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HOME   »   スキー  »  [ノルディックスキー] 変質する男子50㎞距離クラシカル競技
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 イタリアのバルディフィエメで開催されていた、ノルディックスキーの2013年世界選手権大会が幕を閉じました。世界トップクラスの選手の戦いは見応え十分でしたが、男子50㎞距離クラシカル競技には気になる点がありました。

 50㎞クラシカル競走は、ノルディック競技の中核を成す種目です。所謂ノルディック競技の中でも最もノルディックらしい種目であると、私は考えています。このノルディック50㎞走と競歩50㎞が、全てのオリンピック種目の中で最長の競技です。

 今大会のこの種目は、スウェーデンのオルション選手が見事なレース振りを魅せて、完勝しました。今大会の距離競技は、ノルウェー勢の好調さが際立っていましたが、最終種目でスウェーデンが意地を見せた形です。距離競技のスウェーデン勢にとっては、男女を通じて今大会初の金メダルでした。

 その伝統種目である筈の男子50㎞クラシカル競走ですが、相当に変わってきていると感じました。

① 6周する競技
 今大会は、1周約8.3㎞のコースを6周する形で行われました。トップクラスの選手は、1周20分強のタイムで回ってきます。20分毎に、メインスタンドの前を選手達が通過するのです。確かに観客は20分毎に、選手を観ることができますから、面白いのかもしれません。

 しかし、以前のワンウェイの林間コースをひとりで黙々と走る競技とは、全く違う競技になっています。以前の50㎞走は「自分との戦い」だったのです。コース全体の形状や天候・自分の走り方の特徴などを考慮して、ペース配分を考え・実行していく戦いだったのです。走っている途中で、競っている相手選手を見ることは殆ど無く、レース結果はゴールしてから分かるものでした。

 現在の競技方法では、トップグループは一団となって走り、最後の一周の、時にはラストスパート勝負になることもある競技となっています。50㎞を走ってはいますが、レースはラスト10㎞勝負、あるいはラスト1㎞勝負となっていることが多いのです。これは「他選手との戦い」です。

 以前の50㎞走で必要であった、ペース配分の妙、孤独・不安と戦う精神力の強さが不要な競技となっています。見方によっては、正反対の競技になっているとも言えます。
 私は、良いこととは思いません。伝統競技とは言えないと考えます。

② 5回まで可能なスキーの交換
 この大会では、メインスタンド前にトライアスロンの施設のような「スキー交換所」が設けられていて、各選手はレース中、この交換所で5回までスキーを交換できるルールでした。
 全部で6周するコースですから、場合によっては1周毎にスキーを交換できることになります。とはいえ、スキーを1回交換すると20秒から30秒のタイムロスに繋がりますから、実際の競技では、多くの選手が2周目・4.周目と5周目の3回の交換でした。

 これでは、各選手は常にグリップが良く効いたスキーを装着できることになりますから、以前の様に、30㎞、40㎞と進むにつれてワックスが剥がれて行き、最後の5㎞になると殆どワックスが無い状態で走るという技術は不要ということになります。ワックスが無くとも、相応に走る技術は、今後どんどん廃れて行くのでしょう。そして、良い状態のスキーでしか走ることができない選手ばかりになっていくのではないでしょうか。

 ワックスマン・ワックスチームの技術も変貌していきます。以前なら、なるべく剥がれにくいワックスを塗る必要がありました。50㎞を1回のワックスで対応するのですから。
現在は、10㎞から20㎞の距離に対応するワックスであれば良いことになります。

 このことについても、私は良いこととは思いません。何か、底の浅い競技になって行くような気がします。

 観客が観易いようにということか、あるいは短時間で完結する種目を増やそうということか、スプリントやスキーアスロン(パシュート)といった新種目が増えてきたノルディックスキー距離競技です。これは、これで面白いとは思いますが、「ラストスパート勝負ばかり」というのは、競技全体のレベルが下がってしまうのではないかと危惧しています。

 1992年5月、フォーミュラー・ワンF1、モナコグランプリのレース終盤、性能が劣るマクラーレン車を操縦するドライバー、アイルトン・セナは、当時最高の性能を誇ったウィリアムズ車を操る、当代屈指のドライバー、ナイジェル・マンセルの猛追を受けていました。しかも、セナの車のタイヤは相当擦り減ったもの、一方のマンセル車は、交換したてのフレッシュタイヤ(そもそも、マンセル車がタイヤ交換したために、セナ車がトップに立ったのです)でした。
 
 テイル・トゥー・ノーズの状態になり、いつでも追い抜けるマンセルが、アタックをかける都度、セナは阻止し続け、ついに優勝したのです。狭くカーブが多い、モンテカルロ市街地コースの特性を最大限に活かし、車のパフォーマンスの圧倒的な差や、擦り減ったタイヤ、入らないギア、といった状況を、巧みなドライビング・テクニックでカバーしたアイルトン・セナに、最大級の賛辞が送られました。

 F1グランプリは現在も、例えばタイヤについては、ソフト・ノーマル・ウェットの各種類の使用数量を、予選と本戦を通しての1大会を通しての数として規制したり、1回で補給できる燃料量を制限したりして、可能な限り、レースがドライバーの運転技術とチーム体制の優劣の競争となるような工夫が施されているように思います。
 例えばチームは、予選での使用距離が短いタイヤは、本戦のために残しておきます。タイヤ毎に、残りの寿命を精緻に計算した上で。
 湯水のように、燃料やタイヤを消費して、常にマシンの状態を最上のものにして戦うことを、良しとしていないのです。

 翻って、現在のノルディックスキー50㎞距離競技はどうでしょうか。周回毎にスキーを新品に交換できる上に、ストックが壊れても、直ぐにコース上で交換できるのです。ワックス技術における、レース中の雪面・天候変化への予測も不要となり、ただ軽いだけではなく、ある程度の強度を確保した重いストックを用意・使用する必要もなく、スキーヤーは常に、最上に近いレベルの道具を使い続けることができます。
 F1レースとは正反対の方向に、ルールが変更され続けているのです。

 どちらが「より奥行きのある競技」となるのかは、自明の理でしょう。浅く、単純な競技は、最初はともかく、繰り返して観ている内につまらなくなるものです。観客の減少に繋がるのでしょう。

 私は、少なくとも男子50㎞と女子30㎞のクラシカル距離競技については「自分との戦い」「自然との戦い」というノルディック距離競技の本質を、維持してもらいたいものだと考えています。

 幸い?にも、今大会の男子50㎞は、2周目で飛び出したスウェーデンのオルション選手が、見事なペース配分で走り切りました。特に、残り8㎞から5㎞までの3㎞の走りは絶妙でした。40㎞近くの距離を一人で走り切ったオルション選手に拍手を送ります。

「先頭集団の後方に位置取り、なるべく体力を温存して、残り1㎞でスパートし、競り合って勝つ」という、単純極まりないワンパターンな競走ばかりになってしまっては、全然面白くないと思います。
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