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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム31]  日経新春杯とテンポイント
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 この題名を記すれば、多くのオールド競馬ファンが「あの悲劇」と判るほどに有名な話です。書き尽くされている感もありますが、やはり日経新春杯と出走したサラブレッドをテーマとするとすれば、外すわけには行きません。

 1954年(昭和29年)に、京都競馬場芝2400m・ハンデ戦の「日本経済新春杯」として始まったレースが、現在の日経新春杯です。本ブログでも何度も書いていますが、昭和20年代に創設された重賞は、中央競馬会肝煎りのレースです。第一回から現在に至るまで、関西地区の新年最初の大レースとしての位置付けが揺らぐことはありませんでした。
 1984年のグレード制導入とともにG2に格付けされました。前年の大レース(現在ならG1競走)に勝利した関西の強豪馬が、新年の緒戦に選択するレースという位置付けです。

 もうひとつ、日経新春杯の特徴として挙げられるのが「ハンデキャップ戦」ということです。例年、関東地区年初のG2レースとなっているアメリカジョッキークラブカップ(AJC杯)が別定戦であるのとは対照的です。このハンデ戦ということが、今回の「悲劇」の大きな理由になっているのです。

 テンポイント号、父コントライト、母ワカクモ、生涯成績18戦11勝。テンポイントの競走成績を観ると、調子が良い時と悪い時の差が大きかったように思います。

 1975年(昭和50年)の8月に函館で10馬身差勝ちでデビュー、12月の阪神3歳ステークスに7馬身差で圧勝し、最優秀2歳牡馬となった頃は絶好調でした。額の流星が描いたかのように美しく、明るい栗毛の馬体でしたから、その強さが一層際立ちました。
 当時は、大レースにおいては関東馬が圧倒的に強く、関西馬は中々クラシックレースを始めとする大レースに勝てませんでしたから、テンポイントは「関西の期待を一身に背負って」東上してきたのです。私も、久々に関西から良い馬が出てきたと思い、そのスピードと美しさに感心したことを憶えています。

 続く東京4歳ステークス、スプリングステークスを連勝して、これで5連勝となりましたが、着差は1/2馬身、クビ差と、どんどん小さくなりました。私は、この時期はテンポイントの調子がピークアウトし、下降期に入った時期だと思っています。

 そしてクラシック初戦の皐月賞に1番人気で臨みました。この年は、厩務員組合のストライキの影響から、皐月賞も延期され、会場も東京競馬場に変更されました。このスケジュール変更もテンポイントにマイナスに働いたと言われていて、私も悪影響があったとは思いますが、スケジュールの変更は全ての出走馬に影響を与えているので、テンポイントの皐月賞2着敗退は、やはり、自身の調子落ちが最大の要因だと考えます。

 この皐月賞は、トウショウボーイが5馬身差で圧勝しました。天馬と呼ばれたトウショウボーイとテンポイントは、この後、ライバルとして名勝負を展開します。この1976年のクラシック競走を争った世代は、この2頭を始めとして多士済々でした。

 東京4歳ステークスで、テンポイントに1/2馬身差に詰め寄っていたクライムカイザーは、日本ダービーで一世一代の走りを見せて、トウショウボーイをも競り落とし優勝しました。日本ダービーのテンポイントは、馬体が細く見え、いかにも調子が悪い感じで、7着と初の着外を記録しています。

 秋のクラシック最終戦菊花賞、テンポイントはトウショウボーイには先着しましたが、上がり馬のグリーングラスに2と1/2馬身差で完敗し2着。この後、トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラスは、この世代の3強と呼ばれ、1976~1978年の有馬記念を前述の順番で1勝ずつして、世代としての3連勝を達成しています。有馬記念競走は、世代間の力量差を測るには格好のレースなのです。

 さて、3歳時のテンポイントは、結局現在で言うG1レースには勝てませんでしたが、明けて4歳となり、すっかり調子が回復して本格化しました。とても、勝負強くなったのです。4歳時のテンポイントは、トモの張りも素晴らしく、力強い走りが印象的でした。4歳時は、7戦して6勝、天皇賞(春)と有馬記念を制して年度代表馬に輝きました。唯一の2着は、トウショウボーイに敗れた宝塚記念でしたが、このレースでは、最後の直線に入った時にトウショウボーイが先行していて、テンポイントも良く追ったのですが、ついに逃げ切られた形でした。

 このレース結果を踏まえて、テンポイント陣営は、4角でトウショウボーイに先行されると逆転困難と判断し、暮れの有馬記念では逆の形を取りました。4角から直線にかかるところで、テンポイントがトウショウボーイの前にグイと出たのです。結局この差が広がりもせず、詰まりもせず、後方からグリーングラスが、トウショウボーイに1馬身差まで追い上げてきたところがゴールでした。

