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 イギリスのプロクター選手とセルビアのスパノビッチ選手の競り合いが続いていました。
 
 1回目の試技で7m01cmの飛びを魅せたスパノビッチ選手を、プロクター選手が7m07cmの跳躍で追い越しました。
 2人のジャンパーは、その後も好調な跳躍を続け、7mに迫る試技を連発していましたから、金メダル争いは2人に絞られたという展開でした。

 ところが6回目の跳躍で、3位に付けていたアメリカのバートレッタ選手が素晴らしいパフォーマンスを魅せたのです。7m14cmの大ジャンプ。
 「とても静かな感じのバランスの良い跳躍」であり、飛び終えたバートレッタ選手が「不思議そうに着地点の砂を見つめていた」シーンが印象的でした。

 2005年のヘルシンキ世界選手権大会・女子走り幅跳び種目において、6m89cmの記録で優勝したバートレッタ選手(当時の名前はマディソン)が、10年振りに世界チャンピオンに返り咲いた瞬間でした。

 2012年のロンドン・オリンピック100m競走種目で4位に入るなど、その競技能力は世界のトップクラスでした。
 しかし、不思議なことに世界大会での好成績には恵まれなかったのです。

 19歳で世界チャンピオンに就き、10年間無冠、29歳になって再び戴冠するというアスリートは、そう多くはないでしょう。

 ティアナ・バートレッタ選手の10年間のご努力に、敬意を表します。
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 先行するトンプソン選手に並びかけて、胸ひとつシパーズ選手が出たところがゴールでした。
 「競り合い」と言う意味で、滅多に観られないタイプのレースであったと思います。

 スタートから4コーナーまでは、2コースのベロニカ・キャンベル選手(ジャマイカ)が飛ばしました。コーナーがきつく、走り難いとされる最インコースで見事なコーナリングを魅せて、直線入り口では1m程のリードを取りました。
 選手キャリアの終盤に差し掛かっていると見られている、オリンピック・世界選手権の金メダリストが、意地の走りを見せたというところでしょうか。

 直線を向いて20m程走ったところで、5コースのトンプソン選手(ジャマイカ)が出ました。素晴らしいスピードでした。

 200mという競技は、直線入り口辺りでトップスピードに達し、残りの80~90mは「減速を可能な限り抑える」走りとなるのです。
 従って、直線の前半でトップに立ったランナーが圧倒的に有利、ゴール手前で追い抜くというのは難しい種目です。ましてや世界選手権大会決勝レースですから、大きく減速するランナーは少ないのです。

 直線前半でリードを許したシパーズ選手(オランダ)は、しかし、腕を大きく振り大きなストライドで追い上げを開始しました。「減速を最小限に抑える」走りでした。
 届かないと観られましたが、じりじりと差を詰めてゴール寸前逆転しました。見事な走りでした。
 3着には前半飛ばしたキャンベル選手が粘り切りました。

 走破タイムも破格のレースでした。シパーズ選手の21秒63は大会新記録であり、トンプソン選手とキャンベル選手も21秒台でした。

 21世紀に入ってからは、男女を通じて「短距離競走種目は黒人ランナーの圧倒的優位」が続いていました。
 黒人、白人、黄色人といった肌の色による区別をすることについては、色々な見解が有るとは思いますが、スポーツを観て行く上で「事実」として捕えて行きたいと思います。

 その黒人ランナー圧倒的優位の時代に、白人ランナーとしてのシパーズ選手が世界選手権で優勝したのです。
 これは、ひょっとすると「ひとつのターニングポイント」となるレースであったのかもしれません。
 
 オランダのダフネ・シパーズ選手は、8月24日に行われた100m競走でも、優勝したフレーザー・プライス選手(ジャマイカ)に0.05秒差の銀メダルを獲得しています。
 200mで金、100mで銀というのは、今大会の女子スプリンターとして最高の成績と言えるでしょう。

 白人ランナーとしては、同じ28日に行われた女子100mハードル種目でも、ロールダー選手(ドイツ)とズバレン選手(スイス)が決勝に進出し、ロールダー選手が銀メダルを獲得しました。7台目ハードルから追い上げを開始して、優勝したウィリアムズ選手に0.02秒差まで迫ったところがゴールでした。優勝していても不思議の無いレースでした。

 シパーズ選手のみならずロールダー選手も、ジャマイカやアメリカの黒人ランナーと互角の戦いを展開したのです。

 2015年北京世界選手権大会は「白人女子スプリンター復権の大会」であったと、後世評価されるかもしれません。
 
 8月29日に行われた、女子4×400mリレー予選第2組で、日本チームが3分28秒91の日本新記録を樹立しました。

 着順は7位と、決勝進出は出来ませんでしたけれども、現在の実力を存分に発揮したレースでした。

 青山聖佳選手、市川華菜選手、千葉麻美選手、青木沙弥佳選手で構成された日本チームは、どの選手も300mまでスピードに乗った走りを見せ、ラスト100mで粘るという「勇気あるレース」に挑んでいたと感じます。

 400m競走という種目は、どのように走ってもラスト100mが非常に厳しい種目なのです。ラスト100mで大失速・バタバタになったらどうしよう、という恐怖がどんなランナーにも存在すると思います。

 それを怖れて、「前半抑え気味に走る」という誘惑が常に存在するのです。
 しかし、それでは記録は狙えない。

 「怯まず怖れず」最初から突っ込む走りが、記録に結び付くのでしょう。

 マイルリレーの日本女子チームは、個々の選手の走力を比較すれば、残念ながらまだ世界一を決める大会の決勝に進出する力は無いのでしょう。

 しかし、目の前に在るひとつひとつの壁をしっかりと乗り越えていくことで、世界との差を縮めて行くことが出来ます。
 そして、その勢いを感じます。

 レース後、電光掲示板を見つめ、表示されたタイムを観て歓喜の表情を浮かべた4人のランナーの様子が映し出されていました。

 日本チームは、間違いなく3分30秒の壁を破ったのです。
 見事なレースでした。
 レース開始前の気温は24℃・湿度は60%台と報じられましたから、今大会初めてと言って良い比較的「涼しい」気候でしたので、各ランナーの地力が反映される、番狂わせが少ない環境だと感じました。

 スタートは静かなものでした。速すぎるわけでは無く、かといって遅すぎる程でもありませんでしたから、早々に相応の力のランナーが先頭集団を形成しました。
 こうした世界大会にありがちな、遅すぎるペースを要因とした大きな集団にはならなかったのです。

 3km辺りで、先頭集団は18名。
 内訳は、ケニアチームが4名、エチオピアチームが3名、日本チームも3名、バーレーンチームが2名と、4か国で12名を数えました。

 レースは、給水所が迫るとケニア勢とエチオピア勢が前に出るという動きを繰り返す以外は、淡々と進みました。
 給水所はアルファベット順に並んでいましたから、日本の「J」とケニアの「K」が隣接していて、そこに計7名のランナーが1~2秒の間に集中することから、都度接触の危険があり、相当危ないシーンも発生しましたが、幸い大きなトラブルにはなりませんでした。

 7km付近で、日本チームの3名、前田彩里選手・重友梨佐・伊藤舞選手が先頭集団を引っ張る形となりました。
 5km・17分40秒~50秒というペースが少し遅いということもあるのでしょうが、それでも後方に待機するという戦法も有るわけですから、ここで前に出たというのは積極的なレース振りです。

 10kmを過ぎても、日本勢3名が集団を引っ張る形は変わりません。
 先頭に立ち、風を受けるのは不得策との見方もありますが、世界と戦って行く上でこうした「自力の勝負を展開する」ことは有益であろうと思います。

 レースは淡々としたペースで進みます。

 22.8km付近で、重友選手が先頭に立ち少しペースを上げました。相応のスピードで長い距離を押して行くことが出来るという、重友選手の持ち味が出た走りでした。

 25kmになっても重友選手が押します。
 ひとりまたひとりと脱落して行く選手が生じて、先頭集団は13名に減りました。

 26km付近で、ケニア勢の一角・ジェプケショ選手が遅れ始めました。ケニア勢は4人から3人に減り、先頭集団は12名となりました。日本・ケニア・エチオピアが3名ずつという形。

 27kmになっても重友選手が押します。
 ペースは変わりません。

 ここまで来ると、何時ケニア・エチオピア勢のスピードアップが始まるのかがポイントとなってきました。いつまでもこのスローペースでレースが続く筈は無いのです。

 31.5km付近、この平坦な北京大会のマラソンコース中、唯一と言っても良い起伏、大きな橋に差し掛かりました。
 こうしたアップダウンでベースアップが行われることは多く観られますので、いつ誰が飛び出すのかと、固唾を飲んで見守りましたが、何も起こりませんでした。重友選手が先頭の体勢は変わりません。
 
 勝負は35km以降かと思った時、33km付近でケニアの3人が動きました。
 このレースの形を決めるスピードアップでした。

 実力十分のケニアトリオがスピードアップを開始したのですから、力の劣るランナー達は付いて行けません。あっという間に、先頭集団はばらけました。
 日本トリオも、全く付いて行けませんでした。「力の差」そのものでした。

 先頭集団は6人になりました。
 ケニアのキプラガト選手・キプロプ選手・サムゴン選手、エチオピアのディババ選手・トゥファ選手、バーレーンのキルワ選手です。
 いずれ劣らぬ強豪選手です。実力上位の6名が残ったということでしょう。

 36km辺りで、トゥファ選手が遅れ始め、先頭集団は5名になりました。ケニア3、エチオピア1、バーレーン1の構成です。

 38kmを過ぎても5名の先頭集団は動きません。

 39kmを過ぎても5名の先頭集団は不変です。

 そして39.5km付近で、ケニアのキプラガト選手が遅れ始めました。世界選手権大会のマラソン2連覇中のキプラガト選手は、「最も勝負強いランナー」であることが証明されていました。
 このレースも優勝して、男女を通じて初の「世界選手権マラソン3連覇」を目指していたのです。その栄冠は残り3km以内という、手の届くところに在ったのですが、惜しくも土壇場で脚が動かなくなったのです。

 先頭集団は、キプロプ・サムゴンのケニア勢とエチオピアのディババ、バーレーンのキルワの4選手となりました。

 41kmを過ぎても4名の先頭争いが続きました。

 そして、残り1kmを切った41.5km辺りでキルワ選手が仕掛けました。勝負に出たのです。
 しかし、他の3選手は付いて行きました。

 メインスタジアム「鳥の巣」への導入道に差し掛かりました。ゴールまで200mしかありません。ここでも4ランナーの競り合いは続きました。

 ここでディババ選手がスパートしました。残り180m辺りでの渾身のスパートでした。

 このスパートには、キルワ選手とサムゴン選手は付いて行けませんでした。

 スタジアムに入って残り100m、ディババ選手にキプロブ選手が追い縋ります。
 ほとんど並びかけるところまで追い縋りましたが、残り50mを切って、ディババ選手が再びスパートして、勝負を決めました。

