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HOME   »   スキー  »  [世界ノルディック2015] ペッテル・ノートグ選手の滑り
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 2月27日に行われた男子40kmリレー(10km×4人)は、ノルウェーチームがスウェーデンチームとの競り合いを制して優勝しました。

 このレースにおけるノルウェーのアンカー・第4走者のペッテル・ノートグ選手の滑り・戦法は、とても興味深いものでした。

1. 意識的に3番手の位置を取ったこと

 ノルウェーチームは第3走までの選手が頑張りを見せて、アンカーのノートグ選手とのタッチの時点では、2位チームに10秒近い差を付けていました。

 ところがノートグ選手は、タッチを受けた直後から「スピードを落として」、2位・3位のスウェーデン・フランスに抜かれました。「抜かせました」と表現する方が正しいのでしょう。
 ライバルチームを前に置いて、レースを進める形を選択したのです。

 現在の男子距離スキー界において、世界最強のプレーヤーとも呼ばれる選手が、意識的に後ろの選手に抜かれたのです。

 相応の差を付けてトップ出来たポジションをそのまま維持するような滑りを実行することも、ノートグ選手の実力をもってすれば十分に出来たと思われるのですが、競り合っている相手がソチ・オリンピック2014のこの種目の金メダル・銀メダルのチーム、つまり相当に強い相手でしたので、「勝利の可能性がより高い戦法」を選択したのでしょう。
 
 先頭で逃げるより、2番手・3番手で追いかける方が「体力を温存」することが出来、ゴール前の競り合いでのスピードを確保できるとの判断であったのだと思います。

 第3走までに、ノルウェーがスウェーデン・フランスの前に居ようが後ろに居ようが、大差でトップ出来た場合を除いて、こういう形で走るとレース前から決めていたのかもしれません。
 
2. 下りで離される滑り方

 このレースでのノートグ選手は、残り1km以前は常に、下り斜面になると前の選手から10m位離されました。(下りにかかった時に自然に開く差以上の差が付いていたと思います)
 
 当然ながら、下り斜面はスキーが滑りますのでスピードが出ます。ストックで漕ぐことで加速することが出来るわけですが、登り斜面から下り斜面に切り替わる瞬間に、ノートグ選手は「強く漕ぐ動き」を取りませんでした。相手チームの選手は、強く漕ぎましたので差を広げられていたのです。

 下り斜面になる都度、ノートグ選手は大きく離されます。

 これは「前に居る選手との衝突」を避けていたのであろうと思います。スピードが出ている状態で前の選手とぶつかれば、転倒、あるいは「スキー板が折れる」リスクが有ります。

 ノートグ選手は、スキー板が折れて滑れなくなってしまい、代わりのスキー板が到着するまでの間に大差を付けられてしまうことを、回避していたのだと思います。

 ゴール前の競り合いに持ち込むまでに、大差を付けられてしまうリスクを最小限に抑える、細心のレースを展開していたのでしょう。

3. 登り斜面で追いつく滑り方

 前述の通り、下り斜面で10m位の差を付けられるのですが、登り斜面にかかると一気に追い上げ、前の選手の直後に位置するのです。

 残り1kmまでのノートグ選手は、「下り斜面で離され、登り斜面で追いつく」という動きを、根気強く続けていました。

 全てはゴール前の競り合いに持ち込むための努力であったと思います。

4. ゴール前の直線走路手前のコーナーで前に出たこと

 さて、ゴールまで1kmを切りました。ここからは項目2・3の滑りは止めて、スウェーデン・フランスの選手との競り合いに移りました。

 実力差も有り、残り500mからは予想通りノルウェーとスウェーデンの争いとなりました。スウェーデンチームのアンカーも強豪選手ですから、ノートグ選手といえども、ゴール前のスプリント競争で必ず勝てるという保証はありません。

 より勝利の確率を高めるためには、「ゴール前200mの直線走路に先頭で入る方が有利」との考え方から、ノートグ選手は直線走路に入る直前の右回りコーナーで勝負を賭けました。
 一気にスウェーデンのアンカーを抜き去ったのです。

 最後の直線走路では、相手選手も素晴らしいスピードを見せました。地元開催の大会でもあり、大歓声が後押しします。
 
 ノートグ選手も「世界一」と評されるスプリントを繰り出しますが、その差は広がりも縮まりもしませんでした。「互角のスプリント合戦」が展開されたのです。

 ゴールした時の1位と2位の差は、直線走路に入った時の差と同じでした。つまり、「直線走路にトップで入ったチーム」が優勝したのです。

 ゴール前のスプリントに絶対の自信を持ち、世界中から最速のスプリントと評価されているノートグ選手が、1~9kmの間「体力を温存」していたにも拘わらず、ゴール前のスプリントで引き離すことが出来なかったという事実は、「直線手前のコーナーで勝負するという判断の正しさ」を証明しています。
 
 このレースにおけるペッテル・ノートグ選手の10kmの滑りは、まさに「勝利のために最善を尽くした滑り」でした。

 現在世界最強の男子距離スキーヤーと言われるノートグ選手が、全力を尽くし細心の注意を払い、「勝つために出来る全てのことを実行」したのです。

 それでも2位との差は2~3mでした。世界一を争う大会で優勝することの難しさを改めて感じると共に、ペッテル・ノートグというプレーヤーが世界一と呼ばれる理由を魅せていただいた気がします。
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世界ノルディック2015・ノートグ選手の見事な滑り  
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