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 先日、スーパーラグビーの主審を初めて女性が担ったという稿(9月11日付「[スーパーラグビー2020] 初の女性主審が笛!」)を書きましたが、その際に改めて、女子ラグビーワールドカップについて見直す機会を得ました。

 女子ラグビーワールドカップは、1991年に第1回大会が開催され、2017年まで「8回」を数えています。
 
・第1回1991年 優勝アメリカ 準優勝イングランド 開催国ウェールズ
・第2回1994年 優勝イングランド 準優勝アメリカ 開催国スコットランド
・第3回1998年 優勝ニュージーランド 準優勝アメリカ 開催国オランダ
・第4回2002年 優勝ニュージーランド 準優勝イングランド 開催国スペイン
・第5回2006年 優勝ニュージーランド 準優勝イングランド 開催国カナダ
・第6回2010年 優勝ニュージーランド 準優勝イングランド 開催国イングランド
・第7回2014年 優勝イングランド 準優勝カナダ 開催国フランス
・第8回2017年 優勝ニュージーランド 準優勝イングランド 開催国アイルランド

 こうして観てくると、ニュージーランドとイングランドが頭抜けた強さを魅せていることが分かります。

 大会開始後しばらくはアメリカとイングランドの優勝争いの時期があり、第3回にニュージーランドが優勝してからは、ニュージーランドの「4連覇」があり、その4連覇の内3回の準優勝がイングランドとなっていて、結果として、優勝回数ならば5回のニュージーランドと2回のイングランドとなり、準優勝ならばイングランドが5回と最多です。

 さすがに「ラグビーの母国」イングランドが強さを魅せているのですが、世界一となれば、「ラグビーが国技」のニュージーランドが勝っているという形です。

 その「最強」ニュージーランドチームも、2014年第6回大会では、予選プールBにおいてアイルランドチームに敗れ、決勝トーナメントに進出できませんでした。
 この大会でも本命視されていて、実際にとても強いチームだったのですが、やはり「何が起こるか分からない」のが世界大会なのでしょう。

 第9回大会は2021年に予定されています。
 開催国はニュージーランドです。女子ラグビーワールドカップが史上初めて南半球で開催される予定なのです。

 尚、2017年・第8回大会は、第7回から3年後に開催されていますが、これは「男子のワールドカップの中間年」に開催されることとなったからです。
 今後も、このローテーションが続くのでしょう。

 我らが日本代表チームは、1991年・第1回大会から参加しています。
 そして、第2回大会ではプールAでスウェーデンから、ワールドカップ初勝利を挙げました。
 その後は、なかなか本大会に出場できない時期が続きましたが、2017年の第8回大会に久し振りに登場しました。結果は、プールCで3戦全敗でしたけれども、日本女子ラグビー「復活」への手応えを感じさせる戦い振りでした。

 女子のラグビーワールドカップ2021ニュージーランド大会(史上初の南半球開催)が、とても楽しみです。

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 9月9日付の「ラグビーコラム:スーパーラグビーに歴史的できごと、初の女性主審ペレットさんが笛を吹いた」(田中浩氏著、SANSPO.COM)を興味深く読みました。
 スーパーラグビーSRオーストラリア大会の8月28日のゲーム、ブランビーズVSウェスタンフォース戦で、エイミー・ペレット氏が、女性として史上初めて主審を務めたとのこと。

 素晴らしいニュースだと感じます。

 記事には、「・・・むくつけき大男相手にも毅然とした態度で、臆せずに反則を取っていた。」と評されていました。

 30歳で母でもあるペレット氏は、もともとラグビー選手でしたが故障の為プレーヤーを引退し、14歳から笛を吹き始めたとのこと。
 2014年に女子ワールドカップ決勝の主審を務め、2016年7月にSRのアシスタントレフェリーとなり、リオデジャネイロ・オリンピックや女子欧州6か国対抗などでも、数多く主審を務めてきているとのこと。

 選手と共にフィールドを走り続け、判定が難しいプレーを「間近」で観ながら判断して行く、ラグビー競技の主審の仕事は、体力をも含めて、とても大変な役割であることは、誰もが分かっていることでしょう。
 この記事の中にも、「・・・トライにつながりそうな場面でのポジショニングの甘さが若干気になったが、・・・」という指摘がありました。
 ワールドカップ2019日本大会においても、各ゲームの主審の方々は、トライシーンなどではプレーの1m以内に居て、覗きこみながら判定をしているシーンが度々観られました。そうしたポジショニングは、瞬時の判断で取るものなのでしょうから、簡単なことではないことは自明です。
 ペレット主審も、ゲーム経験を重ねながら、世界トップクラスの審判に成長して行くものなのでしょう。

 前述のような様々なキャリアを積み上げながら、ついにSRという「男子の世界トップクラスのゲーム」でも笛を吹くこととなったのです。
 女子ワールドカップの主審遂行から「6年の月日」を要しての、私には、「快挙」であると感じられます。

 ラグビーの女子ワールドカップは、2019年8月から「女子」を取っての表記となりました。

 ラグビー競技においては、男女の区別を少なくしていこうという考え方があり、それが実行されているのでしょう。

 もちろん、この「動き」を前進させることは容易なことではありませんが、当該競技を発展させていこうというムーブメントとして、とても興味深いものだと感じます。

 7月3日、ALLBLACS.COMでビッグニュースが報じられました。
 2021年1月開始のトップリーグにおいて、ニュージーランド・オールブラックスのボーデン・バレット選手が、サントリー・サンゴリアスでプレーするというのです。

 ワールドカップ2019のオールブラックスにおけるバレット選手の活躍は、素晴らしいものでした。(本ブログ2019年11月7日付の記事「[ラグビーワールドカップ2019-33] どこにでも顔を出す ボーデン・バレット選手」をご参照ください)
 この大会ではフルバックFBでプレーすることが多かったバレット選手ですが、その「変幻自在」のプレー振りは、まさに「世界のトッププレーヤー」でした。

 前述の記事にも書きましたが、オールブラックスが攻撃に移る瞬間、テレビ画面に必ずと言って良いほど「映る」のです。
 常にオールブラックスの「攻撃の起点」になっているという感じでした。
 横浜総合国際競技場で観戦した準決勝・イングランド戦でも、右に左に大きく動き、イングランドディフェンスラインに向かって、何度も果敢な突進を魅せてくれました。

 そのスピードと運動量、そして局面を分析し対応する速さと正確さ、はスバ抜けているのでしょう。
 その判断力と優れたフィジカルが相俟って、他に類を観ない「ボーデン・バレットのプレー」を生み出しているのです。
 2度の世界年間最優秀賞受賞も、さもありなん、といったところです。

 身長187cm・体重92㎏という恵まれた体躯を誇る世界屈指のバックスプレーヤーが、トップリーグに登場します。

 楽しみと言う以外に、言葉が見つかりません。
 新型コロナウイルス禍の中で、新たなスポーツ大会・イベント・ゲームが、日本国内および世界中で殆ど無い状況下、NHKを始めとする各テレビ局の皆さんが過去の名シーンを採り上げるようになっています。

 今回は、NHK・BS-1で5月6日に放送された「『あの試合をもう一度・スポーツ名勝負』第43回ラグビー日本選手権大会2回戦 早稲田VSトヨタ自動車」を観て行きましょう。

[2006年2月21日・秩父宮ラグビー場(東京)]
早稲田大学28-24トヨタ自動車
(前半21-14、後半7-10)

 日本選手権大会が、社会人の1位と学生の1位のチームがワンマッチで戦っていた時代は、1996~97年シーズンで終了し、1997~98年シーズンには社会人の上位3チームと学生の上位2チームの5チームでの争いになり、その後も出場チーム数が拡大して行きました。

 もともと「社会人チームと学生チームの力量差が広がった」ことが、こうしたレギュレーションの変更に繋がったと言われていますけれども、力量上位の社会人チームの出場チーム数が増加して行ったために、日本選手権の本戦において学生チームが社会人チームに勝つことが難しくなって行きました。
 特に、社会人リーグ、あるいはトップリーグの上位チームは、学生チームにとっては「厚い壁」となったのです。

 そうした中で、大学選手権を制した早稲田大学チームが、トップリーグ2位のトヨタ自動車チームを破ったのが、この試合でした。

 日本選手権において、学生チームが社会人チームのトップクラスを撃破したのは、1988年の早稲田大学チームによる東芝府中チームを破っての優勝以来のことでした。

 このゲームは「18年振りの快挙」と呼ばれたのです。

[早稲田大学チームの先発メンバー]
1. 前田航平選手
2. 青木佑輔選手
3. 畠山健介選手
4. 内藤徹選手
5. 後藤彰友選手
6. 豊田将万選手
7. 松本允選手
8. 佐々木隆道選手
9. 矢富勇殻選手
10. 曽我部佳憲選手
11. 首藤甲子郎選手
12. 池上真介選手
13. 今村雄太選手
14. 菅野朋幸選手
15. 五郎丸歩選手

[トヨタ自動車チームの先発メンバー]
1. 山本正人選手
2. 七戸昌宏選手
3. 豊山昌彦選手
4. 平塚純司選手
5. トロイ・フラベル選手
6. 菅原大志選手
7. 阿部亮太選手
8. フィロ・ティアティア選手
9. 麻田一平選手
10. 廣瀬佳司選手
11. 山本剛選手
12. 難波英樹選手
13. 遠藤幸佑選手
14. 内藤慎平選手
15. 水野弘貴選手

 このゲームは、とても風が強かったのです。
 2万人を超える大観衆で埋め尽くされた、東京・神宮外苑の秩父宮ラグビー場は、正面スタンドから見て左から右、電光掲示板から反対側に向けて、とても強い風が吹いていたのです。キックに大きな影響を与えるレベルの強風でした。

 そして、ゲーム前半は早稲田大学チームが風上となったのです。

 このゲームの全体の流れを決めたのは、「試合開始から7分間の攻防」であったと考えています。

 曽我部選手のキックオフでゲームが始まりました。

 前半1分も経たないうちに早稲田チームのラインアウト、これは綺麗に決まって、早稲田チームが攻めます。

 そして前半2分、今度はトヨタ自動車チームのラインアウト。
 身長190cmを越えるプレーヤーを3名も揃えているトヨタチームが絶対の自信を持っているラインアウトプレーです。
 ところが、このボールに早稲田チームがからみ、ボールを奪いました。
 ボールが投げ込まれる位置を十分に把握したうえでの「奪取」プレーでしたが、見事に決まりました。

 さらに前半3分、再びトヨタボールのラインアウト。
 再び早稲田チームに絡まれましたが、何とかトヨタチームがボールを確保したかに観えました。
 しかし、これが「ノットストレート」の反則となって、ボールは早稲田チームのものとなりました。

 前半4分、前述のプレーで早稲田ボールとなってのスクラム。
 このゲームのファーストスクラムが、ハーフウェイラインからトヨタ陣に少し入った地点で組まれたのです。

 社会人チームが学生チームに対して絶対の自信を持っているのが、スクラムプレーです。
 パワーはもちろんとして、経験により積み重ねられるテクニックも、社会人チームが大きく上回るとされているのです。
 ところが、このファーストスクラムにおいて、トヨタチームは「スクラムを潰した」という反則(コラプシング?)を犯してしまいました。
 早稲田チームにペナルティーキックPKが与えられました。

 このPKから、前半5分、早稲田チームはトヨタ陣右サイド・22mライン内側でラインアウトを得ます。
 このボールをキッチリと確保した早稲田チームが、ドライビングモールで前進を図ったのです。パワーで勝る筈のトヨタチームが押されます。
 早稲田チームは、モールが止まったところで、NO.8佐々木選手がボールを出し、左に展開しました。
 ヤトミ選手や佐々木選手が突進し、ヤトミ選手はトヨタゴールに2m以内まで迫りました。
 早稲田チームの縦の突進を、トヨタチームがなかなか止められないのです。

 ここでトヨタチームに反則が生まれ(オフサイド?)、ゴール正面で早稲田チームのボールとなりました。
 早稲田チームは、チョン蹴りから早いリスタートを行いましたが、レフェリーがこれを認めず、ボールはゴール前に戻されました。

 このペナルティをどうするか。早稲田チームが話し合いを行った末、ペナルティーゴールPGを狙うこととなりました。
 前半7分のことでした。

 狙うのはフルバックFBの五郎丸選手。顎を骨折していましたのでヘッドギアを付けた五郎丸選手の姿も、とても懐かしいものです。
 五郎丸選手にとっては比較的簡単な、正面やや右寄りからの短いキックでしたので、これはしっかりと決まりました。

 早稲田がトヨタを3-0とリードしたのです。

 試合開始からこのPG成功までの7分間に、大袈裟に言えば、「ゲームのエッセンス」が凝縮されていると思います。

① ラインアウトでの優位

 トヨタチームは、2度のラインアウトで一度も成功できませんでした。
 身長差から生まれる筈の優位を生かすことが出来なかったのです。
 これは、早稲田チームによる「事前の研究の賜物」であろうと思います。
 トヨタチームが、ゲーム状況によって「何人目の選手に投げ込むことが多いか」を研究し尽くしたのではないでしょうか。

 一方、早稲田チームは2回のラインアウトを綺麗に成功させています。
 トヨタチームは、競り合うこともしなかったように観えます。
 トヨタチームとしては、「ワセダのラインアウトは好きにやらせておけばよい。ラインアウト後のボールに働きかけよう」という方針だったのかもしれません。
 自らのラインアウトを確保することにも、自信を持っていたのでしょう。

 この試合の前半8分以降も、早稲田チームはトヨタチームのラインアウトに絡み続け、トヨタチームは自慢の高さを生かすことが出来ませんでした。
 
② スクラムでの健闘

 この7分間では、スクラムは1回だけでした。
 1回だけでしたが、この1回目・このゲームのファーストスクラムで、早稲田チームは上手い対応を魅せたのです。
 真っ直ぐ押す力ならば明らかに優位にあるトヨタチームのスクラムに対して、僅かに「ずらしながら」、僅かに「引いた」のでしょう。もちろん、スクラムにおいて意図的に「引く」ことは反則ですが、意図的にやっているように観えない形で、トヨタチームのパワーを分散させた形でしょうか。(このゲーム放送の解説者・砂村氏のコメントを参考にして書きました)

 そして、この後も早稲田チームは「巧みなスクラム」を継続しました。

 スクラムプレーの強化に際して、最も重要なプレーヤーは「第1列」、1~3番の選手達です。早稲田の前田選手、青木選手、畠山選手が、社会人相手に戦って行ける力を身に着けていたのでしょう。特にフッカー青木選手のリーダーシップが発揮されていたのであろうと思っています。

 大学生チームが社会人チームに健闘するゲームにおいては、スクラムでの互角の戦いが重要な要素です。
 例えば、1988年の日本選手権、大学生チームが社会人チームに勝利して「日本一」に輝いた、史上最後のゲームですが、この時の早稲田大学チームのフォワードFW第1列、永田隆憲選手、森島弘光選手、頓所明彦選手の活躍は見事でした。強力な東芝府中チームのFWと互角に渡り合ったのです。「永田・森島・頓所の第1列」は、我が国の大学ラグビー界における「伝説」になっていて長く語り継がれる存在であると、私は考えています。

 また1986年、この早稲田による日本一の2年前に、大学生チームとして日本一に輝いた慶応義塾大学チームも、トヨタ自動車チームを相手に巧みなスクラムを魅せてくれました。
 トヨタゴール前でのスクラムにおいて、トヨタのコラプシングを誘い、以降このゲームで、トヨタチームはスクラムを押すことが出来なくなったと言われています。

