FC2ブログ
HOME   »   サッカー  »  [歴史的マンマーク] ベルティ・フォクツ選手とノビー・スタイルズ選手
RSSフィード iGoogleに追加 MyYahooに追加
 21世紀に入って、サッカー競技におけるディフェンス・守備は「ゾーン・ディフェンス」が主流となりました。

 「スペース管理」という概念が、サッカー戦術において重要性を増したことが理由であろうと思います。
 相手チームの自由な動きを抑制する、相手チームにスペースを与えないという考え方、特にゴール前では、どのエリアにもディフェンダーを一定数配することで、思いもよらぬ「空白エリアの出現」を防止するという狙いもあるのでしょう。

 加えて、ディフェンスからの攻撃参加を行う面からも、局面局面でディフェンダーの位置が概ね定まっている方が、チーム全体の動きとしても合理的であり、戦法の組立も容易である、という側面もありそうです。

 一方で、攻撃側から見れば、狭いエリアであれば比較的自由に動けるメリットがあり、ディフェンス側が決めているエリアに近づくまでは、足許への強烈なアタックも少ないという面がありそうです。
 
 ゾーン・ディフェンスとマンツーマン・ディフェンスについては、別の機会にもう少し詳細に見ていこうと思いますが、今回のテーマは「マンツーマン・ディフェンスのひとつの究極形」としてのマンマーク、それも「歴史に残るマンマークプレー」を見ていきます。

[1974年ワールドカップ決勝・ミュンヘンオリンピアシュタディオン]
西ドイツ2-1オランダ
における、ベルティ・フォクツ選手のヨハン・クライフ選手へのマンマーク。

 とても有名なゲームです。
 「世界サッカー史におけるベストゲーム10選」に常にランクインするゲームでしょう。

 「空飛ぶオランダ人」ヨハン・クライフ選手を擁するオランダチームが、「皇帝」ベッケンバウアー率いる西ドイツチームと激突した戦いでした。

 この大会は西ドイツ開催でしたから、地元としての西ドイツチームとしては負けられない一戦でしたが、一方で、「トータルフットボール」というサッカー競技における「革命的新概念・新戦術」を世に問うたオランダチームの強さは、一頭抜けている印象がありました。

 2次リーグ(この大会は1次リーグ、2次リーグ制)最終戦のオランダVSブラジルのゲームは、決勝進出を賭けた大一番でしたが、オランダチームが2-0で完勝しました。1970年大会の優勝チームであり、その時の主力メンバー(リベリーノ選手やジャイルジーニョ選手)が残っていたブラジルチームは、当然ながら優勝候補の一角を占めていましたが、そのブラジルチームが「手も足も出ない」感じで敗れたのです。

 地元開催での優勝を目指す西ドイツチームとしても、オランダは「容易ならざる敵」でした。
 そのオランダチームのエースというか「核」がクライフ選手であることは、誰の目にも明らかでしたから、西ドイツチームとしては、「クライフに自由に動かれては勝利は覚束ない」と考えたことでしょう。

 そこで西ドイツチームが編み出したというか、決めた戦法が「フォクツによるクライフのマンマーク」でした。
 「ゲームを通してフォクツ選手はクライフ選手に貼りついて離れない、一瞬たりとも離れない」という、フォクツ選手にとっては体力的にとてもしんどい戦法だったのです。

 何しろ、攻撃する側のクライフ選手は、自分が考えた通り、感じた通りに動きます。
 対してフォクツ選手は、クライフ選手の動きに合わせて動かなければなりません。
 
 普通のプレーヤーに対してマンマークを行うことも、相手プレーヤーの動きを「後追い」するのですから、とても難しいことなのですが、相手が世界最高のプレーヤー、予想も出来ない動きをするプレーヤーとなれば、その困難さは筆舌に尽くしがたいものでしょう。
 1試合を通して「張り付く」などというのは、到底不可能なことに見えます。

 しかし、フォクツ選手はこれを実行しました。
 凄まじい忍耐力と驚くべき体力・持久力を発揮したのです。

 この試合の途中から、明らかにクライフ選手がフォクツ選手を嫌がっている様子が観られました。
 気分屋とも言われていたクライフ選手の戦闘意欲が削がれていったことは、間違いないのでしょう。

 西ドイツチームに優勝を齎したマンマークであったと思います。

[1966年ワールドカップ準決勝・ウェンブリースタジアム]
イングランド2-1ポルトガル
における、ノビー・スタイルズ選手のエウゼビオ選手に対するマンマーク

 1966年のワールドカップはイングランド大会でした。
 サッカー競技発祥の地であるイングランドとしては、ワールドカップのタイトルは何としても物にしたいと考えていたでしょうし、この時期のイングランドには好プレーヤーが揃ったのです。

 ボビー・チャールトン選手、ジャッキー・チャールトン選手の兄弟や、世界最高のゴールキーパーGKと呼ばれたゴードン・バンクス選手やディフェンダーでキャプテンのボビー・ムーア選手、等々、イングランド史上最強とも言われるメンバーでしたので、イングランドチームとしては、是が非でも優勝したかったのです。

