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 温故知新2020陸上競技編その10です。

 今回は110mH競走、いわゆる「110パー」です。
 110mのハードル競走は男子にしかありませんから、わざわざ「男子」と表記する必要が無いのです。そして、かつて陸上界では「110パー」と呼んでいました。(今でも呼んでいるかもしれません)

 とても「精巧・精密」な種目です。

 110mを走る間に、高さ106.7cm・3.5フィートのハードルを10台越えて、ゴールインするタイムを競います。(相当高い障害物です)
 髙いレベルのスプリント力を具備していることを前提として、オリンピックの決勝に進むハードラーならば各レースにおいて、第1ハードルまで(13.72m・45フィート)の1歩1歩の位置は1cmとは違わないでしょうし、各ハードル間(9.14m・30フィート)の足の着地位置も1cmとは違わないでしょうし、最終ハードルからゴールまで(14.02m・46フィート)の1歩1歩の位置も殆ど同じでしょう。
 そうした精緻な走り・プレーが出来ないランナーでは、オリンピック決勝は遠い存在なのです。

 例えば、ハードル間9.14mは、身長190cm前後の長身ランナー(オリンピックにおいては普通のサイズです)にとっては「3歩で走るには短過ぎる」ことから、思い切り走ってしまっては、次のハードルに近付き過ぎてしまい、とても飛び辛いし、「上に飛ぶ」ことになってしまいますから、減速に繋がり易いのです。
 可能な限り「走り抜けるイメージ*」でクリアして行きたい各ハードルを、流れるように熟すには、ハードル間の1歩を短くしていかなくてはならず、3歩の内のどれをどれくらい短くするか、どれとどれを短くするか、といったポイントについては、各ハードラーが自らの体型や筋力の付方等々の要素を十分に考慮した上で、指導者と相談を重ね、一歩一歩の位置を決め、そこに着地するように、練習を重ねて行かなければならないことは、とても基本的なことでしょう。(*高さ106cmを越える障害物を「走り抜けるイメージ」で次々とクリアして行こうとすること自体が、ミラクルな話であることは言うまでも有りません)

 スタートから第1ハードルまでの入り方、「13.72m」の処理は、タイムを上げて行くために最も大切な部分です。どんな熟練のハードラーでも、毎レース、この13.72mにはとても苦労しています。
 力んで突っ込んでもダメ、かといって、あまりにも静かに立ってもダメですから、第1ハードルまでの一歩一歩の位置を、どこに置いたら、レース全体として1/100秒タイムが縮まるかと言った、地道で効果的な検証と実行が不可欠なのでしょう。

 10台目の最終ハードルを越えてからの、残りの14.02mは「順位を決める場所」ですので、10台目を越える前から準備が必要なことは言うまでもありません。
 大切なことは「10台目を越える時の順位では無く」、「10台目を越える時のスピード」なのでしょう。
 たとえ10台目を越える時に30cm遅れていた(30cmは110パーでは大差です)としても、加速しながら越えることが出来れば、残る14m余で逆転することは十分に可能です。(多くのレースでこうした逆転が現出します)

 もちろん、10台目で加速するための準備は、7台目くらいから、あるいはランナーによっては5台目くらいから行われるものだと思います。
 「ハードル間の3歩」の位置が、1台目から2台目と、8台目から9台目では違ってくるのでしょう。「次のハードルに向かう3歩目の位置」によって、ハードルを越える際のスピードが決まって来るからです。
 そうすると、各ハードル間の「3歩」は、ハードル毎に1~2cm位ずつ異なることになります。
 ひとつのレースの全ての一歩一歩の位置、自らにとってベストの位置を決め、それを実行できるレベルになって初めて、オリンピックの決勝という舞台に立つことが出来るのであろうと思います。

 そして、そうした極めて精緻な走りを習得し、国際大会で好成績を残すトップハードラーにして、「ハードルに引っかかったり」「ハードル間で詰まってしまいバランスを崩したり」するのが、オリンピック本番の舞台ということになります。
 世界記録を保持しているハードラーとて、容易なことでは手にすることが出来ないのが「オリンピックチャンピオン」の称号なのです。

 今回もローマ1960から観始めることとしましょう。
 金メダリスト名、記録の順です。

・ローマ1960 リー・カルホーン選手(アメリカ) 13秒8
・東京1964 ヘイズ・ジョーンズ選手(アメリカ) 13秒6
・メキシコシティ1968 ウィリー・ダベンポート選手(アメリカ) 13秒33
・ミュンヘン1972 ロッド・ミルバーン選手(アメリカ) 13秒24
・モントリオール1976 ギー・ドルー選手(フランス) 13秒30
・モスクワ1980 トーマス・ムンケルト選手(東ドイツ) 13秒39
・ロサンゼルス1984 ロジャー・キングダム選手(アメリカ) 13秒20
・ソウル1988 ロジャー・キングダム選手(アメリカ) 12秒98
・バルセロナ1992 マーク・マッコイ選手(カナダ) 13秒12
・アトランタ1996 アレン・ジョンソン選手(アメリカ) 12秒95
・シドニー2000 アニエル・ガルシア選手(キューバ) 13秒00
・アテネ2004 劉翔選手(中国) 12秒91
・北京2008 ダイロン・ロブレス選手(キューバ) 12秒93
・ロンドン2012 アリエス・メリット選手(アメリカ) 12秒92
・リオデジャネイロ2016 オマール・マクレオド選手(ジャマイカ) 13秒05

 この種目もアメリカ合衆国が強い時期が長く続きました。
 その牙城を破ったのが、モントリオール1976のドルー選手でした。ミュンヘン1972でミルバーン選手に続いて銀メダルを獲得していたドルー選手は、モントリオールで悲願のオリンピックチャンピオンの座に就いたのです。
 ハードルを越えた直後の、ハードル間の「1歩目」のバランスが良く美しい走りのハードラーでした。

 キューバのハードラーも2つの金メダルを獲得しています。実はフランスのドルー選手が優勝した時の銀メダリストが、キューバのアレハンドロ・カサナス選手でした。
 キューバの110パーの歴史・伝統は、シドニー2000において突然登場したものでは無いのでしょう。

 この15大会での連覇は、ロジャー・キングダム選手ひとりです。ロス1984とソウル1988を連覇しました。
 そしてオリンピック決勝で初めて「13秒の壁」を破ってくれたのです。

 男子100m競走の「10秒の壁」に相当する、110mハードルの「13秒の壁」は、その厚さであれば100mを凌ぐでしょう。
 現在でも「13秒の壁」を突破するハードラーはなかなか現れませんし、オリンピックの決勝で12秒台を観るのは、とてもレアなのです。

 頭書のように、極めて精巧・精緻な競技ですから、「最高の舞台でベストプレー」を披露するのは、滅多な事では出来ません。
 大袈裟に言えば「全ての要素が上手く行って初めて」生まれるタイムなのでしょう。

 技術、体力、筋力、精神力、等々の全てを競い合う種目「110パー」は、本当に面白い種目ですし、録画を何度観返しても新しい発見があるスポーツなのです。
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