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HOME   »   駅伝・マラソン  »  [男子マラソン] 日本と世界の差
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 冬に入ると、本格的なマラソンシーズンです。昨12月2日にも、歴史と伝統の福岡国際マラソンが開催されました。来年のモスクワ世界選手権大会の代表選考会を兼ねた大会であり、日本人選手のトップは全体2位の堀端宏之選手。代表内定の条件であった2時間7分台には惜しくも届かず、2時間8分24秒のタイムでした。

 このレースの優勝タイムは、ジョセフ・ギタウ選手の2時間6分58秒でしたから、堀端選手とは1分半近い大きな差が付きました。
 最近の日本男子マラソンは、エチオピアやケニアといったアフリカ諸国を中心とする世界的な記録向上についていけず、残念ながらオリンピックや世界選手権で好成績を残せない状態が続いています。
 
 本稿では、男子マラソン競技の世界と日本の差について、観てみたいと思います。

 比較のスタート時点は、1965年・昭和40年とします。この年、日本の重松森雄選手が2時間12分0秒の世界最高記録を樹立しましたので、この検討のスタートラインとして、解り易いと思うからです。
 
 1965年以降の世界最高記録の更新年と、当該年の日本最高記録を比較してみます。

① 1967年クレイトン選手2時間9分36秒
←日本最高 佐々木精一郎選手2時間11分17秒(△1分41秒)
② 1969年クレイトン選手2時間8分33秒
←佐々木精一郎選手2時間11分17秒(△2分44秒)
③ 1981年ドキャステラ選手2時間8分18秒
←宗茂選手2時間9分6秒(△48秒)
④ 1984年ジョーンズ選手2時間8分5秒
←瀬古利彦選手2時間8分38秒(△33秒)
⑤ 1985年ロペス選手2時間7分12秒
←中山竹通選手2時間8分15秒(△1分3秒)
⑥ 1988年デンシモ選手2時間6分50秒
←児玉泰介選手2時間7分35秒(△45秒)
⑦ 1998年ダコスタ選手2時間6分5秒
←児玉泰介選手2時間7分35秒(△1分30秒)
⑧ 1999年ハヌーシ選手2時間5分42秒
←犬伏孝行選手2時間6分57秒(△1分15秒)
⑨ 2002年ハヌーシ選手2時間5分38秒
←高岡寿成選手2時間6分16秒(△38秒)
⑩ 2003年テルガド選手2時間4分55秒
←高岡寿成選手2時間6分16秒(△1分21秒)
⑪ 2007年ゲブレセラシェ選手2時間4分26秒
←高岡寿成選手2時間6分16秒(△1分50秒)
⑫ 2008年ゲブレセラシェ選手2時間3分59秒
←高岡寿成選手2時間6分16秒(△2分17秒)
⑬ 2011年マカウ選手2時間3分38秒
←高岡寿成選手2時間6分16秒(△2分38秒)

 以上、1965年~2011年までの46年間の比較でした。2012年も⑬と同じ状態です。
 特徴を挙げてみます。
・世界最高記録と日本最高記録の差が1分以内であったのは、1981年~1984年と1988年~1997年、2002年。
・世界最高記録と日本最高記録の差が2分以内であったのは、1965年~1968年、1981年~2007年。
・世界最高記録は、1988年~1998年の10年間は更新されませんでした。日本最高記録は、2002年以降更新されていません。

 この期間の、マラソン日本男子代表のオリンピックOLYおよび世界選手権での好記録(3位以内)を並べてみます。
・1968年メキシコOLY 君原健二選手 銀メダル
・1991年東京世界選手権谷口浩美選手 金メダル
・1992年バルセロナOLY森下広一選手 銀メダル
・1999年セビリア世界選手権佐藤信之選手 銅メダル
・2005年ヘルシンキ世界選手権尾方剛選手 銅メダル

 以上の2つの記録の列挙から伺えることは、
a. オリンピックと世界選手権で3位以内の成績を挙げているのは、世界最高記録と日本最高記録の差が2分以内の時期。
b. 世界と日本の差が最も小さかった時期は、1988年~1997年の10年間。
ということになります。

 確かに、1988年~1997年の間の日本男子マラソン界には、宗茂・宗猛の宗兄弟、瀬古利彦、中山竹通、谷口浩美、森下広一、といった世界のトップランナーが次々と登場しました。日本男子マラソン界の黄金時代でした。

