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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム7] スプリンターズステークスとタマミとハスラー事件
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 タマミは、その名の通り牝馬で、1970年のスプリンターズステークスの勝ち馬ですが、他にも桜花賞を圧勝するなど重賞5勝の名牝です。しかし、オールドファンにとっては、タマミと言えば「美少女」ということになります。

 スプリンターズステークスは、1967年(昭和42年)7月に中山競馬場1200mの3歳以上・ハンディキャブ重賞として創設されました。日本競馬界初の短距離重賞でした。その後、開催時期が定まらず、5月や9月に毎年のように変わりました。1981年からは2月から3月の春のレースになりました。

 1990年にG1競走となり、斤量も定量となり、開催時期も年末、有馬記念の1週間前に定められました。筆者には、G1に指定されたこともあり、スプリンターズステークスというと、有馬の前週というイメージがあります。

 この頃中央競馬会としては、短距離馬のレース路線構築に力を入れていて、1996年5月、高松宮記念競走が1200mG1レースに変更(それまでは2000mで6~7月開催のレース)され、春の短距離馬のG1に設定されました。
 この影響もあって、1990年から1年を締めくくる短距離G1の位置づけであったスプリンターズステークスも、2000年から9~10月の開催に変更され、春の高松宮記念、秋のスプリンターズステークスが、年2回の短距離路線のG1レースとなりました。

 一方で、当競走は1994年から国際競争に指定され外国調教馬の出走も可能となりました。なにしろG1レースで、一着賞金も高額(昨年9500万円)であることから、毎年外国調教馬が出走し、これまで3頭の外国馬が優勝しています。

 G1レースですから、優勝馬も有名馬が多く、1993年・1994年のサクラバクシンオーの連覇や1997年のタイキシャトルなど印象深いレースも多いのですが、牡牝のどちらでも出走できるレースとしては、牝馬の活躍が目立つレースでもあります。

 2000年以降で見ても、2002年ビリーヴ、2007年アストンマーチャン、2008年スリープレスナイト、2011年カレンチャン、と4頭もの牝馬優勝馬がいます。1200mの短距離、通称「電撃の6ハロン」であれば、テンの速い牝馬なら十分に勝負になるということを示しています。

 本稿で採り上げるのは、こうした牝馬勝ち馬の先駆者タマミです。タマミは、当競走第四回1970年の勝ち馬で、初の牝馬優勝馬です。前年1969年の勝ち馬はタケシバオーですから、バリバリの重賞常連牡馬のレースで、牝馬が通用することが示されたこともあって、タマミが勝った1970年以降の10年間では、牝馬5頭が7回勝っています。

 タマミは、父があのネアルコの仔カリム、母がトサミドリの仔グランドフォード、当時の良血です。(カリムは、ハイセイコーの母ハイユウの父でもあります)
 2歳時は7戦2勝と目立った成績は残していませんが、3歳になり本格化。1970年の桜花賞トライアル阪神4歳牝馬特別を3馬身半差で快勝すると、一番人気で迎えた桜花賞も4馬身差で圧勝しました。3歳になって4連勝でのクラシック制覇でした。

 とにかくテンが速い馬で、ゲートが開くとあっという間に他馬を引き離し、そのままゴールに走りこむ感じの馬です。テンが速いという意味では、タマミの3年後1973年に活躍した牝馬キシュウローレルも相当なものですが、タマミの方がゴール前の我慢が効くという感じがします。

 タマミは当然のように圧倒的な一番人気でオークスに臨みましたが、ドロドロの不良馬場と2400mの距離に泣き14着と大敗。夏の静養を経て秋初戦のクイーンステークスで11着に敗れた時には、タマミも終わったと言われました。次戦にタマミが選んだのが、スプリンターズステークスだったのです。

 短距離路線に活路を見出そうとしたのですが、当日は不良馬場、ツキが無いなと思いました。レースは例によってタマミが逃げます。さすがにゴール前追い込まれましたがハナ差凌いで優勝。4つ目の重賞制覇でした。このレースのスタートからの3ハロン33秒9は、不良馬場の時計としては驚異的なものです。

 この後4歳まで走って引退しました。生涯成績は24戦8勝(重賞5勝)。繁殖入りした後は、これといった産駒に恵まれず1977年に癌で死亡しました。10歳の若さでした。

 タマミは、栗毛のように明るい鹿毛で、顔が細く、額の白斑から流星が真っ直ぐ伸び、瞳がぱっちりとしていたために「美少女」と呼ばれました。競馬エッセイでも知られる作家の寺山修二は「少女のように可憐」と評しました。私の記憶では、多くのファンが認めたという意味での「日本競馬界初の美人ランナー」でした。10歳で死亡した時も、多くのマスコミに「美人薄命」と表記されたことは言うまでもありません。

 ところで、タマミが勝ったスプリンターズステークスは発走が30分位遅れました。

 これはその日(1970年10月11日)の第6レース「あきはぎ賞」で一番人気だったハスラーがゲート式発馬機内で暴れて負傷、ゲートも壊してしまい、発走除外となったことを発端とした事件が起こったためです。

 当時は枠番による連勝複式馬券でしたが、この時のハスラーの同枠には他に有力馬が居なかったため、ゲートの修理時間中に、連勝複式馬券の払い戻しを要求するファンが現れ、競馬会は一部のファンに払い戻しを行いました。

 あきはぎ賞のレース終了後、この話を聞いた払い戻し未済のファンが払い戻しを要求しましたが、競馬会はレース終了後ということで、これを拒否しました。そのため、ファン数百人が抗議活動を開始、一部が暴徒化して競馬場施設への放火や競馬場職員への暴力行為に及んだために機動隊が出動、ファン3名を逮捕し、暴動を鎮静化しました。世に言う「ハスラー事件」です。

 日本競馬発展期の世相を表した悲しい事件ですが、その事件の原因となった馬の名前が「ハスラー」だったというのも皮肉な話です。


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