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HOME   »   アイスホッケー  »  [平昌五輪2018アイスホッケー男子] ドイツチームの大冒険
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 ドイツチームは銀メダルを獲得しました。

 オリンピックでドイツチームが銀メダルを獲得したのは初めてです。
 大活躍だった訳です。

 しかし、決勝でOAR(ロシア)チームに敗れたドイツチームのメンバーの顔には、悔しさが溢れていました。
 ドイツチームは、金メダルに手をかけたのです。殆ど掌中にしていましたが、その「財宝」はするりと掌から抜け落ちてしまいました。
 銀メダルも大変な財宝なのですけれども、金メダルに手をかけていたドイツチームにとっては、大魚を逸した感じだったのでしょう。

 2017年の世界ランキング8位のドイツチームが、決勝戦でOARチームと死闘を演じるまでの「大冒険」を観て行きましょう。

① 1次リーグは9位

 1次リーグC組に入ったドイツは、1勝2敗という成績でC組の3位、全体では9位でした。
 スウェーデンに0-1、フィンランドに2-5で敗れ、ノルウェーに延長・ペナルティーショット戦でかろうじて2-1で勝ちました。

 世界ランク8位というポジション相応の結果だったのです。
 ここまでは「普通のオリンピックの戦い」(変な言葉ですが)を披露していたわけで、冒険ではありませんでした。

 今大会の1次リーグは、「準々決勝進出決定戦」の組合せを決めるものでした。
 ドイツチームはスイスチームとの対戦となりました。

② 準々決勝進出決定戦

 「大冒険」の始まりです。

 世界ランク7位のスイスとの対戦は、1-1の同点から延長に入り、辛くも2-1で勝利しました。薄氷を踏む思いの勝利であったと思います。
 この時、ドイツが決勝に進出すると考えていたアイスホッケーファンは、殆ど居なかったでしょう。

③ 準々決勝

 世界ランク3位の強豪スウェーデンとのゲーム、誰もがスウェーデンの勝利を予想していたカードでしたが、3-3の同点から延長に入り、4-3でドイツが勝ち切りました。

 このゲームは第1ピリオドにドイツチームが2点を挙げ、終始ゲームをリードしましたが、さすがのスウェーデンチームは第3ピリオドに3点を挙げて追いついたのです。
 オリンピックでも何度もメダルを獲得している強豪国の意地が感じられる展開でした。

 このゲームをドイツが勝ったころから、ドイツチームのディフェンス、「体を張ったシュート阻止」が評判になり始めました。
 ドイツチームは、相手チームのシュートを守備選手らが「自らの体に当てて・自らの体を盾にして阻止する」のです。「ゴールキーパーまでシュートを届かせない」という必死の守備ですが、これが徹底しています。

 実は、1次リーグのスウェーデン戦でも、あのスウェーデンの波状攻撃を「1失点」で抑えていました。
 ドイツチームは、自軍の守備戦術に手応えを感じていたのかもしれません。

 そして、準々決勝では「攻撃も機能」しました。
 カウンターからのゴールを量産したのです。相手チームの「一瞬の隙を突く攻撃」は、この後も格上チームを苦しめることになります。

④ 準決勝

 世界ランク1位というか、世界の、そしてオリンピックのアイスホッケーを常にリードするカナダチームが相手でした。
 さすがに、カナダが圧勝するだろうと見られていました。

 第1ピリオド、カナダの猛攻が続きましたが、ドイツは「体を張った守備」でゴールを許さず、逆に1点を取りました。
 第2ピリオド、カナダの攻勢は続きましたが、パワープレー時の攻撃他でのドイツチームの攻めが勝りました。
 このピリオドに一挙に3点を挙げたのです。
 何か「あれよあれよ」という感じがしました。カナダチームとしては「前がかり」のフォーメーションの隙を突かれたというところでしょうか。

 4-1とドイツがリードしての第3ピリオドは、「本気」のカナダの攻撃が続きましたが、これはもの凄い攻撃が続きましたが、ドイツチームは2失点に抑え切り、4-3で勝利したのです。

 試合終了のホーンが響き渡った時、ドイツチームは歓喜に包まれました。
 「有り得ないこと」が起こったのです。

 「シンプルなホッケー」を展開するカナダチームに対して、「シンプルな」体を張ったディフェンスが終始機能したゲームでした。

 オリンピック・アイスホッケー史上屈指の「番狂わせ」でしょう。

⑤ 決勝

 伝統的に、冬季オリンピックの最終日、閉会式の前に、アイスホッケー男子決勝が行われます。
 ある意味では不思議なことですが、大会最後の競技に似合っているということなのでしょうか。今大会もそうなりました。

 そしてこの試合が、ドイツチーム「大冒険のクライマックス」となりました。

 ゲーム前は、ドイツの戦法・戦術は「カナダには通じてもOAR(ロシア)には通用しないのではないか」と考えていました。「正面から個の力で押す」シンプルなカナダのアイスホッケーには、「身を挺する」ドイツのプレーで適応できるが、「高速パスを繋ぐ」ロシアのプレーには、通用しないのではないか、「身を挺した」瞬間にパスが行われ、ドイツのプレーヤーが居ない角度からロシアのシュートが飛んでくるのではないか、と考えたのです。