 宗茂選手、25回のマラソン出場で優勝6回、毎日マラソン3回優勝が印象的です。自己最高は2時間9分6秒。
 宗猛選手、42回のマラソン出場で優勝5回、ロサンゼルスOLY日本人選手最高成績4位が印象的。自己最高は2時間8分55秒。
 瀬古利彦選手、15回のマラソン出場で優勝10回、勝負強く、高い勝率を誇ります。全盛時のモスクワOLYに日本が参加しなかったことが惜しまれます。自己最高は2時間8分38秒。
 中山竹通選手、16回のマラソン出場で優勝5回、スタート直後から快速を飛ばして、大差で逃げるレース振りは、中山選手ならではのものでした。現在の様にペースメーカーが設置されていたら、中山選手がどんなレースを展開したのか、想像するだけで楽しくなります。自己最高は2時間8分15秒。
 谷口浩美選手、21回のマラソン出場で優勝7回、1991年の世界選手権での優勝は、世界陸上全種目で日本男子初の金メダルでした。自己最高は2時間7分40秒。
 森下広一選手、3回のマラソン出場で優勝2回、デビュー戦の1991年毎日マラソンで2時間8分53秒の初マラソン日本最高記録での優勝が強烈でした。

 これらのランナーに共通しているのは、その時代その時代の世界のトップクラスの走破タイムを叩き出しているのはもちろんとして、各レースにおいて優勝している回数が多い点です。
 記録と共に「優勝できる実力」を備えていた点が、素晴らしいところだと思います。どのランナーも「勝つための型」を持っていて、レースをその型に持ち込む努力を怠りませんでした。
 競走相手を考慮することは、もちろん大切なことですが、これらのランナーは「自力で勝負できる絶対的な実力」を保持していましたから、観ている我々もワクワクしたものです。

 日本人トップの記録で、2位とか3位とかに入って標準記録を突破したとしても、本番の大会ではその記録を出すことは、とても難しいことでしょう。海外の強豪ランナーを相手に1着を狙って走り、結果として敗れた時の記録と、最初から1着を狙うことをせずに出した記録とは、「応用力」が全く違うのですから。

 2008年に、ゲブレセラシェ選手が2時間4分の壁を突破してから、世界と日本の最高記録の差は2分を超えました。そして、2時間4分~6分で走るランナーは、世界中で毎年確実に増加しています。
 一方前述の通り、日本最高記録は10年間更新されていません。「必ずしも持ちタイムが速い選手が大会で優勝するわけではない、天候やコース状況により、持ちタイムが劣る場合でもチャンスがある」ということは解っているつもりですが、条件により逆転できる差を遥かに超える差が、彼我の間に付いているということでしょう。

 この10年間の日本マラソンの停滞は、不思議でさえあります。中学、高校の長距離界、駅伝界は、10年前に比べて益々盛んになっています。箱根駅伝を始めとする大学長距離界も、この10年間で衰えたようには全く観えません。
 社会人ランナーのトレーニング体制も、日々充実してきているように思います。テレビなどのマスコミに登場する機会は、10年前に比べて増えているように観えます。
しかしながら、マラソンの記録は伸びませんし、外国人一流ランナーが出場している国内の大レースで、日本男子選手が優勝することは殆ど無くなりました。

 マラソンも、100m競走と同じく、人種の差が明確になりつつある、などという結論を出すのは早すぎると思います。
 5000m、10000m、20000mといった長距離競争は、以前のように持久力を競う競技ではなく、「保持しているスタミナをキッチリ消費して、その距離を一定以上の速度で走り、ラストスパートで競い合う競技」になりました。従って、20㎞競走に強いランナーといっても、42.195㎞のマラソンには対応できない時代になっています。

 昔のように、20㎞競走の延長線上にマラソンがあるのではないのでしょう。「マラソンにはマラソンの走り方」が確立されてきているようにも思います。
 ひょっとすると、21.7㎞平均の箱根駅伝で大活躍することは、次の段階でマラソン競技に進んでいくには不向き、という時代が到来しているのかもしれません。

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20
トップクラスの選手との格差に鑑みると、何か練習法に根本的な欠陥が有るのではと考えてしまうね。
貴兄が野球の練習編でも指摘していたけど、持久力を維持しつつ瞬発力を高めるトレーニングの高度化が必要だね。をオールジャパンで取り組めないものかね。

21
コメントありがとうございます。
確かに、根本的な見直しが必要な気はしますね。食生活から変更したい感じです。

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