています。
当初から女子ラグビーワールドカップのメンバーだったのです。そして、第2回大会では、スウェーデンチームを破り、記念すべき「ワールドカップ初勝利」を挙げています。

 この頃の女子ワールドカップには「予選が無く」、ラグビーユニオンの国際統括機関である「ワールドラグビー」が書類審査で出場国を決めていました。

 女子日本代表チームは第3回大会には出場できませんでした。国際試合の実績が乏しいという理由で招待されなかったのです。この頃が、日本女子ラグビーの最初の冬の時代だったのでしょう。

 2002年の第4回大会からは「予選」が行われるようになりました。
 日本チームは、サモア、香港と連続して破り、本戦出場を決めるとともに、本戦でもオランダチームを37-3で破って、ワールドカップ2勝目を挙げました。
 男子日本代表チームがワールドカップで2勝目を挙げたのは2015年大会ですから、女子の方が相当早く2勝目を挙げていたことになります。

 2006年大会、2010年大会、2014年大会、日本チームはいずれも予選でカザフスタンチームに敗れ、本戦出場を逃し続けました。 「カザフスタンの厚い壁」が立ちはだかった時期であり、女子日本ラグビー2度目の冬の時代と言えるのでしょう。

 そして、2017年大会(女子ワールドカップは原則中4年での開催ですが、この大会から男子大会の中間年に開催されることとなり、1年早く中3年での開催となりました。中3年は第1回と第2回に続いて2度目)の予選を勝ち抜いて、2002年大会以来の本戦出場を決めたのです。

 15人制ラグビー女子日本代表チームの愛称が「サクラフィフティーン」となったのは、2013年6月のことですから、2017年ワールドカップは「サクラフィフティーン」として臨む初めての大会ということになります。

 男子チームには「ブロッサムズ」という愛称があるのですが、こちらは「宿沢ジャパン」や「エディジャパン」に押されて、あまり使われていません。

 女子チームがメディア上でどのような名前で呼ばれていくのかも、もうひとつ興味深いところでしょう。
 ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの3か国のクラブチームが参加する「世界最高峰のラグビー国際リーグ」スーパーラグビーに、アルゼンチンと日本から1チームずつが参加し、新しい構成となったスーパーラグビー2016も第4節を終えました。

 日本から参加しているサンウルブズは、日本のトップレベルのチームから選抜されたプレーヤーで構成されており、スーパーラグビーのレギュラーシーズン15試合を戦って行くための、実質的な日本代表チームです。

 スーパーラグビーが「世界最高のラグビー国際リーグ」とはいっても、参加しているのは各国国内のクラブチームであり、ラグビーワールドカップというナショナルチーム同士が激突する世界最高レベルの大会で「3勝」を挙げた日本代表チームなら、十分に勝負になる、という見方もありました。

 しかし、サンウルブズは3戦して全敗という成績なのです。

 第一戦は2月27日、東京・秩父宮ラグビー場で行われた、ライオンズ(南アフリカ、昨季リーグ全体8位)との対戦でしたが、サンウルブズは13-26で敗れました。4トライのライオンズに対して1トライと、攻撃力というか「トライを取る力と技術」の差が感じられるゲームでした。

 第二戦は3月12日、シンガポールで行われたチーターズ(南アフリカ、昨季同12位)との対戦、31-32で惜敗しました。前半4トライを挙げて大きくリードしたサンウルブズでしたが、後半チーターズの追い上げに合い、後半31分に逆転トライを許して、そのまま押し切られました。「守備力不足」を痛感させられたゲームでした。

 そして第三戦は3月19日、東京・秩父宮ラグビー場で行われたレベルズ(オーストラリア、昨季同10位)との対戦は9-35で完敗でした。ノートライに抑え込まれたサンウルブズはレベルズに4トライを喫し、良いところなく敗れました。
 「守備力の差」を痛感させられるゲームでした。

 昨シーズンの成績から見れば下位の3チームを相手にしながら、勝利が遠いサンウルブズですが、「力を発揮できていない」というよりは、「明らかな力の差」を実感させられるゲームが続いている、という印象です。

 特に3試合を通じて感じさせられる「守備力の差」は想像していた以上に大きなもので、そう簡単には追い付けないでしょう。

 日本ラグビーと世界のラグビーとの間には、まだまだ大差が有ることは明らかです。

 とはいえ、悲観ばかりもしていられないのでしょう。

 スーパーラグビーを、世界トップクラスの「パワー・スピード・技術・運動量・戦術」を体感するための格好の場と捉え、特に若手プレーヤーの発掘・鍛錬の場として、残るレギュラーシーズン12試合を活用して欲しいと思います。
 
 2019年のラグビーワールドカップ・日本大会は3年後に迫っているのです。
 世界最古の歴史を誇る、北半球最高のラグビー国別対抗戦である6か国対抗の2016年大会は、3月12日にラウンド4(各チームの4試合目)を終えて、4連勝としたイングランドチームが、最終戦・ラウンド5を待たずに優勝を決めました。
 5年振りの優勝でした。

 1871年、世界最初のラグビーテストマッチ(国代表チーム同士の対戦)が、イングランドとスコットランドの間で行われ、1882年からは、イングランド・スコットランド・ウェールズ・アイルランドによる「4か国対抗」が始まりました。
 今から130年以上も前のことです。

 そして、1910年にフランスが加わり「5か国対抗」となりました。
 以降、「5か国対抗」は長きに渡って世界最高の国別対抗戦という歴史を積み重ねました。20世紀後半に、時折「5か国対抗」のゲームのテレビ放送が有りました。食い入るように見つめ、世界最高のプレーに酔いしれました。

 20世紀最後の年・2000年にイタリアが加わって「6か国対抗」となって、現在に至っています。

 1987年からワールドカップが始まりましたけれども、北半球というか欧州のラグビー強国にとって、「6か国対抗」は「負けられない大会」であり、若手の発掘という点からも大切な機会となっているのです。

 その2016年大会で、イングランドは圧倒的な強さで優勝を決めました。

 緒戦・ラウンド1でスコットランドを15-9で破ると、ラウンド2ではイタリアに40-9で快勝、ラウンド3でアイルランドを21-10で下し、ラウンド4では宿敵ウェールズに25-21で競り勝ちました。見事な4連勝です。
 ラウンド4を終った段階で、2位のウェールズ、3位のスコットランド、4位のフランスが2勝で並んでいるために、最終戦を残してイングランドの優勝が決まったのです。

 昨年のワールドカップ、自国開催であった大会で、イングランドは予選リーグ最終戦でウェールズによもやの逆転負けを喫して、決勝トーナメント出場を逃しました。ワールドカップでイングランドチームが決勝トーナメントに進出できなかったのは、これが初めてでした。
 地元ファンから「2度目の優勝」を期待されていた地元大会における、とても不本意な結果であり、イングランドチームは世代交代に失敗したとも評されました。

 そして、「ラグビー宗主国イングランド再興の切り札」として招聘されたのが、エディ・ジョーンズ氏でした。
 日本代表チームを擁してワールドカップ2015大会で世界を驚かせたヘッドコーチが、イングランド代表を率いることとなったのです。

 そして僅か半年で、イングランドチームを「6か国対抗」優勝に導きました。

 素晴らしい手腕です。

 ナショナルチームを強くして、ゲームで勝たせる、という面から観れば、世界最高のヘッドコーチHCと言って良いのではないでしょうか。事実が証明しています。

 エディ・ジョーンズ氏に、引き続き日本代表チームのHCを務めて欲しかったし、そのチャンスが十二分に有った中で、「エディ・ジョーンズ氏の手腕に疑問を呈する人達」が日本国内に居たと報じられているのは、信じられない感じがしますが、それが事実なら「ラグビーを知らない人達」が日本ラグビー界の上層部に存在するということになります。
 ワールドカップ2019における日本代表チームの戦いを懸念する声が出てくるのも、無理も無いところです。

 エディ・ジョーンズ氏を得たイングランドチームが強くなっていることは、紛れもない事実でしょう。
 少し気の早い話ですが、他の追随を許さないラグビーの伝統と環境を有し、ラグビーを愛し熟知している多くのファンが存在し、才能豊かなプレーヤーが多数居て、最高のHCを得たという形ですから、イングランドが2019年ワールドカップ日本大会の優勝候補筆頭であろうとも感じます。
 S君との会話は、ラグビーに移りました。

 「ラグビーワールドカップ2015イングランド大会の日本チームの活躍は凄かったね」

S君「本当に興奮した。これまでのワールドカップとは様変わり。深夜、テレビに噛り付いたよ」

 「特に南アフリカ戦の勝利は見事だった。」

S君「エディ・ジャパンが力を付けたことも事実だと思うけど、スプリングボックスのフェアなプレーが印象的だったね」

 「南アチームのフェアプレー?」

S君「そうだよ。大会緒戦ということもあり、南アチーム自体も調子が出ていなかった段階で、日本チームの思いもかけない抵抗にあって、慌てた筈だし、焦ったとも思うけれども、最後までフェアプレーを展開していた。普通、実力上位のチームが苦戦すると、色々なことをやってくるものだ。南アチームは、大会随一の体格・サイズを誇るチームでもあったし。ラグビーなら、コンタクトプレー時の「反則ぎりぎりのプレー」が見られるものだよ。タックル時やラック時のパンチは、審判から見えにくいものだから。でも、あの試合のスプリングボックスは、最後までクリーンなプレーを続けていたと思う」

S君「スプリングボックスは、日本戦に限らず他の試合でもクリーンなプレーを展開していたと感じる」

S君「この大会のベストゲームは、準決勝のニュージーランド対南アフリカだと思う。スプリングボックスは前半をリードし、後半も最後までオールブラックスに食い下がった。勝てるかなと思ったよ」

 「確かに、絶対の優勝候補と呼ばれ、実力上位にあったニュージーランドを最後まで苦しめたね」

S君「ラグビーワールドカップ2015の試合を観ての強さの順番なら、トップがニュージーランド、2番目は南アフリカだと、僕は考えている。この両チームの実力は拮抗していたと思う」

 「その南アフリカを破った日本チームの勝利の勝ちは、やはりとても大きなものだね」

 「南アフリカからは、日本のトップリーグにもトップクラスのプレーヤーが数多く来ている。日本ラグビーのレベルアップの為にも、南アフリカラグビーとの絆強化が必要なんだろうね」

S君「日本ラグビーが目指すべきは、スプリングボックスのラグビーではないかな。日本代表チームは、フェアプレーの中から活路を見出さないと・・・」

 ラグビーワールドカップ2015における日本チームの歴史的勝利の要因のひとつが、南アフリカチームのフェアプレーにあったというのは、とても面白く深い見方だと感じます。
[1月31日・ラグビー日本選手権2016・秩父宮ラグビー場]
パナソニック49-15帝京大学

 パナソニックチームのキックオフで始まった試合は、いきなりパナソニックチームのノーホイッスル・トライとなりました。ゴールも決まって、7-0とパナソニックがリード。

 続くプレーは帝京大チームのキックから始まりましたが、これもパナソニックチームのノーホイッスル・トライに結び付きました。ゴールも決まって、パナソニックはリードを14-0と広げたのです。

 これで試合の大勢は決したと感じられました。

 試合開始直後、まだ帝京大チームが落ち着いていない間に、パナソニックが仕掛けた先制攻撃でした。
 この第1プレーと第2プレーが行われていた6分間、帝京大チームは「ボールに一度も触ることが出来なかった」のです。
 滅多に眼にすることが出来ない光景でした。

 この14点のリードで、パナソニックは終始余裕を持った試合運びが出来ました。もともと力量上位のチームに余裕を持ったプレーをされては、勝負にはなりません。

 帝京大学に惜しまれるのは、最初のキックオフ、自軍に向かって蹴られたボールを取ることが出来なかったことでしょう。短いキックでしたから、パナソニックが「あわよくば確保しよう」と狙ってのプレーであったことは明らかで、帝京大としては何としてもこのボールを確保すべきだったのです。

 その後のゲームは、それなりの攻防が展開されました。「試合にならない」程の力の差は感じられませんでしたので、尚更ゲーム開始直後の「2連続ノーホイッスル・トライ」が効いたのです。
 逆に言えば、パナソニックの「巧みな試合運び」だったのでしょう。

 19年振りに、社会人王者と学生王者のワンマッチゲームとなった日本選手権でしたが、例えば1989年の神戸製鋼58-4早稲田大学の試合の様に「どうしようもない」という印象は受けませんでした。

