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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム154] 1976年の菊花賞 5000万円の馬券一点買い?
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 1976年の菊花賞という表記より、「グリーングラスが勝った菊花賞」と言った方が、オールドファンには馴染み深いものでしょう。

 天馬・トウショウボーイと日本ダービー馬クライムカイザーの一騎打ちのレースと見られ、関西のエース・テンポイントが2強に挑んだレースでした。
 テンポイントがトウショウボーイを振り切り、ゴールを目指した直線で、内ラチ一杯から抜け出したのがグリーングラスでした。

 春のクラシックに縁が無かったグリーングラスが、世代トップクラスに躍り出たレースであり、トウショウボーイ・テンポイント・グリーングラスの「3強時代」が始まったレースでもありました。
 この3頭は、それぞれ有馬記念に優勝しましたから、世代間比較でも最強と呼ばれました。

 しかし、この菊花賞のレース前には、前述のように「トウショウボーイとクライムカイザーの一騎打ち」と見られていたのです。

 両馬は「単枠指定」されました。

 今から40年ほど前には、「馬番」馬券は存在しませんでした。
 馬券は、単勝・複勝・枠番連勝複式だったのです。

 現在も存在する「枠番連勝複式」は1・2着を予想する馬券ですが、「枠番」ですので、多頭数レースになると「人気馬と同じ枠に入った人気薄馬」の魅力が下がってしまうという面がありました。

 枠は全部で8ありますから、例えば16頭立てのレースなら、ひとつの枠に2頭が入ることになります。もう一頭が「穴」っぽい馬でも、残りの馬が大本命であれば、馬券上は高い人気となってしまいます。妙味が削がれるのです。

 こうした馬券体系の時代に、「超人気馬」が登場しました。あのハイセイコーです。
 1973年の日本ダービーで66.7%の単勝支持率を記録しました。圧倒的な一番人気だったのです。
 ハイセイコーの前走・NHK杯(当時は日本ダービーのトライアルレース)では、単勝支持率は80%を優に超えていたと記憶しています。ハイセイコーは、ゴール直前でかろうじて先行馬を捕え人気に応えましたが、単勝馬券は「100円元返し」でした。

 こうした「日本競馬史上空前絶後の人気馬」が登場したこともあって、競馬界は対策を講じたのでしょう。翌1974年から「単枠指定制度」が導入されたのです。圧倒的な人気、一本かぶり人気が予想される馬は、「1枠1頭」にするという制度です。(そのかわり、他の枠の頭数が増えることになります)
 「中央競馬会公認の強い馬を明示することになる」という批判も有りましたが、導入に踏み切られました。

 そして、「ひとつのレースで2頭の馬が単枠指定された初めてのレース」が、1976年の菊花賞だったのです。
 このレースで、トウショウボーイは3枠、クライムカイザーは4枠に入りました。
 皐月賞を5馬身差で圧勝したトウショウボーイと、そのトウショウボーイを日本ダービーで破ったクライムカイザーですから、こうした制度適用も止むを得なかったのでしょう。

 レース結果は、前述の通り、1着グリーングラス、2着テンポイント、3着トウショウボーイ、クライムカイザーはタニノレオとともに同着の5着でした。
 単枠指定の両馬は、枠番連勝複式という馬券には全くからむことが出来なかったのです。

 後から見れば、2000m前後のレースで圧倒的な力を示したトウショウボーイと、ヴェンチアの代表産駒であり、やはり中距離馬であったクライムカイザーを、長距離3000mの菊花賞で単枠指定馬とすることには無理が有ったということになりますが、当時は「何の不思議も無い」取扱いと見られていたのです。

 レース後、思いもよらぬ報道がなされました。

 「このレースの枠番連勝馬券に5000万円を投じたファン」が居た、という報道でした。
 トウショウボーイとクライムカイザーの「枠番連勝複式3-4」の一点買いであったかと思いますが、この馬券に5000万円を投じたというのです。

 この頃は、現在のような磁気が施された1枚の紙に複数の馬券が併記され、購入金額も金額別に記載されるという形式では無く、「1枚の馬券の価格が決まっていた」のです。
 大きな金額を投ずるファンは、「特券」という1枚1000円の馬券を複数購入しました。
 例えば、1-2に30000円、2-3に20000円を投ずる場合には、1-2の特券30枚、2-3の特券20枚を購入することになります。手許には「50枚の馬券」が存在するのです。

 馬券発売窓口には「全ての組合せの馬券が、相応の枚数ずつ用意」されていて、窓口のお姉さんがお客の指示に基づき、用意されている馬券を手渡していたのです。

 従って、馬券は「あらかじめ印刷」されているものを提供することになります。
 この菊花賞の3-4の馬券は、高い人気が予想されたのですから、あらかじめ多くの枚数が準備されていたことでしょう。

 当時の報道を思い出してみます。
 京都競馬場にレース当日午前中に現れた「紳士然とした男性」が、5000万円の現金を窓口に出し3-4の馬券の購入を指示したのだそうです。
 窓口としても、多くの枚数を準備してあった組合せの馬券とはいえ、5000万円となると特券で50000枚ですから、さすがに不足しました。

 これ程の大口購入は予想を超えるものでしたから、競馬会としても「馬券の追加印刷」が必要となったのでしょうか、引換用の紙を当該男性に渡し、「後で取りに来るように」と伝えました。

 しかし前述のように、この馬券は外れました。
 そして、当該男性は窓口に現れなかったそうです。

 競馬会は、50000枚・5000万円分の馬券を用意し、大きなバッグに入れて、当該男性の窓口来訪を待っていたのですが、当日の開催が終了するまで現れませんでしたので、「遺失物」として警察に届け出たと報じられました。

 その後、その遺失物がどうなったかは伝えられなかったと思いますが、一定の保管期間の後、処分されたのでしょう。

 3強が誕生した伝説のレースは、超大口の外れ馬券が生まれたレースでもありました。

 凄いと感じるのは、1着賞金が4500万円であった時代の菊花賞競走において、5000万円の馬券・一点勝負をするファンが存在したことでしょう。
 トウショウボーイ・クライムカイザーの枠番連勝複式3-4馬券の予想配当は、おそらく3倍に満たないものであったと思います(申し訳ないのですが記憶が欠落しています)が、5000万円を1億円以上にしてくれるものと信じての投票であったのでしょうか。

 余程、この2頭の強さを信頼していたものと思われますが、それにしても「豪快な金額」です。

 一方で、宣伝や自己PRのための行動で無かったことは、馬券を取りに来なかったことからも明らかです。

 1976年11月14日、菊花賞が行われた京都競馬場に現れた「紳士然とした男性」は、その後競馬を続けたのかどうか、要らぬ心配をしてしまいます。
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