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 斜雪面に向かって落下し、落下姿勢の美しさと、より遠くに落下することを競うのが、スキーのジャンプ競技です。

 本稿では、スキージャンプ競技の基本的なことを書きます。ご存知の方には、当たり前のことばかりで恐縮です。

 競技場(ジャンプ台)は、シャンツェ(ドイツ語)とかバッケン(ノルウェー語)と呼ばれます。ここでは我が国で最も一般的と思われる「シャンツェ」と呼ぶことにしますが、シャンツェは、以下の4つの部分により構成されています。

① 助走路(アプローチ)
② 踏切台(カンテ)
③ 着地面(ランディングバーン)
④ 減速区域(ブレーキングトラック)

 アプローチは、加速の区域です。シャンツェ毎に異なりますが、最大で35度前後の角度があると思います。プレーヤーは、他の競技者より速く・より良い角度で踏切台から飛び出すために、姿勢や重心の置き場所を工夫します。当然ながら、ジャンプ競技における唯一の推進力というか運動エネルギーを獲得するための区域ですので、とても重要です。

 カンテは、アプローチから空中に飛び出す部分で、下を向いています。ジャンプ競技が「落下を競う競技」と頭書したのは、カンテ・踏切台が下を向いていることによります。下を向いている角度は、シャンツェ(ジャンプ台)毎に異なりますが、私が観てきたシャンツェでは8度から11度の間の角度です。下向き11度というと、かなりの斜面ですので、とても「飛び上がる」感覚ではありません。

 「ジャンプ競技における飛距離」は、プレーヤーがアプローチにおいて得た運動エネルギーとカンテにおいてプレーした踏切(サッツ)の強さ・速さ・角度によって大きく左右されます。
 いつ踏み切ったらよいか(サッツのタイミング)は、私が観てきた大会において、良いジャンプが観られた時を思い出すと、カンテの先端の直前のように思います。ここでは、プレーヤー(以下、ジャンパー)のスキー靴の位置を、ジャンパー側の身体の踏切ポイントとします。
 当然ながら、カンテ先端から例えば10㎝手前(以下、A地点)で踏み切ると言っても、踏切の動作(膝を曲げた状態から、一気に膝を伸ばし、上半身を前に投げ出す動作)には一定の時間が掛りますので、踏み切りたいA地点より手前から膝を伸ばすなどの「踏切動作」に入ることになります。

 踏切動作の始動から完了までの所要時間については、ジャンパーの反射神経・筋力他により、ジャンパー毎に異なるものと思いますが、1970年代に世界のトップジャンパーとして活躍し、1976年インスブルック・オリンピック70m級ジャンプ競技の金メダリストだったハンス・ゲオルグ・アッシェンバッハ(東ドイツ)選手の踏切所要時間が0.34秒で、驚異的に速い(陸上競技男子100m競走のオリンピック大会決勝進出ランナーのスタート並み)と報道されていた記憶がありますので、一般的な世界的ジャンパーの踏切所要時間を0.4秒とします。
 踏切直前のジャンパーの滑走スピードは時速90㎞前後ですので、0.4秒で約10m前進することになります。従って、ジャンパーは10m手前から踏切動作(膝を伸ばし始めるなどの動作)に入らなければならないことになります。
「サッツを合わせるのは難しい」とよく言われますが、時速90㎞で「A地点において踏切動作を完了する」ように10m位手前から動き出してタイミングを合わせるというのは、それは難しいことであろうと思います。

 加えて、踏切動作を合わせるだけでは不十分です。正しい踏切動作でなければならないからです。「正しい踏切動作」とは、雪面を下後方に押すパワーの絶対値が高いこと、その角度が正しいこと、および望ましい飛行姿勢に移行し易い動作ということになると思います。

 雪面を下後方に押すパワーは、より大きい方が良いことになります。普通に垂直跳びや前方にジャンプする際でも、筋力が大きい方が、より高く・より遠くに飛べるわけですから、パワーが大きい=筋力が強いジャンパーの方が、より遠くに飛行できる可能性が高いことになります。
 世界のトップジャンパーとして長く君臨してきた選手が、年齢を重ねると飛距離が出なくなってきます。踏切がピタリ合っていて、とても綺麗な空中姿勢で飛んでいるのに、距離が出ないというジャンプは、よく見られますが、主にパワー不足が原因でしょう。テレビ中継のアナウンサーが「見事なジャンプでしたが、距離が出ません」などと報じたりしますが、飛距離の最大の要因はパワーなのです。パワーが絶対的に不足している状態では、どんなことをしても限界があるのは、どのスポーツでも共通しています。

