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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム23]  ジャパンカップとエルコンドルパサー
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 ジャパンカップの変遷と1998年の第18回が海外馬優位から日本馬優位へのターニングポイントになったことは、前稿に記載しました。

 第18回ジャパンカップを快勝したのが、エルコンドルパサー号です。エルコンドルパサーは、アメリカ生まれの日本調教馬です。
 日本ダービーと菊花賞に外国産馬が出場できるようになったのは2001年から、皐月賞は2002年からですから、1997年にデビューしたエルコンドルパサーは、クラシックレースには縁がありませんでした。その点では、1976年にデビューした無敗馬マルゼンスキーと同じです。活躍時期が20年以上も後なのですが、やはり出走できなかったわけですから、我が国のクラシックレースの国際化の歩みは、ずいぶん遅かったように思います。

 1997年11月の新馬戦を7馬身差で圧勝したエルコンドルパサーは、続く2戦目1998年1月の条件戦も9馬身差で楽勝しました。次走の共同通信杯(ここまで3戦はダート戦でした)、続くニュージーランドトロフィーと重賞を連勝して、G1NHKマイルに駒を進めました。このレースも快勝、エルコンドルパサーは、同期の外国産馬の無敗馬グラスワンダーとともに、この世代の最強馬と呼ばれるようになりました。
 それにしても、20年以上ぶりに登場した、マルゼンスキー並みの成績を残す外国産馬2頭が同期というのも、「名馬は同じ時期に集中して登場する」を地で行くものです。

 この無敗馬2頭は、3歳秋の緒戦としてG2毎日王冠を選択し、超快速馬サイレンススズカの爆走の前に敗れたことは、過去の本ブログに記載の通りです。さすがのエルコンドルパサーも、この時ばかりはサイレンススズカに2と1/2差をつけられ2着に甘んじました。繰り返しになりますが、サイレンススズカという馬のスピード値の高さには驚くばかりです。

 そして、生涯初の黒星を喫したエルコンドルパサーが、次に選んだのが頭書の第18回ジャパンカップでした。このジャパンカップには、この年の日本ダービー馬スペシャルウィーク、女傑エアグルーブ、有馬記念馬シルクジャスティス、あのステイゴールドなどの日本馬とチーフベアハート、カイタノ、マックスジーンなどの外国馬、計15頭が揃いました。特に、日本馬は同期のダービー馬が出走してきましたので「世代最強馬はスペシャルウィークかエルコンドルパサーか」という触れ込みで評判になりました。

 レースは、エルコンドルパサーの完勝でした。4角を回り、残り2ハロン・400m地点で先頭に立つと、追いすがるエアグルーブ、スペシャルウィークを寄せ付けず、2と1/2差でゴール板を駆け抜けました。ゴール前での叩き合い・接戦が多いジャパンカップでは、珍しい程の圧勝で、2と1/2差は当時の最大着差であったと思います。
 また、3歳でジャパンカップを勝った日本馬は、エルコンドルパサーが初めてでした。

 毎日王冠でグラスワンダー(5着)に先着し、ジャパンカップでスペシャルウィークに完勝したこともあってか、この年の最優秀4歳牡馬(旧馬齢)には、皐月賞・菊花賞の二冠馬セイウンスカイを差し置いて、エルコンドルパサーが選出されました。名実ともに、同期最強馬に認定されたのです。二冠馬が最優秀4歳馬に選出されなかったことも珍しいことでしたが、おそらく「戦績よりも勝ちっぷり」に重きが置かれたのだろうと思います。それ程に、エルコンドルパサーの第18回ジャパンカップでの走りは、素晴らしいものでした。

