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HOME   »   サッカー  »  [ワールドカップ2018-71] サッカーは進歩しているのか、変化しているのか。
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 21世紀になってからは、ワールドカップが近づくと、過去の「名勝負」がテレビ放送されることが多くなりました。
 今大会も、NHK-BS放送などで、懐かしいゲームの映像がいくつも採り上げられました。

 こうした放送を観ると「現在に比べると・・・」という言葉が頻繁に、解説者やアナウンサーから出てきます。
 どんな分野においても、「回顧」となれば現代との比較が行われることは自然なことなのでしょうが、気になるのは、「古いサッカー」「時代遅れのサッカー」といったニュアンスが、感じられるコメントです。

 あたかも、「現在のサッカーの方が、過去のサッカーより優れている」、あるいは「サッカーが明確に進化している」、かのようなコメントなのです。
 こうしたコメントを耳にすると、いつも違和感があります。

 例えば、「こうやってドリブルでずーっと前進できる」と、ドリブル前進するプレーヤーを、中盤で放置するサッカーが古い、といったニュアンスです。

 私は、サッカー競技は20世紀に比べて「変化」してきているとは思いますが、必ずしも「進化」しているとは感じません。
 レギュレーションの変更に伴い、サッカー自体が変化していると考えています。

 レギュレーション変更の中で、サッカー競技に最も大きな影響を与えていると考える項目は「ボールの変更」でしょう。

 20世紀に比べて21世紀のボールは、明らかに「軽く」なりました。
 悪い言い方をすれば「小手先で操作できる重量」になったのです。
 そして、「皮」から「プラスティック」に素材も変わりましたから、雨が降っても濡れて水が沁みこむことが無くなり、重くならなくなったのです。
 現象面で観れば、サッカーボールは以前に比べて、良く飛ぶようになり、10m位の距離なら、軽くタッチするだけで飛ばすことが出来るようになりました。

 そして、サッカーの戦法は「ボール重量の変更に伴い」変化してきました。

 「蹴り方」によって、ボールの軌道に様々な変化を付けることが「容易になり」ました。
 かつては、ボールを30m以上速く飛ばすためには「相応の筋力」が必要であり、誰でも出来る技では無かったものが、相当簡単に出来るようになり、多くのプレーヤーにそうしたプレーが可能になったのですから、プレーにも大きな影響を与えたことは、自然なことです。

 限られたプレーヤーにしかできなかったことが、多くのプレーヤーに可能になるというのは、当該競技に劇的な変化を齎すのです。

 10m前後の「強いパス」も、20世紀においては、キチンと踏み込んで蹴らなければできなかったものが、現在では、短いストローク、面を作って軽く当てるだけで可能になっていますから、ダイレクトパスプレーは相当容易になっているのでしょう。

 こうした「ボールの変更」が、プレーの「大変化」に繋がっていると考えています。

 20世紀の名手達、ペレ選手やベッケンバウアー選手、ギュンター・ネッツァー選手や、ボビー・チャールトン選手、エウゼビオ選手らは、その「強靭な筋力」や突出した技術を持って、重いボールを正確に遠くに蹴ることが出来ました。ネッツァー選手などは、そのボールを「大きく曲げて」遠くに正確に運ぶことが出来たのです。

 そうしたプレーヤー達が、現在の軽いボールに接した時、どのようなプレーを魅せてくれるのかは、とても興味深いところでしょう。

 ボールの変更に「オフサイドルールの変更=攻撃側に有利な変更」等が相まって、「コンパクトなサッカー」、ピッチ上20m位の範囲に全20プレーヤーが入ってしまうといったプレーが求められるようになり、ゴール前の細かいパス回し、ワンタッチやヒールパスといったプレーが多用されるようになり、目の前のディフェンダーDFをふわりと超えるパスやシュートも、数多く観られるようになりました。

