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HOME   »   サッカー  »  [ユーロ2016] ドイツチーム「死闘」を制して準決勝進出
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[準々決勝・7月2日]
ドイツ1-1(PK戦6-5)イタリア

 ワールドカップとユーロ、世界屈指の規模を誇る大会において、イタリア代表チームに関しては「2つの原則?」が在ります。

① 大会前の評判が低かった時のイタリアは強い。
② イタリアはドイツに強い。

 この「2原則」は、長く高密度なサッカーの歴史の中に、脈々と生き続けています。

 ユーロ2016準々決勝4試合の中で、最も注目されたこのゲームにおいても、「2原則」が生きていたと感じます。

 今大会のイタリアは、新しいチームでした。積極的に若手を起用し、一方で「イタリアの顔」的プレーヤーを使いませんでした。
 2012年ユーロ準優勝の原動力であったピルロ選手やバロテッリ選手が居ないのです。
 予選の戦い振りも含めて、新生イタリアチームの大会前の評価が低かったことは、止むを得ないところでしょう。

 しかし、「第一の原則」に則って、イタリアチームは活躍を魅せてくれました。
 グループリーグGLを首位で突破し、ラウンド16ではスペインを破りました。

 「ビッグネーム」プレーヤーが少ないイタリアは、実は優勝候補なのではないか、との声が上がったのです。

 そしてドイツ戦を迎えました。
 「もうひとつの原則」が披露されるのではないか、との見方も広がりました。

 何しろ、ドイツチームはこれまで、ワールドカップとユーロのトーナメントで、イタリアチームに勝ったことが無いのです。
 共に、ワールドカップ優勝4度を誇るサッカー大国ですが、個別の対戦成績では「大差」が付いていたのです。

 試合の前半は、一進一退の展開でした。
 一進一退の展開ということは、イタリアペースであったということになります。
 もともと、「カテナチオ」と呼ばれる堅守からのカウンター攻撃というのが、イタリアサッカーです。
 このゲームでも、ドイツチームにボールを回させながら、カウンターのチャンスを狙う試合展開が続きました。

 前半は0-0。

 後半に入って、ドイツが中盤からのボール回しのスピードを上げたことと、さすがにイタリアのプレーヤーの動きが悪くなったことも相俟って、流れがドイツに傾きました。
 後半10分過ぎから、イタリア選手にイエローカードが3枚連続したことに、その状況が表れています。

 そして、ドイツに先制ゴールが生まれました。
 左サイドでゴメス選手がボールをキープし、走り込んできたへクター選手にパス、へクター選手がドリブルでイタリア陣を抉ってゴール前にパス、イタリアディフェンダーDFの脚に当たってコースが少し変わったボールは、ゴール前に詰めていたエジル選手の足許に飛び、エジル選手はこれをしっかりとゴールに押し込みました。
 ゴール前2m辺りからのシュートでしたから、さすがのゴールキーパーGKブフォン選手も反応できませんでした。

 攻めに攻めていたドイツチームの見事な先制点でした。

 さて、ドイツチームが1-0とリードしましたので、残り30分をドイツが守り切れば、「史上初のドイツ勝利」が示現されるように見えました。
 もともと、ドイツチームも「堅守」が持ち味ですし、現在のドイツには最強GKノイアー選手が居るのです。
 これで、イタリアチームは相当追い込まれたと感じました。

 しかしここで「第二の原則」が顔を見せたのです。

 後半30分を過ぎて、イタリアチームが攻めます。
 右サイドからのセンタリング。このボールが、ドイツDFボアテング選手の手に当たりました。ペナルティーキックPKです。
 これをキッチリと決めたイタリアが1-1に追い付いたのです。

 飛び上がりながら両手を上に挙げて広げていたボアテング選手の腕にボールが当たった時には、「第二の原則」の強さを感ぜざるを得ませんでした。「サッカーの歴史」が現出したのです。

 1-1の同点となってから、両チーム、特にドイツチームは2点目を目指して良く攻め続けましたが、延長戦も含めて、得点の匂いはしませんでした。
 ドイツチームは、ゴール前でパスを多用しますが、「カテナチオ」は特にゴール前の守備が堅いのです。ゴール前での「狭いゾーンDF」がカテナチオの特質のひとつでしょう。
 従って、ドイツチームとしては、ゴール前で「ドリブル」をもっと使うようにした方が、イタリアチームを相手にした時には、得点チャンスが増えるのではないでしょうか。