 社会人チームが実力的に上位に在ることは間違いないのでしょうが、ゲーム展開(社会人チームの焦りを誘うような展開)に持ち込むことが出来るようであれば、大学生チームが接戦に持ち込むことは可能であると感じさせる、日本選手権2016であったと思います。
[1月11日・決勝・花園ラグビー場]
東海大仰星高校37-31桐蔭学園高校

 前半を19-17とリードした仰星チームが、後半もゲームを支配して押し切ったゲームでした。
 桐蔭にとっては、前半終了間際に再逆転を許したプレーが惜しまれるところです。

 両チームとも持ち味を出した好ゲームでしたが、勝敗を分けたのは個々のコンタクトプレーであったと思います。

 東海大仰星チームは、突進においてもタックルにおいても「重心が低く鋭い型」が徹底されていました。

 従って、攻撃の際にはタックルを受けても「相手サイド側」に押し込むことが出来、守備においては相手プレーヤーを「捲り上げるようなタックル」が再三観られました。

 個々のコンタクトプレーにおいて、東海大仰星チームのプレーヤーの方が一段低く当たれていましたし、桐蔭学園チームのプレーヤーの背中が丸かったのに対して、背筋の伸びた形でコンタクトしていました。

 こうしたプレーは普段のトレーニングで身に付けて来たものでしょうし、個々のプレーヤーの体幹の強さも感じさせました。

 桐蔭学園チームも、持ち味のランニングラグビーを魅せて食い下がりましたが、個々のコンタクトプレーにおける僅かな差の積み上げが「6点差」となって表れたのだと思います。

 2016年の決勝戦も好ゲームでした。
 スピード溢れるプレーの応酬は、我が国の高校ラグビーの進化を強く感じさせるものでした。
[決勝・1月10日・秩父宮ラグビー場]
帝京大学27-17東海大学

 前半5-5の同点で折り返したゲームは、帝京大学チームが後半力を発揮して勝ち切りました。
 初優勝を目指した東海大学チームも健闘しましたが、僅かな差が勝敗を分けたと思います。

① 前半は東海大学が押し気味

 前半17分までは一進一退の展開が続きました。
 反則も少なく、締まったゲームでした。結果としてペナルティーゴールもありませんでしたから、0-0の状態が続いたのです。

 そして、東海大学チームが帝京陣内で反則を3度得て、3度タッチキック→ラインアウト→ドライビングモール、という攻撃を仕掛け、ついにトライを挙げたのは前半31分でした。
 優勢なフォワードFW戦からボールをコントロールする東海の攻撃が実った形です。

 互角の展開からのトライでしたから、これでゲームは東海ペースで進むかと思われました。

② キックオフからの集中力が際立った帝京大学

 前述のトライの後のゴールキックGKが外れた後のキックオフプレーで、帝京が素晴らしいプレーを魅せました。
 ノーホイッスルトライで一気に同点に追いついたのです。

 このプレーを始めとして、帝京チームは「キックオフからのプレーで得点」を重ねました。その集中力の高さと力強いプレーは、帝京の地力を示したものだと思います。
 後半のPG・トライの多くも、キックオフからの一気の攻めから生まれました。

 一方の東海チームは、キックオフボールのキャッチを再三失敗しました。この失敗が、悉く失点に結びついた形でしょう。
 一瞬の空白というか、気の緩みを突かれた感じがします。

③ 後半12分から27分は帝京チームの時間帯

 後半開始早々の攻撃から優位に立った帝京大は、後半12分から27分の15分間、殆ど東海大陣内でゲームを進めました。
 この間、東海大は何度も帝京大陣内にボールを運ぼうとしましたが、帝京大はこれを許しませんでした。ほぼ互角であった前半とは打って変わった展開となったのです。

 そして後半19分、帝京は10番松田選手の突進からチャンスメイク。最後は2番の堀越選手がトライしました。
 これで20-5とリードを広げました。2トライ2ゴールでも追い付けない15点差としたのです。

 このトライで、帝京大チームは勝利をグイッと引き寄せました。
 この後、東海大も2トライを挙げるなど反撃しましたが、ついに逆転することはできませんでした。

 全体としてスピーディでクリーンなゲームであったと思います。
 東海大学チームも強力なFWをベースとしたプレーで、「絶対王者」帝京大学チームに食い下がりました。

 やはり、この試合の勝敗を分けたのは「キックオフからのプレーにおける集中力の差」であったと思います。

 毎年、選手がどんどん入れ替わる大学ラグビーにおいて「7連覇」という空前の記録を達成した帝京大学チームの強さは、驚異的です。
 連覇記録の2番手が同志社大学の3連覇であることを観ても、この記録の凄さが分かります。

 我が国の大学ラグビー史に燦然と輝く、不滅の記録なのでしょう。
 関東大学ラグビー・対抗戦グループの2015年シーズン最終戦が、12月6日に行われました。
 伝統の一戦・早稲田大学対明治大学の試合も行われ、明治チームが32-24で勝利しました。
 一進一退のゲームでしたが、地力に勝る明治が早稲田を少しずつ引き離して、試合を支配したと感じます。

 個々のプレーヤーのパワーとスキル、特にランニングプレー時のパワーとスキルで、明治チームが勝りました。
 明治のプレーヤーは、早稲田のタックルを受けても容易には倒れず、体をスピンさせるなどの動きで前進を続けました。ひとつひとつのランプレーで、タックルを受けた地点から1~2mずつ「前に出る」ことで、続くプレーで優位に立ったのです。

 対する早稲田チームは、集団の力で対抗しました。明治ゴール前では徹底したドライビングモールを展開しました。そしてトライを重ねました。

 明治がラックサイド・モールサイドのランニングラグビーで得点し、早稲田がフォワードを中心としたドライビングモールで対抗するという、伝統的な両チームのプレーとは対照的な印象の展開でした。

 とはいえ、試合を通して明治大学チームがゲームを支配していたのは、「個の力」で優位に立っていたからだと思います。

 2015年の明大ラグビー部の監督・コーチは、「1対1での優位」を目指してチームを鍛え上げたと報じられています。それが見事に発揮されたゲームでした。
 「ゴールに向かって最短距離で突進する」という明治ラグビーを実現するには、個の力を高める以外には無い、との判断からの強化策では無かったかと推測しますが、それは正しい方向性であったのでしょう。
 ラグビー本来の強さを持つチームが、出来上がりつつあると感じます。

 一方の早稲田チームは、バックスの個の力で劣っている状況では、こうした戦術を取るしかなかったのであろうと思いますが、今年ブレイクした?と言われる五郎丸歩選手を始めとして、早稲田ラグビー出身者は、素晴らしい「個の力」を有しているプレーヤーが多いにもかかわらず、今年のチーム、特にバックス陣にはそうしたプレーヤーが少なかったことは残念なことです。

 さて、21世紀に入ってからの早明戦は早稲田大学チームが圧倒的優位にありました。

 2001年から14年までの14戦は、早稲田の12勝2敗と、伝統のカードとするにはあまりに一方的な戦いとなっていたのです。「どうした明治」という声も聞かれました。
 この一方的な戦績が、早明戦人気低迷の原因のひとつであったのかもしれません。

 しかし、2015年のゲームでは「新しい・21世紀の明治チーム」の戦い振りが観られたように感じます。

 「伝統の一戦の復活」に期待したいと思います。
 11月29日に秩父宮ラグビー場で行われた、リオデジャネイロ・オリンピック・アジア予選日本大会決勝戦、日本代表対カザフスタン代表の試合は、日本代表チームが14-7で勝ちました。
 そして、香港大会の優勝と合わせて、リオデジャネイロ・オリンピックの出場権を獲得しました。

 前半を7-0とリードして折り返したゲームでしたが、後半キック攻撃からカザフスタンチームに大きく前進されて同点トライを許し、ゲームは7-7と同点になりました。

 しかし、ここからの運動量が日本チーム・さくらセブンズの本領でした。
 粘り強くボールを繋ぎ、最後は小出選手がゴールポスト下にトライを挙げて勝ち切りました。

 見事なゲームであったと思います。

 「女子7人制ラグビー」はオリンピックの新種目です。この種目について言えば、「第一回大会」なのです。その大会に日本代表チームが出場することは、本当に素晴らしいことです。
 女子7人制ラグビーの歴史に輝かしい一歩を刻んだのです。

 さくらセブンズは、オリンピックのメダル獲得も視野に入れているとも報じられています。
 このところの戦い振りを観ると、大きな可能性を感じます。

 おめでとうございました。そして、頑張れさくらセブンズ!
 2019年のラグビーワールドカップ・日本大会のロゴマークが、10月27日に発表されました。

 マークの外郭を形作るのはラグビーボールのシルエット。
 内側には、「遠景の富士山」と日の丸が配されています。

 日の丸と富士山が重なる部分が、「富士山の雪を被った部分」となっています。
 洒落たレイアウトです。

 そして、その「雪を被った部分」が「扇の骨」状に4等分されています。骨が3本という形です。
 ボール、富士山、日の丸という構成要素が、いずれも曲線で描かれるものですから、少し直線を加えることで、マーク全体を締める効果を期待したというところでしょうか。

 富士山・日の丸・扇と、開催地である「日本国」を示す物を「てんこ盛り」にした印象があるロゴマークとなっています。アイデンティティ溢れるマークでしょう。
 一方で、「洗練」されているかといった点から見れば、あまり「垢抜けていない」という見方も有りそうです。

 「世界のどこにも無いマーク」とコメントされていました。
 確かに、これだけ「てんこ盛り」のマークは他には無さそうです。
 
 東京オリンピック2020のロゴマークを始めとして、近時の世界的イベントでは、そのロゴマークが「○○のマークに似ている」という指摘が直ぐに行われてしまいます。
 抽象的かつ洗練されたマークを選定すると、どうしても似たものが存在するのでしょう。方形・円形の組合せでは、バリエーションに限界があるのかもしれません。

 その点からは、ラグビーワールドカップ2019のロゴマークは、洗練さを少し犠牲にして、独自性を確保したということになるのでしょうか。

 開催国・日本の特徴を明確に示し、明るく楽しい感じをも醸し出しているロゴマークです。
 とても良いと思います。
 ラグビーワールドカップ2015・イングランド大会は、ニュージーランドチームの2大会連続3度目の優勝で幕を閉じました。

 決勝戦で宿敵オーストラリアチームを破り、世界一に輝き、ゲーム後の表彰式で金色に輝くワールドカップ=ウェブ・エリスカップを授与されたのは、ニュージーランドチームのキャプテン、リッチー・マコウ選手でした。

 笑顔でカップを受け取ったマコウ選手は、高々と頭上に掲げました。

 前回大会でもニュージーランドチームの主将として出場し、優勝し、カップを掲げたマコウ選手ですから、2大会連続の栄誉であったことになります。
 ラガーマンとして、これ以上は無い「栄光の瞬間」であったことでしょう。

 マコウ選手は、常に「世界最強のチーム」と呼ばれるオールブラックスのキャプテンを2006年から務めています。10年間に渡って、チームを率いてきたのです。
 現在34歳ですから、20歳代の半ばには、既にキャプテンであったことになります。他でもないオールブラックスの正キャプテンに20歳代半ばで指名されるというのは、驚くべき若さといって良いのでしょう。

 加えて、「オールブラックスのキャプテンを10年間」も勤め続けていること自体が、想像を絶することの様に感じられます。
 そのプレー能力は勿論として、キャプテンシーの高さも素晴らしいものなのでしょう。

① 「ハカ」の先頭

 オールブラックスのゲーム前の習慣?として、ウォークライあるいはハカと呼ばれるものがあります。
 ゲーム前に、チーム全体に気合を入れることと、相手チームへの威嚇を狙ったものであろうと思いますが、チーム全員が整列し、大声を上げながら体を動かす・踊ると言っても良いのかもしれません。
 その動きの内容・種類や全体に要する時間は、毎回異なっているように見えます。

 今大会のハカにおいては、「舌を出したり、眼を剥いたり、異様な表情を浮かべる」といった動きはとても少なかったように観えました。

 大きく口を開けて、長い舌をべろりと出すといった動作は、相手チームに対して失礼といった配慮が働いたのかもしれません。
 結果として、今大会のオールブラックスのハカの大部分は、力強く腕や脚を動かす形となりましたから、一層オールブラックスの力強さ・破壊力が感じられるものとなりました。

