世界陸上モスクワ2013を観ていて、リレー競技の面白さを改めて感じました。
リレー競技は、陸上競技においては珍しい団体戦形式の種目です。とはいえ、サッカーやラグビー、バスケットボールなどの球技の団体戦とは異なり、個人戦の積み上げという意味では、水泳のリレー競技や柔道、剣道の団体戦と同じ形式かと思います。
このリレー競技は、プレーヤーにとっても観客にとっても面白いものだと思いますが、私は、特にプレーヤーにとって面白さがより大きいものだと感じます。何とも言えない雰囲気があるのです。
さて、4×100mリレーは、当たり前のことですが1人のランナーが100mずつ走ります。短縮して「4継(ヨンケイ)」と呼んだりします。
① コーナーを走るのが得意なランナーが、第一走者と第三走者、直線を走るのが得意な走者が第二走者と第四走者(アンカー)という配置になります。
② バトンパスが重要です。特に、第二走者と第三走者は「バトンを受けて、バトンを渡す」という2つのバトンパスを行わなければなりません。
やはり400mリレーの最大の見所は、この②バトンパスでしょう。
第二走者、第三走者、アンカーは、自分が走り始める位置から何m手前に前走者が走ってきたらスタートするか、事前の練習や試合での経験により決めてあります。そして、レーンのその位置に印を付けておきます。そして、走り始めて加速したところでバトンを受けるのです。
バトンを渡す形は主に2種類。オーバーハンドパスとアンダーハンドパスです。オーバーハンドパスは、受け手ランナーが手を伸ばす形です。走る速度を上げるために重要な「腕振り」が一時ストップする点が短所ですが、渡し手ランナーと受け手ランナーとのバトンパスのタイミングが取りやすく、少し失敗してもバトンを渡すことが出来る点が長所でしょう。
一方のアンダーハンドパスは、渡し手も受け手も腕を曲げ・振ったままでパスできますから、走る速度の減速は最小限に抑えることが出来る点が長所です。しかし、パスのタイミングが一瞬しかないため、難しいやり方とされています。
日本チームは伝統的にアンダーハンドです。対してアメリカチームはオーバーハンドです。
100m競走の記録に対する最大のマイナス要因はスタートです。スタートは、どんなに速いランナーでも一歩目が50cm程度しかありませんし、止まっているところからの動き出しですから、スピードもありません。
400mリレーは、バトンパスによって、この「停止から加速」の動きを、「加速から加速」に変えることが出来るのです。従って、ランナー1人当たりの走破タイムは、個人競技の100m競走より速くなります。
現在の世界記録は、2012年にジャマイカチームが出した36秒84ですから、これを4人で割ると1人当たり9秒21となります。ウサイン・ボルト選手の9秒58の100m世界記録より、遥かに速いものです。100m競走を9秒58で走れるのは世界中でボルト選手だけですし、ダントツの記録ですから、いかに強いジャマイカチームにしても、4人のメンバーの個人100m競走の平均タイムは9秒80前後でしょう。そうすると、リレーでは1人当たり0.6秒も速くなることになります。
このため、個々人の総力比較で劣るチームでも、リレーとなれば勝負になります。バトンパスの巧拙が勝敗に大きな影響を与えるのです。
従って、400mリレーのバトンパスにおいて、最も大事なことは、バトンを貰うまでに「どれだけ加速できているか」ということなになります。ゆっくり(八分位のスピードで)走りながら、スムーズにバトンを受けても、良いバトンパスとは言えません。
例えば、第一走者から第二走者へのバトンパスであれば、バトンを受ける第二走者が出来るだけトップスピードに近くなるまで加速した段階でバトンが渡ることがベストなのです。
第一走者は、100m近くを走ってきていますから、どんどん減速しているところ。一方の第二走者は走り始めたところですから、加速中。この2人のギリギリの接点でバトンが受け渡しされるのが、良いバトンパスです。
このベストタイミングを目指して、バトンパスの練習が積み重ねられるのですが、本番ともなると中々上手くいきません。
第一走者が追い付き過ぎて、第二走者を抜いてしまいそうになれば、これは第二走者の加速不足。一方、第二走者が速く加速しすぎて、第一走者が追い付けない場合もあります。一般的にバトンパスのミスと言えば、この後者が上げられます。何しろ、バトンが渡りませんから、チームが失格となりますので。しかし、前者のミスもダメージは大きく、相当タイムをロスします。
