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 新型コロナウイルス禍のために、多くのスポーツイベントが延期・中止なっている時期は、撮り貯めた録画を自宅で楽しむのに最適です。
 今回はラグビーワールドカップ2011の準々決勝を観ました。

[2011年10月9日・ウエストバックスタジアム(ニュージーランド)]
オーストラリア11-9南アフリカ

 ワールドカップ2007の優勝チームであり、この大会でも、2007年優勝時のメンバーを多数揃えて優勝候補の一角を占めていた南アフリカ・スプリングボクス(当時世界ランキング2位)を、若手主体のオーストラリア・ワラビーズ(同3位)が破った、当時は「番狂わせ」と言われた一戦です。

 いつの時代も「勝負強く」「試合巧者」と呼ばれるスプリングボクスが、よもやの敗戦を喫したゲームを観て行きましょう。

[南アフリカチームの先発メンバー]
1. PRスティアンカンプ選手
2. HOジョン・スミット選手
3. PRヤニー・デュプレッシー選手
4. LOダニー・ロッソウ選手
5. LOマットフィールド選手
6. FLブルソー選手
7. FLバーガー選手
8. NO.8ピエール・スピース選手
9. SHデュプレア選手
10. SOモルネ・ステイン選手
11. WTBハバナ選手
12. CTBデヴィリアス選手
13. CTBジャック・フーリー選手
14. WTBピーターセン選手
15. FBパトリック・ランビー選手

[オーストラリアチーム先発メンバー]
1. PRケプ選手
2. HOモーア選手
3. PRアレグザンダー選手
4. LOヴィッカーマン選手
5. LOホーウィル選手
6. FLエルソム選手
7. FLポーコック選手
8. NO8ランディケ・サモ選手
9. SHウィル・ゲニア選手
10. SOクーパー選手
11. WTBイオアネ選手
12. CTBマッケイブ選手
13. CTBアシュリークーパー選手
14. WTBオコナー選手
15. FBビール選手

 南アチームを見ると、前回大会優勝メンバーが11名居る、豪華なラインナップです。
 SHのデュプレア選手や前回大会得点王のWTBハバナ選手など、世界屈指のプレーヤーがズラリと並びます。
 このチームの全プレーヤーのキャップ数を合計すると「836」であると報じられました。
 そして、ひとつのチームのキャップ数の世界最高記録であるとも報じられました。
 つまり、この時の南アフリカ代表チームが、ラグビー史上最多のキャップ数を誇るチーム、経験量ならばどんなナショナルチームにも負けないチームだったのです。
 凄いとしか言いようのないチームです。

 一方のワラビーズは、特にバックスに若い選手が並びました。
 ハーフ団はSHゲニア選手とSOクーパー選手の23歳コンビ、この大会ここまで5トライのアシュリークーパー選手、WTBオコナー選手、FBビール選手と、若手が並び、これをベテランのLOヴィッカーマン選手やNO.8サモ選手がどのように牽引して行くのかが、注目されたのです。

 ゲームはスプリングボクスペースで始まりました。

 オーストラリアゴール前に迫り、トライを狙います。余裕さえ感じられるほどの攻撃でした。歴戦の勇者の戦い振りなのでしょう。
 しかしオーストラリアチームはこの攻撃を良く凌ぎました。
 ワラビーズの「前に出るディフェンス」に後退を余儀なくされた南アフリカチームには、「おやっ」という空気が漂いました。

 オーストラリアチームが反撃に出て、南アフリカゴール前に迫ります。
 そして、南アのラインアウトからのゴール前の密集。
 そのラックからボールが飛び出し、これをオーストラリアチームが保持して左に回します。
 そしてLOホーウィル選手が左中間にトライ。
 前半11分、キャプテンの見事な突進でした。

 WTBジェームズ・オコナー選手(21歳)のコンバージョンキックは外れましたけれども、オーストラリアチームが5-0とリードしました。

 南アフリカチームとしては、「やるな」という感じであったと思いますし、自分達のプレーが出来ていないという意識も有ったことでしょう。

 さらに、オーストラリアチームの攻撃が続きました。
 FBビール選手の突進で、大きく前進し、反則を誘って、PGを決めたのです。オコナー選手のキックでした。
 オーストラリアが8-0とリードを広げたのです。

 ビール選手の突進は、グラウンドの「ど真ん中」を突いたものでしたが、このゲームでは、ワラビーズの若手による「縦の突進」が大きくエリアを獲得するシーンが観られました。
 ベテラン揃いのスプリングボクスとしては、「いずれ左右に振るであろう」と観て、対応するディフェンスを張っていたのでしょうが、若きワラビーズは「真っ直ぐに走り込んだ」のです。そのスピードとパワーが、「経験」を上回っていた印象です。

 南アフリカチームは反撃に出て、前半20分にオーストラリアゴール前に迫りました。
 波状攻撃が続き、ゴールまで1mを切った密集の中で、オーストラリアチームがターンオーバー、ピンチを凌ぎました。
 密集の中でのボールの動きを観ると、やや反則に近いかなとも思われましたが、レフェリーからは観えなかったのかもしれません。
 いずれにしても、ワラビーズの密集戦でのボール争奪戦におけるパワー・技術は素晴らしいものでした。この後も、何度もターンオーバーを示現しています。
 当然ながら、密集に集まるスピードが、僅かですがスプリングボクスを上回っていたのでしょう。

