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HOME   »   スポーツ共通  »  「体が大きい方が強いという時代」は過ぎ去ろうとしているのか?
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 2014年のスポーツシーンで、日本人プレーヤーの活躍が続いています。素晴らしいことです。

 そんな中でも、際立った活躍を見せているのは、競泳の萩野公介選手とテニスの錦織圭選手でしょう。萩野選手はパンパシフィック大会での活躍に続いて、アジア大会2014では7種目に出場して7つのメダルを獲得、内4つは金メダルという、従来の日本人スイマーの枠を超えた大活躍を魅せました。錦織選手が全米オープン2014男子シングルスで日本テニス史上初の決勝進出を果たしたことは、記憶に新しいところでしょう。

 萩野選手の身長は177cm、錦織選手の身長は178cmと報じられています。
 平均的な日本人男性よりは大きいのですが、当該種目の国内外のアスリートと比較すれば決して大きい方では無く、むしろ小柄なプレーヤーと言えるかもしれません。

 20世紀末から21世紀の初めにかけて、スポーツ界では「サイズ」の問題が取り沙汰されました。「大きい方が有利」という視点です。実際に、色々なスポーツにおいて大きなプレーヤーが活躍を見せたのです。
 ところが、「日本史上初・空前の活躍を見せる萩野選手と錦織選手」は、決して大きなプレーヤーではありません。
 「サイズ」の問題は、転換点を迎えているのかもしれません。

① 競泳

 競泳種目は身長が高い方が有利であると言われます。かつて選手であった方に話を伺っても、身長が高い方が有利であると明言されます。

 同じスタート台の上から飛び込めば、ジャンプ力が同程度であれば、飛び込んだ瞬間に長身のスイマーの方が前に出ます。
 加えて、長身のスイマーは腕も長いので、水をかく腕の弧も大きいので、より大きな推進力を得ることが出来ます。
そして、ゴールのタッチにおいては手が長い方が絶対的に有利なのです。

 つまり、競泳競技において長身のスイマーが有利であることは間違いない事のようです。

 実際、21世紀に入ってオリンピック・世界選手権でメダルを量産したイアン・ソープ選手(オーストラリア)は身長195cm、マイケル・フェルプス選手(アメリカ)は193cm、ライアン・ロクテ選手(アメリカ)は188cmです。

 そして、アジア大会2014においても、表彰式の際に萩野選手の横に立つ中国選手は、いずれも萩野選手より遥かに長身でした。多くの選手が190cm以上だったのではないでしょうか。

 しかし、表彰台の真ん中に立つのは小柄な萩野選手でした。記念写真を撮るべく、表彰台の真ん中の段に両サイドの選手も登ると、萩野選手より顔半分・顔一つ背が高い選手達であることが、よく判りました。

 長身の選手が絶対に有利と言われる競泳種目で、萩野選手は全くその不利を感じさせることなく競技に臨み、優勝するのです。凄いというか不思議でさえあります。

 世界トップクラスに躍り出ている日本水泳チーム「トビウオ・ジャパン」には、萩野選手以外にも、背泳ぎの入江陵介選手(身長178cm)、瀬戸大也選手(同174cm)といった、身長170cm台でありながら、世界トップクラスの実力を持つスイマーが居ます。
 もはや競泳種目においては、「体が大きい方が強い」という概念は存在しないのかもしれません。

② テニス

 近代テニス競技も、長身のプレーヤーが有利であると言われてきました。

 近代テニスにおいては「サービスゲームのキープ」がとても重要です。相手のサービスゲームをブレイクすることは容易なことではありませんから、少なくとも自分のサービスゲームを落とさないことが、勝利への絶対条件となります。
 そのサービスにおいて、長身の場合には腕も長いことが多いので腕の振りが大きくなり、サービスのスピードを速くすることが出来る上に、打点を高くすることで角度を付けることも出来るのです。