 大学生チームが、強い社会人チームと「互角」に渡り合っていく条件のひとつを、このゲームの早稲田チームはしっかりとクリアしていたのでしょう。

③ コンタクトプレーでの互角の戦い

 前半7分までの間に、早稲田チームはトヨタゴール前に再三迫りました。
 矢富選手は、ゴール寸前まで到達したのです。

 「横のワセダ」が展開ラグビー繰り広げ、時に縦に突進してゲインを続けました。
 この「ゲイン」を続けたことがポイントでしょう。

 これらの数分間のプレーで、早稲田チームの選手たちは「やれる」と確信し、トヨタチームの選手たちは「こんな筈では・・・」と感じたのであろうと思います。
 個々のコンタクトプレーにおいて、「やれる」と実感したことが、このゲームにおける早稲田チームの最大の勝因だと思います。
 ラインアウトやスクラムの優位だけでは、強敵を相手にしての勝利は無理でしょう。

 ゲームは前半12分となりました。
 ここまでのボール支配率は、早稲田75%、トヨタ25%でした。風上をも味方にした早稲田チームが明らかにゲームを支配していたのです。

 そして前半14分、早稲田チームはトヨタゴール前正面でペナルティを得て、五郎丸選手が2本目のPGを決めました。
 早稲田チームが6-0とリードしました。

 前半20分を過ぎましたが、ここまでゲームはほぼトヨタ陣内で行われました。
 風上を利しての早稲田チームのエリアマネジメントが、とても上手く行っていたのです。

 そして前半24分、トヨタゴール前の早稲田ボールラインアウトから、早稲田がモールを組み押しました。このモールが動きます。やや左に向かって、トヨタゴールに迫り、このままゴールラインを切って、トライとしました。
 大学生チームが社会人トップクラスのチームを相手に、ドライビングモールからトライを奪ったのです。
 パワー面でも「互角」というのは、凄いことです。

 ゲームは早稲田の11-0となりました。

 「こんな筈では・・・」と感じていたトヨタ自動車チームに、少し焦りが見えたような気がします。

 そして前半29分、トヨタチームに初めてといって良いチャンスが訪れました。
 左サイドをフルバックFB水野選手が突進、中央のフラベル選手にパス、フラベル選手は早稲田のプレーヤーを弾き飛ばしながら走り、トライに結びつけました。
 ニュージーランド出身、身長197cm・体重120㎏という、当時ならば圧倒的な体格(現在でも十分に大きい)のフラベル選手の力が示されたトライでした。
 こんなに「簡単に」トライが取れるということを明示したにも拘わらず、フラベル選手やトヨタチームの選手達に笑顔はありませんでした。
 「何故、こんな苦戦を強いられているのだろう」という思いが引き続き強かったのではないかと考えています。

 トヨタチームに11-7と追い上げられた早稲田チーム、これほどにゲームを支配していても僅かに「4点差」しかなかったわけですが、早稲田チームは、それまで通りのゲームを続けました。

 前半31分、トヨタゴール前10m辺りからの早稲田ボールのラインアウト。
 これをしっかりと保持して、再びドライビングモール。トヨタゴール前5mまで押し込んでSH矢富選手がボールを出し、横のSO曽我部選手にパス、曽我部選手は左に回す動きを見せながら、真っ直ぐ縦に走り込み、そのままトライ。
 トヨタ守備陣の僅かな綻びを突いたプレーでした。

 コンバージョンキックも決まって18-7と、早稲田チームがリードを広げました。

 続く前半35分、再び五郎丸選手のPGが決まって、21-7と早稲田のリードは2トライ・2ゴール差となりました。
 試合の流れが、早稲田チームに傾いたのです。

 前半はこの後も、早稲田チームが攻めましたが、前半終了間際に自陣ゴール前からトヨタチームが右サイドに展開、水野選手がハーフウェイラインを越えて突進し、WTB内藤選手が突進、ティアティア選手にボールが繋がって、そのままトライ。
 1本目のトライ同様の「一気のトライ」は、トヨタチームの底力を感じさせるものでしょう。

 この後、廣瀬選手のコンバージョンキックも決まって、前半は21-14、早稲田チームが7点のリードで終わりました。

 前半終了間際のトヨタ自動車チームのトライは、試合の流れを大きく引き戻したものに感じられました。
 今度は「風上」となるトヨタチームの、後半の反撃が予想されたのです。

 しかし後半10分まで、早稲田チームは得点を許しませんでした。
 風下での懸命のディフェンスが続いたのです。

 そして後半11分、トヨタスタンドオフSO廣瀬選手からのパスを早稲田FW内藤選手がインターセプト、そのまま60m位を走り切り、トライを奪いました。
 とてもロックプレーヤーとは思えない快走でした。

 早稲田が28-14と再びリードを広げます。

 その直後の後半13分、今度は早稲田SO曽我部選手からのパスをトヨタWTB内藤選手が奪って突進、そのままトライしました。

 トヨタが28-21と再び追い縋ります。

 この2つのトライは、共に相手SOのパスを奪ってのトライでした。
 熱戦における、両チームプレーヤーのとても冷静な対応でしょう。

 とはいえ、この展開は「互角」でした。

 そもそも、社会人トップクラスのチームと大学生チームが「互角」のゲームを行うこと自体が「異例」なことでしょうから、ゲームは明らかに早稲田ペースだったと言って良いのでしょう。

 後半20分を過ぎて、トヨタチームが攻め、早稲田チームが守る時間帯が増えました。
 
 そして後半25分、トヨタの廣瀬選手がPGを決めて、28-24と4点差に追い上げました。
 ワントライで逆転可能な点差です。
 トヨタチームとしては「逆転できる」と考えていたことでしょう。

 しかし、ここからも早稲田チームは、守りに入ることなく、良く攻めました。
 矢富選手の突進から、ドライビングモールを多用して「時間を使う」攻めでした。
 まさに、清宮監督が言うところの「相手にボールを渡さなければ失点は防げる」という戦略を、戦術としてゲームで展開したのです。まさに、攻撃は最大の守備なのです。

 後半35分を過ぎて、トヨタの攻勢が続きましたが、ここからは「ワセダ伝統の守り」が観られました。
 自陣22mラインの内側での、必死の守備プレー、早明戦で再三眼にしてきた粘り強い守備が続いたのです。

 後半39分、トヨタが攻めます。早稲田ゴールまで5m。
 早稲田はNO.8佐々木選手を中心として円陣を組み、ロスタイム2分(この頃はロスタイムがありました)の戦いの準備をしました。

 後半41分、早稲田ボールのラインアウト。
 ここでも早稲田はしっかりとボールを確保して、モールプレーで「時間を使い」ます。
 ラインアウトの優位が、最後の最後まで物を言ったのです。

 後半42分を過ぎて、トヨタチームのラストプレーが延々と続きます。
 トヨタチームの意地。逆転への執念。
 しかし後半44分04秒、トヨタチームにノックオンが生まれ、ノーサイド。

 ゲームは28-24で早稲田チームが勝利しました。

 まさに「好ゲーム」でした。

 秩父宮ラグビー場に入場してくる時に、「眦を決していた」早稲田大学チームと、数人が笑みを浮かべていたトヨタ自動車チームの心持ちの違いが、前半のプレーに現れ、前半7分までにペースを掴んだ早稲田チームが、80分間を押し切ったゲームであったと考えています。

 こうしたタイプの接戦は、社会人と学生のトップクラスのチーム同士の対戦において、学生チームの戦前の研究がゲームにおいて実を結んだ時にしか、現出しないものだと感じます。

 さすがに、見応え十分のゲームでした。

 NHKを始めとする各テレビ局には、過去の素晴らしいスポーツ関連コンテンツが、数多く在るのでしょう。
 こうした時期には、それらをどんどん採り上げ、放送していただきたいと思います。

 新型コロナウイルス禍のために、多くのスポーツイベントが延期・中止なっている時期は、撮り貯めた録画を自宅で楽しむのが良いようです。
 今回はラグビーワールドカップ2011プールAの一戦、日本代表チームの初戦です。

[2011年9月10日・ノースハーバースタジアム(ニュージーランド)]
フランス47-21日本

 2011年大会の初戦となったゲームは、両チームともにベストメンバーに近い選手を揃え、戦いました。

 当時世界ランキング4位という強豪フランス代表チームを相手に、ジョン・カーワンヘッドコーチHC率いる日本体表チームが、どのようなプレーを披露するのかに、日本のラグビーファンの注目が集まりました。

[日本チームの先発メンバー]
1. PR平島久照選手
2. HO堀江翔太選手
3. PR畠山健介選手
4. LOトンプソンルーク選手
5. LO北川俊澄選手
6. FL菊谷崇選手
7. FLマイケル・リーチ選手
8. NO.8ホラニ龍コリニアシ選手
9. SH田中史朗選手
10. SOジェームス・アレジ選手
11. WTB小野澤宏時選手
12. CTBニコラスライアン選手
13. CTB平浩二選手
14. WTB遠藤幸佑選手
15. FBウェブ将武選手

[フランスチームの先発メンバー]
1. PRバルセラ選手
2. HOセルヴァットゥ選手
3. PRニコラ・マス選手
4. LOピエール選手
5. LOリオネル・ナレ選手
6. FLデュソトワール選手
7. FLアリノルドキ選手
8. NO.8ラカフィア選手
9. SHヤシュヴィリ選手
10. SOトランデュク選手
11. WTBメダール選手
12. CTBエステバネズ選手
13. CTBルージュリー選手
14. WTBクレール選手
15. FBエマンス選手

 セカンドジャージ、真っ白な上下に身を固めたフランスチームは、一見すればイングランドチームにも観えましたが。そのフランスが最初から日本陣内に攻め込みました。

 前半1分過ぎ、エステバネズ選手が一気に日本ゴールに迫りましたが、堀江選手が良くタックルし、これを止めました。エステバネズ選手の悔しそうな様子が、フランスチームの気持ちを表していたと思います。

 この後も、フランスのフルスロットルの攻撃が続き、前半4分、最初のトライが生れました。LOピエール選手の左中間へのトライですが、ひとりの選手がゲインラインを突破すると、数多くの選手がフォローし、パスを繋げてトライに結び付けるという、いかにもフランスチームらしい分厚い攻撃でした。

 7-0とフランスが先制しました。

 日本チームが反撃に移り、前半10分、フランスゴール前でペナルティーを獲得、これをSOアレジ選手が狙います。やや右サイドでしたが、それ程難しいPGではなかったと思いますが、これをアレジ選手は左に外しました。
 このゲームのアレジ選手のキックは不調で、この後も外すことが多かったのです。
 やはり、ワールドカップの舞台と言うのは、言葉には表せないプレッシャーを選手に強いるものなのかもしれません。

 ゲーム運びという視点からは、このPG失敗はとても大きかったと思います。

 日本チームのPG失敗直後、前半11分、日本チームのパスをカットしたトランデュク選手が、そのまま右中間にトライ。
 フランスチームが14-0とリードを広げました。

 このまま一方的なゲームになる雰囲気が漂いました。

 しかし、日本チームは良く踏ん張ったのです。

 この後のフランスの猛攻を凌ぐと、前半17分、フランス陣内で再びペナルティーを獲得し、ジェームス・アレジ選手がPGを決めました。
 2011年大会における、日本チームの最初の得点です。

 この後、フランスチームが2PGを決め20-3とリードを広げましたが、日本チームはトライを許さず、一進一退の試合展開に観えました。

 そして前半30分、日本チームに初トライが生れます。
 フランス陣向かって左側から右に展開し、アレジ選手がキックパスを狙ったボールがフランスの選手に当たり、跳ね返ってきたボールを保持したアレジ選手が、そのまま飛び込んだのです。
 軽妙なトライと言って良いと思います

 日本チームは20-8と追い上げます。

 しかし、残念なことに、アレジ選手はこのコンバージョンも外してしまいました。
 日本チームにとっては、とても痛い失敗です。

 追い上げられたフランスチームは直ぐに攻撃に移り、前半34分、右に展開して、切り札のWTBクレール選手が右隅にトライしました。
 さすがにこのコンバージョンは入らず、25-3となりました。

 前半終了間際に、日本チームはアレジ選手がPGを決めて、25-11で折り返すこととなりました。

 さて、後半が始まりました。
 後半開始から25分までが、このゲームにおける日本チームの見せ場でした。

 後半3分前後のフランスチームの猛攻をしのいだ日本チームは、フランスゴール前にボールを運びます。
 後半9分、堀江選手の突進から田中選手アレジ選手と繋いで、アレジ選手がフランス守備陣を切り裂いてポスト下にトライ。
 コンバージョンも決めて、25-18と追い上げます。

 この後は一進一退の攻防が続きましたが、フランスチームにやや疲れが観えて、日本が押し気味でした。
 
 そして後半17分、アレジ選手がPGを決めました。
 ゲームは24-21の「4点差」という接戦になったのです。

 日本の21点は、全てアレジ選手によるものでした。
 キックを外したことは惜しまれますが、アレジ選手のこのゲームでの活躍は、見事なものだったのです。

 後半17分から25分までの8分間、日本チームがゲームを支配しました。
 「逆転」を目指して、攻めに攻めたのです。フランスチームも「たじたじ」の攻めであったと思います。
 しかし、残念ながら追加点を挙げることは出来ませんでした。

 後半25分を過ぎて、フランスチームが日本陣内にボールを運びました。
 そして、後半26分ヤシュヴィリ選手がPGを決めました。
 フランスチームは28-21と7点差としたのです。

 4点差であれば1トライで逆転ですが、7点差でも1トライ+1ゴールで同点と、それ程致命的な失点ではないかと思われたのですけれども、4点差とした後の「攻め疲れ」、心身に及ぶ攻め疲れがでたのか、ゲームはこの後、一方的なものとなってしまいました。

 後半20分のリオネル・ナレ選手の右中間へのトライを皮切りに、次々にトライを重ね、点差を広げました。
 後半40分を経過した後にもトライを重ねて、通算7トライ。

 ゲームは47-21というスコアでノーサイドを迎えました。

 終わってみれば大差のゲームでしたが、日本チームは世界の強豪チーム(この大会の準優勝チーム)であるフランスチームを相手に、65分までは互角の展開を魅せたのです。

 日本ラグビーにとって、「こうすれば戦える」という手応えを、ワールドカップの場で初めて体感した試合だったのではないでしょうか。

 この大健闘が、2015年大会のプール戦3勝、南アフリカチーム撃破に、そして2019年日本大会における決勝トーナメント進出に繋がっているように感じるのです。

 この試合のメンバーには、ワールドカップ2019の代表選手が数多く入っています。
 堀江選手、トンプソンルーク選手、マイケル・リーチ選手、田中史朗選手・・・。
 皆「若き戦士」です。

 ラグビーワールドカップ2011ニュージーランド大会のプールA、日本代表VSフランス代表の一戦は、日本ラグビーが世界に飛躍するきっかけとなったゲームだったのでしょう。
 
 新型コロナウイルス禍のために、多くのスポーツイベントが延期・中止なっている時期は、撮り貯めた録画を自宅で楽しむのに最適です。
 今回はラグビーワールドカップ2011の準決勝です。

[2011年10月15日・イーデンパーク(ニュージーランド)]
フランス9-8ウェールズ

 2011年のニュージーランド大会準決勝、フランス代表チームが接戦を制して、決勝に駒を進めたゲームです。
 プールAで2勝2敗と苦しみながら決勝トーナメントに進んだフランスが、準々決勝でイングランド、準決勝でウェールズと、世界ランキング上位のチームを連破しての決勝進出でした。

