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HOME   »   駅伝・マラソン  »  [びわ湖毎日マラソン2020] 極めて粗末なスタートの遅延
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 東京オリンピック2020のマラソン男子代表選考最終レース、第75回びわ湖毎日マラソンは、琵琶湖畔のコースを舞台に、3月8日行われました。

 午前9時、テレビ画面がスタート前の様子を映し出した瞬間、このレースでは2時間5分29秒を更新するタイムは難しいと思いました。雨が相当の強さで振り、気温も9℃台でした。厳しいコンディションなのです。

 とはいえ、選手達の表情には「目標タイム」に向かって、戦いに臨む強い意志が感じられました。

 9時10分を過ぎて、スタートへの準備が始まりました。
 選手達は陸上競技場のトラックに出て、係員に誘導されてスタートラインに向かって前進します。
 選手達がスタートラインに並びました。

 雨は強さを増し、冷たい雨粒が容赦なく選手の肌に打ち付けます。

 スタート予定時刻である9時15分が迫りました。
 テレビの画面が暗くなるほどの強い雨。
 
 スターターが構えます。
 「オンユアマーク」の声、号砲は数秒後。

 ところが、号砲が聞こえません。
 スターターはしばらく銃を構えていましたが、時々、廻りを見渡すようになりました。
 1分、2分と時間が過ぎます。
 ウォーミングアップをした選手達の体がどんどん冷えて行きます。
 何らかのトラブルが発生したことは間違いありません。

 そして、スタート予定時刻を3分以上過ぎた頃、選手達の体が冷え切った頃、スタートのやり直しが宣せられました。
 選手達は、陸上競技場の屋根のある場所に「避難」しました。
 9時25分に再スタートを行うこととなったのです。

 スタート機器の障害が原因と伝えられました。

 「見たことも無いシーン」でした。
 粗末の極みと言っても良いでしょう。
 信じられないような光景です。

 これ程「無責任」な運営は、なかなか観られるものではありません。
 「近時の日本社会の劣化」という見方があっても不思議はないでしょう。
 何しろ、2019年9月のMGCにおいても発生したスタートの遅延が、一層拡大したのですから。何の反省も無く、より丁寧な準備も行われなかったことは明らかです。

 いったい、係員は何をしていたのでしょう。
 当然、試行は行い、作動は確認していた筈です。
 
 予備のピストルも用意されていた筈ですが、使わなかったのは何故なのでしょう。

 スターターも、2度引き金を引いても作動しなければ、直ぐに廻りの係員に声をかけ、予備のピストルを使うとか、万一予備ピストルが用意されていない(信じられない低レベルな準備不足ですが、テレビ画面の様子を観ると可能性が有ると思います)場合には、即座に「スタートの延期」を宣告し、選手が雨に打たれ続ける時間を少しでも減らす義務が有ります。
 当たり前のことですが、スターターには「レースをきちんとスタートさせる責務」があるのです。とても重要な、責任の重い役割を負っていることは言うまでも無いことでしょう。

 全体として、極めて低レベルなスタートトラブルですが、何より「責任感の希薄さ」が際立ちます。
 事前の、機器のセットアップを責任を持って行う人が居たのでしょうか。
 まさか数多くの係員が揃って、「いつもと同じことだから心配ないだろう」、「誰かがやってくれているだろう」と考えていた訳ではないと思いますが・・・。
 スタート直前にも、機器の作動を注意深く点検・把握していた係員も居る筈ですが、何をしていたのでしょう。

 そして、機樹トラブルを認識した瞬間(午前9時15分15秒位の時間帯)には、即座に予備ピストルをスターターに渡し、号砲を鳴らすことが出来れば、「10~15秒」の遅延で済み、選手達の体の冷え、集中力・気迫の萎み、を最小限に抑えることが出来たことでしょう。(もちろん、それでも大きなトラブルなのですが・・・)

