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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム6] 神戸新聞杯とトウショウボーイ
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 神戸新聞杯は、1953年(昭和28年)に3歳馬のハンデ戦重賞「神戸杯」として始まりました。阪神競馬場2000mのレースでした。1972年に神戸新聞社から寄贈杯を受けて「神戸新聞杯」となり、1954年以降1600mや1800m、時には1900mという珍しい距離で行われてきたレースも、これで2000mに固定されました。前年1971年から斤量も定量とされましたので、春の3歳路線で活躍した馬たちの秋初戦として好適なレースとなったわけです。

 このころは、神戸新聞杯→京都新聞杯→菊花賞というルートが、菊花賞に臨む3歳強豪馬のステップとされていましたが、実際には中3週ずつで、この厳しい3レースを全て使いクラシックレースである菊花賞を勝ち抜くのは、体力面・体調維持面から容易なことではありませんでしたので、京都新聞杯か神戸新聞杯のどちらかを使って本番(菊花賞)へというローテーションを取る馬が多かったように思います。

 1995年には、関東のセントライト記念と共に「菊花賞」のトライアルレース(3着以内は優先出走権付与)となり、2007年からは距離が2400mに延ばされました。3000mの菊花賞をより意識した形です。
 しかし、こうした変更より大きな影響を与えたのが、京都新聞杯の開催時期を春(5月)に移動したことで、2000年に実施されました。このことで、神戸新聞杯は名実ともに菊花賞や天皇賞(秋)といったJRA秋の大レースに臨む3歳馬のための関西圏のステップレースとなったのです。

 2000年以降、神戸新聞杯の勝ち馬で菊花賞を制した馬は、ディープインパクトとオルフェーブルの三冠馬2頭だけですが、このレースに出走し勝ちはしなかったが、本番の菊花賞は勝った馬となると、エアシャカール(神戸新聞杯3着)、ヒシミラクル(同6着)、ザッツザプレンディ(同5着)、ソングオブサウンド(同3着)、アサクサキングス(同2着)、オウケンブルースリ(同3着)、ビッグウィーク(同3着)と7頭もいて、三冠馬2頭と合わせ、12年間で9頭の馬が、神戸新聞杯をステップレースとして菊花賞を制したことになります。

 菊花賞に勝つには、神戸新聞杯で勝つ必要はなく、神戸新聞杯で調子を上げて菊花賞でピークに持って行くと良い、ということになります。

 こうした歴史と伝統を誇るレースですから、優勝馬も多士彩々、想い出深い馬ばかりです。
 1972年タイテエム、1974年キタノカチドキ、1982年ハギノカムイオー、1989年オサイチジョージ、1993年ビワハヤヒデ、1997年マチカネフクキタル、2002年シンボリクリスエス、2003年ゼンノロブロイ、2004年キングカメハメハ、等々綺羅星の如くですが、「この一頭」と言えばトウショウボーイを挙げたいと思います。

 トウショウボーイは1976年の優勝馬。距離が2000mの神戸新聞杯で、1分58秒9という「驚異的なレコードタイム」で圧勝しました。このタイムは、まさに驚くべき水準で、競馬放送で有名な杉本アナウンサーが「恐ろしい記録です。恐ろしい記録です。」を連呼していたことが印象的でした。

 レース自体も、4角先頭から2着クライムカイザー(日本ダービー馬)に5馬身差をつけての圧勝でしたが、掲示板を見てまたまたびっくり。この頃、芝2000mは2分を切れない(2分1秒でも中々切れない)というのが常識でした。日本競馬を一歩進めたレースであり、馬だったと思います。
 トウショウボーイは「天馬」と呼ばれましたが、その尊称の最大の要因となったのは、この勝利・記録であったと、私は思います。

 神戸新聞杯競走で、このトウショウボーイの記録を破る馬が出てくるのは、何と2005年のディープインパクト1分58秒4を待たなければなりません。トウショウボーイに追いつくのに、日本競馬の超一流馬をもってして30年かかったのです。もの凄いことだと思いますし、今後このようなことはあるまい、とも思います。

 トウショウボーイはこの後、京都新聞杯も圧勝して、本番の菊花賞に向かいます。クライムカイザーとともに単枠指定馬となり、大本命としてレースに臨みましたが直線一杯となり3着。上がり馬のグリーングラスが勝ち、ライバルのテンポイントが2着でした。この世代の3強が、形成されたレースでもありました。

 下世話な話ですが、このころの馬券は現在とは異なり、1枚ずつ印刷されていました。例えば、1000円券(特券と呼びました)で5000円買うと、馬券が5枚渡されました。この菊花賞は、前述のとおり、皐月賞馬で神戸・京都の新聞杯を連勝したトウショウボーイと、そのトウショウボーイを日本ダービーで破ったクライムカイザーが、それぞれ単枠指定*され、中央競馬会公認の大本命馬となっていたのです。(*連勝複式馬券方式の時代に、1枠1頭とすることで、他の馬への影響を軽減したものです)

 確かトウショウボーイが3枠、クライムカイザーが4枠だったと記憶しています。ある紳士然とした人物が、京都競馬場の馬券売り場に現れ「連複3-4、5000万円」と現金5000万円をカウンターに出して、注文しました。

 窓口係のおばちゃん(これは私の想像ですが、当時はおばちゃんが多かったと思います)はビックリして「今ここには5000万円分の馬券は無いです。揃えるのに時間がかかります。」と答えます。

 紳士然とした人物は「わかった。後で取りに来る。」と言って、その場を離れたそうです。引換券を渡したのかどうかは報道されていませんが、5000万円の現金を収納した窓口のおばちゃんは、5000万円分の馬券を用意して、バッグに詰め、その人物を待ちました。

 レース結果は前述のとおりです。5000万円分の「はずれ馬券」はバッグに入ったままとなりました。中央競馬会はしばらくの間これを保管し、持ち主の登場を待ちましたが、結局現れませんでした。外れてしまったので、受け取る気にはならなかったのだろうと思いますが、もし当たっていたら、ひょっとすると評判になり、その人物の素性が明らかになったかもしれません。当時、1件の馬券購入額としては最大のものとして、話題になった出来事でした。ちなみに、このレースの売上総額は97億円でした。この5000万円が、いかに大きなものか分かります。

 話を戻します。

 トウショウボーイは、父テスコボーイ・母ソシアルバタフライ、生涯成績は15戦10勝。皐月賞2000mと有馬記念2500m、宝塚記念2200mには勝っていますが、日本ダービー2400m2着、菊花賞3000m3着、天皇賞(秋)3200m*は7着(唯一の大敗)と敗れていますので、現在では中距離2000m前後が適正な距離であったといわれています。(*天皇賞(秋)が2000mになったのは1984年から、それ以前は春と同じ3200mでした)
 
 骨太ながら、すらっとした脚をしていたトウショウボーイは、どこか従来の日本馬とは異なる雰囲気を持っていた(外車のスーパーカーだという人もいました)と思いますし、勝っても負けてもクールな走りという印象があります。自分の走りをして、結果は相手の強さ次第という感じの馬でした。引退後、種牡馬としても優秀で、産駒には三冠馬ミスターシービーや桜花賞馬アラホウトク、シスタートウショウなどがいますが、ここは別稿で採り上げたいと思います。

 天馬トウショウボーイが、その能力を最大限に発揮したレースが神戸新聞杯であったと思います。当日の神戸競馬場は、本当によく晴れていて、直線を疾駆するトウショウボーイの鹿毛の馬体がキラキラと輝いていました。


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