 その伝統のハカの先頭には、常にリッチー・マコウ主将が居ました。
 黒ずくめの軍団の先頭で、ハカをリードします。

 そのマコウ選手の動きや表情・雰囲気は、ゲーム毎に微妙に異なるものであったと感じました。準決勝の南アフリカ戦や決勝のオーストラリア戦のハカにおいては、緊迫感溢れるものであったと思います。

 「そのゲームの重さ」を主将がチームメイトに示していたように観えました。

 チーム全体を「戦う集団」にしていくために、キャプテンが必要なシグナルをチームメイトに送っていたのでしょうか。

 気合を入れ、気持ちを高揚させ、「絶対に負けない」という空気を創り上げ、オールブラックスの強さをスタジアム全体に誇示する一方で、必要以上の緊張感や固さを生まない様に、細心の注意を払ってハカをリードしていたように観えたのです。

 世界一を争うレベルのチームのキャプテンに求められるスキルは、想像以上に高く・繊細なものであることは間違ありません。私などには到底分からない、とても多くのことを成すことが期待されているのでしょう。

 マコウ主将が、ハカにおいても「キャプテンとしての10年間のキャリア」を存分に示していたと観るのは、穿ち過ぎでしょうか。
 
② 密集戦での強さ

 今大会のマコウ選手は、背番号7番・オープンサイドのフランカーでした。
 以前はNO.8でプレーすることもあったのですが、近年はフランカーとしてのプレーが多くなっています。

 いずれにしても、ゲームにおける「ボールの取り合い」の主役となる「フォワードFW第3列」です。
 今大会でも、マコウ選手はその能力を如何なく発揮していました。

 相手ボールを奪うプレー、フィッシングと呼ばれたりジャッカルと呼ばれたりしますが、これは「ラグビー競技の最も本質的なプレー」のひとつです。
 攻撃と守備を交互に行うルールの競技とは異なり、ラグビーにおいては相手チームがボールを保持している間は、何時まで経っても自軍の攻撃にはなりません。

 相手チームが、トライやペナルティーゴールを奪い、得点を挙げた時後には、攻撃機会を得やすい形でボールが自陣に蹴り込まれますけれども、これとてしっかりとキャッチ・確保しなければ、走り込んでくる相手チームのプレーヤーにボールを奪われる可能性があるのです。

 攻撃と守備が明確に交互に行われるベースボールといった競技とは異なるものですし、サッカー競技とは同様の形式です。

 つまり、ラグビーは常に「ボールを取り合うスポーツ」なのです。(当たり前のことを書き恐縮です)

 ボールが自軍のものになる形も様々です。

 相手チームがフィールド内にボールを蹴ってくれて、自軍プレーヤーがキャッチした時や、相手チームが外にボールを蹴り出してくれた時(ペナルティーキックの時以外)には、自軍のラインアウトプレーになりますし、相手チームがノックオン等の反則を犯した時にも自軍のボールになります。

 しかし、そういった機会を待っているだけでは「自軍のボール保持率」は上がらず、攻撃機会が増えず、得点機会もなかなか生まれませんから、プレーヤーは「常に相手ボールを奪うチャンスを狙い続ける」ことが必要となるのです。

 リッチー・マコウ選手は、「相手からボールを奪う」という能力において秀でています。世界最高のプレーヤーのひとりでしょう。

 その「奪い方」にも特徴が有ります。

 フィッシングプレーにおいて最も多く観られるのは、「ラックプレーにおいて立ったまま相手ボールを奪う」プレーだと思います。
 ラックになり相手プレーヤーがボールをリリースした時に、素早く当該地点に駆け付けてボールを奪う形です。
 ボールが存在する地点に「いかに早く駆け付けるか」そして、正しい方向からラックに入り、立ったままで前屈みになってボールを奪うのです。

 このプレーが上手い選手も居ますし、マコウ選手も当然ながらこのプレーを行い続けますが、マコウ選手がこうした形でボールを奪っている姿を観ることは、そう多くは有りません。

 マコウ選手は、「ボールを保持している相手プレーヤーに密着しボールを奪うプレー」が、とても上手いのです。
 「密集が生まれ」両チームのFWが殺到します。テレビ画面からは見え難い密集の中で、壮絶なボールの奪い合いが展開されます。

 基本的には「腕力が強い」方がボールを奪い易いのでしょう。
 何しろ、相手プレーヤーが抱えているボールを「捥ぎ取る」のですから、相当強い腕力無くしては成功できそうもありません。

 しかし、マコウ選手のプレー振りを拝見すると、どうも腕力だけでは無さそうです。

 マコウ選手も、身長188cm・体重106kgと伝えられている大男ですし、筋骨隆々のプレーヤーですから、相当の腕力を有しているとは思われますが、このマコウ選手の体格は、大男揃いのFW、ましてやワールドカップの舞台では決して大きな方では無く、どちらかといえば「小柄な部類」に入るようにさえ観えます。

 そうなると、マコウ選手の「ボール奪取テクニック」(私には「マジック」のように感じられます)は、腕力だけではないということになります。
 密集戦における体の各部分の使い方・スピード、力を入れるタイミング(相手プレーヤーの力を削ぎ、自らの力を増大させる、梃の様な体の使い方?)などに「絶妙のものが有る」に違いありません。そして、そのテクニックは、容易に真似することが出来るものでは無いのでしょう。

 そうでなければ、世界最高レベルの舞台で、際立った「ボール奪取の連続」を実現できる筈は無いのですから。

 いつも書くことで恐縮ですが、「本当に大事な情報はいつも不足している」のです。

③ ボール有る所マコウ在り

 マコウ選手に②のような高度なテクニックが存在するとしても、ボールへの接触機会が多くなければ、ボール奪取の増加に結び付かないことは明白です。

 「ボール争奪戦参加回数を増やすこと」が大切なのです。

 この点についても、マコウ選手の能力は驚異的だと思います。「ボール有る所マコウ在り」という感じがします。
 「極めて高いレベルの予測力」を保持していなければ、ボール所在地の未来予測はできない筈ですから、マコウ選手にはその能力が備わっていることになります。

 「さっきあそこでプレーしていたのに、もうここに居る」、マコウ選手のプレーを観ていると、ゲーム中何度もこうした驚きを感じます。
 大袈裟に言えば「マコウ選手が2人居るのではないか」という感覚です。

 この神出鬼没・八面六臂の働きこそが、マコウ選手をして世界最高のプレーヤーのひとりと呼ばせしめ、オールブラックスのキャプテンを10年間に渡って務めさせている、原動力なのでしょう。

 この能力はひょっとするとトレーニングではなかなか向上させることが出来ない、天賦の才なのかもしれません。
 
 リッチー・マコウ選手は、ワールドカップ史上初の連覇を果たしたチームの2大会連続のキャプテンでした。

 こうしたプレーヤーは、これまで存在しませんでした。
 今後再び現れるかどうかも、定かではありません。難しいという気もします。

 こうしたプレーヤーをリアルタイムに観ることが出来た幸せを感じます。

 そして、さすがに次回2019年日本大会においては、38歳となるマコウ選手のプレーを観ることは難しいのではないかとも感じます。

 「オールブラックスのリッチー・マコウ」、ラグビー史上に燦然と輝く巨星です。
 ラグビーワールドカップの各ゲームの開始前には、両チームの国歌演奏が行われます。

 他のスポーツの世界大会と同様です。

 少し異なるのは、その国歌演奏に合わせて、選手達が堂々と国歌を歌っていることでしょう。
 どのチームの選手も殆ど全員でしっかりと国家を歌っているように観えました。

 他のスポーツでは、これ程しっかりと揃って歌っていない場合も多いと思います。
 チームによっては、各プレーヤーが殆ど歌っていないこともありますし、歌っていたとしても口の開け方が小さく小声で歌っているように見えることもあります。

 ラグビーという競技のプレーヤーは、大きく口を開けて堂々と国家を歌うということなのでしょうか。
 国家に対する、チームに対する誇りが大きいということなのかもしれません。

 いずれにしても、スポーツに関しては相当のナショナリストである私にとっては、この「ラガー達の歌う姿」は、とても気持ちの良いものです。

 少し不思議なのは、ナショナルチームの組成に際して、国籍主義では無く、協会主義であるラグビーにおいては、代表チームに他国出身のプレーヤーが多いにも拘わらず、揃って国歌を歌っていることです。
 日本チームでも、リーチ・マイケル選手やトンプソン・ルーク選手らの力強い歌唱姿が胸に迫ります。

 尚、他国籍のプレーヤーが相当数居るのは、日本チームに限ったことではありません。
 多くの世界の有力チームにも、他国籍のプレーヤーが入っています。ラグビーのナショナルチームにおいては普通のことなのです。

 にもかかわらず、他国籍の選手も所属するチームの国歌をしっかりと歌うのです。
 その姿には、所属しているナショナルチームへの敬意と誇りが溢れています。

 国籍がどこであれ、プレーヤーが「所属するナショナルチームへの敬意と誇り」を大切にすること、プレーヤーをそうした心持にしてしまうのが、ラグビーという競技の魅力なのかもしれません。
 
 今大会のグループリーグで3勝1敗という好成績、過去のトレンドから観れば「奇跡的な成績」を、日本代表チームは残しました。

 緒戦の南アフリカ戦での勝利などは、「ワールドカップ史上最大の衝撃」と称されるものでした。

 ブロッサムズは、2011年からの4年間で一気にジャンプアップしたのです。
 「不連続」と言って良い程の成長であったと思います。

 このジャンプアップの要因となったと言われているのが、その厳しい練習、「ハードワーク」でした。
 エディ・ジョーンズヘッドコーチHCは、世界中のどのチームにも勝る厳しい練習を日本代表選手達に課したのです。

 そのメニューも凄まじいものでしたが、練習中のエディ・ジョーンズHCの言葉・叱責も極めて厳しいものであったと報じられています。

 見たことも聞いたことも無いようなハードワークを課され、その取組振りが不十分であれば、躊躇なく叱責される、というのは極限レベルの厳しい練習ということになります。
 少しでも運営方法を間違えれば「しごき」と受け取られかねない練習とも言えるでしょう。

 日本ラグビー界を代表するようなプレーヤーが揃っているのが代表チームでしょう。そうしたプレーヤーは、本質的に「誇り高き者」である筈です。「ラグビーを知り尽くしている」との自負も持っているプレーヤーが多いのでしょう。

 そうした「誇り高き者たち」が、このような「しごき」に近い?ハードワークに耐えられた理由があると思います。

 ジャパンフィフティーンひとりひとりに聞いてみたいポイントなのですが、そうも行きませんので、時々報じられるインタビューなどを参考にします。

 何故「ハードワークに耐えることが出来たのか」という質問に対して、五郎丸選手が応えていました。

 「誰よりも世界を知っている指導者だと思ったから」とコメントしていました。

 チームジャパンの中で「誰よりも世界を知っている」、「世界の強豪チームの戦い方・レベルを知っている」、とすれば、その「世界の強豪チームに勝つ方法」をも知っている、ことになります。

 その指導者から課された練習は、どんなに厳しくとも耐えてやっていく、という思考になるのでしょうか。

 この五郎丸選手のコメント以外にも、エディ・ジョーンズHCの厳しい練習に耐えることが出来た理由がいくつも有るのでしょうが、この五郎丸選手のコメントにも「日本代表チームのヘッドコーチに必須の要素」が含まれています。

 つまり「世界を知っていること」です。それも、「世界トップクラスの高い水準」で世界のラグビーを知っている必要があるのでしょう。

 そうした指導者の指示であるからこそ、誇り高き者たちが「必死にハードワークに耐えて行く」のです。

 日本代表候補選手達に、「この人に付いて行くしかない」と感じさせる・納得させる要素を具備している人以外には、代表チームのヘッドコーチは務まらないのでしょう。
 今大会使用されていたスタジアムは、どれも素晴らしいものだと感じます。

 「ラグビーの聖地」たるトゥイッケナム・スタジアムや、ウェールズ・カーディフのミレニアム・スタジアムといった、世界屈指のラグビー場はもちろんとして、日本チームがゲームを行ったスタジアムも、いずれも素晴らしいものでした。

① 南アフリカ戦 ブライトン・コミュニティ・スタジアム
② スコットランド戦 キングスホルム・スタジアム
③ サモア戦 mkスタジアム
④ アメリカ戦 キングスホルム・スタジアム