 世界ランク2位のロシアのアイスホッケー、伝統的な「正確な高速パス」を自在に操るホッケーの前に、ドイツは大敗を喫するのではないかと、危惧しました。

 第1ピリオド、その懸念が現実化しました。
 押し気味にゲームを進めていたOARチームが先制したのです。

 準々決勝以降「体格差」が気になっていました。スウェーデン戦でも、カナダ戦でも、ドイツチームは「ひとまわり小さい」のです。
 そして決勝のOAR戦では、一層OARチームのプレーヤーの大きさが目立ちました。

 そもそも体格面でドイツチームが相手より劣っているスポーツ競技というのは滅多に観られない、ドイツ民族は大柄なものだと感じていましたが、アイスホッケーだけは別の様でした。
 OARの赤いユニフォームがリンクを圧していました。

 そして、相変わらずの素早く強いパスと、「単独で持ち込むパワーとスピード」でドイツチームを押し続けました。

 準決勝までは「先制して相手チームの焦りを誘う」試合運びであったドイツチームが、ついに「先制を許した」のですから、ゲームはこのままOARペースで進むかと思われたのです。

 ところが、第2ピリオド、ドイツは同点に追いつきます。
 この大会で時折観られた、数少ないチャンスをものにするプレー、ある意味では「ミステリアスな攻撃」がOAR戦でも登場しました。
 「まだドイツチームは死んではいない」と示したのです。

 そして1-1の同点で迎えた第3ピリオド、ドイツチームが先行します。
 そもそも、カナダやロシアにとっては、第2ピリオドまでにドイツにリードを許すとか、1-1という最少得点で同点となった状態、というのは「想定外」の筈です。
 両チームとも「世界一の攻撃力」を誇るチームなのですから。

 従って、1-1で最終ピリオドに入った段階で「試合は既にドイツペース」なのです。

 第3ピリオドで両チームが1点ずつを取り合った後、試合時間残り3分、ドイツのヨナス・ミュラー選手が勝ち越し点を挙げました。素晴らしいシュートでした。

 ドイツ3-2でリード。
 場内は騒然としてきました。
 世界ランキング1位・カナダ、2位・ロシア、3位・スウェーデンを連破しての金メダルが、とても現実味を帯びてきたのです。

 加えて、試合時間残り2分25秒だったと思いますが(数秒違うかも知れません。違っていた場合にはご容赦ください)、OARの選手が反則を犯し、2分間の出場停止となりました。

 これでOARチームは追い込まれたのです。
 試合時間残り2分余りで、2分間ひとり少ない、というのは絶望的な状況に観えました。

 一方、このタイミングでパワープレーを得たドイツチームにとっては、金メダル獲得が眼前に迫ったのです。

 ここで、これまで「大冒険」「夢のようなツアー」を続けてきたドイツチームのプレーヤーが、現実に引き戻されたのかもしれません。
 あと2分凌げば、オリンピックチャンピオンのタイトルが手に入る、と感じた可能性があります。
 ひとり多いにも関わらず、初めて「守備的な空気」がチームに流れたのです。
 守備体形も「ひとまわり小さくなった」ように観えました。危険な兆候でした。

 一方のOARチームは、戦意を落とすどころか、一層「勝利への執念」を燃え滾らせたのです。
 ここが凄いところです。カナダと共に世界のアイスホッケーを牽引してきたロシアチームの強さというか、凄さがよく分かるプレー振りでした。

 まず、ゴールキーパーを下げました。
 ひとり少ない状況をゴール前以外は解消して見せたのです。
 ゴールはがら空きですが、「とにかく得点する以外に勝つ方法は無い」ことを、フォーメーションで示しました。

 「ショートハンドを解消するための博打」に打って出たというところでしょうか。

 それでも、フォワード・ディフェンスの人数は5対5の同数なのですが、OARチームは攻めに攻めました。気迫の差が明らかにプレーに出ていました。

 とはいえ「アイスホッケーの1点は重い」ので、そう簡単には同点にはなるまいと感じた直後、試合時間残り30秒位でしょうか、ニキータ・グセフ選手のゴールが決まりました。

 「呆然とするドイツチーム」と「歓喜に沸くOARチーム」、対照的な光景がリンクに広がりました。

 3-3の同点となっての延長は、キーパー以外が4対4と、両チームともひとりずつプレーヤーを減らしての戦いですが、こうなると、ゲーム前に予想していた「高速パスの威力」が増大しますし、ドイツとしては「身を挺するプレーヤーがひとり少ない形」ですし、「勢いの違い」も明らかですから、OARが決勝ゴールを決めるのは時間の問題だろうと観ていました。

 そして、ドイツゴール正面から、「守備プレーヤーがキーパーの前にひとりも居ないゴール正面から、強烈なシュートがドイツゴールに突き刺さりました。

 「どうだ」と言わんばかりのシュートでした。

 ドイツチームの「大冒険」は、こうして終焉を迎えました。
 決勝の残り3分まで「夢のようなツアー」を続けていたドイツが、急に現実に戻り、「勝ちを意識した時」に、終焉が始まっていたのかもしれません。

 もちろん、「絶対に諦めない」OARチームの勝利への執念、ショートハンドからキーパーを上げる戦術や、攻め続ける気迫、60分近く戦って来ての正確なプレーは、まさに感服に値します。

 惜しくも銀メダルに終わりましたけれども、平昌オリンピックの男子アイスホッケーが「ドイツチームの大会」であったことは、間違いが無いことでしょう。
 
 ドイツチームの「大冒険」は、長く語り継がれるのです。
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