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 12月30日と31日に、日本国内でプロボクシングの世界タイトルマッチが8試合も行われます。

[30日・東京体育館]
・WBOスーパーフライ級タイトルマッチ
・WBCライトフライ級王座決定戦
・WBCライト級王座決定戦

[31日・大阪・ボディメーカーコロシアム]
・WBA・WBOスーパーバンタム級タイトルマッチ
・IBF・WBOミニマム級王座決定戦

[31日・東京・大田区総合体育館]
・WBAスーパーフェザー級タイトルマッチ
・WBAスーパーフライ級タイトルマッチ
・WBAライトフライ級タイトルマッチ

 の8試合です。
 百花繚乱という感じのラインナップです。年末のボクシングから眼が離せないといったところでしょうか。

 これだけの試合が日本で行われ、アルゼンチン、メキシコ、ベネズエラ、キューバ、ドミニカ、ペルーといった中南米を主体とした強豪選手が日本のリングに上がることは、日本プロボクシングの隆盛を感じさせる光景ではあります。

 一方で、1会場で複数の世界戦をメイクしないと、観客動員やテレビ視聴率といった面で力不足という側面も見逃せません。
 20世紀の後半には「1つの世界タイトルマッチ」で十分に観客を動員し、高い視聴率を叩き出すことが出来ていたプロボクシングが、残念ながらその力・魅力を減じつつあることも事実なのでしょう。
 この視点で見ると、年末の8つの世界タイトルマッチは、そうした状況下でも「日本で開催することが興行的にベター」であることを示しているということになります。

 「プロボクシングの人気低迷」の原因については、いくつかの点が挙げられるのでしょうけれども、本稿では「プロボクシング・ヘビー級とNFL(ナショナルフットボールリーグ)の関係」を観て行きたいと思います。

 ボクシングに限らず多くのプロスポーツが、アメリカ合衆国を中心に動いています。アメリカには、ゲームや大会を開催し多くの観客を動員し、高いテレビ視聴率を稼ぎだすための「資金とノウハウ」があるのです。
 
 「スポーツを極上のエンターティンメントとしてファン・観客に提供する」という点では、多くのスポーツ競技において、アメリカがずば抜けた力を持っていることは間違いないと思います。

 従って、「プロボクシング界全体の人気が低迷」しているとすれば、それは「アメリカのプロボクシングが低迷」していることに他なりません。

 その理由を考えてみると、アメリカンフットボールのNFLの存在が浮かび上がって来ます。

 もともと、アメリカが世界最高のプロボクシングの聖地であった大きな理由として、最重量クラス・ヘビー級のチャンピオンの多くがアメリカ人プレーヤーであったことが挙げられると思います。
 つまり「世界チャンピオンの中の世界チャンピオン」「世界最強のボクサー」=世界ヘビー級チャンピオンはアメリカに居る、ということがアメリカプロボクシング界の求心力の源だったのでしょう。
 「世界一の存在」というのは、何時の時代でも圧倒的な存在感と人気が有るのです。

 例えば、最も歴史が長い世界タイトル認定協会WBAのヘビー級チャンピオンを観てみましょう。
 1882年のジョン・サリバン(アメリカ)に始まって2005年のジョン・ルイスまでの間に、56人の世界ヘビー級チャンピオンが誕生(カムバックは重複カウント)していますが、その内アメリカ人ボクサーが49人、他の国出身ボクサーが7人となっていて、87.5%がアメリカ人ボクサーで占められています。
 世界ヘビー級チャンプの10人に9人がアメリカ人ボクサーだったのです。

 また、世界ヘビー級チャンプの中でも「歴史に名を刻んだ偉大なチャンピオン」という意味からは、
・ジャック・デンプシー(1919年~1926年)
・ジョー・ルイス(1937年~1949年)
・ロッキー・マルシアノ(1952年~1956年)
・ソニー・リストン(1962年~1964年)
・カシアス・クレイ(モハメッド・アリ)(1964年~1979年・4度)
・ジョー・フレージャー(1970年~1973年)
・ジョージ・フォアマン(1973年~1995年・2度)
・マイク・タイソン(1987年~1990年)
・イベンダー・ホリフィールド(1990年~2001年・4度)
 
 といったボクサー達が挙げられると思いますが、いずれもアメリカ人なのです。
 「世界ヘビー級タイトルの歴史はアメリカ人ボクサーの歴史」であったことが、よく分かる事実です。

 ところが、2005年にジョン・ルイス(アメリカ)が王座から陥落し、ニコライ・ワルーエフ(ロシア)がチャンプに収まって以降、現在に到るまでアメリカ人の世界ヘビー級チャンピオンは誕生していないのです。

 2005年12月17日、ニコライ・ワルーエフがジョン・ルイスを破った日が「世界のプロボクシングの低迷が始まった日」ではなかったかと、考えています。
 「世界ヘビー級タイトルマッチ」という大看板が消えてしまったアメリカボクシング界は、低迷期に入ったのでしょう。