 エチオピアのディババ選手の優勝でした。走破タイムは2時間27分35秒。2時間19分台の今季世界最高記録を保持していたディババ選手にとっては、決して速くは無いタイムでしたが、ケニア勢との激しい競り合いを制した見事な勝利でした。

 2位のキプロプ選手は2時間27分36秒と1秒差、3位のキルワ選手は2時間27分39秒と4秒差、4位のサムゴン選手は2時間27分42秒と7秒差という、珍しい程の大接戦でした。

 ケニアと並び称される長距離競走王国であるエチオピアですが、世界選手権女子マラソンの優勝は、今回が初めてでした。
 ディババ選手は、エチオピアマラソン界の誇りを守ったとも言えそうです。

 33kmで振り切られた日本チームの中では、伊藤選手が良く粘りました。
 36km付近で確保した「7番手」のポジションをゴールまで維持したのです。
 そして、来年のリオデジャネイロ・オリンピックの出場権内定を獲得しました。残り6km強の頑張りに対する、大きなご褒美であったと思います。

 また、前田選手が13位、重友選手が14位に入りました。世界トップクラスとの差を見せ付けられたレースではありましたが、世界一を決めるレースで「自力で戦う姿勢」を主張したことには、大きな価値があると感じます。
 この経験を踏まえて「力を付ければ」、リオデジャネイロは自ずと近づいてくることでしょう。

 残り10kmを切った地点でケニアトリオが魅せたスパートは、「世界大会のメダル獲得に向けての強い意欲を示すスパート」でした。

 このスパートに反攻できる体力・技術・気力を養うことなくして、オリンピック・世界選手権のメダル獲得は無いことを、痛感させられたレースでした。
 8月28日に行われた、アトランタ・ブレーブスとニューヨーク・ヤンキースのゲームに先発した田中将大投手は7イニングを投げて、今季10勝目(6敗)を挙げました。
 これで、MLBデビュー以来2年連続の二桁勝利となりました。

 ゲームは、ヤンキース打線が初回から爆発し結局15-4で大勝しました。
 初回5点・2回4点と早々に大量援護を受けた田中投手でしたが、立ち上りの調子はあまり良くなく、初回に四球とヒットなどで2失点、3回にホームランで1失点してしまいました。

 しかし、3回からは立ち直り、時折三振も交えてアトランタ打線を封じました。
 7イニング・100球を投げて、被安打5、奪三振7、与四球1、という投球内容でした。今季通算防御率は3.62となりました。

 「1点も与えない」という雰囲気で、三振を多く取り、防御率も2点台を続けていた2014年シーズンとは異なり、今季は「打たせて取る」投球にスタイルを変更しているように観える田中投手です。

 特に、日本時代の終盤からここぞというシーンで観られた「ギアチェンジ」、ボールをリリースする瞬間に通常より強い力を加え、投球の威力を高めるという手法は、影を潜めています。

 従って、「投球の凄味」は少なくなりました。
 故障した肘への負担を考慮してのスタイル変更だと思います。

 一方で、この日のストレートには相当の威力が感じられました。スピンが良く効いていたのでしょうか。
 現状では、まだ登板毎にボールの威力にバラつきが感じられますので、スタイル変更の途上なのでしょうが、田中投手が「MLBでの投球スタイル」を模索・確率しつつあることは確かなようです。

 そうした試行錯誤の段階で、2年連続二桁勝利という成績を残して来ていることは、ご本人にとっての「最低限の仕事」は果たしているということなのかもしれません。

 ヤンキースと7年という大型契約を結びMLBに登場した田中将大投手は、肘の故障という試練に応えて、自身の投球を再構築しているのでしょう。

 2016年シーズンになるのか、2017年シーズンになるのかは分かりませんけれども、ご本人が納得できる投球スタイルが完成されることを、楽しみに待ちたいと思います。
 今大会の日本チーム初のメダルが生まれました。

 世界選手権大会における日本競歩界史上初のメダルが生まれました。

 8月29日に行われた50km競歩で、谷井孝行選手が3位、荒井広宙選手が4位に入りました。

 スタートして間も無く、谷井・荒井の両選手がトップ集団というか、早々に抜け出したトス選手(スロバキア)を追う2番手グループに入り、レースを続けました。

 谷井・荒井両選手の「歩き」は、とても安定している印象でした。
 この「粛々としたプレー」を30km過ぎまで継続できたことが、好成績の要因でしょう。

 40kmを過ぎてから、ヒファーナン選手(アイルランド)やタレント選手(オーストラリア)が動きましたが、谷井・荒井コンビは決して慌てませんでした。

 一度遅れかけた荒井選手が、再びメダル争いに加わってきたことは、谷井選手に大きな勇気を齎したのでしょう。

 43kmを過ぎて、谷井・荒井の両選手が、先攻するヒファーナン選手に追い付きました。しばらくは3人で併歩する形となりましたが、谷井・荒井コンビが抜け出すのに多くの時間はかかりませんでした。

 45kmを過ぎて、1位トス選手、2位タレント選手、3位谷井選手の体制が整い、荒井選手が続きました。

 トス選手はスタート直後から先頭に立ち50kmを歩き切りました。本当に強いレースでした。

 2位のタレント選手から5位のヒファーナン選手までの4選手は、激しい競り合いの中で順位付けが行われた感じでしょう。
 このレースにおいては、日本チームにも2位の可能性が有ったことになります。

 日本競歩チームは、メダルが期待された20km種目での惨敗を見事に活かしました。
 チーム力の成果であったと思います。

 前々回大会・前回大会と9位という、入賞目前の結果を残していた谷井選手は一気に銅メダル獲得・世界3位に駆け上がりました。力を付けて来たのです。

 「日本競歩」の実力は、間違いなく上がっています。

 今大会初めて、日の丸が翻りました。
 いつ見ても、素晴らしい光景です。
 スタートから200mまでのスピードは、400m競走とは思えない速さでした。
 このようなリソースの使い方でゴールまで持つのだろうかと思いました。

 しかし、アリソン・フェリックス選手(アメリカ)は残りの200mも安定した走りを展開し、ゴールでも2位のミラー選手(バハマ)に3m位の差を付けて完勝したのです。
 8月27日の決勝レースでした。

 2005年以来これまで世界選手権で200m競走を中心に8つの金メダルを獲得してきたフェリックス選手ですが、400mの優勝は初めてでした。
 新しいアリソン・フェリックスの登場と言って良いのでしょう。

 2012年のロンドン・オリンピックで3つの金メダルを獲得し、2013年のモスクワ世界選手権大会200m決勝で故障を発症し途中棄権して以降、フェリックス選手の故障からの回復が注目されていました。
 そして今大会に出場したのですが、8月25日の準決勝では「軽やかで伸びやかな」フェリックス選手の走りに陰りが見えましたので、心配していました。

 杞憂でした。

 バックストレッチ、スタートから150m辺りを走るフェリックス選手のフォームの美しいこと。両太腿がトラックと平行なレベルまで上がり大きなストライドを示現していますが、それでいて体の上下動が極めて少ないという、フェリックス選手独特のランニングフォーム。間違いなく、最高のアスリートのパフォーマンスでした。

 フェリックス選手は蘇りました。女子選手としては歴代最多9個目の金メダルを獲得したのです。

 とはいえ、17歳時に世界デビューし、12年間に渡って世界のトップクラスで走り続けてきたフェリックス選手も29歳になりました。
 来年のリオデジャネイロ・オリンピックが最後の雄姿になるのかもしれません。
 ライブ中継で80mスローを観たのは初めてです。

 ポーランドのヴォダルチク選手の素晴らしい投擲でした。

 8月27日に行われた女子ハンマー投げの決勝は独壇場でした。

 
 1投目に74mを超える投擲を見せると、2投目に78mに記録を伸ばしました。
 これで金メダルは決まったと感じました。世界選手権大会における78mスローはとても高いレベルです。80mスローの実績を持つヴォダルチク選手とはいえ、世界大会で自己ベストに近いパフォーマンスを魅せるのは難しいであろうと思いました。

 ところが、3投目に80mを超えてきたのです。驚かされました。
 80m27cmのスローでしたが高い段道の見事な投擲でした。

 良いものを見せていただいたと感じていた4投目は、3投目以上に力強い印象でした。鉄球はぐんぐんと伸び、3投目のラインを超えました。80m85cm!
 素晴らしい試技でした。

 1投目から4投目まで、投げる度に記録を伸ばしたのです。投擲種目では珍しいことでしょう。
 加えて、投げ出し方向が投げる度に変わりました。1投目は左、2投目は右、3投目は中、そして4投目は左でした。リリースのタイミングが、1投毎に微妙に異なったのです。

 豪快なハンマー投げ種目のメカニカルで精緻な部分を感じさせる、1投毎の違いを見せながらも、投げる度に記録を伸ばしたことになります。これも凄いことです。

 このまま行くと、5投目では自己ベスト=世界記録、を超えて来るかと思われましたが、さすがに疲れが出たのか、5・6投目は記録が伸びませんでした。

 「女子ハンマー投げ」という発展途上の種目において、初めて80mの壁を突破したヴォダルチク選手は、この種目の歴史的パイオニアです。

 当分の間は無敵でしょう。
 特徴ある低いホップからステップ・ジャンプと滑らかに飛んでいると感じた瞬間、着地が18mを大きく超えました。

 場内には大歓声が上がりました。

 8月27日の男子三段跳決勝で、史上第2位の大ジャンプが生まれたのです。

 優勝争いは、キューバのペドロ・ピカルド選手とアメリカのクリスチャン・テイラー選手の一騎打ちでした。

 序盤はピカルド選手がリードしました。テイラー選手は、1回目・2回目と踏切板に触ることすらできませんでした。
 それでも、跳躍全体としてのバランスは悪くありませんでしたから、踏切で踏切板を踏むことが出来れば、相当の記録が出るであろうと感じられました。
 
 3回目の試技で、テイラー選手はようやく踏切板に足が少しかかり、17m60cmの好記録を出して、ピカルド選手に並びました。

 続く跳躍でテイラー選手が記録を伸ばしてトップに立ちました。

 そして6回目の試技から大ジャンプが生まれたのです。

 過去の大会でも、テイラー選手は最終・6回目の跳躍で好記録を残しています。テイラー選手は「6回目に強い」プレーヤーなのかもしれません。

 一方のピカルド選手は、その持ち味である「ふわりとしたホップ」がやや伸び悩んでいました。
 先行しましたが、一度テイラー選手にリードを許してからは、再逆転することは出来ませんでした。

 とはいえピカルド選手も、17m73cmという素晴らしい記録を残し、その能力の髙さを世界に示したことになります。

 今季18mジャンパーの仲間入りをした、クリスチャン・テイラーとペドロ・ピカルドの2人のジャンパーが、今後しばらくの間三段跳界をリードして行くのは間違いなさそうです。

