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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム22] ジャパンカップの変遷
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 太平洋戦争が終結し、昭和20年代に復活した我が国の中央競馬は、昭和30年代に数々の名馬の登場もあって、ようやく大衆娯楽のひとつとして定着し始めました。昭和40年代に入ると、海外の競馬コミュニティーとの交流も始まる一方で、いわゆる高度成長期を迎え、国全体の経済力・国民所得が飛躍的に増大しました。1970年・昭和45年以降は、競馬関係者から、日本にも世界に通じる国際競走を創設できないかという意見が数多く出されました。

 しかし、当然のことながら、日本は欧米から遠く、輸送・検疫に多くの時間を要することや、欧米の主要レースとのスケジューリングなど、世界的なレースを日本に創設するという夢は、容易には実現しませんでした。

 そうした時代の流れの中で、昭和40年代の終盤にはオイルショック、ドルショックという世界的な不景気の時代が訪れ、日本もその波に揉まれました。この世界的不景気の影響から回復しきっていない1981年・昭和56年に、第一回のジャパンカップが開催されたことは、日本中央競馬会を始めとする競馬関係者の尽力の賜物であり、よくこの時期に創設できたものだと、今更ながら思います。
 ジャパンカップという大レースが、我が国の景気が良かった時代ではなく、どちらかといえば不景気の時代に始まったことに意味があるように思います。長い歴史を刻み得る、レースの開催目的・基調の考え方がしっかりしているのではないかと思います。

 その第一回および第二回のジャパンカップ競走を目の当たりにした時、海外の一流馬と日本馬の間の力の差が、あまりにも大きく、これは勝負にならない、いつになったら追いつけるのだろうかと感じたことを憶えています。東京競馬場の最後の直線走路における海外馬の走りの力強いこと。馬格も相当違うように感じました。

 1983年の第三回も外国馬の勝利に終わりましたが、2着にキョウエイプロミスが飛び込みました。アタマ差の惜しいレースでした。
 ジャパンカップも3回目になると、外国メディアの注目も増してきて、この年19年ぶりに日本の競馬に誕生した三冠馬ミスターシービーが、ジャパンカップに出走するのかどうかが話題になりました。解りやすく言うと「第一回、第二回を見れば、日本馬では海外馬には敵わないことは明らか。せっかく誕生した最強の三冠馬が出走しなくては、一層勝負になるまい」というのが、海外メディアの論調でした。

 日本競馬ファンにとっては歯噛みする状況でしたが、キョウエイプロミスは日本馬の意地を見せてくれました。とはいえ、キョウエイプロミスはレース中に靱帯断裂を発症していて、このレースを最後に引退しました。秋の天皇賞3200mを完勝した後、ジャパンカップ2400mという厳しいレースを使うことの難しさを感じさせる出来事でした。

 自身の競走馬生命を削りながらでないと勝負にならないと思わせたジャパンカップに、日本馬の勝ち馬が生まれたのは、翌年1984年のカツラギエースの優勝でした。さすがに、前年の三冠馬ミスターシービーと同年の三冠馬シンボリルドルフの2頭が出走し、日本馬が最強の布陣で臨んだレースでしたので、ついに海外馬の壁を破って日本馬が優勝したと思いました。
 翌1985年は、2回目の挑戦でシンボリルドルフが優勝しました。日本馬の2連勝となりましたので、ようやく世界の強豪馬の水準に日本馬が追いついてきたのかなと感じさせました。但し、第一回、第二回のレース内容からして、彼我の地力には大差があるように見えたものが、わずか2~3年で追いつくということについては、違和感も感じていました。

 案の定というか、第六回~第十一回のレースは外国馬が6連勝しました。この間のレースは、いずれも走破タイムの水準が高く、東京競馬場2400mとしては驚異的なタイムのレースが続いたように思います。外国強豪馬の実力の高さが示されたと観るべきでしょう。

 特に凄かったのが、第9回1989年のレースでした。当時、日本を代表する実力馬であったオグリキャップが、最後の直線で馬場の真ん中を抜けてきたときには、オグリが勝ったと思いましたが、インで粘るホーリックスが差し返して優勝。オグリはクビ差及ばず2着でしたが、このレースの走破タイムは2分22秒2の2並び、当時の世界最高記録を更新したレースでした。当然オグリキャップも、2400mの世界新記録で走ったのですが、そのオグリの激走をも捻じ伏せた、ニュージーランド馬ホーリックスの印象は強烈でした。
 この6年間の走破タイムは、2分22秒2から2分25秒5の間に収まっています。この頃の日本ダービーの走破タイムは2分27秒~28秒でした。もちろん、開催時期も異なり、馬場状態の違いもあるでしょうから一概には言えませんが、やはりレベルが高いと思いました。
 長距離・長時間の輸送に耐え、検疫の負担も物ともせずに、我が国の一流馬に先着する海外強豪馬達の力量は、まだまだ上位にあると感じたものです。