 特に、第二戦と第四戦を戦った「キングスホルム・スタジアム」の「芝付」は見事でした。

 ラグビーのフィールドは、サッカーと比べて「厚い芝生」が求められます。そして望めるものなら「剥がれ難い芝生」が求められます。

 キングスホルムの芝は、この要件をしっかりと満たしていたように思います。
 「青々とした深い芝」は、ラックなどのプレーでも大きく剥がれることは少なかったように観えました。
 その芝付の良さというポイントだけを見れば、ミレニアム・スタジアムより相当上でしょう。

 また、キングスホルムのスタンド・観客席は巨大ではありませんでしたが、グラウンドに近く低い佇まいといい、小さな屋根といい、いかにも歴史と伝統を感じさせるもので、「19世紀のラグビー観戦」の雰囲気満点でした。
 一度は行ってみたいものです。

 ラグビー競技発祥の地であるイングランドおよびウェールズやスコットランドには、こうした素晴らしいスタジアムが数多く存在するのでしょう。

 各々のスタジアムでは、100年以上に渡るラグビーの歴史の中で、数々のビッグゲームが行われてきたのでしょうし、スタジアムが存在する地域の人々にとっては「誇り」となっている存在なのであろうと思います。

 「素晴らしいスタジアム」を維持して行くラグビーファン・関係者の皆さんの努力の歴史も、ラグビーの歴史そのものなのだと改めて感じます。
 今大会も、多くの素晴らしいレフェリーが登場しました。

 特に、プレーヤーと共にグラウンドを縦横無尽に走り続ける主審の皆さんのレフェリングには、感心させられることしきりでした。

① プレーをスピーディに継続させる努力

 「プレイオン」や「ユーズ イット」「リリース」の声が響き渡ります。
 可能な限り「プレーを切ることなく継続させる」ために、主審の皆さんがレフェリングを展開しているのです。

 「プレイオン」とコールしながら、両手を前に出すポーズと、そのコールのタイミングの良さを観るだけで、この大会がワールドカップであることが分かる程です。

 ラック状態になっても直ぐに「ユーズ イット」と、「ボールを動かすこと」を指示します。このタイミングもとてもスピーディ。
 ボールの停滞を極力排除しようとする、努力に溢れています。

② 見えにくい反則への対応

 線審との協働は勿論のことですが、今大会はTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)という制度も導入されましたから、一層効果が上がっているように感じます。

 もともと「ルールが複雑で分かり難い」という点が、ラグビー人気向上の足枷になっているとも言われてきましたから、こうした「明快な判定」は良いことに違いありません。(私はラグビーのルールが難解だとは全く思いません。ルールの基になっている理由は単純明快なものですから、それを繰り返し説明して行けば良いと思います)

③ 終始冷静かつ毅然とした態度

 個々の判定に対しては、プレーヤーから不満の声が漏れたりするものであり、中には露骨に態度に出すプレーヤーも居るのですが、今大会の審判は、どのゲームの審判も「極めて冷静かつ毅然たる態度」でコール・説明を行っていました。

 非常にレベルの高い審判が、揃っていたということでしょう。さすがはワールドカップです。

 ラグビー競技においては、審判の判断・コールは絶対のものです。ゲーム中、審判はプレーヤー達のプレーを判定すると共に、指導も行いますから、「最新のプレーを教える先生」であるとも言われています。

 「プレイオン」という声が響くトゥイッケナム・スタジアム・・・。それだけでラグビーを観る幸せを感じてしまいます。
 ニュージーランド・オールブラックスの不動の先発スタンドオフSO、ダニエル・カーター選手は、本当に楽しそうに決勝戦をプレーしていました。

 決勝戦でプレーできる喜びが、全身に溢れていました。

 2011年大会の時から、オールブラックスの先発プレーヤーであったカーター選手でしたが、この大会では途中で故障してしまい、決勝戦には出場できなかったのです。
 常に、世界屈指のSOと呼ばれてきたカーター選手にとっては、とても悔しいことであったろうと思います。

 そして、2015年大会にも「勇躍」出場してきたのです。

 グループリーグ=予選リーグの時から、素晴らしいプレーを魅せ、ペナルティーキックPK始めとするキックでも、持ち味の精緻なプレーを継続しました。

 チームは順当に決勝に進出し、カーター選手もトゥイッケナムの舞台に立ったのです。
 ダニエル・カーター選手にとっては「夢が実現した瞬間」であったと思います。

 前半8分、最初のPKショットのシーンが訪れました。
 距離はともかくとして、難しい角度のキックでしたが、これを真ん中から決めました。
 「ワールドカップ決勝の最初の得点機会」として、極めて難しいショットであったと思いますが、何事も無かったかのように決めたのです。

 その表情は、冷静そのものでした。

 後半30分、今度はドロップゴールDGを決めました。これもゴールの真ん中に蹴り込みました。ワラビーズの追い上げを抑え込み、エリス・カップを「グイッと引き寄せた」プレーであったと思います。

 この決勝戦で、PG4本、DG1本、コンバージョンゴール2本を決め、計19点を叩き出したカーター選手でしたが、そのプレー振りは冷静さと気迫が見事に融合していたと感じます。

 その表情に「疲れなど皆無」でした。

 ダニエル・カーター選手にとっては「楽しくて仕様が無い」80分間であったと思います。

 決勝戦の後半35分、センターライン付近やや左寄りからPKショットに挑んだカーター選手はこれもキッチリと決めました。50mを超えるショットであったと思いますが、真ん中から蹴り込みました。

 カーター選手の冷静な表情の中に、僅かに「笑み」が浮かんでいたように観えました。
 ラグビーワールドカップ・イングランド大会の決勝戦は、10月31日「ラグビーの聖地」トゥイッケナム・スタジアムで行われ、ニュージーランドチームが34-17でオーストラリアチームを破り、優勝しました。

 ニュージーランド・オールブラックスは前回大会に続いての連覇。優勝回数を歴代最多の3回に伸ばしました。

 オールブラックスとワラビーズの素晴らしい闘いでした。

 随所で現在の世界最高のプレーが展開されたゲームでしたが、個々のプレーで僅かに勝ったニュージーランドが、概ねゲームを支配して勝ち切ったゲームだと感じます。

① フォワードFW第三列の戦い

 オールブラックスの6番・カイノ選手、7番・マコウ選手、8番・リード選手と、ワラビーズの6番・ファーディ選手、7番・フーパー選手、8番・ポーコック選手の争いは、このゲームのポイントであったと思います。

 共に素晴らしい、本当に素晴らしいプレーを魅せてくれましたが、僅かにニュージーランドの3人が勝ったという気がします。

 キャプテンでもあるマコウ選手のボールへの寄せは、熟練のスキルをベースにした気迫溢れるものでした。「ここにも居る、ここにも居る」という印象で、神出鬼没・八面六臂の活躍であったと思います。

 また、カイノ選手の「縦への突破力」も見事!
 フランカーによる10mの前進は、ゲームを優位に進めるキープレーであることを改めて示してくれました。

② ダニエル・カーター選手のキック

 このレベルのチームのキッカーは「殆ど外すことが無い」というのは当然とはいえ、このゲームにおけるニュージーランドのキッカー・スタンドオフSOのカーター選手のプレーは見事なものでした。

 前半8分のPKショットは、このゲーム最初のキックでした。相当難しい角度・距離のキックでした。キッカーとしては、最初のキックはもう少し易しいものであることが望ましいと感じました。
 いかに、世界最高レベルのキッカーとはいえ、ビッグゲームの最初のキックを決めるか外すかは大きな違いが有ります。

 カーター選手は、このキックをキッチリと決めました。何も無かったかのように真ん中から決めたのです。「凄いな」と思いました。

 以降、カーター選手は好調なキックを続け、ドロップゴールDGも含めて19得点を挙げました。

③ マア・ノヌー選手のトライ

 後半2分、ニュージーランドのノヌー選手がトライを挙げました。

 オーストラリア陣に少し入ったエリアから、ひとりで持ち込み、相手プレーヤーを交わし、弾き飛ばし、引き摺りながらのトライでした。

 「前に何人の相手プレーヤーが居ようとも自分がトライする」という、強い気持ちが表れたトライでした。
 そのラン技術の高さも素晴らしいものでした。さすがは「オールブラックス史上最高の突破力を保持する」と言われるプレーヤーです。

 そして、このゲームに臨むオールブラックスの各プレーヤーの気迫を存分に発揮したものでもあったと感じます。

 ボールキャリアは、正面に相手プレーヤーを置いた時に、ボールを生かすために周囲の味方プレーヤー(パスの対象)を探すことが良く有り、プレーの継続という意味では重要なプレーでもあるのですが、一方でこうしたビッグゲームにおいては、「自分で決める」という強い気持ちも大切なのでしょう。

 このゲームでは、タックルを受けたオーストラリアのプレーヤーが「後ろを向く」というシーンが時折観られましたが、ノヌー選手のランは「ひたすら前を向いて前進する」ものでした。

 オールブラックスがワラビーズに対して、このゲームでは「戦闘的な心持において、僅かに勝っていたこと」を如実に示したプレーであったと思います。

 大会前の予想通り、優勝候補の筆頭であったニュージーランドチームが、その実力を存分に発揮した決勝戦でした。

 前回大会の決勝戦を8-7という超ロースコアで制したオールブラックスが、今大会は34得点を挙げての快勝だったのです。
 今大会のオールブラックスの充実振りを示した形でしょう。

 ワラビーズも、後半17-21に追い上げるなど意地を見せましたが、最後は力尽きたというところでしょう。
 惜しまれるのは、フルバック15番のイズマイル・フォラウ選手のコンディションでしょう。足首の故障は、やはりプレーに大きな影響を与えていました。いつもの「凄まじいラン」はついに観られませんでした。
 フォラウ選手が全開であれば、もう少し競った展開となったことでしょう。

 ニュージーランドチームのキャプテン、リッチー・マコウ選手が金色のワールドカップ=ウェブ・エリス・カップを高々と掲げました。

 オールブラックスの強さを世界に示したのです。
 2015年のラグビー・ワールドカップ・イングランド大会の決勝は、ニュージーランドとオーストラリアの対戦となりました。
 11月1日、トゥイッケナム・スタジアムで行われる決勝戦の見所を検討してみたいと思います。

① 初の決勝カード

 20世紀後半から、常に世界のラグビー界を牽引してきた存在であり、共に2度の最多優勝を誇る両チームですが、意外なことにワールドカップの決勝で戦うのは初めてです。

 1987年の第一回大会ではオーストラリアが準決勝で敗れ、第二回大会ではニュージーランドが準決勝で敗退といった具合に、オールブラックスとワラビーズが揃って決勝に進出することが無かったのです。不思議な感じがします。

② 共に4度目の決勝進出

 ニュージーランドは、第一回・第三回・第七回大会で決勝に進み2勝1敗、オーストラリアは、第二回・第四回・第五回大会で決勝を戦い、やはり2勝1敗となっています。

 ニュージーランドが決勝で敗れたのは第三回大会で、南アフリカに12-15、オーストラリアが決勝で敗れたのは第五回大会で、イングランドに17-20、共に「延長戦」の末準優勝に甘んじました。
 ロースコアのゲームで、勝ち切れなかったという形でしょう。

③ 決勝戦での戦い振り

 ニュージーランドは、第一回大会を除くといずれも3点差以内のゲームとなっていますし、各ゲームの得点は12点以下です。

 オーストラリアも第四回大会をのぞくと6点差以内のゲームとなっていて、各ゲームの得点は17点以下となっています。

 両チームとも決勝戦では「負けないラグビー」に徹している印象です。ワールドカップのタイトルは、かように重いものなのでしょう。

 一方で、早めに大きな差を付けたゲーム(第一回・第四回大会決勝)では、自在な攻めから30点前後の得点を挙げて快勝しています。

 以上の過去の戦績を考慮すると、今大会の決勝戦は、両チームともに「慎重に入る」と観られます。
 
 試合開始直後は、リスクを取った大胆な攻撃は行わず、エリアマネジメントに徹しながら、相手の様子を見る時間帯が続くことになりそうです。

 共に素晴らしいフランカー陣によるボールの取り合いが展開され、ロック陣も最先端のプレーを展開してくれることでしょう。一進一退が続くと見ます。

 こうした睨み合いが続く中で、局面を大きく動かす可能性があるプレーヤーとしては、ニュージーランドは11番サヴェア選手と12番ノヌー選手、オーストラリアは11番ミッチェル選手と15番フォラウ選手だと思います。

