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HOME   »  2014年11月21日
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 最近、アメリカのNFL関連記事に「モバイル・クオーターバックQBがターニングポイントを迎えているのでは?」という論調のコメントが目立ちます。

 モバイルQBとは、一言でいえば「走るQB」のことで、自身のランプレーがチームのオフェンスプレーに組み込まれているタイプのQBということになります。

 当然ながら、世界最高のアメリカンフットボール・リーグであるNFLにおいては、代わりが居ない存在としてのエースQBを故障・怪我から守るという観点から、QBが走って相手ディフェンダーなどの強烈なタックルを浴びることは極力避けるという観点から、QBがボールを持って走ること自体が少なく、プレーが上手く行かなかったために止むを得ず走る場合も、「スクランブル」といった表現で、あくまで緊急の対応としてきました。

 1970年代のNFLのQBは、スクランブルであっても走ることは滅多に無かったと記憶していますが、1980年代から90年代になると、例えばデンバー・ブロンコスのQBジョン・エルウェイ選手のように、自ら走ることでタッチダウンに結び付けるプレーを時折見せるQBが表れました。
 しかし、これとてデザインされたプレーというよりは、1番目2番目に用意されたプレーが上手く行きそうもない時に、3番目の選択肢として実行されていたように思いますから、全くのスクランブルでは無いにしても、できることならやりたくないプレーであったのでしょう。

 一方で、この頃のカレッジフットボール(全米大学フットボール)では、特に西海岸のチームを中心に、ウエストコースト・オフェンスと呼ばれる戦術が存在し、「トリプルオプション」に代表される、QBの機動力を活かしたプレーが行われていたのですが、これがNFLのプレーに波及することは殆ど無かったと思います。

 ところが、2001年にアトランタ・ファルコンズにドラフト全体1位という極めて高い評価を得て入団したQBマイケル・ビック選手の登場が、NFLに衝撃を与えました。

 ビック選手とファルコンズは、ビック選手のずば抜けた運動能力を背景に、QBランをメインとしてデザインされたオフェンスプレーを展開しました。NFLの普通のランニング・バックRB以上のスピードとステップで走るQBビック選手のプレーを、大柄な守備選手が止めることは至難の業でしたから、デビューしたての頃は面白いように前進できたのです。

 2002年のミネソタ・バイキングス戦でのトータル173ヤードのランは、NFLのQBが1ゲームで走った最長記録となりました。1ゲーム173ヤードランというのは、QBとしては驚異的なものであり、走りの専門家であるRBでも滅多に記録できない数値です。

 当時人気が低迷していたファルコンズは、ビック選手の登場と共に一気に人気を回復し、ビック選手が出場するゲームは全てチケットが完売するという状態になりました。ファンもビック選手のプレーを熱烈に支持したのです。お客様を呼べるプレーであった訳ですから、プロスポーツとしても成功であったことは間違いありません。

 そして2013~2014年シーズンに入り、モバイルQBは全盛期を迎えました。

 スーパーボール2014を制したシアトル・シーホークスのラッセル・ウィルソン選手やNFCチャンピオンシップ2014でそのシーホークスに惜しくも敗れたサンフランシスコ・49ersのコリン・キャパニック選手、NFC南地区優勝のカロライナ・パンサーズのキャム・ニュートン選手、2012年のNFC東地区優勝のワシントン・レッドスキンズのロバート・グリフィン3世=RGⅢ選手などが、その代表格でした。

 彼らは、自身のランを武器として、あるいはこれを囮として、自在な攻撃を展開し、モバイルQB時代の到来を華やかに演出したのです。
 観ていてとても楽しく、変化に満ちたプレーの連続ですから、ファンもモバイルQBを大いに支持したのです。

