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HOME   »   サッカー  »  [クラブWC] ガチンコ勝負 コリンチャンス対チェルシー
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 FIFAクラブワールドカップ2012決勝は、日本時間2012年12月16日午後7時30分キックオフで、横浜国際総合競技場に68,275人の大観衆を集めて行われました。南米代表のコリンチャンス(ブラジル)と欧州代表のチェルシー(イングランド)の試合は、1-0でコリンチャンスがチェルシーを下し、優勝しました。

 ジャキル主審の最後のホイッスルが響き渡る1秒前まで、両チームが死力を尽くしたガチンコ勝負であった点が、このゲームの最も素晴らしいところであったと思います。

 ゲームは、コリンチャンスのペースで始まりました。というか、ゲームを通してコリンチャンスペースであったと思います。
 その最大の要因は、コリンチャンスのディフェンス陣がゲームを通して機能していたことでしょう。両チームとも4-2-3-1のフォーメーションでしたが、コリンチャンスのバックラインと守備的な中盤のラインは、最後まで崩れませんでした。そういう意味では、コリンチャンスは守備的なゲームを展開したのです。

 チェルシーには、アザールとマタという極めて攻撃的なプレーヤーが前線に居て、この二人が縦横無尽に走りまくり、相手チームの守備体系にスペースを造り出して、フォワードが得点するパターンなのですが、試合を通してアザールとマタが、自由に動くシーンは観られませんでした。この二人の能力・スピードを考えると、不思議なことです。
 この二人が、いつもの力を発揮できなくとも、チェルシーにはアシュリー・コールとランパードという、イングランドが誇る二人の強力な攻撃力を持つ守備的なプレーヤーが居ます。コールのオーバーラップやランパードのミドルシュートは、世界最高水準であり、局面を打開する力が十分にあると思われました。
 しかし、ランパードとコールも機能しませんでした。ランパードの周りに、あんなに沢山の相手チームのプレーヤーが居るゲームは珍しいと思いましたし、アシュリー・コールのオーバーラップが、あんなに孤立している試合も珍しいものでした。

 FIFAクラブワールドカップ(以下、クラブWC)は、前身のインターコンチネンタル・カップ、トヨタ・ヨーロッパ/サウスアメリカ・カップ(以下、トヨタ・カップ)を経て、2005年から現在の形式となった大会です。
 1960年から始まったインターコンチネンタル・カップ時代は、あまりに過激な応援などの理由から開催されなかったりしましたので、中立国である日本でトヨタ・カップとして、1980年から欧州代表と南米代表が、ワンマッチで雌雄を決するようになったのが、実質的な始まりとして、良いように思います。

 このトヨタ・カップ時代には、ヨーロッパの代表チームと南米の代表チームは互角の戦いを演じました。1980年から2004年までの25回の大会で、ヨーロッパが13勝、南米が12勝だったのです。

 一方で、トヨタ・カップの時代から、巨額の契約金と高い年俸で選手を集めているヨーロッパ代表チームの方が、南米代表チームより、個々の選手の質が高いので、強いはずだという見方がありました。実際、ヨーロッパ代表チームには、時々の世界的プレーヤーが集まっていることが多く、試合前の予想では、常にヨーロッパ代表チームの方が優位にあるとされていました。
 
 ところが、試合をしてみると互角です。というか、第1回トヨタ・カップの1980年から第5回の1984年までは、南米代表チームが5連勝(ナシオナル、フラメンゴ、ペニャロール、グレミオ、インデペンディエンテの各クラブ)しています。第6回大会でユベントスが勝利するまで、トヨタ・カップでは欧州代表チームは勝てない、とまで言われていたのです。
 欧州代表チームは、1995年~1999年の5連勝(アヤックス、ユベントス、ドルトムント、レアルマドリード、マンチェスターユナイテッドの各クラブ)などで追い上げ、トヨタ・カップ通算で互角の成績にしたのです。

