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[平成31年4月28日・天皇賞(春)・京都競馬場]
1着 フィエールマン(騎手 クリストフ・ルメール)
2着 グローリーヴェイズ(同、戸崎 圭太)
3着 パフォーマプロミス(同、北村 友一)

 「平成」最後のG1競走・第159回天皇賞(春)は、最後の直線300m以上に渡る壮絶な叩き合いの末、フィエールマンがグローリーヴェイズをクビ差押さえて優勝しました。

 残り200m付近で、一度は先頭に立ったグローリーヴェイズでしたが、内から差し返すフィエールマンに再逆転を許し、「大魚を逸し」ました。

 このレースでフィエールマンに騎乗したルメール騎手は、これで所謂「八大競走」完全制覇を達成しました。
 まさに「偉業」です。

 「八大競走」というのは、1984年にグレード制が導入される以前、中央競馬を代表する8つの大レースを指します。
 それは、桜花賞、皐月賞、優駿牝馬(オークス)、東京優駿(日本ダービー)、菊花賞、天皇賞(春)、天皇賞(秋)、有馬記念の8レース。

 クラシック競走5レース+天皇賞(春)(秋)+有馬記念という組合せは、1983年以前においては「最も高い栄誉」が与えられるレース群であり、その頃にグレード制が有ったとすれば、この8レースがG1であったことでしょう。

 もちろん、中央競馬最高賞金レースであるジャパンカップや、マイル王を決める安田記念、短距離王を決めるスプリンターズステークスといったレースの重要性は言うまでも無いことで、現在では「八大競走」というカテゴリーは存在しないのですけれども、特にオールドファンにとっては、この言葉を耳にすると独特の感慨が有ります。

 加えて、「八大競走完全制覇の難しさ」が、その価値をより重くしていると感じます。

 中央競馬の長い歴史の中で、保田隆芳騎手、武豊騎手、そしてクリストフ・ルメール騎手の3人しか、完全制覇を達成していません。

 武豊騎手は、我が国の競馬を代表する存在として、国際的にも良く知られる存在ですが、ルメール騎手の今回の快挙によって、再び脚光を浴びたのが保田隆芳騎手でしょう。

 保田騎手は、1936年(昭和11年)から1970年(昭和45年)まで、東京・尾形藤吉厩舎(名門。当時の日本競馬を代表する厩舎でした)の主戦ジョッキーとして大活躍しました。
 「名人」と称された騎乗は、特に天皇賞10勝に観られるように、騎手の技量がより必要なレースにおいて存分に発揮されました。

 通算「1,295勝」は長い間、中央競馬騎手最多勝記録として輝きました。
 「1,295」と聞いただけで、当時の競馬ファンには、その意味が分かったものです。
 大袈裟に言えば、競馬界における固有名詞の様な数字であったと感じます。

 この当時に比べて、現在に至る過程でレースの数自体が相当に増えましたから、「1,295勝」の価値は、依然として極めて高いものでしょう。

 この伝説的な「1,295勝」は、野平祐二騎手(1,339勝)に追い抜かれました。しかし、大騎手であり、当時の人気NO.1ジョッキーでもあった野平騎手にしても、皐月賞、日本ダービー、菊花賞の牡馬クラシックレースは一度も勝っていません。

 この野平騎手の最多勝記録を更新したのが、加賀武見騎手(1,352勝)でした。
 しかし、大レースに強かった印象がある加賀騎手にしても、どうしても皐月賞だけは勝てませんでした。

 20世紀から21世紀にかけて活躍した、JRAの大騎手ならば、岡部幸雄騎手が挙げられます。
 通算2,943勝という大記録を打ち立て、数々の大レースを何度も制しましたが、不思議な事に、桜花賞にだけは縁が無かったのです。

 こうした数々の大騎手にしても、「八大競走完全制覇」は厚い壁であったのですが、クリストフ・ルメール騎手は、2015年に中央競馬に本格参戦後、僅か5年で成し遂げました。
 「驚異的」と言うしかないでしょう。

 Cルメール騎手による「八大競走」制覇の内容は以下の通りです。

① 桜花賞 アーモンドアイ(2018年)、グランアレグリア(2019年)
② 皐月賞 サートゥルナーリア(2019年)
③ オークス ソウルスターリング(2017年)、アーモンドアイ(2018年)
④ 日本ダービー レイデオロ(2017年)
⑤ 菊花賞 サトノダイヤモンド(2016年)、フィエールマン(2018年)
⑥ 天皇賞(春) フィエールマン(2019年)
⑦ 天皇賞(秋) レイデオロ(2018年)
⑧ 有馬記念 ハーツクライ(2005年)、サトノダイヤモンド(2016年)

 2019年シーズンに入って、残されていた皐月賞と天皇賞(春)を制して、一気に達成したことになります。

 加えて、ルメール騎手は天皇賞(春)制覇の翌日4月29日には、史上最速で通算1,000勝も達成しています。

 皆さんご承知の通り、「ルメール騎手の騎乗にはミスがとても少ない」のです。
 レース前の戦略・戦術の構築(馬主や調教師を交えての打合せの上でしょう)、それをレースできっちりと実践する実行力、そして何より騎乗馬に負担をかけない素晴らしい騎乗技術と柔らかい騎乗フォーム。

 当代随一のジョッキーであることは、衆目の一致するところです。

 フランス競馬において11シーズン(718勝)を戦ってきた後に、日本に登場したこともあり、既に39歳のルメール騎手ですが、「油の乗り切った騎乗」を魅せてくれていますので、「令和」の競馬も、当分の間は「Cルメールの時代」が続くことでしょう。
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