 かつては滅多に観られなかった、オーバーヘッドシュートによるゴール(生涯1000ゴール以上を挙げているペレ選手にして、オーバーヘッドキックによるゴールは1本だけです)が、現在では時折観られるようになった(2018年だけでもクリスティアーノ・ロナウド選手とガレス・ベイル選手のゴールが思い出されます)のは、軽いボールの貢献も大きな要素なのでしょう。(もちろん、さすがにオーバーヘッドシュートは、21世紀においても超一流選手のプレーでしか観られませんから、こうした選手の技術の高さを示していることは間違いありませんが・・・)
 「軸足を地面に着いていない」オーバーヘッドシュートは、ボールに推進力を与えるのがとても難しいので、重いボールでゴールまで、相応のスピードで相応の距離を飛ばすのは、至難の技だったのです。

 もちろん、前述の「20世紀の名手達」は、あの時代の重いボールでも、現代と同様のプレーを行うことが出来ました。
 1958年ワールドカップ・スウェーデン大会の決勝で、17歳のペレ選手が魅せた、パスを受け、DFをふわりと浮かせたボールで交わし、落ちてくるボールをダイレクトシューで叩き込んだプレー、パスを受けてからシュートまで、一時もボールを地面に付けなかったプレーは、長いワールドカップの歴史の上でも、ゴール前で観られた最も華麗なテクニックのひとつでした。
 まるで21世紀の軽いボールで行っているかのようなプレーだったのです。

 要すれば、かつてはワールドカップ出場クラスの選手の「100人にひとり」しか出来なかったプレーが、現在では「5人にひとり」位のプレーヤーが出来るようになったという感じ、そして、それに伴って戦法・戦術が大きく「変化」してきたということ、なのであろうと思います。
 決して「進化」ではないと考えています。

 このことについては、色々なご意見があると思いますが・・・。

 他の競技で観てみましょう。

 例えば、陸上競技の100m競走。
 東京オリンピック1964までは、アンツーカという「土」の走路でした。錐のように先の尖った18mm位の長いスパイクを付けたシューズを履いて、走っていたのです。
 
 それが、1968年のメキシコシティ・オリンピックでは「タータントラック」と呼ばれたオールウェザー型の走路に代わりました。分かり易く言えば「ゴム素材」のような走路です。

 アンツーカ走路であれば、スパイクにより地面が掘られ、土が後ろに飛んでいたのですが、オールウェザー走路では、地面が後ろに飛ぶことは無くなったのです。
 シューズのスパイクも、短いものとなり、形状も変わりました。

 大袈裟に言えば「違う競技」になったのでしょう。
 そして、土が飛ぶことにより「失われていたエネルギー」が走りに、前進力に利用できるようになり、タイムが向上しました。(ある意味では、当然のことです)
 メキシコシティ・オリンピック100m男子決勝で「10秒の壁」を破った人類は、その後21世紀に入って9秒58までタイムを伸ばしてきたのです。

 さて、これを「進化」と見るのでしょうか。

 東京オリンピック1964の男子100m金メダリスト、ボブ・ヘイズ選手と、現代のウサイン・ボルト選手は、どちらが強く速いのでしょうか。
 ヘイズ選手がオールウェザー走路様にトレーニングを積んで走った時、どれ位のタイムが出るのでしょうか。
 逆に、ボルト選手がアンツーカで走ったら、どれ位のタイムが出るのでしょうか。

 これは「比較のしようが無い」競い合いです。意味が無い比較なのかもしれません。
 やはり、アンツーカ走路とオールウェザー走路の100m競走は「別のもの」と見るのが、妥当だと思います。
 適応する走り方も異なりますし、必要な筋肉の部位や使い方も異なるのは、自然なことです。
 100m競走は「変化」してきたのでしょう。

 ワールドカップ1974西ドイツ大会の優勝チーム・西ドイツと2010年南アフリカ大会の優勝チーム・スペインが戦ったら、どちらが強いのだろう・・・。

 ベッケンバウアー選手、ゲルト・ミュラー選手、オフェラート選手、ベルディ・フォクツ選手、ゼップ・マイアー選手らを擁する西ドイツチームと、シャビ選手、イニエスタ選手、セルヒオ・ラモス選手、カシージャス選手らを擁するスペインチームです。
 それぞれの時代を代表する、素晴らしい、本当に素晴らしいチーム同士の戦いとなります。

