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HOME   »   ラグビー  »  [ラグビー] ふたつのラグビー「ユニオン」と「リーグ」
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 本ブログの他の稿でも「ラグビー(ここではユニオン)」などという表記をする場合があります。実は、ラグビーという競技には大きく分けて、ラグビー・ユニオン・フットボールとラグビー・リーグ・フットボールの2種類があるのです。

 良くご存知の方には、当たり前のことで恐縮ですが、日本で広く行われているラグビーは「ラグビー・ユニオン」競技で、「ラグビー・リーグ」競技の方はなじみが薄いので、本稿では、この2つの競技について簡記したいと思います。(そもそも「ユニオン」や「リーグ」という単語が競技名・競技を区別する言葉になっているという点が、日本語における解りにくさを増長させているようにも思います)

 本ブログの「ラグビーのはじまり」稿の中で、イギリスにおいて原始フットボールから1863年にサッカーとラグビーが袂を分かち、同年にサッカー協会FAが発足したので、この年がサッカー起源の年であり、それから遅れること8年、1871年にラグビー・フットボール・ユニオンRFUが発足したので、この年がラグビー起源の年であると記載しました。

 こうしてラグビーはイギリス中に広まったのですが、ある問題が次第に大きくなりました。その問題とは、仕事を休んで試合をするプレーヤーの所得保障の問題です。
 ラグビー創成期、ラグビープレーヤーは皆、他に仕事を持っていて、ラグビークラブの活動、練習であったり試合であったりに参加していたわけです。現在の色々なスポーツのアマチュア選手と同様です。

 この頃の各クラブチーム同士の試合は主に土曜日に行われていたそうです。週5日労働が一般的で比較的裕福であったイギリス南部地域の労働者は、休日である土曜日に試合を行っていたわけですが、週6日労働が一般的であったイギリス北部地域の労働者は、仕事を休んで試合に出場していました。この休業に対する金銭的な補償もありませんでした。
 北部地域のラグビークラブやプレーヤーは、RFUに対して仕事を休んで試合に出たプレーヤーに対して報酬を渡すことを提案しましたが、RFUはこれを拒否。
 そこで、北部地域のラグビークラブは1895年8月に「ノーザン・ラグビー・フットボール・ユニオン」NRFUを結成し、RFUと袂を分かったのです。この年が、ラグビー競技がラグビー・ユニオンとラグビー・リーグに分裂した年であり、RFUのラグビーがラグビー・ユニオン、NRFUのラグビーがラグビー・リーグになったのです。

 ここまで書いても、ユニオンとリーグの違いは良く解りません。経済的理由によって1895年に分裂したとはいっても、分裂当初のラグビー・ユニオンとラグビー・リーグのルールは同じでしたから、同じ競技で所属団体が異なるにすぎません。
 本当の意味で、ユニオンとリーグの違いが生まれてくるのは、この分裂を契機としてルールが異なって行ったため、次第に異なる競技になって行ったということになります。

 NRFUが結成されてから、NRFUにおいて様々なルールの検討・変更が行われました。その検討・変更の主たる理由も、仕事をしながらプレーを行うというプレーヤーの事情に適合させていく流れでした。
 まず「負傷を回避する観点」から、ラック、モール、ラインアウトといった「密集戦」を生み出すルールが廃止されました。こうしたルール変更は、ラグビー競技の有り様に大きな影響を与え、ラグビー・ユニオン競技とは大いに異なるラグビー・リーグ競技が確立されていったのです。逆に言えば、こうしたルール変更によりラグビー・リーグ・フットボールが生まれたとも言えます。

 「スクラム」はルール上残されましたが、これもハードコンタクトは無く、形としては組み合いますが押し合うことをせず、ボールをインプレーにする手段のひとつに過ぎません。ラグビー・リーグ関係者の間では、長年にわたりスクラムの廃止が検討されているようです。