 カシアス・クレイ(モハメッド・アリ)、ジョー・フレージャー、ジョージ・フォアマンといった「偉大なヘビー級チャンプの宝庫」であったアメリカ合衆国から、ヘビー級のプロボクサーが消えてしまったのは何故でしょう。

 それは「ヘビー級のプロボクサーとなる人材がNFLに流れている」からだと指摘されています。その通りでしょう。

① 身長180cm以上・体重100kg以上
② 腕力・スピード・持久力・運動神経を具備していること
③ 動体視力に優れていること

 といった「世界ヘビー級チャンビオン」に求められる資質は、そのままNFLのトッププレーヤーに求められる資質なのです。特にディフェンスのラインメンやラインバッカーLBにはピッタリの条件と言えます。
 そして、現在のNFLには身長190cm以上・体重100kg以上のプレーヤーが沢山居ます。身長200cm前後・体重140kg以上というプレーヤーも珍しくは無いのです。

 こうしたプレーヤーの一部が、20世紀の後半の様にプロボクシング界にトライしていれば、「ヘビー級におけるアメリカの優位は不動」のものであったことでしょう。

 この現象は、高校生、大学生といった年齢の頃に、「自分の運動能力で人生を切り開いて行こう」と考えている学生達の眼から見て、「NFLの方がプロボクシングより魅力的」であることに他なりません。

① 殴り殴られるよりは、激突の方が良いという見方

 ボクシングが知的なスポーツであることは間違いないのですが、結果として「殴り合い」であることも事実です。
 もちろんアメリカンフットボールも、そのハードヒットを前提として、危険なスポーツであることは事実ですから、「危険度」の比較を行えばどちらが安全かについては一概には言えないところでしょう。
 しかし、「見た目の違い」は有るのです。

 ハングリーな少年・青年にとっては、その境遇から這い上がる方法として、ボクシングとアメリカンフットボールを比較し、アメリカンフットボールを選択するのも理解できなくはありません。

② 奨学金制度などの充実度の違い

 貧しい家庭で育った少年にとって、大学入学という夢は「自らの能力に頼る」ものなのでしょう。これは何もスポーツに限ったことでは無く、数学・物理学・化学・IT技術等々の分野でも同様だと思います。

 おそらく、NFLは有望な中学校・高校・大学のアスリートに積極的に奨学金制度を用意し、数多くのプレーヤーに適用していると思われます。
 高校時代からNFLの奨学金を貰い、大学を卒業したアスリートが、NFLを目指すのは自然な流れでしょう。
 こうした、制度上の差異は、大きな影響力を持つと考えられます。

③ 取り巻きの人達の有様

 かつて、モハメッド・アリの晩年の頃、「アリは1試合で100億円のファイトマネーを稼ぎ出すが、アリの手許に残るのはその内の4億円で、残りの96億円は取り巻きの連中が取る」という報道がありました。

 この報道の真偽はともかくとして、「さもありなん」という感じはします。
 マイク・タイソンの時にも、こうした話が有りました。

 もちろんNFLの方でも、本ブログの2013年5月9日の記事「元NFLプレーヤーの8割が自己破産」に示しましたように、引退後のNFLプレーヤーに群がる取り巻きの人達の所業が存在しますが、少なくとも現役時代には、ボクシングほどの毟り取りは無いのではないでしょうか。

 「自分の稼ぎを、一度は自分が手にできる」という点で、NFLの方がプロボクシングに勝っているのでしょう。

 以上のような理由から、アメリカ合衆国では2005年末以降、「世界ヘビー級チャンピオン」が誕生しておらず、結果としてアメリカにおいてビッグマッチが組成されなくなり、世界一強力と言われる「アメリカのプロモーター達」の影響力が下落して、プロボクシング界全般の試合自体がメジャーな存在からマイナーな存在に移行し続け、観客動員力・視聴率を稼ぐ力の両方が下がってしまっている、という現状なのではないかと思います。

 一方でアメリカンフットボールの最高峰たるNFLの人気は、いまだに全米スポーツNO.1であることも周知の事実なのです。

 NFLに流れ込む「素晴らしい人材」の一部でも良いので、プロボクシング界に引っ張ってくるための、ボクシング界を挙げた試みが待たれています。
 前述の①②③に関する改革もとても大切なことだと思いますが、最も大事なことは「ボクシングというスポーツに夢を感じてもらう」ための施策の展開でしょう。

 20世紀における、「褐色の爆撃機」ジョー・ルイスや「ブロックトンの高性能爆弾」ロッキー・マルシアノ、そして「蝶のように舞い、蜂のように差す」カシアス・クレイ、「象をも倒す」ジョージ・フォアマンといったボクサー達のファイトには、人類の歴史と共に存在したであろう格闘技術のひとつであるボクシングに備わっている、観る者をワクワクさせる比類無きインパクトがありました。

 「自分もあんなボクシングをしてみたい」と大きな体の少年達に深く感じさせる「ヘビー級ボクシングの魅力」こそ、ボクシング界再興のために絶対に必要な要素なのではないかと考えます。
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