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HOME   »   スキー  »  [冬季五輪アルペン三冠] 22歳で引退したトニー・ザイラー選手
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 ひとつの冬季オリンピック・アルペンスキー競技で「滑降」「大回転」「回転」の3種目で金メダル=当時参加可能な全ての種目で金メダル、を獲得したプレーヤーは、史上2人しか居ません。

 1956年のコルチナダンペッツォ大会(イタリア)で三冠王となったトニー・ザイラー選手(オーストリア)と1968年のグルノーブル大会(フランス)で三冠王となったジャン・クロード・キリー選手です。
 少し不思議なことに、女子で三冠を達成した選手は居ません。

 2人の時代には、アルペンスキー競技には「滑降」「大回転」「回転」の3種目しかありませんでしたから(現在の「スーパー大回転」「アルペン複合」といった種目は1988年のカルガリー大会から登場)、トニー・ザイラーとジャン・クロード・キリーは全ての種目を制したことになります。

 今風に言えば、高速系種目である滑降と技術系種目である大回転・回転を制覇したのですから、2人のスキーヤーの地力は他を圧していたということになります。

 今回は、1956年大会の三冠王、トニー・ザイラー選手について書いてみたいと思います。

 ザイラー選手は1935年にオーストリアのチロル州で生まれました。「雪国生まれ」(そういう言葉がオーストリアや欧州に存在するのか分かりませんが)でしたから、当然の様に幼少期からスキーに親しんでいたのでしょう。1952年、ザイラー16歳の時にスキーの国際大会にデビューしています。

 もともとアルペンスキー大国であるオーストリアですから、アルペンスキーのレベルは高い、というか世界最高水準であったと思われますので、そうした環境下16歳で国の代表としてデビューしているのですから、才能の大きさが感じられます。

 練習中の骨折で1952年~53年シーズンを棒に振ったザイラー選手が、その実力を如何無く発揮して見せたのが1956年(昭和31年)のコルチナダンペッツォ・オリンピックでした。「滑降」「大回転」「回転」の3種目全てにおいて金メダルを獲得したのです。20歳のシーズンでした。

 冬季オリンピック史上初の快挙であり、前年の世界選手権大会に続いて2シーズン連続の「三冠達成」でもありました。この頃のザイラー選手の力は、一頭抜きん出ていたのです。

 尚、この大会の回転種目は「極めて霧が深いコース」で実施されたと伝えられていますが、この難しいコンディションの中でザイラー選手に次ぐ銀メダルを獲得したのが、日本の猪谷千春選手でした。日本人初の冬季オリンピックメダリストが誕生した大会でもあったのです。

 世界アルペン史上初の快挙を成し遂げたトニー・ザイラー選手でしたが、とても「二枚目」でもありました。「天は二物を与えず」という言葉が有りますが、実際には、二物を与えられたプレーヤーは沢山居るように感じます。トニー・ザイラーもその一人だったのです。

 世界初の人物であり二枚目で社交性も十分となれば、銀幕(現在ならテレビかインターネット)が放って置く筈が無く、トニー・ザイラーはオリンピックの翌年1957年に映画に出演しました。
 そして「アマチュア資格問題」に発展してしまい、1958年のシーズンが終了し時トニー・ザイラーは引退したのです。まだ22歳の若さでした。

 引退後のトニー・ザイラーは俳優業と歌手業に注力しました。日本の映画にも数多く出演しています。1966年の「アルプスの若大将」では加山雄三(スキーで国体出場経験あり)との共演も実現しました。

 一方でアルペンスキーの指導者としても活躍し、1972年~1976年にかけてオーストリア・ナショナルチームの監督を務め、もともと強かったオーストリアチームを、他の追随を許さない「アルペン王国」に高めたと言われています。
 また、国際オリンピック委員会(IOC)を始めとするスポーツ国際機関における発言力は極めて高かったと伝えられています。高度な技術論と厚い人望を備える人物だったのでしょう。

 若干22歳で現役引退に追い込まれながら、その後の世界のアルペンスキー界に大きな足跡を残してきたトニー・ザイラー。
 もし22歳以降10年間前後の現役生活が続いていたとしたら、どれ程の記録を残したのでしょうか。
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