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HOME   »   ゴルフ  »  [全米オープン2015・最終日] 16番・17番・18番ホールの激闘
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 15番ホールを終えて、アメリカのジョーダン・スピース選手と南アフリカのブランデン・グレース選手が5アンダーパーで並びました。
 この2選手の優勝争いと見えましたが、全米オープン2015はここから思いもよらぬ展開を見せたのです。

 ホールの右側に線路が続いている16番ホール・337ヤード・パー4。
 グレース選手のティショットは、大きく右側に飛び出しました。そして、狙いとしていたドローボールとはならず、そのまま右サイドに落下しました。ボールは、線路の敷石の上でした。アウトオブバウンズOBでした。

 これで圧倒的に有利になったスピース選手は、スプーンでティショットを放ち、グリーン手前に運びました。

 OBを打ったグレース選手でしたが、短いパー4ですからまだボギーでホールアウトできる可能性がありましたので、第3打を果敢に打ち、グリーン手前のスピース選手より近い位置に置きました。

 スピース選手の第2打アプローチショットは、ショートし6m程を残しました。
 グレース選手の第4打アプローチショットは、当初絶妙に観えましたが、このコースの特徴である「傾斜の強いグリーンの罠」に嵌り、転がってどんどんホールから離れました。5m程のボギーパットが残ってしまったのです。

 スピース選手の第3打・バーディパットは大変難しいライン、大きく曲がる速いスライスラインでした。スピース選手は、これを慎重にストロークし、ボールはゆっくりとホールに向かって転がりました。
 ホール直前で、ボールは大きく左にカーブしましたので、外れたかと観えた瞬間に、カップに吸い込まれました。バーディ。

 スピース選手のバーディの興奮が冷めやらぬ中、グレース選手がボギーパットにトライしました。素晴らしいパッティングでしたが、ボールはホールの僅かに左側に止まりました。ダブルボギー。

 5アンダーの並走で16番ホールに臨んだ2人のプレーヤーは、このひとつのホールで6アンダーと3アンダーという3打差となりました。ゴルフというのは、怖い競技です。

 さて、6アンダー単独トップに立ったスピース選手は、2位のグレース選手やダスティン・ジョンソン選手、ルイ・ウーストヘイゼン選手らに3打差を付けました。残り17番・18番の2ホールでの3打差ですから、相当有利になったと感じられました。

 ところが、そのスピース選手が、安定したプレーに定評があるスピース選手が、17番・219ヤード・パー3のティショットに失敗して、ダブルボギーを打ってしまうのです。

 「ゴルフは何が有るか分からない」とよく言われますが、16番ホールのグレース選手といい、17番ホールのスピース選手といい、「この大会で最も上手く約70ホールをトップの成績でラウンドしてきたプレーヤー達)が、とんでもないミスショットを見せるのです。
 このスポーツの難しさを如実に示している事実でしょう。

 さて、スピース選手が一気に4アンダーに後退しましたから、他の選手に大きなチャンスが生まれました。

 グレース選手と同じ南アフリカのウーストヘイゼン選手が18番ホールでバーディを奪い、4アンダーでホールアウトしました。
 そして、アメリカのジョンソン選手が17番・パー3のティショットをピン手前1.5mにヒットし、バーディパットをキッチリと沈めて、やはり4アンダーとしました。

 この段階では、ダブルボギーを打ったショックが残るであろうスピース選手や、メジャー大会ではいまひとつ勝ち切れないジョンソン選手より、ホールアウトしたウーストヘイゼン選手が一番有利なのではないかと思いました。12番から16番までの5ホール連続バーディを始めとして、最後の7ホールでスコアを6つも伸ばしたウーストヘイゼン選手に勢いが感じられたのです。

 スピース選手が、最終18番ホール・601ヤード・パー5のティーインググランドに立ちました。17番のダブルボギーの影響で、このティショットを大きく曲げる可能性は十分にあると思われましたが、これをフェアウェイに置きました。

 スピース選手の精神力の強さを感じさせるショットでした。

 スピース選手の第2打は、ピンまで234ヤード・登り7ヤードと放送されていました。2オンさせれば、パー5ホールですからイーグルチャンスとなりますが、曲げればとんでもないトラブルが待っています。
 フェアウェイウッドから放たれたショットは、見事にグリーンヒット。5m強のパッティングを残しました。スーパーショットでした。

 スピース選手のイーグルパットは入りませんでしたが、キッチリとバーディを取り、5アンダーでホールアウトしました。
 この時点でウーストヘイゼン選手の優勝は無くなりました。3年振りのアメリカ人プレーヤーの優勝を待っている大観衆の大歓声がコースに響き渡りました。

 これで、スピース選手を打ち負かす可能性があるのは、最終組で4アンダーのダスティン・ジョンソン選手のみとなりました。

 最終ホールがパー5であることは、現在のPGAツアーNO.1の飛ばし屋であるジョンソン選手にとっては、十分にチャンスが有ることを意味します。ジョンソン選手にとっては、601ヤードの長いパー5であることなど、何でも無いことなのです。

