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HOME   »   駅伝・マラソン  »  [MGC2019・男子] 中村匠吾選手 見事な走りで優勝
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 東京オリンピック2020のマラソン代表を決める大一番、マラソングランドチャンピオンシップ大会・男子の部は、9月15日・午前8時51分に、東京・神宮外苑・絵画館前をスタートしました。

 30選手が出場しましたが、レースはいきなり動きました。
 設楽啓太選手が飛び出したのです。

 こうした大事なレースでは「牽制しあって」、しばらくの間は「集団で走る」のではないかという予想が多かったと思いますが、設楽選手はスタート直後からリードを奪う戦術を採ったのです。

 設楽選手と2番手クループとの差は、見る見る広がりました。
 10m、20m、設楽選手は1kmを約3分で通過しましたが、その時には既に後続に100m位の差を付けていました。

 このレースは、1位と2位がオリンピック出場内定ですから、「設楽選手が行ってしまうようなら、行かせる。無理には追いかけない」という作戦を口にする、各チームのコーチが多かったと報じられていました。
 ひとつの考え方であろうと思いますが、それにしても、あまりにも差が開き過ぎているのではないかと感じました。

 「30km地点では勝負はついている」とコメントしていた設楽選手の狙い通りの展開に観えました。
 設楽選手は「1km・3分」のペースを堅持しているのに対して、2番手グループは「1km・3分10秒」ペースですから、1km走るごとに10秒ずつ差が開く形となって、一時は2分以上・600m以上の大差となりました。
 設楽選手の大独走となったのです。

 もはや「1位は設楽選手。2位・3位を残りのランナーで争うレース」になったように観えましたし、ペースメーカーの居ないレースの難しさ、面白さが、存分に観られたのです。

 加えて、「1km・3分」というペースは、現在の男子マラソンとしては決して速過ぎるものではなく、世界大会であれば普通のペースですし、ましてや、スタートからしばらくは下りのコースですので無理のないペースに感じられました。設楽選手の作戦は見事に功を奏したように観えたのです。

 しかし実際には、「9月中旬の東京の気候」が設楽選手にダメージを与えていたのです。

 設楽選手は10kmを29分50秒で通過しました。
 2位グループの選手達が大汗をかいている中で、大袈裟に言えば「汗ひとつかかず、スイスイと走っている」様子でした。

 その設楽選手の快ペースが少し遅くなったのは12km付近からでしょうか。
 1km・3分5秒となったのです。
 しかし、走りには大きな変化は有りませんでした。

 12kmを過ぎて、2位グループにも細かい動きが出始めました。色々な選手が小さなスパートを見せ、他の選手が追い付くという動きが観られるようになったのです。
 とはいえ、レース全体の展開に大きな影響を及ぼすものとはなりませんでした。

 設楽選手は15kmを44分59秒で通過しました。
 ペースが落ちたと言っても「1km・3分」を堅持したのです。

 この設楽選手の走りに、最初の変調が観られたのは、16km過ぎでした。
 右半身の動きが良くなくなり、走りのバランスが崩れたのです。
 疲れが出るのが少し早いと感じました。

 2位グループにも変化が生じました。
 17km付近で鈴木健吾選手がベースアップし、これに大迫傑選手、服部勇馬選手、中村匠吾選手が付いて行って、4選手による2位グルーブが構成されたのです。
 2位・3位争いは、この4名を中心に行われるように観えました。

 設楽選手は20kmを1時間4秒で通過しました。
 ペースダウンしたとはいえ、やはり1km・3分のペースを守っているように観えました。
 また、20kmを過ぎて、設楽選手の走りのバランスが戻ったように観えました。少し走りが小さくなったものの、左右のバランが良くなったのです。

 2位グループでは、鈴木選手が何度も仕掛けました。
 抜け出そうとしますが、服部選手や大迫選手がこれを許しませんでした。
 自然に、2位グループのペースが上り、20kmは1時間2分丁度で通過しました。
 一時は2分以上有った設楽選手との差が1分56秒に詰まったのです。

 芝公園の折返し地点では、2位グループのペースが落ち、後方集団から追い上げる選手が出始めました。まず、藤本拓選手が取りついたのです。
 24.5km付近で、大塚祥平選手と橋本崚選手が2位グループに追い付き、2位グループは計7名となりました。

