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HOME   »   サッカー  »  [UEFA-EURO1972決勝] ギュンター・ネッツァー選手の雄姿
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 新型コロナウイルス禍のために、多くのスポーツイベントが延期・中止なっている時期は、撮り貯めた録画を自宅で楽しむのに最適です。
 今回はユーロ(欧州選手権大会)1972の決勝を観ました。

[1972年6月18日・スタッドデュエゼル(ベルギー・ブリュッセル)]
西ドイツ3-0ソビエト

[西ドイツチームの先発メンバー]
1. GKマイヤー選手
2. ディーター・ヘッティゲス選手
3. ブライトナー選手
4. シュヴァルツェンベック選手
5. ベッケンバウアー選手
6. ヴィンマー選手
7. ウリ・ヘーネス選手
8. ハインケス選手
9. ギュンター・ネッツァー選手
10. エルヴィン・クレーマス選手
11. ゲルト・ミュラー選手


[ソビエトチームの先発メンバー]
1. GKルダコフ選手
2. ジョジュアシュヴィリ選手
3. クルトシラヴァ選手
4. コロトフ選手
5. トロシュキン選手
6. バイダフニー選手
7. バニシェフスキー選手
8. カプリフニー選手
9. ユーリ・イストミン選手
10. アナトリ・コンコフ選手
11. オニシチェンコ選手

 私はこのゲームの録画をよく観ます。
 1年に一度は観ているでしょう。
 最も良く観る「サッカーの録画」のひとつなのです。

 その理由は、この大会の西ドイツチームが「サッカー史上世界最強のナショナルチームのひとつ」であると考えているからです。

 本ブログでは、2015年3月12日付の記事「世界サッカー史上最強『1970年W杯ブラジル代表』チーム」において、ペレ選手やトスタン選手、リベリーノ選手やジャイルジーニョ選手を擁したブラジルチームを史上最強のナショナルチームとしています。
 その考えは現在でも不変ですが、そのブラジルチームに最も迫っているチームが、1972年ユーロの西ドイツチームであるとも考えています。

 この時の西ドイツチームは、本当に素晴らしい。
 
 1974年ワールドカップで優勝した西ドイツチームも素晴らしいチームですが、私は1972年ユーロのこのチームの方がより強いと観ています。
 その理由のひとつは、1972年にはネッツァー選手が居ますが、1974年にはネッツァー選手が居ないことです。(正確には、1974年の西ドイツチームのメンバーには入っていたのですが、ほとんど出場できなかったのです)

 「ギュンター・ネッツァー」は、稀代のサッカープレーヤーでした。
 類を観ないパフォーマンスを具備していたのです。
 特に30m前後の長いパスの精度とタッチは、これは世界サッカー史上ベストのものでしょう。

 現在では、ネッツァー選手のプレー映像を観る機会は本当に少なくなりましたし、残念ながら、私のライブラリーにもほとんどありません。
 そうした状況下、このユーロ1972決勝の録画は、とても大切なコンテンツであり、どうしても時々は観てしまうものなのです。
 「ネッツァーの雄姿」を観ることが出来る貴重な録画なのです。

 そして、何度観たか分からない筈なのに、都度新しい発見が有ることにも驚かされます。

 このゲームの西ドイツチームを見てください。
 もの凄いメンバーです。

 まず、ネッツァー選手とベッケンバウアー選手の両選手が共に出ています。
 共に「チームの絶対的中心選手」と成り得る2名のプレーヤーが、両立しているのです。
 「両雄並び立つ」こと自体が、滅多に無いことだと感じます。
 ネッツァー選手はミッドフィールダーMFとして、ベッケンバウアー選手はリベロとして、共に「あるべきポジション」でプレーしています。
 そして、ネッツァー選手からベッケンバウアー選手へのパスも何回か観られます。これは、ベッケンバウアー選手がピッチを縦横無尽に動き、自由なポジショニングを取るので、本来バックス主体のプレーヤーでありながら、MFや時にはフォワードFWの位置にも上がって来ることから、MFのネッツァー選手からのパスを受ける形が示現するのです。

 一方で不思議なことに、ベッケンバウアー選手からネッツァー選手へのパスはあまり観られません。

 ベッケンバウアー選手がフレキシブルなプレーによってチームをコントロールするのに比べて、ネッツァー選手は常にMFです。正確無比なパスを味方選手に供給し続けることで、チームをコントロールするのです。
 このゲームでも、「爆撃機」と称された、ドイツサッカー史上最強のストライカー、ゲルト・ミュラー選手らに高品質なパスを供給し続けました。