 ところが、準決勝の相手・ポルトガルチームには、あの「黒豹」エウゼビオ選手が居ました。

 現在、21世紀・2017年時点で、ポルトガルサッカー史上最高のプレーヤーはと聞かれれば、多くのサッカーファンがクリスティアーノ・ロナウド選手と答えるでしょう。
 「21世紀における」という前置詞を付ければ、この答えが妥当だと感じます。

 しかし「20世紀における」という前置詞を付ければ、エウゼビオ選手なのです。
 1960年代から70年代にかけて、エウゼビオ選手はポルトガル、そして世界を代表するフォワードFWでした。

 この時代には、ペレ選手という、サッカー史上最高のプレーヤーが活躍していましたが、場合によっては「ペレと並び称される」存在だったのです。

 個人的には、ペレに匹敵するサッカー選手は存在しませんが、ペレ選手の全盛期に「ペレに次ぐFW」ということであれば、エウゼビオ選手を挙げるかもしれません。それ程、存在感満点のプレーヤーでした。

 少し話がそれますが、エウゼビオ選手は1970年にクラブチーム、ベンフィカ・リスボン*の一員として来日し、全3試合に出場しています。
 全日本チーム等を相手しての3試合であったと記憶していますが、ゲームは3試合ともベンフィカ・リスボンの圧勝で、特に国立競技場で行われた第2戦は4-1でベンフィカが勝ちましたが、4点ともエウゼビオ選手のゴールであったと思います。
(*現在では、日本語でベンフィカあるいはSLベンフィカと書かれるクラブチーム名ですが、当時はベンフィカ・リスボンと表記されていました。海外の一流チームが来日する機会がとても少なかった時代ですので、この時のベンフィカの強さ、UEFAチャンピオンズカップ=現在のチャンピオンズリーグ、を2度制している超一流チームのプレーぶりは、とても強烈な印象を日本のサッカーファンに残しました)

 特に、エウゼビオ選手がドリブルに入ったときのスピードとパワー、その「突進」は迫力満点で、「とても止められない」と感じさせるものでした。身長175cmと決して大柄なプレーヤーではありませんでしたが、走り出した時にはものすごく大きく見えたものです。

 ちなみに、クリスティアーノ・ロナウド選手とエウゼビオ選手の比較を行うとすれば、どういう結果になるでしょうか。この比較だけで、相当の字数を要するので、ここでは詳細を省略しますが、「甲乙つけ難い」というのが、私の感想です。

 2人は、ポルトガルサッカー史に燦然と輝く両雄なのでしょう。

 さて、話を戻します。

 1965年のバロンドール受賞者であり、めきめき力を付けてきていた24歳のエウゼビオ選手は、準々決勝の北朝鮮戦(ベスト16のゲームでイタリアを破り、「ワールドカップ史上最大の番狂わせ」と呼ばれた大会です。ちなみに、このゲームが「ワールドカップ史上最大の番狂わせ」との評価は、現在でも不変でしょう)において、北朝鮮チームに0-3とリードを許しながら、ひとりで4点を挙げて逆転勝ちし、ベスト4に進んできていました。

 このエウゼビオを止めずして、イングランドに勝利→決勝進出は無い、と考えるのは、とても自然なことでしょう。

 イングランドチームは、ノビー・スタイルズ選手をエウゼビオ選手のマークに付けることとしたのです。スタイルズ選手は試合を通じてエウゼビオ選手に「張り付く」ことを命じられました。
 前述のフォクツ選手同様に、とても難しい使命を負ったのです。

 エウゼビオ選手のスピードとパワー、そして切れ味鋭いテクニックに溢れたプレーに対して、1試合を通して「張り付く」などということが出来るのだろうかと感じてしまいますが、スタイルズ選手はこれをやり切りました。

 この試合で、エウゼビオ選手は殆ど自分のプレーをすることが出来なかったのです。

 このゲームの、イングランドの2得点は、いずれもボビー・チャールトン選手のゴールです。さすがに「イングランドサッカー史上最高のプレーヤー」と称されるだけのことはあります。
 一方、ポルトガルの1得点は、エウゼビオ選手のPKでした。本来のプレーが出来なかったとはいっても、意地は魅せたのです。

 それにしても、ノビー・スタイルズ選手のこのゲームでの献身的な働きは、ひょっとするとイングランド優勝の最大の功労者なのではないかと感じてしまいます。

 今回は、ドイツのベルディ・フォクツ選手とイングランドのノビー・スタイルズ選手の「サッカー史に刻まれたマンマーク」を観てきました。

 こうした記憶を思い起こすと、「マンマークの効果・重要性」に辿り着きます。
 現代サッカーにおいても、「徹底したマンマーク」は、相手チームのエースを抑え込む、特に圧倒的な力を誇るエースを抑え込むには、有効な戦法なのではないでしょうか。(もちろん、プレー全般の運動量増加等、サッカーの質の変化は考慮しなければなりませんが)

 この2人のプレーヤーは、共に身長168cmと報じられています。
 当時としても、決して大きくは無いプレーヤーです。

 ベルディ・フォクツとノビー・スタイルズ、「小さな縁の下の力持ち」の2人は、母国に「サッカー界最大の勲章」、ワールドカップを齎す原動力となったのです。
関連記事
スポンサーサイト



