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[1月12日・秩父宮ラグビー場]
明治大学22-17天理大学

 第55回全国大学ラグビーフットボール選手権・決勝が行われ、明治大学チームが天理大学チームとの接戦を制して優勝を飾りました。
 大学ラグビーの名門・明治大学チームとしても22年振りの優勝です。
 21世紀に入って初めての優勝ですから、名門「復活」と呼んでも良いのでしょう。

① ラインアウトでの優位

 このゲームは明大チームが押し気味に進めましたが、その最大の要因はラインアウトプレーでの優位でしょう。
 明大チームは自らのラインアウトは、ほぼ全て確保し、相手・天理大チームのラインアウトプレーの半数以上は獲得していたと思います。

 ご承知の通り、ラインアウトプレーでは、並んでいる選手のどの選手にボールを投げるかは、投げる側のチームにしか分かりませんから、そのボールを受け取ることについては、投げる側のチームが圧倒的に有利です。
 増してや「リフティング」が反則にならなくなって久しいので、ますますその有利さが拡大している印象でした。投げ手と受け手のタイミングが多少ズレても、受け手はリフティングのお蔭で長く空中に居ることができますし、自らのジャンプ力以上の高さまで上がることが出来ますから、投げ込まれる場所が分からない相手チームが、このボールを獲得するのは、20世紀以上に難しいものとなってきたのです。

 ところが、このゲームの明大チームは、天理大チームのラインアウトを良く読み、投げ込まれる選手を予測すると共に、天理大チームとほぼ同じタイミングでリフティングを行っていましたから、「敵ボールの奪取」に見事に成功していました。

 ラインアウトで相手ボールを取るには、相手チームのプレーを再三観て研究することが大事なことは言うまでも有りませんが、それ以上に「伝統の戦法」が駆使されていたように感じます。20世紀において、早稲田大学チームとの激闘などにおいても、明大チームは良く相手ボールのラインアウトでボールを奪取していました。
 「伝統の技」と呼んでも良さそうな、明大のプレーでした。

 天理大チームとしては、自陣から相手陣に蹴り込みタッチを切って地域を取ったとしても、相手ボールラインアウトを取ることがほぼ不可能であり、また、敵陣でペナルティーを得、タッチキックを蹴ることが出来るようになったとしても、敵ゴール前数メートルの地点のマイボール・ラインアウトプレーで、5割以上の確率で相手に奪取されてしまう、あるいは「自分達が狙う戦法にマッチした形で綺麗にボールを確保する」ことが出来ないとすれば、ラインアウトを選択し難くなってしまいます。天理大チームの「攻撃のバリエーション」が大きく制約されることとなりました。

② 伝統の「高い守り」

 相手チームがバックスにボールを展開した際に、明大チームのディフェンスは、凄く速いタイミングで相手プレーヤーにコンタクトします。

 これは「明治伝統の高い守り」と称されるプレーです。
 20世紀の早明戦などでは、この「高い守り」が随所で観られました。

 守備側のバックスプレーヤーが、深く・低い位置からトイメン他のプレーヤーに仕掛けるのではなく、最初から前の位置に居て、トイメンのプレーヤーがパスを受けた瞬間にタックルするというプレーは、一方で、相手プレーヤーに交わされてしまえば、がら空きの「自らの後方」を一気に走られて、大きな前進を許すリスクが有りますし、加えて「オフサイド」の反則を取られる怖れもあるプレーです。

 実際、20世紀の早明戦などでは、度々オフサイドを取られていました。

 当たり前のことで恐縮ですが、スポーツにおけるどんなプレーでも長所と短所があるのです。(もし、長所のみのプレーや、長所が短所を大きく上回るプレーが有れば、どのチームも直ぐに採用することになります)

 一長一短がある中で、守備において明大チームは「高い守り」を伝統的に使用しているのです。「相手プレーヤーの体制が整う前に」仕掛ける、あるいは「相手プレーヤーが『縦に』加速する前に」仕掛けることの効果を戦法上重視しているということなのであろうと思いますが、このゲームでもこの「高い守り」が随所に披露されました。
 天理大チームの展開プレーに対して、相当の威力を発揮したことは間違いありません。

 21世紀になって、「明治ラグビー」にも多くの変化が観られるのですが、伝統のプレーも活きているということなのでしょう。

③ 「目が覚めるのが遅かった」?天理大学チーム

 試合開始直後、最初の攻撃プレーで天理大チームはトライを挙げました。
 このトライによって天理大フィフティーンは「行ける。帝京戦と同じように戦える」と感じてしまった可能性が有ります。圧倒的にボールを支配し、自在の攻めを展開できると考えたのでしょう。

 ところが、各局面における明大チームの速い仕掛けの前に自分達のプレーが出来ず、ボール支配率も互角か、やや明治が上という展開となりましたから、天理の選手達は「?」と感じている内に、次々と得点を許してしまい、後半も半ばを過ぎた時点で「22-5」という大差を付けられてしまっていたのです。

 ここで、天理大学チームは「目が覚めた」ように観えました。(明大チームの選手達が疲労に伴って僅かにプレーの精度・威力を落としたことも、もちろん有るのでしょうが)
 この後、怒涛の攻めを魅せて2トライ・1ゴールを挙げたのです。

 もともと「個の力」では互角の両チームですから、もう少し早く「目が覚めて」いれば、試合の結果は異なるものになっていたかもしれません。

 逆に言えば、明治大学チームがとても上手に試合を進めたということになります。相手チームが眠っている内に得点を重ねたのです。
 ここにも、伝統校チームの「試合運びのノウハウ」を感じます。

 「縦の明治」と称される、「前に前に直線的に攻める」明治ラグビーは、その試合振りからも多くのファンに支持されてきました。
 かつて「重戦車フォワード」と呼ばれた「大きくて重いプレーヤー」を主体としたチームは、20世紀の大学ラグビー界において、「横の早稲田」と比較される、一方の雄だったのです。

 その明治ラグビーが、大学ラグビー界全般のプレーヤー大型化に連れて、その優位性を失い、なかなか勝てなくなって久しかったのですが、昨年に続く2年連続の大学選手権決勝進出に象徴されるように、「復活」に向けて着実な歩みを続けています。

 この試合、秩父宮ラグビー場は立錐の余地も無い程に「超満員」でした。
 観客同士が肩をぶつけ合い、遠目には座席の位置も良く分からず、立ち見客も大勢いるという「大入り満員」は、ラグビー界はもちろんとして、野球やサッカーを含めた全ての競技を通じても、久し振りの事の様に感じられます。

 押し合いへし合いのスポーツ観戦は「20世紀半ば・1970年頃までの現象」と思っていましたが、「そんなことはない」ことを、このゲームは示してくれました。
 当たり前のことを書き恐縮ですが、「見たい人が多く、入場制限を行わなければ」観客席は超満員になるのです。

 良い試合でした。
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