 続いて、踏切の角度ですが、これは相当に難しい問題であろうと思います。

 まず、全体の様子から観てみます。世界一流のジャンパーであっても、ジャンパー毎に飛行曲線が異なります。例えば、日本人ジャンパーであれば、原田雅彦選手は高い飛行曲線ですが、葛西邦明選手は低い飛行曲線のように観えます。当然のことながら、飛行曲線の高低に、良し悪しはありません。飛行曲線が高かろうが低かろうが、ジャンプ競技における飛距離が伸びれば良いのです。

 ジャンパー個々の身体的な特徴、例えば足首の柔らかさや脚の長さと上半身のバランス(重心位置)の違いなどにより、踏切の際に最もパワーが出せる角度が異なるのかもしれません。この踏切角度が理想的といっても、ジャンパーによってはその角度では力が出ないというのでは、本末転倒な話になってしまいます。ジャンパーが相応なパワーを発揮できる角度の範囲内で、可能な限り理想的な踏切角度を選択していくことになるのでしょう。(→続きへ)


 
 おそらく高い飛行曲線のジャンパーの方が、高い角度(カンテ・スキー板に対して蹴る角度)で踏み切っているのでしょう。低い飛行曲線のジャンパーは、前方に向かって低く踏み切っているように思います。
もちろん、アプローチを滑ってきたジャンパーの体は常に後ろに引っ張られていると思いますので、相当に前に重心を持ってきて、維持しているのでしょう。(そうしなければ、後ろにひっくり返ってしまいます)その状態で、真上に踏み切れば、スキー板の後ろ部分が下に下がり、ジャンパーは後方宙返りをする形になると思います。とても危険な状態ですし、飛距離は全く出ません。

 従って、いずれにしても前方に踏み切るのですが、その「前方」の中でも、角度がジャンパー毎に異なることになります。各シャンツェのランディングバーンの角度やK点付近の斜度などによっても、望ましい(理想的な)踏切角度が異なるとは思いますが、前述のように難しい踏切を行わなければならないジャンパーに、シャンツェ毎に異なる踏切角度の対応を期待するのは、無理なことかもしれません。
 
 踏切時の最後のポイントですが、踏切後の空中姿勢への速やかな移行です。ここで、時間が掛ってしまうと飛距離が落ちると、テレビの解説者などはいつも言っています。その理由は、私には良く解らないのですが、踏切が完了した段階でジャンパーに与えられるエネルギー供給も完了していますから、あとは可能な限り浮力をもらうことが大切な対応ということになります。
 浮力を得るために理想的とされる姿勢に、可及的早期に到達することは大事なことであろうとは思います。V字姿勢や少しお腹から胸のあたりを丸くする姿勢を取り、浮力を最大にする努力を行うのです。

 ランディングバーンの角度も、シャンツェにより異なりますが、最大で35度~38度位の角度があると思います。このランディングバーンの斜面に沿って落ちていければ、飛距離が伸びることになります。ここまで飛んでくる(落ちてくる)と、最後は落ちて行く角度が重要ということです。
 そう考えると、一般的には踏切は低い角度の方が良さそうに思えます。高く飛び出すと、単にドスンと落ちてしまいそうですから。

 続いて着地です。そもそも35度前後という、一般の人から見れば「崖」のような斜面に着地するのですから、大変難しいことであることは間違いないことですが、ここでは世界のトップジャンパーを対象として話を展開していますから、着地動作が出来ることを前提とします。
 どちらかの脚を前に出し膝を曲げ、もう一方の後方の脚の膝も曲げて、両手を広げて着地すると「テレマーク姿勢」が取れた着地として、飛形点で高い点を得ることが出来ます。

 余談ですが「テレマーク」とは、ノルウェー南部の地域の名前(現在では県名となっています)です。ジャンプ競技を始めとする、いわゆるノルディック競技の発祥の地、あるいは少なくとも昔からとても盛んだった地域が、ノルウェーのテレマーク地方であったことを示していると思います。