 このスタート予定時刻、9時15分前後の5分間は、全ての係員が最大限の注意力を発揮し、「1秒毎の点検・対応体制」を継続・維持する責務があることは、自明のことでしょう。
 このレースのタイムが2時間5分29秒を1秒でも上回る日本人ランナーが登場すれば、東京オリンピック2020の代表になるのですから。「1秒の重み」が最も大きいレースなのですから。

 「トラブル発生時の他人依存」、「判断の遅さ」、「対応する指示の遅さ」が際立った、極めて低レベルな運営でした。

 東京オリンピック1964の開会式で「秒単位の式典運営を示現」し、世界中の人々から賞賛を浴びた「日本社会の時間正確性」「時間を守る文化」が、相当に「弛んできている」のかもしれません。

 かつてであれば、9時15分丁度にスタートを切ることに対して、「自分のこと」として責任を持って臨む人が複数名居たであろうもの(複数名居て初めて、成功するものなのでしょう。自然な「バックアップ体制の構築」がなされていたのです)が、このところは、「誰かがやるだろう」と考えて、「誰一人責任を持って事に臨んで居ない」ようにさえ観えます。
 
 かつては当たり前に構築されていた「2重3重のバックアップ体制」も出来ているようには観えませんし、それどころか、トラブルが発生しても右往左往するばかりに観えました。
 今回のスタート遅延については、驚くべきことに「分単位で対応が遅れた」のです。
 「1秒」を争うレースにおいて、「分」単位の時間の空白というのは、酷いものです。

 係員たちがトラブル発生を把握したであろう9時15分15秒頃から、とても長い間、「誰かが対応するだろう」という無責任な「他人依存」の空気が流れていたとすれば、今大会の係員チームのレベルの低さは筆舌に尽くしがたいものですし、それが「日本社会の劣化」から生じているものでないことを祈るばかりです。

 スタートトラブルから、9時25分に始まったレースは、最初の1kmが3分11秒、次の1kmが3分7秒と、とてもスローペースの始まりとなりました。
 ペースメーカーまでペースを創ることが出来なかったのです。
 「粗末の連鎖」でしょう。
 特に、20kmまで責任を持つはずの日本人ペースメーカー2名のペースメイクの下手さは酷いものでしょう。

 ただでさえ、最低レベルのスタートトラブルによって、好記録が出難いレースとなっているのに、それに追い打ちをかけるようなプレーでした。
 もちろん、ペースメーカーにとっても難しいコンディションでしたが、こうした中でも、走り始めて直ぐに「1km・3分」のペースで選手達を牽引する責務がペースメーカーに託されていることは、言うまでも有りません。東京オリンピック2020選手選考ラストレースに対して、コンディションを整える責任がペースメーカーにはあるのです。
 ペースメーカーを引き受ける際には、そうした心持を整え、準備に万全を尽くす。当日は雨に成り寒くなることも数日前には分かるのでしょうから、体を温めておく工夫など、十分に準備の時間はあったと思います。

 ゆったり?とした2kmまでの走りの後、設定時間を守るためにその後ベースアップなどしているようでは、「ペースの上げ下げ幅が大きくなり」、レース全体の記録向上に向けてマイナスの要素がさらに増えてしまうことは自明でしょう。
 厳しい書き方で恐縮ですが、このレースでは、大会係員、ペースメーカーが揃って「記録の悪化」を図ったと言われても仕方がないかもしれません。

 レース開始後しばらくして雨は少し弱くなりましたが、ゴールまで振り続ける厳しいコンディションが続きました。
 そうした中で、ケニアのエバン・チェベト選手が2時間7分29秒で優勝しました。参加選手中持ちタイムトップの力を示したのです。
 日本選手では、作田直也選手が2時間8分59秒で4位、山本翔馬選手が2時間9分18秒で5位に食い込みました。共に自己ベストを大幅に更新する健闘でした。
 あのスタートトラブルが無かったならば・・・と考えてしまいますが、それは詮無いことなのでしょう。
 難しいコンディションの下での、作田選手と山本選手の素晴らしい挑戦でした。

 9時30分過ぎ、スタート後5分頃、妻が「私は選手じゃないんだけど、腹が立って仕様が無い」と話しました。

 その通りのレースでした。
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