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HOME   »   サッカー  »  [欧州サッカー] イングランドの憂鬱
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 現代サッカー(協会式サッカー)発祥の地イングランドは、世界で最もサッカーが盛んな地域のひとつです。最上位のプロリーグである「プレミアリーグ」は、プレーのレベルや観客動員数などで、世界のトップクラスにあり、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、リバプール、アーセナルなどの有名クラブが目白押しです。

 しかし、イングランド代表チームとなると事情が異なります。

①FIFAワールドカップ(以下WC)の成績
 1966年の自国開催WCこそ、ボビーチャールトン・ジャッキーチャールトンの兄弟やボビー・ムーア、ゴードン・バンクスらを擁して優勝しましたが、その後の大会は、1974年西ドイツ大会、1978年アルゼンチン大会、1994年アメリカ大会では予選敗退。それ以外の大会では1990年イタリア大会のベスト4が1度あるだけです。

②UEFA欧州選手権(以下ユーロ)の成績
 WC優勝国でありながらユーロに優勝していない唯一の国です。最高成績は、ユーロ1996の3位、この大会は自国開催でした。それ以外の大会は、ベスト4にも進んでいません。ユーロは、ドイツとスペインの3回が最多優勝で、フランスの2回優勝が続きますが、これらの国々の実績に大きく水をあけられているのが現状です。

 自国のトップリーグは、世界最高水準で人気も抜群なのに、代表チームの成績がいまひとつなのは、何故でしょう。色々と原因は考えられますが、本稿では「プレミアリーグ」の抱える問題点について触れてみたいと思います。

 頭書の4チームを中心とする20チームで構成されるプレミアリーグは、確かに世界最高水準のサッカーを魅せてくれるリーグです。マンチェスター・ユナイテッド(以下マンU)に至っては、世界中の全てのスポーツ競技のチームの中で、最もファン数が多いチームであるという調査結果もあります。(2012年カンター社調べ。ファン数は6億5900万人、世界人口の11人に1人)

 こうしたリーグを持ちながら、イングランド代表の実績が上がらない最大の理由は、プレミアリーグの試合に、イングランド人のプレーヤーが少ししか出場していないことが原因のひとつだと思います。

 プレミアリーグの今2012.-2013シーズンは既に開幕していますが、その開幕当初の各チームの先発メンバーを調べてみましょう。

・マンU イングランド人プレーヤー3名(DFエヴァンス、MFキャリック・スコールズ)
・チェルシー 同3名(DFテリー・アシュリーコール、MFランパード)
・リバプール 同4名(DFケリー・ジョンストン、MFジェラード)
・アーセナル 同3名(DFギブス・ジェンキンソン、MFウォルコット)

 筆者が手作業で調べた結果、各チーム3~4名でしたが、筆者の印象は「さすがにシーズン始めだけあって、イングランド人プレーヤーの人数が多いな」という感じです。昨シーズンのアーセナルなどは、先発メンバーにイングランド人プレーヤーが1人も居ないことが、よくあったと思います。
 特に、フォワードFWプレーヤーが少ないのです。この4チームであれば、マンUにウェインルーニーという代表FWが居ますが、それ以外のチームの主力FWは外国人選手です。

 確かに、この4チームの数少ないイングランド人プレーヤーによって、代表チームは作れるでしょう。なんとかFWを見つけてくれば形は取れます。特にMFのジェラードとランパードは、世界屈指のプレーヤーです。英雄ボビーチャールトンの意志は、脈々と流れています。ウォルコットやアシュリーコールも素晴らしい。
 しかし、これらのプレーヤーの後を継ぐプレーヤーが育っているのでしょうか。プレミアリーグの現状を観ると、5年後のイングランド代表チームが現状以上に心配になるのは、よけいなお世話でしょうか。

 では同様に、ドイツ・ブンデスリーガを観てみましょう。
・バイエルン・ミュンヘン ドイツ人プレーヤー7名
・ボルシア・ドルトムント 同9名

 こちらはドイツ人プレーヤーが過半というか、大半を占めています。ドイツ代表チームがWC優勝3回、過去16大会連続でWCベスト8進出、ユーロ優勝3回の好成績を残していることは、皆さんご承知の通りです。

 ドイツ・ブンデスリーガには。厳しい外国人登録枠が存在していましたが、2006年からは「ドイツ人枠」に変更になりました。各クラブ(チーム)は、必ず12人以上のドイツ人プレーヤーを登録しなくてはならず、さらに内6人は地元で育ったプレーヤーでなければならないのです。
 加えて、ブンデスリーガを所管するドイツサッカー連盟は、所属クラブの多額の借入を禁じ、特定のプレーヤーへの多額の年俸支払いも禁じています。

 日本の香川選手が、ブンデスリーガのボルシア・ドルトムントからプレミアリーグのマンUに移籍したのも、この事情が大きいのです。ドルトムントで年俸3億円だった香川の契約更改に際して、ドルトムントは大幅な年俸増額には応じられず、年俸6億円を提示したマンUが香川を獲得しました。

 ドルトムントは昨シーズン、ブンデスリーガを制覇しました。香川選手も貢献しましたが、皮肉なことにブンデスで活躍し世界的選手になるとブンデスを出ていくという場合が、数多く見られます。前代表キャプテンのバラックはプレミアのチェルシーへ、代表MFのエジルはリーガ・エスパニョーラ(スペインのリーグ)のレアル・マドリードへ、といった具合です。

 しかし、移籍したスタープレーヤーの穴をドイツ人プレーヤーが埋めて、埋めたプレーヤーがスタープレーヤーに育っていくという好循環が、ブンデスリーガにはあります。ドイツ代表チームの若手は、次から次へと出てきています。