 特に、ゲームを左右しそうなのはオーストラリアのフルバック・フォラウ選手の出来でしょう。

 故障した脚の状態は、少なくとも準決勝では思わしくなく、得意のランプレーを披露することなく交替してしまいましたが、徐々に回復している筈ですので、コンディションが決勝戦までに相当回復するようなら、ワラビーズの「切り札」になる可能性があります。
 決勝戦最大の注目プレーヤーと観ています。

 準決勝の戦い振りを観ると、ワラビーズの調子が上がってきている印象ですが、ベテランを揃えたオールブラックスは「ワラビーズを知り尽くして」いますから、互角の戦いと観るのが妥当です。

 その互角の戦いの中で、今大会における「精神的な疲労」がやや少ないと思われるオールブラックスが、終盤の競り合いで抜け出して、4点差以内(予想スコアは17-15)で勝ち切るのではないかと考えています。
 [10月25日・準決勝・トゥイッケナムスタジアム]
 オーストラリア29-15アルゼンチン

 凄まじい攻め合いでした。

 試合開始からの10分間、両チームはフルスロットルで攻め合いました。
 走り回り、パスを繋いで、相手ゴールを目指したのです。

 その攻め合いを優位に進めたのは、ワラビーズでした。

 試合開始早々の前半1分、アルゼンチンゴール前でインターセプトからのトライ。ロックのシモンズ選手でした。
 続いて前半9分、アシュリー・クーパー選手がチーム2つ目のトライを挙げました。
 キッカーのフォーリー選手もしっかりとゴールキックを決めました。

 前半10分までにオーストラリアチームは14-3とリードしました。

 「勝敗の帰趨は概ね決まった」と感じました。このレベルのゲームでの「11点差」は大きいのです。
 この後の70分間で、両チームは点を取り合うでしょうが、この11点差が物を言って、オーストラリアチームが勝ち切る可能性が極めて高いと思いました。

 アルゼンチンチームは、その持ち味であるランニングラグビーで試合開始早々にオーストラリアチームを圧倒しようとしたのでしょう。自らの長所を活かしていこうとするのは、世界トップレベルの戦いにおいては大切なことです。

 そして、オーストラリアも受けて立ちました。
 準々決勝のゲームでは、グループリーグ「死の組・A組」を戦ってきた疲れが感じられましたが、このゲームの開始直後、フレッシュな状態では、本来の動きが観られました。
 アルゼンチンに負けないスピードとパワー溢れる攻撃を展開したのです。

 この10分間の両チームの攻め合いは、運動量といい前進するパワーといい、今大会一のぶつかり合いでした。
 ボクシングで言えば、壮絶な打ち合いというところでしょう。

 両チームには「出血するプレーヤー」が続出しました。鼻血を出すものは数知れず、鼻の穴に綿の様なものを詰めています。その他の部位から血を流しているプレーヤーも居ます。
 両チームの数多くのプレーヤーのユニフォームは、血に染まりました。

① ターンオーバーの多発

 この時間帯、両チームのフォワード陣の頑張りから、ターンオーバーの応酬となりました。スピードとパワー溢れる「フィッシングプレー」が続いたのです。

 攻め合いの中で両チームは、「攻撃の継続」に力を尽くしましたから、プレーが長く続きます。なかなか切れないのです。

 結果として、ボールが止まった場面で、味方プレーヤーのフォローが間に合わないことも多く、相手プレーヤーの「ジャッカル」が成功したのです。
 「こんなに飛ばしてスタミナが持つのだろうか」と心配になる程のプレーの応酬でした。

 前半24分、オーストラリアチームの反則から、ニコラス・サンチェス選手のPGが決まり、アルゼンチンチームが14-6と追い上げました。
 今大会ここまでの得点王であるサンチェス選手のキックの安定感は、このゲームでも際立っていました。「外すことなど考えられない」という感じです。

② アシュリー・クーパー選手の3トライ

 ワラビーズは、このゲームで4つのトライを挙げました。
 中でも、14番ウイングのアシュリー・クーパー選手は3トライと気を吐きました。

 前半31分、追い上げられたオーストラリアチームが、クーパー選手のトライで19-6と再びリードしたのです。

 結局のところ、このゲームはトライを挙げたオーストラリアが勝ちました。
 アルゼンチンは、PG5本での15得点に留まったのです。

 素晴らしいスピードを活かした、ランニングラグビーが持ち味であったアルゼンチンチームですが、このゲームではノートライだったことがこのゲームを象徴しています。
 決して、アルゼンチンの攻撃の切れ味が鈍かった訳ではないのですが、オーストラリアの守備が勝ったということでしょう。

③ ワラビーズの守備最終ライン

 ランニングスピードと、巧みなフォーメーションで、一気に相手守備ラインを突破するアルゼンチンの攻撃は、このゲームでも健在で、度々オーストラリアの第一次防衛ラインを突き抜けました。

 これまでのゲームでは、そのままトライに結び付けてきたのです。今大会のアルゼンチンチームの高い得点力の源泉となってきたプレーです。

 ところが、このゲームでは、ワラビーズの「守備最終ライン」が良く機能していました。
 一次防衛ラインを、素晴らしいスピードで突破してくるアルゼンチンのプレーヤーを、22mライン付近で止め続けたのです。見事な守備フォーメーションと、プレーヤーの働きでした。

④ 後半15分からのゲームの膠着

 後半14分に、サンチェス選手が「いつものこと」の様にPGを決めて、22-15とアルゼンチンが追い上げ、7点差に迫ってから、ゲームは膠着状態に入りました。

 試合時間残り25分という、普通なら「まだまだ、これから何が起こるか分からない」という時間帯から、ゲームは突然「得点が入らない」状態に変貌したのです。

 さすがの両チームのプレーヤーにも、疲れが観え(試合開始直後からあれだけ飛ばしたのですから無理も無いところ)、運動量が低下したことが主因であろうとは思いますが、オーストラリアチームの守備力が如何なく発揮される試合展開となりました。

 途中交代で入ってきたアルゼンチンのフレッシュなプレーヤーの前進を、ギリギリのところで止め続けました。今大会NO.1と評されるワラビーズのディフェンスが威力を発揮したのです。

 逆に、後半31分、11番ミッチェル選手の巧みなステップによる大きな前進から、14番クーパー選手の、このゲーム3つ目のトライが生まれ、オーストラリアチームが29-15とリードを広げました。
 2トライ2ゴール差となって、勝敗は決しました。

 この時のミッチェル選手の突進は素晴らしいものでした。
 グラウンドの左サイドから、右サイドに横に走りながら前進するプレーでしたが、疲れの見えるアルゼンチンプレーヤーをひとりまたひとりと交わして、20m以上は前進しました。
 見事な技術とスピードを魅せた、今大会のベストプレー候補でしょう。

 11番と14番という2人のウイングプレーヤーで捥ぎ取ったトライは、ワラビーズ攻撃陣の決定力を如実に示すものでした。

 ゲームは、このまま29-15でオーストラリアが勝利しました。

 残り5分から、アルゼンチンチームはトライを取るために波状攻撃を続けましたが、オーストラリアチームの守備は崩れませんでした。
 オーストラリアの「前に出る守備」のために、アルゼンチンのプレーヤーは得意とする「走りながらのプレー」を行うことが出来ず、止まった状態でパスを受け続けますから、持ち味が活きなかったのです。

 ワラビーズは、前半10分までの攻め合いを制して得た「11点差」を持って、ゲームを終始支配し続けました。
 会心の勝利であったと感じます。

 一方のアルゼンチンチームは、持ち味であるランニングラグビーで初の決勝進出を目指しましたが、プレー毎の最も大事な瞬間の競り合いで僅かに及ばなかったというところでしょう。彼我の差は、とても小さいと思います。

 トゥイッケナムスタジアムを埋め尽くした8万大観衆の7割以上はアルゼンチンチームを応援していました。サッカーのスーパースター、ディエゴ・マラドーナ氏も応援し続けていました。
 しかし、悲願の決勝進出は残念ながらなりませんでした。

 とはいえ、「一瞬のスピードでゲインラインを大きく切って行く」というアルゼンチンラグビーは、観ていてとても面白く楽しいもので、今大会を最も沸かせたチームであったとも思います。
 南半球の強豪チーム、オールブラックス・ワラビーズ・スプリングボックスとの歴年の戦いの中で、編み出されてきた戦法であろうと思いますが、このラグビーを完成させていけば、決勝進出・ワールドカップ制覇も夢では無いでしょう。

 ワラビーズは、12年振り4度目の決勝進出を果たしました。

 11月1日の決勝はオールブラックスとワラビーズの対戦となりましたが、「番狂わせが極めて少ない」ラグビーという競技において、現在実力1・2を争う両チームの決勝進出は、とても順当なものでしょう。

 そして、「手の内を知り尽くしたチーム同士」のハイレベルな決勝戦となることも、間違いないところだと思います。
 [10月24日・準決勝・於トゥイッケナムスタジアム]
 ニュージーランド20-18南アフリカ

 南アフリカチームが6PGで18点を挙げましたが、ニュージーランドチームが2トライを挙げて押し切ったゲームでした。

 現時点の戦力では、正面から挑んではオールブラックスに及ばないと判断したスプリングボックスが、終始巧みな試合運びを魅せて、互角の展開に持ち込んだゲームだったと思います。

 ワールドカップの決勝トーナメントでは、「極めて手堅い」試合運びを見せるオールブラックスの傾向が、このゲームでも出ましたが、勝ちに拘ったマネジメントがこのゲームでは功を奏して勝ち切ったというところでしょう。

 以下、順不同の雑感です。

① 反則を最小限に抑えた南アフリカチーム

 南アフリカチームは、特に前半、特に自陣での反則を最小限に抑え込みました。それは見事なものでした。

 ラグビーの世界では「規律が取れている」と呼ばれる試合振りですが、オールブラックスの再三のアタックに対して、どうしても犯しがちな反則を、前半は全くと言っても良い程犯さなかったというのは、ある意味では驚異的なことでしょう。

 これに対して、ニュージーランドは前半、自陣で反則を数多く犯しました。
 そして、南アフリカのキッカー・ポラード選手は、PKショット4本を悉く決めました。このレベルのゲームでは、PKは「入るか入らないか」というものではなく、「全部決めるか、1本外すか」というものなのでしょう。

 前半は、4PGの南アフリカが12-7とリードして折り返しました。

② 最適な人員配置を図った南アフリカ

 ラグビーのゲームにおいては、プレーヤー・人員というリソースの最適配置が重要ですが、このゲームの南アフリカは見事なマネジメントを魅せました。

 例えば、「ボールを取りに行かないと決めたラックプレー」には1人の選手も参加させませんでした。
 ニュージーランドチームが「2人のプレーヤーで構成」しているラックに対して、南アフリカは1人も行きませんから、残りのプレーヤーの人数は、ニュージーランド13人に対して南アフリカが15人となります。

 南アフリカは、その人員をラックサイドやラインのディフェンスに充当することで、強力なニュージーランド攻撃陣のアタックに備えたのです。

 こうしたシーンが、随所に観られました。見事なマネジメント、フィフティーンへの徹底であったと感じます。

③ ラインアウトで優位に立ったニュージーランド

 このゲームにおいては、南アフリカボールのラインアウトにおいて、ニュージーランドがスティールするプレーが再三見られました。
 南アフリカの受け手の少し投げ手側に位置するニュージーランドのプレーヤーが飛び上がり、ボールを確保・カットするプレーです。

 当然ながら、南アフリカの投げ手が個々のラインアウト毎にどのプレーヤーに投ずるかは、ニュージーランドのプレーヤーには判らないのですから、こうしたスティールプレーは極めて難しい筈なのですが、再三にわたってニュージーランドが成功していました。
 世界最高レベルのゲームにおいては、なかなか観られるものでは無く、不思議でさえありました。
 オールブラックスは、スプリングボックスのラインアウトを研究し尽くしていたのでしょうか。

④ ハイパントとグラバーキックを多用したニュージーランド

 このゲームのオールブラックスは、ハイパント戦法とグラバーキックを多用しました。

 バックスにボールを回したプレーにおいて、相手プレーヤーの裏側にグラバーキックを蹴るのは、五分五分の状況を作り出すために有効な戦法ということで採用したのであろうと思われます。

 一方で、ハイパント戦法は「相手チームにボールを渡してしまう」という意味で、こうしたハイレベルなゲームでは、あまり使われなくなった戦法という感じがしていましたが、このゲームにおいては、「正確な(距離と時間)ハイパント」と「(パントを蹴った位置からの)勇気ある突進と高度なキャッチ技術」から、相当の確率でニュージーランドチームがマイボールにしていました。