[ウェールズチームの先発メンバー]
1. PRジェンキンズ選手
2. HOヒュー・ベネット選手
3. PRアダム・ジョーンズ選手
4. LOチャータリス選手
5. LOウィン・ジョーンズ選手
6. FLリディエイト選手
7. FLウォーバートン選手
8. NO.8トピー・ファレタウ選手
9. SHマイク・フィリップス選手
10. SOジェームズ・フック選手
11. WTBシェーン・ウィリアムズ選手
12. CTBジェイミー・ロバーツ選手
13. CTBジョナサン・デービス選手
14. WTBジョージ・ノース選手
15. FBハーフペニー選手

[フランスチームの先発メンバー]
1. PRパティストゥ・プクス選手
2. HOセルヴァットゥ選手
3. PRニコラ・マス選手
4. LOパスカル・パペ選手
5. LOリオネル・ナレ選手
6. FLデュソトワール選手
7. FLボネール選手
8. NO.8アリノルドキ選手
9. SHヤシュヴィリ選手
10. SOモルガン・パラ選手
11. WTBパリソン選手
12. CTBメルモズ選手
13. CTBルージュリー選手
14. WTBクレール選手
15. FBメダール選手

 ゲームは前半6分に動きました。
 ウェールズ代表チームのSOフック選手からWTBノース選手にキックパスが通り、ウェールズが左サイドから攻め込みます。
 ちなみに、この時ノース選手は19歳。ワールドカップ準決勝での最年少出場記録を更新していました。

 この後フランスチームがオフサイドの反則を犯し、ジェームズ・フック選手がPKを狙います。難しい角度からでしたが真ん中から決めました。
 ウェールズが3-0と先制します。

 そして前半18分、このゲームを左右するプレーが出ました。
 ラインアウトから攻め込むフランスのWTBクレール選手に、ウェールズのFLウォーバートン選手がタックル、タックルの動きの中でクレール選手を大きく持ち上げ、地面に叩きつけたのです。
 両チームの選手が入り乱れ、一触即発の空気が流れました。
 大柄なウォーバートン選手が小柄なクレール選手を投げ飛ばしたプレーは、明らかに「やり過ぎ」でしょう。
 気合が入り過ぎたウォーバートン選手の、残念なプレーでした。

 ウォーバートン選手はレッドカードを受けて、一発退場となりました。

 キャプテンを失ったことも大きいのですが、ウェールズチームは、この後60分以上をひとり少ない体制で戦わなくてはなりません。

 ゲームは、大きくフランスチームに傾きました。

 前半20分、フランスのパラ選手がPGを決めました。
 3-3の同点です。

 前半33分、パラ選手がPGを決めました。
 6-3とフランスが逆転。

 前半は、このまま終了しました。
 
 後半9分、パラ選手がPGを決めました。この日3本目の成功。
 9-3とフランスがリードを広げました。

 15人対14人と人数で優位にあるフランスチームが、じりじりと差を広げる展開。
 短時間ならともかく、60分以上も一人少ない状況で戦うウェールズチームに、次第に疲労が蓄積するのは止むを得ないと思いましたが、ウェールズの「驚異的な反攻」がここから始まったのです。

 後半18分、右サイドのラインアウトからのウェールズの攻撃、SHフィリップス選手がゲインラインを突き抜けて左中間にトライを決めました。素晴らしいスピードでした。

 しかし、ここでコンバージョンを失敗してしまうのです。
 蹴ったのはCTBジョナサン・デービス選手でした。
 ウェールズチームは「逆転のショット」を、チームの大ベテラン、精神的支柱である、38歳のデービス選手に託したのです。
 キックは向かって左ポストにまっすぐ飛び、左に弾かれました。

 このゲームでは、ウェールズチームのキックの失敗が目立ちました。
 前半には、フック選手が2本のPKを狙い失敗しています。
 このコンバージョンキックも含めて8点が入らなかったことになります。
 入っていれば、その後の展開が違うのですから、「たら」を言っても仕方がないのですが、それでも惜しまれるところです。

 後半残り20分間、ウェールズは攻めに攻めました。
 どちらのチームが14人なのか分からない程の攻撃でしたが、フランスチームは良く守り、ゲームは9-8のまま終了しました。

 ノートライに終わったフランスチームは、本来の出来では無かったとも言われましたが、それは「展開次第」ということではないかと考えます。
 ひとり多くなり、リードしたのですから、慎重な試合運びになるのは自然なことなのでしょう。

 一方のウェールズチームにとっては、やはりキャプテンの退場が響いたということとでしょう。
 そうした逆境にも、全く怯むことなく攻め続けた所に、ウェールズラグビーの誇り、を観た気がします。

 「9-8」、ロースコアの激闘でした。
 新型コロナウイルス禍のために、多くのスポーツイベントが延期・中止なっている時期は、撮り貯めた録画を自宅で楽しむのに最適です。
 今回はラグビーワールドカップ2011の準々決勝を観ました。

[2011年10月9日・ウエストバックスタジアム(ニュージーランド)]
オーストラリア11-9南アフリカ

 ワールドカップ2007の優勝チームであり、この大会でも、2007年優勝時のメンバーを多数揃えて優勝候補の一角を占めていた南アフリカ・スプリングボクス(当時世界ランキング2位)を、若手主体のオーストラリア・ワラビーズ(同3位)が破った、当時は「番狂わせ」と言われた一戦です。

 いつの時代も「勝負強く」「試合巧者」と呼ばれるスプリングボクスが、よもやの敗戦を喫したゲームを観て行きましょう。

[南アフリカチームの先発メンバー]
1. PRスティアンカンプ選手
2. HOジョン・スミット選手
3. PRヤニー・デュプレッシー選手
4. LOダニー・ロッソウ選手
5. LOマットフィールド選手
6. FLブルソー選手
7. FLバーガー選手
8. NO.8ピエール・スピース選手
9. SHデュプレア選手
10. SOモルネ・ステイン選手
11. WTBハバナ選手
12. CTBデヴィリアス選手
13. CTBジャック・フーリー選手
14. WTBピーターセン選手
15. FBパトリック・ランビー選手

[オーストラリアチーム先発メンバー]
1. PRケプ選手
2. HOモーア選手
3. PRアレグザンダー選手
4. LOヴィッカーマン選手
5. LOホーウィル選手
6. FLエルソム選手
7. FLポーコック選手
8. NO8ランディケ・サモ選手
9. SHウィル・ゲニア選手
10. SOクーパー選手
11. WTBイオアネ選手
12. CTBマッケイブ選手
13. CTBアシュリークーパー選手
14. WTBオコナー選手
15. FBビール選手

 南アチームを見ると、前回大会優勝メンバーが11名居る、豪華なラインナップです。
 SHのデュプレア選手や前回大会得点王のWTBハバナ選手など、世界屈指のプレーヤーがズラリと並びます。
 このチームの全プレーヤーのキャップ数を合計すると「836」であると報じられました。
 そして、ひとつのチームのキャップ数の世界最高記録であるとも報じられました。
 つまり、この時の南アフリカ代表チームが、ラグビー史上最多のキャップ数を誇るチーム、経験量ならばどんなナショナルチームにも負けないチームだったのです。
 凄いとしか言いようのないチームです。

 一方のワラビーズは、特にバックスに若い選手が並びました。
 ハーフ団はSHゲニア選手とSOクーパー選手の23歳コンビ、この大会ここまで5トライのアシュリークーパー選手、WTBオコナー選手、FBビール選手と、若手が並び、これをベテランのLOヴィッカーマン選手やNO.8サモ選手がどのように牽引して行くのかが、注目されたのです。

 ゲームはスプリングボクスペースで始まりました。

 オーストラリアゴール前に迫り、トライを狙います。余裕さえ感じられるほどの攻撃でした。歴戦の勇者の戦い振りなのでしょう。
 しかしオーストラリアチームはこの攻撃を良く凌ぎました。
 ワラビーズの「前に出るディフェンス」に後退を余儀なくされた南アフリカチームには、「おやっ」という空気が漂いました。

 オーストラリアチームが反撃に出て、南アフリカゴール前に迫ります。
 そして、南アのラインアウトからのゴール前の密集。
 そのラックからボールが飛び出し、これをオーストラリアチームが保持して左に回します。
 そしてLOホーウィル選手が左中間にトライ。
 前半11分、キャプテンの見事な突進でした。

 WTBジェームズ・オコナー選手(21歳)のコンバージョンキックは外れましたけれども、オーストラリアチームが5-0とリードしました。

 南アフリカチームとしては、「やるな」という感じであったと思いますし、自分達のプレーが出来ていないという意識も有ったことでしょう。

 さらに、オーストラリアチームの攻撃が続きました。
 FBビール選手の突進で、大きく前進し、反則を誘って、PGを決めたのです。オコナー選手のキックでした。
 オーストラリアが8-0とリードを広げたのです。

 ビール選手の突進は、グラウンドの「ど真ん中」を突いたものでしたが、このゲームでは、ワラビーズの若手による「縦の突進」が大きくエリアを獲得するシーンが観られました。
 ベテラン揃いのスプリングボクスとしては、「いずれ左右に振るであろう」と観て、対応するディフェンスを張っていたのでしょうが、若きワラビーズは「真っ直ぐに走り込んだ」のです。そのスピードとパワーが、「経験」を上回っていた印象です。

 南アフリカチームは反撃に出て、前半20分にオーストラリアゴール前に迫りました。
 波状攻撃が続き、ゴールまで1mを切った密集の中で、オーストラリアチームがターンオーバー、ピンチを凌ぎました。
 密集の中でのボールの動きを観ると、やや反則に近いかなとも思われましたが、レフェリーからは観えなかったのかもしれません。
 いずれにしても、ワラビーズの密集戦でのボール争奪戦におけるパワー・技術は素晴らしいものでした。この後も、何度もターンオーバーを示現しています。
 当然ながら、密集に集まるスピードが、僅かですがスプリングボクスを上回っていたのでしょう。

 時計が進み、前半も残りわずかとなりました。

 私は、この時期2010年前後は、ラグビー競技において「守備技術が攻撃技術を上回っていた時代」であると考えています。例えば、この大会の決勝は8-7でニュージーランドチームがフランスチームを破って優勝しています。
 つまり「8点差」は、とても大きな差なのです。
 南アフリカチームにとっては、「早いうちに得点を返し、差を詰めておかなければならない」状況でした。
 南アフリカのパワフルで巧みな攻撃が続き、オーストラリア陣内でのプレーが増えてきました。
 そして前半38分、SOモルネ・ステイン選手がPGを決めたのです。
 ゲームは8-3となりました。

 当時、世界屈指のキッカーであったモルネ・ステイン選手は、この前にもハーフウェイライン上からの50ヤードを超えるPGに挑んでいました。これは惜しくも右に外しましたけれども、その素晴らしいパフォーマンス、キックの安定感は「さすが」でした。

 ゲームは8-3で折り返しました。

 後半に入り、南アフリカが攻めオーストラリアが守るというシーンが多くなりました。
 世界チャンピオンとしては「負けられない」ゲームなのです。

 しかし、オーストラリアチームの守備はとても頑強でした。南アフリカチームにトライを許さないのです。
 オーストラリア陣内での、一進一退の攻防が続きました。

 そして後半14分、南アフリカはペナルティーを得、PGをモルネ・ステイン選手がしっかりと決めました。
 8-6となったのです。
 これでゲームは、全く分からなくなりました。

 再び、スプリンクボクスが攻めます。
 様々な技を駆使した多彩な攻め。
 これをワラビーズが懸命に凌ぐというプレーが続きました。

 そして、まさにこの時の南アフリカチームらしい得点が観られたのです。
 後半19分、オーストラリアゴール前でモルネ・ステイン選手がドロップゴールDGを決めたのです。
 高い弾道の「綺麗なDG」でした。
 名手モルネ・ステイン選手の面目躍如でしょう。

 ゲームは、南アフリカチームが9-8と逆転しました。トライが取れないならキックで、という、まさに「試合巧者」のプレーなのです。

 後半20分を過ぎても、南アフリカチームは攻め続けました。
 「攻撃は最大の防御」と言わんばかりの攻撃継続でしたが、一方で、選手達にやや疲労が見え始めました。ベテラン主体のチームの、ひとつの弱点でしょう。膝に両手をあてて、呼吸をしている選手が見え始めたのです。

 後半28分を過ぎて、ゴール前に釘付けと言う印象であったオーストラリアチームが、前進を始めました。
 ゲームは、南アフリカ陣内に移動しました。

 そして後半30分、オーストラリアボールのラインアウトにおいて、南アLOロッソウ選手が引き落としの反則、ワラビーズはペナルティーを得て、これをオコナー選手が慎重に蹴り込みました。
 40ヤード位はあったと思いますが、ゲームを左右する場面における、見事なパフォーマンスでした。

 「勝負強く」「試合巧者」であるスプリングボクスを再逆転したのです。
 若きワラビーズの素晴らしい戦いと言って良いでしょう。

 「負ける訳には行かない」南アフリカチームは、再び攻勢に出ます。
 これをオーストラリアチームが必死に守る、最後の10分間が始まりました。
 相変わらず、ボールへの集散は、オーストラリアが勝りました。
 ボールの争奪戦でもオーストラリアが勝っていたと思います。

 後半40分、通算80分の瞬間、ボールはハーフウェイライン上にありました。
 オーストラリアボールのスクラム、これを蹴り出して、ワラビーズの勝利が決まりました。
 若きワラビーズが、熟練のスプリングボクスを破ったのです。

 オーストラリア代表チームは、「縦への素早くパワフルな突進」とボールへの素早い集散、そして守っては「ゲインライン突破を許さない堅い守備」が印象的でした。
 ディフェンディングチャンピオンをノートライに抑え込んだのです。

 パワー、技術共に世界トップクラスの南アフリカチームを相手に、「ゲインを切らせない」というディフェンスは、丁度、ワールドカップ2019日本大会の準決勝、イングランドVSニュージーランド戦において、イングランドチームがオールブラックスを相手に魅せた「鉄壁の守備」と同じレベルのパフォーマンスに観えました。
 若きワラビーズにとっての、最高のディフェンスプレーだったのではないでしょうか。

 南アフリカ代表チームにとっては「まさか」の敗戦であったかもしれません。
 一度逆転していただけに、とても残念な敗戦でしょう。
 「勝つことに慣れたチーム」に、僅かな油断が有ったのかもしれません。
 ワールドカップ2011ニュージーランド大会で、オールブラックスとの雌雄を決するつもりであったろうスプリングボクスの「連覇への野望」が、準々決勝で潰えたのです。
 
 ハーフウェイラインから始まったゲームが、ハーフウェイラインでノーサイドを迎えたのです。

 素晴らしいゲームでした。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い(このフレーズも相当数多くなってきましたが・・・)、日本ラグビー・トップリーグも試合を延期していますから、トップリーグに関する話題も、個々のプレーヤーの日常に関するものが多くなっています。

 3月6日配信のTHE ANSWERには、南アフリカ・スプリングボクス代表のセンタースリークオーターバックCTBジェシー・クリエル選手の話題が採り上げられていました。

 クリエル選手が自身のツィッターで「新鮮な寿司に舌鼓を打った」ことを明かしていたのだそうです。
 板前さんから提供される、新鮮な赤身、これでもかと並べられた雲丹を前に、「日本が大好きな理由の一つは、新鮮なお寿司です。なんてすばらしい経験だ」とコメントしていると。

 確かに、美味しいお寿司を好きな日本人も多いのですが、それにしても「雲丹」まで好きとなると、これは本格的な感じがしますし、それは「もう止められない」レベルでしょう。

 26歳にして46キャップを誇るクリエル選手、現世界チャンピオンのスプリングボクスのキャップですから、「世界一のセンター」の証でしょう。
 現在キヤノン・イーグルスに所属しているクリエル選手ですが、2015~16年シーズンにはNTTドコモ・レッドハリケーンズで活躍していました。