 ブンデスは年俸上限が厳しいため、比較的年俸が低く、相応のパフォーマンスを発揮する日本人プレーヤーの獲得に意欲的です。これに、Jリーグで選手や監督をやっていたブッフバルト氏やリトバルスキー氏の人脈も力を発揮します。欧州各国のリーグの中で、長谷部・岡崎・乾・清武といった、圧倒的に多くの日本人プレーヤーがドイツ・ブンデスリーガに行くのは、この理由によります。

 香川を日本のJ2のクラブから獲得するのに、ドルトムントは5千万円を使いました。そして、今春、ドルトムントは16億円の移籍料を受け取り、香川をマンUにトレードしたのです。「残っていて欲しかった選手」でしょうが、クラブ経営の観点からは、2年間で32倍になった投資でした。

さて、プレミアリーグに話を戻します。(→続きへ)
 


1980年代、先述のWCやユーロの不成績を踏まえて、「イングランド一部リーグのレベルは、世界的に見て低いのではないか」との意見が高まりました。この頃のイングランド1部リーグは、外国人選手登録制限を設けており、各チームの選手の過半はイングランド人(ウェールズ、スコットランド、北アイルランドも含めます)でした。

 サッカー起源国のファンは「このまま低レベルのサッカーを見続ける」か「世界最高水準のサッカーを見るか」の選択を迫られ、後者をファンが選択したと言われています。ファンが真に望んだのかどうかは、ここでは論じませんが、外国人選手を大量に受け入れることで、リーグのレベルを上げる措置が取られ、プレミアリーグが発足したのが1992年です。(Jリーグは1993年に発足しましたので同じ頃です)プレミアリーグというのは、ヨーロッパの他の主要リーグに比べて、とても新しいリーグなのです。

 プレミアリーグ発足後は、EU加盟国およびEFTA加盟国(ノルウェー、スイス、アイスランド、リヒテンシュタイン)のプレーヤーのチームメンバーへの登録が無制限になりました。その他の国のプレーヤーについても、国際Aマッチに出場しているなどの条件をクリアしていれば(世界一流のプレーヤーであれば)登録は無制限になりました。

 こうして、プレミアリーグは、世界最高のプレーヤーが集うリーグとなりましたが、イングランドのサッカーファンにとっては、良いことばかりではありませんでした。
 
 いくらでも良い選手が取れるようになったということは、その年俸・契約金も飛躍的に増大することを意味します。各クラブは、リーグで好成績を上げるために、常に大金を用意しなければならなくなりました。各チームのオーナーも、どんどん外国資本に変わり、今も変わり続けています。

 このため、試合の入場料も飛躍的に上がったのです。プレミア以前は、安価な席であれば1~2千円であったものが、現在では安価な席でも1万円以上だといいます。昔からのイングランドのサッカーファンは、ホームチームの競技場に入れなくなったのです。

 イングランドのサッカーファンは庶民層です。NHKの番組で「俺は親父の代からのマンUファンだけど、もう何年もオールドトラフォード(マンUの本拠地)には行ってない。入場券が手に入らない。テレビで見るだけさ」と寂しそうに語る高齢のファンが出演していました。
 現在では、より富裕層のファンか海外からの観光客がプレミアリーグの各クラブのホームスタジアムを埋め尽くしています。(画像は、今シーズンも満員のオールド・トラフォード競技場)

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 ファンが望んだといわれるプレミアリーグの創設が、ファンをホームスタジアムから追い出したのです。1990年代から2000年代のロンドンには、ポーランドやロシアからの移民が、一説には数百万人流れ込んだとされていて、これら安価な労働力の大量流入による、イングランド人サポーターの失業者増加も、この傾向に拍車をかけました。

 前述のプレミアリーグの試合にイングランド人プレーヤーが出場できないというのも、イングランド代表チーム弱体化の要因の一つだと思いますが、「最大の要因はファン離れ」にあると思います。

 もともとイングランドのサッカーファンは熱狂的なことで知られていました。一部の超熱狂的なファンは、フーリガンと呼ばれ、イギリス国内はもちろんとして、世界中のゲームに応援に行っては、現地で問題を起こす。とても危険な存在ですが、「イングランド名物」ともいえます。

 ところが最近は、フーリガンが暴れているという話は、ついぞ聞かなくなりました。自国民に支持されなくなった代表チームというのは弱いものです。イングランドがWCを制したのも、ユーロ最高成績の3位となったのも、両方ともイングランド大会(自国開催)であったことを忘れてはいけません。

 本質的にホームチームが強い競技と言われるサッカー界でも、イングランドのチームは特にホームで強いのです。寝食を忘れて(フーリガンは、20時間でも30時間でもバスにゆられて応援に行くそうです。飛行機は高価なので使いません)応援してくれたファンが、激減しているのではないかと危惧しています。

 我らがJリーグは、ドイツ・ブンデスリーガを手本にして発足しました。日本代表チームのWC連続出場やアジアカップでの好成績は、Jリーグの発展無しには考えられません。そのJリーグの観客動員が伸び悩み、盛り上がりに欠けているとの指摘が多くなってきています。確かに、スタンドは寂しい限りです。
 現在行われている天皇杯の予選では、J1所属のチームがJ2あるいはJFL所属のチームに次々と敗れるという事態も生じています。Jリーグの屋台骨が揺らぎつつあるのではないでしょうか。

「自国リーグがファンに支持されない国の代表チームは弱い」ことを忘れてはなりません。
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