 高いレベルであれば、ハイパント戦法も有効というか、エリアマネジメントの点からもとても有効な戦法であることが証明された形です。
 ボールを横に回していく際に、パスして行く過程で、ノックオンやインターセプトのリスクを負うより、ハイパントの方が確率の高い戦法との判断であったかもしれません。

 「絶対負けられないゲーム」におけるオールブラックスの選択であったのでしょう。

⑤ 2トライを挙げたニュージーランド

 このゲームでは、南アフリカはノートライでした。一方でニュージーランドは2トライ。
 戦略の違いも有るのでしょうが、トライを取り切る力という点からは、ニュージーランドチームの方が上回ったということでしょう。

 前に出て、相手陣を破壊し切る力ではニュージーランドが勝ったのです。
 南アフリカとしては、この力で今大会はニュージーランドに分があるとの判断から、PGだけで勝つ戦略を選択したのかもしれません。

⑥ オールブラックスの「守り切るマネジメント」

 後半28分に、南アフリカのパット・ランビー選手(ダニエル・カーター選手との交替)がPGを決めて20-18と追い縋りました。

 このプレーの後、ニュージーランドチームは「この2点差を守り切る」戦略に切り替えたように観えました。
 「手堅い戦法で得点できるチャンス」が来れば、点を取りに行くが、それ以外は「相手に得点をさせない」プレーに切り替えたのです。

 試合時間が10分以上残っている段階での「切り替え」でしたし、2点差はひとつのミスで逆転されてしまう僅差なのですが、さすがにオールブラックス・フィフティーンはキッチリとやり切りました。
 マイボールとなれば、直ぐに相手陣深く蹴り込み、エリアマネジメントを展開したのです。

 試合時間残り4分頃からは、ニュージーランドは相手陣でのプレーを続けました。
 南アフリカという、世界屈指のチームに対して、終始ゴール前に押し込んだ状態でのゲームを継続できるというのは、ニュージーランドチームならではなのかもしれません。

 以上、雑感でした。

 前述のように、ニュージーランドチームは「負けないゲーム」を展開した形です。20-18の2点差ゲーム以上の差が、このゲームの両チームには存在したように感じます。
 「攻め捲ることにより発生するリスクを回避する」という、ワールドカップ・決勝トーナメントにおけるオールブラックスの戦い方が如何なく発揮されたゲームでした。(私などは、無類の攻撃力を誇るオールブラックスなら「点の取り合い」に持ち込んだ方が、より高い確率で勝てそうな気がするのですが)

 この「戦い方」を実践し、しっかりと勝利を捥ぎ取れるということ自体が、今大会のオールブラックスのチーム力の高さを示しているのでしょう。

 史上初の2連覇・史上最多3度目の優勝を目指して、オールブラックス2015の挑戦が続きます。
 今大会のタックルプレーにおいて、ボールに直接行く形が時折観られます。

 もともと、ラグビー競技におけるタックルプレーは、「ボールを保持している相手プレーヤーの動きを止めるため」に、ボールキャリアに向かって「バインド」していくものです。

 腕で相手プレーヤーを捕まえに行くバインドプレー無しに、ただプレーヤーにぶつかって行くプレーは反則となります。

 これまでは、まず相手プレーヤーの動きを止めて、その保持するボールを取りに行くというプレーが主体だったのです。

 ところが今大会では、始めから「ボールを狙って手や体を使う」プレーが増えているように感じます。

 こうしたプレーで「相手プレーヤーのファンブル」や「ノックオン」を狙っているようです。

 このようなプレーは、アメリカンフットボールのプレー、NFLのプレーで多く観られるものに似ています。
 このアメフトのプレーを参考にして、ラグビーにおいても行われるようになったのでしょうか。

 アメリカンフットボール競技においては、ボールキャリアがボールをファンブルすることは、直ぐにターンオーバーに結び付く可能性が高いプレーですから、極めて効果的なプレーということになります。
 NFLにおいては、全くバインドせず、ボールに直接ぶつかっていく、あるいはボールを掻き出す、プレーが多く観られるのも道理でしょう。

 一方で、ラグビー競技ではルールの違いから、ファンブルしたとしても、時にはタックルを行ったプレーヤー側のノックオンになったりしますから、アメフトに比べて「不確実性の高いプレー」ということになりそうです。導入に向けては注意が必要なプレーということになるのでしょうか。

 アメフトに比べて、「ボールを落とさせる角度」等、難しいプレーということになりそうですが、とはいえターンオーバーに向けてはひとつの有効な方策ですから、「ボールに直接行くタックル」がラグビーにおいて増加することが予想されます。「ボールを掻き出そう」としたり、「腕をボールに絡ませていく」プレーが増えてくるのでしょう。

 当然ながらこうしたプレーは、アメフトに比べてまだ発展途上に観えます。

 今後、世界中のトッププレーヤー達が「ラグビーにおけるボール自体へのタックル技術」を磨いて行くことになりそうです。
 今大会では、走ってパスできる「ロック」のプレーに注目が集まっています。

 もちろん、フランカーやNO.8というフォワードFW第3列は、従来からラグビー競技における「ボールの取り合いプレー」の中心的存在ですから、運動量も多く、所謂「FW戦」の主役でした。当然、走ってパスも自在に行ってきたのです。
 また、第一列2番のフッカーも様々な役割を果たしてきました。

 一方で今大会目立つのは、FW4番・5番のロックと呼ばれるプレーヤーの動きです。

 「ロック」といえば、スクラムプレーにおける「スクラムの重さ・安定感」を支えるプレーヤーであり、ラインアウトプレーにおいて長身を利してボールをキャッチしたりタップしたりする役割を負ってきましたから、「長身で体重が重い」所謂大柄なプレーヤーが多いのです。
 強豪国のロックプレーヤーともなると、身長2m以上(体重は100㎏を優に超えます)も珍しくありません、というか2m以上でなければならないといった時代であろうと感じます。

 大柄なプレーヤーが多いラグビーにおいても、一段大きいプレーヤーであるロックが、走ってパスをするのです。オフェンスラインの一角を占め、前進の為に大きな役割を果たしています。

 もちろん、近年のラグビーは、サッカー風に言えば「トータルフットボール」の時代ですから、フィフティーン全てのプレーヤーが様々な役割を果たして来ているのですけれども、ロックプレーヤーがランニングプレーにおいて縦横に活躍するというのは、新しい、今大会新たに数多く観られるようになった戦術であろうと思います。

 こうしたプレーが生まれてきた背景には様々な理由が存在するのでしょう。
 
 スクラムプレー自体の減少も、そのひとつかもしれません。
 準々決勝のニュージーランドとフランスの対戦では、そのゲームにおける最初のスクラム=ファーストスクラムが行われたのは、前半32分過ぎでした。ひょっとすると、前半には「スクラムが無い」かもしれないと感じながら観ていましたが、世界最高水準のゲームにおいて30分以上に渡ってスクラムが行われなかったのです。

 前述のように、「ロックはスクラムプレーにおける中心的プレーヤー」ですから、そのスクラムプレー自体が減少してきている中では、別のプレーが割り当てられるのも無理のないところでしょう。

 また、チームの攻撃プレーにおいて、「チームで最も大きなプレーヤー」が参加するのも、有効であろうと思います。大きくて重いプレーヤーが走って来るのを止めるのは、容易なことでは無い筈です。

 とはいえ、当のロックプレーヤーにとっては、走ってパスをするというプレーは、そう簡単なものでは無いでしょう。身長2mを超えるプレーヤーが「素早く動くこと」を期待されるのですから。
 今後、強豪チームのロックを目指すプレーヤーには、大変難しい身体能力が期待されることになるのでしょう。

 ワールドカップやオリンピックといった世界最高峰の大会は、どのスポーツ競技においても「最先端の戦術・技術」が展開されますし、当該スポーツの将来像をも予感させるものです。

 ラグビーWC2015においても、新しいプレーが随所に観られます。
 ワールドカップというのは、そういうものなのでしょう。
 ラグビーワールドカップ・イングランド大会は、10月18日までに準々決勝が行われ、ベスト4が決まりました。

・南アフリカ23-19ウェールズ

 大接戦でした。
 前半は13-12とウェールズが1点のリードで折り返しました。
 後半も一進一退の展開が続き、ウェールズチームが19-18とリードして迎えた後半35分に、南アフリカのデュプレア選手がトライを決めて逆転、そのまま押し切りました。

 ウェールズとしては、グループリーグGLのA組で故障者が続出し、ベストメンバーを組めない状態にも拘らず、ハイパント攻撃やダン・ビガー選手のドロップゴールなど、伝統国の力を如何なく発揮したゲームであったと感じます。

 南アとしては、全体にやや小粒で「攻め込まれると受け身に回ることが多い」という今大会のチームの弱点が、このゲームでも露見した形ですが、最後は勝利をものにするという「伝統の勝負強さ」は健在でした。

・ニュージーランド62-13フランス

 オールブラックスの圧勝でした。
 フランスチームは、前半こそ1トライを挙げて13-29と追い縋りましたが、後半10分にニュージーランドチームにトライを許すと、その後は守勢に回り、ゲーム残り20分からは一方的なゲームとなってしまいました。言葉は悪いのですが「切れてしまった」状態でしょうか。

 ニュージーランドは、計9トライを挙げて大差の勝利を収めました。
 ワールドカップにおける対フランス戦では、苦戦が多かった印象ですから、意外な大勝とも言えそうです。
 サヴェア選手を始めとする、個々のプレーヤーの圧倒的な能力の髙さが如何なく発揮されたゲームでした。

・アルゼンチン43-20アイルランド

 アルゼンチンチームが、持ち前の攻撃力を発揮して快勝したゲームでした。
 勝負は前半13分までに決まったように感じます。この13分間でアルゼンチンチームは17点を挙げて、17-0とリードしたのです。
 戦前、「ロースコアゲームに持ち込めれば」アイルランドチームが有利と予想しましたが、それが実現できなかったのです。

 大きなリードを許した後、アイルランドは反撃に移り、一時3点差まで追い上げましたが、一度火が付いてしまったアルゼンチンの勢いは止まらず、その後は差が開く形のゲームとなってしまいました。
 初のベスト4入りが期待されたアイルランドの戦いは終わりました。

・オーストラリア35-34スコットランド

 ワールドカップの歴史に残る大激戦でした。「逆転に次ぐ逆転」とは、こういうゲームを指すのでしょう。

 オーストラリアチームが先制しましたが、スコットランドチームが逆転し、前半は16-15とスコットランド1点リードで折り返しました。
 後半に入るとオーストラリアチームが猛攻を見せて逆転しました。総合力に勝るワラビーズが優位に立ったかと思われましたが、スコットランドチームが猛然と反撃に転じて再び逆転しました。

 残り3分を切って、スコットランドがリードしたままゲームは最終盤。ここでオーストラリアがPGを決めて、再度再度の逆転、試合時間の残りは30秒でした。

 スコットランドの健闘が際立ったゲームといえるでしょう。

 ベスト4・準決勝の組合せは、以下の通りです。

① 南アフリカVSニュージーランド
② アルゼンチンVSオーストラリア

 スプリングボックスとオールブラックスの対決となったゲーム①は、今大会これまでの試合内容を見る限り、オールブラックスの方に分がありそうですが、「やってみなければ分からない」という側面もあります。

 抜群の得点力を示しながら、決勝トーナメントに入ると「突然、得点力が落ちるゲーム」をオールブラックスが見せるというのは、いくつもの大会で現出してきたことなのです。
 組織的なプレーを得意とするニュージーランドチームですが、試合前半にその組織的な攻撃が抑え込まれた時、後半これを跳ね返すことは、あまり得意ではないようです。

 このゲームにしても、前半30分まで南アフリカチームが「伝統の守備力」を発揮して、ニュージーランドの攻撃をノートライ・1~2本のPGに抑え込めるようであれば、大接戦となるでしょう。

 南アフリカチームが自らのペースでゲームを展開できれば、残り10分まで縺れる「互角の勝負」となる可能性も有ります。

 大接戦を勝ち上がったオーストラリアチームと、持ち味を存分に発揮して準々決勝を快勝したアルゼンチンチームの対戦となったゲーム②ですが、こちらも見所十分です。

 ワラビーズは準々決勝で大苦戦しました。
 スコットランドの健闘は見事でしたが、オーストラリアの動きにはいつもの「切れ味」が無かったという見方もありそうです。「死の組・A組」の激闘の疲労が、チーム全体に残っていたのかもしれません。
 準々決勝を勝ったことで、ワラビーズにいつもの力が戻って来るとすれば、総合力に勝るオーストラリアですから、アルゼンチンを相手にしても分があるでしょう。