以前は、第一走者と第三走者が右手にバトンを持ちながら走り、第二走者と第四走者は左手にバトンを持ちながら走ることで、第一走者と第三走者がコーナーの内側=距離が短いコース、を走ることが出来るようなバトンパスを行うチームが多かったのですが、近時は、あまりその点には拘らず、バトンを持つ手はチーム毎に異なっているように観えます。
要は「可能な限り加速してバトンを受け取ること」が大事なことで、その為に最も良いリズム、そしてその為に最も確率が高いやり方を各チーム・各ランナーが実施しているようです。
世界陸上モスクワ2013の男子400mリレー決勝では、アメリカチームの第三走者からアンカーへのバトンパスで、大きなロスがありました。アンカーのガトリン選手は、中々渡されないバトンを引っ手繰るように?奪い取って走り始めましたが、加速が足りませんでしたので2~3m位は損をしたでしょう。
優勝したジャマイカチーム・アンカーのボルト選手と2着アメリカチーム・ガトリン選手とのゴールでの差は3m弱でしたから、このバトンパスが上手く行っていれば、アメリカチームが勝っていた可能性が十分有ったと思います。
さて、4×100mリレーは出場意思の最終確認場所(コール)に、同じチームの4人が集まった後、各自のスタート場所(バトンパスの位置)に散っていきます。
そして、号砲一発!レースが始まります。第一走者は遮二無二、第二コーナーに向かって突進します。一方、第三走者や第四走者には、少し時間があるのです。歓声響く、この時間帯が、何とも言えないものです。レース全体、自チームの走りを少し見ながら、バトンパスの体制を作ります。
一方、第一走者は走りきって後、続くランナーの走りを見ることができます。歓声が一層大きくなります。アンカーの背中を見ながら、「行け、行け!」と応援し、ゴールの瞬間を目の当たりにします。ランナーでありながら、自分が走り終わって、自チームのゴールシーンを見ることができるのです。当たり前のこととは言え、少し不思議な感じがするのです。
リレー競技は、陸上競技においては珍しい団体戦形式の種目です。とはいえ、サッカーやラグビー、バスケットボールなどの球技の団体戦とは異なり、個人戦の積み上げという意味では、水泳のリレー競技や柔道、剣道の団体戦と同じ形式かと思います。
このリレー競技は、プレーヤーにとっても観客にとっても面白いものだと思いますが、私は、特にプレーヤーにとって面白さがより大きいものだと感じます。何とも言えない雰囲気があるのです。
さて、4×100mリレーは、当たり前のことですが1人のランナーが100mずつ走ります。短縮して「4継(ヨンケイ)」と呼んだりします。
① コーナーを走るのが得意なランナーが、第一走者と第三走者、直線を走るのが得意な走者が第二走者と第四走者(アンカー)という配置になります。
② バトンパスが重要です。特に、第二走者と第三走者は「バトンを受けて、バトンを渡す」という2つのバトンパスを行わなければなりません。
やはり400mリレーの最大の見所は、この②バトンパスでしょう。
第二走者、第三走者、アンカーは、自分が走り始める位置から何m手前に前走者が走ってきたらスタートするか、事前の練習や試合での経験により決めてあります。そして、レーンのその位置に印を付けておきます。そして、走り始めて加速したところでバトンを受けるのです。
バトンを渡す形は主に2種類。オーバーハンドパスとアンダーハンドパスです。オーバーハンドパスは、受け手ランナーが手を伸ばす形です。走る速度を上げるために重要な「腕振り」が一時ストップする点が短所ですが、渡し手ランナーと受け手ランナーとのバトンパスのタイミングが取りやすく、少し失敗してもバトンを渡すことが出来る点が長所でしょう。
一方のアンダーハンドパスは、渡し手も受け手も腕を曲げ・振ったままでパスできますから、走る速度の減速は最小限に抑えることが出来る点が長所です。しかし、パスのタイミングが一瞬しかないため、難しいやり方とされています。
日本チームは伝統的にアンダーハンドです。対してアメリカチームはオーバーハンドです。
100m競走の記録に対する最大のマイナス要因はスタートです。スタートは、どんなに速いランナーでも一歩目が50cm程度しかありませんし、止まっているところからの動き出しですから、スピードもありません。