 同じ脚が長く使えるという、トウショウボーイの走りの特徴が良く出たレースでしたし、テンポイントとトウショウボーイのマッチレースの様相であったレースで、一頭だけこの2頭との差を詰めてきたグリーングラスの走りも見事でした。この3強による、最も見応えのあるレースだったと思います。

 そして、4歳のシーズンを好成績で終えたテンポイント陣営が、5歳シーズンの緒戦に選んだのが、本稿の日経新春杯でした。この1978年の日経新春杯は、テンポイントの欧州遠征壮行会を兼ねたレースでもありました。このレースを勝って、イギリスに遠征する予定だったのです。

 しかし、我が国の年度代表馬になるほどの実績を積み、これからイギリスに遠征しようというサラブレッドが、1年で最も寒く、芝も枯れていて(現在の芝とは違います)固い馬場の季節に、ハンデ戦重賞に挑戦することには、当時も異論がありました。
 私や私の仲間も、そもそも天皇賞(春)や有馬記念に優勝した馬が、長期遠征を前に、約1か月のローテーションでレースに出走する必要があるのか、あるいは、遠征費用を稼ぐために走らされるのではないか、などという口の悪い者も出る始末。

 複数の大レースに優勝しているために、当然獲得賞金額が高いテンポイントのハンデが66.5㎏という酷量と決まってからは、回避すべしとの意見が一層高まりました。私もそう思いました。とても嫌な予感がしていたのです。
 当時のこの季節の芝は薄いので、馬場の起伏や穴が、競走馬の脚に与えるダメージは一層大きくなります。加えて、未経験の酷量です。テンポイントのファンだった人は皆、嫌な感じであったと思います。

 1978年1月22日、レース当日、京都競馬場は冷え込みました。私はテレビ観戦でしたが、テレビの画像が白っぽく観えました。そして、テンポイントはというと、少し細く観えました。ガレているとまでは言いませんが、全体に筋肉が落ちた感じでした。ますます、嫌な予感が強くなり、今からでも回避すべきだと思いました。

 ゲートが開いてスタート。レースは淡々と進みます。テンポイントの走りは、いつもより低く観えました。馬群の中段でレースを進め、3角から4角にかかるころ、ガクンとトモが沈み、見る見る後退しました。
 「やってしまった」と思いました。関西テレビの杉本アナが絶叫しています。何ということだ、何ということでしょう・・・と。

 左後肢の骨が飛び出すほどの大怪我でしたから、直ぐに安楽死処分が検討されましたが、馬主の強い意向で治療が行われることになったと報道されました。
 お腹を大きな布で吊って立たせ、脚への負担を軽減する取組などが施され、その写真が報道されたりしました。

 しかし、治療の甲斐なく、3月5日テンポイントは死亡しました。

 私は、66.5㎏の斤量で出走したことの是非については何も言うことはありません。タケシバオーも同じ位の斤量で重賞競走に勝っています。ただし、コンディションが良くない状態での出走については、陣営の判断が間違っていたと思います。
 3歳馬しか出られないクラシックレースは、多少調子が悪くともファンの期待を背負って、敢えて出走するのは、理解できないわけではありませんが、有馬記念を勝って1か月しか経っていない状況で、不調でありながら走らなければならない理由は、何もありません。レースに出ないで、遠征すれば良かったのです。

 2歳の時は好調でした。3歳の時は不調でした。4歳の時は好調でした。そして5歳の緒戦は、明らかにピークアウトしていたのです。日本の代表となった名馬を、あのトウショウボーイとの激闘であった有馬記念の後、十分な休養も取らせず、66.5㎏の負担重量でレースに挑ませる「感覚」が、本当に残念なのです。

 当時、新聞の文字の大きさが8ポイントでしたので、見出しになるような馬になってほしいとの願いを込めて、名付けられたテンポイント(10ポイント)は、あっという間に逝ってしまいました。
 故障後の1か月半の間、テンポイントの治療や死亡に関する、胸が痛くなるような報道が続きました。10ポイントを遥かに超える大きな文字で、大新聞の一面を占め、NHKテレビのトップニュースとなりました。

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1978年日経新春杯   テンポイント  
Comment
41
今思い出しても、胸潰れる光景でした。
海外遠征の壮行会にしては条件が悪く、本当に出走する必要があったのか確かに疑問ですね。

43
コメントありがとうございます。
競馬の主役はサラブレッドです。
競馬がが世界中で愛されている理由のひとつでもあります。
大切にして行きたいものです。

引き続き、コメントお願します。


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