 一方のアルゼンチンチームは、アイルランド戦で抜群のパフォーマンスを示しました。得意とする「攻撃ラグビー」が炸裂したのです。
 欧州トップクラスの実力を保持するアイルランドを撃破したことは、チームに大きな自信を与えたことでしょう。

 アルゼンチンとオーストラリアのゲームは、「オーストラリアの疲労の回復度合い」次第という感じがします。

 アルゼンチンにとっては、決勝進出に向けて絶好のチャンスが到来したとも言えそうです。

 イングランド開催となった今大会で、ワールドカップ史上初めて「ベスト4進出チームが全て南半球のチーム」となったことは、少し皮肉なことですが、ラグビーの聖地たるトゥイッケナム・スタジアムで、南半球の4チームが激突するというのも、「ラグビー競技の長い歴史・世界中への普及」を感じさせる事実です。

 北半球の、特に欧州の各チームにとっては、今大会のプレーを十分に分析・研究し、従来のトレンドに囚われない新たなチーム造りを開始する時が来たのでしょう。
 ワールドカップ2015で、日本ラグビー史上初の「3勝」を成し遂げたエディ・ジョーンズヘッドコーチHCが退任し、次のHCの選任作業が始まりました。
 60人前後の候補者の中から選ばれると報じられています。

 今回は「次期HCの仕事」「次期HCに期待されること」を書いて行きたいと思います。
 特にラグビー競技に限定された内容では無く、「当たり前のこと」を書きそうですが、お付き合いください。

1. 戦略の立案・目標の策定

 ナショナルチームの監督の仕事としては、当然のものになりますが、実は最も難しいことなのではないかと思います。

① 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」
 有名な孫子の兵法の一文ですが、日本代表チームの「強み」と「弱み」をキッチリと把握し、チーム造りの大方針を立てる必要があります。エディ・ジョーンズHCの仕事ぶり中で、最も優れていたポイントのひとつであろうと感じます。

 肝心なのは「強み」と「弱み」の把握が正確かどうか、でしょう。「敵」、すなわち世界中の強豪チームの実力・作戦等々を十分に知っていなければなりませんし、日本チームの内情にも精通していなくてはなりません。

 ちなみに、孫子には「敵を知らず己を知らざれば百戦悉く危うし」という言葉も有ります。

② 目標達成の為に「為すべきこと」の明示
 次期HCに求められる大目標としては、日本開催となるワールドカップWC2019における「ベスト8進出」が挙げられるのでしょうが、「WC2019のベスト8進出」というのは、それ自体にはあまり意味の無いスローガンだと思います。大切なのは「ベスト8進出の為に為すべきこと」の明示でしょう。

 そう簡単には見つけられないポイントです。

③ 長期の目標と短期の目標
 目標には、達成のための期間が存在します。4年後までに達成すべき目標、1年後までに達成すべき目標、半年後までの目標、3か月後までの目標、1か月後までの目標、1週間後までの目標、そして今日達成すべき目標、等々、目標はきめ細かく具体的に策定されなければならないものでしょう。

 HCを始めとするチームスタッフは、毎日この目標策定をして行かなければなりません。「目標策定に追われる」という感じではないでしょうか。「寝ている暇もない」という感じかもしれませんが、ここがしっかりしていなければ、強いチーム造りは出来ないと思います。

 エディ・ジョーンズHCは、この課題を相当高いレベルで実現していたように観えます。私生活を相当犠牲にしていたのではないでしょうか。
 まさに「お疲れ様でした。ありがとうございました。」というところです。

④ 世代交代への対応
 4年間という期間は、長いようで短く、短いようで長い、ものでしょう。WC2015のメンバーの中でWC2019でもプレーできる選手が、どれくらい居るのかも含めて、メンバーの選定は重要なことです。

 WC2015後のインタビューで、エディ・ジョーンズHCは「WC2019日本大会で、日本チームがベスト8に進出するのは相当難しい」とコメントし、その理由として「大事なポジションのプレーヤーが居ない」と説明しました。
 全く、おっしゃる通りだと感じます。

 エディ・ジョーンズHCはWC2015を戦って見て、ベスト8に進出するチームと日本チームの「差」を肌で感じ、その差が極めて大きいことを改めて把握したのでしょう。

 両フランカーやNO.8のフォワード第3列とか、バックス陣とか、「ここにこうしたスキルの選手が複数居てくれれば」と、感じたのではないでしょうか。連戦と避けられない故障者の発生を考慮すれば、WCを勝ち抜いて行くには「肝心なポジションに複数の優秀なプレーヤー」が必要なことは、自明の理でしょう。

 エディ・ジョーンズHCの眼から、WC2019における日本チームをイメージした時に、プレーヤーの不足を痛感したということになります。

 日本出身プレーヤーで足りないのであれば、外国出身プレーヤーを登用していかなければなりません。そのためには「時間が不足」しているのです。早々に必要なスキルの、あるいは必要なスキルを4年間の内に身に付けて行ってくれるであろうプレーヤーを、日本に集めてこなければなりません。

2. 強化体制の構築

 チームを強化するためには、スタッフを充実させなければなりません。
 コーチ陣・メディカルスタッフを始めとするスタッフを集めなければならないのです。

 エディ・ジャパンにおける「スクラム担当コーチ(フランスから招聘)」の働きが素晴らしかったことは、よく知られていますが、日本チームに合ったコーチを世界中から発掘して招聘して行くことは、HCの大切な仕事でしょう。

 HCには、世界に通用する「プレーヤーを見抜く眼」とともに「コーチ・スタッフを見抜く眼」も必要なのです。そして、そうした人材に「日本に来たい」と感じさせる魅力も必要でしょう。
 相当難しい仕事です。

3. 個々のプレーヤーを鍛えること

 前述の戦略・目標の達成に向けて、個々のプレーヤーを鍛えていかなければなりません。

 もちろん、ハードなトレーニングを積み上げていくことになります。エディ・ジャパンのトレーニングの厳しさは、再三報じられている通りです。「オーストラリア代表チームでも2週間で音を上げるトレーニングを続けた」と言われます。凄いことです。

 トレーニングの量と共に、肝心なのはトレーニングの質です。あるトレーニングを10本行うとして、10本キッチリ行うか、8本目以降は「少し手を抜くか」では全く異なる結果となるのでしょう。

 「エディ・ジョーンズのトレーニング方法・内容」については、これまでに十分に把握・習得した、と日本のラグビー関係者は思っているのかもしれませんが、それはトレーニングの種類と量が記録に残っているだけで、「質」についての把握は難しいことでしょう。

 「質」の高いトレーニングを、選手に取り組んでもらうために、エディ・ジョーンズHCが何をしていたのか、ここがポイントです。このポイントは「HCの個性・人格」の領域に入りますから、「真似をすることがとても難しい」ところなのです。

 この監督・HCのもとなら「どんなに厳しいトレーニングにも耐えていこう」と選手が感じる人物でなければ、どんなに立派な「トレーニング内容」でも、求める効果は望めません。

 他のスポーツ競技を観ても、「名監督が去った後、チームが弱体化」する例は、枚挙に暇がありません。
 当該名監督に長期間に渡って教えを受け、「トレーニング内容は熟知している筈」の人物が後任となっているにも関わらず、チームが弱体化してしまうのです。
 「同じ練習を同じ量・同じハードさ」で実行しているのに何故?、ということになります。

 当たり前のことですが、それぞれの監督・HCの個性・人格は異なりますから、その違いに合わせた指導方法が必要なのです。「他人の真似」では、同水準の効果は得られないのでしょう。

4. ゲームにおける采配

 個々のゲームにおける采配が、HCにとって重要な仕事であることは間違いありません。

① 対戦するチームの戦力・メンバーを踏まえてのスターティングラインナップの選定
② 様々な状況に合わせた「交代方法」の準備
③ 当該ゲームにおける「戦術・スペシャルプレー」の選定・通知
④ 当該ゲームにおける戦い振りの策定・実施

 等々、検討しなくてはならない点は幾らでもあるのでしょう。
 ラグビーにおいては、HCはスタンドに居ますから、こうした準備も「事前」に行う点が多いのでしょう。
 「事前」に漏れなく準備するのは、容易なことでは無さそうです。

 今回は、ラグビー日本代表チームのヘッドコーチに求められる「仕事」について、簡単に考えてみました。やはり、「当たり前のことばかり」になってしまいました。
 細部に入り込めば、ページがいくらあっても足りない、極めて奥が深いテーマでしょう。

 「日本ラグビーの父」(と私が勝手に呼んでいます)であったエディ・ジョーンズ氏は、こうした役割期待に、相当な水準で応えてきたヘッドコーチであったと思います。
 日本ラグビー史上空前の実績が、それを明示しています。

 そのエディ・ジョーンズ氏が残した成績以上の成績を、WC2019で目指して行かなければならないのが「次期HC」ですから、エディ・ジョーンズ氏以上の能力を保持したHCを選任しなければならないことになります。

 とても難しいことなのでしょうが、そうした人物を発掘し選任して行くことが、協会に求められる役割期待ということになりそうです。

 前回は、エディ・ジョーンズという素晴らしいHCが就任しました。今回も、とても楽しみです。
 今大会で一気にブレイク?した感のある、日本代表チームのフルバック・五郎丸歩選手ですが、何と言っても「プレースキックの際の独特のルーティン」が注目を浴びています。

 両手を顔の前で合わせて、へっぴり腰?のような姿勢で構えるものですが、このフォームを観た時に、あのジョニー・ウィルキンソン選手に似ていると感じた方も多いのではないでしょうか。

 ジョニー・ウィルキンソン選手は、ワールドカップにおける歴代最多得点記録249点を誇るプレーヤーで、イングランドラグビーの至宝とも言える存在です。
 2003年のワールドカップ決勝戦で、試合終了間際にドロップゴールを決めて、チームを優勝に導いた存在でもあります。

 五郎丸選手は若き日にウィルキンソン選手と会い、現在のルーティンのヒントを得たとも伝えられています。

 遠目にはよく似たルーティンですが、細かいところは異なります。

 最も違う点は「手の形」でしょう。

 ウィルキンソン選手は片手を握りこぶし状にして、もう片方の手でそれを包み込んでいるように観えます。

 一方の五郎丸選手は、左手人差し指を真上に付きあげ「NO.1」を示すような形でセットし、右手をボールの軌道あるいは自身の脚の動きをイメージしているように何回か動かした後、左手に添える形です。
 結果として、左手の人差し指と右手の人差し指・中指が立っている形となります。右手の薬指は「両手を合わせた塊」に触れていたり、少し離れていたりするようです。立っている指は「3~4本」ということになります。

 おそらく両プレーヤーの意図していることには、違いがあるのでしょう。

 とはいえ、ルーティンの目的である
① 精神集中
② 練習通りの体の動きを確保すること

 を目指していることは間違いないと思います。

 特に、五郎丸選手がコメントしていた「体の真ん中・芯に力が集中するように」というポイントは、両プレーヤーに共通している「ルーティンの狙い」であろうと感じます。
 このポイントが、ウィルキンソン選手から五郎丸選手が学んだところなのかもしれません。

 五郎丸選手の「キック時のルーティン」は、今大会のエディ・ジャパン快進撃の象徴ともなりました。大人も子供も両手を合わせて真似をしていますし、この格好をしただけで、何も言わなくとも五郎丸選手だと分かるのです。
 日本のラグビーファンの心に深く刻まれ、世界中のラグビーファンにもインパクトを与えたことでしょう。

 イチロー選手が打席には行った時、「左手指で右肩のユニフォームをちょいと抓む」ルーティンは、MLBファンに憶えられているものですが、こうしたスター選手の独特な動き、普段の行動としては少し変な動きは、とても印象に残るものなのです。

 こうした「象徴となるルーティン」が生まれたこと自体が、我が国におけるラグビー人気の盛り上がりを如実に示す事象なのでしょう。
 今大会も、素晴らしいキッカーが登場しています。
 そのキック力・技術力の高さには、本当に驚かされます。

① オーウェン・ファレル選手(イングランド)
② ダン・ビガー選手(ウェールズ)
③ バーナード・フォーリー選手(オーストラリア)