 ジョンソン選手のティショットは凄まじいものでした。他の選手とは軌道が異なる、高く強烈なショットでフェアウェイをヒットします。この状況で、自らの持ち味を発揮できるというのも凄いことですが、そのショットは、この日の大観衆、テレビで観戦していた世界中のゴルフファン、そして大会関係者の度肝を抜くものでした。

 「354ヤードのビッグドライブ」と報じられました。

 2014年のマスターズ大会最終日・13番ホールのババ・ワトソン選手のティショットも見たことも無いものでしたが、あのショットは340ヤードと報じられました。

 このダスティン・ジョンソン選手のドライバーショットは、ひょっとすると、これまでのメジャートーナメントにおいて、優勝争いの中で観ることが出来た「最長のドライバーショット」だったのかもしれません。
 このショットを披露したことは、この大会のダスティン・ジョンソン選手のプレーの価値を大きく高めたと感じますし、世界ゴルフ氏史上に輝くショットであったとも思います。

 さて、残り250ヤード強の第2打を、ジョンソン選手は5番アイアンで打ちました。テレビ朝日の放送の解説者であった丸山茂樹選手が「601ヤードのロングホールの第2打を5番アイアンで打てるというのは・・・」とコメントしていました。
 非日常そのもののプレーなのです。

 そして、その第2打はピン左上3m強にヒットしました。
 この状況下で魅せた、スーパーショットでした。

 この3m強の下りのパッティングに、全米オープン2015のタイトルの行方が委ねられました。
 チェンバーズベイGCの下りのパッティングですから、非常に速いことは間違いありません。そもそも、グリーンのあの斜面にジョンソン選手のボールが止まっていること自体が不思議な感じさえします。
 本来なら、もっと下り転がって、ホールに近づくべきショットだったのかもしれませんが、ポアナ芝の芽がボールを止めたのでしょうか。そこに「ポアナの芽が立っていたこと」も運命のひとつなのかもしれません。

 このパッティングを決めてイーグルとすれば、通算6アンダーとなってジョンソン選手の優勝、2パットのバーディとすれば通算5アンダーとなってスピース選手とのプレーオフ。
 どちらかであろうと思いました。

 この時の雰囲気では、難しいが短い下りのパットをジョンソン選手が決める感じもしました。それが「流れ」だったと思います。

 ジョンソン選手の放ったイーグルパットは、しかし、ホールの左側を通過し、1.2m程のバーディパットを残しました。

 熱狂から覚めた大観衆は、このバーディパットも「容易なパットではない」ことを再認識しましたが、同伴競技者のジェイソン・デイ選手が同じようなパットを直前に決めていましたので、このパットも入るであろう、ジョンソン選手はバーディパットを決めるであろうと観ていたと思います。

 慎重なストロークから放たれたパットは、しかし、ホールの左側を掠めて通過しました。3パット。
6000の観覧席を埋め尽くした大観衆と、ホールを取り巻く大観衆の悲鳴が、チェンバーズベイ・ゴルフクラブに響き渡りました。

 ジョーダン・スピース選手の優勝が決まりました。

 ダスティン・ジョンソン選手にとっては、18番ホールのあのティショットとあのセカンドショットを持ってしても勝利を奪えなかったことは、大きな痛手であろうと思います。
 また、サンデーバック9に入ってから、ややパッティングの際に手が動きにくくなっていたことも事実でしょう。
 「クラッチパット」への対応が、ジョンソン選手の最大の課題なのかもしれません。

 しかし、私は余り心配することは無いような気がします。この大会で優勝できなかったとしても、ダスティン・ジョンソン選手のプレーは「他の誰にも出来ないもの」であることが示されたのは事実なのです。
 この異次元のプレーを持って続くメジャー大会に臨んで行けば、タイトルは自ずと手に入るのではないでしょうか。

 ジョーダン・スピース選手は、これでメジャー大会2連勝となりました。マスターズ・トーナメントと全米オープンを連勝したのは、史上6人目と報じられています。
 その6人は、ジャック・ニクラウスやタイガー・ウッズといった、世界のゴルフ史を彩るスーパースターばかりです。

 16番ホールで3打差とし、17番ホールでダブルボギーを打ってライバル達に並ばれながら、18番ホールでバーディを奪って「1打差」で勝ち切る、というのは「至難の業」というべきプレー振りでしょう。

 その精神面の強さというか、何とも言えない冷静さというか、「不動の心持」は、ジョーダン・スピースというプレーヤーの最大の武器であり、ゴルフという競技において最も重要な要素なのかもしれません。

 これで、スピース選手は「アメリカゴルフ界の看板プレーヤー・第一人者」になったと感じます。
 まだ21歳のゴルファーは、これからどんな伝説を創って行ってくれるのでしょうか。
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