NEXT Entry
[MLB2017] エイドリアン・ベルトレイ選手とアルバート・プホルズ選手
NEW Topics
[UEFA-CL2019~20(無観客)] 再開 ベスト8決まる。
[温故知新-陸上競技13] 男子3,000m障害 オリンピック金メダリストの記録
[全米プロゴルフ選手権2020(無観客)] コリン・モリカワ選手 初優勝
[MLB2020(無観客)・ナショナルリーグ] 8月8日終了時点の各地区の順位
[MLB2020(無観客)・アメリカンリーグ] 15ゲーム前後を終えての各地区の順位
[MLB2020(無観客)] ダルビッシュ有投手 2連勝!
[PGAツアー2019~20(無観客)] 全米プロゴルフ選手権大会 開幕
[ルヴァンカップ2020(観客数制限)] 三浦知良選手 53歳5ヵ月10日で先発!
[温故知新2020-陸上競技12] 男子三段跳び オリンピック金メダリストの記録
[大相撲2020・7月場所(観客数制限)] MVPは隠岐の海関
[大相撲2020・7月場所(観客数制限)] 照ノ富士関 5年振り2度目の優勝
[競馬コラム275] キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスの勝ち馬
[MLB2020(無観客)] 田中将大投手 今シーズン初登板
[NBA2019~20(各種制限)] 再開 八村塁選手の活躍
[大相撲2020・7月場所(観客数制限)] 大一番 朝乃山VS照ノ富士
[欧州4大リーグ2019~20] 各リーグの優勝チームが決まりました。
[NPB2020(観客数制限)セリーグ] 巨人が首位
[NPB2020(観客数制限)・パリーグ] ソフトバンクが首位
[陸上・東京選手権2020(無観客)] 男子800m クレイ・アーロン・竜波選手 快勝!
[MLB2020(無観客)] 前田健太投手 今季初登板・初勝利
[MLB2020(無観客)] 大谷翔平「投手」 久しぶりの登板
[競馬コラム274] エネイブル号 G1レース11勝目!
[大相撲2020・7月場所(観客数制限)] 中日を終えて
[MLB2020(無観客)] ダルビッシュ有投手 登場
[MLB2020(無観客)] 大谷翔平選手 3年目のシーズンイン
[MLB2020(無観客)] 筒香嘉智選手 メジャーデビュー戦で2ランホームラン
[MLB2020(無観客)] 秋山翔吾選手 メジャー初打席・初ヒット・初打点
[MLB2020開幕戦(無観客)] マックス・シャーザー投手とゲリット・コール投手の投げ合い
[MLB2020(無観客)] ついに開幕 今シーズンの試合数など
[大相撲2020・7月場所5日目(観客数制限)] 5戦全勝の力士達
[セリエA2019~20(無観客)] クリスティアーノ・ロナウド選手 驚異の得点力
[競馬コラム273] ビワハヤヒデ号 30歳の大往生
[大相撲2020・7月場所初日(観客数制限)] お行儀の良い観客の皆さん
[ホクレン・ディスタンスチャレンジ2020(観客数制限)] 一山麻緒選手と前田穂南選手
[FIFAワールドカップ2010準決勝] スペインチーム 「パスサッカー」の完成
[温故知新2020-陸上競技11] 男子400m競走 オリンピック金メダリストの記録
[NPB2020(観客数制限)] 戸郷翔征投手 開幕3連勝!
[NPB2020(観客数制限)] DeNA 7月15日まで16試合連続「○●○●・・・」のNPB記録更新
[大相撲2020・7月場所(観客数限定)] 活躍が注目される10名の力士
[温故知新2020-競泳8] マーク・スピッツ選手とマイケル・フェルプス選手
[リーガエスパニョーラ2019~20(無観客)] 久保建英選手 今シーズン4点目!
[アメリカ・カレッジスポーツ2020] アイビーリーグが秋季のスポーツを中止
[温故知新2020-ボート] 男子エイト オリンピックのメダル獲得チーム
[NPB2020・パリーグ(無観客)] 楽天ゴールデンイーグルスの快走
[NPB2020・セリーグ(無観客)] 阪神タイガース 3連勝
[温故知新2020-陸上競技10] 110mハードル 金メダリストの記録
[競馬コラム272-日本馬の海外挑戦14] 2011年 ヴィクトワールピサの快挙
[温故知新2020-競泳7] 男子100m自由形 オリンピック金メダリストの記録
[温故知新2020-陸上競技9] 男子200m競走 金メダリストの記録
[温故知新2020-自転車] 男子団体追い抜き オリンピックのメダル獲得チーム
Entry TAG
歴史的なマンマーク・WCの2例  
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

カエサルjr

Author:カエサルjr
「スポーツを考える-KaZ」ブログへ
ようこそ!
我が家の月下美人も16年目。同時に30個の花が咲くこともあります。スポーツも花盛りですね。一緒に楽しみましょう。

最新記事
最新コメント
検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QR

Page Top
CALENDaR 12345678910111213141516171819202122232425262728293031