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 サッカー競技においては、「あの時のチーム」という概念が大きな意味を持ちます。

 特に、ワールドカップの様な世界一を決める大会では、「○○年の○○国のチーム」といった形で、ファンの間で長く語り継がれることとなるのです。

 とはいえ、「○○年の○○国のチーム」といっても、メンバーは試合毎に異なります。
 実は、大切な試合に、そのチームの骨格を成すプレーヤーが出場していないことも、時々あるのです。

 当該チームにとっては「欠くべからざるプレーヤー」が出場していないのですから、とても苦しい戦いを強いられますし、本質的に言えば「○○年の○○国のチーム」と呼ぶことが相応しくないチームになってしまっているのかもしれません。

 チームの骨格を成すプレーヤーが、大事な試合に出場できない原因としては、イエローカードの累積、怪我・故障、等が挙げられます。

 今回は、21世紀のワールドカップのビッグゲームにおいて、「もし、あの選手が出場できていたら・・・」というケースを観て行きたいと思います。

① 2002年日韓大会決勝 ブラジル対ドイツ

 ロナウド選手、リバウド選手、カフー選手、ロベルト・カルロス選手、ルシオ選手らを擁したブラジル代表チームが、2-0でドイツチームを破り優勝したゲームです。

 このゲームでは、ドイツ代表チームの中心プレーヤー、ミヒャエル・バラック選手が出場できませんでした。準決勝での反則が要因であったと記憶していますが、「バラックのチーム」と言われた2002年のドイツ代表チームにおいて、ワールドカップ決勝戦のピッチに「バラックが居ない」状況だったのです。

 ドイツは、ベルント・シュナイダー選手やオリバー・ノイビル選手、そしてミロスラフ・クローゼ選手らを中心に攻撃を組み立て、再三ブラジルゴールを脅かしましたが、結局得点を挙げることは出来ませんでした。
 結果として、後世においては「ブラジルの完勝」と評されるゲームとなったのです。

 しかし、実際には後半の前半までは拮抗したゲームでした。
 「もし、ここにバラック選手が居たら」というゲームであったと思います。
 バラック選手のボールキープ力と突破力が、ドイツチームに得点を齎したであろうと感じます。

 2002年ワールドカップ決勝のドイツチームは、「2002年のドイツチームでは無かった」のでしょう。

② 2010年南アフリカ大会準決勝 オランダ対ウルグアイ

 オランダチームが3-2で勝ち、2度目の決勝進出を決めたゲームです。
 
 前半、ファン・ブロンクホルスト選手のミドルシュートでオランダが先制しましたが、ウルグアイがディエゴ・フォルラン選手のシュートで同点として折り返し、後半オランダがヴェスレイ・スナイデル選手とアリエン・ロッベン選手のゴールで3-1とリード、ゲームは決まったと思われましたが、ウルグアイが猛反撃、インジュリータイムに入ってマキシミリアーノ・ペレイラ選手がゴールを挙げて2-3と追い縋り、最後の最後まで分からないゲームとなりました。

 この大事な試合に、あのルイス・スアレス選手が出場していなかったのです。
 準々決勝ガーナ戦の延長後半終了間際、ガーナチームのシュートを手で止めて、レッドカード一発退場となってしまい、準決勝のピッチに立てなかったのです。

 スアレス選手の「点取り屋」としての能力は、現在のサッカー界でも、メッシ選手やクリスティアーノ・ロナウド選手と並び称される、あるいはそれ以上のものであろうと評されていますから、「スアレスが居ると居ないとでは『違うチーム』になってしまう」と言われています。
 その通りだと思います。

 ワールドカップにおいて2度の優勝を誇る古豪ウルグアイチームにとって、久し振りの決勝進出を目指したゲームに、スアレス選手が居なかったことは、ウルグアイの得点力に計り知れないマイナス要因となったのでしょう。
 スアレス抜きでも、2-3という接戦を演じたことを思えば、「もしスアレスが居たら」と考えてしまうのも、無理が無いところです。

 準々決勝のガーナ戦でのスアレス選手の「とんでもない反則」も、アフリカ勢初の準決勝進出を目指すガーナチームに対して、「絶対に勝つ」という気迫から生まれたプレーでしょう。
 この反則により、ガーナにペナルティーキックPKが与えられましたが、これが入らず、PK戦となって、ウルグアイが勝ち抜いたのです。

 手を出さなければ、このシュートが入り、ガーナの勝利となるという延長後半のインジュリータイム。「相手チームにPKが与えられ、自らが退場となる」ことを覚悟の上で、「PKが必ず入るとは限らない」との考えから、(あるいは本能的に)「とんでもない反則」をやらかしてしまったのでしょう。

 もちろん、決して褒められた行為ではありませんが、「チームの勝利の為に、やれることはすべてやる」という執念には、畏れ入ります。

 この執念と世界最高の得点能力が準決勝のピッチに存在したならば、と考えさせられるのです。

 スアレス選手、フォルラン選手、エディンソン・カバーニ選手、アルバロ・フェルナンデス選手、ペレイラ選手らのメンバーが揃ったウルグアイ代表チームは、古豪ウルグアイにとって久しぶりにワールドカップ優勝を狙えるチームであったと思いますし、この世代のウルグアイチームとしてのピークの時期であったとも感じます。