 ジェシー・クリエル選手は、「日本が大好き」なのです。

 毎年、実質的な北半球のラグビー最強国チームを決める「6か国対抗」大会が、1月31日に開幕しました。

 ワールドカップ2019日本大会の興奮も冷めやらぬ時期ですが、整斉と実施される有り様に、「1882年開始の大会」の歴史と伝統を感じます。

[1月31日・カーディフ プリンシパリティスタジアム] 
ウェールズ42-0イタリア

[2月1日・ダブリン アビバスタジアム] 
アイルランド19-12スコットランド

[2月2日・スタッドドフランス] 
フランス24-17イングランド

 開幕ゲームは、2019年の優勝チーム・ウェールズとイタリアチームの対戦となりましたが、これはウェールズが圧勝しました。42得点も凄いのですが、「零封」が素晴らしい。
 最多優勝回数39回を誇るウェールズチームが、ウェイン・ピヴァック新ヘッドコーチHCを迎えて、2020年も優勝候補の筆頭なのでしょう。

 第2戦は、アイルランドチームがスコットランドチームを振り切りました。
 このところの強さを勘案すれば、アイルランドが勝利したのは順当なのでしょうが、ワールドカップ2019のプール戦で3-27と大敗を喫したスコットランドチームの、復活への道程が始まったことが感じられる試合内容でしょう。
 アンディ・ファレル新HCを迎えたアイルランドチームが、好スタートを切りました。

 第3戦は、フランスチームがイングランドチームに24-17で快勝しました。
 ワールドカップ2019大会では、いまひとつの成績であったフランスチームが、2023年の自国開催に向けて動き出した感が有ります。
 ミスが目立ったイングランドチームとしては、次戦以降の立て直しが待たれるところです。

 ワールドカップ2019を終えて、新体制となったチームも多いのですが、これから3月14日の最終戦に向けて、どのチームにとっても「厳しい4ゲーム」が繰り広げられるのです。

 1月12日に開幕した2020年のトップリーグは、1月18日・19日に第2節が行われました。

[1月18日・豊田スタジアム]
パナソニック・ワイルドナイツ40-20トヨタ自動車ヴェルブリッツ

 このゲームの観客数は37,050人に上り、トップリーグ新記録でした。
 凄い動員力です。

[1月18日・秩父宮ラグビー場]
サントリー・サンゴリアス22-10NTTコミュニケーションズ・シャイニングアークス

 このゲームが行われた1月18日、東京は極寒でした。
 試合中のスタジアムの気温は2.6℃と報じられました。雪も舞っていました。

 これまでなら、観客は少なかったであろうと思われますが、このゲームにも15,826人の観客が来場したのです。開門前には600mの行列が出来ていたとも報じられています。
 来場したファンの皆さんは、ヒートテック下着や携帯用カイロを多用して、暖を確保した上でスタジアムに向かったとは思いますが、それでも3℃以下の観戦は相当大変なことでしょう。
 「それでも観たい」という魅力が、現在のトップリーグには備わっていることになります。

 もちろん、この2試合以外のゲームにも沢山の観客が集まり、大歓声が響き渡っていたことでしょう。

 2019年のワールドカップ日本大会で旋風を巻き起こした日本代表チームのメンバーが出場していることも、大きいのでしょう。
 ワイルドナイツには、フォワードFWの稲垣啓太選手、ウィングスリークオーターバックWTBの福岡堅樹選手、ヴェルブリッツには、フランカーFLの姫野和樹選手、サンゴリアスには、スクラムハーフSHの流大選手、フルバックFBの松島幸太朗選手らの「我らが代表」が登場したのです。

 さらに、皆様ご承知の通り、ワールドカップ2019において他国のチームメンバーであったプレーヤー、世界最高峰のプレーヤー達が多数出場していることも、ファンの注目を集めているのでしょう。
 南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアといった、世界の強豪チームのプレーヤーを眼前で観ることが出来るというのは、素晴らしいことです。

 こうしたプレーヤーが揃うことで、結果として、とてもハイレベルなプレーを観ることが出来るのが、現在のトップリーグ人気の「ベース」であることは間違いありません。

 私も、観たいゲームのチケットを求めようとしましたが、時すでに遅し。
 2019年の11月から手配していなければ、なかなか良い席のチケットは入手困難です。
 ワールドカップ後のラグビー熱を十分に予想していなかったことを、後悔しています。

 チケットの入手が困難になっているトップリーグは、大盛況と言って良いでしょう。

 そして、最も大切な「プレーのレベル」が上がっている状況を見ると、人気はますます上がると予想されるのです。
 
 「日本ラグビーの将来」を考え、各種の施策を展開するために、絶好の時期が来ていると思います。
 
 
[1月7日・決勝・東大阪花園ラグビー場]
桐蔭学園23-14御所実業

 第99回全国高校ラグビーフットボール大会の決勝は、初優勝を目指す奈良の御所実業高校チームと、初の単独優勝を目指す神奈川の桐蔭学園高校チームの戦いとなり、桐蔭学園チームが逆転で勝利を収めました。

 前半は御所実業チームの、後半は桐蔭学園チームの、ゲームでした。

 御所実業は、前半、持ち味のフォワードが力を発揮して2トライ・2ゴールを挙げて14-3とリードしました。
 一方の桐蔭学園は、後半、持ち味のバックス・フォワード一体となった攻撃で3トライ・1ゴールを挙げ、御所実業を無得点に抑え、後半20-0、計23-14で優勝したのです。

 桐蔭学園チームにとっては、第90回大会決勝(2010年)で、東福岡高校チームと31-31の両校優勝以来2度目の全国制覇ですが、第93回大会(2013年)、第95回大会(2015年)と決勝で苦杯を嘗めてきましたから、何時の頃からか、「悲願の単独優勝」というフレーズが叫ばれてきたのです。
 両校優勝から「3度目の正直」でした。

 御所実業チームにとっても、第92回大会(2012年)、第94回大会(2014年)と決勝で敗れ、惜しくも優勝が出来ていなかったのですが、残念ながら今回も全国制覇はなりませんでした。

 そういう意味では、第92回から第95回まで、4大会の準優勝チームが激突したゲームでもあったのです。

 この両チームが素晴らしいのは、決して「自分達のやり方・持ち味」を変えないという点かもしれません。

 両チームとも、全国高校ラグビー界を代表する存在です。
 これからも、御所実業のラグビー、桐蔭学園のラグビー、を全国のラグビーファンに魅せ続けていただきたいものです。

[1月11日・決勝・国立競技場]
早稲田大学45-35明治大学

 21世紀初の早明対決となった、第56回全国大学ラグビーフットボール選手権大会決勝戦は、早稲田大チームが前半で31-0と大きくリードし、後半の明治大チームの反撃を凌いで勝ち切りました。
 実力互角の対戦において、早稲田大チームの持ち味である「試合巧者」を存分に発揮したゲームであったと感じます。

 早大チームが、前半、相手チームの調子が出ないうちに得点を重ねるという試合運びは、大舞台において時折見られるものです。
 かつて、関東学院大学チームを相手にした決勝でも、同様の試合運びで実力上位と言われたチームを倒しました。

 2019年12月の関東対抗戦での早明戦では、明治大チームに完敗していた早稲田大チームとしては、「後手に回ったディフェンス」「ラインアウトの不出来」といった敗因をひとつずつ丁寧に改善し、自らの強みであるスピードに磨きをかけて、このゲームに臨んだことでしょう。

 もちろん、こうした対策を講じたからと言って、本番でそれを発揮することは容易でないことは当然ですし、対策が上手く行ったからと言って「勝てるものでもない」ことも自明でしょう。
 こうした対応策実施の上に、「勝つ為の戦術・戦法」が必要な訳ですが、それが「先手を打つこと」であったのでしょう。

 そういう意味では、前半9分のスクラムハーフSH斎藤選手のペナルティーゴールPG成功→先制の3点が大きな意味を持ったと思います。このゲーム唯一のPGによる3点は、試合終了まで大きな意味を持ちました。

 その後、前半32分にはモールから押し込みトライを奪いました。
 このプレーは、前半戦の明大フィフティーンの「困惑」を如実に示したものでしょう。

 大袈裟に言えば、「何が何だか分からないうちに」メイジは31失点し、前半は「何も出来なかった」のです。
 こうした、マジック?のような試合運びが、ワセダの試合巧者ぶりを示しています。
 日本の大学ラグビーをリードし続けるワセダラグビーの「伝統の力・ノウハウ」と言っても良さそうです。

 戦術的に観れば、
① 中央部分の守備ラインの厚み確保と2人で行くタックル
② 攻撃時の「明治守備ラインの僅かなズレ」を見出して、ひとりひとりが少しでもゲインラインを突破すること

 を励行したように観えました。

 もちろん、これらをプレーするための個々のプレーヤーの俊敏性・柔軟性も十分でしたので、早大チームは大舞台に向けてのコンディショニングも上手く行ったのでしょう。

 明大チームは、後半になって反撃、5トライを重ねましたが、早大チームは「ノーサイドの瞬間に1点でも上回っていれば良い」とでもいうようなゲームコントロールを続けたように観えました。
 既に最多優勝回数記録を保持しているとはいえ、「大学日本一」のタイトルの重みを十分に認識し、ライバルである明治大チームの強さを十分に把握した上での、試合運びでしょう。

 また、反則の少ない好ゲームでした。
 さすがは、「日本大学ラグビー界の看板カード」なのです。

 5万7千人を超える大観衆で埋め尽くされた新・国立競技場における、初めてのラグビーの大試合。
 「空席がひとつも無いように」観えました。

 これ程「チケットを購入した人が必ずスタジアムに足を運んだ」ゲームというのも、滅多に無いものでしょう。

 ラグビーワールドカップRWC日本大会において、日本代表チームが決勝トーナメントを決めたのが、スコットランド代表チームとのゲームでした。
 前回のワールドカップにおいて、日本チームの決勝トーナメントを阻んだ、本当に「厚い壁」に、日本チームは再び挑んだのです。
 そして、見事に破りました。
 
 このゲームにおける、日本のラグビーファン、いや日本国民全体の盛り上がりは、それは凄いものでした。衆目が集中する中で、素晴らしいプレーを連発していただいた、ブレイブブロッサムズの各選手達には「感謝」の一語しかありません。

 日本ラグビー史に燦然と輝く「栄光のフィフティーン」を観て行きましょう。

 10月13日、プールA第4戦、横浜国際総合競技場で行われた日本VSスコットランドのゲームは、日本代表チームの悲願である決勝トーナメント進出に向けての「最後・最大の壁」でした。

 ここまで3戦して3勝とプールAの首位を走ってきた日本チームですが、このゲームを落とすと、決勝トーナメントへの道が閉ざされる可能性が高かったのです。
 それでは、3勝して敗退した2015年大会の二の舞になってしまいます。予選リーグ最終戦の相手も、2015年大会と同じスコットランド代表チームでしたから、日本代表の底力が試される大一番でした。

 そして、ブレイブブロッサムズは、このゲームを28-21で勝利しました。
 アイルランドとスコットランドという「2重の壁」を突破し、日本ラグビーがまだ観たことのない世界=決勝トーナメント進出を果たしたのです。

 日本ラグビー史上に燦然と輝く勝利。

 このゲームに出場したプレーヤーは、まさに「栄光のフィフティーン」なのです。

[先発メンバー]
1. PR 稲垣 啓太
2. HO 堀江 翔太
3. PR 具 智元
4. LO トンプソン ルーク
5. LO ジェームス・ムーア
6. FL リーチ マイケル
7. FL ピーター・ラブズカフニ
8. NO.8 姫野 和樹
9. SH 流 大
10. SO 田村 優
11. WTB 福岡 堅樹
12. CTB 中村 亮土
13. CTB ラファエレ ティモシー
14. WTB 松島 幸太朗
15. FB ウィリアム・トゥポウ

[リザーブメンバー]
16. 坂手 淳史
17. 中島 イシエリ
18. ヴァル アサエリ愛
19. ヘル ウヴェ
20. ツイ ヘンドリック
21. 田中 史朗
22. 松田 力也
23. 山中 亮平

 アイルランド戦と違うのは、先発の6番FLフランカーにリーチマイケル選手が座り、NO.8に姫野選手が居て、11番WTBに福岡選手、15番フルバックFBにトゥポウ選手が居ることです。

 どちらがどうと言うことはありませんが、キャプテンが居る分だけ、スコットランド戦の方が「しっくりくる」のでしょうか。

 リザーブには、アイルランド戦には入っていなかったツイ選手が居ます。
 ツイ選手のメンバー入りも、しっくり来ます。(私の勝手な感想です)

 このメンバーで、2015年大会の一次リーグで大敗を喫したスコットランドを破ったのです。

 この試合に向けて、日本国内では「ラグビー熱」が盛り上がりを見せていました。
 ワールドカップのゲームをその目で見て、日本チームの活躍を見聞きしている内に、ラグビーの人気が「日に日に」上昇したのです。

 そしてスコットランド戦は、本当に多くの日本のサポーターが応援し、その応援にチームが見事に応えたという点で、日本のあらゆるスポーツを通じても、最も「日本国中を沸かした」ゲームだったのではないでしょうか。
 多くの日本国民の記憶に、本当に深く刻まれたゲームでした。

 「2019年ワールドカップのスコットランド戦メンバー」、素晴らしい響きです。
 2019年最大のスポーツイベントといえば、ラグビーワールドカップRWC日本大会でしょう。
 日本代表チームは、予選リーグを4戦全勝で勝ち抜き、史上初めてベスト8・決勝トーナメント進出を果たしたのです。
 4戦全勝の快挙実現に向けて、プールAの各チームとの対戦はどれも非常に厳しいものであったことはいうまでもありませんが、ポイントとなったのは、アイルランド代表チームとスコットランド代表チームに対する勝利であったことは、間違いないでしょう。

 ラグビー強豪国チーム、歴史と伝統を誇る、ヨーロッパの2チームとのゲームでの、ワールドカップにおける勝利は、長く語り継がれるものであることも、間違いないでしょう。

 今回はそのひとつ、アイルランドチームとのゲームの、日本チームのメンバーを観て行きましょう。

 9月28日、プールA第2戦、小笠山総合運動公園エコパスタジアムで行われた大一番、日本VSアイルランドのゲームは、この大会で決勝トーナメント進出を目論む日本代表チームにとって、最初のとても「厚い壁」でした。

 このゲームを19-12で勝利した日本チームは、ベスト8への第一歩を印したと言って良いでしょう。

 この「歴史的なゲーム」に出場したメンバーは、日本ラグビー史に名を刻む「栄光のフィフティーン」です。

[先発メンバー]
1. PR 稲垣 啓太
2. HO 堀江 翔太
3. PR 具 智元
4. LO トンプソン ルーク
5. LO ジェームス・ムーア
6. FL 姫野 和樹
7. FL ピーター・ラブズカフニ
8. NO.8 アマナキ・レレイ・マフィ
9. SH 流 大
10. SO 田村 優
11. WTB タマキ ロマノ ラヴァ
12. CTB 中村 亮土
13. CTB ラファエレ ティモシー
14. WTB 松島 幸太朗
15. FB 山中 亮平

[リザーブメンバー]
16. 坂手 淳史
17. 中島 イシレリ
18. ヴァル アサエリ愛
19. ヴィンピー・ファンデルヴァルト
20. リーチ マイケル
21. 田中 史朗
22. 松田 力也
23. 福岡 堅樹

 ビッグゲームに臨んだ23名の桜の戦士達です。
 ここに名を連ねたことは、プレーヤーにとっても大きな名誉でしょう。

 そして、大会前には世界ランキング1位に居て、優勝候補の一角を占めていた、ラグビー強豪国であるアイルランドチームと互角以上の戦いを披露し、勝ち切ったのですから、当然ながら「伝説のメンバー」なのです。