 時計が進み、前半も残りわずかとなりました。

 私は、この時期2010年前後は、ラグビー競技において「守備技術が攻撃技術を上回っていた時代」であると考えています。例えば、この大会の決勝は8-7でニュージーランドチームがフランスチームを破って優勝しています。
 つまり「8点差」は、とても大きな差なのです。
 南アフリカチームにとっては、「早いうちに得点を返し、差を詰めておかなければならない」状況でした。
 南アフリカのパワフルで巧みな攻撃が続き、オーストラリア陣内でのプレーが増えてきました。
 そして前半38分、SOモルネ・ステイン選手がPGを決めたのです。
 ゲームは8-3となりました。

 当時、世界屈指のキッカーであったモルネ・ステイン選手は、この前にもハーフウェイライン上からの50ヤードを超えるPGに挑んでいました。これは惜しくも右に外しましたけれども、その素晴らしいパフォーマンス、キックの安定感は「さすが」でした。

 ゲームは8-3で折り返しました。

 後半に入り、南アフリカが攻めオーストラリアが守るというシーンが多くなりました。
 世界チャンピオンとしては「負けられない」ゲームなのです。

 しかし、オーストラリアチームの守備はとても頑強でした。南アフリカチームにトライを許さないのです。
 オーストラリア陣内での、一進一退の攻防が続きました。

 そして後半14分、南アフリカはペナルティーを得、PGをモルネ・ステイン選手がしっかりと決めました。
 8-6となったのです。
 これでゲームは、全く分からなくなりました。

 再び、スプリンクボクスが攻めます。
 様々な技を駆使した多彩な攻め。
 これをワラビーズが懸命に凌ぐというプレーが続きました。

 そして、まさにこの時の南アフリカチームらしい得点が観られたのです。
 後半19分、オーストラリアゴール前でモルネ・ステイン選手がドロップゴールDGを決めたのです。
 高い弾道の「綺麗なDG」でした。
 名手モルネ・ステイン選手の面目躍如でしょう。

 ゲームは、南アフリカチームが9-8と逆転しました。トライが取れないならキックで、という、まさに「試合巧者」のプレーなのです。

 後半20分を過ぎても、南アフリカチームは攻め続けました。
 「攻撃は最大の防御」と言わんばかりの攻撃継続でしたが、一方で、選手達にやや疲労が見え始めました。ベテラン主体のチームの、ひとつの弱点でしょう。膝に両手をあてて、呼吸をしている選手が見え始めたのです。

 後半28分を過ぎて、ゴール前に釘付けと言う印象であったオーストラリアチームが、前進を始めました。
 ゲームは、南アフリカ陣内に移動しました。

 そして後半30分、オーストラリアボールのラインアウトにおいて、南アLOロッソウ選手が引き落としの反則、ワラビーズはペナルティーを得て、これをオコナー選手が慎重に蹴り込みました。
 40ヤード位はあったと思いますが、ゲームを左右する場面における、見事なパフォーマンスでした。

 「勝負強く」「試合巧者」であるスプリングボクスを再逆転したのです。
 若きワラビーズの素晴らしい戦いと言って良いでしょう。

 「負ける訳には行かない」南アフリカチームは、再び攻勢に出ます。
 これをオーストラリアチームが必死に守る、最後の10分間が始まりました。
 相変わらず、ボールへの集散は、オーストラリアが勝りました。
 ボールの争奪戦でもオーストラリアが勝っていたと思います。

 後半40分、通算80分の瞬間、ボールはハーフウェイライン上にありました。
 オーストラリアボールのスクラム、これを蹴り出して、ワラビーズの勝利が決まりました。
 若きワラビーズが、熟練のスプリングボクスを破ったのです。

 オーストラリア代表チームは、「縦への素早くパワフルな突進」とボールへの素早い集散、そして守っては「ゲインライン突破を許さない堅い守備」が印象的でした。
 ディフェンディングチャンピオンをノートライに抑え込んだのです。

 パワー、技術共に世界トップクラスの南アフリカチームを相手に、「ゲインを切らせない」というディフェンスは、丁度、ワールドカップ2019日本大会の準決勝、イングランドVSニュージーランド戦において、イングランドチームがオールブラックスを相手に魅せた「鉄壁の守備」と同じレベルのパフォーマンスに観えました。
 若きワラビーズにとっての、最高のディフェンスプレーだったのではないでしょうか。

 南アフリカ代表チームにとっては「まさか」の敗戦であったかもしれません。
 一度逆転していただけに、とても残念な敗戦でしょう。
 「勝つことに慣れたチーム」に、僅かな油断が有ったのかもしれません。
 ワールドカップ2011ニュージーランド大会で、オールブラックスとの雌雄を決するつもりであったろうスプリングボクスの「連覇への野望」が、準々決勝で潰えたのです。
 
 ハーフウェイラインから始まったゲームが、ハーフウェイラインでノーサイドを迎えたのです。

 素晴らしいゲームでした。

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