 さて、前後半90分、延長前後半30分の計120分を戦い抜いて、ゲームは1-1のタイ。PK戦に突入しました。

 ドイツのGKノイアー選手、イタリアのGKブフォン選手は、「当代屈指の名GK」。
 この2人の対決となったのですから、PK戦も一筋縄では行かないと感じました。

 そしてイタリアが先攻となったPK戦は、案の定、勝利の女神が毎回微笑む方向を変える展開となったのです。

 ドイツチームは、トーマス・ミュラー選手、エジル選手、そしてシュバインシュタイガー選手が失敗しました。
 ワールドカップでの2桁ゴールに見られるように、現在「決定力」という面からは「世界屈指のプレーヤー」であるミュラー選手やドイツチームの司令塔エジル選手が、失敗したのには驚かされました。
 2人共ブフォン選手が止めたのです。2人のシュートは強いものでは無く、コースを狙ったものでしたが、ブフォン選手はこれをキッチリと予測して、左右に飛び、しっかりと止めていました。
 ブフォン選手の「予測力の高さ」が如実に示されていましたし、ドイツチームは「左右のコースを狙うPK」が多かったのです。

 一方で、世界最強とも呼ばれるノイアー選手を相手にしたイタリアプレーヤーは、真ん中に強く蹴って行くPKが多かったと思います。
 ノイアー選手の予測を超える「真ん中高めのシュート」でした。

 しかし、さすがにノイアー選手。そうした中でも、イタリアチームの5人目をしっかりと止めて、ドイツの5人目が決めれば勝利という状況を創出しました。

 ドイツの5人目はシュバインシュタイガー選手。この緊張感満点のシーンでは、最も相応しいプレーヤーが回ってきたと思いました。
 シュバインシュタイガー選手は、歴戦の勇士にして、ドイツチームの「心臓」と呼んでも良いリーダーです。ワールドカップやユーロの数々のゲームで「ドイツ魂の象徴」としてチームを牽引してきた大ベテランが、この激闘に終止符を打ってくれると思ったのです。

 ところが、このキックは左上に大きく吹けてしまいました。
 信じられない光景でした。シュバインシュタイガー選手は崩れ落ちました。
 サッカーの神様が「ドイツがイタリアに勝つのは、まだ早い」と言っているかのようでした。

 これで、勝敗の帰趨はイタリアに大きく傾いたと感じましたが、その流れに立ちはだかったのがノイアー選手でした。
 この世界最高のGKは、シュバインシュタイガー選手が外した後も、「何事も無かったかのように」ゴール前に仁王立ち。この「不動の精神力」こそが、「世界最高」と呼ばれる所以なのでしょう。

 ノイアー選手がイタリアの9人目のシュートを、左側に飛んでキッチリと止めた後、ドイツの9人目はヘクター選手でした。

 ヘクター選手のキックは向かって右側への低いシュートでした。そして、ブフォン選手はこれを予想していました。素早く左に飛んだのです。
 「また止めたか」と見えた瞬間、ボールはワンバウンドしてブフォン選手の「左脇の下」を通過し、ゴールネットを揺らしました。

 ドイツチームの勝利が決まった瞬間でした。

 ヘクター選手は、ドイツの先制点のアシストを決め、PK戦をも締めくくりました。
 この日のドイツチームにとっての「ラッキーボーイ」であり、今後代表チームの中心選手に成長してくれることでしょう。

 一方、このPK戦を通じてイタリアGKブフォン選手の「予測」は見事なものでした。
 ほとんどのPKトライにおいて、ドイツ選手の蹴る方向に動いていました。ブフォン選手は、世界屈指の能力を如何なく発揮してくれたのです。
 ノイアー選手以外のGKが相手であれば、ブフォン選手が、イタリアチームが勝ったことでしょう。

 ヘクター選手のPKが、ブフォン選手の「脇の下」を抜けた瞬間、ユーロの歴史に新しいページが開きました。「トーナメントでドイツがイタリアに勝つ」というページです。

 とはいえ、この日のゲーム内容を観ると、「第二の原則」はまだまだ生きていると感じます。
 世界チャンピオンとして、優勝候補筆頭として大会に臨み、戦力的にも優位にあると目されていたドイツチームが、大苦戦し、負ける寸前にまで追い込まれたのです。
 「カテナチオ」はこれからもドイツチームの前に立ち塞がり続けるような気がします。

 ドイツチームは「予想通り」、準決勝に駒を進めました。

 このイタリアとの「死闘」は、ドイツを一段と強くしてくれたことでしょう。
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