 実際、ウィンブルドン大会でシングルス優勝7回を誇るピート・サンプラス選手(アメリカ)の身長は185cm、4大大会シングルス優勝17回の史上最多記録のロジャー・フェデラー選手(スイス)も185cm、現在世界ランク1位を常に争っているノバク・ジョコビッチ選手が188cm、全米オープン2014決勝で錦織を破ったマリン・チリッチ選手(クロアチア)は198cm、ジャパンオープン2014の決勝で錦織と覇を競ったミロシュ・ラオニッチ選手(カナダ)は196cmといった具合です。

 こうした長身選手を相手に、錦織選手は2014年に入って互角のゲームを展開しています。時速220km・230kmというサービスを見事にリターンして、ゲームを造っているのです。

 20世紀においては「長身の外人選手・ビッグサーバー相手には、日本人選手はどうやっても勝てない」などと言われたものであり、私達もそのように思い込んでいたのです。

 これが間違った思い込みであったことは、錦織選手の活躍が示しています。

③ ゴルフ

 ゴルフ競技も長身の方が有利だと言われてきました。
 長身の方がスイングアークが大きいので、より飛距離を伸ばすことが出来る、そしてより飛ぶことは次のショットにおいて絶対的なアドバンテージだと言われてきたのです。

 1980年代から90年代にかけてマスターズトーナメント3勝・全英オープン3勝と活躍したニック・ファルド選手(イングランド)は身長191cmでしたし、20世紀末から21世紀初頭にゴルフ界を席巻したタイガー・ウッズ選手(アメリカ)は186cm、全米・全英各2勝のビッグイーズィことアーニー・エルス選手(南アフリカ)は187cm、現代最高の飛ばし屋と言われマスターズ2勝のババ・ワトソン選手(アメリカ)は191cmです。

 こうした長身ゴルファーは、ドライバーはもちろんとしてスプーンでも軽々と300ヤード以上のショットを飛ばし、アイアンクラブでも250ヤードを優に超えるショットを見せるのです。「同じ300ヤードショットでも、タイガーは8分の力で打っている。日本選手が必死に振り回しているのに比べて、安定感が全く違う」などと言われたものです。

 しかし、現在世界ランキング1位に君臨し、2014年のメジャートーナメント4戦で2勝しているのは、北アイルランドのロリー・マキロイ選手であり、その身長は178cmなのです。日本の松山英樹選手が180cmですから、マキロイ選手より少し大きいのです。

 「小柄?な」マキロイ選手は、ドライバー他のショットの飛距離において長身選手に全く引けを取りません。そして、世界ランクトップに居るのですからプレーの安定性で勝っていることは明白です。

 そして、世界ランク3位のセルヒオ・ガルシア選手(スペイン)が178cm、同10位のリッキー・ファウラー選手(アメリカ)が175cmですから、世界のベスト10に3名の身長170cm台のプレーヤーが居ることになります。
 ゴルフ競技においても、長身の優位性は小さくなってきているのかもしれません。

 今回はスポーツ選手の「身長」に注目してみました。

 そして、20世紀終盤から21世紀初めにかけて、多くのスポーツにおいて絶対とも言われて来た「長身プレーヤーの優位」が崩れつつあるのかもしれないと感じます。

 もちろん2014年時点でも、バスケットボールのプレーヤーやアメリカンフットボールのクオーターバックQB、ベースボールのピッチャーなど、長身の方が有利であるスポーツは多々存在しています。

 但し、例えばNFLのQBについて観れば、ペイトン・マニング選手(ブロンコス)の身長は196cm、トム・ブレイディ選手(ペイトリオッツ)は193cmと長身ですが、ドリュー・ブリーズ選手(セインツ)は183cm、ラッセル・ウィルソン選手(シーホークス)は180cmと、必ずしも、NFLにおいて望ましいとされる「6の6(6フィート・6インチ=約198cm)」のQBばかりではないのです。
 身長180cmを少し超える位の身長でも、NFLトップクラスのQBとして活躍できることは間違いありません。

 色々と見てきましたが、結局、スポーツの能力は身長により決まるものでは無く、「パワーと敏捷性のバランスの良さ」が大切であろうという、当たり前の結論になってしまいそうです。
 トレーニング方法の進歩や道具の進化等々、要因は各々の競技によって様々でしょうが、身長の水準と競技能力の関連性は薄くなっているように感じます。
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