 オーウェン・ファレル選手の対ウェールズ戦のキックは、見事でした。
 PG5本、ドロップゴール1本、コンバージョンゴールキック1本の計7本を悉く決めました。
 緒戦のフィジー戦と合わせて、9本連続の成功であったと思います。

 神経質そうなルーティンから、一気に落ち着いた雰囲気に変わり、キッチリと決めて行きます。
 蹴った後は、「決めて当たり前」のような空気が漂います。

 ウェールズのダン・ビガー選手も、グループリーグGL4試合で16本蹴って15本を成功させました。成功率は93.75%。
 オーストラリア戦の最後のペナルティーキックを外すまでは「15本連続成功」でした。

 バーナード・フォーリー選手も、GL4試合で19本蹴って17本を成功させました。成功率は89.47%です。
 いつも「ゴールの真ん中を通過するキック」という印象です。

 もちろん、ニュージーランドのダニエル・カーター選手など、他にも驚異的なキッカーが居るのですが、GL段階においては「死の組」であるA組のキッカー達、「極めて厳しいゲームが続き、疲労の極致に在りながら」しっかりと蹴ってくるプレーヤー達を挙げてみました。

 ファレル選手もビガー選手もフォーリー選手も、「当たり前のように」決めます。

 決める時は真ん中からです。ギリギリに入ったというショットは、とても少ない印象です。

 どちらかといえば、「外した時に不思議な感じが漂う」キッカー達だと思います。

 そして、ゴール前の短い=比較的容易なショットでも、とても慎重にプレーします。
 僅かなミスにより「(例えば)2点を追加できない」ことが、チームの勝敗に大きな影響を与える可能性があることを、十分に認識しているのです。

 こうしたプレーは、どれほどの才能と修練から生まれてくるのでしょうか。
 そして、何時の時代も世界の強豪国には素晴らしいキッカーが存在することに、感心させられます。

 決勝トーナメントにおいても、素晴らしいキックが沢山観られることでしょう。
 10月11日のゲームを最後に、グループリーグGLの戦いが終わりました。
 A組~D組の1位・2位チームが確定し、ベスト8進出チームおよび決勝トーナメントの組合せが決まりました。

 「死の組」と呼ばれたA組は、1位がオーストラリア、2位がウェールズとなりました。地元のイングランドは、ウェールズとの直接対決で25-28と逆転負けを喫したことが響き、「まさかのGL敗退」となりました。
 これまでの7大会すべてにおいてベスト8入りを果たしていたイングランドが、地元開催の今大会で初めて決勝トーナメント進出を逃すというのですから、A組がいかに厳しい組であったが分かります。
 オーストラリアとウェールズが見事に勝ち抜いたのですが、GLにおける厳しい試合の連続が、チームにどのような影響を及ぼしているのかが心配なところです。

 B組は、1位が南アフリカ、2位がスコットランドでした。
 南アフリカは、緒戦で日本相手に敗れ、「ワールドカップ史上最大の衝撃」と称される番狂わせを演じてしまいましたが、その後は安定した試合を続けました。サモアを相手に6トライ、アメリカを相手に10トライを挙げて圧勝し、スコットランドにも34-16と18点差を付けての完勝でした。まさに優勝候補の力を示した形です。
 スコットランドは緒戦の日本戦で5トライを挙げて大勝し、その後も安定した戦いを展開しました。

 C組は、1位がニュージーランド、2位がアルゼンチンでした。
 ニュージーランドは、緒戦のアルゼンチン戦こそ苦戦しましたが、その後は自在な攻撃を披露して圧勝を積み重ねました。その強さは、優勝候補筆頭の名に恥じないものでした。
 アルゼンチンもニュージーランド戦以外のゲームでは、圧倒的な力を示しました。近年、ベスト8の常連チームに成った感が有りますが、その力を今大会でも示した形です。

 D組は、1位がアイルランド、2位がフランスでした。
 アイルランドはGL最終戦でフランス相手に24-9と完勝しました。近時の6か国対抗で魅せた実力を、今大会でも発揮しています。現在のチームは、アイルランドラグビー史上でも屈指の強さなのでしょう。今大会のダークホース的存在となりました。
 フランスはイタリア・ルーマニア・カナダとのゲームでは安定した力を示しましたが、「少し得点力が不足」しているかなという印象でした。そして最終戦のアイルランド戦では、決定力不足が露わになってしまいました。

 ベスト8のチームを観ると、皮肉なことにウェールズ・スコットランドという「イギリスを構成するイングランド以外の出場チーム」がベスト8入りを果たしました。もちろん両チームとも、歴史と伝統を誇るラグビー強豪国ですから、何の不思議も無い進出です。

 ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカの南半球のラグビー大国3チームは、順当に決勝トーナメントに駒を進めました。オールブラックス、ワラビーズ、スプリングボックスは「常に強い」のです。

 アイルランドとアルゼンチンは、台風の目と言う感じでしょうか。特に、今大会のアイルランドチームは、優勝候補チームといえども油断できない存在でしょう。

 さて、ベスト8の組合せは以下の通りです。

① 南アフリカVSウェールズ(10月17日)
② ニュージーランドVSフランス(10月17日)
③ アイルランドVSアルゼンチン(10月18日)
④ オーストラリアVSスコットランド(10月18日)

 南アフリカVSウェールズは、南アフリカが有利でしょう。

 ウェールズがベストメンバーで臨むことが出来れば、良い勝負になると思いますが、何しろ「死の組」を勝ち上がる過程で、ウェールズには故障者が続出してしまいました。レギュラーメンバーが次々とグラウンドを後にしたのです。手負いのウェールズチームでは、スプリングボックスを倒すのは、容易なことではありません。

 ニュージーランドVSフランスは、ニュージーランドが有利でしょう。

 今大会のフランスチームは、やや得点力不足が否めません。
 加えて、ニュージーランドはGLで余力を残して戦いました。「ベストメンバーは決勝トーナメントに行ってから組む」と言わんばかりの戦い振りでした。「オールブラックスは地元大会以外では勝てない」というジンクス?を破りつつ、ワールドカップ史上初の「連覇」に向けて、準備万端というところでしょうか。

 アイルランドVSアルゼンチンは、概ね互角ですが、ややアイルランドが有利でしょう。

 アルゼンチンの攻撃力は今大会屈指のものです。試合開始20分以内に勢いに乗れば、アイルランドといえども容易な相手ではありません。
 一方で、アイルランドが伝統国の技術で「ロースコアゲーム」に持ち込めれば、総合力に勝る分、手堅く勝ち抜くことでしょう。

 オーストラリアVSスコットランドは、オーストラリアが有利でしょう。

 「死のA組」の影響がワラビーズにどれくらい残っているかは分からないところですが、地力面から観れば、オーストラリアの方が相当上だと思います。
 スコットランドとしては、守備を固めてロースコアゲームに持ち込み、「伝統の蹴り合い」の中から勝機を見出す形でしょう。

 以上、勝手な準々決勝予想でした。

 ラグビーワールドカップ2015イングランド大会は、佳境に入りました。

 素晴らしいゲームの連続でしょう。
 エディ・ジャパンは3勝1敗でグループリーグGLを戦い抜きましたが、B組の3位となってしまい、上位2チームに与えられる「決勝トーナメント進出」はなりませんでした。
 残念なことでした。

 今大会、3勝1敗の成績で決勝トーナメントに進出できなかったのは、日本チームだけでした。

 その理由は、A組・C組・D組には「4勝0敗」のチーム、全勝のチームが存在したのですが、B組には全勝チームが居なかったからです。

 何故、B組には全勝チームが存在しなかったかと言えば、「日本チームが南アフリカチームに勝つ」という、「ワールドカップ史上最大の番狂わせ」が発生したからに他なりません。

① もし、スコットランドが南アフリカに勝っていれば、スコットランドが4勝0敗となり、日本が2位となって、決勝トーナメントに進出することが出来ました。

② もし、サモアがスコットランドに勝っていれば、スコットランドは2敗となり、日本が2位となって、決勝トーナメントに進出できました。

 実際には①、②共に実現せず、3勝1敗で南アフリカ・スコットランド・日本が並ぶことになって、「ボーナスポイントの差」で日本が3位となったのです。

 では、日本チームもボーナスポイントを取れば良かったのではないか、ということになりますが、残念ながら「ブロッサムズには、まだそこまでの力は無い」ということでしょう。

 特に「1試合4トライ以上」に与えられるボーナスポイントに付いては、南アフリカやスコットランドにとっては、勢いに乗れば悠々と達成できる基準ですが、日本チームにとっては「達成が極めて困難」な水準です。

 実際に、日本チームはGL4試合で一度も1試合4トライを挙げることが出来ませんでした。
 日本チームと対戦した4チームとの間に大きな力量差を持つことが出来なかったことが原因です。
 力量上位の南アフリカ・スコットランドの両チームとの比較では、両チームの方が日本チームより力量上位ですし、サモア・アメリカとの比較でも「互角」と言って良いと思いますので、こうしたチームを相手に日本チームが1試合で4トライを挙げることは、極めて難しいでしょう。

 「ラグビーは地力がそのまま試合結果に結び付き易いスポーツ」ですので、対戦した4チームの中で最も力量が低いと見られていたアメリカ戦で、日本チームにとっての4戦で最多の3トライを挙げたことは、とても自然なことだと感じます。

 また、そういう特質を持ったスポーツにおいて、エディ・ジャパンが南アフリカを破ったことの偉大さ、異常さ?、を改めて感じます。

 では、今大会で日本チームが決勝トーナメントに進出する可能性が「最初から無かった」のかと言えば、そんなこともないと思います。

 前述の②が実現する可能性は有ったのです。

 サモアチームは33-36でスコットランドチームに苦杯しました。僅かに「3点差」です。
 スコットランドに「ひとつの大きなミス」が有れば、番狂わせの可能性が十分あったのです。
 しかし、さすがの伝統国スコットランドは、キッチリと勝ち切りました。

 決勝トーナメントに進出することは出来なかったとはいえ、GLで3勝を挙げたことは、ラグビー日本代表チームの「壮挙」です。
 過去7大会で1勝しか出来なかったチームが3勝したのです。世界中のラグビーファン・関係者が驚いていることでしょう。
 その大健闘の価値は、決勝トーナメントに進出できなかったからといって、いささかも色褪せるものでは無いでしょう。
 文句無しの「奇跡的活躍」なのです。

 一方で、前述の通り、ワールドカップに出場してくる各国チームと比較して、「GL3勝」に相当する力量差を付けたかと言えば、それも違うと思います。

 日本チームは、
① ほぼ「実力互角」のサモアチームとアメリカチームとの対戦で見事に勝利し
② 圧倒的に実力上位の南アフリカチームに「信じられないような」勝利を挙げた。

 というのが、今大会の成績であったと思います。決して、サモアやアメリカより「実力上位」になった訳では無いことを、しっかりと認識しておく必要があるでしょう。(日本のラグビー関係者の皆さんは「百も承知」のことでしょうが)

 WC2015で3勝を挙げたことで、地元開催のWC2019における日本チームの活躍が約束されたかのような論調が観られますが、油断は禁物というところです。

 今大会でも、これまでの7大会同様に1分3敗や1勝3敗、0勝4敗の可能性も十分あった訳ですから、今後4年間の日本チームの成長度合い次第では、WC2019のGLで全敗する可能性も有るのです。

 一方で、日本チームは「殻を破った」のですから、今後の成長次第ではWC2019におけるベスト8進出の可能性も有る、ということでしょう。今大会で1分3敗あるいは0勝4敗であったなら、その可能性は極めて低かったのですから。

 今大会のエディ・ジャパンの活躍は、掛け値無しに素晴らしいものです。決勝トーナメントに進出できなかったことは「結果論」に過ぎないものでしょう。

 一方で、2019年大会までの間に、「他国チームの成長」を上回る成長を遂げることが出来なければ、また2011年大会以前の「1勝を挙げることもままならないチーム」になってしまうのでしょう。

 彼我の力量は、極めて僅差なのです。

 厳しい書き方になってしまい恐縮ですが、2011年から2015年の間にエディ・ジャパンが成し遂げてきた大成長、今後4年間も少なくともそれに匹敵するかそれ以上の成長を実現し、2019年の日本大会では何としてもベスト8・ベスト4に進出していただきたいという、強い願いからの記事でした。

 頑張れ、ラグビー日本代表チーム!
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