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HOME   »   大相撲  »  [大相撲2016・3月場所] プロスポーツとしての「大相撲」の難しさ
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 3月場所は、横綱・白鵬が14勝1敗で優勝し、自己の持つ最多優勝記録を36回に伸ばしました。

 初日に、宝富士に良いところ無く敗れた時には、今場所のその後の取組に不安を残した白鵬でしたが、徐々に調子を上げて後半戦ではスピード溢れる取り口を展開、追いすがる大関陣・稀勢の里と豪栄道を振り切りました。

 ところが、本来ならば祝福・歓声に包まれるはずの優勝ですが、千秋楽の取組後は異様な雰囲気が土俵を支配しました。

 稀勢の里が豪栄道を破り13勝2敗として、逆転優勝への望みを繋いだ後、白鳳VS日馬富士の横綱対決、今場所最後の取組で、白鵬が立合いとともに左に変化し、日馬富士がまっすぐに土俵外に飛び出してしまったのです。

 優勝を争う横綱の変化・注文相撲に見えました。

 場内が騒然となりました。

 本来ならば拍手で溢れるはずの会場ですが、拍手は疎ら、怒号が飛び交います。

 そして、多くの観客が席を立ちました。

 表彰式は、空席となった桟敷が目立つ光景となったのです。

 50年以上大相撲を観てきましたが、こんな雰囲気・光景は初めてでした。「事件」と呼んでも良い有様でしょう。

① お客様の期待に応えるのがプロスポーツ

 プロスポーツを支えているのはファンです。ファンの支持無くして、プロスポーツは成り立ちません。

 プロスポーツプレーヤーは、「ファンが期待するプレー」を展開していく義務があり、プロスポーツの運営者には、そうしたプレーが展開されることを担保していく仕組み作りが、強く求められているのです。

 今回の白鵬VS日馬富士の取組が、このファンの期待する相撲からは程遠い物であったことは、間違い有りません。

 あれだけ多くの観客が席を立ち、優勝力士への賛辞を拒否したのです。

 表彰式における優勝力士インタビューの際にも、「変化して勝って、嬉しいか」「勝てば、なんでもいいのか」といったヤジが途切れること無く続きました。

 もちろん一部には、白鵬に拍手を送るファンも居ましたが、公平に見て、ブーイングのファン:賞賛のファン=7:3位の比率であったと思います。

② ルールに則った取り口

 この取組における白鵬の取り口は、「大相撲のルールに則ったもの」でした。決して反則ではないし、反則ギリギリのものでもありません。立合いで変化することは、大相撲のルールに沿っているのです。

 したがって、「何の問題も無い」という見方もあるでしょう。
 変化されても、付いて行くのが相撲であり、そのまま飛び出してしまった日馬富士が弱いのだ、という意見もあるのでしょう。

③ 横綱同士の対戦での変化

 立合いの変化がルールに則っているとはいえ、横綱同士の対戦、それも千秋楽の「優勝に関わる対戦」では、観たことがないという指摘もありそうです。

 これは「事実」として重いものでしょうし、長い歴史を有する大相撲というプロスポーツにおいて、何故「横綱同士の対戦」において「明らかな変化相撲」が行われなかったのか、というのは、よく吟味する必要がありそうです。

④ 「フェア」という概念

 スポーツ、特にプロスポーツにおいては、「フェア」であることが求められます。これは、当然のことで、八百長などは論外として、可能な限り「公平」な戦いを競技の仕組みとして構築していくことが求められるのです。

 例えばサッカーにおける「ホーム&アウェイ」方式などは典型でしょう。
 対戦する2チームのホームで1試合ずつ試合を行い、その勝敗・得失点差等で勝敗を決めて行くのです。ワンマッチで行わなければならない時には、「両チームにとって中立な会場」を設定します。チーム、プレーヤーそして何よりファンが納得する形式を取ろうとするのです。

 一方で、大相撲には一見して「公平ではない」仕組みが存在します。

 例えば「取組」。

 幕内力士全員が必ず一回ずつ当たるというリーグ戦形式ではなく、前日に翌日の取組を編成担当が決めて行く形です。

 多くの場合には、「成績の良い力士同士」「悪い力士同士」の取組が組まれます。結果として、各力士の成績は「平準化」する方向となります。
 時には、本来対戦する筈の無い番付が離れた力士同士の取組みが組まれることも有ります。

 続いて「昇進」。「十両昇進=関取になる」や「入幕」について、一定の条件(例えば、どの番付で何勝すれば昇進)が定まっていません。

 場所毎の「十両から幕下への陥落者数」「幕内から十両への陥落者数」によって、昇進者数が決まります。成績が考慮されるのは、ポストがいくつ空くか、の後になるのです。
 加えて、例えば幕下15枚目以内で「全勝優勝」すれば十両昇進といった、判例?が存在します。幕下5枚目以内に居て5勝2敗で勝ち越したからといって、前述のような力士が居れば、追い抜かれて昇進できないことがあります。
 どちらかと言えば「陥落ルール」の方が明確で、昇進は陥落力士数に大きく影響される形。とはいえ、その陥落とて、例えば前頭11枚目で5勝10敗といった成績の場合には、ギリギリ幕内に残ったり、十両に陥落したりします。
 こうした昇進に関する「運・不運」の存在は過去にも枚挙に暇が有りません。

