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 初めてカシアス・クレイ選手のファイトをテレビで観た時の衝撃を、忘れることは無いでしょう。

 1964年・昭和30年、第一回東京オリンピックの年でした。今から50年以上前のことです。
 
 テレビ放送創世の頃ですから、当然ながら、海外で行われるボクシング世界戦のライブ放送は無く、30秒~1分位のダイジェスト版がスポーツニュースで流されたのだと思います。

 当時の世界ヘビー級チャンピオン、ソニー・リストン選手に、新進気鋭のカシアス・クレイ選手が挑戦しました。
 戦前の予想ではリストン選手が圧倒的に優勢で、リストン選手の強烈なパンチの前に、クレイ選手は早々にノックアウトKOされるであろうと評されていました。

 しかし、軽快なフットワークでリストン選手のパンチを交わし、高速ジャブを次々と決めるクレイ選手のボクシングの前に、リストン選手は成す術が無く、第6ラウンド終了後に試合を放棄しました。コーナーから立ち上がることが出来なかったのです。

 カシアス・クレイの圧勝でした。

① 軽快なフットワーク

 ヘビー級のボクサー、それも身長190cmのクレイ選手が、リストン選手の周りを軽快なフットワークで動き回るのです。

 素晴らしいアウトボクシングでした。「美しい」と感じました。

 それまで(そしてカシアス・クレイ以降も)、足を止めて重いパンチを打ち合うという「ヘビー級のボクシング」に革命をもたらしたフットワークであったと思います。

② 高速ジャブ

 相手選手の周りを軽快に動きながら、クレイ選手は高速ジャブを繰り出します。
 これが、悉く顔面に当たるのです。

 1発1発の威力は、ストレートやフックといったパンチに比べれば劣るものなのでしょうけれども、スピード十分のジャブが的確に相手選手の顔面を捉えるのですから、ダメージがとんどん積み上げられていきます。

 第6ラウンドのリストン選手の顔は張れ上がり、戦意はすっかり失われていました。

③ 長い手

 長身のカシアス・クレイ選手ですが、そのリーチは203cmと、身長より13cmも長いのです。

 この長いリーチから高速ジャブが連続して繰り出されるのですから、相手選手のパンチがクレイ選手に当たらないのも、道理です。

 とても合理的なボクシングなのでしょう。

 24歳で世界ヘビー級チャンピオンとなったカシアス・クレイ選手が、「モハメッド・アリ」に改名し、その後様々な活躍・活動を見せたことは、大変有名です。
 エピソードを挙げればキリがありません。
 
 間違いなく、世界ボクシング史上「最も有名なボクサー」でしょう。

 そうした栄光のキャリアの中で、私が最も素晴らしいと思うのは、カシアス・クレイ時代のボクシングです。
 まさに「衝撃」でした。

 文字通り「蝶のように舞い、蜂の様に刺す」ファイトだったのです。

 2016年6月3日に逝去されたモハメッド・アリ選手。

 20世紀を代表するボクサーであったと思います。
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