 そして2人のライバルの切磋琢磨の過程で、あのジョナサン・エドワーズ選手の伝説の世界記録18m29cmを超える跳躍が観られる日も遠くないのでしょう。
 夏の甲子園2015の8月16日の試合、中京大中京VS関東一を観て、改めて感じさせられることが有りました。

 「1回の表と9回の裏」の意味合いです。

 野球・ベースボールという競技は、攻撃と守備の機会が「交互に」両チームに与えられ、「1イニング3アウト」という攻撃機会数も平等です。当然ながら「公平な」スポーツとなっているのです。

 そうしたルールの中ですが、1回表と9回裏の意味合いは大きなものなのでしょう。

 9回裏の攻撃は「後攻め」のチームに与えられています。「サヨナラ勝ち」を実現できるのは、後攻めのチームだけなのです。
 9回表まで同点の試合であれば、9回裏の攻撃はとても重要な価値を持つことになります。

 9回裏にマウンドに居る投手にとっては大きなプレッシャーとなりますし、攻撃陣も「サヨナラ勝ちに向けて」一層気合が入ることでしょう。

 この9回裏の重要性に対応するのが、1回表ということになります。

 試合開始直後、当該ゲームの「第一球」を投ずる投手には、何とも言えないプレッシャーがかかることでしょう。
 「平等な競技」とはいっても、相手チームが一度も攻撃していない段階で得点を挙げる権利は、「先攻め」のチームにのみ与えられています。ここで得点すれば、先攻めのチームは優位に試合を進めることが出来るのです。

 逆に言えば、「先攻めのチームが1回の表に得点できなければ、その時点で後攻めのチームが既に有利になる」と観て良いように思います。

 あらかじめ、ホームチームが後攻めと決まっている試合はともかくとして、くじ引き・コイントスで先攻・後攻を決めるゲームであれば、くじ引きに勝って先攻を選択したチームは1回表の攻撃に注力する必要がありますし、後攻を選択した場合には1回表の守備に注力する必要があるのでしょう。

 頭書の試合では、1回表の中京大中京高校の攻撃で二死満塁というチャンスが訪れ、打者はセンターオーバーの大飛球を放ちました。ここで抜けていれば、走者一掃の長打になったことは明らかですから、中京は3-0というリードを奪うことが出来、ゲームを優位に進めることが出来たのです。

 しかし、この大飛球を関東第一高校のセンターフィールダーが好捕しました。このプレーによって、試合は少しですが関東一に傾いたことになります。

 そして9回裏・関東一の攻撃、サヨナラホームランが飛び出しました。一球で勝負を決めたのです。
「後攻めチームの9回裏のメリット」を最大限に活かすホームランでした。中京には、この1失点を取り返す攻撃機会が与えられないのですから。

 「1回の表と9回の裏」は、野球・ベースボールにおいて大いに注目すべきイニングなのだと思います。
 8月26日に行われた男子400m競走決勝は、素晴らしいレースになりました。

 決勝進出者を観ると、オリンピックチャンピオンのキラニ・ジェームズ選手(グレナダ)と世界選手権王者であり400m大国アメリカを代表するラショーン・メリット選手の争いを軸に、ボツワナのマクワナ選手と南アフリカのバンニーキルク選手が絡んでいく形かと考えましたが、レースはバンニーキルク選手の圧勝でした。

 見事だったのは、バンニーキルク選手のスタート後150mから320m辺りまでの170mの走りでした。200m19秒台という、メンバー中最高のスピードを如何なく発揮したのです。
 素晴らしいランでした。

 150m付近でスイッチを入れたバンニーキルク選手は、3コーナーから4コーナーで他の選手との差を広げ、直線に出て20m位までスピードを維持して、一時は4~5mのリードを取りました。

 そのバンニーキルク選手をメリット選手とジェームズ選手が追い上げます。

 ジェームズ選手は場内の大きなビジョンを観ながら走っていましたから、「十分に追い抜ける」と感じての走りであったと思いますが、バンニーキルク選手との差はなかなか詰まりません。

 ラスト100mの強さに定評があるメリット選手もスパートしましたが、こちらも思ったようには差が縮まらない。

 既に脚を使い切って、余力だけで走り続けるバンニーキルク選手の方は、ゴールまで10メートルの地点で脚が動かなくなり、倒れ込むようにゴールしました。ゴールがあと5m先なら倒れていたのではないかと思います。
 
 バンニーキルク選手は「持てる能力を120%に出し切った」レースをしたと感じます。
 一方、ジェームズ選手とメリット選手は「追い上げが不発」という印象ですが、走破タイムを観れば、こちらも100%の力は出し切ったのでしょう。

 結果として、素晴らしいレースとなりました。

 優勝したバンニーキルク選手のタイムは43秒48、2位のメリット選手は43秒65、3位のメリット選手は43秒78でした。どの選手の記録も世界大会の優勝に相応しいレベルでしょう。

 特に、43秒48という「48秒台前半」のタイムを叩き出したバンニーキルク選手は、生涯最高の走りだったのではないでしょうか。

 「遠い夢・不滅の大記録」と言われているマイケル・ジョンソン選手の世界記録43秒18が、少し近くに見えてきました。

 世界は日々進歩しているのでしょう。
 世界選手権大会の男子200m準決勝に進出した24名のランナーの中に、日本人ランナーが3名も含まれていたのです。史上初めてのことです。

 惜しくも決勝進出は成りませんでしたが、藤光謙司、高瀬彗、サニブラウン・ハキームの3選手の素晴らしい健闘であったと思います。

 世界大会の短距離種目の予選で、「自己ベストに近いタイム」を叩き出すことは、どんなランナーにとっても容易なことではありません。残念なことですが、日本人ランナーにとっても難しいことでした。

 それが今大会は違いました。
 藤光選手が20秒28、高瀬選手が20秒33、ハキーム選手が20秒35、と3選手とも自己ベストに近い、そして「世界選手権大会の予選を通過するに十分な水準」の記録をマークしたのです。

 準決勝では3選手とも、予選より記録を落としてしまい決勝進出は逃しました。「決勝進出を逃したことよりタイムを落としたこと」の方が余程悔しいであろうと感じます。
 今自分が出来るベストパフォーマンスを、世界大会の場で発揮したいと考えるのが、トップクラスのアスリートなのだと思います。

 記録が落ちた理由は諸点あるのでしょうが、レース後ハキーム選手が述べていた「予選の疲労が予想以上だった」という辺りが主因ではないでしょうか。
 日本人トリオは、世界大会で「相応の余裕を持って予選を突破、準決勝でベストパフォーマンスを示す」レベルには、まだ達していないのでしょう。

 「職人」藤光謙司、「求道者」高瀬彗、「怖いもの知らず」サニブラウン・ハキーム。日本男子200m陣には、個性豊かなプレーヤーが揃いました。
 切磋琢磨して走力向上を目指して行く体制が整った感じでしょうか。

 レース後の高瀬選手のコメントが心に響きました。
 「力を付けなければならない」と。
 「92m72cm」、この投擲をテレビのライブ放送で眼にすることが出来たことに感謝します。
 度肝を抜かれました。

 やり投げ種目における「90mスロー」というのは、滅多に眼にすることが出来ないのです。世界各地の大会を見渡しても、数年に一度のプレーです。今回は4年振りとのこと。

 数年に一度しか観られないスローが、小さな大会では無く8月26日に行われた世界陸上2015の決勝3投目・ケニアのジュリウス・イエゴ選手から生まれたのですから、本当に凄いことだと感じます。

 また、この大会の男子やり投げ種目のレベルの高さにも驚かされました。

 決勝が行われる前、金メダルは87~88m、銀は85~86m、銅は84~85m位ではないかと予想していました。やり投げのように高い技術・精神力を必要とする種目では、大きな大会の決勝で自己ベストを出していくことは、どんなに強いプレーヤーにとっても容易なことでは無いからです。

 従って、予選を84m台の好記録で突破した新井涼平選手にも十分にメダル獲得のチャンスが有ると観ていました。

 1投目は予想通りでした。なかなか80mスローが観られません。とはいえ、75mを優に超える投擲が続きましたので、いつもの世界大会より各選手の調子が良いと感じていました。「失敗スロー」が少ないのです。

 そして、新井選手が1投目に80mを超える試技を見せてから、80mスローがポンポン飛び出しました。2投目にエジプトのエル・サエド選手が88m99cmの素晴らしい試技を魅せてからは、各選手が存分に記録を出し始めたのです。
 とても不思議な、そしてとても凄まじい投げ合いとなりました。

 新井選手の2投目83m07cmという記録は、通常ならば4投目以降に進むのに十分な記録の筈でした。それが9番目となり進めませんでした。それ自体が驚きでした。

 結果として、1位が92m台、2位が89m近く、3位から5位が87m台、6位が86m台という、極めてハイレベルな大会となったのです。

 何故、このように素晴らしい試技が連発される大会となったのかは分かりません。ほとんど無風でしたし、暑さも残っていたと思われますし、争っていたタイトルは「世界チャンピオン」なのです。

 素晴らしい闘いを魅せていただいた選手の皆さんに、大きな拍手を送ります。
 8月24日の国会・参議院の特別委員会において、アントニオ猪木議員が質問に立ちました。

 審議中の安全保障関連法案に関する委員会で、総理大臣を始めとする閣僚他に質問するのです。
 この審議に関して質問に立つのは2度目らしく、前回の質問の回答を踏まえた質問が続きました。

 そして、質問は2020年東京オリンピック関連のものに移りました。

 開催時期についての質問でした。

 猪木議員は、2020年のオリンピックが7月下旬から8月上旬に開催される理由が、「・・・温暖な気候で選手達が持てる力を十分に発揮できる・・・。」と示されていることに対して、

 「ふざけるな!」(大声で)

 と誰もが思うでしょう。と指摘しました。それまでの静かなトーンとは打って変わって、大きく鋭い声で「一喝」した感じでした。

 これに対して担当大臣は、「IOCからの指示として、他の大会の開催時期との関係から、7~8月に開催して欲しい、と言われている」旨を回答しました。

 この時期の東京周辺の暑さを勘案すれば、素直に納得は出来ない回答でしたが、理解できなくもない理由でした。

 そうした理由が有るのであれば、「温暖な気候で選手達が持てる力を十分に発揮できる」云々の理由を示す必要はない、というか、これは猪木議員ではないが、「誰もが呆れてしまう」説明でしょう。

 気温30℃以上の真夏日や35℃以上の猛暑日が連続する時期に、スポーツマンがその持てる力を存分に発揮できる環境、と見ることに無理が有るのは明らかです。
 「嘘だろう信じられない」と感じる人も居るでしょう。

