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HOME   »   大相撲  »  「平成の雷電」 把瑠都関 無念の引退
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 把瑠都関が大関に昇進した時に公表された体格は、身長197cm・体重172kgであったと記憶しています。(現在は、体重が180kgを越えています)

 この体格が、江戸時代の伝説的大関「雷電為右エ門(らいでん ためえもん)」と全く同じだと報じられました。
 雷電関は、1767年長野県東御市の出身、最高位が大関、現役生活21年間で僅かに10敗したのみ、幕内成績は254勝10敗(勝率96.2%)、優勝28回、1場所で2敗したことは一度も無く、同じ力士に2敗したのも一例だけ、という、驚異的な強さを見せた力士です。
 この頃は、年1~2場所の開催でしたし、1場所の取組数も現在の15番より少ない10番前後でしたから、もし年6場所・15番であれば、どれほどの勝ち星・優勝回数を記録していたか、想像もつきません。
 また、197cm・172kgというのは、現代でも大型力士ですが、おそらく力士全体の体格が現代より小さかったであろう江戸時代においては、他を圧する大型力士だったのでしょう。

 一方、把瑠都関も、2004年の初土俵から光速の出世を見せ、2006年3月場所には十両で全勝優勝、新入幕の2006年5月場所には11勝4敗の好成績を挙げて敢闘賞を受賞しました。前相撲から13場所目の三賞受賞は史上最速タイの記録です。
 この後左膝の怪我に苦しみ、大関昇進は2010年5月場所、初優勝は2012年の1月場所と梃子摺りましたが、初優勝時点で横綱白鵬が「大関の中で横綱に一番近い」とコメントするなど、その力量は高く評価されていました。

 この雷電関と把瑠都関には「横綱になれなかった」という共通点があります。

 雷電が横綱になれなかった理由は諸説ありますが、お抱え藩であった松江藩(雲州・松平家)の財政が厳しく、横綱免許が購入できなかったという説が有力です。当時は、力士は大名のお抱えでしたから、所属?している藩・大名の力に左右されたのでしょうか。
 成績優秀者が横綱になるのであれば、雷電関は早々に横綱に就位していたと思います。その時代に横綱になった他の力士と比較しても、雷電の成績はスバ抜けていましたから。

 東京都江東区の富岡八幡宮には「横綱力士碑」があります。これは、縦3m50cm、厚さ1m、重さ20トンの白御影石の大きな碑です。この石碑には、初代から始まって歴代の横綱名が記されていますが、その中に「無類力士」として大関・雷電為右エ門の名前も記されているのです。横綱意外では唯一の記載です。雷電関の強さを示す事例だと思います。

 一方、把瑠都関が横綱になれなかった理由は、怪我に尽きます。
 前述の、2006年5月場所で新入幕での敢闘賞受賞を果たし、登り龍の勢いであった時期、同年9月場所10日目の雅山関との取組で左膝を痛めて、翌日から休場。以降は、右足親指の骨折などの怪我が続き、結局は左膝の怪我が完治せず、引退に追い込まれたのでしょう。

 相手力士を根こそぎ運ぶような豪快な取り口は、把瑠都独特のものであり、その明るい性格とも相俟って人気力士でした。その地力は誰もが認めるところでしたから、左膝の怪我が本当に惜しまれます。大型力士にとっての膝の怪我は、中々完治しないものなのでしょう。
 また、怪我は稽古不足に繋がります。最近の把瑠都の相撲が軽いと感じさせたのも、稽古不足のせいだと思います。

 私は、日馬富士関が横綱に昇進するまでは、次の横綱は把瑠都であろうと思っていましたし、平成の双葉山関を標榜するモンゴル出身の白鵬と、平成の雷電関・エストニア出身の把瑠都が横綱を張るのは、バランスとしても絵としても悪くないと、勝手に考えていました。本当に残念な引退です。

 長野県東御市の南斜面の山麓、燦燦と日の光が降り注ぐ日本一の巨峰(ぶどう)の産地に雷電為右エ門の生家と伝えられる建物が残っています。私も一度訪れました。
 日本有数の少雨地域ですから、その日も好天に恵まれ、明るく静かなたたずまい。教養人としても知られた雷電の書物「諸国相撲控帳(雷電日記)」が展示されていました。

 江戸後期に、大相撲史上最強の力士と謳われながら、ついに横綱にはなれなかった雷電。平成の時代に、エストニアの地から日本に舞い降り、無類の力を魅せた把瑠都。同じ体格を持つ2人の大型力士です。

 もっともっと活躍して欲しかった把瑠都関の怪我による引退は、返す返すも残念ですが、大相撲の長い歴史が、また一歩進んだということでしょうか。

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