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HOME   »   大相撲  »  [大相撲1月場所] 3日目 安美錦と遠藤の取組
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 素晴らしい相撲でした。まさに「大相撲」でした。

 遠藤が突っ張りに出て、安美錦も応戦。「押してはたく」の応酬は、見応え十分。押し切れぬと見た遠藤が再度のはたきをみせると、安美錦は前に泳ぎました。しかし目の前にあった遠藤の右脚を掴むと、そのまま土俵外に走ったのです。

 長い相撲ではありませんでしたが安美錦関・遠藤関の死力を尽くした取組でした。

 36歳の大ベテランである安美錦は、当代きっての業師(わざし)と言われていますが、次々に技を繰り出す「技のデパートタイプ」では無いと思います。

① 「寄り切り」を基本としていること。

 ここが安美錦の相撲の素晴らしいところでしょう。前に出る力が強く速いのです。

 「業師」安美錦の対戦相手は、「何をしてくるか分からない」と警戒し、少し腰を引き気味にして戦います。すると安美錦はグイグイと押します。相手は下がりながらも、まだ「何をしてくるか分からない」と腰は引き気味のままです。そうすると、安美錦は「そのまま押し出してしまう」のです。

 前述のような相撲で敗れた相手力士は、次の対戦では、安美錦に押された時に「今度は押し返そう」と前方に力を入れます。そこで安美錦は「いなし」や「はたき込み」を見せるのです。

 安美錦関の相撲の基本は、この2つの取り口だと思います。ここに「様々な味付け」を行うのです。
 このどちらの取り口も、「前に出る力が強く速いからこそ効果的」なのです。

 寄り切りや押し出しをベースとしているというところが「安美相撲の本質」であり、素晴らしい所であると考えます。

② 相手力士の力を利用すること

 これは、あらゆる格闘技の基本だと思いますが、「相手の力を利用する能力」の大小が、各々のプレーヤーに存在します。

 あまり、相手の力を利用することが得意ではないプレーヤーは「力技で勝負する」のでしょう。

 一方、安美関は相手の力を利用するのが、とても上手いのです。はたき込みやいなしのタイミングが絶妙です。
 例えば、今場所2日目の逸ノ城戦は、押し込まれた逸ノ城が押し返そうとした瞬間に、はたき込みました。巨体がもんどりうって倒れた訳ですが、安美関は「涼しい顔」で、倒れた逸ノ城の方を見ようともせず、勝ち名乗りを受けるために得俵の位置に戻りました。
 会心の技だったのでしょう。痺れますね。

③ 一番一番・考えて取っていること

 殊勲インタビューなどで、安美錦関からよく聞かれるのは「○○のように取ろうと思って土俵に上がった」といったコメントです。

 場所中は、毎日の取組をよく考えて、分析・戦術を練ったうえで土俵に上がっていることが伺えるコメントなのです。

 おそらく、取組前に当該取組をじっくりと考え、細部に渡って戦術を実行できる力士が、押し相撲・四つ相撲に係らず、「業師」と呼ばれるのでしょう。ひょっとすると、業師力士にとっては「考えている過程が楽しい」ものなのかもしれません。

 例えば、前述①の2つの取り口にしたところで、前回の取組で「押し出し」ていたら、今回は「押し返された時にいなそう」といった戦術が考えられることでしょう。
 もちろん、当代きっての業師ですから、こんな単純な筈は無く、「こう来たらこう」というパターンも、いくつかは用意していることでしょうし、「裏の裏をかく」ことも多いのではないでしょうか。
 いずれにせよ「寄り切り」を前提に組み立てられる戦術というのは、相手力士にとって脅威となるものだと思います。

 安美錦は、「前に出る業師」として36歳になっても元気いっぱいの土俵を展開しています。私は昔から、安美錦関の大ファンです。

 大柄な力士の中には、「安美錦を極端に苦手としている」力士が居ます。

 例えば、引退した大関・琴欧州関などもそのひとりであったと思います。
 身長201cmを誇る琴欧州でしたが、安美錦戦となると「蛇に睨まれた蛙」のようでした。安美錦戦での琴欧州の相撲には、「腰が引けた状態で取る」か「巨体を利して一気に(ほとんど闇雲に)前に出るか」の2パターンがあったと記憶していますが、安美錦はこのどちらの取り口にも対応していました。

 もちろん、琴欧洲が一気に土俵外に安美錦を吹き飛ばす相撲も有り、安美錦が土俵際で技を見せる相撲も有って、対戦成績はほぼ互角だったと感じますが、横綱を目指す大関にとって、下位に対戦成績互角の力士が存在するのは、大きなネックでしょう。
 大袈裟に言えば「安美錦が居なかったら、琴欧州の力士キャリアは3年以上伸びた」のではないでしょうか。

 また、やはり元大関・把瑠都関との取組も、いつも見所満載でした。
 或る一番の正面土俵際で、安美錦が把瑠都の右腕を両手で取り、「お手」のように土俵に向かって引っ張りおろす動きを見せたので、慌てた把瑠都の上体が浮き上がった瞬間に、一気に寄り立てて、東の奥側に押し出して安美錦が勝った一番が有りましたが、安美錦の代表的な取組ではないかと感じます。

 「目の前に在るものを利用して相手のバランスを崩す」という極めて高度な取り口なのです。

 本記事の遠藤との一番も、まさにこれでした。取組の過程で「目の前に遠藤の脚」が在ったのです。

 この瞬間を、名人・安美錦が見逃すはずがないのです。
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大相撲2015年1月場所3日目・安美錦と遠藤の取組  
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