 もし準決勝でオランダを破り、決勝に進出していれば、全盛期のスペイン代表チームの脅威となっていたことは間違いないでしょう。
 ウルグアイが勝っていたかもしれないとさえ思うのです。

 それだけ、準々決勝のガーナ代表チームが強かったということも事実なのでしょう。

③ 2014年ブラジル大会準決勝 ドイツ対ブラジル

 ドイツ代表チームが7-1で大勝した有名なゲーム。

 前半23分から29分までの7分間に、ドイツチームが4得点し、ワールドカップ決勝トーナメント史上に残るワンサイドゲームとなり、ブラジルにおいては「ベロオリゾンテの悲劇」と呼ばれる試合になってしまいました。

 このゲームには、ブラジル代表チームのネイマールjr選手とチアゴ・シウバ選手が出場できませんでした。
 ネイマール選手は準決勝のコロンビア戦で、背後からの膝蹴りを受けて背骨を骨折しました。チアゴ・シウバ選手は、イエローカードの累積で準決勝のピッチに立てませんでした。
 「攻撃の中心」ネイマール選手と「守備の中心・キャプテン」チアゴ・シウバ選手が居ないブラジルチームは、「悲劇」に見舞われたのです。

 もし、このゲームに両選手が出場していたら、試合の結果はどうなっていたのでしょう。
 完成の域に達していたドイツチームには、やはり敵わなかったという見方もありそうです。
 ネイマール選手とチアゴ・シウバ選手が居たからといって、ドイツに勝つまでには至らなかったというのが大層の意見なのかもしれませんが、少なくとも「悲劇」は起きなかったと思います。

 このゲームで、トーマス・ミュラー選手に早々に先制点を挙げられ、クローゼ選手に2点目を取られたところで、ブラジルチームは「激しく動揺」しました。地元開催の大会で、2点のリードを許し、「早く追い付かなければ」と前掛かりになってしまって、チームがバラバラになったのです。
 「チームが苦境に追い込まれた時の精神的支柱」が、この時のブラジルには存在しなかったことが明らかです。

 ネイマール選手とチアゴ・シウバ選手がピッチに居れば、この「精神的支柱機能」を十分に果たし得たと考えます。
 ひょっとすると、ネイマール選手の驚異的プレーが序盤に飛び出し、先制点を挙げることが出来ていれば、ベロオリゾンテの6万大観衆・ブラジル2億国民の後押しを受けて、好ゲームを展開していた可能性も有るでしょう。

 チアゴ・シウバ選手のコロンビア戦後半の不用意な反則・イエローカードと、ネイマール選手の試合終了間近の負傷退場(ボール位置とは関係ないところでの意図的な膝蹴りでした。絶対に許されない行為です)が、本当に惜しまれます。

④ 2014年ブラジル大会決勝 ドイツ対アルゼンチン

 一進一退が続いた試合でしたが、延長後半、途中出場のマリオ・ゲッツェ選手のゴールで、ドイツチームがアルゼンチンチームを1-0で下したゲームです。

 このゲームには、アンヘル・ディマリア選手が出場していませんでした。
 準々決勝ベルギー戦での故障が原因でした。

 2014年ワールドカップのアルゼンチン代表チームは、「攻撃の中心」がディマリア選手、「守備の中心」がハビエル・マスチェラーノ選手、そして「超豪華なトッピング」としてリオネル・メッシ選手が配されたチームであったと思います。

 「ディマリアとマスチェラーノの運動量」が「2014年のアルゼンチン」を支えていたと思います。

 そのディマリア選手を失ったアルゼンチンは、準決勝のオランダ戦を120分戦っての0-0からのPK戦で勝ち上がり、決勝でも得点を挙げることが出来ませんでした。
 明らかに得点力が不足していたのです。

 ドイツチームとの決勝でも、アルゼンチンチームの守備は健在でした。
 ドイツにスペースを与えず、ペナルティーエリア付近で果敢なチャージを継続し、ゴールを許しませんでした。

 しかし一方で、アルゼンチンにとって得点は遠いものでした。

 このピッチの上にディマリア選手が居れば、と考えたのは私だけではないでしょう。
 ブラジルから7点を奪ったドイツの攻撃を、90分間に渡って零封した守備力をベースに、ディマリア選手とメッシ選手のコンビで1点を捥ぎ取っていれば、アルゼンチンが勝てたのです。
 もちろん、先制を許した後のドイツチームの猛攻は、凄まじいものであったと思いますから、勝敗は分からないところですけれども、チャンスは十分に有ったと思うのです。


 今回はワールドカップの準決勝以上のゲームにおいて、「もし、あの選手が出場できていれば・・・」というテーマで書きました。

 「キープレーヤーが居ない時には『別のチーム』になってしまう」と考えたのです。

 2002年決勝のドイツ、2010年準決勝のウルグアイ、2014年準決勝のブラジル、2014年決勝のアルゼンチンは、「別のチーム」であったと思います。

 勝敗は時の運なのでしょうが、勝つにしても負けるにしても、「フルメンバーで戦える」ことが、とても大切だと考えます。
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