 そしてミュラー選手は、このゲームでも2得点を挙げています。
 いずれも、ミュラー選手らしい「ゴールまで5m以内」からのシュートでした。
 私は、ミュラー選手のロングシュート、ミドルシュートを観た記憶がありません。
 ゴールから離れた所から「打たない」のか「打てない」のか。
 ゲルト・ミュラー選手は、常にゴールのとても近くから、正確なシュートを決めるのです。いつもゴールエリア内からシュートしているように感じさせるプレーは、ある意味ではとても特異でしょう。
 ゴール目前からシュートしているのですから、その精度が高いのは自然なことなのでしょうが、一方で多くの場合、相手ディフェンダーとの競り合い、それもとても厳しいチェックを受けながらのシュートとなることも、当然のことです。ミュラー選手は、そうした競り合いの状況下、当たり前のようにシュートを放ち得点を奪い続けました。

 「相手ゴール前でボールが行くところに必ずミュラーが居る」ということ自体が、本当に素晴らしいもので、「ゲルト・ミュラーのポジショニング」というか「嗅覚」が天才のものであり、生まれながらのゴールゲッターであることを、如実に示しているのでしょう。

 別の視点でも観てみましょう。
 ゴール前で味方からのパスを「ワンタッチ」で叩き込むことを得意とするスーパーストライカーが、サッカー史上に複数存在します。このゴールゲットのやり方も、ワールドカップやユーロといった世界トップクラスのゲームにおいてはとても難易度が高いものです。
 しかし、ミュラー選手はいつも「ゴール前でシュートを放って」いるのです。脚を振り抜いています。これだけゴール近くで働きながら、面を創ってワンタッチで入れるプレーが殆ど無い、というのも「ゲルト・ミュラーのやり方」なのでしょう。

 世界サッカー史上においては、数多くのスーパーストライカーが存在しますが、こうした形のFWはゲルト・ミュラー選手だけかもしれません。

 そしてゲルト・ミュラー選手の代表チームにおける得点力は、驚異的です。62試合の出場で68得点、1試合1点以上という「有り得ない」ような実績を残しているのです。この得点率は、世界サッカー史上屈指のもので、クリスティアーノ・ロナウド選手もメッシ選手も遠く及びません。(本ブログ2015年4月21日付記事「[世界のサッカー] 代表プレーヤーの得点力について」をご参照ください)

 全盛期の「ゲルト・ミュラー」がFWにどんと座っているのが、このチームなのです。

 さらに左サイドバックにはバウル・ブライトナー選手が居ます。
 1974年ワールドカップ優勝チームの主要なメンバーであり、1980年代に入ってからは西ドイツチームのキャプテンを務めました。
 また、「異なる2つのワールドカップ決勝でゴールを決める」という、珍しいというか至難の記録をも保持しています。
 そもそも、2つの異なるワールドカップの決勝に出場すること自体が、間違いなく奇跡的なことですし、その滅多に無い両ゲームにおいてゴールを挙げるというのは、スキルの高さは勿論として、「持っている」ことの証左でしょう。
 ブライトナー選手は、1974年と1982年のワールドカップ決勝に出場し、両試合でゴールを挙げました。
 ちなみに、この至難の記録を保持している他のプレーヤーは、ブラジルチームのババ選手とペレ選手、そしてフランスチームのジダン選手です。わずか4名しか達成していない大記録。
 ブライトナー選手は、バックスポジションから一気に前線までドリブルで進出するプレーが印象的ですが、このゲームではこのオーバーラップは、あまり観られません。
 チームの他のメンバーが「凄過ぎる」からかもしれません。

 さらに、ハンス・ゲオルグ・シュヴァルツェンベック選手も居ます。
 バイエルン・ミュンヘンにおいても、ベッケンバウアー選手と共にディフェンスDFとしてプレーしていたのですが、代表チームにおいても同じ役割を果たしています。常に「ベッケンバウアーと共にあった」プレーヤーと言って良いのでしょう。
 結果として、そのキャリアは栄光に包まれています。数え切れない程の優勝を経験していますが、ひとつを挙げれば「1974年・75年・76年のUEFAチャンピオンズカップ(現、チャンピオンズリーグ)3連覇」でしょうか。