 25km付近から、先頭の設楽選手の走りが明らかに小さくなりました。ペースも1km・3分10秒に落ちました。「脚に来ている」印象でした。

 2位グループでは橋本選手が仕掛けて、ペースが上がりました。
 28km付近では、設楽選手との差が1分30秒に縮まりました。
 設楽選手のペースダウンが大きかったので、差が見る見る詰まる形となったのです。
 前半10kmまでとは、全く異なる様相となりました。

 30km、設楽選手と2位グループとの差は1分17秒に詰まりました。

 設楽選手のペースは1km・3分15秒以上かかるようになりましたので、差が一気に詰まりました。

 32.8km、皇居前の折返し点では56秒差となり、2位グループから設楽選手が良く観えるようになりました。
 34km付近では40秒差となり、2位グループが設楽選手を吸収するのは、時間の問題でした。

 中本健太郎選手、竹ノ内佳樹選手を加えた、9名の2位グループは、猛然と設楽選手に迫りました。

 36.5km・飯田橋付近を過ぎて、レースの山場、「きつい登り」が始まりました。

 そして37km付近で、ついに設楽選手は2位グループに追い付かれたのです。
 このレースの形を決め、敢然と先行した設楽啓太選手のMGC2019が終了した瞬間でした。
 設楽選手の作戦は、このレースでは実りませんでしたけれども、外連味の無い走りは「世界に挑む日本マラソン」に必要な走りであったと思いますし、将来MGC2019男子を語る時、その主役のひとりであることは、言うまでも無いことでしょう。「レースの景色を決めた素晴らしいチャレンジ」でした。

 さて、先頭に立ったグループ、ここからは先頭集団ということになりますが、においては、各選手による小さなスパートが繰り返されました。竹ノ内選手や橋本選手が抜け出そうとしてトライを続けたのです。
 しかし、これらには他の選手も付いて行きました。
 
 39km付近で橋本選手が再びスパートし、これに中村選手が付いて行き、服部選手、大迫選手も続きました。先頭グループのペースが上がったのです。

 そして40km、中村選手がスパートしました。これまで何度か行われた各選手のスパートとは次元の違う、「勝負をかけたスパート」でした。ここまで「脚を温存していた」のでしょう、素晴らしい走りでした。

 このスパートを追いかけることが出来たのは、大迫選手と服部選手だけでした。
 レースは3選手の争いに絞られたのです。

 先頭を行く中村選手を、大迫選手が猛然と追い上げます。
 登りが続く後半のコースですが、40kmを過ぎると一時的に下りのエリアがあるのです。
 その下りを利しての大迫選手の走り、ストライドの大きな走りは素晴らしいものでしたが、この凄い追い上げに対して、中村選手も一歩も引かず、凄まじい競り合いが続きました。

 そして、この競り合いは中村選手が制したのです。
 
 この競り合いを3番手の位置からじっくりと観ていた服部選手が、残り500mで大迫選手を捉えました。大迫選手としては、あのスパートで中村選手を追い抜けなかったことが、惜しまれるところでしょう。

[MGC2019・男子]
1位 中村匠吾選手 2時間11分28秒
2位 服部勇馬選手 2時間11分36秒
3位 大迫傑選手 2時間11分41秒

 稀に見る大接戦でした。
 
 37km付近からの残り5km、40kmからの残り2kmの戦は、後世に語り継がれるものでしょう。「伝説」になることは間違いありません。

 1・2位の中村選手と服部選手は、東京オリンピック2020出場に「内定」しました。
 2位となった服部選手は、「2位以内を確保するために、最も確率の高い戦術を駆使」したように観えました。このレースの意味・目的をしっかりと把握したうえで、とても冷静・沈着な判断を局面局面で下し、実行したのです。もちろん、余力が有ることが前提となる作戦ですから、フィジカル面でも十分にレースに対応できていたということになります。地力十分ということでしょう。
 3位の大迫選手は、冬季の3レースで、自身の持つ「2時間5分50秒」を破る=2時間5分49秒より速く走る選手が登場しない限り、東京オリンピック2020に出場することとなります。
 「MGCの3位以内」は、とても重い成績なのです。

 2位グループに居た時、そして、先頭に立った時、このレースを通じて、常に「真っ直ぐに前を見つめていた」中村選手の表情が、とても印象的でした。

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