 ここに重要なポイントがあると、私は考えています。
 兼業のプレーヤーに怪我をさせない・保護するために、ハードコンタクト・密集戦(腕力等によるボールの取合い)を極力排除したために、ゲームにおいて「ボールの所在が良く判る」「攻守が明確」という特徴が生まれたのです。結果として、ラグビー・ユニオンに比べてボールが良く動き、フィールド全体に展開される・ランニングプレーが多い、ラグビーになって行ったのです。

 現在のラグビー・リーグ・フットボールの特徴的なルール(ラグビー・ユニオンに比して)を記載します。
① 1チームのプレーヤーの数は13人。ラグビー・ユニオンの15人より2人少ない。
② 攻撃側のプレーヤーに対して、守備側のプレーヤーのタックルが成立した段階でプレーを止めます。攻撃側のプレーヤーは、足下にボールを置き、ボールを足で後方に蹴ることで、インプレーになります。(従って、タックル成立の後、両チームのプレーヤーがボールに殺到し奪い合う、というプレーが存在しません)
③ 前述のタックルが6回成立すると、攻守交代になります。6回目のタックルが成立した地点で、相手方の攻撃が始まります。従って、5回目のタックルが成立した後は、攻撃側のプレーヤーは、相手陣地に大きく蹴り込み地域を挽回するプレーを行うことが多くなります。もし、5回目のタックル成立後の地点が、相手ゴールに近ければ、ドロップゴールを狙うこともあります。
④ ノックオンやスローフォワードといった軽い反則の時や、ボールがタッチラインを割った時には、スクラムでインプレーになります。ラインアウトはありません。
⑤ トライは4点、トライの後のキックは2点、ペナルティーキック・ゴールは2点、ドロップゴールは1点の配点になっています。
⑥ フィールドは、ゴールライン間が100m、幅は68m。ラグビー・ユニオンのフィールドの幅は70mですから、幅が2m少なくなっています。

 こうして観ますと、③の攻守交代ルールなどは、アメリカンフットボールのルールに通じるものがあるように思います。

 さて、前述の特徴あるルール設定により、ラグビー・ユニオンに比べて、密集戦が少なく、展開主体のスポーツとなったラグビー・リーグは、スピード感に溢れる競技になりましたから、当然ながら見ていて面白いものになりました。

 現在では、発祥地であるイギリス北部はもちろんとして、オーストラリア・シドニー周辺の東海岸一帯やパプア・ニューギニアでも、非常に人気のあるスポーツとなっています。
 また、近時のラグビー・ユニオンにおける様々なルール変更を見ると、ラグビー・リーグのルールに近づいているように感じます。お客様から見えにくく、解りにくく、時間がかかり、ボールが止まってしまう密集戦を減らして、スピーディで、ボールが良く動き、トライも生まれやすいラグビー・ユニオンを追求していくと、ラグビー・リーグに近づいていくというわけです。

 現代のあらゆるスポーツの観客から、最も求められている普遍的な要素は「解りやすさ」と「スピード感」なのかもしれません。「パワー」は、この二つの要素が達成された状態の上に、積み上げられるべき要素なのかもしれません。

 1895年に袂を分かったラグビー・ユニオンとラグビー・リーグ、ふたつのラグビーが一緒になる日が来るのかもしれません。
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Comment
6
週休5日か6日でラグビルールに分岐が生じたとは知りませんでしたが、考えてみれば自然な事なのかもしれませんね。
プレイヤーの状況に応じ、観客の嗜好に応じ適応出来た競技しか生き残れませんものね。

7
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りです。プレーヤー・観客双方の支持がなければ、メジャーな競技にはなり得ません。
加えて、ラグビーは上流階級のスポーツと言われますが、実際には庶民の大切なスポーツであることが良くわかります。
今後も、コメントよろしくお願いします。

> 週休5日か6日でラグビルールに分岐が生じたとは知りませんでしたが、考えてみれば自然な事なのかもしれませんね。
> プレイヤーの状況に応じ、観客の嗜好に応じ適応出来た競技しか生き残れませんものね。

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