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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム57] 第42回日本ダービー カブラヤオーの光速の逃げ
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 1975年・昭和50年5月25日、府中・東京競馬場、第42回日本ダービーは、カブラヤオーの光速の逃げで始まりました。前半の1000mを58秒6という、有り得ないタイムで通過します。

 「有り得ない」というのは、カブラヤオーが1番人気の本命馬で、このレースを勝たなければならない馬という意味で「有り得ない」のです。いつもの日本ダービーなら61秒前後で通過する1000mを58秒台なのですから。多くのファンの期待を背負っているカブラヤオーが、このようなハイペースで逃げなければならなかったのには、理由があります。

 現在のフルゲートが18頭である日本ダービーですが、この頃は28頭だったのです。日本ダービーに持ち馬を出走させることは、昔も今も馬主にとっては「夢」です。そして、そのレースで一度でも名前を呼ばれたいと考えるのも無理のないことで、この頃の(多頭数の)日本ダービーでは「テレビ馬」と呼ばれる、ペースを無視して無理やり逃げる馬が時々現れました。

 この年も、トップジローがテレビ馬を目指して、スタート直後からハイペースで飛ばしたのです。しかし、カブラヤオーの凄いというか怖ろしいところは、このテレビ馬をも押さえ込んで先頭に立ってしまうところです。そして、2400mの日本ダービーでは「有り得ない」、1000m58秒6というラップを叩き出したのです。

 そもそも、カブラヤオーは中山競馬場2000mの皐月賞でも、1000mを58秒9という短距離戦並みのハイペースで飛ばし、逃げ切って優勝しています。この皐月賞の時も「有り得ない」ペースと言われたのです。それより400m長い、そして最後の直線が中山より200mも長く、逃げ馬には不利といわれる府中で、皐月賞を上回るペースで逃げたのです。

 誰もが「さすがにこれでは持たない」と思いました。私も、こんな酷いペースで逃げるとは、菅原は下手くそな騎手だと思いました。(失礼しました)

 さて4角を先頭で回ったカブラヤオーは、最後の直線で苦しがって、右に左に寄れながら走ります。あのハイペースですから当然です。後ろから、ロングファスト、ハーバーヤングらが追い上げてきます。
 よれよれのカブラヤオーが抜かれるのも時間の問題と観えましたが、2馬身以内に追い付かれてから、カブラヤオーは粘りました。残り100mから、その差は詰まることが無く、逃げ切ったのです。

 驚異的な逃げ切り勝ちとして、後世に語り継がれるカブラヤオーの日本ダービー優勝でした。競馬評論家の井崎修五郎氏は、史上最強馬はという問いに対して「ひとつのレースだけを観れば、日本ダービーの時のカブラヤオー」と再三コメントしています。
 現在に至るまで、これだけの前半ハイペースで日本ダービーを逃げ切った馬は居ません。空前絶後の逃げ切りでした。

 カブラヤオー号、父ファラモンド、母カブラヤ、生涯成績13戦11勝、2着1回(新馬戦)。カブラヤオーは、血統が良いとはいえず、毛艶も悪く見た目も決して良いとはいえない馬でしたから、なかなか買い手が付かず、結局生産者が保有してレースに出ていました。

 春の2冠から、3冠馬を目指してトレーニング中に屈腱炎を発症し、秋の菊花賞には出走できませんでした。屈腱炎の原因として、蹄鉄の打ち損ねが指摘されました。いったい、皐月賞・日本ダービーの2冠馬に対して、蹄鉄の打ち損ねなどということが有り得るのだろうか、「安い馬が3冠馬などになってしまっては、生産者や競馬界全体に悪影響を及ぼす」と考えた競馬関係者が、ワザと打ち損ねて故障させたのではないか、などという風評が起こりました。
 同世代の他の馬達との力の差が圧倒的であり、血統的に観ても、出走してくれば菊花賞も間違いなく優勝できたであろうというファンの思いが、こうした風評を生んだのでしょう。

 「狂気の逃げ馬」などという、有り難くない異名をもつカブラヤオーですが、その表情は、常に優しいものでした。
 日本ダービー史上に燦然と輝くカブラヤオーの走り。いつまでも、語り継がれていくことでしょう。
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