 翌1999年、4歳になったエルコンドルパサーは、海外のレースに挑戦します。緒戦は5月のG1イスパーン賞、フランス・ロンシャン競馬場の1850mのレースです。残念ながら、このレースでエルコンドルパサーは2着となり、2敗目を喫しました。
 エルコンドル陣営は、このまま秋の凱旋門賞までフランスに留まることを決意し、次走にG1サンクルー大賞を選びました。この年のエルコンドル陣営の対応は、日本馬の海外遠征の範となるものであったと思います。細心の注意を払い、水や飼葉も、いつも日本でエルコンドルパサーが使用しているものをコンテナで運んでいます。馬主や関係者の真摯な取組姿勢が印象的です。この丁寧な対応が、エルコンドルパサーの競走成績の大きな力になったと思います。

 余談になりますが、19世紀のハンガリーに54戦54勝という歴史的名牝キンチェムという馬がいました。欧州大陸を列車で移動してドイツ・フランス・オーストリアなど欧州各国のレースに臨み、生涯不敗の名馬ですが、遠征に超強かったキンチェムでさえ、水だけは生まれ育った牧場の水しか飲まなかったといわれています。関係者は、キンチェムとともにその水を運びながら遠征したのです。(キンチェムについては、いずれ採り上げたいと思います)

 ことほどさように、サラブレッドは繊細な生き物ですので、エルコンドル陣営はキッチリとした対応を行ったわけです。最終目標である凱旋門賞に出走するまで、約半年間フランスに滞在し、レースもスケジュール通り消化するというやり方は、エルコンドルパサーにとっても負担の少ないやり方であったろうと思います。

 1999年7月のG1サンクルー大賞2400mを快勝し(これだけでも凄いことです)、凱旋門賞の前哨戦G2フォア賞2400mも接戦を制して(今年のオルフェーヴルもフォア賞に勝ちました)、勇躍、凱旋門賞に出走しました。

 1999年10月3日の凱旋門賞当日、馬場は極端な不良馬場(計測されている中ではレース史上最も水分を含んだ馬場)でした。この馬場が、エルコンドルパサーにとって良かったのか悪かったのかは、いまだに良く判りません。
スローペースと展開の綾で、エルコンドルパサーが逃げる展開になったレースは、スローペースで最後の直線を迎えます。エルコンドルパサーは、十分に脚を残して最後の直線を迎えました。

 この馬にだけは、空前の不良馬場がプラスに働いたフランス馬モンジュー(アイルランド生まれのフランス調教馬)がじりじり追い上げ、残り200mでエルコンドルパサーを捉えます。しかし、エルコンドルも譲らず、壮絶な叩き合いの末、モンジューが1/2差で1着でした。
 2頭の叩き合いは1ハロンに過ぎなかったのですが、レースを観ていた私には、永遠に続くように感じられました。全く互角の競り合いであったと思います。斤量がモンジュー56㎏に対してエルコンドルパサーが59.5㎏であったことや3着馬との差が6馬身もあったことなどから、エルコンドルパサーの現地における評価は極めて高いものになりました。日本馬の国際的評価を一気に高めた、歴史的なレースであったと思います。
 このレースを最後に、エルコンドルパサーは競走馬を引退しました。

 エルコンドルパサー号、父キングマンボ、母サドラーズギャル、父の3代前の父と母の2代前の父が、あのノーザンダンサー。エルコンドルパサーはノーザンダンサーの4×3、18.75%の血量血統になります。このノーザンダンサーの18.75%は、先日紹介したフランケルと同じです。
 生涯成績は、11戦8勝、2着3回。生涯一度も連を外さなかったのは、日本競馬史上シンザンの19戦、ダイワスカーレットの12戦に次ぐ、素晴らしい記録です。10戦以上走ってG1級のレースに勝ち、3着以下が無い馬というのは、この3頭に11戦11勝のクリフジと10戦10勝のトキノミノルを加えた5頭しかいないでしょう。三冠馬より少ないのです。

