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HOME   »   日本プロ野球  »  [NPB] 豊田泰光氏のコラム「チェンジアップ」
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 日本経済新聞のスポーツ欄に、豊田泰光氏のコラム「チェンジアップ」が連載されています。週に一回位のペースだと思いますが、とても面白いコラムで、いつも楽しく読ませていただいています。
 豊田泰光氏は、ご存知のように元プロ野球選手で、西鉄ライオンズ全盛時代の中心選手の一人でした。1956年・昭和31年には、首位打者のタイトルも獲得しています。

 何より、現場に精通している「プロフェッショナルな野球人としての視点」が素晴らしい。外から見ているのでは、何十年かかっても身に付けることが出来ない、高いレベルの視点だと思います。

 本日2012年12月6日のコラムも、興味深い内容でした。

 『現在の打者に話を聞くと「つなぎの野球で頑張った」とか「次の打者につなぐことだけを考えてプレーした」とか、「つなぎ」という言葉のオンパレードであり、嘆かわしい』と。『自分が打ってヒーローになる気概が無くては、プロ野球の打者としては物足りない』と。
 『野球選手がこざかしくなると、ろくなことはない』というコメントに至っては、リズムといい語勢といい、抜群の切れ味です。
 
 そして『ここで打てば大殊勲になるという場面でバントを指示されたら、監督に反発するくらいでなければいけない』というコメントには、プロスポーツひいては現在の社会全体に共通する問題点をも指摘しているように思います。

 つまり、監督といったマネジメントを行う人の指示に絶対服従でなければならないという、何か軍隊のような精神が重んじられていることの問題点です。
 組織なのだから、上席者の言うことを守らなければバラバラになってしまい、組織が維持できなくなる、などという実しやかなウソがプロ野球界にも、一般社会にも罷り通っているように思います。

 こうした「絶対服従」精神の一番の問題点は、責任の不在・責任感の欠如であり、ひいてはプレーレベルの低下に繋がり易い点です。

 選手は、監督やコーチ(以下、監督とのみ表記)の言うとおりにプレーしていれば、失敗したり成果を出せなくとも責められることが無いと考えるのでしょうか。その指示が間違っていると思われる場合でも、監督に進言することもなく、プレーするのでしょうか。

 監督も日々の練習や試合の中で、自らの判断・指示の正しさを継続して示し、選手に納得させ続けながら、選手の信頼を得ていくという、手間がかかり難しい作業を放棄しているように観えます。
 野球についての高い見識と、選手や周りの人達との高いコミュニケーション能力に裏打ちされた、高度なマネジメント能力を持って、チームの構成員を動かしていくのが監督の仕事のハズなのですが、そうした能力・努力が不足している人は「俺の言うことを聞けないヤツは出ていけ。言うことを聞けないヤツを放置したら、チームがバラバラになる。監督批判は許さない」などということを言って、自らの能力不足・努力不足を隠すのでしょう。

 選手が言うことを聞かないのは、選手個々の性格の問題ではなく、監督自らの指示に間違いが多く、個々の選手の気持ちや能力を考慮した指示が少なく、結果として、選手が納得できる指示が少ないことも原因のひとつなのですから、監督の方にも責任があると、考えられないのでしょうか。
 もちろん、選手側に問題があることもありますので、常に監督側に問題があるとはいいませんが、少なくとも監督側が常に正しいなどということは有り得ません。野球界には、正しい指示が多い有能な監督と、ほとんど正しい指示を出すことが出来ない無能な監督の、両者が存在しているだけです。

 「絶対服従命令」というのは、マネジメントを放棄している状態なのです。

 マネジメント能力が低いから、選手に絶対服従を命じているのであって、結果として選手は伸び伸びとプレーすることが出来なくなり、言われたことしかやらなくなりますから、チーム力は停滞することとなります。監督は、その役割期待に全く応えていないことになります。

 以前、クラシック音楽の世界的指揮者である小澤征爾氏がテレビでインタビューを受けていました。小澤氏の特集番組だったと思いますが、番組の最後に「オーケストラが良い演奏をするために一番大切なことを、一文字で表してください」という依頼と共に、色紙が渡されました。

 小澤征爾氏は、サラサラと書き、それを示しました。「個」と一文字が記されていました。
 小澤氏の説明です。「オーケストラが良い演奏をするには、個々のメンバーの能力を上げていくことが大切です。ひとりひとりの演奏能力が高くなくては、オーケストラの演奏も良くなりません」と。
 インタビューをしていたアナウンサーは、少し意外そうな様子でした。「和」とかチームワークといった言葉を期待していたのかもしれません。

 さすがに、世界中の一流オーケストラを指揮してきた小澤氏は、オーケストラの能力を上げるには、個々の演奏家の能力を上げていく必要があることを指摘したのです。全ての団体競技、集団活動に共通する考え方であろうと思いますし、チームワークなどと安易に口にする人々にとっては、忘れてしまい易い要素でもあります。
 監督も選手も大切なことは、自らの個の能力を高めることであって、傷を舐め合う仲良しクラブを作り上げていくことではありません。

 松井秀樹選手が所属していた頃、ヤンキースの監督だったジョー・トーリ氏が、日本のテレビ局の取材を受けていました。「メジャーリーグの監督とは、どういう存在ですか」といった質問が飛びました。難しい質問だなあ、と思って見ていましたら、トーリ監督は答えます。
 「私はいつも、チームのプレーヤーひとりひとりが気持ちよくプレーできる環境を造ることに腐心しています。個々のプレーヤーは皆、メジャーリーガーなのですから、当然高い能力を有しています。私は、その高い能力を存分に発揮してもらうことだけを考えています。監督として、私が行っていることは、それだけです」と。
 とても考えさせられるコメントでした。

 「選手を手駒と考え、自らの思うままに動かして、チームを勝利に導くのが監督だ」などという考え方の、対極にある考え方を、ジョー・トーリは示したのです。私は、このコメントを聴いた時に、さすがにジョー・トーリは超一流の監督だと思いました。

 もちろん、ジョー・トーリ監督は、選手の起用やゲーム中のサインなどで、様々な指揮を展開し、その指揮の積み上げの結果として、何回にも渡るワールドシリーズ制覇を成し遂げているのですから、監督としてのゲームマネジメント力も超一流です。
 しかし彼は、それを誇ったり自慢したりすることはなく、個々のプレーヤーに気持ち良くプレーしてもらうことだけを心掛けているとコメントします。こうしたコメントを繰り返していることも手伝って、プレーヤーは彼の指示に従うのでしょうし、思う存分働いてくれるのでしょう。こうした考え方を基本として、失敗した選手や怠慢なプレーに対して、厳しい指摘も当然行っていくのでしょう。
 本当に自信のある人は、自慢などしない。本当に能力がある人は、黙っていても周りの人が高く評価してくれるという、日本古来の考え方に近い行動を、ジョー・トーリというミスターアメリカといっても良い人物が行っているところが、とても興味深いところです。

 日本プロ野球界にも、こうした監督は居るのでしょうが、こうした監督がもっと増えて行ってもらいたいものだと願っています。

 豊田泰光氏の「チェンジアップ」は、その名の通り、様々なことを考えさせてくれるキレの良い変化球です。次回こそは空振りしないようにと、私は打席で待っています。

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