 また、FWにはユップ・ハインケス選手が居ます。
 ネッツァー選手と共に、ボルシア・メンヘングラートバッハのエースストライカーとして大活躍したプレーヤーです。
 記録を挙げて行くとやはりキリがありませんが、UEFA3大カップ(UEFAチャンピオンズカップ、UEFAカップ、UEFAカップウイナーズカップ)の全てにおいて得点王に輝いているのは秀逸でしょう。もちろん、1974年のワールドカップにも出場、優勝しています。

 そして、このチームのゴールキーパーGKは、ゼップ・マイヤー選手です。
 何時の時代も優秀なGKを輩出するドイツチームですが、キラ星の如く存在する「ドイツナショナルチームのGK」の中でも、屈指の存在でしょう。
 代表として95試合に出場していますが、20世紀のドイツ代表チームのGKといえば、まず挙げられるのが「ゼップ・マイヤー」であろうと思います。(21世紀ならば、マヌエル・ノイアー選手でしょうか)
 バイエルン・ミュンヘンのGKとしても活躍し、やはり「ベッケンバウアーのチームの守護神」として知られました。
 このゲームでもスーパーセーブを魅せています。
 1979年に交通事故で引退したことが惜しまれますが、そのプレーは永遠にファンの心に刻まれていることでしょう。

 西ドイツ代表チーム(ドイツ代表チームも)は、常にバイエルン・ミュンヘンというクラブチームを主体として構成されてきていますが、このチームは「バイエルン・ミュンヘン+ボルシア・メンへングラートバッハ」でした。
 ネッツァー選手のボルシアとベッケンバウアー選手のバイエルンによって組み立てられていたのです。
 この頃のブンデスリーガが、バイエルンとメンヘングラートバッハの2強時代であったことは、言うまでも有りません。

 ユーロ1972決勝を語る時、どうしても西ドイツ代表チーム、私が「史上世界第2位のナショナルチーム」と考えているチームの話が多くなってしまいますが、このゲームに関する話題は、もちろんそれだけではありません。

 この大会は「西ドイツのユーロ初優勝」の大会なのです。
 1945年、第二次世界大戦の敗戦国となった西ドイツは着々と復興を進め、ワールドカップにおいては1954年スイス大会で初優勝を飾りました。それは、驚異的に早い優勝でしたが、ユーロ(欧州選手権)では、この1972年ベルギー大会が初優勝だったのです。
 常にヨーロッパの、そして世界のサッカー界を牽引する存在であるドイツ代表チームが、その力をユーロにおいて示した大会だったのです。

 また、このゲームで優勝を争ったのはソビエト連邦チームでした。
 ご承知のように、この頃のソビエト代表チームはとても強かった。共産圏のチームでしたが、西側のプロ選手主体のチームを相手にしても、圧倒的な強さを魅せていて、1960年に開始された欧州選手権において、1972年は第4回大会となるのですが、第1回のフランス大会での優勝を始めとして、第4回までの4度の大会で3度決勝に駒を進めています。
 驚くべき強さでしょう。
 「安定感」という面ならば、イタリアや西ドイツ、スペイン、フランスといった他のナショナルチームを圧倒する存在だったのです。
 但し、1972年大会決勝は、「相手が悪かった」のでしょう。

 ユーロ1972の西ドイツチームは、本当に素晴らしいチームでした。
 個性溢れるプレーヤーが、キラ星の如く並ぶ、「惚れ惚れさせられる」チームでしょう。

 そして決勝は、私にとっては「ギュンター・ネッツァー選手の雄姿」を堪能できるゲームなのです。

 この後、西ドイツ代表チームにおいては、「ベッケンバウアー選手とネッツァー選手の確執」が生じたとも言われます。私の記憶では、表立った確執は無かったように感じますが、この後の代表チームのゲームにおいて、ネッツァー選手の姿を観ることがとても減りましたので、チーム創りにおいて、ベッケンバウアー選手のやり方・考え方が優先され、ネッツァー選手の居場所が無くなって行ったことは間違いないのでしょう。

 ネッツァー選手のパス、大きく曲がってピンポイントに落下するパスは、彼の「大きな足」から生まれました。
 友人のS君とよく冗談で「40cmはあった」と話します。
 その大きな足と柔軟な足首から放たれる「異次元のパス」は、ギュンター・ネッツァー選手だけにしか出来ない、唯一無二のプレーなのです。

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