  「恣意性」が色濃く存在するのです。

 このように、他のプロスポーツから観れば「曖昧で不公平なやり方」が、大相撲には厳然と存在するのです。良し悪しを言っているのではありません。大相撲の特長のひとつなのでしょう。

 いろいろと理由は有るのでしょう。「神事」というか、大昔なら「村同士の対抗戦」の代表として選ばれた屈強な男達の戦いという側面が在り、それが現在にも残っているのかもしれません。

 その延長線上で、「贔屓の力士」には「堂々と戦って貰いたい」という思いが、応援者というかファンには強いということも考えられます。
 ファンにとっては、贔屓の力士が勝ってくれることはもちろん大きな喜びなのでしょうが、それ以前に「我らが代表には堂々と戦ってほしい」「卑怯とか汚いと言われるのは耐えられない」といった心情が存在し、勝敗はその後に来る概念となっている可能性が有ります。

 長い歴史と伝統に裏打ちされた、何とも言えない「曖昧さ」が、プロスポーツとしての大相撲には存在するということなのでしょう。
 勝ち負けより「後ろ指を指されること」を嫌う「恥の文化」と呼ばれる、日本文化が色濃く反映されているのかもしれません。

⑤ 横綱への禁じ手の設定

 色々な観点から観てきましたが、2016年3月場所千秋楽の横綱同士の取組が、多くのファンに大きな失望を与えたことは、紛れも無い事実ですから、何もしないという選択は有り得ないことでしょう。

 対策が必要なのです。

 そこで「横綱への禁じ手」を提案したいと思います。

 本ブログでも過去に採り上げた、江戸時代の「無双力士」雷電には、そのあまりの強さからいくつかの禁じ手(取組で使ってはいけない技)が有ったと伝えられていますが、平成の横綱には別の意味で禁じ手を設定するのです。
 もちろん、禁じ手を犯した横綱は、反則負けとなります。

 設定する禁じ手の基準は、「ファンにとって見苦しい・不快な技を禁ずる」という1点です。

 候補を挙げます。

・張り手
・肘打ち
・立ち合いの変化

 「張り手」は、つっぱりや押しの延長線上にあるのかもしれませんが、技というよりは「ただ引っぱたいている」ように見えます。喧嘩のように見えるという意見もありますので、品格に欠けますし、殴り合いを禁じているスポーツには馴染まないと思います。
 特に、力量最上位にあり、品格の保持が問われている横綱という地位にいる力士には、全く馴染まない技だと感じます。

 もちろん、つっぱりの中で相手力士の顔に掌があたってしまうことはあるのでしょうが、「当たってしまう」ことと「当てに行く」張り手とは、容易に区別が付くものでしょう。     
 相撲に精通している勝負審判がチェックすれば良いことです。

 大関以下の力士に対して「張り手」を禁ずるかどうかは、少し考える必要があるかもしれません。力の劣る力士が上位力士に対抗するための手段としての張り手は、有っても良いという意見がありそうです。

 続いて、「肘打ち」は「かちあげ」の延長線上に有るものかもしれませんが、これも張り手同様に、殴り合いを禁じている相撲というスポーツには馴染まないものだと思います。
 肘で相手力士の顔面を直接打つというのは、プロレスリングの技の様に感じられます。

 かちあげと肘打ちの区別、および「わざとやったかどうか」は、勝負審判であれば容易に区別できるものだと思います。

 「肘打ち」は全力士の禁じ手とすべきものでしょう。鼻の骨を折る、あるいはそれ以上の大怪我に繋がるリスクは、避けなければなりません。

 続いて「立ち合いの変化」。
 これを横綱にのみ全面禁止にするのは、やや厳し過ぎるという意見もあると思いますが、まさに「2016年3月場所千秋楽・横綱対決事件」そのものの話ですので、あの「怒号飛び交う土俵」を目にした以上は、禁じ手にする必要があると感じます。

 理由としては、大相撲最高峰の力士の取組には、多くのファンの注目が集まり、大きな期待・思いが込められていることが明らかですので、その取組においては立ち合いの変化は絶対回避しなければならないということです。期待が大きいだけに落胆も大きくなるのです。
 これを、個々の横綱の心情・意識で規制するのは難しいと思います。禁じ手とし、行えば反則負けというルールにしておいたほうが、クリアでしょう。

 もちろん、立合いで一度しっかりと相手力士と当たった後、いなしたり、突き落としたり、体を横に動かすのは、何の問題もないプレーであり、相撲そのものです。
 「しっかりと当たったか否か」は、やはり勝負審判の判断に委ねられます。

 これを「横綱のみの禁じ手」とするのは、やはり力量最上位の力士には馴染まない技だという点も考慮されるからです。この禁じ手適用を、大関に拡大するということも有り得るでしょう。

 プロスポーツとしての大相撲には、他のスポーツには無い「難しさ」が存在すると思いますが、長きに渡って日本中で、20世紀終盤からは世界中で愛されているスポーツであることを勘案すれば、可能な限り「ファンが観たいプレー」を提供する「義務」が有ると思いますし、それを実現するための「仕組みの構築」が不可欠であろうと考えます。

 大相撲には、本当に多くのファンが存在し、我が国の伝統文化であると共に、現在では、我が国を代表する国際的なプロスポーツとなっていることは、重い事実なのでしょう。
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