 猪木議員が指摘する「開催時期決定の理由」が、何処に提示されているのかは知りませんけれども、こんな説明がなされているようであれば、東京オリンピック2020が全体として、しっかりと開催されるのか心配になってしまう人が多いのではないでしょうか。
 本件の説明レベルが低すぎるために、その他の様々な課題についての検討状況・内容についても不安になってしまうのです。

 見識を疑われるような作文は避けるべきなのでしょう。

 それにしても、猪木議員の「ふざけるな」の大声は見事に議場に響き渡りました。
 居眠りをしていた議員(最近は少なくなったと言われていますが)も、一発で眼が覚めたことでしょう。

 プロレスリング界から国会入りして、これまでも色々な課題に取り組んできた、「議員」としてのアントニオ猪木氏の経験というか「年輪」が感じられました。

 国会中継もなかなか面白いものです。
 8月23日に行われた男子100m競走決勝は、ウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)が9秒79のタイムで優勝しました。

 2着にはアメリカのジャスティン・ガトリン選手が入りました。100分の1秒の僅差の勝負でした。

 ボルト選手は、昨シーズンから故障であまり走れませんでした。
 今シーズンになって大会にも出場できるようになりましたが、タイムは伸びませんでした。

 一方、ドーピング疑惑から「出場停止」措置が続いていたガトリン選手は、大会に出場できるようになって以来、全盛時を超えるような走りを見せ続けていました。
 今シーズンも9秒70台を連発していましたから、絶好調で今大会に入ったと伝えられました。

 予選・準決勝の走りも、ガトリン選手は軽快そのもの。好調さを見せつけるレース内容でした。

 一方のボルト選手は、予選では余裕を見せた走りでしたが、タイムは10秒をやっと切るレベル。特に40mから60mにかけての走りは、世界記録9秒58を出した時の走りには程遠いものでした。

 ボルト選手の準決勝も、厳しい内容でした。
 スタートから4歩目・5歩目で躓きバランスを崩したのです。そこから体勢を立て直して追い込みを開始、ゴール寸前で先頭に立ちました。
 ギリギリのレースでしたし、タイムも9秒70台のガトリン選手に対して、9秒90台でしたから、「0.2秒差=大差」の感が有りました。

 ところが、ボルト選手の準決勝のスローモーション再生を観ると、70m付近から「左側の先行するランナー」を観続けています。
 ひょっと「余裕を持ってゴール寸前で捕まえた」のかもしれない、と思いました。
 
 風の状態も、ガトリン選手の準決勝は追い風、ボルト選手の時は向かい風でしたので、0.2秒の差は、実はそれ程大きなものでは無いのかもしれないと、考え直しました。
 
 決勝レースは、予想通りの接戦となりました。

 ガトリン選手のスタートは予選・準決比少し固さが観られました。スムーズさに欠けていたのです。
 ボルト選手のスタートは今大会一の出来でした。

 40m~60mの走りは、ボルト選手が勝りました。60mを過ぎた辺りでは、既にガトリン選手に並んでいたと思います。

 70mからゴールまでの走りは両選手とも良くないものでした。

 ボルト選手も好調時のような力強さが有りませんでした。しかし、ガトリン選手はもっと悪かったのです。バランスを崩して、準決までの軽やかな走りは影を潜めました。体の軋む音が聞こえるような走りに観えました。

 この差が、ゴール前の僅かな差に結び付いたものと思います。

 ボルト選手は、昨シーズンの故障からまだ回復途上にあるのではないでしょうか。
 好調時の8割位の出来なのではないかと思います。

 そうした状況でも世界選手権大会で優勝するのですから、ボルト選手はその強さを改めて示したのでしょう。

 また、ガトリン選手に加えて、アサファ・パウエル選手やタイソン・ゲイ選手といったベテラン選手・かつてのチャンピオンが並んだ決勝メンバーを観ると、「ボルト選手を脅かす若手ランナーは育っていない」ようにも感じられます。

 現在の男子100m界は「ボルト選手一強時代」なのでしょうか。

 ボルト選手には、リオデジャネイロ・オリンピック2015までの間にコンディションを整えていただき、本来の走り=史上最強スプリンターの走り、を再び魅せて欲しいものです。
 ランナーを一塁に置いてバント攻撃、これを守備側が素早く処理して二塁でフォースアウト、ダブルプレーを狙って一塁に送球、ところがこの送球が暴投となって、ボールがカメラマン席に入ってしまい、バッターランナーに二塁への進塁が与えられる、というシーンが、今大会で時々見られました。

 攻撃側のチームにとっては、「ランナーを二塁に進める」という目的を実現できたことになりますし、守備側にとっては「ランナーの二塁への進塁を阻止する」という目的の実現に失敗したということになります。

 守備側にとっては、とても良いバント守備を見せて一度は二塁でアウトを取ったにもかかわらず、結局相手チームの狙い通りの結果になってしまうのですから、とても残念な一連のプレーです。
 捕手がバックアッププレーを行っていたとしても、カメラマン席に入ってしまえばカバーできないのです。

 「ボールがカメラマン席に入ったら、ランナーに次の塁が『自動的に』与えられる」というルールは、高校野球の長い歴史を踏まえて導入されたものなのでしょうが、一方でとても多くのドラマをも生んできたことでしょう。

 二塁に入った遊撃手や二塁手が「一塁に送球しなければ良いのに」という見方もあるのでしょうが、「ダブルプレーが取れそうな」あるいは「ダブルプレーを取りたい」状況で行われるプレーですから、これを止めるというのは難しいことなのでしょう。

 こうした「極めて厳しい状況」でのプレーですから、大きなドラマに結び付くことも多いことになります。
 例えば、8月17日の準々決勝・花咲徳栄VS東海大相模の9回裏・東海大相模の攻撃で、このシーンが生まれています。
 
 東海大相模のバント攻撃に上手く対応した花咲徳栄は、一塁ランナーを二塁で封殺することに成功しました。3-3同点のまま、延長戦に突入しようとする花咲徳栄にとっては、狙い通りのプレーを実現した瞬間でした。
 この極めて厳しい状況で、攻撃的な素晴らしい守備プレーだと思いました。

 そしてダブルプレーを狙って一塁送球が行われたのですが、これが暴投となってしまい、ボールがカメラマン席に入り、東海大相模の打者走者は二塁ベース上に立ったのです。
 続く打者から「サヨナラ・タイムリーヒット」が生まれて、東海大相模がこの試合に勝ったことは、ご存じの通りです。

 花咲徳栄高校にとっては「埼玉県勢悲願の夏の甲子園優勝」が去っていったプレーですから、本当に残念なプレーということになります。
 そして、この一連のプレーを演出?したのは「カメラマン席」と言っても良いのでしょう。

 ルールはルールとして両チームに平等に用意されているものですから、何の問題も無いことなのでしょうが、身を粉にして練習を重ねてきた選手達にとっては「割り切れない感」もあるのかもしれません。

 可能な限り「あるがままにプレーする=ボールデッドの機会を減らす」ことが望ましいという考え方も存在するでしょう。

 写真情報を全国に配信し、球児の活躍を伝えることは極めて重要なことですから、カメラマン席を無くす、あるいは移動することは難しいのでしょう。

 そうであれば、カメラマン席をもう少し高くするとか、カメラマン席に網状のフェンス(カメラのレンズを出す窓付き)を設けるといった対応策を検討してみるのも、ひとつの方法かもしれないと思います。
 一時期は全球団が借金生活をしていたセントラル・リーグでは、ようやく阪神タイガースと読売ジャイアンツが一定の貯金を積み上げて首位争いを展開するようになってきましたが、対照的にパシフィック・リーグの方は、ソフトバンク・ホークスが悠々と首位を独走しています。

 8月21日終了時点で106試合を消化して、69勝34敗3引分・勝率.670で2位の日本ハム・ファイターズに8ゲーム差、優勝へのマジックを27としています。

 「貯金数35の方が負け数34より多い」というのですから、圧倒的な強さでペナントレースを走っているということになります。

 実は、大きな差を付けられて2位に居る日本ハムも、110試合を消化して64勝45敗1引分・勝率.587という、「例年なら優勝を狙える成績」を残して来ているのです。

 上位2チームがこれだけ高いレベルの成績を挙げてきているということは、下位に大きな借金を重ねているチームが居るということで、楽天ゴールデンイーグルスが借金14、オリックス・バッファローズが借金18に喘いでいる形です。

 正直に言って、開幕前に今季パ・リーグのペナントレースでソフトバンクがこれ程の独走を見せるとは、思いませんでした。
 各チームの力量が接近していて、混戦になるであろうと予想していました。強いて言えば、大谷翔平投手や中田翔選手といった「若き大砲」を有している日本ハムが少し有利かなと考えていた位です。

 しかし蓋を開けてみれば、大差のレースとなっています。

 これ程の勝率を維持しながら首位を独走するのですから、ソフトバンクの投打のバランスが良いことは明らかです。(記録は8月21日終了時点)

① 打線

 まずは、柳田悠岐選手・李大浩選手・松田宣浩選手のクリーンアップトリオでしょう。この3選手は、打率も3割以上(松田選手がこのところ少し落としていますが)をキープすると共に、25本・26本・25本という本塁打数を示現しています。
 打点も、78・79・72という、ほぼ同水準の高いレベルを示現しているのです。

 「ここぞという場面で3人のうちの誰かが打つ」という、文字通りのクリーンアップを組成していることになります。

 最近の野球では、「どこからでも点が取れる打線」が良いように言われますが、私はそうは思いません。それぞれの選手が役割分担を忠実に熟し、クリーンアップが打点を積み上げる打線が最強であると考えています。
 「どこからでも点が取れる打線」というのは、「チーム全体の調子が悪くなれば、どこからも点が取れない打線」になってしまいがちだと思うのです。
 どんな組織においても「軸」「幹」は必要なのでしょう。

② 投手陣

 一方の投手陣はというと、「絶対的エース」は居ません。

 勝ち星を観てみると、スタンリッジ投手と武田翔太投手が9勝で勝ち頭、摂津正投手が8勝、寺原隼人投手と中田賢一投手が7勝、バンデンハーク投手と二保旭投手が6勝で続きます。

 10勝以上を挙げている投手こそ居ませんが、何と「層の厚い投手陣」でしょうか。前述の投手陣だけでも、7人もの投手が6勝以上=パ・リーグの勝ち星上位20傑に入っているのです。

 これはこれで、もの凄いことだと感じます。

 日本プロ野球史上でも、これほど分厚い投手陣を保持していたチームが存在したのだろうか、とも思ってしまいます。

 これだけの投手陣を用意していれば、
・各々の投手は十分な登板間隔を持ってゲームに臨むことが出来ますし
・故障者が出ても十分に対応可能です。

 「ペナントレースを勝ち抜くには理想的な投手陣」でしょう。
 日本プロ野球2015・パシフィック・リーグにおける、福岡ソフトバンク・ホークスは「破壊力十分の打線」と「粒揃いの投手陣」という、素晴らしいチームとなっています。

