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 2013年4月10日から4月14日にかけて、新潟県長岡市で第89回日本選手権水泳競技大会が開催されました。
 今夏の第15回世界水泳選手権大会(スペイン・バルセロナ)への代表選考会を兼ねた大会でしたが、この大会の会場内の雰囲気、競技内容等から、現在の日本水泳界の充実振りが存分に感じられました。

 最初に、(公財)日本水泳連盟を始めとする、日本の水泳競技の発展・強化に携わっている全ての皆さんに敬意を表したいと思います。私は、その体制の詳細は知らないのですが、この大会を観させていただき、素晴らしい体制が組まれ、稼働していると確信しました。そして、今の日本水泳は間違いなく世界トップ水準にあると思います。

 それぞれの種目で、見事な競技が展開されましたが、典型的なレースとして4月13日に行われた男子200mバタフライを採り上げます。

 この種目には、昨年のロンドンオリンピックの同種目銅メダリストの松田丈志選手(28歳)が大本命でした。松田選手は、2008年から現時点まで、男子バタフライ競技において我が国を代表するスイマーとして君臨して来ました。そして、これまでの日本水泳界であれば、オリンピックメダリストは当然に日本選手権大会で楽勝するものなのです。

 とはいえ、自身のコンディションや他の大会で何か感じるものがあったのでしょうか、松田選手は予選を5位で通過しました。体力を温存した感じです。決勝は2コースでした。

 一方、若手・伸び盛りの選手たちは、日本の大エース松田選手に挑戦する立場ですから、予選からキッチリと泳ぎ、好タイムをマークして決勝に進むものです。千葉の平井選手が4コース、愛知の安江選手が5コースを泳ぐこととなりました。松田選手への挑戦者一番手、二番手という形です。

 レースが始まりました。世界大会では、マイケル・フェルプスらを相手に後半勝負に持ち込む松田選手が、このレースでは先行しました。150mを1分25秒01でクリアし、二番手スイマーに0.3秒近い差を付けました。
 ラスト50mの強さに定評がある松田選手ですから、これで快勝というところですが、私には、その泳ぎに全く余裕が感じられませんでした。

 「抜かれるかもしれないな」と思った瞬間、1コースの小堀勇氣選手(19歳、千葉)がグイっと出ました。そして、6コースの瀬戸大也選手(18歳、埼玉)も追い上げます。
 小堀選手が1分55秒51でゴールして1着、2着は瀬戸選手、松田選手は3着でした。

 私が、このレースを凄いと感じた理由は

① 実力十分のベテランと伸び盛りの若手が、同じレースで激戦を繰り広げたこと。両者には10歳前後の年齢差がありましたが、両者とも堂々と互角の勝負を展開しました。各世代における強化策が見事に実っています。

② 若い小堀・瀬戸の両スイマーも、決勝に向けて体力を温存したのか、1と6レーンという「良くはないコース」を泳いでいます。この若さにして、試合経験十分という感じがします。ちなみに、瀬戸選手には、このレースの30分後に、200m個人メドレーの決勝が控えていました。

③ 小堀選手は千葉、瀬戸選手は埼玉の所属です。特定の学校・スイミングクラブの選手だけが強いのではなく、日本中様々な地域・組織で、着々と強化が進められていることを感じさせました。

 いかに、オリンピックの翌年で松田選手のコンディションが今一つだったとしても、二人の若手選手が、世界トップクラスのベテランスイマーに完勝したことは、日本競泳界のこの種目のレベルの高さ、層の厚さを如実に示しています。松田選手も、このまま引き下がるとは到底思えませんので、ベテラン・若手が切磋琢磨して、一層の底上げが図られることでしょう。
 凄いことです。

 21世紀に入ってからの日本水泳の強さには、目を見張るものがあり、昨年のロンドンオリンピックでも沢山のメダルを獲得しました。それも、北島浩介のような特定のエースに頼っての成績では無く、広範な種目で好成績を連発したのです。こうした、日本水泳の要因は、何なのでしょうか。

 「5~6歳くらいの時から、沢山の子供が水泳に親しんでいるからなのか」と、ある水泳競技経験者に尋ねたことがあります。すると彼は「いや、少なくとも1970年頃、今から40年位前から、スイミングスクールは子供で一杯だったよ」とコメントしました。

 そうすると、日本水泳全体がメキメキと力を付け、世界に伍して戦えるようになったのは21世紀に入ってからですから、必ずしも競技人口の増加・底辺の広がりのみが、この活況の要因ではないことになります。

 おそらく、学制に沿っていえば、小学生未満、小学生低学年、小学生高学年、中学生、高校生、大学生といった各世代で、それぞれに効果的なトレーニングが施され、各世代の指導者間の情報交換も積極的に行われ、そのことが全国展開されている、ということなのだろうと考えています。

 そして、前述のような体制を創ることは、容易なことでは無く、一朝一夕にはいかないものだとも思います。このことを実現し、年々充実させてきた日本水泳関係者の皆さんは、本当に素晴らしいと思いますし、私達にこのように素晴らしい競技会を提供していただけることに、心から感謝申し上げる次第です。

 レース前の選手紹介で名前を呼ばれた時の各選手のにこやかで真剣な眼差し、競技終了後の態度(勝って大騒ぎするわけでもなく、負けて大嘆き?するわけでもない)、競技会場の観客席で、先輩・後輩と思しき若手スイマーが競技を観ながら熱心に語り合う姿、同僚に対する明るく懸命な応援、などなど、新潟・長岡の大会会場で見られる様々な光景が、日本水泳界の隆盛の雰囲気を醸し出しています。

 この日本水泳界の運営体制・取組方法は、我が国における、各競技スポーツ、ひいては健康増進や趣味としてのスポーツをも含めた全体としての各スポーツの展開・運営・強化の、ひとつの手本とすべきものだろうと思います。
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