 先発メンバーで、まず目に付くのは、キャプテン・リーチマイケル選手が居ないことでしょう。
 後に、「コンディションが整わなかった」と報じられましたが、この頃リーチマイケル選手は不調だったのでしょう。日本チームの不動の6番フランカーFLリーチマイケル選手が出場できない中で、姫野選手がカバーし、姫野選手の本来の?ポジションNO.8をマフィ選手がカバーしたのが、アイルランド戦なのでしょう。

 バックスBK陣では、ウイングWTBにラヴァ選手が入り活躍しました。

 試合前、ジェイミー・ジョセフHCヘッドコーチがロッカールームで選手達に、「世界中の誰も日本が勝つとは思っていない。接戦になるとも思っていない。・・・」と語ったと報じられていますが、我らがフィフティーンはそうした予想を完全に裏切って、見事な勝利を収めました。

 「大一番」のメンバーは、観ているだけでも惚れ惚れとします。

 まさに、栄光のフィフティーンなのです。

[10月9日・プールA・小笠山総合運動公園エコパスタジアム]
スコットランド61-0ロシア

 スコットランド代表チームにとってのプールAの3戦目でした。
 
 先発メンバーをがらりと入替てきたのです。
 何しろ、第2戦サモア戦と比べて、15名の内14名を入替たのですから、これはもう別のチームでしょう。

 そのチームのスタンドオフSOがアダム・ヘイスティングス選手でした。

 やはり、「ヘイスティングス」というのは、スコットランドにおいては一般的な姓名で、あの「英雄」ギャビイ・ヘイスティングス選手と同じ姓名のプレーヤーが居るんだと感じていました。

 試合が始まって直ぐに、アダム選手が、その「英雄」ギャビイ選手の息子さんであると報じられたのです。
 これには、びっくりしました。

 聞いてしまった以上は、アダム・ヘイスティングス選手のプレーを観る眼は、ギャビイ・ヘイスティングス選手との「比較」になってしまいました。
 それは止むを得ないことだと思います。

 何しろ、父上は「世界ラグビー史に名を刻む名フルバックFB」なのですから。

 ギャビイ・ヘイスティングス選手のプレーヤーとしてのスキルは、「世界屈指のラガー」という言葉がぴったりで、スコットランドチームのワールドカップ史上最高成績(1991年第2回大会の4位)のチームの大黒柱でした。
 ボールを得たギャビイ選手が、突進し、ハイパントを上げて、さらに突進する迫力は、「高速重戦車」の様でした。

 また、スコットランド国内(とラグビーでは表現して良いと思います)における知名度・存在感は、これはもう「国民的英雄」と呼んで良いでしょう。
 今から30年ほど前に、仕事でスコットランドのビジネスマン2名と会うことが有り、そのやり取りの最初に、「あのギャビイ・ヘイスティングス選手の・・・」と私が申し上げましたら、お二人の喜びようは大変なものでした。ひとしきりギャビイ・ヘイスティングス選手の話題で大いに盛り上がり、そのビジネスミーティングは成功だったのです。
 あの時の2人のスコットランドのビジネスマンの喜びようを、今でもよく憶えています。
 
 さて、一見してアダム選手はギャビイ選手より、ひとまわり小柄に観えました。
 後で調べてみると、ギャビイ選手は身長188cm、アダム選手は身長186cmですから、確かに少し小柄なのですけれども、「一見して」分かるほどの差ではないので、まだ23歳と若くて細身のアダム選手より、当時のギャビイ選手の方が「横幅」があったということと、やはりギャビイ選手には「オーラ」があったのかなとも思いました。
 もちろん、周りの選手との大きさの比較もあるのでしょう。

 1980年代から90年代にかけての、ラグビーワールドカップに出場したプレーヤーの平均的なサイズと、2019年大会のそれでは、やはり2019年大会の方が相当大きくなっている可能性がありますので、そうした選手達の中に入っての大きさの印象は、ギャビイ・ヘイスティングス選手の方がかなり大きい、ということになりそうです。

 さて、前半13分、アダム・ヘイスティングス選手はトライを挙げました。そして、コンバージョンキックも自分で蹴って、決めました。
 続いて、前半17分、アダム選手は2つ目のトライを決めました。そして、やはり自ら蹴ってコンバージョンゴールを決めたのです。
 2つ目のトライは、敵陣内に味方選手が蹴り込んだボールを、相手チームのプレーヤーが取り損ねて、ゴール内を転々とするボールを抑え込んだものでした。「良く追いかけていた」プレーだったのです。

 やや細身で小柄に観える「ヘイスティングス」選手は、自軍にとっての最初のトライと2つ目のトライを挙げ、コンバージョンキックも2本決めて、スコットランドチームが「ゲームを支配する状況」を創り上げたのです。
見事な活躍でしょう。

 その後チームは7つのトライ(計9トライ)を加えて、圧勝しました。
 今大会のスコットランドチームに、AチームとBチームが存在したとしたら、アダム・ヘイスティングス選手はBチームの司令塔として、存分の働きを魅せたと言って良いでしょう。

 キックの上手さについて言えば、父上に劣らないものでした。
 9本のコンバージョンキックの内8本を成功させるという、実に安定したプレーを披露しました。
 Aチーム?のキッカーに、グレイグ・レイドロー選手と言う、世界屈指のキッカーが居ますから、沢山のことを学び、身に付けたのかもしれません。

 AチームのSOは、これも世界屈指のSOフィン・ラッセル選手ですから、現時点ではアダム・ヘイスティングス選手が、「ここぞ」というゲームの代表チーム先発に選ばれる可能性は低いのかもしれませんが、2023年のワールドカップ・フランス大会となれば、それは分からないでしょう。
 スコットランドを代表するSOとして、アダム選手が登場してくるかもしれません。

 それにしても、スポーツにおいて「偉大な父」を親に持つ子が、その父親と同じ競技を選ぶというのは、とても難しいことのように感じます。
 その「難しいこと」に敢然と挑戦しているアダム・ヘイスティングス選手の健闘に、大いに期待します。

 2020年1月12日に開幕する2020年のトップリーグですが、ワールドカップ2019日本大会に出場した各国のプレーヤーが、トップリーグの各チームに加入して、トップリーグのレベルアップに結びついているように観えます。

 千葉県船橋市に拠点を置くクボタスピアーズも、そうしたチームのひとつでしょう。

 11月13日、クボタスピアーズは公式ホームページで、ワールドカップ2019で活躍したプレーヤーのチームへの合流日を発表しています。

・ピーター・ラブズカフニ選手 11月18日
・バーナード・フォーリー選手 11月20日
・ライアン・クロッティ選手 12月10日
・ドウェイン・フェルミューレン選手 12月10日

 ラブズカフニ選手は、言わずと知れた日本代表チームのフランカーFL。
 ワールドカップ2019における大活躍は、素晴らしいの一語でした。南アフリカ出身のラブズカフニ選手がブレイブブロッサムズの「ベスト8進出」に大貢献したことに、異論を差し挟む人は少ないでしょう。

 フォーリー選手(30歳)は、オーストラリア代表チーム・ワラビーズのスタンドオフSOとして著名な存在です。
 既に2015年に、トップリーグ・リコーブラックラムズでプレーした経験がありますが、今度はクボタスピアーズに加わることとなったのです。
 プレースキックにも定評のあるフォーリー選手。ワラビーズの代表キャップ70を誇る世界トップクラスのプレーが、本当に楽しみです。

 クロッティ選手(30歳)は、ニュージーランド・オールブラックスのセンターCTBです。
 当然ながら、母国でもクロッティ選手の動向は注目されていて、クボタスピアーズ加入が大きく報じられたとのこと。基本に忠実で献身的、スピード溢れるクロッティ選手のプレーがトップリーグで観られるのです。

 フェルミューレン選手(33歳)は、南アフリカ・スプリングボクスのNO.8です。
 2018年からクボタスピアーズのメンバーですから、2020年シーズンは3年目いうことになります。
 ラブズカフニ選手と共にクボタスピアーズのフォワードFW第3列を支えてきたプレーヤーの、2020年シーズンの活躍が期待されます。

 クボタスピアーズはこれまで、トップリーグの優勝を争うチームではありませんでした。
 例えば、前期は7位、前々期は11位だったのです。
 前期までのトップリーグは、パナソニックワイルドナイツやサントリーサンゴリアス、コベルコスティーラーズが覇を競ってきました。

 ここに、新戦力が加わったクボタスピアーズが、どこまで食い込めるか。
 「世界のプレーを熟知している」選手達から様々な影響を受ける日本選手達が、その力をどこまで伸ばすのか。

 本当に楽しみです。

 12月1日、関東大学ラグビー対抗戦Aグループの最終戦、「伝統」の早明戦が行われます。

 かつては、「年末の風物詩」とも称されたビッグイベントでしたが、2008年に帝京大学チームが初優勝した頃から、その位置付けは徐々に下がり、その後の帝京大チームの大連覇、そしてその間の早明両チームの「ふがいない戦い振り」(ファンの方々には申し訳ない表現になってしまいましたが)も相俟ってか、このところは「グループ内のゲームのひとつ」になっていた感がありました。(本ブログ2014年12月11日の記事「[ラグビー] 早明戦の凋落?」をご参照ください)

 1928年に開始され、20世紀の我が国の大学ラグビー界を牽引してきた「対抗戦グループ」、それを代表してきた「早明戦」の価値が、残念ながら下がり続けてきた印象なのです。

 そして2019年、「25年振りの早明全勝対決」が実現することとなりました。

 11月10日に行われた早稲田VS帝京のゲームは、34-32で早大チームが勝利しました。ゲーム終盤の劇的な逆転でした。2015年ワールドカップ一次リーグの日本VS南アフリカのゲームと、展開・得失点ともに同じでした。奇遇という他は無いでしょう。

 11月23日に行われた明治VS帝京のゲームは、明大チームが40-17で圧勝しました。今季の充実を如実に示したゲームでした。
 早大チームに敗れた影響か、帝京大チームには少し元気がありませんでした。

 早大チームは、同じ23日に行われた、こちらも「伝統」の早慶戦(開催日が11月23日に固定されています)で、さすがに早慶戦に臨む気迫溢れる慶大チームの粘りに最後まで苦しみましたが、17-10で何とか勝利をものにして、ついに「25年振りの全勝対決」が実現したのです。

 再び、かつては、12月第1日曜日(開催日が決まっています。常に対抗戦の最終戦です)の早明戦を控えた1週間は「早明戦ウィーク」と呼んでも良いほどの盛り上がりを魅せました。
 両チームの各ポジションのプレーヤー、例えばウイングWTBならトイメン同士、ハーフ団ならハーフ団同士の談話がテレビ画面に登場し、それぞれ贔屓の芸能人、有名人がコメントを寄せたりして、嫌が上にも、注目が集まりました。
 「重戦車フォワード」の明治と「展開ラグビー」の早稲田、タテの明治とヨコの早稲田という、好対照のプレーの対決も、ビッグイベントに繋がる大切な要素だったのでしょう。
 また、不思議なことに「戦前に劣勢を予想されていたチームが勝利する」ことが多かったのが、早明戦でもあります。

 2019年は、ワールドカップ日本大会の年でもありました。
 ワールドカップによって盛り上がった「ラグビー熱」が、日本社会に残っている内に、日本大学ラグビーの看板カードが素晴らしいゲームを披露することは、大袈裟に言えば「日本ラグビー界にとって極めて重要なこと」であろうとも思います。

 「熱戦」が期待されます。

 ゲームを観ていた妻が「選手達の背中の真ん中上部、首の下あたりにポケットが在って、中に何か入っているみたい。あれ何?」と聞きます。

 後日には、「ユニフォームにはポケットが付いているけれども、今日のチームは何も入っていなかった」とも言います。

 少し調べてみました。

 首根っこ下の四角いポケットに入っているのは、どうやら「GPS装置」のようです。

 選手ひとりひとりがGPS装置を所持して、戦っているのです。

① 試合における運動量の測定

 GPSは、「GPSが付けられている物」の移動状況を把握するための装置ですから、この場合であれば、「選手の移動距離=その試合において当該選手が動いた距離」が分かります。
 個々の選手の走破距離の把握も容易にできるのです。

 おそらくは、その測定結果は、試合の5分毎、10分毎、あるいは1分毎に把握できるのでしょうから、「運動量が落ちてきた選手」の交替時期の判断に、重要な情報ともなるのでしょう。

 A選手は、いつもなら後半10分頃までは運動量を維持できるのだが、この試合では、前半30分過ぎから運動量が急激に下がっている、この試合では、後半開始時点から交替しよう、といった判断が可能になります。
 選手の「いつもとの違い」、疲労の蓄積やコンディションの良し悪しによっての「違い」を、客観的に把握する手段として、とても有効だと思います。

 GPSが無かった時代には、ヘッドコーチや各部門コーチが、各選手の動き・様子を観ながら判断していた、個々の選手の運動量増減を、より正確に把握する手法ですから、ある意味では「革命的な変化」と言えるのでしょう。

② 練習時の諸点の把握

 GPS装置は、練習時にも付けられると聞きました。
 これは、個々のプレーヤーの練習時の運動量他の把握に使われるわけですが、ある意味では「とても厳しい」対応に観えます。

 簡単に言えば、当該選手が「ちゃんと練習しているか」、「サボっているか」が、一目瞭然に把握できてしまうからです。
 再びA選手の、いつもの練習時の走破距離平均が2時間で10kmだとして、本日は7kmというのでは、やはり「力を抜いている」と観られてしまう可能性が有ります。
 そういう意味では、GPSは「個々のプレーヤーのプレーをより正確に管理する仕組み」ということになります。

 GPSの価値は、試合時より練習時に高いのかもしれません。

 それにしても、選手が「今日はちょっと疲れた。練習を少しセーブしよう」と考え実行することが難しいというのも、何だか大変なことであると感じますし、そういう「心持ちになる頻度が高いプレーヤー」がレギュラーメンバーに選定されにくいのかもしれないと思うと、少し割り切れない感じもします。

③ チームメンバーの構築

 GPS装置は、当該選手の「ランニングスピード」や「加速力」といった情報も把握できます。

 また、個々のプレーヤーの特性、例えば「ダッシュ力が有り10m以内の目標物への寄りが速い」といったことや、「30mを走らせると速い」とか、「一定のスピードで30分間走り続けることができる」といった「持ち味」を、客観的に数字で観ることができます。

 こうした情報は、ゲーム前のメンバー選定等において、とても重要でしょう。

 相手チームのメンバー・プレーの特徴を十分に調査した上で、自チームのメンバーの持ち味により、試合毎にメンバーを選定して行くことは、大試合になればなるほど、大きな威力を発揮することになりそうです。

 逆に言えば、こうした「基本的かつ客観的な情報が無い」チームは、ゲーム開始前から劣勢に立たされていることになります。

 今回は、ラグビーの試合におけるGPS装置の効用について簡単に観てきましたけれども、当然ながら、GPS装置から得られる情報は膨大なものでしょうし、その膨大な情報を瞬時に分析し、練習や試合に即座に活かしていくための仕組み、おそらくはAIでしょうが、その仕組みも、既にチーム毎に確立されていると考えられます。
 
 他のスポーツと同様に、ラグビーも「情報戦の時代」であることは、間違いありません。
 「GPS装置からどのような情報を得るのか」、「AIの性能」といった、ベーシックな仕組みの競争が、試合結果に大影響を与える時代が来ているのです。
 各チームに「AI・GPS班」が必要、それも相当規模・高スキルの「チーム」が必要であることも、当然のことだと思われます。

