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HOME   »   競馬  »  [競馬コラム10] 凱旋門賞は欧州の三歳馬が強い
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 10月の第一日曜日は毎年、凱旋門賞の開催日です。今年は10月7日、第91回となります。

 凱旋門賞は1920年に開始された、ヨーロッパの大レースとしては歴史が長いとは言えないレースです。1990年前後の一時期は、賞金額も他のレースに比して特に高いわけでもなく、1800m~2000mの中距離重賞レースが世界中で増加し、その中距離重賞レースの賞金額が上がって行ったことから、凱旋門賞はG1のひとつと見做され、特別なレースという位置づけが揺らいだこともありました。
 
 2000年代に入り、スポンサーが付き、賞金額が上がり始め(2018年まで上がり続けるそうです)、2008年に賞金額が世界一になったこともあって、再び世界有数のG1レースと評価されるようになりました。(現在の賞金額世界一のレースは、ジャパンカップです。「円高=日本経済の力」の威力です)

 一方我が国では、こうした欧州や世界での評価の上がり下がりに関係なく、常に凱旋門賞は世界最高のレースのひとつと位置付けられて、今日に至っています。凱旋門賞優勝馬であれば、生涯競走成績や種牡馬としての実績が今ひとつの馬であっても、種牡馬として輸入されて来ています。

 凱旋門賞のレースとしての特徴を挙げます。

① 欧州馬(欧州調教馬)が圧倒的に強いこと。
何しろ、欧州調教馬以外が勝ったことは1度もないのですから。欧州調教馬以外の馬の最高成績は、日本のエルコンドルパサーとナカヤマフェスタの2頭とニュージーランドの馬1頭が2着になったのが最高です。

② 三歳馬が強いこと。
過去10年の勝ち馬の馬齢分布は、3歳8頭、4歳1頭、5歳1頭となっていて、3歳馬優位です。これは斤量の関係が大きいと思います。1995年以降は、3歳牡馬56㎏、4歳以上牡馬59.5㎏、牝馬はそれぞれ△1.5㎏となっています。ちなみに1995年以降の17回のレースで、4歳以上で勝った馬は3頭しかいません。

 日本で凱旋門賞に相当するレースであるジャパンカップの斤量は、3歳牡馬55㎏、4歳以上牡馬57㎏、牝馬は△2㎏ですから、牡馬の3歳と4歳以上について言えば、凱旋門賞はジャパンカップより1.5㎏も4歳以上の負担重量か重いことになります。
 日本では、斤量1㎏がゴール前1馬身の差と言われていますので、これはゴール前1と1/2馬身の差に相当します。大変大きなハンディキャップと言えます。

 これが、3歳牝馬と4歳以上牡馬となると一層大きくなります。3歳牝馬が54.5㎏ですから、4歳以上牡馬との差は5㎏。3歳牝馬と古馬の牡馬には力の差があるとはいえ、ゴール前5馬身の差は大きい。過去4年間で、ザルカヴァとデインドリームの2頭の3歳牝馬が勝っているのも、偶然ではないと思います。欧州各国の調教師や馬主は「3歳牝馬でも凱旋門賞に勝てる」ことが判りましたので、今後3歳牝馬の出走が増加するのではないでしょうか。

 私としては、これほど明らかな3歳馬有利の負担重量制は不公平ですらあると思いますが、レース主催者のフランス・ギャロは見直す気配もありません。

 私の推測ですが、欧州における同格の大レース「キングジョージ6世&クイーンエリザベス・ステークス(イギリス開催)」が欧州の上半期のチャンピオン決定戦という位置づけを明確に持っているため、凱旋門賞は「キングジョージの出走馬+各国のダービー優勝馬他3歳の有力馬が体調を整えて出走するレース」という形を明確にし、そのアイデンティティを維持しようとしているのではないかと思います。従って、3歳有力馬が触手を伸ばしたくなる条件にしているのでしょう。

③ フランス馬が好成績
フランス馬が、過去20年で10回優勝しています。全90回でも43回優勝しています。概ね2回に1回は、フランス馬が勝つということです。

④ 馬場が固く、直線が長いこと。
フランスはパリの西側、ブローニュの森の中にあるロンシャン競馬場2400m右回りコースが舞台となります。ロンシャンは、欧州の芝の馬場としては「固い」馬場と言われています。確かに、良馬場の時の優勝タイムは、2分25秒前後と、欧州の競馬場としては高速です。この「固さ」については、イギリスを始めとする他の欧州各国の競馬関係者から「固すぎる」との批判があります。固い馬場というかロンシャンに慣れているフランス馬に有利なわけで、③の要因のひとつでしょう。
 ただし、固いとは言っても日本の馬場に比べれば柔らかく重いと思います。

 一方、重馬場になった時の走破タイムは遅くなります。2分35秒~40秒になることも珍らしくありません。もともと深い芝の馬場ですから、湿ると他の欧州各国の馬場のように重くなり、タイムも遅くなるのでしょう。

 加えて、ロンシャンは4コーナーからゴールまで直線が530m位あり、それだけでも短くは無い直線ですが、4コーナー出口のカーブがとてもなだらかですから、既に直線に入っているような加速が可能です。この「なだらかなカーブ」を含めると、ゴール前に650m位の直線がある感じです。

 これは、直線のたたき合いが長く続くことを意味します。凱旋門賞の直線の走りも、日本の競馬と同じように、直線早めに抜け出して粘る形と、残り100m位から一気に抜け出す形がありますが、前者で勝とうとすると相当長い距離を追い続けるという形になります。1999年のモンジューとエルコンドルパサーの追い比べは、果てしなく続くように思われるほど見応えがありました。