 そして、このチームを率いている工藤公康監督も、「新人監督」とは思えないようなチーム造りと采配を魅せています。

 個性豊かなプロ野球選手達、それもこれだけの数のトップクラスの選手達に生き生きと働いてもらうことが、監督の最大の仕事なのでしょうが、工藤監督はこれを見事に実践しています。
 当然ながら、とても難しいことを実行してきているのです。素晴らしいことだと感じます。

 ペナントレースにおけるソフトバンクの独走は、これからも続くことでしょう。

 そして、悠然たる優勝を遂げることでしょう。

 気の早い話で恐縮ですが、ポストシーズンにおける戦い振りを観てみたいと感じます。
 短期決戦における、特に投手陣の運営は興味深いものになると思います。
 
 陸上競技の世界選手権大会2日目、男子400m予選が行われました。
 準決勝に進出するためには、各組の3着までに入り、4着以下の選手の中からタイム上位6名に入らなくてはならないレギュレーションです。

 世界最高レベルの大会ですから、大体「各組の上位2名が44秒台半ば、3着が45秒前後」というのが目安となります。予選から、相応のタイムを叩き出さなければ、次には進めないのです。

 それ位の物差しで予選レースを観ていましたが、第2組で驚くべき記録が出たのです。

 [男子400m予選・第2組の結果]
1着・マスラヒ選手(サウジアラビア) 43秒93
2着・マクドナルド選手(ジャマイカ) 43秒93
3着・マクワラ選手(ボツアナ) 44秒19
4着・ルーニー選手(イギリス) 44秒45
5着・ボネバチア選手(オランダ) 44秒72
6着・マスラ選手(チェコ) 45秒16

 予選で43秒台が出たのです。それも2人。

 頭書の様に、各組の1・2着に入るには44秒台半ばという、概ね自己ベストのタイムを出してこなければならないのですが、一方で「43秒台」というのは「決勝でメダルを争うタイム」ですから、43秒台の記録を保持している有力選手でも、なかなか(というか滅多に)予選では出しては来ない記録なのです。

 それが、同組・同タイムで2人のランナーが出してきた、それもメダルを狙えるレベルとは観られていなかったランナーが叩き出してきたのですから、驚きです。

 全体として「記録が出やすい環境」であったのかというと、そんなことは無く、第1組の1着・バーバーグ選手(アメリカ)は44秒43、第3組の1着・メリット選手(アメリカ)は44秒51、第4組の1着・ジェームズ選手(グレナダ)は44秒56、第5組の1着・ユスフ選手は45秒24、第6組の1着・バンニーキルク選手(南アフリカ)は44秒42、と概ね予想の範囲内の記録でした。
 そして、各組の1着には「メダルを争うメンバー」がズラリと並んでいます。

 そうなると、第2組だけが「尋常ではないタイム」で走ったということになります。いったい何が起こったのでしょうか。

 1着・マスラヒ選手は「アジア新記録」でした。もともと「アジアの英雄」と呼ばれている400mランナーですが、この予選で自己ベスト・サウジアラビア記録・アジア記録を更新した上に「43秒ランナーの仲間入り」を果たしました。

 2着・マクドナルド選手も「ジャマイカ新記録」でした。あの短距離王国ジャマイカの新記録を予選で記録したのです。5着・ボネバチア選手も「オランダ新記録」でした。

 そして、第2組からは5着のボネバチア選手までの5ランナーが準決勝進出を果たしました。また、この組の最下位・6着のマスラ選手でも第5組の1着よりタイムが良かったのです。
 第2組は「圧倒的なレベル」であったことになります。

 第2組に有力選手が集まっていたのであれば、有り得ないことでも無い(それでも予選で43秒台はなかなか出ないと思いますが)のですが、第2組で大会前に「メダルが期待される選手」として指摘されていたのは、3着に入ったマクワラ選手だけでしたから、この好タイムは、やはり不思議です。

 穿った見方で恐縮ですが「レース中ずっと追い風」であったのではないか、「風が回っていた」のではないか、とも考えてしまいます。
 そうでなければ、走り切った6名の選手全員のタイムが良いというのは、説明が付かない様に思うのです。

 他の種目を観ていても、この日の北京オリンピックスタジアムは風向きが頻繁に変わっていました。
 本来、400メートルトラックを一周する種目で、どこを走っても追い風ということは起こり難いことなのでしょうが、次々と風向きが変わるという「奇跡的な偶然」が発生したのかもしれません。

 そんなことをさえ考えさせられてしまうレースでした。

 もちろん、そうした偶然が有ったからと言って、43秒台が2人も出た予選レースの価値がいささかも損なわれるものではありません。

 素晴らしいレースでした。
 [8月17日]
 セントルイス2-1サンフランシスコ
 
 [8月18日]
 サンフランシスコ2-0セントルイス

 [8月19日]
 セントルイス4-3サンフランシスコ

 8月17日~19日にかけて、ナショナルリーグNLの強豪同士、サンフランシスコ・ジャイアンツSFとセントルイス・カージナルスSTLの3連戦が、STLのホーム・ブッシュスタジアムで行われました。

 全米屈指の「ベースボールどころ」セントルイスをホームとするカージナルスは、ワールドシリーズ制覇11度を誇る名門チームです。今シーズンもNL中地区で首位を悠々と走っています。

 2010年以降の5シーズンで3度ワールドチャンピオンに輝いているジャイアンツは、ポストシーズにおける強さが際立つチームです。ここぞというゲームにおける集中力は他の追随を許さないチームでしょう。
 現在NL西地区で、「宿命のライバル」ロサンゼルス・ドジャースと首位争いを演じています。

 この両チームが、シーズンも佳境に入った8月中旬に激突したのです。
 素晴らしいゲームが展開されました。極めて密度の濃いゲームが続いたのです。

① 甲子園大会に勝るとも劣らない全力プレーの連続

 プロ中のプロの選手達のゲームですが、そのプレー振りは「必死そのもの」です。

 ベースボールというスポーツにおけるフィジカル面やメンタル面を極めたプレーヤー達が揃っているのですけれども、そうしたスーパーアスリート達にもかかわらず、余裕を示すプレーは皆無、必死の表情で投げ・打ち・走ります。
 フィジカル面で全力であることはもちろんとして、メンタル面でも全力のプレーの連続なのです。

 「負けたら終わり」のポストシーズンゲームではないのに、このプレー振りには感動しました。
 強豪同士のゲームとはいえ、これがMLBなのでしょうし、MLBの人気の最大の要因なのでしょう。
 
② 両チームの持ち味全開

 最も基本に忠実なチームとも呼ばれるセントルイス、最も気迫に溢れたチームとも呼ばれるサンフランシスコ、両チームの持ち味が存分に発揮された3連戦でした。

 大差・一方的なゲームはひとつも無く、3ゲームとも勝敗の行方は最後まで分からない、見事な競り合いが続きました。

 セントルイスが2勝1敗と勝ち越しましたが、これは「ホームチームの強さ」でしょう。ブッシュスタジアムに詰めかけた4万人以上の「全米で最も目の肥えた観客」と言われる、セントルイスのファンの声援とプレッシャーの前で、カージナルスは負け越すわけには行かなかったのでしょう。

 負け越したとはいえ、ジャイアンツは「互角以上の戦い」を敵地で展開できましたから、十分な手ごたえが得られたことだと思います。

③ マイク・マシーニとブルース・ポウジー、両監督の采配

 両監督の采配も見事でした。

 投手起用においても、「惜しみなく投入する」という感じで、「絶対に勝つ」という気迫に満ちた采配の応酬でした。
 強いチームの指揮官というのは、「チームの中で最も強い闘争心を備えていなければならない」と思いますが、マシーニ監督とポウジー監督は、まさにそうした指揮官であることを示しました。

 第一戦の両チームの先発・ヘストン投手とワカ投手の投げ合い、第二戦のジャイアンツの継投、第二戦と第三戦のサンフランシスコの代打・バムガーナ―「投手」の活躍、第三戦のヤディア・モリーナ捕手の「膝を付いての矢のような二塁送球・盗塁阻止」と決勝ホームラン、等々、個別のプレーを書き始めれば、キリがありません。

 見所満載の3連戦でした。

 夏の甲子園2015の終盤に重なる時期に行われた、MLBの3連戦でしたが、プレーに込める選手達の気持ちの強さは、全く同レベルであったように感じます。

 高年俸の大リーガー達が、「野球小僧」の心持を具備し発揮している。
 それが、MLBそのものなのでしょう。
 陸上競技の世界選手権大会が8月22日に、中国・北京で幕を開けました。

 最初の種目は男子マラソンでしたが、このレースは予想を大きく超えるものでした。
 「サプライズに次ぐサプライズ」のレースであったと思います。

① ケニア勢の惨敗

 前回モスクワ大会でメダルはおろか8位入賞さえ逃した「中長距離王国」ケニアは、今大会に最強のメンバーを送り込んできました。

 何しろケニアと言えば、陸上競技の男子中長距離種目において圧倒的な力量を誇る国であり、次から次へと世界トップクラスの選手を送り出してくるという意味=21世紀に入ってから継続して世界一のポジションを維持している「王国」なのです。

 そのケニアが、現在の世界最高記録2時間2分57秒保持者のキメット選手と前世界最高記録2時間3分23秒保持者キプサング選手を送り込んできたのです。

 他を寄せ付けない圧倒的なスピードを誇る2人のランナーが登場する以上、今回はケニアの圧勝であろうと予想されました。
 この時期の北京の暑さを考慮しても、「共倒れ」はあるまい、それを防ぐために2人の最強ランナーを並べたのであろうと思われたのです。

 ところが、キメット選手もキプサング選手もゴールすることすら出来ませんでした。

② 五輪・世界選手権王者のキプロティッチ選手の敗北

 マラソンの自己最高記録は2時間6分33秒と、世界トップクラスを争うには「平凡」な水準ですが、世界一を決めるレースにおける勝負強さでは「他の追随を許さないランナー」である、ウガンダのキプロティッチ選手が、今大会にも出場して来ました。

 2012年のロンドン・オリンピック金メダリストにして、2013年のモスクワ世界選手権大会優勝者のキプロティッチ選手が、北京大会も制するようなら「五輪優勝・世界選手権優勝2回」という、史上初の快挙なのです。

 大レースでの無類の強さを誇るキプロティッチ選手でしたが、このレースでは6位に敗れました。

③ イタリア勢の健闘

 レースはスタートからスローペース、それも5km15分台後半という、このレベルのレースとしては「超スローペース」で進みました。
いくら酷暑のレースとはいえ、これは遅すぎると感じました。

 そして先頭集団が20km付近を過ぎた辺りで、イタリアのペルティーレ選手が飛び出しました。
 これだけのスローペースでは全く自分のレースが出来ないであろう、ケニアのランナーが満を持して一気に加速するであろうと予想していましたが、飛び出したのはイタリアのランナーだったのです。