 ところが、2014~2015年シーズンに入って様相が変わって来ました。

 第11節を終了した段階で、シーホークスは6勝4敗でNFC西地区3位、49ersも6勝4敗で同西地区2位、パンサーズは3勝7敗でNFC南地区3位、レッドスキンズは3勝7敗でNFC東地区4位(最下位)と苦戦、あるいは不振に喘いでいるのです。

 これらのチームの不振の原因としては
① ライバルチームがモバイルQBによるプレーの研究を深めて、対策を講じていること
② モバイルQBを擁するチームとしても、あまりモバイルQBを多用するプレーを行わなくなったこと

 が挙げられています。
 二番目の理由は、前述のRGⅢ選手が2013年シーズンの途中で大怪我を負い、シーズンの半分以上を棒に振ったという事実を踏まえて、やはり「どんなに運動神経に優れたQBでも怪我と無縁ではいられない」ことを認識したうえで、各チームのヘッドコーチHCやオフェンス・コーディネーターの戦術見直しがあったものと思われます。

 モバイルQBの効果的な前進力を、他チームに勝るプレーの源泉としていたチームは、その力をあまり使わなくなると同時に、成績が悪くなってしまったのです。

 そして、こうした現象を踏まえて、やはり「NFLのQBはポケットの中で良いパスを投げること」が仕事のひとつであるという、伝統的な意見が勢力を盛り返しました。

 デンバー・ブロンコスのペイトン・マニング選手やニューオーリンズ・セインツのドリュー・ブリーズ選手といった現在のNFLを代表するQBは、ほとんど自ら走ること無く、チームに多くの得点と勝利をもたらしているではないか、という意見であり、長い歴史を誇るアメリカンフットボールというスポーツの豊富な経験に裏打ちされた見解でもあります。

 加えて、「モバイルQBは黒人プレーヤーばかり」ではないか、という指摘もなされるようになりました。
 確かに、マイケル・ビック以下、前述の5人のモバイルQBは全て黒人プレーヤーです。これは、黒人アスリートの独特の運動能力の高さがモバイルQBには欠かせないものであることを示すと同時に、「怪我のリスクが高いプレーを黒人プレーヤーにやらせている」のではないか、との見方にも結び付いてしまうのです。

 モバイルQBとモバイルQBを中心としたオフェンスプレーが、今後どのような展開を見せるのかは、予想が難しいところでしょうが、一方でQBの伝統的なプレー+ここぞという局面での自らのラン、というプレーは、既にNFLに根付いているように観えます。

 3度のスーパーボール制覇を誇るニューイングランド・ペイトリオッツのQBトム・ブレイディ選手や、グリーンベイ・パッカーズのアーロン・ロジャース選手、カンザスシティ・チーフスのアレックス・スミス選手は、前述のペイトン・マニング選手やドリュー・ブリーズ選手と共に、現在のNFLを代表する素晴らしいQBですが、この3選手は必要な時には自ら走ります。
 ブレイディ選手などは、タッチダウンまで残り数インチの状況で、自らダイブを試みたりもします。相当に危険なプレーに挑戦するのです。

 ペイトン・マニング選手やドリュー・ブリーズ選手のような「伝統的スタイルのQB」とモバイルQBとの間に、こうした「ここぞという時に走るQB」カテゴリーが存在するのです。
 「ここぞという時に走るQB」は、頭書のジョン・エルウェイ選手をも彷彿とさせる存在です。
 ひょっとすると、モバイルQBのプレーヤー達も、このカテゴリーに着地するのかもしれません。

 それにしても、21世紀初頭にマイケル・ビック選手を初めて見た時の衝撃は、今でも忘れることが出来ません。その、あまりに高い運動能力も含めて、NFL新時代の到来を十分に予感させるものでした。
 しかし本当に残念ながら、相手守備陣の追求からは易々と逃れるビック選手を持ってしても、怪我から逃れることは出来ませんでした。

 ビック選手には常に怪我が付き纏い、シーズン16ゲームにフル対応することはなかなか出来なかったのです。
 これは、NFLのエースQBの有り様ではありませんでした。

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