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HOME   »   スキー  »  [世界ノルディック2015] 対照的なレース内容だった女子30kmと男子50km
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 2015年のノルディックスキー世界選手権大会の男女の最終種目である女子30kmクラシカルと男子50kmクラシカルは、それぞれ2月28日・3月1日に行われました。

 30kmは女子種目最長距離、50kmは男子種目最長距離の種目であり、ノルディックスキーの世界大会で昔から行われている「歴史と伝統」を誇る種目でもあります。また、今大会は「クラシカル走法」の番ですが、30km・50kmといえばやはりクラシカル走法がマッチしているように感じます。

 真っ白な林間コースを黙々と滑って行くシーンは、「まさにノルディックスキー」という雰囲気で、今後も世界大会を代表する種目として継続実施されていくものと思います。

 昔は「30秒間隔でひとりずつスタートする」といった形で行われることが多かったのですが、最近はマススタート方式(一斉スタート方式)が普通になりました。レースのドラマ性を高める、観客にとって分かり易い、といった目的を持って行われているマススタートかと思いますが、この変更はレース展開にも大きな影響を与えました。

 さて、今大会の女子30kmと男子50.kmは、そのレース展開・内容が対照的なものとなりました。

 まず、女子30kmクラシカル。
 有力選手が先頭集団を形成する形でレースは進みました。そして6.2km付近でノルウェーのテレーセ・ヨハウグ選手が飛び出しました。

 24km近くの距離を残してのスパートですから、他の有力選手達は自重して付いて行くことはせず、第2集団を形成しました。まさか、ここからゴールまでヨハウグ選手が突っ走るとは考えなかったのでしょうし、「1回目の揺さ振り」というくらいに捉えていたのかもしれません。

 ヨハウグ選手は淡々と、しかし着実にスピードを上げて、後続との差を広げ続けました。

 これ以上差を付けられては追い付けないと判断したビョルンゲン選手が、第2集団から抜け出し追走を始めましたが、ヨハウグ選手との差はなかなか縮まりません。

 25kmを過ぎた所では、ヨハウグ選手→ビョルンゲン選手の差が1分、ビョルンゲン選手→第3位集団の差が1分といった展開となりました。

 ビョルンゲン選手は懸命に追い上げます。3位集団も懸命に追い上げます。

 しかし、ヨハウグ選手の滑りは衰えることなくゴールイン。52.3秒差でビョルンゲン選手が2位、3位にはスウェーデンのカラー選手が入りました。

 好調さを背景にしたヨハウグ選手の大逃げが見事に功を奏したレースでした。途中から徐々に差を広げて押し切るというレース展開は、長距離競走ならではのものでしょう。伝統的な作戦でもあり、私は大好きです。

 かつての「30秒間隔スタート」のレースでは、選手は自分の途中順位が分かり難かったので、長距離競走は「自分との戦い」という様相でした。もちろん、レースですから他の選手との競り合いを展開しているのですけれども、先攻しているのか遅れているのかも分かり難い(コース途中で時々コーチから聞くしかない)ので、選手は自分が立てた作戦に則りペースを守り、黙々と滑り続けたのです。

 今回のヨハウグ選手の滑りは、こうしたかつてのレースを髣髴とさせるものでした。続く選手達に1分以上の差を付けてしまえば、アップダウンが多い林間コースでは他の選手達は見えません。まさに「自分一人で滑っている」形なのです。ペースが速いのか遅いのかも、自分で判断しなければなりません。

 こうした状況下、自分のエネルギーを余すことなく30kmを滑り切らなくてはならないのです。高度な技術と、豊富な経験、そして何といっても実力が無くては出来ないことでしょう。

 26歳のテレーセ・ヨハウグ選手は、チームの大黒柱34歳のマリット・ビョルンゲン選手を破りました。過去10年以上に渡って世界の女子ノルディックスキー界を牽引してきたビョルンゲン選手の後継者に名乗りを上げたと言っても良いでしょう。

 ひょっとすると、このレースは「新旧女王交替のレース」であったのかもしれません。

 続いては男子50kmクラシカル。
 こちらは「The マススタート・レース」と呼んでよい展開のレースでした。

 優勝したペッテル・ノートグ選手(ノルウェー)は50kmのレースを500mのレースに組み替えて、勝利を捥ぎ取りました。

 15kmを過ぎた辺りから、先頭集団は20名位に絞り込まれました。次々と先頭が入れ替わる展開の中で、ノートグ選手は常に集団の後方に位置し、13~14位の位置をキープし続けました。先頭とのタイム差は9~10秒であり、平均的な先頭との差は50~100mでした。先頭集団に居るとはいえ、相当の差が有ったのです。

 ラストスパートで勝負することが多いノートグ選手としては「いつもの形」であろうとは思いましたが、ポジションがいつもより後寄りであったことと、中々前に進出していけないこと、そして雪質が極めて柔らかく滑り難い=ぐしゃぐしゃ=スピードアップが難しい、状態でしたから、さすがのノートグ選手でもこのレースは難しいかなと思いました。

 レースも45kmを過ぎて終盤に入りましたが、ノートグ選手のポジションは変わりませんでした。ここまでに先頭集団から数人が振るい落とされましたので、ノートグ選手は先頭集団の最後方になりました。時々、前の選手から離されかけますので、やっと付いて行っている感じも漂いました。

 残り1kmになって、ようやくノートグ選手は前進を始めました。しかし、なかなか差が縮まりません。とはいえ、登り斜面を滑るノートグ選手の動きにはキレが有りました。

 残り500m。先頭との差は7秒まで縮まりました。
 ゴールまで残りの登りは1か所。ここでノートグ選手は猛然と前進します。一気に前方の選手数人を抜き去り、下り斜面にかかるところでは4位まで上がりました。

 とはいえ先頭争いをしているバウアー選手(チェコ)やオルソン選手(スウェーデン)との差はまだまだ大きかったので、「追込みは不発か」と思われました。

 下り斜面で加速したノートグ選手は、ゴール前の直線走路に3位で入りました。そして競り合う2人の選手の間、スキー走路が掘っていない場所で懸命にストックを使います。一掻き毎に差を縮め、残り100m地点で並び、抜き去りました。

 凄まじいラストスパートでした。

 優勝したノートグ選手と2位のバウアー選手との差は1.7秒、3位のオルソン選手とは2.0秒、6位のコログナ選手(スイス)までが10秒以内という激戦でした。

 ペッテル・ノートグ選手はこの優勝で、今大会4個目の金メダル、世界選手権大会通算13個目の金メダル獲得となりました。この驚異的な記録は、これからも積み上がって行くことでしょう。

 このレースはノートグ選手のレース戦略とラストスパート力が如何なく発揮されたレースでしたが、「まさにマススタート・レースそのもの」という感じで、かつての50kmとは全く異なる様相でした。

 1972年の札幌オリンピックで優勝したポール・ティルダム選手(ノルウェー)が、西岡の林の中を鼻水を凍らせながら黙々と滑っていた光景が思い出されます。かつての男子50kmは「自分との戦い」であり「孤独なレース」だったのです。

 現在の50kmは「他選手との駆け引き」であり「競り合いそのもの」となっています。

 もちろん、どちらの展開であっても、世界一になることの難しさには何の違いも無いことでしょう。

 スウェーデンのファレンを会場に行われた、2015年ノルディックスキー世界選手権大会の最終種目、歴史と伝統の30km・50kmは、ともにノルウェーの選手が金メダルを獲得しました。

 ノルディック王国ノルウェーの強さは、これからも続くことでしょう。
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世界ノルディック2015・女子40㎞と男子50㎞の戦い  
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