400mリレーは、バトンパスによって、この「停止から加速」の動きを、「加速から加速」に変えることが出来るのです。従って、ランナー1人当たりの走破タイムは、個人競技の100m競走より速くなります。
現在の世界記録は、2012年にジャマイカチームが出した36秒84ですから、これを4人で割ると1人当たり9秒21となります。ウサイン・ボルト選手の9秒58の100m世界記録より、遥かに速いものです。100m競走を9秒58で走れるのは世界中でボルト選手だけですし、ダントツの記録ですから、いかに強いジャマイカチームにしても、4人のメンバーの個人100m競走の平均タイムは9秒80前後でしょう。そうすると、リレーでは1人当たり0.6秒も速くなることになります。
このため、個々人の総力比較で劣るチームでも、リレーとなれば勝負になります。バトンパスの巧拙が勝敗に大きな影響を与えるのです。
従って、400mリレーのバトンパスにおいて、最も大事なことは、バトンを貰うまでに「どれだけ加速できているか」ということなになります。ゆっくり(八分位のスピードで)走りながら、スムーズにバトンを受けても、良いバトンパスとは言えません。
例えば、第一走者から第二走者へのバトンパスであれば、バトンを受ける第二走者が出来るだけトップスピードに近くなるまで加速した段階でバトンが渡ることがベストなのです。
第一走者は、100m近くを走ってきていますから、どんどん減速しているところ。一方の第二走者は走り始めたところですから、加速中。この2人のギリギリの接点でバトンが受け渡しされるのが、良いバトンパスです。
このベストタイミングを目指して、バトンパスの練習が積み重ねられるのですが、本番ともなると中々上手くいきません。
第一走者が追い付き過ぎて、第二走者を抜いてしまいそうになれば、これは第二走者の加速不足。一方、第二走者が速く加速しすぎて、第一走者が追い付けない場合もあります。一般的にバトンパスのミスと言えば、この後者が上げられます。何しろ、バトンが渡りませんから、チームが失格となりますので。しかし、前者のミスもダメージは大きく、相当タイムをロスします。
以前は、第一走者と第三走者が右手にバトンを持ちながら走り、第二走者と第四走者は左手にバトンを持ちながら走ることで、第一走者と第三走者がコーナーの内側=距離が短いコース、を走ることが出来るようなバトンパスを行うチームが多かったのですが、近時は、あまりその点には拘らず、バトンを持つ手はチーム毎に異なっているように観えます。
要は「可能な限り加速してバトンを受け取ること」が大事なことで、その為に最も良いリズム、そしてその為に最も確率が高いやり方を各チーム・各ランナーが実施しているようです。
世界陸上モスクワ2013の男子400mリレー決勝では、アメリカチームの第三走者からアンカーへのバトンパスで、大きなロスがありました。アンカーのガトリン選手は、中々渡されないバトンを引っ手繰るように?奪い取って走り始めましたが、加速が足りませんでしたので2~3m位は損をしたでしょう。
優勝したジャマイカチーム・アンカーのボルト選手と2着アメリカチーム・ガトリン選手とのゴールでの差は3m弱でしたから、このバトンパスが上手く行っていれば、アメリカチームが勝っていた可能性が十分有ったと思います。
さて、4×100mリレーは出場意思の最終確認場所(コール)に、同じチームの4人が集まった後、各自のスタート場所(バトンパスの位置)に散っていきます。
そして、号砲一発!レースが始まります。第一走者は遮二無二、第二コーナーに向かって突進します。一方、第三走者や第四走者には、少し時間があるのです。歓声響く、この時間帯が、何とも言えないものです。レース全体、自チームの走りを少し見ながら、バトンパスの体制を作ります。
一方、第一走者は走りきって後、続くランナーの走りを見ることができます。歓声が一層大きくなります。アンカーの背中を見ながら、「行け、行け!」と応援し、ゴールの瞬間を目の当たりにします。ランナーでありながら、自分が走り終わって、自チームのゴールシーンを見ることができるのです。当たり前のこととは言え、少し不思議な感じがするのです。
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