 ペルティーレ選手の持ちタイムは2時間9分台ですから、世界選手権大会でメダルを獲得するには力不足の水準です。
 一方で「暑いレースで粘り強い走り」を見せるという意味では、数々の実績を誇るイタリア勢ですから、その伝統を信じての勝負にも観えました。

 単独で飛び出したペルティーレ選手に追い付いてきたのも、同じイタリアのメウッチ選手でした。メウッチ選手の持ちタイムは2時間11分台でしたから、そもそもこのレベルのレースでここまで先頭集団に居ること自体が難しい筈なのですが、それが先頭争いを演じているのです。
 メウッチ選手はペルティーレ選手と並走することなく、先頭に立ちました。

 このレースがいかに超スローペースで進んできたかを示す事象でした。

 とはいえ、さすがに世界トップクラスが集う先頭集団は26km付近で2人のイタリア人ランナーを吸収しました。
 先頭集団はここでペースアップかと思われましたが、ペースは一向に上がりませんでした。

 そして、驚くべきことに世界最高記録を持つケニアのキメット選手が、先頭集団から遅れ始めたのです。
 キメット選手にとっては「ジョギングが続いていた」ようなレースでしたが、「酷暑から来る終盤の失速を怖れてペースを遅くし過ぎたために自分の走りが出来なかった」のではないかと思います。

 やはり、強い選手は自分でレースを創っていかなければならないのでしょう。

④ レソト王国のラモネネ選手がトップを独走

 超スローペースが続きましたから、28km付近で再びイタリアのペルティーレ選手が飛び出すなど、不安定なレースが続きました。

 そして、29km付近でラモネネ選手が飛び出しました。

 レソトのラモネネ選手と放送されましたが、正直に言って「レソト」という国名を初めて聴きました。南アフリカ共和国の中に在る、人口200万人程の王国なのです。
 おそらく、世界一を争うスポーツシーンで「レソト」という国名が初めて世界に報じられた瞬間でしょう。

 ラモネネ選手の持ちタイムは2時間16分台ですから、このレベルのレースで30km近くまで先頭集団に居ることは、ふつう考えられないランナーです。このレースがいかにスローペースであるかを改めて証明しているように観えました。

 ラモネネ選手は、本来選手名が記載されたゼッケンを付けるべき「胸」の位置に、番号が付いたゼッケンを付けていましたし、その付け方も、向かって「左側に偏って」いました。世界レベルの大会に不慣れなランナーであろうと感じられました。

 しかし、ラモネネ選手の飛び出しは元気一杯、他のランナーの様子を見るというよりは「勝ちに行った」ものでした。
 ぐんぐん加速して、32km付近では第二グループに23秒差・100m以上の差を付けての「独走」となったのです。

 有力選手が入っている第二グループは、「2時間16分台のランナーだからいずれは失速する」と観て、放置したのでしょうが、このまま残り10kmを押し切る可能性も感じられました。何しろ、相当持ちタイムの低いランナーでも十分付いて行ける「超スローペース」のレースでしたから。

 ところが、34.8kmに設置されていた給水所で、ラモネネ選手は自分のボトルを見つけることに手間取り、止まってしばらく探していました。
 世界選手権のレースで「走るのを止めてボトルを探す姿」というのは、本当に珍しいものです。給水所で自分のボトルを取り損ねて、一般向けに用意されているジェネラルドリンクで代用するという姿は、時々見られますが・・・。

 走るのを止めてしまえば、後続との差が一気に縮まるのは当然のことです。100m以上有った差が20~30mに詰まりました。
 こうなれば、実力差が一気に出てしまいます。ラモネネ選手は、直ぐに捕まりました。そして追い抜かれました。

 ここでレースの主役から落ちてしまったラモネネ選手ですが、14位でゴールしました。2時間17分17秒のシーズンベスト記録でした。有力選手が自己記録に遠く及ばない記録で何とか走り切る、あるいは次々に棄権するという「極めて厳しい環境下」でのレースで、持てる力を存分に発揮した、素晴らしいレース振りであったと思います。

⑤ エリトリアのゲブレセラシェ選手(19歳)が優勝

 36km付近でラモネネ選手をまず抜いたのは、ゲブレセラシェ選手でした。エチオピアの「皇帝」と呼ばれたハイレ・ゲブレセラシェ選手を思い出させる名前ですが、もちろん別人。エリトリアは1991年にエチオピアから独立した国ですから、同様の名前のプレーヤーが居るのでしょう。

 ゲブレセラシェ選手は19歳、持ちタイムは2時間7分台と報じられました。世界トップを狙うには力不足というタイムですが、このレースは「ここからの6km競走」ですから、十分に勝負になります。

 それにしても、このレースの先頭集団には「2時間2分台から2時間16分台まで様々な走力のランナーが混在していた」のです。
 世界選手権大会の先頭集団としては、本当に珍しいと思います。

 37.5km付近で、ゲブレセラシェ選手にエチオピアのツェゲイ選手が追い付きました。

 ツェゲイ選手の持ちタイムは2時間4分台、ケニアに続く陸上競技中長距離種目の強豪国であるエチオピアの代表ランナーであり、20回以上のマラソン経験を持つベテランですから、本来ならゲブレセラシェ選手より優位にあるランナーの筈なのですが、「残り5km」となったこのレースでは、「どちらの余力が大きいか」がポイントでした。

 しばらく2人の並走が続き、38.5km付近でゲブレセラシェ選手が飛び出しました。一気にツェゲイ選手を引き離し、「勝ちに行った」のです。
 ツェゲイ選手に追いかける余力は無く、再三後ろを振り返りました。「2位狙い」に切り替えたのです。

 ようやく「レースの形が決まった」かに観えましたが、まだまだサプライズが待っていました。
 40.5km付近でゲブレセラシェ選手が「コースが分からない」という仕草を見せました。
 こうした大会で「単独で先頭を走る経験」が無かったのでしょう。これまでは、廻りのランナーに付いて行けば良かったのです。

 コースを教えて貰い、ゲブレセラシェ選手はゴールを目指します。

 2時間12分27秒というタイムで、ゲブレセラシェ選手が優勝しました。

 2位はツェゲイ選手、3位はウガンダのムタイ選手でした。

 本当に不思議なレースでした。

 19歳、マラソン3回目、持ちタイム2時間7分台の選手が世界で優勝したものですから、こういう「酷暑のレース」であれば日本人ランナーでも勝負になる、リオデジャネイロも東京も「酷暑のレース」だからチャンスは有る、という見方もあるのでしょう。

 あるいは、「酷暑のマラソン」には「若くてレース経験が少なく、潜在的な肉体疲労が蓄積されていないランナー」の方が力を発揮できる、という考え方も有りそうです。

 しかし、話はそんなに単純ではないでしょう。

 「酷暑のマラソン」においては、世界最高タイム保持者でも走り切ることが出来ず、大レースで強いランナーも力を発揮できないとすれば、「どういう物差し」で代表を選べばよいかは極めて難しいと観るのが妥当でしょう。

 もちろん、「酷暑」の分析も必要でしょう。気温と湿度の関係、レース開始時とゴール時の環境変化、コースのアップダウン・サーフェイスとの関係、等々、分析・判断しなければならない要素は沢山あります。
 気温30℃・湿度50%に向いているランナー、気温25℃・湿度75%に向いているランナー、等々、バリエーションは無限に広がってしまいそうです。

 秋から冬・春にかけて行われることが多い「オリンピック代表選考レース」の成績と、前述の分析・判断を考え合わせて、選考レースでの成績が上位の選手より、「酷暑のマラソン」に強いであろう選手を選出するとすれば、選手等からの抗議や色々な問題が生ずるでしょう。
 キッチリと説明し、選手・コーチ・ファンの皆さん等々に理解・納得してもらうのは、容易なことではなさそうです。一方で、それこそが「オリンピックで好成績を残せる選手を選ばなければならない」という、代表選考メンバーの方々の仕事であることも、間違いありません。

 今回の世界選手権大会・男子マラソンは「ロシアンルーレット」のようでした。

 マラソンという、最長距離の競走種目の難しさを改めて感じさせてくれるレースでもあったと思います。
 8月18日の北海道日本ハム・ファイターズと千葉ロッテ・マリーンズ戦に先発した、日本ハムの大谷翔平投手は、9イニング・115球を投げて、被安打6・奪三振12・与四球1・失点0という素晴らしい内容で完投シャットアウト、チームの6-0の勝利に貢献すると共に、今季12勝目(3敗)を挙げました。

 12勝は自身の1シーズン最多勝利数でもあります。

 そして、8月19日時点で大谷投手はパシフィックリーグの「投手三冠王」です。

① 勝利数

 トップの大谷投手が12勝、ロッテの涌井投手が10勝、同僚のスタンリッジ投手が9勝で続きます。

② 防御率

 大谷投手が2.11でトップ、オリックスのディクソン投手が2.28で続き、オリックスの西投手が2.34で続きます。

③ 勝率

 大谷投手が.800でトップ、ロッテのイ・デウン投手が.750、日本ハムの吉川投手が.643で続いています。

 勝利数と勝率は、セ・パ両リーグを通じてトップです。

 まだ21歳になったばかり、NPB3年目の大谷翔平投手ですが、既にパ・リーグというかNPBを代表する投手に成長したことが明らかです。

 この日の投球でも、最速159kmの速球を投げ込んでいましたが、安定して160km前後の速球を投ずると共に、カーブを始めとする変化球を交えての投球は、容易なことでは攻略できないものです。

 大谷投手といえば、「素晴らしい投球を披露していたかと思えば突然崩れる」という欠点がありましたが、この唯一と言っても良い欠点の「現出頻度」も減ってきているように感じられます。

 メンタル・フィジカル両面が順調に進化しているということでしょうか。

 大谷翔平は、「投げている姿を観ているだけでワクワク」させてくれるプレーヤーです。
 日本プロ野球を代表する「投手」としての活躍が、今後も期待されます。
 [大会14日目・決勝]
 東海大相模(神奈川)10-6仙台育英(宮城)

 8回を終えて6-6という、両校一歩も引かぬ接戦。

 9回表に東海大相模が4点を挙げて、勝負を決めました。
 両チームが持ち味を発揮した、素晴らしい決勝戦であったと思います。

 以下、順不同の感想です。

① 佐藤世那投手の調子

 故障からの回復の過程で「投げ込み不足」が指摘されていた佐藤投手ですが、この試合でもその影響が観られました。

 佐藤世那投手が本調子であれば、決勝戦は一層凄まじい競り合いとなっていたことでしょう。

 初回や9回表の東海大相模の攻撃の際には、佐藤投手の投球が「高めに浮き」ました。打ち頃の変化球が、ベルト付近に集まっていました。もちろん、その球を見逃さずに痛打した、東海大相模打線のレベルの高さも特筆されます。