 以上を踏まえて、今年の第91回凱旋門賞の出走予定有力馬を観てみようと思います。

・オルフェーヴル(日本) 牡4歳 15戦9勝
前走G2フォア賞1着。(レース振り)直線半ばで先頭、抜かせず
主な勝鞍 日本三冠馬、有馬記念、宝塚記念  

・デインドリーム(ドイツ) 牝4歳 16戦7勝
 前走G1キングジョージ6世&QES1着。ナサニエルとの競り合いを制す
 主な勝鞍 凱旋門賞、キングジョージ6世&QES などG1を5勝

・スノーフェアリー(アイルランド) 牝5歳 21戦9勝
 前走G1 アイルランド・チャンピオンS1着。後方直線一気に差し切る
 主な勝鞍 英オークス、愛オークス、エリザベス女王杯2回 などG1を7勝

・サオノワ(フランス) 牡3歳 8戦6勝
 前走G1 ニエル賞1着。ゴール前100mで内から鋭く伸びる
 主な勝鞍 仏ダービー

・キャメロット(イギリス) 牡3歳 6戦5勝
 前走 G1セントレジャー2着。直線伸びるも届かず
 主な勝鞍 英2000ギニー、英ダービー、愛ダービー

・シャレータ(アイルランド) 牝4歳 11戦3勝
 前走G1ヴェルメイユ賞1着。4角先頭押し切る
 主な勝鞍 ヴェルメイユ賞

 以上の6頭が有力だと思います。

 前述の①~④の特徴から考えると、本命はサオノワ、対抗はキャメロットということになります。

 サオノワは、シャンティ競馬場の仏ダービーに勝ち、前走は同じロンシャン2400mのG1ニエル賞を快勝しています。レース振りも、凱旋門賞のひとつの勝ち方であるゴール直前の鋭い抜け出しでしたので、事前練習も完璧という感じです。過去3年間、フランス馬は優勝していません。(アイルランド、イギリス、ドイツが優勝)
 2回に一回はフランス馬が勝つという伝統?からしても、そろそろ負けられないところです。

 キャメロットは、英二冠馬。ニジンスキー以来、42年ぶりの三冠を目指して、英ダービー馬としては久しぶりにセントレジャーに挑戦してくれました。結果は惜しくも2馬身差の2着。さすがにゴール前の脚色は一杯でしたが、愛ダービーを勝ち、セントレジャー挑戦という厳しいスケジュールにも耐えて、凱旋門賞に臨むのですから素晴らしい実力馬です。

 我らがオルフェーヴルは、もし優勝するようなら凱旋門賞の歴史を変えることになります。過去90回、欧州以外の地域の全ての馬が成し得なかったことを達成するのですから「奇跡」と呼んでよい快挙ですし、4歳馬で勝つのも大変なことですので「二重の驚き」です。オルフェーヴルには、是非奇跡を期待したいのですが、能力の有無以前の問題として、常識的には無理と考えるのが自然です。

 そもそも、平坦で固い日本の高速馬場で実績を挙げている日本馬が、起伏に富み柔らかくて重い欧州の馬場で好成績を挙げることは、容易なことではありません。おそらく筋肉の付き方や体躯の細部が異なるのです。

 特に「重い馬場での高速レース」には、日本馬は対応できないと思います。凱旋門賞の過去の戦績を観ても、日本馬エルコンドルパサーとナカヤマフェスタが2着に来たレースは、共に重馬場で走破タイムが遅いレースです。(2分38秒5と2分35秒3)

 そして、ロンシャンが良馬場で2分25秒前後で決着しているレースでは、日本馬は着外が大半*です。おそらく「柔らかく重い馬場における高速レース」に付いていけないのだろうと思います。
(*1969年スピードシンボリ着外=11着以下・順位不明、1972年メジロムサシ18着、1986年シリウスシンボリ14着、2002年マンハッタンカフェ13着、2004年タップダンスシチー17着、2008年メイショウサムスン10着、2011年ヒルノダムール10着・ナカヤマフェスタ11着)

 唯一の例外が、2006年のディープインパクトで、2分26秒3で決着した高速レースで2馬身以内の差で3着入線(後に失格)でした。
 私は、このレースを観て、ディープインパクトの強さを感じました。さすがにディープインパクトは、他の日本馬では成し得なかった「良馬場の凱旋門賞における上位入賞」を果たしたのです。

 つまり、今後日本馬が凱旋門賞に挑戦するのであれば、3歳の牡馬・牝馬で、重馬場になってくれればチャンスがあると思います。例えば、今年の日本ダービー馬ディープブリランテには、キングジョージ6世&QESではなく凱旋門賞に挑戦して欲しかったと思っています。

 今年の第91回凱旋門賞には暗雲が漂っています。史上6頭目の連覇を目指していた最強4歳牝馬デインドリームが、在厩のドイツ・ケルン競馬場での馬伝染性貧血騒ぎに巻き込まれ(発症した馬から1.5㎞以内に居た馬が3か月間出走停止になる措置)、出走できなくなったのです。デインドリームは引退するそうです。

 3歳牡馬の両雄を脅かす候補一番手とみられていただけに、残念な出走回避です。加えて、スノーフェアリーも先週、脚部不安が報じられました。さらに、キャメロットが状態次第で回避するかもしれないとのニュースも流れています。
 もし、キャメロットやスノーフェアリーも回避するようなことがあれば、オルフェーヴルのチャンスは増すのでしょうが、それでは寂しい凱旋門賞になってしまいます。

 いずれにしても、レースに臨んでは「オルフェーヴルの奇跡」に期待しています。


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