 欧州のみならず、南米のブラジルやアルゼンチン他のスタープレーヤーも集めていて、圧倒的に有利と言われる欧州代表チームが、何故なかなか勝てないのか。トヨタ・カップの時代には、コンディショニングの点が指摘されました。
 南米代表チームは、試合の1週間前位に来日し、時差ボケを解消するとともにコンディションを整えるのですが、欧州代表チームは試合の2日前位に来日し、体調が整わない内に試合に臨んでいるという見方です。ゲーム数が多く、スケジュールが建て込んでいるビッグクラブが欧州代表となることが多いので、この見方には一理あると思いました。
 一方、この見方に従えば、有力選手を集めている欧州ビッグクラブでも、キチンと調整した南米のクラブには、容易には勝てないということを示しているわけで、南米チームのレベルの高さを示しているともいえると思います。

 そして2005年から、FIFAは世界6地域のクラブチームの代表を集め、クラブ世界一を競うクラブWCを始めました。トヨタ・カップは、この大会に継承されたのです。後に、開催国のチームも参加するようになり7チームのトーナメント大会になりました。
 この形式になると、欧州代表チームも2試合を戦うことになりますので、決勝で南米代表と戦う際にも、相応のコンディションに仕上がっています。
 その結果、2005年2006年こそ南米代表チームに優勝を奪われましたが、2007年からは欧州代表が5連覇を続けましたので、さすがにコンディションが整えば、良い選手を集めている欧州代表が強い、という印象を与えました。これからは、南米代表はなかなか勝てないのではないか、とも囁かれました。

 そして、2012年大会を迎えたのです。今大会の欧州代表クラブは、イングランドのチェルシーでした。
 ゴールキーパーGKにチェコ代表のチェフ(当代有数のGKです)、ディフェンダーDFにブラジル代表のダビドルイス、イングランド代表のアシュリー・コール、ミッドフィールダーMFにイングランド代表のランパードとブラジル代表のラミレス、スペイン代表のファン・マタ、ベルギー代表でベルギーの至宝と呼ばれるアザール、フォワードFWにスペイン代表のフェルナンドトーレス、という豪華絢爛なスターティングラインナップです。昨年のUEFAチャンピオンズリーグで、準決勝でFCバルセロナ、決勝でバイエルンミュンヘンを撃破して優勝したチームですから、今大会も当然大本命でした。
 欧州代表チームの6連覇が予想されていたのです。

 このスター軍団に対して、コリンチャンスはキッチリと作戦を立てて臨みました。頭書した通り、
① 最終ラインと守備的MFは、攻撃の際にも前掛りにならず、ラインを崩さない。
② FWやMFは、センターラインを越えてきた相手の選手に対して、高い位置からプレスを掛ける。FWも守備の意識を強く持つ。
③ FWは、少ない人数で、少ないチャンスをモノにする。
④ 1-0で勝つ。

 といった戦術だったように思います。これが見事に当たりました。

 ゲーム開始直後から、ボールの保有率はともかくとして、全体の流れはコリンチャンスペースでした。おそらく、各プレーヤーのコンディションが良かったのでしょう。
 元Jリーグ浦和レッズのエメルソンは、本来攻撃的なMFですが、このゲームでは守備にも積極的に参加し、チェルシーのFW・MFを追いかけて、30m~40mのランニングを繰り返していました。こんなに運動量が多いプレーヤーだったかな、と見直しました。

 チェルシーは、攻撃の核であるマタとアザールが徹底したマークを受けて、満足に動けませんから、なかなかコリンチャンスゴール前でフリーになるチャンスを創ることが出来ません。時々ピンポイントのパスがFWフェルナンドトーレスに繋がりますが、単発の攻撃であり、シュートがゴールの枠に行っても、コリンチャンスのGKカッシオの好セーブに阻まれて得点できません。

 そうした状況下でも、カウンターを中心としたコリンチャンスの攻撃が時々形になります。チェルシーも、ダビドルイスを中心に、良く守りました。
 後半20分を過ぎて、コリンチャンスの攻勢。再三のシュートが、チェルシーの選手に当たって跳ね上がったところに、コリンチャンスのワントップFWゲレロが走り込みヘディングシュート。
 GKチェフが前に出てしまっていたチェルシーは、ダビドルイスを真ん中に3人のプレーヤーでゴールを守りますが、ゲレロのシュートは上のゴールポストに当たって下に落ち、ゴールしました。ダビドルイスは195㎝の長身ですから、少しでも低いシュートであれば、弾き出していたと思われますが、ゲレロのシュートは「ここしかない」所に決まりました。後半24分のことでしたから、残り時間はロスタイムを入れても25分程度しかありません。得点の時間帯としても、コリンチャンスにとって絶好の得点でした。