 もとより、「AIの言うことは何でも正しい」などということがある筈も無く、当該AIを作った人間の能力に、AIの能力が左右されることは道理ですし、AIの学習機能・自習機能といったところで、学習・自習のプログラム・やり方によってその能力が大きく異なるのも自然なことですし、完全に自分で自分の能力を高める仕組みを構築し実行するタイプのAIともなれば、これは人間の成長に近い過程(より速く正確な知識を蓄積するかもしれませんが、知識量と判断能力は必ずしもリンクしません)を取りますので、結果として、人間と同様の「本当の間違い」を犯す可能性が十分に有るでしょう。
 当然のことながら、AIにも、高レベルのAIと低レベルのAIが存在するのです。
 前述のチームの力が試される所以です。

 どんな競技においても、こうした情報戦で後手を取るようでは、大試合での勝利は覚束ない時代がきているのでしょう。

 11月18日、日本ラグビー協会は、2020年1月から2023年12月までの4年間、ジェイミー・ジョセフ氏と、日本代表チームのヘッドコーチHC契約を締結したと発表しました。

 日本代表チームを、ワールドカップ2019日本大会において、大目標であった「ベスト8進出」に導いたジョセフ氏と、新たに4年契約を結び、2023年のフランス大会まで、代表チームを託すという形となったのです。
 
 ようやく、「次のHC問題」が解決したことになります。

 思えば、2015年のワールドカップ・イングランド大会で、「全てのスポーツを通じて史上最大の番狂わせ」と現在でも世界中で言われている、日本チームの南アフリカ戦勝利を始めとする「ワールドカップ1大会3勝」を実現してくれた時、こんなに素晴らしいHCが居るのだと感動し、このまま日本大会まで日本チームの指揮を採ってほしいと考えた日本のラグビーファンは、とても多かったことでしょう。
 代表チームのワールドカップ戦=敗戦・大敗という事実を、長期間にわたって見せ付けられ続けていた日本のラグビーファンにとって、エディ・ジョーンズHCは「救世主」の様に感じられたのです。

 ところが、イングランド大会終了後の、日本ラグビー協会とエディ・ジョーンズ氏との交渉は上手く行かず、物別れに終わって、ジョーンズ氏は日本代表HCを去ったのです。

 これには驚かされました。

 何が原因で、こうした「悲劇」?が生じたのかは分かりませんけれども、それまで7度のワールドカップで1勝しか出来なかった日本チームを、1大会で3勝させることに成功したHCが、当時の日本ラグビー界にとって史上最高の「名伯楽」であったことは、間違いないでしょう。
 こんなことが理解できない人は、ラグビー関係者には存在しないと思います。

 エディ・ジョーンズ氏との契約継続失敗は、今でも、話にならない粗末な取組であったと感じています。(そのエディ・ジョーンズHC率いるイングランド代表チームが、ワールドカップ2019日本大会で準優勝に輝いたことは、皆さんご承知の通りです)

 そして、ジョーンズ氏に代わるHCとして、ジェイミー・ジョセフ氏に白羽の矢が立ったのです。

 一方で、日本代表チームが強くなった要因として、外国生まれのプレーヤーの増加を上げる見方もあると思いますし、ある程度はそれもあるのでしょう。
 「国籍主義」ではなく「協会主義」を掲げるラグビー競技においては、その国におけるプレー年数等により、一定の諸条件をクリアすれば、国籍が異なるプレーヤーでも当該国の代表としてプレーできるのです。

 これは、例えば日本大会に出場した全てのチームの中で、おそらくはニュージーランド代表チームを除く全てのチームに、そうしたプレーヤーが相当数存在していたと思いますので、世界中で一般化している「チームの在り様」です。
 念のため書いておくと、「日本チームだけが外国出身プレーヤーを多数起用していたわけでは無い」のです。

 大半のラグビー・ナショナルチームで行われていること、というか、ラグビーの国際大会における通常の在り様ですから、従って、出身地や国籍が異なるプレーヤーの数を増やしたからといって、代表チームが自動的に強くなるなどということは、有り得ません。
 当然ながら、事は「そんなに簡単では無い」のです。

 多くの他のナショナルチームと同様に、日本チームにおいても、日本の文化をベースに、日本生まれのプレーヤーと外国生まれのプレーヤーをどのように配置し、バランスを取りながら、どのような戦法・戦術を駆使して闘っていくかを熟考した上で、「あるべきチームの形」を決め、そのチームの形を示現して行くために、最も効果的なトレーニングを、効率的に実施して行かなければならないわけで、これは本当に難しいことでしょう。
 どんなナショナルチームにとっても、至難の業であることは自明です。

 その「至難の業」を実行・実現したHCが、エディ・ジョーンズ氏であり、ジェイミー・ジョセフ氏なのです。
 日本ラグビーは2代に渡って、素晴らしいHCに恵まれました。
 これは、おそらく「大幸運」でしょう。

 前回のエディ・ジョーンズHC続投失敗という大失策を踏まえて、今度は日本ラグビー協会も、さすがに対応を改め?、10月25日には「4年・4億円」の契約をジョセフ氏に提示したと報じられました。
 従来4,000万円だった年俸を1億円に引き上げ、従来2年だった契約期間を4年に延長して、ジョセフ氏に提示したのです。

 その後、ジョセフ氏がニュージーランド・オールブラックスの次期HC候補に挙げられた等々のニュースも入ってきました。
 ジョセフ氏が日本大会で成し遂げた事実を観れば、世界中の多くのラグビー協会が代表チームの指揮を採ってほしいと考えるのは、自然な話です。
 当然ながら、日本協会が提示した条件で十分とは、とても観えません(より好条件を示す国も複数あったのではないでしょうか)でしたから、事の展開を大注目していました。
 
 そして、10月25日から20日間以上の長い検討期間を経て、頭書の11月18日の発表となったのです。
 ジェイミー・ジョセフ氏が「日本チームを選んだ本当の理由」は、ジョセフ氏にしか分からないことでしょうが、契約金・期間といった要素だけではないのでしょう。
 そういう意味では、日本ラグビーにとって「有り難いこと」であろうと感じます。

 さて、第2期「ジョセフジャパン」がスタートします。
 
 次の目標が何に成るのかは、これから発表されていくのでしょうが、「ワールドカップ・ベスト4進出」が有力候補であることは、間違いないでしょう。

 しかし、この山の何と高いことか。
 
 日本大会でベスト4に進出した、南アフリカ、イングランド、ニュージーランド、ウェールズの4チームと、現在の日本チームを比較して観れば、パワー、スピード、戦術、選手層、等々の全ての面で、残念ながら日本チームが劣位にあることは明白です。

 こうした状況を、「ジョセフジャパン」がどのような施策でカバーし、超えて行くのか。
 
 ワールドカップ2023フランス大会に向けて、本当に楽しみな、ブレイブブロッサムズのドライブが始まります。
 日本大会では45試合が行われました。(3試合が台風の影響で中止)

 この45試合(プール戦37試合、決勝トーナメント8試合)における「先制点の重み」について、観て行きたいと思います。

[プール戦]
・先制してそのまま勝ち切った試合 26
・先制を許すも逆転勝ちした試合 11

[決勝トーナメント]
・先制してそのまま勝ち切った試合 6
・先制を許すも逆転勝ちした試合 2

[全試合]
・先制してそのまま勝ち切った試合 32
・先制を許すも逆転勝ちした試合 13

 プール戦においては、先制したチームの勝率は70.3%でした。
 決勝トーナメントでは、同75%でした。
 全試合を通じては、同71.1%でした。

 ラグビーワールドカップ日本大会における「先制して勝ち切れる確率は7割強」ということになります。

 一度に獲得できる得点が「1種類・1得点」しか存在しないサッカーと比べて、ラグビーにはプレーにより「2点、3点、5点」と存在しますから、先制されても逆転する可能性が高いのではないか、例えば、ペナルティーゴールPGやドロップゴールDGで3点を先制されても、トライで5点を挙げれば逆転できる、と考えましたが、やはり「先制点の重み」は、十分に存在するものの様です。

 「先制すれば、7割以上の確率で勝てる」ことが明示されているのです。

 ちなみに今大会は、オープニングゲームの日本VSロシアを始めとして、第1週の各ゲームでは、逆転勝ちがとても多かったのですが、大会を通してみればこうした結果に落ち着いています。
 やはり、大試合は「先手必勝」なのでしょう。

 選手達の「心の余裕」の違い、何より「ゲームをコントロールできる有利さ」がリードしているチームに存在するということなのでしょうか。

 さらに、準決勝2試合と3位決定戦、そして決勝戦の4ゲームは、全て「先制したチームの勝ち」でした。
 重要なゲームになるほど、「先制点の重み」が増していくものなのかもしれません。
 別の言い方をすれば、レベルが上がり、実力が拮抗したゲーム程、先制点は重いということなのでしょう。

 ワールドカップのゲームにおいては、まずは「先制する」ことが、とても大切なのです。

 いつの大会でも、その時代を彩る名キッカーが数多く居るのですが、日本大会でも本当に凄いプレーヤーが登場しました。

 まず印象に残ったのは、南アフリカ・スプリングボクスのスタンドオフSOハンドレ・ポラード選手です。
 準決勝ウェールズ戦で試合を決めた44ヤードのペナルティーゴールPGや、決勝イングランド戦で次々と決めて行ったPGなど、「絶対に外せないキック」をキッチリと決めて行きました。
 この勝負強さ、「ここぞ」という局面で決して失敗しないというのは、尋常なことではないでしょう。
 テレビ番組ではありませんが、「私、失敗しないので」という言葉がぴったりのプレーヤーです。

 続いてはウェールズ・レッドドラゴンズのSOダン・ビガー選手です。
 準決勝南アフリカ戦では、ポラード選手が次々とPGを決めて行く状況下、ビガー選手も次々と決めて追い上げ、後半5分にはついに9-9の同点としました。
 とても有名な選手ですが、その評価に恥じぬ素晴らしいプレーでした。
 9月23日の緒戦、ジョージアとのゲームでは、開始早々にウェールズチームがトライを挙げ、ほぼ正面の位置からビガー選手がゴールキックを蹴りました。
 とても簡単に蹴ったのですが、これが外れたのです。「よもや」の失敗でしたが、ビガー選手ほどのプレーヤーでも、ワールドカップ緒戦は緊張するのだと、妙に感心したことを憶えています。

 続いてはフランスのSOロマン・ヌタマック選手。
 フランスチームはプール戦で接戦続きでした。アルゼンチンチームとの初戦では23-21、第3戦のトンガチームとのゲームも23-21と僅少差の勝利。
 この2ゲームに敗れていれば、フランスチームの決勝トーナメント進出は夢と消えたところでした。こうした大接戦ではキックプレーが大きいのです。
 特にアルゼンチン戦前半のコンバージョンゴール2とPG2は見事でした。この前半を20-3とリードし、後半のアルゼンチンの追い上げをギリギリ凌いでの勝利でした。接戦は予想されていましたから、先行したことがとても大きかったのです。

 そして最後に、スコットランドチームのスクラムハーフSHグレイグ・レイドロー選手です。
 「正確無比」なキックは素晴らしいの一語。
 ルーティンから脚を振り抜くところまで、とても美しく、体・脚の動きとボールの弾道が一直線。「外れる気がしない」プレーでした。「さすがにレイドロー」なのです。

 本ブログのワールドカップ2019日本大会の最優秀キッカーは、グレイグ・レイドロー選手です。

 日本大会が終了して、休日などに少しでも時間が有ると、大会の各ゲームの録画を観ていますが、何度観ても不思議なのは、プールAの第2戦、日本VSアイルランドの最終プレーです。

 19-12で日本チームがリードして迎えた後半40分。

 日本が攻め、アイルランド陣左サイドのゴール前に迫りました。
 アイルランドチームも良く守り、ホーンが鳴って、ラストプレーとなり、アイルランドがボールを確保しました。
 
 自陣ゴール前から、アイルランドチームがどのような反撃を見せてくれるのか、と思って観ていましたら、このボールを蹴り出してしまったのです。
 ノーサイド。
 試合が終了しました。
 アイルランドチームがゲームを終わらせたのです。

 このプレーが何故行われたのか?とても不思議です。

 アイルランドチームから観て12-19の7点差ですから、1トライ+1ゴールで同点に追い付くことができます。まだ引分に持ち込むチャンスが残されていたのです。

① プレーヤーが勘違いしたか、ホーンが聞こえなかった。

 このキックは、通常の「陣地を回復するプレー」のように、斜め前方に蹴り出されました。
 ゴール前に押し込まれたピンチからの脱出を狙うプレーと同じ内容のプレーに観えました。違っていたのは「ゲームのラストプレー」であった点です。
 プレーヤーが「ラストプレーとは思わずに蹴り出した」可能性が有ります。

 とはいえ、選手たちは試合時間が相当に押し迫っていたことは分かっていたと思いますし、あの大きな音のホーンが聞こえなかったというのも、やや無理があるかなと感じます。

② このままゲームを終了させて「勝点1」を確保するため

 自陣ゴール前から、日本のゴールまでの攻撃が成功する可能性より、さらにピンチが広がり、日本チームに追加点を許すリスクの方が高いと考えた可能性です。

 12-19での敗戦なら「7点差以内の敗戦」ですので、勝点1を確保でき、その勝点1がプール戦勝ち抜けの争いの中で、大きな意味を持つと判断しての蹴り出しであったという見方。

 これも一理はあるのですが、それならどうして斜め前方に蹴ったのでしょうか。
 蹴り損ねれば、ボールが外に出ず、日本チームのカウンター攻撃を受けるリスクが残ってしまうのです。

 勝点1を確保するためならば、「横に蹴り出す」のが安全・確実なプレーということになります。
 このキックは、通常の陣地回復を狙うキックそのものに観えましたから、この見方が正しいとは一概には言えないと思います。

③ 「完敗」を認めたプレー

 試合後のアイルランドチームの選手たちのコメントを観ると、日本チームの健闘を称え、「完敗」を認めるような内容が多かったと思います。

 このラストプレーにおいても、「この試合は完敗」と感じていたアイルランドチームの心情が出てしまったものという見方です。
 大袈裟に言えば「もう戦いたくない」と感じてしまったということになるかもしれません。

 ありそうなことですが、世界トップクラスのチーム(大会前は世界ランキング1位)が、そんなに簡単に「完敗」を認める、というのもなかなか納得できない見方でしょう。
 ましてや、「気迫」で戦うラグビー競技においてですから。

 いろいろと考えてみても、やはり結論には至らないのです。

 日本VSアイルランド戦のラストプレーは、私には永遠の「謎」なのかもしれません。

 日本大会において、ホスト国である日本代表チームのテレビ視聴率が高いのは自然な話でしょうが、今大会においては「視聴率の上昇」がブレイブブロッサムズの活躍を如実に表しました。

① 緒戦・ロシアとのゲーム

 関東地方・ビデオリサーチ調べ(以下、同じ)の平均視聴率18.3%、瞬間最高視聴率25.5%。

② 第2戦・アイルランドとのゲーム

 平均視聴率・前半が15.3%、後半が22.5%、瞬間最高視聴率が28.9%。

③ 第3戦・サモアとのゲーム

 平均視聴率32.8%、瞬間最高視聴率46.1%。

④ 第4戦・スコットランドとのゲーム

 平均視聴率39.2%、瞬間最高視聴率53.7%

⑤ 準々決勝・南アフリカとのゲーム

 平均視聴率41.6%、瞬間最高視聴率49.1%。

 日本チームが勝利を重ねる度に視聴率が上がっています。

 もともとラグビーに興味が有った人達は、ロシア戦からテレビに噛り付いたのでしょう。

 そして、「運命のアイルランド戦」を迎えますが、戦前の予想では、アイルランド絶対有利の評でしたから、まだ視聴率は「それほど上がらなかった」のでしょう。

 ところが?、この難敵・アイルランドを破ってから、「一気に注目が集まった」のです。
 サモア戦の視聴率が跳ね上がりました。
 つまり、今大会の日本国内での盛り上がりは、9月28日(アイルランド戦)から10月5日(サモア戦)の間に発生?したと推定されるのです。
 