 7回表・8回表に観られた、「低目に変化球を投げ込む」佐藤投手本来の投球が、1回表・9回表に発揮できなかったことが、佐藤選手と仙台育英にとって最も惜しまれるところでしょう。

② 杉崎選手・豊田選手の3・4番の破壊力

 東海大相模の3・4番は、今大会NO.1であったと思います。
 打撃技術の高さ・パワーはもちろんですが、「ここぞという場面」での勝負強さは素晴らしいものでした。

 この3・4番の存在が、今大会を通じてチームに勇気と勢いを与え続けていたと感じます。

③ 佐藤翔太選手の走者一掃の3塁打

 この試合を決勝戦に相応しい好ゲームにしたのは、6回裏の仙台育英の攻撃、二死満塁からのセンターオーバーの3塁打でした。
 東海大相模のエース・小笠原投手の投球に対して粘りに粘り、ついに真ん中低めの投球をキッチリと捉えたスイングは「技術を超えたもの」であったと感じます。

 この同点打は仙台育英ナインに大いなる勇気を与え、試合の流れを引き寄せました。

 東海大相模高校は、「優勝候補筆頭」と呼ばれた重圧を跳ね除け優勝しました。
 同校として45年振りの優勝であり、待望久しい全国制覇でした。

 仙台育英学園高校にとっては大変残念な結果でしたが、その力が「優勝できるレベルに在ること」を明確に示しました。26年振り2度目の決勝戦での悔しさは、続く選手達に受け継がれていくことでしょう。

 全国3,906校が参加した「第97回高等学校野球選手権大会」は、東海大相模の優勝で幕を閉じました。

 素晴らしいプレーの数々に、心から拍手を送らせていただきます。
 8月19日の阪神タイガースと読売ジャイアンツのゲーム、5回裏にジャイアンツが12点を取りました。

 試合は、タイガースが2回表に3得点、ジャイアンツが5回裏に12得点、それ以外のイニングは0点という、珍しいスコアボードが出来上がりました。

 この「12点」は、打者17人、ヒット10本、2塁打6本に4四球を交えて達成されたものです。記録ずくめのイニングでした。
 こうした超ビッグイニングは、多くのヒットも必要ですが、「多くの四死球」無しには、なかなか成立しないことが分かります。

 夏の甲子園2015真っ只中の時期に、達成された記録でした。

 「何が起こるか分からない」というのは、高校野球・甲子園大会のフレーズ、精神的にも肉体的にも成長途上のプレーヤー達による試合で現出するものだと思っていましたが、必ずしもそうでは無く、「野球というスポーツに本質的に内在している要素」であることを、改めて感じさせてくれる試合でした。

 やはり、野球は面白いのです。
 [準決勝・第一試合]
 仙台育英(宮城)7-0早稲田実(西東京)

 [準決勝・第二試合]
 東海大相模(神奈川)10-3関東一(東東京)

 3回戦や準々決勝では大接戦が多かったことから、準決勝も競り合いが予想されましたが、2試合とも一方的なゲームとなりました。意外な試合内容と言えるでしょう。

① 大量先制点の威力

 仙台育英は3回表に一挙3得点、東海大相模は1回表に4得点を先制し、「試合の流れ」を完全に掴んで、優位に戦いを展開した印象です。

 リードされた早稲田実と関東一は、早い段階での反撃を企図し、僅かに焦りも出てしまい、得点できない上に失点を重ねてしまい、結果として大差のゲームとなってしまいました。

② 早稲田実と関東一には「達成感」が有ったか。

 「高校野球100年を標榜する大会」において、100年前の第一回大会にも出場しベスト4に進出していた早稲田実は、100年後の今大会においてもベスト4に進出しました。
 準々決勝終了後の和泉監督の「100年前の先輩に並ぶことが出来て嬉しい。」というコメントにも、達成感が表れていました。

 関東一は、同校史上初の「夏の甲子園ベスト4」でした。やはり準々決勝終了後のオコエ選手の「学校史上初のベスト4で嬉しい。」というコメントから、達成感が感じられます。

 こうした、一定の「達成感」を獲得したチームにとっては次の試合は、ある意味で「夢の試合」になってしまいますから、気が付かないレベルで、地に足が付かないものになってしまうのかもしれません。

 一方で、仙台育英には「東北に真紅の大優勝旗を」という目的が有り、東海大相模には「優勝候補筆頭として負けられない」という気持ちが有ったことでしょう。
 両校とも「まだ何も手にしていない」という心境だったのではないでしょうか。

 加えて、投手力・打撃力そして全体のチーム力という点から見ても、わずかに上回っていたのが仙台育英と東海大相模であったと思います。

 「気持ちの差」に「地力の差」がプラスされて、思わぬ大差のゲームになってしまったのでしょう。

 さて、決勝は宮城代表と神奈川代表の史上初の対戦となりました。
 大会前から優勝候補と言われていた2校が、「順当に」決勝に進出したとも言えそうです。

 両校とも、強力な打線と投手力、・堅い守備力を備えていますから接戦が予想されますが、エース級の投手が2人居る東海大相模の方が、僅かに有利な感じがします。
 対する仙台育英としては、「初回の東海大相模の攻撃を抑える」とともに「先制点を挙げる」ことで、互角以上の戦いを呼び込むことが出来るのでしょう。

 素晴らしい決勝戦が期待されます。
 野球の神様から「この試合の中で好きな打席においてホームランを1本打たせてあげる」と囁かれたとしても、やはり9回表3-3の同点、二死ランナー二塁の打席であったことでしょう。

 関東第一高校のオコエ瑠偉選手がホームランを放ったのは、そういうシチュエーションでした。
 もちろん「野球の神様の囁き」無しのホームランでした。

 8月17日の準々決勝・第四試合・興南高校と関東第一高校の試合で、オコエ選手は比屋根投手に完全に抑え込まれていました。
 第一打席から、内角に食い込んでくる投球に三振・凡打を繰り返していたのです。

 試合は、3-2で逃げ切りを図った関東一の継投に対して、興南が執念を見せて7回裏に同点に追いつきました。こうなると「後攻め」の方が有利になります。

 そして、頭書の9回表の打席を迎えました。
 前4打席の経験が有るとはいえ、この打席でもオコエ選手がヒットを打てるようには観えませんでした。タイミングが全く合っていないのです。

 比屋根投手の勝負球が投じられました。やはり内角、やや低めのストレート、キレも十分の投球であったと思います。

 オコエ選手のバット一閃。打球はライナーで左中間スタンドに突き刺さりました。
 もの凄い打球でした。

 タイミングが完璧に有っていました。キチンと前で捌くことが出来ていました。

 「ここしか無い」という場面で、オコエ選手が魅せた、素晴らしい打撃でした。

 この打席に入るオコエ選手の表情は、とても冷静な印象でした。眼も大きく見開かれではおらず、眉も動かず、「物静かな様子」でした。

 一方、試合後のインタビューでオコエ選手は「内角球を狙っていた。『来た』と思った。打つ前から嬉しかった。」とコメントしています。
 「闘志満々」であったことが明らかです。

 「旺盛な闘争心」と「冷静さ」の両立は、高いレベルのアスリートにとって不可欠なものですが、「同時に保持するのは極めて難しいこと」だと思います。
 厳しいゲームの最中に、評論家のように客観的な心持ちでゲームを眺める人・プレーヤー(闘争心皆無の)は数多く居ますが、高いレベルで両立させているプレーヤーは中々居ません。

 この2つの要素を両立させることが出来るアスリートこそが、日本トップクラス・世界で戦って行けるプレーヤーであろうと、私は考えています。
 オコエ選手には、既に備わっている要素のように観えます。

 加えて、この状況で打てている点は、以前にも書きましたが「持っているプレーヤー」であることを如実に示しています。

 同点、9回表、二死ランナー二塁、という状況ならば、「ヒットを打つこと」でも十分に「持っている」ことの証明になります。
 しかし、オコエ選手はホームランを放ったのです。

 「持っているものが『とても大きい』こと」が明らかでしょう。

 この大会、ここまで一本のホームランも打っておらず、高い走力を活かした長打や驚異的な守備力で注目されていた選手が、「ここしか無い」あるいは「ここで打ったらもの凄い」という場面で、ヒットどころかホームランを打つのですから、これはもう「奇跡のレベル」かもしれません。

 「来た」と思って、打つ前から嬉しかった、といっても「打ち損ね」は在るものでしょう。
 というより、状況からすれば「力んで打ち損ねる可能性」の方が高いのが、野球というスポーツのように感じます。

 オコエ選手が、比屋根投手の一球入魂の内角ストレートを「予想していたとしても」上手く打てるのは、10回に2~3回、ホームランに出来るのは10回に1回位なのではないでしょうか。(勝手な推測で恐縮ですが)
 その1回を、あの局面で披露出来るプレーヤーというのは、「何か」を持っていることは間違いないということになりそうです。

 想像を遥かに超えたオコエ瑠偉選手の潜在能力が、準決勝以降の戦いでも発掘されていくかもしれません。
 
 8月17日に行われた準々決勝の第一試合は、早稲田実が九州国際大付を8-1で破り、準決勝に駒を進めました。

 打ち合いが予想された試合でしたが、早実が4回までに3ホームランを始めとする攻撃で6点を挙げて、完全に試合の流れを掴み快勝しました。
 単打や四球を繋いでの得点を得意とする早実の3ホームランは予想を超えたものでした。

 富田選手の2打席連続本塁打と清宮選手のライナーの本塁打は、九国大付への強烈なパンチになったと思います。

 さて、この試合における、今大会注目度NO.1プレーヤーである清宮選手の打撃は、見事なものでした。

 第二打席のホームランは、最短距離でバットが出て来る「清宮選手本来のスイング」から生まれたものだと思います。極めてコンパクトなスイングながら、極めて速いスピードを実現しているスイングで、高い打率と十分な飛距離を両立させることが出来る、素晴らしいスイングだと感じます。

 特に、「上から叩くスイングプレーン」は秀逸。
 大振りしていないのに、大きな飛距離を生む、とても合理的なスイング。加えて、タイミングとバットに当てる位置がドンピシャ。この感性は、天性のものでしょう。

 「美しい」と思います。

 第四打席のレフトオーバー・フェンス直撃の二塁打の方は、水平なスイングから逆方向に大飛球を運びました。
 こちらも、タイミングとバットに当てる位置が完璧。

 清宮幸太郎選手は、本当にバットコントロールが上手いプレーヤーなのです。

 大会前には、少し人気が先行しているとの見解も有りましたが、現在では、「高校一年生として破格のバッター」であることに異論を差し挟む人は極少数でしょう。

 現時点でも相当完成度の高い打撃能力を保持している清宮選手の、今後の成長がとても楽しみです。
 オーストラリアのジェイソン・デイ選手が、8月16日に最終日を迎えた全米プロ選手権大会を制しました。
 デイ選手にとって初めてのメジャートーナメント優勝でした。

