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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム8] 毎日王冠とサイレンススズカ
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 太平洋戦争終戦後、競馬は大衆娯楽のひとつとして、比較的早く再開されました。例えば、日本の競馬で最も歴史があるレースのひとつ天皇賞は、1947年・昭和22年に「天皇賞」という名称(戦前は帝室御賞典と呼ばれたレースの内のひとつでした)で開始されています。
 とはいえ、戦後復興期でもあり、「重賞」は、まだまだ少なかったのです。昭和20年代に開始された重賞レースというのは、戦後の中央競馬において肝煎りで創設されたレースと見て間違いありません。

 今週末10月7日に第63回が開催される毎日王冠も、そうしたレースのひとつで、1950年・昭和25年に開始されました。当初より毎日新聞社から「王冠」が授与される格が高いレースでした。1950年~1954年は「勝ち抜け制」で、一度このレースに優勝すると、二度と出走できないという、天皇賞と同じ制度が適用されるほどのレースでした。

 1955年の第六回から勝ち抜け制度ではなくなりましたが、3歳馬から4歳以上の古馬まで参加できる秋の大レースとしての位置づけは変わることがありませんでした。
 この頃の優勝馬を見ると、1951年ミツハタ、1954年ハクリョウ、1957年ハクチカラと、伝説的な名馬が名を連ねています。

 施行距離は、当初は2500~2600mで行われていたのですが、次第に短くなり(日本というか世界の競馬の中距離化に合わせてという感じです)、1970年代には2000mのレースになりました。そして、1984年からは、東京競馬場の1800mで開催される形に落ち着きました。やはり、毎日王冠というと「東京1800m」がピッタリ来ます。

 秋競馬序盤の1800mレースG2となれば、当然天皇賞(秋)2000mやマイルチャンピオンシップ1600mのG1レースの前哨戦となります。3歳以上の有力馬が集う、レベルの高いレースが毎年展開されるわけです。1990年代には、地方馬、外国産馬、外国調教馬にも門戸が開放され、一層華やかなレースになりました。

 こうした歴史と伝統を誇る毎日王冠ですから、優勝馬・出走馬も多士彩々で、印象深いレースが沢山あります。例えば、1988年1989年にはオグリキャップが連覇しています。オグリキャップが、秋の初戦に選び、キッチリ勝っていたことが良く分かります。また、1996年には、アヌスミラビリスがゴドルフィン厩舎の所属馬として外国産馬の初勝利を挙げています。

 こうした名馬・名レースがテンコ盛りの毎日王冠ですが、本稿では1998年サイレンススズカが勝った第49回を採り上げます。このレースは、14年前という比較的新しいレースですが、既に「伝説のレース」になっています。

 天皇賞(秋)に外国産馬が出走できなかった時代に、無敗の外国産馬2頭が出走してきました。エルコンドルパサーとグラスワンダーです。どちらも後に日本競馬史上に残る名馬となるのですが、3歳のこの段階でも、デビュー以来5連勝で前走G1NHKマイルCを圧勝したエルコンドルパサーとデビュー以来4連勝でG1朝日杯3歳Sを圧勝したグラスワンダーが、限られた出走可能レースとして駒を進めてきたのです。

 迎え撃つサイレンススズカも、4歳馬になってから本格化し、5連勝・重賞4連勝、7月にG1宝塚記念に快勝して、駒を進めてきました。
 今思うと、このレースにこの3頭が出走してきたことは奇跡的なことで、当時は「最もG1に近いG2」と言われましたが、普通のG1(この表現には矛盾がありますが)を超えたG2であったと思います。

 人気は、サイレンススズカ、グラスワンダー、エルコンドルパサーの順。この三強対決は、マスコミが書き立てるというより、ファンが良く分かっていて、当日の府中東京競馬場には13万人のファンが詰めかけました。G1のレースとしても多いですし、G2のレースとしては驚異的な入場者数です。