 にわかラグビーファン(何の問題もありません、と言うか、素晴らしいことだと思います)の増加も、この期間に急速に進んだのでしょう。
 そして、サモア戦の瞬間視聴率46.1%という超高率が実現したのです。

 興味深いのは、スコットランド戦と南アフリカ戦の比較でしょう。

 平均視聴率では南アフリカ戦が上回っていますが、瞬間最高視聴率ではスコットランド戦の53.7%が最高となっています。
 ネット等でスコットランド戦の途中経過を把握していたファンが、「勝ちそうだ」ということで、テレビのスイッチを入れたと見るのが妥当でしょう。

 南アフリカ戦については、大応援をしたけれども、「リードを許す」試合展開でしたから、後からテレビのスイッチを入れた人達、テレビのチャンネルを変えた人達が、スコットランド戦より少なかったということになります。

 南アフリカ戦の平均視聴率は、2019年に日本で放送された全ての番組の中で「最高」であると報じられました。
 日本戦を中心とした、ワールドカップ期間中のラグビー人気は、とても高いものだったのです。

 ワールドカップ開催で一気に盛り上がったこの人気を「継続し、一層盛り上げていく」ことが、日本ラグビー界にとって肝要であることは、言うまでもありません。

 そして、それが最も難しいことなのでしょう。

 プールAの日本戦を観ていて、妻が「このイケメン、誰?」

 「ラファエレ ティモシー選手だよ。13番。日本代表の不動のセンターさ。確かに二枚目だね」

 それ以来、ティモシー選手がテレビ画面に映るたびに、妻は「ラファー」と叫んで、手を振っています。
 テレビ画面に手を振るのも、いかがなものかとは思いますが、一発で大ファンになってしまったのです。

 スコットランド戦前半終了間際の福岡選手のトライの時には、「これはラファのキックが良かったのよ。どうして、もっとラファの活躍をクローズアップしないのかしら」と言います。

 「みんな十分分かっているよ。確かに、とても正確で、受け手のことを十分に考えたキックパスだったね」

 「でも、アナウンサーも解説も、ラファのキックパスのことは余り言わないよ。どうして?」と、何時までも不満そうでした。

 ラファエレ ティモシー選手はサモア生まれの28歳。

 2010年に山梨学院大学に入学し、日本のラグビーに参加しました。山梨学院卒業後はコカコーラ・レッドスパークスに加入し、トップリーグでのゲームに出場します。
 そして2016年、日本代表初キャップを得ました。

 以降は、ブレイブブロッサムズの「不動のセンター」として活躍を続けています。

 ちなみに、2017年10月、日本国籍を取得しています。
 ここからは、ティモシー選手と言うより、ラファエレ選手と呼ばれることが多くなりましたが、私はどうしてもティモシー選手と呼んでしまいます。

 身長186cm、体重96㎏のセンタースリークオーターバックCTBというのは、現在では普通のサイズというか、ワールドカップを観ていると、やや小さい方という感じもします。

 このラファエレ選手を「不動」と呼ぶのは、「フルタイム出場」を続けているからに他なりません。
 20世紀のラグビーとは大きく異なり、現在のラグビーでは「控え選手のほとんどが出場する」、ワールドカップ2019日本大会なら、15名のスターターと8名の控え選手で各ゲームにおける各チームが構成されているのですが、この8名は殆ど途中交代でフィールドに立ちます。
 フレッシュな選手を投入することで、チーム全体の運動量やパワーを落とさないための措置なのでしょう。従って、80分強を毎試合フル出場するプレーヤーは、多くは無いのです。
 今大会の日本チームなら、例えば、キャプテン・リーチマイケル選手も度々交替していましたし、スクラムハーフSHは、前半が流選手、後半途中から田中選手といった形で、「約束事として交替」するケースも少なくありませんでした。

 そうした現代ラグビーにおいて、しかし、各チームには「交替しない」プレーヤーが存在します。例えば、オールブラックスの15番ボーデン・バレット選手は、出続ける選手のひとりでしょう。
 そして、ブレイブブロッサムズでは、ラファエレ選手が出続ける選手のひとりなのです。

 そのプレーは、ハーフ団から回ってきたパスをウイングWTBやもうひとりのCTBに巧みに回したり、自ら突進してゲインしたり、時にはトライしたり(サモア戦前半28分のトライは見事でした)、様々なプレーを披露しますが、「目立つプレー」ばかりにこだわっている様子は、全くありません。

 そこが凄いと思います。

 サッカー競技においても、優秀なプレーヤーの条件のひとつとして、「余計なことはしない」ことが挙げられますが、ラファエレ選手はまさにこれにあたります。全く「余計なことをしない」のです。
 それが、チームにとってどれほど大切なことであるかは、「不動の」「フルタイム出場する」CTBという事実が明確に証明しているのでしょう。

 妻に「ティモシー選手は、もう結婚しているよ。確か、ニュージーランドの人と」と伝えました。

 少し「ラファー」と呼ぶ回数が減り、手を振ることが少なくなったように感じられますが、それでも、大ファンであることに何ら変わりはありません。

 日本大会における松島幸太朗選手の活躍は、「見事」の一語でした。

 そのスピードとステップ、結果としての「前進する力」は、今大会の日本チーム躍進の大エンジンでした。

 1993年生まれの26歳。ジンバブエ人のお父さんと日本人のお母さんのもとに生を受けて、5歳の時に日本国籍を取得しています。

 桐蔭学園高校時代には、全国高校ラグビーフットボール選手権大会で優勝と準優勝を飾っています。
 2014年にサントリーサンゴリアスに加入、同年5月に日本代表に選出され、2015年のワールドカップに出場しました。

 そして今大会開幕戦のロシア戦では3トライを挙げました。
 ワールドカップで1試合3トライは、日本ラグビー史上初の快挙であったことは記憶に新しいところです。

 さて、松島選手の素晴らしいところ挙げて行きましょう。

① ランニングスピード

 これはもう見事なもので、スピードなら今大会髄一のランナーでしょう。

② ステップ

 これも見事。「真っ直ぐ走る系」のプレーヤーですが、素早いステップには目を見張るものが有ります。
 数多くの相手プレーヤーが立っているフィールドを「無人の野」を行くが如く突破して行くシーンを、何回魅せてくれたことでしょう。
 その突破から、日本チームのチャンスが数多く生まれたのです。

 このスピードとステップから創造される「前に出る力」が、松島選手最大の持ち味なのです。

③ ハイボールへの強さ

 今大会の日本チームの弱点のひとつであった「ハイボールへの対応」についても、松島選手は秀でた能力を示してくれました。
 相手チームからハイパントが上がった時に、日本チームで取りに行くのが松島選手であった場合には「ひと安心」でした。
 たとえ取れなかった場合であっても、「松島選手がチャレンジして取れないのであれば、仕方がない」と感じました。
 ボールが落下してくるポイントの瞬時の把握、そのポイントへの素早い寄り、正確なジャンプ、安定したキャッチング能力、それらのスキルが「ワールドクラス」であることは間違いありません。間違いありませんから、松島選手で取れないなら「他に術が無い」と判断できるのです。

④ フィジカルの強さ

 身長178cm、体重88㎏というのは、ワールドカップに出場してくるプレーヤーの中では、明らかに小柄です。
 あのランスピードやプレーの俊敏性を担保するためには、こうした体格も止むを得ないものなのでしょうが、その「小柄」な体格で、松島選手は凄いフィジカルを魅せます。

 山の様な大男達に掴まっても、簡単には倒れないというか、引き摺って前進したりします。ボールを相手チームに取られる回数もとても少なかったと思いますし、相手チームが松島選手を倒してラックにすることは、容易なことではありませんでした。

 体幹が強いことはもちろんとして、相当のパワーも具備しているのであろうと感じます。(凄いことです)

⑤ ウイングWTBとフルバックFB

 松島選手は、バックスBKの各ポジションを熟すことができます。

 ウイングスリークオーターバックWTBの専門家ではなく、センタースリークオーターバックCTBやフルバックFBも十分にプレーできるのです。

 今大会は主にWTBとして、時にはFBとしても活躍してくれたと思いますが、日本代表チームには欠かせない、BKのユーティリティプレーなのです。

 以上、松島選手のストロングポイントを列挙しました。
 これらのスキルが一体となって、スーパープレーヤーが生成されているのでしょう。

 ワールドカップ2019日本大会は、松島選手にとって「脂の乗り切った時期・プライムタイム」の大会であったと感じます。

 とはいえ、2023年フランス大会でベスト4進出を目指すであろう日本代表チームにとっても、松島幸太朗は「欠くべからざる存在」に観えます。
 その頃には30歳になる松島選手ですが、現在の、いや現在以上のパフォーマンスを魅せていただけるものと信じています。


 ニュージーランド・オールブラックスは、日本大会では3位に留まりました。

 「世界一のラグビー強豪国」を自他ともに認めているチームとしては、残念な結果でしょうが、そのスピード溢れるプレー振りは、今大会でも素晴らしいものでした。

 いつの時代も「世界を代表するプレーヤー」を輩出し続けるオールブラックスですから、どのポジションにも良い選手が居るのですが、中でもフルバックFBのボーデン・バレット選手は、前評判通りの見事なプレーを披露してくれました。

 友人S氏が「彼はどこにでも顔を出すね」と言っていました。
 元サッカー選手であり、スポーツ全般に造詣が深いS氏のコメントは、いつも的確です。

 S氏の言う通り、ボーデン・バレット選手は、ゲームのポイントとなるプレーに「常に登場」しているように観えました。
 テレビ画面への登場回数も極めて多く、スタジアムで観ていても、バレット選手の動きは目立っていました。

① 超一流選手はどこに居ても分かる。

 例えばサッカーであれば、かつてのペレ選手やクライフ選手、マラドーナ選手、ジダン選手といったスーパースターは、ピッチのどこに居ても直ぐに分かりました。
 
 日本においても、釜本選手や三浦カズ選手は、直ぐに分かりました。

 体型や独特の動きがその要因なのでしょうけれども、全体としては「オーラが有る」と言うことになりそうです。

 世界屈指のラガーであるボーデン・バレット選手にも、こうしたオーラがあることは、「ゲームで目立つ」ひとつの要因なのでしょう。

 とはいえ、これだけでは「テレビ画面への登場頻度が高い」ことの説明にはなりません。

② 全てのプレーにおいて「狙い」「目的」が明確

 この点が大きいのではないかと考えています。
 ボーデン・バレット選手のプレーひとつひとつに「明確な狙いがあり」、その狙いに沿ったプレーから「チャンスが数多く生まれる」ので、テレビ画面に登場する機会が多く、「どこにでも顔を出す」印象があるのではないかと、思うのです。

 もちろん、オールブラックスの戦法が有り、試合毎に異なる戦法・戦術を用いるのでしょうから、バレット選手もそのチームの方針に従うのでしょう。

 チームのゲーム毎の方針・約束事の範囲内で、自ら考えプレーしているところが凄いのです。
 バレット選手が、ゲーム中に考える「狙い」「目的」が的確であることは言うまでも無いのですが、それを実行するスキルの高さも、不可欠な裏付けとなっていると思います。

 スポーツにおいて、全てのプレーを自ら考えて行うというのは、とても難しいことだと思います。
 それが出来るプレーヤーが「一流」と呼ばれるのかもしれません。

 こうした思考方法が出来るためには、「次に展開されるであろうプレー、チーム全体としてのプレーを予測する」ことが大切でしょう。
 こうした「ゲームの将来を予測する能力の高さ」こそが、「超」一流プレーヤーの条件なのかもしれません。(本ブログ2016年10月10日の記事[クライフの遺言7]「これから起こりそうなことが判断できた」をご参照ください)

 「世界屈指のラガー」ボーデン・バレット選手のプレーには、これからも大注目です。

 日本大会は南アフリカチームの優勝で幕を閉じました。

 その南アフリカチームのプレーにおいて、スクラムハーフSHファフ・デクラーク選手が再三上げたハイパントが、とても印象的でした。
 「スプリングボクス2019の攻撃における主要戦法」であったことは、間違いありません。

 ハイパントと言えば、私などは1970年前後の近鉄チームの得意戦法が、直ぐに頭に浮かびます。
 あの頃の近鉄チームは、何度もハイパントを上げて、相手陣内に「殺到」しました。
 ウイングの坂田好弘選手やフォワードの小笠原博選手、石塚広治選手らの突進は、当時の日本トップクラスの破壊力を魅せていたのです。

 その後、ハイパント攻撃は、相手チームにボールを渡してしまう、という理由からか、次第に使われなくなりました。
 やはりパスの方が、「ボールを自軍で保持したまま」攻撃を継続できるという判断からでしょう。

 日本ラグビーのトップクラスのゲームにおいても、近鉄チームが弱くなってからは、あまり観られない戦法となったように感じます。

 ところが、21世紀の10年代になって、ハイパントは蘇りました。
 世界トップクラスのゲームにおいても、再三使われる戦法となったのです。

 理由としては、

① 「前に蹴る」ことができるので、地域を獲得できること
② 短い距離のキックなので、キッカー自身も含めた味方プレーヤーが落下地点に到達することができ、落下してくるボールの「獲得戦」に参加できること

 が挙げられるのでしょう。

 特に、2010年以降は②の理由、50%・50%とまでは言えないにしても、距離・高さ共に上手に蹴り上げられたハイパントならば4対6位の確率で、ボールを獲得できる可能性があることは、前進していることをも含めれば、サイドラインに蹴り出して、相手ボールのラインアウトにするよりは、「ボール獲得の可能性が高い」と判断されるのでしょう。

 さらに、相手チームのプレーヤーがボールをキャッチした場合においても、そのプレーヤーにタックルしたりして、相手プレーヤーの動きを止めることは比較的容易(何しろ、捕球に競り合う程に相手プレーヤーに近い上に、相手プレーヤーはキャッチ後フィールドに降りた直後ですから、体制が出来ていないことが多いのですから)ですし、ラックになった後のジャッカルの可能性もあるからです。

 こうなると「不確実な戦法」としてのハイパントの長所を、各チームが考え活かすようになったということになりそうです。

 結果として、ハイパント戦法は、ワールドカップに出場する数多くのチームにおいて使われるものとなりました。
 我らが日本チームも、時折使っていました。

 そうした各チームの中でも、南アフリカチームがハイパントを多用していたことは、皆さんご覧の通りです。
 もちろん、デクラーク選手も、パスや、自身がボールを保持しての突進も行うのですけれども、圧倒的にハイパントが多かった印象です。これだけハイパント戦法を主力戦法として試合で使うこととなれば、その技術が向上するのは自然な話です。

 「左利き」のデクラーク選手から、様々な角度に、様々な距離・高さ、のハイパントが繰り出され、相手チームを悩ませたのです。

 21世紀に入ってからの一時期、ラグビー競技は「陣地取りゲーム」となり、両チームが相手チームの陣内に深々とキックを蹴り合うシーンが続いた時期が有りました。
 蹴り合いから、上手く蹴った方、長いキックを安定して蹴ることができるチームが、優位にゲームを進める時代があったのです。

 その「蹴り合い」も味が有りましたが、やはり「他のプレーヤーが殆ど動かない」状況下で、延々と長いキックの応酬が続く、というのは、面白くないという意見が多数出されたのも、自然なことでしょう。