 2015年の四大大会を締めくくる今大会、今季のメジャー3大会連続、全米オープン・全英オープン・全米プロ、「最終日・最終組」で回ったデイ選手が優勝したというのは、今シーズンの活躍に対するご褒美のような感じもします。

 優勝争いは、二日目を終わった時点での本ブログの記事でも観たように、ジェイソン・デイ、ジョーダン・スピース(アメリカ)、ジャスティン・ローズ(イングランド)の3選手の争いとなりました。

 サンデーバックナインの後半に入って、ローズ選手が伸び切れず脱落し、デイ選手とスピース選手の競り合いになりました。

 15番ホールを終えて、デイ選手が19アンダーパー、スピース選手が16アンダーと3打差。デイ選手が相当有利な状況でしたが、メジャー未勝利であったデイ選手にとっては、今季メジャー2勝のスピース選手の存在は大きなものだったことでしょう。

 16番ホール・パー5・569ヤード。
 デイ選手のティーショットは365ヤードと報じられました。PGAツアー屈指の飛ばし屋の力を示すロングドライブでした。そしてキッチリと2オン。
 一方のスピース選手は第2打をバンカーに落としてしまいましたから、デイ選手が相当有利かと思われましたが、スピース選手はこのバンカーショットを50cmに寄せます。さすがに、こうしたショットが打てなければ、メジャー連覇(マスターズ→全米オープン)は出来ないのであろうと感じさせる、「ここぞという場面」での正確なショットでした。

 デイ選手も2パットでホールアウトし、両選手ともバーディ。デイ選手が20アンダー、スピース選手が17アンダーとなりました。

 17番ホール・パー3・223ヤード。
 距離の有るパー3ホール。ティーショットのミスが大トラブルに繋がる可能性の有るホールでしたが、両選手ともグリーンをヒットしました。

 デイ選手が13m位、スピース選手が11m位と、二人とも長いバーディパットとなりました。
 まずデイ選手がファーストパットを50cm弱に寄せました。メジャートーナメントの難しいグリーンで、優勝を争う状況では「ベストショット」であったと思います。
 もし、上り3ホールで「優勝を決めたショット」を選ぶとすれば、この17番ホールのファーストパットだと思います。「3打差で最終ホールを迎える」という絶対優位な展開を担保したプレーでした。

 このデイ選手のパッティングに少し押されたのか、パットの名手・スピース選手のファーストパットはショートし、1.5m位のパーセービングパットを残しました。
 しかし、さすがはスピース選手。この「嫌な感じ」のパットをキッチリと決めてパー。デイ選手との差を広げられることはありませんでした。

 18番ホール・パー4・520ヤード。
 距離の有るパー4、難しいホールです。
 とはいえ、このホールのティーインググランドに「3打差」で立つことが出来たデイ選手は、落ち着いていました。ティーショットがFWをヒットします。
 一方のスピース選手もFWヒット。もし、デイ選手にミスが生まれれば、何時でも逆転するぞ、という気迫は全く衰えていません。凄いプレーヤーです。

 2人の第2打も、綺麗にグリーンをヒットしました。2人の技術の高さ、今大会での調子の良さを感じさせるショットの応酬であったと思います。

 この最終ホールの第2打がグリーンをヒットした時、デイ選手の悲願のメジャートーナメント制覇が決まりました。
 観客の大きな拍手を受けながらグリーンに登ったデイ選手の目から涙が溢れました。

 相当長いパッティングでしたが、涙を拭って打ったファーストパットは30cmに寄せるグッドショットでした。
 
 20アンターパーという優勝スコアは、メジャートーナメント歴代最多アンダーパー記録という素晴らしい成績でした。これまでの記録は、タイガー・ウッズ選手の全英オープン・セントアンドリュースにおける19アンダーでした。

 20世紀終盤から長く続いた「タイガー・ウッズ選手の時代」から「ロリー・マキロイ選手の時代」に移り変わったかに観えた2013~14年シーズンでしたが、2014~15年シーズンにはジョーダン・スピース選手とジェイソン・デイ選手が覇権争いに加わりました。
 圧倒的な飛距離を誇るババ・ワトソン選手やダスティン・ジョンソン選手も、一歩も引かぬ構えでしょう。

 現在の世界のゴルフ界は、まさに「群雄割拠の時代」なのです。
 8月17日に予定されている、準々決勝の組合せが決まりました。

・第一試合 早稲田実(西東京)VS九州国際大付(福岡)
・第二試合 花咲徳栄(埼玉)VS東海大相模(神奈川)
・第三試合 秋田商(秋田)VS仙台育英(宮城)
・第四試合 興南(沖縄)VS関東一(東東京)

 地域別で見れば、関東が4校、東北が2校、九州が1校、沖縄が1校となりました。

 関東は6校が三回戦に進出し、内4校がベスト8に進出しました。今大会は、関東地区のチームの健闘が目立つということになります。
 東北地区からは2校が準々決勝に進出しました。抽選によりここでの対戦となりましたが、真紅の大優勝旗を初めて東北にという悲願に向けて、可能性を残した形です。

 個々のカードで観れば、第一試合は強打のチーム同士の対戦となりました。今大会NO.1スラッガー・山本武白志選手を擁する九国大付が長打で得点を狙い、早稲田実が繋ぐ攻めで得点を重ねる形でしょう。
 点の取り合いの中で、試合の流れを掴んだ方が有利になります。

 第二試合は関東勢同士の激突。
 こちらも「悲願の夏優勝」を目指す埼玉代表・花咲徳栄にとっては、今大会優勝候補の筆頭・東海大相模との大一番になりました。攻守とも高いレベルに在る東海大相模を破るためには、小笠原・吉田両投手を中心とする、東海大相模の投手陣をどのように攻略するかがポイントとなります。

 第三試合は東北勢同士の対戦。
 少しでも甘いコースなら全て「強く叩いて行く」という感じの、仙台育英の強力打線を、秋田商の成田投手が抑え切れるかどうかがポイントでしょう。ロースコアになれば秋田商、5点以上の勝負なら仙台育英が有利です。

 第四試合は波に乗るチーム同士の戦い。
 優勝候補の一角・中京大中京を破った関東一は、一番打者のオコエ選手の出塁率が高くなるようであれば、自在の攻めが展開できるでしょう。興南は、打撃が戻ってきている印象。もともと集中打に定評の有るチームですから、ビッグイニングを造れるようなら好勝負となります。

 以上、今大会も見所満載の準々決勝となりました。

 いつの大会でも「必ず優勝校を観ることが出来る準々決勝デイ」は、最も人気が有ります。

 既に大人気となっている今大会ですから、朝6時過ぎにはソールドアウトになるのではないかと、要らぬ心配?をしています。
 試合の流れを変えるプレーでした。

 関東一と中京大中京のゲーム、1回表の中京の攻撃、2死満塁で打席には6番佐藤選手。先制点を挙げて有利に試合を進めたい中京と、絶対に無失点で切り抜けたい関東一という、試合開始早々の重要な場面。

 振り抜いた佐藤選手の打球はセンターを襲いました。センターオーバーの長打、満塁の走者一掃のタイムリーだと思いました。長く野球を見ていれば、ギリギリの打球(ファインプレーが生まれる可能性を秘めた打球)と、到底捕ることが出来ない打球は、分かります。

 この打球は、打球スピード・コース共に文句無しのヒットであり、到底捕れない打球に観えたのです。

 関東一のセンターフィールダー・オコエ選手が打球に向かって走ります。帽子を飛ばして走ります。そして左腕を一杯に伸ばしました。それでも、打球はグラブを掠めて抜けたように観えました。

 大歓声が甲子園球場に木霊しました。捕っていたのです。

 オコエ選手が笑顔で同僚と共にベンチに向かって走ってきました。

 驚くべきというか、奇跡的なプレーでした。

 普通のファインプレー(言葉に矛盾が有りますが)というレベルを、遥かに超えたプレーであったと思います。
 オコエ選手自身も「捕った」というより「グラブに入った」という印象なのではないでしょうか。

 この超ファインプレーが試合の流れを決め、9回表までの0-0の接戦を生み出したのでしょう。

 専門家から見れば、まだまだ荒削りなオコエ瑠偉選手なのでしょうが、プロ向きの選手であろうと感じます。
 これ程のプレーは「持っているプレーヤー=スターにしか出来ないもの」でしょうから。
 [大会11日目・第二試合]
 関東一(東東京)1-0中京大中京(愛知)

 手に汗握る熱戦でした。

 今大会は、まだ3回戦2試合・準々決勝・準決勝・決勝を残してはいますが、今大会のベストゲームである可能性が高いと思います。

 0-0で迎えた9回裏関東第一高校の攻撃も1死ランナー無し。中京大中京高校のエース・上野投手の投球が冴え渡り、終盤に来て再度球威が増して来ている印象でしたから、このまま延長戦突入かとも思われました。

 関東一の打席には5番の長嶋選手が入りました。その初球、真ん中への速球を振り抜いた打球はレフトスタンド・ポール寄りに吸い込まれました。サヨナラ勝ちを決める一発でした。

 長嶋選手のコンパクトなスイングが功を奏した当たりであったと感じます。

① 両チームの投手の好投

 中京の上野投手は関東一打線を5回までノーヒットに抑え込みました。130km台後半のストレートを主体とした見事な投球でした。

 関東一は阿部投手と金子投手の継投で、中京打線を9イニング・0点に封じました。阿部投手はヒットを打たれるものの要所を締める投球、金子投手は130km台中盤のストレートと縦に落ちるスライダーで、中京打線に的を絞らせませんでした。

 特に関東一にとっては、金子投手の好投が大きな支えになったと感じます。ゲーム終盤を「互角の展開」に持ち込むことが出来たからです。

 強力打線を擁する両チームの試合が、9回表を終って0-0というのは、試合前には想像できないことでした。

② 両チームの守備陣の活躍

 両チームの内外野の守備は見事でした。

 1回表の関東一・オコエ選手の超ファインプレーが、この試合の流れを創ったのかもしれません。
 この後、両チームの内外野は素晴らしいプレーを連発しました。「打ちも打ったり、取りも取ったり」という言葉が有りますが、その言葉通りのプレーがこれだけ多く観られた試合も滅多にないでしょう。

 特に関東一のバント守備は秀逸でした。1塁ランナーを2塁で差す、2塁ランナーを3塁で差す、思い切った守備を展開し悉く成功させました。
 これだけ思い切った守備を展開しながら、記録に残らない小さなミスやフィルタースチョイスがひとつも無かったというのは、凄いことだと思います。

 中京にとって惜しまれるのは、前半の逸機でしょう。
 上野投手が関東一をノーヒットに抑えている間に1点でも取れていれば、試合の流れは全く異なったものになっていたことでしょう。

 関東第一高校と中京大中京高校の「普段の練習量」が伺われる、素晴らしいゲームでした。
プロフィール

カエサルjr

Author:カエサルjr
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