 レースは、いつものようにスズカの逃げで始まり、前半1000mを57秒7というハイペースで通過、4コーナーでグラスワンダーが仕掛けますが、全く近づけず失速、直線に入りエルコンドルパサーが追い上げますが、じりじりと2馬身差まで詰め寄ったところがゴール。勝ち時計1分44秒9も立派なもので、特に上がり3ハロンが、追いすがったエルコンドルより0.1秒遅かっただけでした。テン良し・終い良しレースの典型で、さすがの外国産馬強豪2頭も完敗。しかもグレード別定でしたから、スズカはこの2頭より3㎏も重い59㎏を背負っていたのです。

 敗れた2頭はこの年、各々もう一レースを叩いて、エルコンドルパサーがジャパンカップを、グラスワンダーが有馬記念を制していますので、このレースのサイレンススズカの強さは際立ちます。

 そのスズカは、当初のスケジュール通り、本番の天皇賞(秋)に臨みます。同じ東京競馬場の前哨戦毎日王冠を圧勝した上に、外枠不利の東京2000mで1枠1番を引いたものですから、圧倒的な1番人気。(平成10年11月1日1枠1番という1並びでした)
 加えて、前年覇者の実力馬エアグルーブがエリザベス女王杯に回ったため、ライバルも不在ということで「スズカがどのように逃げ切り勝ちするのか」「レコードタイムはでるのか」に注目が集まりました。

 事後の話として「このレースのサイレンススズカが生涯で一番状態が良かった」と厩舎関係者、騎手の武豊も話していたと報道されましたので、絶好調だったのでしょう。

 スタートから快調な逃げを打ち、前半1000mは57秒4という驚異的なスピード。1800mの毎日王冠よりも速いということで、オーッと既に場内は沸き上がりました。3コーナーにかかったところで2番目を走っている馬に10馬身以上、3番目の馬にさらに5馬身程度の差をつけていたと思います。接戦が多い秋の天皇賞で、こんなレースは観たことが無いな、と思っていた瞬間、突然の失速・・・・・・・。

 左前脚粉砕骨折による競走中止、予後不良による安楽死処分と、書きたくもない話が続きますが、東京競馬場は悲鳴・騒然となりました。テンポイントの日経新春杯もショックでしたが、画面に1頭しか映っていないレースでの悲劇は例えようもなく、いつ思い出しても悄然とします。

 このレースに勝った馬は?私も馬名を思い出せず調べました。オフサイドトラップでした。オフサイドトラップ関係者には失礼な書き方で恐縮ですが、正直に言って、サイレンススズカが競走を中止したシーンしか憶えていませんし、テレビ画面もスズカばかりを映していたと思います。
 「あのまま走っていたら勝っていたか」という話は、他のレースでもよく出ますが、このレースばかりは「間違いなく、サイレンススズカが圧勝していた」と断言できます。きっと10馬身以上の差を付けて勝ったでしょう。

 サイレンススズカは、父サンデーサイレンス、母ワキア。生涯成績16戦9勝。3歳時、日本ダービー9着、天皇賞(秋)6着、マイルチャンピオンシップ15着と、G1には歯が立たなかったサイレンススズカが、4歳になり本格化。G1宝塚記念を始めとして6連勝・重賞5連勝で臨んだ天皇賞(秋)。
 確かに、この年7戦目と厳しいスケジュールでしたが、絶好調で臨んだレースで、ガラスの脚は砕けました。原因については、色々と書かれていますが、「絶好調だったので、スピードが出過ぎて、体が耐えられる限界を超えた」のだろうと私は思います。

 こうした最後を遂げたこともあってか、サイレンススズカには、そして彼の驚異的な快速レース(金鯱賞や毎日王冠)そのものにも、多くのファンが居ます。その走りっぷりは、余裕綽々ではなく、威風堂々でもなく、一生懸命という感じがピッタリだと思います。
 最も記憶に残る馬の一頭です。
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