 目の覚めるようなパスワークから、西ドイツチームにボールを渡さないスペインチームに対して、自軍ゴール前でボールを奪ったスイーパーというかリベロのベッケンバウアー選手がゆっくりとドリブルで前進を始めると、スペインチームのプレーヤーがボールを奪いに高い位置から襲い掛かります。

 しかし、ベッケンバウアー選手は容易にはボールを失うことなくプレーを続け、右足で素晴らしいパスをオフェラート選手に送ります。
 オフェラート選手のドリブルが始まり、ボールはセンターラインを越えて進むのです。

 想像するだけでもエキサイティングなゲームでしょう。

 ワールドカップ1970メキシコ大会の優勝チーム・ブラジルと2014年ブラジル大会の優勝チーム・ドイツが戦ったら、どちらのチームが勝つのでしょうか。

 ペレ選手、ジャイルジーニョ選手、トスタン選手、リベリーノ選手、カルロス・アルベルト選手らを擁するブラジルチームと、エジル選手、サミ・ケディラ選手、クローゼ選手、シュバインシュタイガー選手、ポドルスキー選手、トニ・クロース選手、ノイアー選手らが居るドイツチームの戦いです。

 トスタン→ペレ→ジャイルジーニョと繋いでドイツゴールに迫るブラジルチームに対して、エジル→シュバインシュタイガー→トーマス・ミュラー→ケディラといった自在な攻めを魅せるドイツチームの戦いは、長短のパスとドリブルを織り交ぜた、華麗なゲームに成りそうです。

 サッカーファンなら誰もが「夢の試合」を空想すると思います。
 サッカーの楽しみ方のひとつでもあるのでしょう。

 もし「サッカーが時代と共に進化してきた」とするなら、前述の2ゲームは、2010年のスペインチームと2014年のドイツチームが勝つことになります。40年前後の時間をかけての進化はとても大きなものである筈ですから、圧勝すると見るのが普通でしょう。

 しかし、私には1970年のブラジルチームや1974年の西ドイツチームが、簡単に敗れるとは到底思えないのです。
 もちろん、この2チームが簡単に勝つとは思われないのですが、接戦になることは間違いないと考えますし、最期はペレ選手やベッケンバウアー選手がその決定力を示すのではないかと感じます。
 これは「思い出の方が美しく見える」という現象の一種なのかもしれませんので慎重に取り扱わなければならないのですが、少なくとも「互角の戦い」になることは間違いないでしょう。

 2018年のロシア大会は、20世紀後半のサッカーを髣髴とさせるゲームが続いたように観えました。
 もちろん、軽いボールやオフサイドルールの違いが有るので、あの頃と同じとはいかないのですけれども、30mを優に超える長いパスや、10m以上のドリブル突破が、ゲームの中に数多く散りばめられていました。
 「コンパクトなサッカー」も少なかったと思います。前線とバックスの間には、大きな距離があった試合が多かったのです。

 また、イビチャ・オシム氏に代表される意見として「ティキタカ時代の終焉」も叫ばれました。「ティキタカは時間の無駄」というオシム氏の意見は、やや過激なのかもしれませんが、得点を挙げることが目的であるサッカー競技における「ティキタカの効果」、他の戦術と比較しての「効果」に大きな疑問が提示されたことは、興味深いところです。
 少なくとも「ポゼッションが試合の勝敗とは無関係」であることは、多くの試合で証明されました。

 1970年のブラジルチームから2018年のフランスチームまで、サッカーはレギュレーションの変化に伴って、様々に「変化」し、再び、良く似た戦術・戦法が多用されるようになったのかもしれません。

 「温故知新」ではないのですが、サッカー競技は「変化」を続けているのでしょう。
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