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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム46] 大差と8馬身差 最強テスコガビー
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 桜花賞と優駿牝馬(オークス)、2つの牝馬限定クラシック競走における歴代最強の馬と言えば、テスコガビーをおいて他には居ないと思います。テスコガビーは、桜花賞を大差勝ち、オークスを8馬身差で圧勝したのです。両方とも逃げ切り勝ちでしたから、全く他を寄せ付けない強さを魅せました。

 テスコガビー号、父テスコボーイ、母キタノリュウ、母の父モンタヴァル、生涯成績10戦7勝、2着1回、3着1回。

 1974年・昭和49年9月のデビューを7馬身差で圧勝したテスコガビーは、次走も快勝、初重賞の京成杯3歳ステークスにもレコード勝ちし3連勝。この年の最優秀3歳牝馬(現2歳)に選出されました。

 明けて3歳、1月の京成杯で有力牡馬達に競り勝って4連勝、東京4歳ステークスに臨みました。このレースには、後に皐月賞と日本ダービーに優勝する二冠馬カブラヤオーも出走して来ました。この年の3歳牡馬・牝馬の最強馬の対決となったのです。両馬とも、圧倒的なスピードを誇る逃げ馬でしたから、どちらが逃げるのかも話題となりました。

 レースは、カブラヤオーがハナを取り、テスコガビーは2番手に控えました。直線に入り、テスコガビーが追い上げ、長い東京競馬場での叩き合いとなりました。カブラヤオーが、テスコガビーをクビ差押さえてゴール板を通過しました。
 初の敗戦を喫したテスコガビーでしたが、牡馬の世代最強馬とクビ差の勝負を展開したことから、その評価は一層高まりました。続く、桜花賞トライアルレース阪神4歳牝馬特別をレコードタイムで逃げ切って、圧倒的な1番人気(単勝1.1倍)で桜花賞に臨みました。

 本番の桜花賞でも、悠々と先頭に立ち4コーナーを回りました。そして、この直線の走りが凄まじいものでした。女馬としては大柄な490㎏近い馬体が躍動し、内ラチ一杯のコースを真っ直ぐにひたすら加速します。屋根の菅原騎手も手綱を緩めませんでしたから、その豪快なフットワークはゴールまで続き、2着馬に1.9秒差の大差勝ち。「後ろからは何にも来ない。後ろからは何にも来ない」という、関西テレビ・杉本アナウンサーの放送が有名です。

 大差というのは、10馬身以上の着差を言うのですが、このレースの大差は11馬身や12馬身差ではなく、もっと大きな差であったと思います。もちろん桜花賞史上の最大着差でしたし、走破タイムの1分34秒9はレコードでした。

 「凄いものを見せてもらった」というのが私の印象でした。

 このレースの激走が祟ったのか、続くオークストライアル4歳牝馬特別では、1着のトウホーパールから0.7秒離されての3着に敗れましたので、オークスは1番人気とはいっても単勝人気は2倍を越えていました。トライアルレースの内容もあったでしょうが、父テスコボーイの産駒には中距離馬が多かったので、2400mのオークスが長いと考えたファンも多かったのでしょう。

 そして、オークス本番。やはり逃げるテスコガビーですが、桜花賞のような鬼気迫る逃げでは無く、ゆったりと走ります。4コーナーから直線に向いて、桜花賞とは異なり、馬場の真ん中を進みました。この頃の東京競馬場の芝は、現在とは異なり高麗芝でしたし、薄く荒れて剥げていることも多かったのですが、この1975年5月18日の馬場は素晴らしいものでした。一面濃い緑色でふかふかの綺麗なターフが広がる東京競馬場直線のど真ん中を、テスコガビーは悠然と進みます。その絵の美しいこと。東京競馬場の旧の芝が史上最も美しいクラシックレースだったと思います。

 2番手の馬との差はゆっくりと確実に広がり、2着のソシアルトウショウとの差が8馬身になったところがゴールでした。4コーナーでテスコガビーが「みんな、ついておいで」と呼びかけたようなレースであったと思います。

 桜花賞の着差を仮に13馬身であったとして、オークスの8馬身と合計すると、2つのクラシックレースの着差計が20馬身を超えるという、圧倒的な強さ。
 前駆・トモともに雄大で、青毛も相俟って、牝馬とは思えない大きなシルエット・馬体を誇るテスコガビーでした。東京4歳ステークスでの牡馬代表カブラヤオーと比較しても、どちらが牡馬か分からないという感じを受けたことを憶えています。

 このことは、同世代のアメリカの名牝ラフィアンと重なります。ラフィアンは、アメリカのニューヨーク牝馬三冠を達成し、同世代牡馬のケンタッキーダービー馬フーリッシュプレジャーとのマッチレースを演じましたが、馬体ではラフィアンが圧倒していました。
 同じ1975年に日米で、テスコガビーとラフィアンという雄大な馬体を誇る2頭の女傑が生まれたのは、不思議なことです。

 テスコガビーは、その後故障治療中の1976年、心臓麻痺で急死しました。1975年に、件のマッチレースで骨折し、安楽死処分となったラフィアンを追いかけるように逝ってしまったのです。

 テスコガビーの後、メジロラモーヌ、ヒシアマゾン、エアグルーブ、ダイワスカーレット、ウオッカ、ブエナビスタ、そしてジェンティルドンナといった名牝達が中央競馬の歴史を飾ってきました。

 史上最強牝馬は?という問いには、いくつもの答えがあると思いますが、桜花賞とオークスのレース内容を観る限り、テスコガビー最強説が消えることはないでしょう。
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