 歴代日本最強馬を議論するとき、必ず名前が上がるのは当然のことだと思いますし、いまだJRA顕彰馬に選出されていないのは、不思議なことだと思います。他の馬と比較するようなレベルの馬ではありません。絶対水準として、顕彰馬の水準は十分に超えていますし、何より国際舞台での活躍は、日本競馬の世界におけるランクを一段引き上げたものです。他に類を見ない偉大な貢献であることは、間違いないところでしょう。

 私がエルコンドルパサーの競走成績で最も素晴らしいと思うのは、東京競馬場のパンパンの固い馬場でジャパンカップに勝利し、一方でロンシャン競馬場の空前の不良馬場でも力を発揮した点です。高速馬場でも、力の要る馬場でも、その能力を発揮できる馬は滅多にいません。あのモンジューでさえ、ジャパンカップでは4着に敗れています。
 加えて、1400mから2400mまでのレースに勝っていて、スタミナとスピードの両方を高いレベルで具備していた点も特筆すべきところです。

 こうした自在の脚を持つエルコンドルパサーが種牡馬になったら、どんな産駒を出してくるのか、とても注目しました。
 社台スタリオンステーションで種牡馬生活に入ったエルコンドルパサーですが、2年目の産駒からダートの鬼ヴァーミリアン(ジャパンカップダート他G1レース9勝=JRA記録)やトウカイトリック(G2阪神大賞典他)を出し、3年目の産駒からG1ジャパンカップダートを勝ったアロンダイトを出しました。
 3年目までは、自身も強かったダートにとても強い産駒が目立ちました。

 ところが2002年7月、エルコンドルパサーは腸捻転を発症し死亡しました。まだ7歳という若さでした。種牡馬生活は3年で終わってしまったのです。
 エルコンドルパサーありせば、日本にセントサイモンの悲劇が発生する危惧を持たずに済んだのではないかと思ったりもします。

 エルコンドルパサー=コンドルは飛んでいく。サイモンとガーファンクルの名曲から名付けられた名馬です。ターフを縦横無尽に駆け抜けたエルコンドルパサーは、あっという間に私たちの前から姿を消してしまいました。ジャパンカップと凱旋門賞の季節が来るたびに彼のことを想い出します。

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エルコンドルパサー   モンジュー   凱旋門賞1999年  
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3
初めまして
御訪問ありがとうございます。

競馬をスポーツとして深く愛してるのですね。
今回の記事はファンだったエルコンドルパサーについてでしたから何度も読み返してしまいました。

ディープやオルフェの出走で凱旋門賞は盛り上がっておりましたが
個人的には、あのエルコンドルパサーが勝てなかったのだからと思ってしまうのです。
凱旋門賞の叩き合いもJCのゴールシーンも鮮明に思い出されます。

記事内容は全てに納得です。仰る通りあの強さは顕彰馬に値すると思います。
種牡馬としての短い生涯が残念でなりません。

5
コメントありがとうございます。
> 素敵なコメントをいただき、ありがとうございます。
> おっしゃる通りだと思います。
> 記事には書きませんでしたが、エルコンドルパサーの姿も大好きです。
> 細身の筋肉質で、前駆・後躯のラインが綺麗でした。
> ああした馬に出会えることが、競馬の楽しみの一つですね。
>
> これからも思い出の馬達の記事を書きますので、
> 是非読んでいただいて、また素敵なコメントをお待ちしています。
                            カエサルjr
>
> > 御訪問ありがとうございます。
> >
> > 競馬をスポーツとして深く愛してるのですね。
> > 今回の記事はファンだったエルコンドルパサーについてでしたから何度も読み返してしまいました。
> >
> > ディープやオルフェの出走で凱旋門賞は盛り上がっておりましたが
> > 個人的には、あのエルコンドルパサーが勝てなかったのだからと思ってしまうのです。
> > 凱旋門賞の叩き合いもJCのゴールシーンも鮮明に思い出されます。
> >
> > 記事内容は全てに納得です。仰る通りあの強さは顕彰馬に値すると思います。
> > 種牡馬としての短い生涯が残念でなりません。

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