 試合前の作戦通り?に1-0でリードの局面を創り上げたコリンチャンスは、あとは守り切るだけです。
 しかし、無暗に引くことなく、センターラインから自陣に入ったエリアでのプレスを継続し、DFラインは決して崩しません。エメルソンの運動量が一層増加したように観えました。
 コリンチャンスのブラジル人プレーヤーが、チェルシーのブラジル人プレーヤー・ダビドルイスと言い合いをしています。何度か画面に映し出されたシーンですが、ダビドルイスもパウリーニョ他のプレーヤーも必死の表情です。このゲームに賭ける、両チームのプレーヤーの想いが、痛い程感じられました。

 ここで、チェルシーはMFモーゼスに替えて、ブラジル代表オスカルを投入。そういえば、オスカルが出ていなかったんだと思いました。あのブラジル代表の背番号10を身に付ける21歳の天才プレーヤーです。オスカルを控えに回せるほど、チェルシーのプレーヤーの層が厚いということでしょうが、後から思えば、この投入が遅かったのかもしれません。マタと重なると考えたのかもしれませんが、その後の短い時間帯に、オスカルから配された素晴らしいパスの数々を観る時、先発として出場していれば、ゲームの様相は相当異なるものになっていたように思いました。

 ペナルティーエリアを覆うように、綺麗に配置されたコリンチャンスのDF陣ですが、さすがにチェルシーのマタやオスカルから、ピンポイントでパスが出されます。FWフェルナンドトーレスは、GKカッシオと1対1のシーンを決められず(とはいえ、狭いエリアでの1対1でした)、ロスタイム残り30秒のヘディングシュートは、決まったかに観えましたがオフサイド。
 ついに、主審のホイッスルが鳴り響き、コリンチャンスのプレーヤーに歓喜の瞬間が訪れました。

 久しぶりの南米代表クラブの優勝でした。

 個々のプレーヤーの能力で勝る欧州代表と互角以上に戦うために、作戦を立て、きっちりと実行し、コンディションを整えて、ゲームに臨んだコリンチャンスの快勝であったと思います。

 加えて、観客数が68,275人と大会史上最多のゲームでしたが、その多くは白と黒のコリンチャンスカラーのタオルを手にしていました。ブラジル・サンパウロからも多くのサポーターが横浜に来ていたのです。何万人ものブラジル人サポーターの声が、いつ果てるともなく続きます。横浜国際総合競技場は、コリンチャンスのホームスタジアムの様相でした。
 サポーターの表情も、プレーヤーに負けず劣らず真剣そのもの。そして、先取得点が決まった瞬間の歓喜の爆発。このゲームを観たコリンチャンスサポーターの、一生の自慢話になるゲームなのでしょう。こうしたゲームを観たこと自体が、誰もが羨む一生の宝物となるくらいに成熟したサッカー文化が、ブラジルサッカーを支えているのでしょう。
 応援も、コリンチャンスの圧勝でした。

 この数年のクラブWC決勝は、早い段階で欧州代表チームが先取点を挙げ、余裕を持った試合運びの中で、個々のプレーヤーの高い能力により追加点を挙げて勝利するゲームが続いていました。南米代表チームも、途中であきらめてしまうゲームが多かったように思います。
 それに比べて、今2012年12月16日のコリンチャンスとチェルシーのゲームは、90分強の試合時間を通して、緊張感に溢れ、勝利への執念に満ちたゲームでした。素晴らしいゲームを提供してくれた、両チームのプレーヤーや関係者に、心からお礼申し上げたいと思います。

 横で、時々悲鳴を上げながら、テレビを見ていた妻が「凄いねー。日本チームの試合と何が違うんだろう。全然違うよね」と。
 こうした感想が出なくなる日を待ち望む一方で、最高のゲームが常に世界のどこかに存在することも悪くは無いと思いました。
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