 そうした時代が10年位は続いたでしょうか、その「蹴り合いの時代」を経て、ハイパントの時代が到来したように観えるのです。

 日本大会の南アフリカチームは、自チームのメンバーの特性等を十分に考慮して、主要戦法としてハイパントを採用し、見事に優勝を勝ち取りました。

 「チームに合った戦法」を採用し、磨きをかけて行くことが重要であることを、明示してくれたのでしょう。
[11月2日・横浜国際総合競技場]
南アフリカ32-12イングランド

 巧みな試合運びで、スプリングボクスが快勝しました。

 ゲームの帰趨を決めたのは、前半30分から続いたイングランド攻勢・南アフリカ守備の局面でしょう。

 この長い攻勢で、イングランドチームは再三南アフリカゴール寸前まで迫りました。
 このレベルのチームがゴール5m以内まで迫ると、トライに繋がる可能性が高いのです。パワフルな突進を何度も「その場でストップ」させることが至難の技であることは、言うまでもないことでしょう。

 ところがこの時、南アフリカチームは「止め切り」ました。
 もの凄い守備であったと思います。

 イングランドチームはこの大攻勢で、残念ながらトライを挙げることが出来ず、ペナルティーゴールPGを決めて、6-6の同点とするに止まったのです。

 この攻防を境として、ゲームの流れは南アフリカチームに傾いたと思います。

 前半38分、そしてホーンが鳴った後の前半43分、南アフリカチームはPGを立て続けに決めて、前半を12-6とリードしました。
 イングランドチームとしては、前述の攻勢時にトライ&ゴールを挙げて10-6とリードして折り返したかったところ、あるいは最悪でも6-6の同点で後半に入りたかったのでしょうが、6-12となってしまいました。

 もちろん、これらがスプリングボクスのゴール前守備の強さと、ホーン後でもペナルティーキックを実現するという「試合運びの巧みさ」によるものであることは、明白でしょう。

 6点差とはいえダブルスコアで後半に入り、ロースコアゲームということも有って、ゲームは南アフリカペースでした。そして結果として、ゲームは最後まで南アフリカチームがコントロールすることとなったのです。

 後半5分には、スタンドオフSOハンドレ・ポラード選手のPGが決まって15-6とリードを広げ、同11分にセンタースリークオーターバックCTBオーウェン・ファレル選手にPGで15-9と追い上げられると、同17分にポラード選手が再びPGを決めて18-9としました。
 イングランドチームは、同19分にファレル選手が再びPGを決めて12-18と追い縋りますけれども、ゲームは常に「南アフリカが先行し、イングランドが追い縋る」という展開となり、インクランドが5点差以内に追い上げることは、ありませんでした。

 そして後半26分、両チームを通じて最初のトライが生れました。
 スプリングボクスのバックス陣が左サイドでランニングを始め「加速」。
 このレベルのゲームでは、攻撃の際のランニングスピードがポイントとなります。「加速」し、スピード十分な攻めを、ディフェンス側が後退しながら止めるのは、当然ながら非常に難しいのです。

 ウイングWTBマカゾレ・マピンピ選手がキック。このボールをセンターCTB.ルカニョ・アム選手がキャッチし、左側を走るマピンピ選手に、即座にパス。綺麗なパスのやり取りが決まって、マピンピ選手が悠々と左中間にトライしました。

 イングランドの守備陣がアム選手にタックルする寸前、マピンピ選手のキックパスを捕球した瞬間に、マピンピ選手に出したパスは、本当に美しいものでした。

 また、アム→マピンピのパスが通った瞬間に、後方に居たスクラムハーフSHファフ・デクラーク選手を始めとするチームメイトが一斉に両手を挙げていたのも、印象的でした。チーム全体の「喜び」が爆発した瞬間でした。

 このトライ&ゴールで25-12とリードを広げたスプリングボクスに、後半33分、2つ目のトライが生れました。
 こちらは、逆サイドのウイングWTBチェスリン・コルビ選手の個人技でした。
 右サイドでボールを受けたコルビ選手は、十分なスピードと高度なステップでイングランドディフェンダーを交わし、ゴールに走り込みました。いかにも「コルビ選手らしい」トライでした。

 両サイドのウイングのトライによって32-12となり、ゲームは完全に決まりました。

 スプリングボクスは、「ワールドカップの決勝トーナメントでの強さ」を如何無く発揮しました。
 ゲーム前の想定通りの試合展開で、狙い通りの戦法が生きたのでしょう。
 特に、「伝統の守備力」は秀逸でした。

 イングランドチームは、準決勝のニュージーランド戦に比べて、パワー・スピード共に不足していました。もちろん、南アフリカチームの守備力が強かったことも要因なのですけれども、オールブラックスとの激戦で「心身の力」を使い果たしていたのかもしれません。

 決勝を観ていた妻が「今日のイングランドは、準決勝のニュージーランドに似ている」とコメントしていましたが、言い得て妙でしょう。イングランドのアタックは、悉くゲインライン手前で止められてしまったのです。

 我らが日本チームが準々決勝で敗れた南アフリカチームが、最後に優勝してくれたことは、日本チームにとっても良かったことのように感じます。
 ブレイブブロッサムズは「チャンピオンチームに敗れた」のですから。

 日本大会のスプリングボクスは、2015年大会のチームより、相当強いチームでした。(本ブログ2019年10月24日付の記事「[ラグビーワールドカップ2019-24準々決勝] 南アフリカチームの「堅守」」をご参照ください)
 「底知れぬ強さ」が、ワールドカップ制覇を実現したのです。

 やはり、南アフリカ・スプリングボクスは「ワールドカップにとても強い」チームなのでしょう。

 日本大会の決勝戦が11月2日に迫りました。

 9月20日の日本VSロシアのゲームで幕を開けた大会も、ついに決勝を迎えることとなったのです。
 こうした世界屈指のスポーツイベントではいつも感じることですが、既に少し寂しいのです。

 とはいえ、これがメインイベントでもありますので、思い切り楽しまなくてはなりません。

 決勝は「イングランドVS南アフリカ」です。

① イングランドチームが、準決勝の様なパフォーマンスを披露することができれば、イングランドが有利

 オールブラックスを相手に、イングランドチームは素晴らしいゲームを披露しました。
 パワー・スピード・プレーの丁寧さ、いずれも申し分のない「完璧」なゲームでした。

 これほどのプレーは、そのレベルの高さにおいてワールドカップ史上でも屈指のものでしょう。ひょっとすると、ワールドカップ史上最高のパフォーマンスであったのかもしれません。

 南アフリカを相手にする決勝戦で、イングランドが同レベルのプレーを展開できれば、おそらくはイングランドの勝利でしょう。それも圧勝だと思います。

 ところが、ラグビーに限らず団体競技においては、素晴らしいパフォーマンスを示したチームが、次のゲームでは「さっぱり」というケースが時々あります。特に、大きな大会で観られるのです。

 例えば、1974年のFIFAワールドカップ決勝、オランダVS西ドイツのゲームでしたが、このゲームの戦前の予想は「オランダ有利」、それも相当有利と言うものでした。

 この大会で、サッカーに革命を齎したと称される「トータルフットボール」を披露したオランダチーム、「空飛ぶオランダ人」ヨハン・クライフ選手を中心としたチームは、2次リーグの最終戦でブラジルチームを相手に2-0の完勝を演じていました。
 このブラジル相手の「完勝」の内容が素晴らしいもので、ブラジルは何もできなかったと言われたものです。1970年ワールドカップの優勝チームであり、常に世界のサッカーを牽引してきたブラジル代表を相手に、オランダは新しい戦術を駆使して圧倒的な勝利を得たのです。

 このオランダ代表チームが、決勝でも、トータルフットボールを駆使して西ドイツ代表チームに勝つであろうと、多くのサッカーファンが考えたのも無理はありません。
 私も「今のオランダに勝てるチームは無い」と感じました。それ程に、ブラジル戦でのパフォーマンスは見事だったのです。

 ところが、決勝は2-1で西ドイツチームが勝ちました。
 このゲームのオランダチームは、ピッチで歩いているプレーヤーも多く、運動量が2次リーグ・ブラジル戦とは比較にならない程少なかったと思います。
 ポジションに拘らず、全選手が流動的かつ有機的に繋がって自在の攻めを展開するトータルフットボールにおいて、運動量不足と言うのは致命的でした。
 オランダチームは、ブラジル戦と西ドイツ戦で「別のチーム」になってしまったかのようだったのです。
 現在でも、私はとても不思議な感じがします。

 さて、ラグビーワールドカップ2019日本大会に話を戻します。

 イングランドチームが、決勝において準決勝とは「別のチーム」な変わってしまう可能性が無くは無いと感じています。
 それ程に、準決勝のパフォーマンスが高すぎたという見方です。

② 通常の?イングランドチームのプレーを披露した場合

 通常のパフォーマンスといっても、世界ランキング1位のチームですから、当然に相当高いパフォーマンスなのですが、この場合には、決勝は「互角」でしょう。

 そして、「試合運びの上手さ」という点で、僅かながら南アフリカチームの方が有利であろうと感じます。

 南アフリカチームは、「伝統的」な守備の強さを持ってロースコアゲームに持ち込み、ここぞという場面での高いパフォーマンスで得点して、少ない得点差で勝ち抜く術に長けています。
 そうでなければ、ワールドカップで2度も優勝できないでしょう。
 それも、決勝では「2戦2勝」なのです。

 決勝トーナメントにおいて「このゲームを勝つ」という能力であれば、出場チーム中最も上とも言えそうです。

 スプリングボクスの各プレーヤーは、「自らのポジションに求められるスキルにおいて『尖って』」います。
 これは、何時も感じることです。
 フォワードFWはFWとして、バックスBKはBKとして、その役割期待の120%のプレーを魅せることが多いのです。

 準決勝ウェールズ戦の終盤には、南アフリカチームの動きが悪くなりました。
 スタジアムで観戦していて、「珍しい」と思いました。こういうスプリングボクスは、ワールドカップ・決勝トーナメントではなかなか見られないのです。

 「決勝にピークを持ってくるように、コンディションを調整しているのかもしれぬ」と感じました。「準決勝はなんとかなるだろう。最高のパフォーマンスを披露するのは決勝だ」と。
 ウェールズチームを相手にして「なんとかなる」というのはリスキーな判断ですが、「決勝で勝つ」という目標に向けてのギリギリの対応とすれば、有り得ないことではないでしょう。
 ベンチワークも含めて、「試合運びが上手い」スプリングボクスなのです。

 決勝戦は「互角」と観ます。

 そして、僅かに南アフリカチームが有利だと考えます。

 イングランドチームには、準決勝のニュージーランド戦と同等レベルのパフォーマンス発揮が期待されます。
 「2試合連続のハイパフォーマンス」は、こうした大会ではとても難しいことでしょう。
 実現できれば「奇跡」と呼んでも良いのかもしれません。
 この「奇跡」を起こすことができれば、イングランドチームが勝つでしょう。

 さあ、決勝戦です。

 ワールドカップ史に刻まれる好ゲームを期待します。

 「動」のゲームであったイングランドVSニュージーランドと比べて、「静」のゲームであったと思います。

 ウェールズと南アフリカは、「勝利するために」必要な慎重かつ丁寧なゲームを披露してくれたのです。

 第1戦とは異なり、第2戦はバックスタンドからの観戦となりましたが、見所十分な好ゲーム、高いレベルの「接戦」を堪能させていただきました。

[10月27日・準決勝第2戦・横浜国際総合競技場]
南アフリカ19-16ウェールズ

 運動量から見て、前半から後半15分辺りまでは南アフリカのゲーム、後半20分以降はウェールズのゲームであったと思います。

 前半14分、南アフリカチームのスタンドオフSOハンドレ・ポラード選手がペナルティーゴールPGを決めれば、17分にはウェールズSOダン・ビガー選手がPGを決めて、3-3の同点。

 前半20分、35分とポラード選手がPGを決めて南アが9-3とリードし、39分にビガー選手がPGを入れ返して、前半は南アの9-6で折り返しました。
 互角の試合展開に見えましたが、僅かに南アフリカチームの前進力が勝り、その分が「3点差」となっていたのでしょう。

 後半5分、ビガー選手がPGを決めて、ゲームは9-9、振出しに戻りました。

 両チームともにトライが欲しいところでしたが、両チームともに「守備的なプレーを主軸」としていて、リスクは冒さないプレーが続きましたから、なかなかトライチャンスは生まれませんでした。

 そうした一進一退の展開の中で、後半16分、スプリングボクスはついにトライを挙げました。センターCTBダミアン・デアレンデ選手がウェールズ守備陣の隙を付いて飛び込んだのです。
 手堅い攻撃を継続してきたスプリングボクスにとって、ようやく見出した「隙」であったと感じました。

 もともと、「ロースコアゲーム」は南アフリカチームの得意とするところですから、ゲームが南アフリカペースで進んでいたことは間違いないでしょう。
 ウェールズとしては「点の取り合い」という展開に持ち込みたかったのでしょうが、南アフリカがこれを許さなかったのです。

 しかし、これは意外だったのですが、後半の半ばを過ぎて、南アチームの方に先に疲労が来たのです。チーム全体の動きが、僅かに悪くなりました。
 
 そして後半24分、ウェールズは左サイドを攻めて、ウイングWTBジョシュ・アダムス選手がトライを挙げました。
 バックスBK陣の見事な連続攻撃でした。

 難しい角度となったコンバージョンキックでしたが、これをフルバックFBリー・ハーフペニー選手がしっかりと決めました。とてもプレッシャーのかかるキックですが、さすがにこのレベルのキッカーのスキルはとても高いのです。

 ゲームは16-16と、再び振出しに戻ったのです。
 まさに「大接戦」となりました。

 前述のように、この時間帯はウェールズチームの動きが勝っていましたから、ウェールズが逆転するのではないかと観ていました。スプリングボクスは窮地に追い込まれたのです。

 「ウェールズが勝利すれば、ワールドカップ史上初の北半球のチーム同士の決勝戦になる」と妻に話ました。

 苦しい状況下で、しかし、スプリングボクスは最後の力を振り絞って攻めました。
 そして後半36分、センターラインからウェールズ陣左サイドに少し入ったところで、ペナルティーを獲得しました。
 SOポラード選手が敢然と狙います。距離は45m位はありそうでしたし、角度も有りましたから、相当難しいショットでした。

 南アフリカチームにとっては、勝利に向けての乾坤一擲のプレーでしたが、ポラード選手はこれを見事に決めて魅せたのです。綺麗な弾道でした。
 再び、このレベルのキッカーのスキルの高さを思い知りました。

 得意の「ロースコアゲーム」を形成したスプリングボクスが、勝利をものにしたゲームでした。

 ウェールズにとっては、本当に惜しまれる敗戦でしょう。
 2度も同点に追い付いた試合内容、その闘志とスキルは、素晴らしいものだったと思います。

 私達の周りの席にはウェールズサポーターが多く、アダムス選手のトライの時には、ほぼ全員が同時に立ち上がりましたので、私達はトライの瞬間を眼にすることは出来ませんでしたが、ノーサイドの瞬間のそれらサポーターの落胆ぶりといったら・・・。
 シンと静まり返って、物音ひとつしません。

 ウェールズファンの悲嘆が良く伝わってきました。

 さて、スプリングボクスは決勝に駒を進めました。

 やはり、決勝は「南半球VS北半球」の対決となったのです。
 
プロフィール

カエサルjr

Author:カエサルjr
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我が家の月下美人も16年目。同時に30個の花が咲くこともあります。スポーツも花盛りですね。一緒に楽しみましょう。

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