 1992年~1994年の日本馬3連勝を挟んで、1995年~1997年は外国馬が3連勝しました。そして、1998年の第十八回のレースにエルコンドルパサーが優勝して以来、昨2011年・第三十一回までの14回のレースでは、外国産馬の優勝は2回に留まっていて、明らかに日本馬優位の成績になっています。

 このジャパンカップの歴史・レース内容について、少し考えてみます。

1. 第一回~第十一回(1981年~1991年)→外国馬が強かった時期
 この間は、外国馬の力が、日本馬に勝っていた時期だと思います。1984年と翌85年に、カツラギエースとシンボリルドルフが勝っていますが、実は1984年にアメリカでブリーダーズカップが創設されたのです。同時期に行われることとなったブリーダーズカップは、その賞金額もジャパンカップを上回りましたので、おそらく海外超一流馬は、創設当初このレースに挑戦したのでしょう。残念ながら、この2年間のジャパンカップの外国馬のレベルは、それ以前に比べてやや低かったのだと思います。
 この時期に健闘した、キョウエイプロミスやオグリキャップ、タマモクロス(1988年・第八回、1/2差でペイザバトラーの2着)の走りは見事なものです。タマモクロスとオグリキャップ兄弟の東京競馬場直線で競り合う姿には、拳を握って応援したものです。

2. 第十二回~第十七回(1992年~1997年)→外国馬と日本馬が互角の戦いを演じた時期
 この6年間は、3勝3敗と互角の成績ですし、日本馬の走破タイムも2分23秒台~24秒台と、それ以前の海外優勝馬と遜色ない水準に向上しましたので、なんとか互角に戦えるようになった時期ではないでしょうか。
 とはいえ、第十三回のレースでは、外国馬コタシャーンがゴール位置を間違えて、追うのをやめてしまい、レガシーワールドの2着となったりしていますから、日本馬が外国馬を凌駕したとは、まだいえない時期だと思います。

3. 第十八回・1998年以降
 ジャパンカップというレースにおいては、日本馬が外国馬に対して優位にある時期だと思います。1981年の第一回に大差であった彼我の力量は、このレースにおいては完全に入れ替わった形です。理由は、いくつか考えられます。

① 日本馬のレベルが上がったこと。特に、スピード十分な競走馬が増加したこと。
② 秋季開催の高額賞金レースが海外においても増加し、世界の一流馬の出走が分散化されたこと。前述のブリーダーズカップターフや香港国際競走に向かう海外馬も居ます。
③ 欧州の一流馬でも、我が国の高速馬場に対応できなくなってきたこと。走破タイムの絶対水準が高くなってきたために、柔らかくて重い欧州馬場で力を発揮する馬でも、東京競馬場の馬場ではスピードが足りないケースが観られるようになり、特に欧州一流馬の出走が減ってきています。

 1999年のモンジュー(4着)や2011年のデインドリーム(6着)は、凱旋門賞を制覇するなど、素晴らしい競走成績を残した名馬達ですが、ジャパンカップでは好成績を残せませんでした。この2頭でも勝てない馬場ということになると、欧州競馬関係者が尻込みするのも理解できます。

 この③の理由は「競馬の質が異なる」ことになりますので、そもそも我が国で国際レースが成立するのかという論点まで、惹起しかねません。
 固い高速馬場に強い馬を選別していくことで、サンデーサイレンス系のサラブレッドばかりになった日本競馬と、柔らかくて力の要る馬場に強い馬を選別することでサドラーズウェルズのようなノーザンダンサー系の産駒が全盛を誇る欧州競馬の馬が一堂に会することの意味の問題です。

 ジャパンカップの1着賞金額は、2000年の第二十回から2億5千万円に引き上げられました。もちろん、日本のレースでは最高額(日本ダービー1億5千万円、有馬記念2億円)ですし、現在世界で1・2位を争う高額賞金レースとなっています。2007年には、日本競馬自体が国際セリ名簿基準委員会から、パート1の国と指定されました。
 日本競馬界の悲願であった、日本競馬の国際化が着々と進む中で、その看板レースであるジャパンカップが、日本馬同士の戦いになってきているのは、誠に皮肉なことです。

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