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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム4]  戦時の三冠馬 セントライト
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 9月17日、中山競馬場でセントライト記念が行われます。この伝統あるレース名となっている「セントライト号」。我が国最初の三冠馬として競馬ファンには知られていますが、どんな馬だったのでしょう。第二次世界大戦と重なる時期の馬ですので、もちろん私もリアルタイムには知りませんが、近代日本競馬の黎明期を知るには良いテーマだと思います。

1. 日本におけるクラシック競走の確立
近代競馬発祥の地イギリスの3歳馬(当時は数え年馬齢で4歳馬)限定の5つのレースである「クラシック競走」を我が国でも導入・確立しようとする取組がなされ、1939年に後の皐月賞にあたるレースが創設されて、我が国のクラシック競走が整いました。一方で、この1939年は第二次世界大戦が始まった年でもありました。  

英国のクラシック  出走馬   1939年の日本    現在の日本
・1000ギニー    3歳牝馬  中山4歳牝馬特別    桜花賞
・2000ギニー    3歳馬  横浜農林省賞典4歳呼馬  皐月賞
・オークス      3歳牝馬 阪神優駿牝馬      優駿牝馬(オークス)
・ダービー      3歳馬  東京優駿        東京優駿(日本ダービー)
・セントレジャー   3歳馬  京都農林省賞典4歳呼馬  菊花賞
 
2. セントライトの誕生、戦歴
① 1938年岩手県の小岩井農場生まれ。我が国近代競馬の初期には、千葉県にあった官営の下総御料牧場と民間の小岩井農場が、その産駒を競いましたが、セントライトは小岩井農場の産。父の英国2000ギニー馬ダイオライトは、1935年に下総御料牧場が輸入した種牡馬、母は小岩井農場が英国から輸入したフリッパンシー。良血馬です。ただし、セントライト自身は、もっさりとした感じで必ずしも評価は高くなかったようです。

② 1941年3月15日横浜競馬場の新馬戦デビュー。12頭立て七番人気と人気は高くありませんでしたが2着に5馬身差をつけて初勝利。2週間後の30日にクラシック初戦の「横浜農林省賞典4歳呼馬競走(皐月賞)」に出走。同期の最高価格馬ミナミモアを抑えて一番人気。レースでは、ミナミモアに3馬身差をつけ勝利。
 その後、4戦して3勝2着1回の成績で5月16日の「東京優駿競走(日本ダービー)」へ。ミナミモアに一番人気を譲って二番人気。前夜までの降雨により重馬場で行われたレースは、8馬身差で圧勝。この8馬身差は、1955年優勝のオートキツと並び、東京優駿(日本ダービー)の最大着差です。

 ダービーの後は休養して、9月27日からレースに復帰。復帰戦は、66㎏の斤量を負わされて3着と敗れるも、続く2戦を連勝して京都に西下。前哨戦は、68㎏の斤量で2着でしたが、このひとたたきで調子は上向き、10月26日の「京都農林省賞典4歳呼馬競走(菊花賞)」には絶好調で臨みました。一番人気に応えて、ミナミモアに2馬身半差をつけて優勝。1939年にクラシック競走が整備されて以来、初の三冠を達成しました。

③ その後、当時ダービーと並ぶ大レースであった帝室御賞典(現在の天皇賞の前身)を目指しましたが、前哨戦のハンデが72㎏となることがわかり、馬主の加藤氏は「4歳馬に72㎏を背負わせるぐらいなら」とセントライトを引退させました。
 名馬の影に、名馬主ありという感じ。馬主としての栄誉や賞金欲しさに、名馬の晩年を汚す馬主も少なからず居る中で、この加藤氏の姿勢・判断は、本当に素晴らしいと思います。

④ セントライトの全競走成績は、12戦9勝・2着2回3着1回という立派なものです。敗れたレースでのハンディキャップ66㎏や68㎏は、現在では考えられませんが、当時は珍しいものではありませんでした。とはいえ、やはり3歳の若馬には重い負担だったことでしょう。66㎏を背負い、唯一3着に敗れたレースでは、勝った馬より11㎏も重かったそうです。

⑤ 2012年8月末時点で三冠達成牡馬*は7頭いますが、
・デビューから引退まで同一年
・菊花賞以降レースに出ずに引退した   のはセントライトだけです。
(こうした表現になる理由は、牝馬にして日本ダービー・オークス・菊花賞の変則三冠を制したクリフジ号がいるためです)

3. 種牡馬として
 競走馬引退後は、小岩井農場に帰り種牡馬となりました。太平洋戦争後の1947年にはオーエンスが平和賞(帝室御賞典の後継レースにして天皇賞の前身レース。レース名にも時代が色濃く反映されています)に優勝。1951年にオーライトが秋の天皇賞、1952年にはセントオーが菊花賞(親子制覇です)を制するなど、産駒も活躍しましたが、その後は残念ながら肌馬(繁殖牝馬)に恵まれず、晩年は活躍馬が出ませんでした。

4.戦時のサラブレッド
 セントライトは、日中戦争から太平洋戦争にかけての時代に、日本競馬を支えた「戦時のサラブレッド」でした。こうした時代に、日本のクラシック競走を確立し、英国から種牡馬を輸入するなど、競馬関係者の皆様のご努力には、本当に頭が下がります。こうした皆さんのご努力に対して、天から下された馬がセントライトであったような気がします。

 セントライト号は、1965年2月1日に老衰のため死亡、27歳の大往生でした。丁度、シンザン号が、1964年に史上2頭目の三冠馬になった数か月後です。「シンザンよ、後は任せたぞ」といったところでしょうか。
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