 さて、着地の話に戻ります。着地の際に大切なことは、前述のテレマーク姿勢を取ることですが、もうひとつ大切なことは飛距離を伸ばすことです。K点(ランディングバーンの角度が緩くなり、これ以上飛ぶと危険とされる距離ポイント)付近まで落ちてきて、最後の努力で1~2mの飛距離を稼ぐ努力です。
 上手いジャンプでは、着地寸前に両膝を少し曲げて、スキー板を斜面に平行にしようという動きを行い、数メートルの距離を稼ぐシーンを観ることがあります。もちろん、着地点付近の風の状況などに左右される動きなのでしょうが、1~2mの飛距離差というのは大きな大会になればなるほど重大な差になりますので、着地技術による飛距離の延長は大切なことだと思います。

 以上、ジャンプ競技の概要を観てきました。(当たり前のことばかり書いて恐縮です)
 短い時間に、色々なことに対応しなくてはならない競技ですし、試技数が少ないので、やり直しがきかない競技のひとつでしょう。

 ジャンプ競技は、雪が降る地方でスキーが広まっていたエリアであれば、自然発生的に行われていたことであろうと思います。

 前述のノルウェー・テレマーク地方でも冬のレジャーとして、1840年頃からジャンプが楽しまれていたという記録が残っているそうです。
 そして、1877年にノルウェーで最初のジャンプ競技会が開催されました。本ブログでは、各スポーツのはじまりについて触れていますが、その際の基準のひとつとして「ルールの確立・統一」があります。
 おそらく、スキーが行われていた世界中の沢山の地域で、自然発生的にジャンプ的遊戯が行われていたと思いますが、ある程度統一されたルールの下で競技会が行われたという、最も古い記録が上記のノルウェーの記録ということであれば、「スキージャンプ競技のはじまりは1877年のノルウェー」ということになります。

 我が国でスキージャンプ競技が始まったのが、いつ・どこであるかというのは、私は発見できませんでした。ご存知の方がいらっしゃいましたら教えてください。

 一方、日本でスキーが始まったのは1911年・明治44年。新潟県の高田(現在の上越市)にあった帝国陸軍第13連隊に、当時のオーストリア・ハンガリー帝国の軍人テドール・エドラー・フォン・レルヒ少佐(42歳)が伝えました。軍隊の雪中行軍用の道具として伝えられたのです。
 そして、1923年に、第一回全日本スキー選手権大会ノルディックスキージャンプ大会が開始されていますから、我が国でスキージャンプ競技が始まったのは1911年~1923年の間ということになります。

 ちなみに、第一回大会は北海道小樽で行われ、優勝記録は16.1m、第二回大会は前述の新潟県高田で行われ優勝記録は20.4mでした。
こうした大会を経て、1928年の第二回冬季オリンピック・サンモリッツ大会(スイス)に、日本は代表選手団を送り込みました。初の冬季オリンピックへの参加です。このスピード感は、素晴らしいものだと思います。
 この大会のジャンプ競技には、伴素彦選手や麻生武治選手が出場しています。20~30mで競い合っていた日本人ジャンパーが、いきなり70mクラスのシャンツェに挑むのですから、その気概には並々ならぬものがあったと思います。

 実は、滑降・回転といったアルペンスキー競技が冬季オリンピックに登場するのは、1936年の第4回ガルミッシュ・パルテンキルヘン大会(ドイツ)からなのです。つまり、20世紀初頭、国際大会が始まった頃のスキー競技といえば、ノルディックスキー、現在でいう距離スキーのクラシック競技とジャンプ競技、そしてノルディック複合競技であったことが判ります。
 スキージャンプ競技は、始めから冬のスポーツの中心競技だったのです。
 
 あるスポーツが普及する条件として、本ブログでは、プレーヤーが行っていて楽しいことと、観客が見ていて面白いこと、を上げています。
 その点からは、ジャンプ競技は選手にとって「相当怖いが、とても面白く楽しい」競技ですし、観客にとっても、スケールが大きく、迫力十分で、スピード感とスリル満点ですから、とても面白い競技ということになります。メジャーなスポーツとなる基本的条件は、最初から具備していたことになります。
 本ブログでも、これから色々と観ていきたいと思います。

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スキージャンプ競技   テレマーク地方   ハンス・ゲオルグ・アッシェンバッハ  
Comment
16
確かに、20m級しか飛んでない選手が、本番で70m飛ぶ恐怖は如何程だったかと思います。
戦前の日本人のアニマルスピリットや成せばなる精神力には改めて驚きですね。

18
コメントありがとうございます。
おっしゃる通りです。
おそらく道具も、現地で調達したのではないかと思います。
先達は、凄いですね!

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