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HOME   »   日本プロ野球  »  バレンティン選手には「55本の呪縛」を解いて欲しい。
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 東京ヤクルトスワローズのウラジミール・ラモン・バレンティン選手が、9月11日の対広島東洋カープ戦で、今シーズン55本目のホームランを放ちました。これで、日本プロ野球NPB記録に並びました。

 この広島戦での54号、55号の2試合連続ホームランですが、54本目は広島のエースというか、NPBを代表する右腕・前田健太投手が投ずる超高めのストレートを高々とレフトスタンドに運んだホームランでした。お見事の一言です。自らの顔の高さに投じられた威力あるストレートを遠くに飛ばすのは、とても難しいことです。時々「敬遠のボールをヒットする」のを眼にすることはありますが、「敬遠のボールをホームランにする」というのは、滅多に観られません。
 力強いスイングをするための「打撃フォーム」が作れないからです。顔の高さのボールを打つトレーニングは、普段行わないでしょう。それでもスタンドまで飛ばしてしまうのですから、現在のバレンティン選手の充実振りが分かります。

 NPBの1シーズン本塁打記録55本を保持していたのは、王貞治選手、タフィ・ローズ選手、アレックス・カブレラ選手の3人。いずれも、時代を代表するホームランバッターでした。この記録にバレンティン選手も加わった形です。

 最初にこの記録を樹立したのは、もちろん王選手でした。1964年・昭和39年、第1回東京オリンピックの年ですから、今から49年前のことです。王選手は、この後もホームランを打ち続け、NPBのホームラン記録を次々と塗り替えました。そして、通算868本塁打という、前人未到、不滅の記録を残したのです。
 引退後も、NPBひいては日本野球に対して、素晴らしい貢献を続けています。

 この王貞治氏の「あまりにも偉大な足跡」ゆえに、「シーズン55本は越えてはならない記録」になってしまったようです。
 その後、何人かのバッターが「55本」に挑みました。そして、ローズとカブレラの2選手が55本に到達しましたが、追い抜くことはできませんでした。

 忘れもしない1985年。この年三冠王を獲得した阪神タイガースのランディ・バース選手が、55本を目前に対読売ジャイアンツ戦に臨みました。
 「四球の連発」、バース選手は勝負してもらえなかったのです。

 巨人軍サイドが「偉大な王選手の記録」を守ろうとしたのでしょう。こうした行為は、毎年の首位打者争いなどにも時々見られますから、珍しいことではありません。
 しかし、残念なことではあります。

 身内の記録を大切にするのは当然だろう、という声が聞こえてきそうですが、私は全然当然ではないと思います。
 プロスポーツは、観客にプロのプレーを披露する義務があります。このプレーによりお客様を惹きつけ、ファンになっていただき、入場料やテレビ放映権料、関連グッズ販売といった様々な形で収益を上げ=お金をいただき、運営されていくものです。
 その大切なプレーを披露しないという選択肢は、有り得ないことなのです。

 もちろん、洋の東西を問わず、競技・種目の別を問わず、こうした行為が行われてきたことは十分に認識していますが、あるべきプロスポーツの姿ではないと考えます。

 MLBのスーパースター、ベーブ・ルース選手は、1927年にシーズン60本塁打の記録を樹立しました。通算714本塁打の最多記録も樹立しました。
 そして、1961年にロジャー・マリス選手がシーズン61本塁打を記録し、ルースの記録を破りました。続いて、1974年にハンク・アーロン選手が715本目の本塁打を放ちました。2つの偉大な「越えてはならない記録」が破られてしまったのです。

 確かに、MLBでもロジャー・マリス選手がルースの記録を破ろうとした時、様々な妨害があったと伝えられています。
 しかし、記録を破られたからといって、「ベーブ・ルースの価値・評価にいささかの影響も無かった」ことは、間違いないことでしょう。ベーブ・ルースは、現在でもMLB史上最大の巨人なのです。

 55本の記録を持つ王貞治氏が、55本の記録は絶対に抜いて欲しくないと考えているとはとても思えません。
 また、NPBにおける王貞治氏の足跡は、MLBにおけるベーブ・ルース氏の足跡に、勝るとも劣らないものだと思います。
 MLBにおいても、ロジャー・マリスが60本の壁を破ってから、次々と記録が更新されました。次なる進歩に繋がったのだと考えます。

 今シーズン、東京ヤクルトスワローズは、まだ20試合以上を残しています。バレンティン選手が55本の壁を破るのは、時間の問題でしょう。
 望みたいのは、セントラルリーグの各チームが、バレンティン選手との対戦を必要以上に回避することなく、堂々と勝負していただきたいということです。もちろん勝負事ですから、場合によっては敬遠が必要なこともあるでしょうが、全打席敬遠などというのは、NPBを支えているファンに対して大変失礼なことです。

 さらに「密かに飛ぶボールに変更されたシーズンに新記録が生まれること」についてですが、こうしたことが話題になってしまうこと自体が、この愚行の悪影響のひとつなのです。
 とはいえ、現在本塁打部門2位のブランコ選手の37本を圧倒的に引き離しての55本ですから、今シーズンのバレンティン選手の働きは「飛ぶボール」を考慮しても、他の選手比ずば抜けているということですので、率直に評価して良いと考えます。

 バレンティン選手の大きなスイングは、とても魅力的です。「お金を払っても見る価値があるプレー」だと思います。つまり、プロスポーツプレーヤーのあるべき姿を示現しているのです。
 バレンティン選手には、55本の壁を破ることはもちろんとして、60本、65本と記録を伸ばしていただきたいと思います。そして本塁打に関して、NPBは新たな時代を迎えるのでしょう。
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